応用動物行動学(2) · 応用動物行動学(2) 誌名 畜産の研究 = animal-husbandry issn...

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応用動物行動学(2) 誌名 誌名 畜産の研究 = Animal-husbandry ISSN ISSN 00093874 巻/号 巻/号 667 掲載ページ 掲載ページ p. 746-758 発行年月 発行年月 2012年7月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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応用動物行動学(2)

誌名誌名 畜産の研究 = Animal-husbandry

ISSNISSN 00093874

巻/号巻/号 667

掲載ページ掲載ページ p. 746-758

発行年月発行年月 2012年7月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 応用動物行動学(2) · 応用動物行動学(2) 誌名 畜産の研究 = Animal-husbandry ISSN 00093874 巻/号 667 掲載ページ p. 746-758 発行年月 2012年7月 農林水産省

746

応、用動物行動学 (2)

第 2章 行動学における

いくつかの重要な概念

第 l節反応(reaction)

反応という言葉は,もともと化学と生物学からき

た用語で,生物および生態システムが外界のいろい

ろな作用を受けて,それに対する反作用を指す。生

くは動物のすべての行動を内部,あ

るいは,外部から受けた刺激に対する反応であると

していた。また,生理学や比較心線学においては,

一般に刺激に対する生体の反応な応答(response)と

もいう C

行動反応の最も簡単な方式を反射(reflex)とした。

ロシア生理学の父とされるセチヨノブ(1. M.

Sechonov)が, f大脳反射J(1863)という著書の中で,

思考を運動の伴わなし、抑えられた反射としている。

反射に関する学説は,パヴロフ(1. P. Pavlov)と彼

の弟子A逮により高度に発展させられた。彼らの研究

成果の全部はf20年来動物高次神経活動の条件反射

に対する客観的研究J(1923),および大JliS阿半

球の機能に関する講義J(1927)の二fHJにまとめられ,

ロシア語で出版された。

パヴロフは反射を 2種類に分け,生得的問定刺激

によって引き起こされる反応を無条件反射と呼び,

出生後学習によって得られる「刺激と反芯jの結び

付きを条件反射と名付けた。無条件反射には,いろ

いろな生得的な自身を保護する反応,例えば,かく,

こする,ふく,まばたく,くしゃみ,せき,吐く,

よだれ,バランスを取るなどが含まれる。

反射行動は,望室長類の幼児のつかむ行動以外,ほ

とんどが瞬間的な反応:で,同じ束lJi数は(引こ同じ反誌

を引き起こす。しかし複雑な行動では,閉じ刺激が

いつも陪じれ二動を引き起こすとは限らない。 した

がって行動反応には反射性の行動を含むが,すべて

が反射的で、はない。

ローレンツ (K. Lorenz)とホルト (E. B. Holt)の

二人は, 1930 年代に行った実験において行動が外界

東北f没き語大学教授 (ShianLi)

世安ネ

からの刺激による単なる反応といったものだけで

はなく,内国に基づく自発行動もあることを発見し

た。例えば,ニワトリの経は瞬卵開始後 3臼から動

き始めるが,刺激に対する反応は 7~8 1:3目以降か

らみられる。ローレンツは,自発行動は本能行動成

立の前提であり,反射自体には誠節できない一定の

関{疫を持つので,本能行動は反射とは区別され得る

ものとした。

単なる反射と復雑行動との間には,闘伎において

違いがある。関{肢とは,反応や行動の起きる最小限

の刺激をさし,それより弱い刺激では反応は起きな

い。反射性反誌の関績は限定的で不変であるが,本

能行動における反応と束!lj数との関係は,潤殴の要因

と動物の内的生理状態などによって変わる。ある行

動が生じにくい場合,その関僚が高いとしづ O 逆に,

生じやすい時には,関f[立が低いという。この隣伎の

高低は,行動後の経過時間によって変化する場合が

ある。例えば,採食行動あるいは性行動のすぐ後で

は,食物あるいは性の刺激に対する反応がないか,

かすかにしか反応しない。 逆に,長い間刺激されな

かった行動は,容易に生じること,また,類似、する

刺激に対しても反応することがある。関{疫が極めて

低ければ,外的刺激がなくても真空行動 (vacuum

behavior)は生じる。例えば,就巣に熱中しているJiti[

巣作り材料,がないにも関わらず営巣行動をす

るなどである。

第 2節本能(instinct)

本能を定義することは難しい。われわれが日

的に用いる本能とは,多分,人の潜在意識の活動

とか,動物の生得的で、目的に合う行動などを指し

ている。

フロイト (S.Freud)は,本能的弱J悶を衝動 (drive)

といい,自己保存的言訪問(飢え・渇き・攻繋性)と性

的本能動限Oibido)のニ元的行動安ヲiき起こす原動

力を,特に後者の作用を強寵する概念として提案し

た。そして,両者の衝突を精神的病気の掠であると

考えた。

0369-5247/12/¥'500/1 論文/JCOPY

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ネ:応用動物行動学(2) 747

動物行動学で、は,神経系統に同定された適応性の

ある統合システムを不能とした。本能行動の入力と

出力のメカニズムには!倍層性がある。一旦,議えら

れた搭ミ在的力が,外からの一定の信号で引き起こさ

れた時, Il1iJiE形式の動作を表すことになる。言い換

えると,ヌド古告は遺伝的に決定された行動様式で、あり,

を不安とする個体あるいは動物種に有利的な

適応行動である。僻えば,クモの造綿,ミツバチの

蜜j去り ,:i;!Jい捕手LrliJJ物にみられる高所での慎みの行

動などである。

以諮には,本能を決める三つの慕準があった。す

なわち,(1)習得的でないこと, (2)動物穏に特有な

こと, (3)遊応性のあることである。しかしながら,

実際のところこれらの適用には難点がある。高等動

物の翻体生活において,本能行動が学習の作用を全

く受けないということはなし、からである。ネコがネ

ズミt-r!iる例では,多くの人々がそれを本能として見

ているが,実験で証明された結果はそうではない。

ヨーロッパの行動学者は,本能行動は(1)動物の

内在状況により決められるものであり(例えば,

高~:本能は体内の性ホルモンのレベルで決められる) ,

(2)それがある刺激で生じるのであれば,その行動

の進fj二は刺激で、縦長持する必姿がなし、(例えば拍卵中

のガチョウは巣外のOllを見ると,明でそれを阿足の

111Jへ戻す。この行:rVJの途中,卵OtlJi数)を取り去って

しまっても,戻す動作が続く)。

本能行[¥1]の表現様式(パターン)は,動物の形態檎

と同様に陪滋罰ではj苫‘で一致している。しかし,

ほかの行動と同じように本能行動も,常に I'Y変的成

分を含んでいる。上記の卵を巣タトから戻す行動にお

いて,卵の需1l(1Jからの左右の向きを換えて,卵が側

に転がさないようにする平衡動作がそれである。も

し,円柱形の偽Ollに代えると,卵を戻す行動動作だ

けを残して,左右交換の!lYJ作をなくすことができる。

これで分かるように,卵を戻す行動は f手前に引く

tlVJ f乍j と「交換動作Jの両部分から成っている。 r手前に引く動作jが巣タトの卵喜子見る刺激によって引き

起こされると,卵の有無に際jわらず最後まで続くこ

とになる。「交換;fVJ1'FJは,転がす卵からのフィー

Fパック(自己edback)刺激によって決められる可変的

成分なのである。

本能行動には,突にたくさんの複雑な生得的に劃

定された不変の部分(動作発生時点とカ)と,動作の

方向を定める環境条件からのブイードパックが組

み合わさっている。これらはあたかもミサイルが燃

料部分と方向誘導部分から成っていて燃料が点火

すれば焼き尽くすまで推進し,その後方向誘導部分

が随持淘闘の変動に反応し変化するようなもので

ある。

関 2-1 ガチョウが卵をjiLにJXすi'T!fVJ(Lor官nzand Tinbergen 1938)

多くの本語仔動は一連の活動として組み合わさ

れ,行動システムとなる。ティンパーゲ、ンが行った

トゲウオの配偶行動システムにおける本能行動の

研究が最も有名である。そのシステムは(1)追求,

(2)誘導, (3)巣の指示, (4)放卵促進と雄の射精の

組み合わせで,雄と雌の問で,-)jの活動は相手の

次の固定化された活動を引き起こす。もし,途仁):1で

一方の反応が失われると, 1'13手が先の動作を繰り返

すか,あるいは,行動の進行は止まる。

家資と家禽の複雑な繁殖ヌj¥:能行動もこれとよく

似ている。“求愛 交記営巣一脊雛"といった一

の行動システムの中のそれぞれの行動において

も一連の連続的活動が活i定されている。 例えば,官;

“巣材捜し一巣材集め一運搬一巣造り一内部修

などから成っている。行動に)1慎序と連鎖が存在

するのは,ある生物学的 I~ 13りを達成するためには,

幾多の行動が)11長次記列でなければできない。また,

}れらの遺伝的行動はヰ:厄神経系統の中に鱗序よ

く配列され,保存されていることが示唆されている。

第 3節行動様式(behaviorpatterns)

それぞれの動物種には,ある一定の機能を全うす

る持有の“型"がある。これを行動様式,あるいは

行動パターンと 11乎ぶ。

動物穏ご、との行酪ノえターンの多様性は,それぞれ

の体の構造や形態の多様性に劣らず, I司じ外環境に

おいて発生する本能的反応が動物種ごとに違い。

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748 議~i妄の研究第 66巻第 7 号 (201 2年)

すなわち,奥A なる種間において全く潤じ行動パターン

を取ることはない。ただし,同議では基本的に間じ

仔塁手jパターンを取る。このような行動パターンは,

進化過程で連依的に毘定化されたものである。

われわれは,行動パターンを特別な機能を持つ行

動の組合せと見倣しており,高等動物においては学

習や経験によって,多少の変更ができる。 17Uえぱ,

ウマは元来院足歩行の動物で、あるが,ヨ11練によって

ある程度の距離をニ足で歩くことができる。

区]2-2 二:足でjzてるウマ

4節探査行動(searchingbehavior)と完了行動

(consummatory behavior)

本能行動は,二つの段階に分けることができる。

本能を全とうする比較的簡単な定型的部分

行動といい,完了行動へと導く可変的な定向反応を

探査行動,あるいは欲求仔動(appetitivebehavior)と

呼ぶ。 例えば,食物を探すのは欲求行動であるが,

食べることは採食行動の完了行動である。同じよう

に,交配におけるお精は,性行動の完了行動である。

完了行動の直後には,関値が高くなるとともに衝

動も弱くなる。したがって,一定のs寺院内に同じ行

動は生じにくくなるが,欲求行動は何回繰り返して

も弱まることはない。この違いはそれぞれの生物的

作用が違うからであろう。すなわち,完了行動はそ

の行動の生物的g的が達成されたことを意味して

いるが,欲求行動は目的に導く作用しか持たないこと

と,その行動によって生物的自的が必ず達成される

とは眼らない。したがって,欲求行動の発生する

と形式は,時点、と場合と状況によってすべて異なる。

最も単純な欲求行動は,歩いて動く(locomotion)

w とである。飢えた動物が自発的に歩くのは,これ

によって 仔動の対象と対箇するチャンスが

増すからであろう。また,複雑な欲求行動は長いH寺

間続く O 例えば,鳥ーや魚、における繁殖地への渡りや

移動は,万葉!tの旅を経である特定の状況(繁殖地)に

到津することが欲望の完了となる。

完了行動は,常に生得的な詔有の様式(パターン)

を示すが,欲望行宣言jには生得的パターンを含み,ま

出生後の習得的成分をも含んで、いる。例えば,

キツネの捕食行動では,彼らはでたらめに歩くので

はなく,獲物の出やすい沼草地を目指すだろう。そ

の探査段階では,走っては止まり,あちこち見罰し

て歩くなど,行動の細部は変わることになるが,獲

物を殺して食べる完了設階においては,一致した行

動パターンを示す。

第 5節動機づけ(motivation)

ある動物のあるu寺点における活動は,彼が受ける

外的刺激と彼自身の内的状態により決まる。例えば,

満腹な状態にある家畜と飢えた家主主とでは飼料に

対する反応が異なるし束の乾草が分娩前のstiV豚

にとっては刺激となりうるのも,それぞれの動機が

兵なるからである。

動機(motive)とは,ある動物がある行動を表す直

前の内部の待機状態を指し,動物の行動を表現させ

る内部要闘の総和である。また,動機は

がある。すなわち,飢えた動物は配偶を求めないし,

また,性的興奮状態の動物は採会しない。

動機は,生理状態と外的刺激に加え,遺伝と経験

から形成された個性など多数の要因の合成である。

ある一定の時期内の各行動には,それぞれの行動

を代表する動機伎を持つ。動機伎は動機のレベルを

示すものであり,以下の内外要闘の影饗を受ける。

(1)体内における刺激:血液の浸透圧と血糖濃度の

変化が,それぞれ飲水や採食の動機に調わる。

(2)特定の外部刺激の有無:例えば,出生直後の幼

音が母畜の母:性行動を引き起こすが,死胎であれば

母獣に食べられる。

(3)ホルモン 取液中の投ホルモンレベルが性行動

を決める。

(4)体内リズム:繁殖(発情周期,妊娠期),移動,

鳥の渡り,季節性食物貯蔵,鶏の時舎などは,みな

時間リズムに従う O

(5)成熟段階:同じ刺激であっても年齢によって反

応が異なる。仔iJえば,動物は成長すると乳を飲まな

くなる。

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ヰf:応用動物行動学(2) 749

(6)これまでの経験が, 目前の行動に対して潜在的

な影響を持つ。

(7)中被神経系統の興奮は自発行動を引き起こす。

なお,以上の各姿因は,おのおの独立しているの

ではなく,中根神経系の統合Cintegration)作用を受

ける。

動物の動機について,われわれはその行動発現の

前にそれを予測することは困難で、あるが,後に続く

行動によってその動機を推察できる。動物に

はないが,行動,すなわち,姿勢と動作が,一定の

(body language)となって推察を可能とす

る。人は動物の行動規則を理解することによって,

初めてその意味を読み取り,その動機を潟祭できる。

家若手には身体的姿求から引き起こされる行動が

ある。例えば,栄養要求が摂食動機となり,栄養失

調が異噌(異食症)を促す。また,ある動機づけが体

験と情動に関わる。例えば,休憩、,身繕い, J接びな

どがそれに属する。

第 6節衝動(dl前 e)

心玉虫学では生理的要求から起こる行動の[VJ関・動

力を簡動と l呼ぶ。初期の行動学研究では,ホルモン

のアンバランスによる活動産前の中枢神経系統の

緊張状態を衝動としたが,今日で、は衝動を具体的動

機の代名詞として使うようになっている。僻えば,

摂食imf動,性衝動,攻繋衝動,逃走衝動,社会的伴

う衝動などである。

衝動とはある行動を起こす内部状態と外部刺激

の復合で生じ,体内のある姿求を充たしホメオスタ

シス (homeostasis)状態に達する行動の動力である。

例えば,飢えが摂食l:J!f弱Jを,あるいは血液中の性ホ

ルモンが性衝動を引き起こす。また,学習や経験は

n.言nに関わる獲得的行動の衝動を引き起こす。

衝動は持続力のある刺激と見なしてもよい。それ

によって,動物は悶的を達成するまで活動を続けら

れるが,問的を達成すると衝動はなくなり,生理的

姿求も低下してしばらくの陪もとの刺激には反応

しなくなる。

動物は,時として外部刺激がなくとも内部状態に

よって自発的に活動する。例えば,食べ物を探しま

わることは,外部からの特別な刺激によるものでは

なく,体内要求である。

自発行動は一種の特別活動能 (actionspecific

energy) ,あるいは特別活動潜在力 (specificaction

potentia!)の表れである。自発的行動の開始は,まず

欲求状態(searchingphase)になることであり,刺激

掠に向かうだけで目的は定まっていない。僻えば,

分娩後の守二は母性jmf!ll)Jによって,離れている

子の剥製品に近寄って行くが,その中に充填した乾

草を食べ始めることがある。したがって,完了行動

が発現する前には欲望目的を判断することは難し

いのである。

衝動を司る中心は間脳視床下部 (hypothalamus)で

あるが,大脳皮質も衝動に影響がある。例えば,性

衝動についていえば,性行動は体内のホノレモンが神

経組織に作用するだけでなく,外部からの刺激に

よって引き起こされるが成熟後交配経!援の持つ去

勢した雄馬は,雄性ホルモンがないにも関わらず性

行動の能力を保つ。霊長額では,性行動が去勢に

よって受ける影響は一層弱い。また, {I間体の衝動レ

ベルには差別があり,季節変化や群環境の影響,さ

らには闘鶏や|謂犬の攻繋衝動にみられるように遺

伝子の際与も示唆される。

第 7節情動(emoiion)

情動あるいは情緒とは急激に生起し,短時間で終

わる強力なー磁の感情状態を指す。情動は,

怒り,恐がる,苦痛のような内的経験であるととも

に,生理的変化や行動反誌として現れる。また,

!WJは生得的反応パターンとして, [I'lJ種目手j物が同じ情

説のもとに同じ行動表現を現す。盲目個体において

行動模倣はみられないが,その情動袋現に違いはな

い。しかし,情動は年齢や学習など生後の要因にあ

る程度影響される。

情動は内的経験であるが,客観的に生物学的に研

究のできる現象でもある。動変化が起きた場合,

動物の体では下記のような現象が認められる。

(1)学習能力が落ちる。 (2)自律神経系の活動が賦活

化する(毛髪を立てる,障の拡大,血圧の高まり,

脈拍増加,血液分布状態の変化,呼吸数の増加1,腺

分泌の変化,皮府電気抵抗の低下)0 (3)随意筋肉の

活動障害。

進化の進んだ高等・混血動物で、は,情動に影響を

与える刺激も多くなる。これは刺激に対する識別能

力が高くなったからであろう。

家畜の情苦手j変化は,いわゆる表情筋肉が働く部位で

ある茸,目,尾などのほかに,その姿勢と動作から

判断される。例えば,ウマでは首を高く曲げるのは

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750 i'I'iet.の研究 第 66宅金 ffi7号 (20 1 2年)

,その耳が「心の鏡jであるといわれるように,

阿立が一つの方向に向く際は注意を示し,速く

に動かす場合は不安を,主下を伏せると敵意を表す。

また,その尾については,高く挙げる場合は輿奮と

緊張を,問後肢の潤に巻き込むのは恐怖を,頻繁に

揺れ動かすのは不快,不安,不満などの情動を示す

ものと湾えられている。

関 2-3 ウ?の表'ri';

第 8節刺 激(stimulus)

刺激とは,動物に対する環境の作用をいう。刺激

は行動を引き起こす外出であり,行動の方向,準備,

茂応関値などに影響する。行動は,外界の刺激を感

覚受容器で受け,神経系統の調整を経て効果器で反

応として表す。

感知できる料激の種類と範罰は,動物

よって異なる。例えば,牒や蛾が高周波の去を,ミ

ツバチが空間定位に用いる偏光(polarizedlight)を,

コウモリが超音波を,ガラガラへどはわずかの赤外

線 (0,005C

Cの混度差)を,イヌはごく微量の動物性

脂肪酸を感知できる G ある穏の鳥と;魚は,地球の磁

場で所在する位置を矢口る。このように,Bit境は,す

べての動物にとって生物的意義を持つ刺激から成

り立つてはなく,それぞれ穂の生活に関与している

部分に範関,内容を限定して特有の知覚する部分を

その「環境世界(あるいは主体的環境)J (Umwelt)

とし、う。

動物が環境から受け取る料激を大別すると

性,化学性,物理性の三種類に分けられる。

機械性の刺激は,主に皮痛に存在する受容器に

よって感知される触覚(皮腐感覚)である。すべての

初生11甫乳動物にとって最初に必要なことは乳を

探すことであり,触覚は生後一番早く,そして生涯

最も多く使う感覚となるであろう。

H市乳動物は,主にl渓党と|味覚などといった化学的

刺激情報に対して敏感である。

フェロモンも化学的剃激情報に含まれるが,見虫

の行動を支配する主な物禁である。

家斎のi奥党は発達しており,食物の選見!J,外敵の

発現,仲間の見分け,楼怠、場所の判定,性別や老幼

の弁53!]など,みなI喚覚に頼る。また,匂いは同種内

の繁殖調和および異種間の繁殖盟答にもなる。

物理恨の刺j放は,主に視覚における光刺激とj昆熱

を指す。鳥類の視覚は硝乳類よりはるかに鋭く,姿

動作,羽企(雄雌で異なる)などのような視覚的

信号を用いることが11甫乳動物より多い。

ていえば市乳類家音の視力は家禽に及ばない。例

えば,イヌは色盲であるとともに抵棋と遠視であり,

ウマは広い視野安有するが距離感に乏しい。した

がって,潟術における障害物の飛び越しに際しでは,

騎手の操縦が重要な鍵となる。また,ウマやヒツジ

にとっては,放牧場の出入り口は,連なる牧tf肝の中

央よりも端にあった方が発見しやすい。家禽は視覚

によって食物の発見と選択や仲間の区53iJを行う。

音声は低振l隔のIW反射振動として分類される。

と蛙の鳴き声は,同種の雌を呼び集めると同時に,

ほかの雄を排斥する作沼を持つ。家蔭の時き戸にも

求愛喚起,警戒,威i札悲鳴,教いの求めなど,

いろいろな区別がある。

高等動物は,(拾に多くの環境情報のやに生きてい

るが,その中の特定の一部分にしか生物的意義を持

たない。このように,動物はあらゆる感覚器官から

受ける情報を受け取るのではなく,その中の必要な

部分だけに反応する。神経生玉虫学では,この舗い

過し選択入力現象を「フィルタリングJ(filtering)

とし、う。

外部環境の情報のうち,どれが受議されうるかは,

動物の感覚器官とや11経系統の二壌のフィルタリン

グにより決められる。感覚訟におけるフィルタリン

グは周辺的選53!]J (peripheral filtering)といい,

必要で、ない刺激を感覚器段措で除外すること

す。例えば,擦麹によりミツバチの一切の行動を止

められるのは,フェロモン感受器を塞げるからであ

り,雄蛾は開種雌の性フェロモンだけを受け入れ交

尾をする。ダニは11お乳動物の発する季L駿呉で寄生宿

とらえる。

Page 7: 応用動物行動学(2) · 応用動物行動学(2) 誌名 畜産の研究 = Animal-husbandry ISSN 00093874 巻/号 667 掲載ページ p. 746-758 発行年月 2012年7月 農林水産省

:::t芸 応m動物行ifVJえと(2) 751

家斎,家禽の感覚器官のブイルタリングは,仁!:1枢

性に比べてあまり重姿でない。その組|対は(1)

動物の生物情報は甚だ複雑多様で,それらを統合・

調節する必望さがある。 (2)高等動物で、はひとつの感

覚器官が, ~7~に幾つかの機能計百l時に担う。例えば,

ウシの悶は草を探すと同時に,外敵に注意を注ぐ。

感覚器官のブイノレタリングを経て入力されたす

べての情報は,中11R神経系で選見IJ.処理されてから

反応として表れる。

ぼ12-1,フィルタリング(ネコはネズミを1iliえる11寺にj討が|会jこえなし、 CTinbergen1965)

第 9節行動の解発メカニズム

潔境世界のヰIに1=.きるillIJ物は,たえまなく感覚器

から入力される情報を識別・解釈して貯える過程で,

適当な刺激だけに反応して行動を去す。したがって,

行動を引き起こすメカニズムは,受毛主器での情報識

男IJから始まるのである。このメカニズムについては,

さらに生特例決定ともj得的決定とに分けられる。

生得I'I'J解発メカニズムCinnatereleasing mechanism,

IRM) :本能行動のような行動ノえターンは,遺伝的

に仁!J11区神経系統に組み込まれたものと見なすこと

ができる。これらの行動の解発に袋する刺激は生相

的で,その院の関係は決まっており,あたかも鍵で

錠前を !~il けるのに 19-IJ えられ,刺激は鍵刺激 (key

+ 場・ 十

stimulus)と称される。ティンパーゲンによると,

能に関わる (1:)1'区千ly味主系の活動は保存されたi階層自己

列を持つ。動物の生現状態が一定に達すると, 1局次

の中枢神経機構が賦活化され,この時,特定の鎚刺

激を得ることにより,長-~えられていた低次の中枢神

経機憐が初めて解放される。また,その段階で司有

の茂応を発現させると!湾H寺に,次の段階の仁川区神経

を賦活させるc こうして,一連の行動システム

が完成する。一方,動物が鍵刺激を得なければ料i敢

に向けた欲望行動を示し,その後刺激を得ることに

より抑えが解かれ行動が発生する。これが生得的解

発メカニズムである。しかし,ある生得的解発メカ

ニズ、ムは経験によって改変され,その反応範剖が拡

大することもある。このような後天的な習得性の鍵

刺激によって行動が引き起こされることを,習得f:J'J

メカニズムという。例えば,ローレンツの実験

では,人::1

ければ,最初に5九主つ;けナたlほまかの動物,あるいは気球

にまで付き従う。この追従行動のfq将校以ilJi樹立,術:

化後に遭遇したtfYJく対象である。

ティンパーゲン(1973)が動物行動発生の基礎を

仔動機構 (machineryof behavior)とI1子び,動物行動

のず自生には,必ず三つのステッブ(倍報の伝達一情

綴の処理結来の出力)があるとし,それぞれを解

明ずることが動物仔がj学の 課題であると述

彼はニワトリとシチメンチョウの雛をmい,

を 11 11長したお状棋~に践と毘の長さの比例の

うものが i二空をjftび波る実験で発見したことは,

お{Eの「伏せ隠れるj と「逃げるjの反応を引き起こ

す模型の形状は,強禽額の短~}î .長誌の特徴を持つ

もので,逆の長頚・短尾では無効であることだ、った。

むろん, 1111長した|袴翼のが},後に短室長・長尾の模型

を後退方I11Jに移動すると,逃避反応は起きなかっ

問棚機鯵

・争

は12-5 雛なi;立す反応を引き起こす模型 CTinbergen 1951)

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752 資産の研究第 66巻第7号 (2012年)

観察芸どまとめて得た筆者の結論は,個体の生命に

関わる事柄に関する生得的解発メカニズムは f慣

れJにならないが,種族存続に調わる生得的解発メ

カニズムでは学習が必要となる。 例えば,放し餌い

の鶏群の上空を大型の鳥状物が飛ぶと,それを発見

したある個体が「ビーj という警戒声を発すると,

全群が「不動j になる。人工鮮イ七の雛群でもこの声

を人が真似ると,たちまち全群が静かになり「不動J

となる。この現象は操り返しても有効で「慣れj に

はならない。一方,イヌの性行動においては,性成

熟(体型の小・大によって 7~12 ヶ月齢)に達した雄犬

は,発情雑犬に乗りかかり自然に交尾できる。しか

し, 2歳になっても f挿入一射精Jの完了性行宣言jを

経験していない雄犬は,その後の交尾ができなくな

る。そのような雄犬では,人が交尾補助をして交尾

に成功したとすると,以降の交尾では,毎回閉じ補

劫をしなければならない。 ドイツ・シェパード犬協

には,イヌの行動原潔に背く r2歳未満の雄犬の

繁殖を許さなしリという誤った規定がある。

第 10節鍵刺激と信号刺激

前述した鍵刺激は,動物の受け入れるある特定の

反応を引き恕こす刺激である。それらには,

匂い,味のような単純なものや,様相(誼禽型

の短頚長尾,あるいは,頭と体の比例関係)などの

ように復合的なものもある。そのいずれもが情報を

得る主体に対して生物学的利益をl子える刺激で

ある。

信号刺激は,相手の行動を引き起こす料激である

とともに,情報の発信と受信の双方に対して有益で

あり,個体問の交流に使う手段,あるいは行動形式

である。したがって,信号刺激は性行動と問.性行動

のような双方にとって情報を必要とする社会行動

に多く使われる。視覚的,音声的,あるいは化学的

(匂とフェロモン)刺激のほか, 1IiiJ1乍や姿勢も信号刺

激として使われる。例えば,雄にとっては,まず相

手が雌であり,それが繁破準備状態にあることを確

かめてから,求愛行動を始めるo !ltItもそれに応じて

反応する。

社会的信号刺激は,進化の過程においてより

化され儀式化 (ritualization)の方向に進展変化して

きた。この儀式fとされた動作は,信号動作あるいは

表現行動(expressivebehavior)と呼ばれる。この表現

行動は長い進化の中で変化するだけでなく ,i路体の

発育過程といった期間でも変化する。例えば,性成

熟した動物の鳴き声は幼い時と違うが,この違いは

向穏の仲間,雌雄の配偶,母子の連絡,縄張りなど

を示すことに利用される。

信号刺激は,異種動物に対して使われることもあ

る。例えば,潟類の警戒声,イタチやキツネなどの

放臭などが挙げられる。攻撃行動と性行動における

信号刺激の種間差別は,種族j塙離の機能を持ち,特

に近縁動物種の共棲地では穏間の争いや交雑の訪

止に重要となる。

ある信号制激は fサインj として,動物の体の上

に発達している。雄鹿の角,雄鶏の鶏冠と尾羽,雄

七面鳥と雄孔雀の窮状尾羽,蝶と蛾の斑紋などがそ

の併である。

第 11節 刺激の麓み霊ねと超常束IJ激

動物の受ける刺激には,積み重ね現象がある。

ある行動を号|き起こす刺激が一穏ではなく多穏

類ある;場合,単独刺激で作用する時もあれば,合わ

せて作用する時もある。供えば,鳥の卵の大きさ,

¥成点などはみな抱卵の刺激になるが,それ

らの複合は抱卵欲を強める。このような刺激の柏加

効果といった現象は,向一刺激物が様々な感覚器官

に与える刺激に限らず,同一刺激が多次に重なった

場合にも現れる。{タjえば,雄jl患の求愛における成功

率は,その使われる刺激の種類(~鳥き声,連廻し,

f本当り,呼びかけ)剖数,強さにより決まる。母牛

の「放乳J速度は視覚,接触温度,搾りの強さと頻

度に影響される。すなわち,刺激の相加効果は,各

刺激の加算だけではなく,時には各刺激間の相互補

完あるいは相乗的効果も存在する。

超正常解発刺激(supemorrnalreleaser)の実質も刺

激の積み重ねの一種であるが,しばしば自然の刺激

よりさらに強しリlilj激となる。自然界には超正常解発

刺激により生ずる現象が多い。例えば,カモメは大

きい卵や押数の多い巣での抱!ìI~を好み,カッコウ科

の托卵性烏の雛の関口は,常に仮親の雛より大きい

ので優遇される。自然選択の作用は刺激信号を自立

つ方向に発展させるが,ある程度の節度を保つよう

になるのは,自然淘汰によって;将棋されるからで

あろう。

超正常解発刺激の原理は,すでにわれわれの日常

生活の中のポスターや商品包装,あるいは,女性の

化粧などに応用されている。資産の現場ーにも併は多い。

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学:応用動物行動学(2) 753

例えば,人が「ズノレズノレj と子豚のi良乳の音を真似

ると,子豚を集めると!司時に母豚の放乳を促進する。

また, AIセンターにおいて精液採集時に人工躍の

温度と在力を少し高めたり空乗駕によって,雄苦言の

一回射精最と精子の活力を高めることなどが挙げ

られる。

第 12節行動リズム(rhythm)

リズムとは,ある行動が一定の時間間隔で規則正

しく繰り返して出て来る現象である。動物の行動は,

往々にして一定のリズム性を表す。あらゆるリズム

は,波形の変動で,周期,頻度および振幅において

異なる。

陸上動物の最も普通の周期は 2411寺問の概臼周期

(circadian rhythm),海洋動物は 12時間の潮汐周期

(tidal rhythm)を示す。摂食行動の間隔はより匁く,

一定の時間を悶てて繰り返される O

世界の大部分の地域には,季節や気候の変化があ

り,そのような地域の動物は春夏秋冬と向調した年

周期あるいは季節周期性の繁殖リズムを示す。

動物のいろいろな繁殖期や発情周期jを挙げると,

(l)ミンクやタヌキは年周期の多回発情, (2)イヌは

半年周期の一回発情, (3) ウマは春秋に 3~4週間毎,

(4)ヒツジは秋に 17日毎, (5) ヤギは春秋に 17~21

日毎, (6)ウシとブタは年中で、約2013釘:などである。

潟右手で、季節発を示めす動物を熱帯に移すと年

中発情に変わることがある。熱帯には気淑の激しい

変化はないが,乾均!と雨期の区切jがあるので,その

ような地域に棲む動物の活動には周期性を示すも

のがある。

昼夜周期を示す家音と家禽は,接んな活動時間帯

によって「昼活動型(ヒツジ,ヤギ)J, r夜活動型(ウ

サギ)J, r朝活動型(放牧のウシ)J, U存続活動型(ハ

ト,ニワトリ)Jに分けられる。アヒルは夜明け前

に卵を生む。

動物が生きる自然環境では, 臼の出, 臼の入り,

月の満ち欠け,潮のj前ち千,気温の寒暖のような外

民による影響を受けるが,このような行動の周期性

を外悶性周期と呼ぶ。これに対して,動物の体内時

計による行動の変化を内脂性河期とi浮ぶ。それ以外

にも,動物には,生理機能と総識構造から必ず起こ

るJ&縮弛張リズムがある。

動物の体内時計は進化の産物で,一定の周期で振り

動く f振り子J られる。よく知られた併では,

ニワトリの刻の声や家畜の一定した妊娠期間など

は3 体内時計を証明するものである。体内時計は外

的情報と絡み合って,最適の活動時聞を定めて,行

塁手Jを外的環境と自身の内部条件に適合させる。 24

時間点灯あるいは消灯とした場合や明暗周期の突

然の移り変わりは,時差ぽけ(jetlag)をヨiき起こすO

海外旅行では,時差ぼけが解消するまでには,東行

周りの場合1l~15 日,西行局りの場合 6~12 日か

かるといわれている。

睡1民も周期性の1i動であり,昼夜あるいは潮汐周

期信ーに現れる長時間の不活動状態を示す。睡日民のよ

うな本能行動に属するものは,高等動物に限らず,

昆虫,軟体動物,魚類,両棲類,~虫類にもみられ

るが,それについての研究は,混血の烏組と 11お乳類

において最も多い。

睡眠は,捕手し動物の一生の中で、大きな部分を占め

るc ある動物は冬眠あるいは渡りなどの定期的な移

動によって陵地の季節変化に適応するが,人工飼育

された雁,鴨類では渡り鳥としての本能がなくなる。

音援においては,光照射と食物が鳥類の繁殖を苛る

刺激要民であることを発見してから,人工照明によ

る家禽の終年度卵に成功した。

第 13節学習(Iearning)

は日常用語であるが,動物の環境変化に対ーす

る行動の修正,あるいは以前に出合った状況によっ

てほ前の刺激に対する反応を変える現象のことを

も指す。

学習現象は高等動物に限られる。下等動物の生命

は短く,多くは子代が生まれる前に死ぬので,活用

性に欠ける生得的本能行動のみでも生き残こるこ

とには十分である。高等動物になると個体の寿命が

長くなり,生活環境も複雑になるので,遺伝的に闘

定化された反応(本能)だけでは足りなくなり,生後

に得た情報によって適宜行動皮応を修正しなけれ

ば適応できない。

行動学における学習の定義は,経験あるいは練習

によって後々まで維持できる行動の変化で、ある。こ

こでの学習は,成長,発育,病気, 1富三喜,疲労,

党適応,薬品,興奮などによって生じる行動変化と

は区民される。

は,情報の感覚受容器からの入力一貯蔵・記

f意一再現の過程を経て個体の行動を特定の環境条

件に適応させる。

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754 苦手ff.の研究第66若手 第7,号 (2012'1三)

学習方式は単純なものから複雑なものへと,その

レベルも進化程度が進むにつれて高くなり,脳の発

達に伴って複雑になる。大月訟の発達した高等動物で、

は,経験により修正された行動,すなわち,習得的

行動が最も多くなっている。

行動の変化は,以下の過程によって生じる。(1)

ある新しい行動反応が発現する。 (2)これまで然調

係であった刺激に対して反応する。 (3)ある状況に

対して従来の反応を変わるか,新しい行動反応を示す。

脊村í~動物の学習能力は,魚類は鳥類に劣るが鳥類は

暗乳類には及;まない。家禽では学習によるき1¥分は壁か

で,本能によるものが大部分を占める。したがって,

人工解化と自然解化の雛の生存能力に大き

ない。家斎の新生子は,その初生時生存に有用な本

能しか持たないが,成長発育するに伴って何種およ

び外界との接触といっ によって適芯能力は

改善されてし、く O 学資能力の発達は,主に一生のう

ち若齢期に限られる。それは伺穏との接触がそのH寺

;守口こ多く,そのi渇生活に有用な知識が得られること

と,生理的にも中継神経系統の発達・形成を伴うか

らである。

ヴ、インス (M.A. Vince)は,解イヒ訴jの雛は,卵の中

ですでに親や仲間と応答し合って学習しているこ

とを報告している。ウズラでは,そのような応答に

よって本来先後産出した卵は破殻時間の同期化が

なされる。このような間期化によって,自然鮮イヒの

努jt:たちは,親1誌の移動に伴って同時に巣立ちができ

るため,生存確率はi高まることとなる。

11議乳動物の眼・胎児は,タト界と厳密に隔離されて

いるため出産前の学習はない。言い換えれば,捕手し

動物はその行動において未完成体で生まれ,生後い

ろいろの方式の学習によって,始めて個体の行動を

・Ji和えしてし、く。

動物の学習方式は,慣れ,尉り込み,

模倣,試行錯誤,古典的条件付け,道具的条件付け,

洞察などに分けられる。

1.寵れ(habituation)

慣れとは,強化の伴わない繰り返しの刺激に対す

る反誌の減表現象である。例えば,動物が雷,樹木

の校の揺れ動きや落葉などに対して無反応になる

こと,カラスが案山子の上に停まること,放牧の音

群が往来の車を恐れないこと,ウマが装荷された馬

具を気にしなくなることなど,みなその例である。

慣れの生物学的意義は,ほかの学習では反芯が増

加するのとは逆に,必要でない反応をなくさせて体

力と精力の節約になることである。慣れの発生は中

継神経系の支記であるので,感覚器官の疲労や顕応

とは違う。臼を縞てて繰り返した刺激に対しでも積

れが成立するし慣れ形成の途中で、あっても新奇刺

激には反応することなどがその証明である。

自然界では危裁から何回逃れても慣れは生じな

いのは,慣れが大脳皮質‘閣の統合決定であるので,

危険に対しては,大IJ自の生得的保護メカニズムが

あって穏の生存を保つからであろう。

II. fqllJり込み(jmprinting)

この特別学習方式について初めて研究したのは,

ローレンツである。鮮イとしたばかり

械毛が乾くとすぐ親に槌う。親が雛に体温,食物,

保護を与える。もし嫌に親がなく,人が養えば人に

|植う G あるいは,生後一番先に闘にした発声できる

動く物体に随う。そして,その記慣を脳のr:tに刻印

する。その後, と遭遇してもイ111間とはみ

なさない。ローレンツは,この生後初期のしっかり

と刻印する現象を「刷り込みj と命名した。彼は脳

り込み学習の胆つの特徴を,次のように提示した。

(1)生後短い時間j内に形成される。 (2)一度刻印され

ると不可逆的である。 (3)成長後の性行動と社会行

動に影響を与える。(4)非銅体性を持つ。

した個人だ、けで、なく,人11号全体に親和性を持つ。

筆者の見方では,掛り込みは,ある一定の「本能

と学習j の結合に過ぎない。ローレンツの例は,

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学:応用動物行動学 (2) 755

平成性 (precocial.生まれてすぐに歩くことができ

る)の烏の「随う本能j と学習の結合である。実訴

には鳥類だけでなく,ヒツジ,ヤキ¥ウシ,スイギニヱ

ウ,シカなどの平成性11市乳動物lこも随う本能が存在

する。ただし, ni4i乳動物では,視覚と聴覚よりもi良

党が重要となっている。母若手には分娩後に子ーを認め

る敏感Wlがある。それは「悶:'r生本能Jと学習の結合

である。そのほか,ハトの雌雄の開の配偶刷り込み

は「求愛本能j と学習,渡り鳥の渡りとサケのi控j上で

の出生地に対する局Ijり込みは「帰巣本能Jと

生動物の宿主に対する昂IJり込みは「食・住本能Jと

の結び付きである。街白いことに同じ小変粉で

{乍った まんじゅうとパンを陪じ場所に置くと,

ロシアではイヌとネズ、ミ

ではまんじゅうを選ぶ。このことは「摂食本能j に

対する脳り込みであろう O

、て,羊WI'の11m乳期間に,もし,

に充分な刷り込みの機会が保読されないほどの過

度な密集の場合,子学の死亡率はおくなる。生後単

独に人工育成された家畜は,将来,常{こ性行部jと向

性行動の失語がf問題となり,極道になれない。そん

な雄犬は発情!ミー犬で、あっても,直ちに鞠み付く。多

分間類と認めていなし、からだろう。

1Il.模倣(jmitation)

多くの動物には続倣する行進iJがある。普通は, Iおj

穏を4見倣するが,ヒノtリ,キュウカンチョウ,オウ

ムなどは他種の音声を模倣することがある。動物は

十変倣によってiliili本が本来できない新しい行動能力

を身に付けるので,模倣は学習のー穏である。

棋倣は主に,ほかの個体の発71fおよ

して自分に作用させるので,観察学習とも呼ぶ。総

倣は, (1)注意> (2)記憶, (3)行動,(4)効果の四つ

の傾序で進む。学習者は,先にある手本を注意して

し,その特徴を弁別し, q{Jた印象を記憶に残し,

党えた行動を表現するG その効果の よって,

以後のその行動の発生頻度が決められる。

幼いますj物が裁から生活技能を模倣で学ぶことは,

|勾食動物と霊長野j物で最も多い。観察学習は,狩Jiit

行進IJの発艇に役立つので,若し、猟犬の訓練は,

に富む老犬につれられて実際の猟に参加する方法

が一呑有効となる。ある新しい飼料を者11平に与える

u刻こ されるo.0J畜を成斎と

放牧すれば有毒捕物の百~1食による1:1:1 らのがれ

られる。鶏群のやにおいては,紅つつき,尻つつき,

羽つつきなどの悪癖があり,その発生係自にはいろ

いろあるが,模倣はこの不良行動の広まりに重姿な

役割を演じているに違いない。

社会性群居動物には,群構成員に|泊うといった模

倣に近似する本能行動がある。例えば,群の中の

一羽が砂浴を始めると,多くのニワトリがそれに|迫

れこれは,群全体行動の同期化現象であり,各俗

体はそこから剖の新しい知識も得られないので,

習ではない。

ほとんどは, it下居llVJ物である。あるWs構成

ある行動をすると,常にほかの権成員の行動を

誘発する。例えば,ヒツジが移動する時には…列に

く,一頭の乳牛が搾乳主に向かつて歩け;丈

ほかの乳牛もそこに集まる。牛舎内での一頭の排尿

多数のウシの排尿を促す。放牧家資の採食,

i吹ノ1(,休憩、,反綿などは,ほとんど閉じ11寺fMJに出現

し,河期化する。中l去の牧羊{こは,に数頭の大胆

なヤギを半に混入させてさ1"-1持活動のリーダーと

るG も一強の老ヤギがヒツジを屠殺安へ

導く。乗馬の場合ヰではためらって進まないが,

若手駒であれば先を今一う O もし>)必いウマを先頭に走

らせると,後ろのウマでは,みな鞭を必要としないQ

IV.潜在学習 CIatentlearning)

とは,111J物はi!ll溺11がなくても,あるWIJi数

ないし場所に対して反rt;;関係が成り立つことであ

る。 例えば,食物をIZfかない迷路の中を数@J歩いた

動物が,その経験のないものより速く迷路を抜け出

るのは, ii会伝学習があったからである。伝i!}J¥I'}の放

鳩訓練は,長距離レースを勝ち取るのに役に立つ。

探査行動は潜在さr:習の表現形式である。動物はい

つも新しい物事;こ対して興味を抱く。聞く奥ぐ,

してその環境の物理特性や相互の空間関係など

を調べる。例えば,食物と水の位躍とか,外敵から逃

げられる安全な場所とかを党える。これらの知識が後

になって役立つことになるので, i品在学習と呼ばれる。

乳牛訴を新しし、正|二舎あるいは運動場に移プ?と,た

まに;築資行動により外れた金属部会12を抵め

込むことがある。筆者は屠殺した淘汰乳牛のルーメン

内から,いろいろな金属部品が発見された。それは

ウシの接触探資の証である。

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756 姦淫の研究第 66巻第7号 (20 1 2年)

第 13節 学習 v.お典的条件付!す (classical

conditioning)

パヴロフは,イヌを使った消化生理の研究におい

て,唾液分泌と無関係の刺激と食物を繰り返して結

合させて与えると,無関係の刺激だけでも唾液分泌

が引き起こされることを発見した。それを「条件反

射Jと名付け,生得の茂射を「無条件反射j として

区分した。また,それぞれの刺激物を条件刺激と無

条件刺激と命名した。彼の解釈では,条件反射の成

立は,大脳の条件刺激に反応する部位(中枢)から無

条件刺激に反応する部位(中枢)の間に,臨時の神経回

路が形成されたためとしている。高等動物の大脳皮

質層がこの連絡路を結ぶ場所である。

図 2-7 大脳の活動をi盛淡の滴数として記録されるパヴロフの災験合

条件茂射の成立には,次の四つの法良せに従う。

(1)近接の法則:条件刺激と無条件料激は,必ず時

期的・空間的に近接でなければならない。条件刺激

が先に,無条件料激が後に,両者が部分的に

り合う j と最高の結巣となる。もし,条件刺激が後

になると,条件反射は成立しない。

(2)繰り返しの法則:条件刺激と無条件刺激の使用

結合間数が多ければ多いほど,その条件反射は確闘

となる。

(3)強化の法則:成立した条件反射は無期限に維持

することはできない。したがって,時々強イヒj

(reinforcement,条件刺激に無条件刺激を共提示する

手続)を必要とする。

(4)妨害の法則:新しい刺激により引き恕こされる

反応は,先の条件反射の発現や消失に対して,妨害

あるいは抑制的に作用する。{列えば,探究反応は一

切の条件反射を暫くの間抑棋する。

条件反射には,また, r般化 generalizationJと「分

化 differentiationJの現象がある。「般化Jとは,あ

る動物が刺激 A に対して条件反射を成立させると

き, Aに近い性質の刺激8に対しでも反応を示すこ

とがある。 A とBの刺激が類似するほど,この反応

は起こりやすい。これは A とBの刺激に反志する

大脳の中枢部位が近いので,刺激により引き起こさ

れる輿審波が拡散した結果である。 f分化j とは,

これとは逆に,動物が類似したニつの刺激に対して

弁別する過程である。もし,刺激Aに条件反射が成

立している動物に, Aのみ強化し,刺激 Bを強化し

ないことを繰り返すと,動物は A とB とを弁別で

きるようになる。すなわち Aだけに皮応し, Bに反

応しなくなる。この持, Aに対する条件反射を「陽

性条件反射J,Bに対する条件反射を「陰性条件反

射j と呼ぶ。

ここで注意すべきことは, B tこ対する不反誌は,

中抱神経系統の反応に「なにもないjわけで、はなく,

B 中寺区に一種の抑制のカ(分化性抑制)が生まれた

からである。すなわち,陰性条件反射は条件刺激に

反応しないだけではなく,その抑制力の拡散によっ

てほかの条件反射をも制止させる作用を持つ。例え

ば「持て」の命令を受けたイヌは,常に f抑制の拡

散J作用で眠くなる。

自然界にも「自然条件反射jがある。例えば,鳥

は一度味の惑い毛虫を食べた後,再び,同じ模様(色

2-8 スキナー絡内の道具操作によって食物(食)を求めるラット

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李:応用動物行動学(2) 757

合いと斑紋)の虫を食べなくなる。

牧場では,乳牛がミルカーのパタパタという運転

音を聞くと放乳の準備をする。給額時,ブタが騒ぐ

ことも,みなパヴロフ式条件付けである。訓練程度

の高いイヌの活気がなくなるのは,大脳中の分化抑

制が多い結巣である。

VI.道具的条件付け(operantconditioning)

オペラント条件付けと前節のパヴロフ(古典的)

条件付けとの違う点は,行動が先に,効果が後とな

る。すなわち,始めの行動の数巣が後の行動の動因

となる。したがって,賞酬あるいは蔀に対する行動

反応には,動物の主体性が含まれている O 例えば

サーカスのウマは,阿よ誌で歩く動作を持って食物報

離を求め,また,スキナー箱(Skinnerbox)中のラッ

トは,偶然,棒に触れて食物を得ると,その後,そ

れを動かして食物を求める。この二つの場合,両足

で歩く,あるいは,棒を動かすという条件性行動は,

ともに,食物報献を獲得する道具あるいは手段とな

るので,オペラント条件付けは「道呉式んあるい

は操作式j 条件付けとも呼ばれる。

オペラント学習では,始めに動物は自発的にいろ

いろな生得的行動を現すH寺に,偶然に,ある訓練者

から有意に,そのいずれかの行動がもし報酬あるいは

罰を得られたならば,その後漢励された動作はます

ます頻繁に発生し,罰された動作は発生しなくなる。

パヴロフ式学習では,刺激が先に行動が後,行塁手j

が刺激の結果であり,耕激に対する反応も定まった

ものに怒られる。動物自身に主体性のない受動的学

習であり,これらによってサーカスに出る動物の技

芸を解釈することはできない。

オペラント学習では,新しい刺激とすで、にあった

反応との連結ではなく,新しい動作とある一つの衝動

(例えば食欲)との連結である。もし,ある動作と鰐動

の結び付きで報酬を受けたとすれば,後にその衝動

がある度毎に,動物は自らその行動を行う O した

がって,動物訓練におけるオペラント式学習は,パヴ

ロフ式よりはるかに優れていることが明らかである。

自然界には,試行錯誤としづ学習現象がある。神経

系統が発達していない下等動物の試行錯誤で、は,無作

為に行動する中での成功と失敗などを指す。例えば,

ゾウリムシの干し通過などであるが,本稿では触れない。

大脳の発達した高等動物の試行室長呉学習は,実にオ

ペラント学翠の初期段階と見なしてもよい。試行室前呉

(trial and error)とし、う言葉は,モーガン(c.L. Morgan)

が 1894年に提出し,実験心理学の創始者ソーンダイ

ク(し Thomdike)により 1898年に採用された。

試行錯誤の学習方式は,動物が問題に直面する時,

様々な「行為(acts)Jを出した結果,正しい結果を得

るまで試行することによる。家畜が飲水器で、水を飲め

ること,電気牧櫛を避けられることなどは,みな偶然

の成功と失致から学んだことである。役畜の悪癖も,

試行錯誤の中で偶然に形成されたことであろう O

VII.洞察(insightlearning)

j肉祭は学習の最高形式である。指察とは,動物が

二つ以上の独立経験を合わせて,一つの新しい経験

を造る能力である。

動物の問題を解決する速度が試行錯誤よりはる

かに速い時,われわれは,そこに桐察があると誤認

しやすい。動物にはその前に試行錯誤の経験や,潜

在学習があるのかもしれない。高等霊長動物は,ま

れにある稜度の洞察能力を表す。木箱と生存を使って

高所に吊るしたバナナを取ることが,チンパンジー

の洞察である。

洞察は知力の現れであり,知力は動物が行llVJを組

み合わせる能力と見なされる。知力は生まれ付きで

はなく,学習によって未経験の外界変化に対して行

う偶然でない適切な行動で、ある。例えば, U字形に

囲われた金綿の前に置かれた食物を得るために,動

物は,由り道を迂回しなければ得られない。この問

題を解決するには,霊長類は一自の試行で足りる。

肉食類は数聞の試行錯誤の後にできるが,有時類に

とっては難しい。鳥類では全く不可能で、ある。

潟 e

警察 :

矧 2-9 進化における動物の行動的適応方式

Page 14: 応用動物行動学(2) · 応用動物行動学(2) 誌名 畜産の研究 = Animal-husbandry ISSN 00093874 巻/号 667 掲載ページ p. 746-758 発行年月 2012年7月 農林水産省

758 議~iliミの研究 第 66芸会 資n号 (2012{ド)

われわれは,家資のやで一番賢いのはイヌ,次に

ブタ,ヤギとウマのように認めているが,実にそれら

の知力の発達程度についての研究は乏しい。けれど

も,霊長類〉肉食類〉京食類の)1院であろうことは知られ

ている。

家斎管王盟国では,様々な設備と施設の設計におい

て,家畜の行動能力と学習能力を考慮しなければな

らない。養豚玉医デンマークの種競後代能力検定

センターの豚舎において,前柵を内額鮮式にしてい

る組出は,ブタに後退してから立ち上がる知恵がな

し、からである。養豚農家では,広く電気牧線の下に

水の板を設ける方法で,上からの飛び越えと下から

の突進を紡ぐことにしている。

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