「クォンツの現場より...

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「クォンツの現場より: 年金資産運用を中心として」 一橋大学 経済学部 「金融工学概論」 特別講義 2010111住友信託銀行 インデックス・クォンツ運用部 運用執行役 クォンツグループ長 矢野

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Page 1: 「クォンツの現場より 年金資産運用を中心として」「クォンツの現場より: 年金資産運用を中心として」 一橋大学経済学部「金融工学概論」特別講義

「クォンツの現場より: 年金資産運用を中心として」

一橋大学 経済学部 「金融工学概論」 特別講義

2010年11月1日住友信託銀行

インデックス・クォンツ運用部

運用執行役 クォンツグループ長

矢 野 学

Page 2: 「クォンツの現場より 年金資産運用を中心として」「クォンツの現場より: 年金資産運用を中心として」 一橋大学経済学部「金融工学概論」特別講義

本日の内容

1. 資産運用ビジネスとクォンツリサーチ

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

3. クォンツ業務の実際

2010/11/1 2© [email protected]

Page 3: 「クォンツの現場より 年金資産運用を中心として」「クォンツの現場より: 年金資産運用を中心として」 一橋大学経済学部「金融工学概論」特別講義

1. 資産運用ビジネスとクォンツリサーチ

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2010/11/1 4

rクォンツとは ?

インターネットで検索すると…• “クオンツとは、高度な数学的手法を使って、市場を分析したり、投資戦略や金融商品を考案・開発する専門家。

• 1980年代のアメリカでは、ロケット工学者がその手法を使って市場分析や金融商品開発をすることが盛んになり始めた。デリバティブの市場や取引が拡大し、コンピュータの能力も高まり続ける傾向の中で、今後ますますクオンツの役割は大きくなると考えられる・・・“ (All About マネー より)

関連書籍

• 『物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進』, エマニュエル・ダーマン著, 森谷博之・長坂 陽子, 船見侑生訳, 東洋経済新報社 (2005).

• 『金融工学者フィッシャー・ブラック』 , ペリー・メーリング著, 今野浩・村井章子訳, 日経BP社 (2006).

• 『アルファを求める男たち――金融理論を投資戦略に進化させた17人の物語』, ピーター・バーンスタイン著, 山口 勝業訳, 東洋経済新報社 (2009). など

© [email protected]

1. 資産運用ビジネスとクォンツリサーチ

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2010/11/1 5

1. 資産運用ビジネスとクォンツリサーチ

投資家

個人

事業法人

金融機関

海外投資家

年金 など

資産運用会社

投資信託/投資顧問

生命保険会社

信託銀行

(Buy side)

投資家(お客様)から預かった財産を投資目的に沿って運用

運用成果は投資家に帰属

投資家から運用残高(または運用成果)の一定割合を運用報酬として受領

金融/証券市場

証券会社

銀行 など

(Sell side)

資産運用会社から発注(委託注文)を受けて、証券などを売買

⇒ ブローカー業務

運用成果は資産運用会社に帰属

資産運用会社から売買手数料を受領

© [email protected]

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2010/11/1 6

高い運用成果によって運用残高を増やすこと

運用成果を高めるためにはクォリティの高いリサーチによる情報と投資判断スキルが必要

⇒ (Buy side アナリスト) ストラテジスト、企業アナリスト、クレジットアナリスト、クォンツアナリスト など

Buy side (資産運用会社) にとって運用報酬を高めるためには…

売買発注を増やす、商品開発による多様な投資手段を提供する など

Buy side の投資行動を促す情報配信・魅力的な商品開発にはクォリティの高いリサーチが不可欠

⇒ (Sell side アナリスト) ストラテジスト、企業アナリスト、クレジットアナリスト、クォンツアナリスト など

Sell side (証券会社/銀行) にとって手数料収入を高めるためには…

1. 資産運用ビジネスとクォンツリサーチ

© [email protected]

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2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

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経営学 情報システム など確率論

計量経済学

統計学数理計画法数学

マクロ経済学

会計学

ミクロ経済学

数理ファイナンス

金融経済学

2010/11/1 8© [email protected]

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

ファイナンス理論

投資理論 (investment) 企業金融 (corporate finance)

資産価格論 (asset pricing)Capital Asset Pricing Model

Arbitrage Pricing Theory など

派生証券論 (derivatives)Black-Scholes Model など

企業価値評価MM理論

(資本構成、資本コスト、配当政策)M&A

エージェンシー理論コーポレート・ガバナンス など

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2010/11/1 9© [email protected]

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

資本資産評価モデル ( CAPM: Capital Asset Pricing Model )⇒ 均衡状態におけるリスク資産の価格決定モデル

[ ] [ ]

2,

~~

M

Mii

ifMfi rrErrE

ss

b

b

=

´-+= 期待リターン

リスク(β)

0

fr

M

SML

効率的市場では、任意のリスク資産 i の期待リターン は、

マーケットポートフォリオ M の期待リターン と線形関係

⇒ すべてのリスク資産は、SML上の点として表現

[ ]irE ~

[ ]MrE ~

1

代表的な投資理論

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2010/11/1 10© [email protected]

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

期待リターン

リスク(σ)

0

fr

M

CML

資本資産評価モデル ( CAPM: Capital Asset Pricing Model )⇒ 均衡状態におけるリスク資産の価格決定モデル

すべての投資家はマーケットポートフォリオと無リスク資産を組み合わせたポートフォリオを保有

⇒ 効率的市場では、マーケットポートフォリオがリターン/リスク特性上で最も効率的なポートフォリオ

代表的な投資理論

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2010/11/1 11

Weak Form

•過去の情報はすべて証券価格に織り込まれている、とする考え方。テクニカル分析によって将来の価格は予測できない

Semi-Strong Form

•過去の情報のみならず、あらゆる公開情報がすでに証券価格に織り込まれている、とする考え方。公開された企業業績予想などを用いても将来の価格は予測できない

Strong Form

•公開情報のみならず、非公開情報を含めたあらゆる情報がすべて価格に織り込まれている、とする考え方。インサイダー情報を用いても将来の価格は予測できない

実際の市場効率性の程度は ?

© [email protected]

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

市場効率性の概念

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2010/11/1 12

パッシブ運用市場ポートフォリオ ( ベンチマーク ) と同等のパフォーマンスを追求する運用形態

「効率的市場仮説 ( Efficient Market Hypothesis ) 」証券価格はすべての情報を瞬時に反映したものであり、将来の価格を現在の情報で予測することが不可能であるとする考え方

アクティブ運用市場ポートフォリオ ( ベンチマーク ) を超過するパフォーマンスを追求する運用形態

「テクニカル分析」

株価チャートなどから証券価格変動のパターンを見出し、将来の価格動向を予測しようとするアプローチ

「ファンダメンタル分析」

証券価格は、個々の企業の情報 ( 収益の予想など ) や マクロ経済変数の動きなどのファンダメンタルな情報を織り込んで形成されるため、本質的な価値の予測に主眼を置くアプローチ

© [email protected]

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

パッシブ運用とアクティブ運用

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2010/11/1 13

0

200

400

600

800

1,000

1,200

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03

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2000

03

2002

03

2004

03

2006

03

2008

03

兆円

家計合計 現金・預金

出所: 日本銀行 「資金循環統計」

© [email protected]

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

主な資産運用マーケット (ex. 家計資産残高の推移)

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0

50

100

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200

250

300

1980

03

1982

03

1984

03

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03

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03

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1994

03

1996

03

1998

03

2000

03

2002

03

2004

03

2006

03

2008

03

兆円

その他 企業年金 共済保険 年金基金

出所: 日本銀行 「資金循環統計」

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2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

主な資産運用マーケット (ex. 年金資産残高の推移)

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2010/11/1 15

• TOPIX (配当込み)国内株式

• NOMURA BPI (総合)国内債券

• MSCI KOKUSAI (ex. JP Gross 円ベース)外国株式

• CITI Group 世界国債 INDEX (ex. JP 円ベース)外国債券

投資対象資産 代表的なベンチマーク ( マーケット・ポートフォリオの代替 )

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2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

機関投資家運用の投資対象資産

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0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000 19

85/0

1

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/01

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/01

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/01

2002

/01

2003

/01

2004

/01

2005

/01

2006

/01

2007

/01

2008

/01

© [email protected]

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

(ex.) TOPIX指数の推移

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-20

-15

-10

-5

0

5

10

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20 19

85/0

1

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/01

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1989

/01

1990

/01

1991

/01

1992

/01

1993

/01

1994

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1995

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1996

/01

1997

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1998

/01

1999

/01

2000

/01

2001

/01

2002

/01

2003

/01

2004

/01

2005

/01

2006

/01

2007

/01

2008

/01

(%)

© [email protected]

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

(ex.) TOPIX収益率の推移

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「投資哲学」

• 超過収益※の存在

「運用プロセス」

• 超過収益を獲得するための道筋

「組織形態」

• スター・ファンドマネージャー vs. チーム運用

「経営母体」

• 独立系 vs. 大手資本傘下

「運用スタイル」

• 定量判断 ( モデル・ドリブン ) vs. 定性判断 ( ジャッジメンタル )

「プロダクトラインアップ」

• ブティック型 vs. マルチ・プロダクト型※超過収益: 市場ポートフォリオ(ベンチマーク) を超過するリターン

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様々な運用形態 (類型化の例)

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

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2010/11/1 19

•計量的アプローチにより、企業の適正価値を算出

•⇒ 企業価値を定量的に評価

•市場の要素を評価、ポートフォリオの観点からの情報を考慮

•⇒ 売買の必要性を検討

•金利や為替、景気動向などのマクロ分析

•⇒ 経済情勢を定量的・定性的に分析

•個別企業の 当期・数期先の収益予想、経営戦略・マーケティングの分析、開発・研究・設備投資の予想・分析など

•⇒ 企業価値を定量定性的に評価

© [email protected]

アクティブ運用の組織形態 (例)

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

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2010/11/1 20

Quants: Quantitative Analyst(s)⇒ 定量分析手法を利用して、

① 超過収益を獲得し得るようなストラテジーの構築 (投資判断モデル・ツールの開発)

② クォンツプロダクトの開発・運営・改良

③ 定量分析・リサーチ機能

[ 特徴 ]ü国内外や資産を問わず、膨大かつ多種多様な定量情報の解析が可能

ü定性判断を排除し、定量基準のみを用いることで、特定の相場環境や俗人的なセンチメントに

左右されない頑健性・再現性の高い一貫した運用プロセスを実現可能

ü期待する超過収益源泉や負担するリスクの関係を定量的に把握し、ストラテジーを明確に定式化

した計量モデルによって的確にコントロールすることで、投資判断に伴う曖昧さを一切排除 など

© [email protected]

Buy side のクォンツに対する役割期待

2. ファイナンス理論と機関投資家の資産運用

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3. クォンツ業務の実際

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2010/11/1 22© [email protected]

3. クォンツ業務の実際

クォンツの株式アクティブ運用を例として

r株式アクティブポートフォリオの構築例

① 超過収益源泉 (アルファ源泉)

⇒ 市場ポートフォリオを上回るリターンを獲得するための情報 = アルファ情報

② 超過収益源泉をもとにしたポートフォリオ構築

⇒ アルファ情報を効率的にポートフォリオのポジションへ反映

⇒ 同時に、意図しないリスク (アルファ情報を反映させることによって偏ってしまうリスク) の排除

③ コストをコントロール

⇒ さらに、無駄な売買/コストを抑制

効率的なリターン/リスク特性の達成

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2010/11/1 23© [email protected]

3. クォンツ業務の実際

① 超過収益源泉の例 (株式価値の理論と実際)

r理論が前提とする仮定

⇒ 完全市場、効率的市場

r実際の市場

⇒ 税金の存在、倒産の可能性、情報の非対称性(企業経営者と投資家)、エージェンシー問題、

取引規制、流動性制約、情報の伝達速度など、理論が前提とする仮定が必ずしも成立していない

⇒ どのような仮定を前提として適正な企業価値(株価)を算出するかは、投資家によって異なる

(税金・倒産の存在を考慮、情報の非対称性・エージェンシーコストを考慮、取引規制・流動性の考慮など)

⇒ 様々な投資家が市場に参加し、株価を形成 ⇒ 完全市場・効率的市場を前提とした理論値からは乖離

(現実の問題をすべて考慮した理論値を算出するのは不可能)⇒ 資産価格理論では説明できないアノマリーが存在

rバリュエーション指標

企業の資本や資産・収益などと株価の関係を指標化したもの

⇒ 投資家がどのような前提を用いて適正な価値を算出しているか、情報がどの程度価値に反映

されているかを把握

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2010/11/1 24© [email protected]

3. クォンツ業務の実際

様々なバリュエーション指標

r株価純資産倍率 (PBR: Price Book value Ratio)

r株価収益率 (PER: Price Earnings Ratio)

r株価キャッシュフロー倍率 (PCFR: Price Cash Flow Ratio)

r EBITDA 倍率 (EBITDA: Earnings Before Interest, Tax, Depreciation and Amortization)

r DCF (Discount Cash Flow)

r EVA (Economic Value Added)

BPPBR

株主資本

株式時価総額=

EPPER

利益

株式時価総額=

減価償却費税引後利益キャッシュフロー

株式時価総額+== CF

CFPPCFR ,

EBITDAEVEBITDA 企業価値

倍率 =

フローの割引現在価値将来フリーキャッシュ

の割引現在価値将来の現在の投下資本 EVA+

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2010/11/1 25© [email protected]

バリュエーション指標による銘柄選択

r PBR や PER、PCFRが高い銘柄 ⇔ 割高銘柄

PBR や PER、PCFRが低い銘柄⇔ 割安銘柄

⇒ バリュエーション指標の各数値の高低によって、その後の株式リターンに差異が出るかどうかを検証

r分析内容

・ 分析対象: 東京証券取引所第1部上場銘柄

・ 分析期間: 1993年7月末~2010年8月末

・ 分析方法:① 分析対象銘柄について、毎月末の PBR、PER、PCFRを算出

② 各指標の低い順から、業種分類毎に5つにグループ分け ( 第1分位[割安] から 第5分位[割高] )③ 全業種の各分位をマージ

⑤ 各指標の各分位について、翌月のリターンを計測

⑥ 全期間の分析データを集計

3. クォンツ業務の実際

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2010/11/1 26© [email protected]

3. クォンツ業務の実際

r PBR による分析の結果

各分位ポートフォリオの累積リターン 第1分位-第5分位の累積リターン

バリュエーション指標による銘柄選択

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

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1993

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0919

9504

1995

1119

9606

1997

0119

9708

1998

0319

9810

1999

0519

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2000

0720

0102

2001

0920

0204

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1120

0306

2004

0120

0408

2005

0320

0510

2006

0520

0612

2007

0720

0802

2008

0920

0904

2009

1120

1006

1-分位-5分位

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

1993

0719

9402

1994

0919

9504

1995

1119

9606

1997

0119

9708

1998

0319

9810

1999

0519

9912

2000

0720

0102

2001

0920

0204

2002

1120

0306

2004

0120

0408

2005

0320

0510

2006

0520

0612

2007

0720

0802

2008

0920

0904

2009

1120

1006

1分位 2分位 3分位 4分位 5分位

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2010/11/1 27© [email protected]

3. クォンツ業務の実際

r PER による分析の結果

各分位ポートフォリオの累積リターン 第1分位-第5分位の累積リターン

バリュエーション指標による銘柄選択

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

1993

0719

9402

1994

0919

9504

1995

1119

9606

1997

0119

9708

1998

0319

9810

1999

0519

9912

2000

0720

0102

2001

0920

0204

2002

1120

0306

2004

0120

0408

2005

0320

0510

2006

0520

0612

2007

0720

0802

2008

0920

0904

2009

1120

1006

1分位 2分位 3分位 4分位 5分位

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1993

0719

9402

1994

0919

9504

1995

1119

9606

1997

0119

9708

1998

0319

9810

1999

0519

9912

2000

0720

0102

2001

0920

0204

2002

1120

0306

2004

0120

0408

2005

0320

0510

2006

0520

0612

2007

0720

0802

2008

0920

0904

2009

1120

1006

1-分位-5分位

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2010/11/1 28© [email protected]

3. クォンツ業務の実際

r PCFR による分析の結果

各分位ポートフォリオの累積リターン 第1分位-第5分位の累積リターン

バリュエーション指標による銘柄選択

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

1993

0719

9402

1994

0919

9504

1995

1119

9606

1997

0119

9708

1998

0319

9810

1999

0519

9912

2000

0720

0102

2001

0920

0204

2002

1120

0306

2004

0120

0408

2005

0320

0510

2006

0520

0612

2007

0720

0802

2008

0920

0904

2009

1120

1006

1分位 2分位 3分位 4分位 5分位

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1993

0719

9402

1994

0919

9504

1995

1119

9606

1997

0119

9708

1998

0319

9810

1999

0519

9912

2000

0720

0102

2001

0920

0204

2002

1120

0306

2004

0120

0408

2005

0320

0510

2006

0520

0612

2007

0720

0802

2008

0920

0904

2009

1120

1006

1-分位-5分位

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3. クォンツ業務の実際

r過去の検証からは、バリュエーション指標の各数値の高低によって、その後の株式リターンには差異が存在

⇒ 割高な銘柄や割安な銘柄は、その後株価が修正される傾向

⇒ 株価が過剰に高くなったり低くなったりする理由はさまざま

(ex.)新たな情報に対する投資家の過剰(過小)反応、過少な流動性、情報の不十分な伝達、需給要因など

割高な銘柄を売却し、割安な銘柄を購入するという投資戦略で、超過収益が獲得できる可能性

バリュエーション指標による銘柄選択

適正水準

割安

割高

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3. クォンツ業務の実際

② リスクモデルによるポートフォリオのリスク推定

CAPM はマーケットポートフォリオという単一のファクターで任意のリスク証券の期待リターンを記述

⇒ CAPM では説明できない様々なアノマリーの存在が指摘

r裁定価格理論: Arbitrage Pricing Theory, APT

⇒ マーケットポートフォリオだけでなく、すべてのリスク証券に共通な複数の要因 (ファクター) で

期待リターンを記述 ・・・ マルチファクターモデルとしてリスク推定に活用

[ ] [ ] ifMfi rrErrE b´-+= ~~

[ ] [ ] [ ] [ ] ifLLifififi erFEbrFEbrFEbrrE ~~~~~,22,11, +-++-+-+= K

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3. クォンツ業務の実際

マルチファクターモデルを活用したリスクモデル

r株式のリスクを説明する要因は ?

r株式のリスクを複数のファクターによって把握=マルチファクターモデルを利用

r投資家にとって直感的に理解しやすいファクターを利用

rあらかじめ複数のリスクファクターを決定した「構造先決型」モデル

rファクター数を限定することでリスク推計のためのパラメータ量を節約可能

(ex.) ファクターの例

ボラティリティ、企業規模、モメンタム、売買活況度、株価相対企業価値、金利感応度、企業成長度、

財務レバレッジ、海外経済感応度…など

業種(水産・農林業、鉱業、建設業、食品、繊維製品、パルプ・紙、化学、医薬品、石油・石炭製品…)など

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3. クォンツ業務の実際

リスク推計方法

X : コモンファクターのエクスポージャーマトリックス

F : ファクターの分散共分散マトリックス (ファクター数 k )S : スペシフィックの分散共分散マトリックス

hp : ポートフォリオの証券組み入れ保有比率ベクトル (銘柄数 n )

[ ] ( )

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K

K

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K

K

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K

K

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1

1

1

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1

111

1

111

1

0

0

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3. クォンツ業務の実際

リスク分解

r得られたリスクを分解し、各ファクターごとのリスク寄与度を把握し、リスク管理を行う

ポートフォリオのトータルリターン・リスク

ベンチマーク アクティブ (TE) ノーマル・アクティブ共分散

スペシフィックコモンファクター

リスクファクター インダストリー

アクティブコモン アクティブスペシフィック

アクティブリスクファクター

アクティブインダストリー

ベンチマークで説明できるリスク ベンチマークで説明できないリスク

(個別銘柄要因)

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3. クォンツ業務の実際

③ リスクモデルを活用したポートフォリオ構築

① ポートフォリオのリスク分析

ポートフォリオのリスク状況の把握 (ファクターや業種・個別銘柄要因で、どの程度のリスクをとっているか)

② ポートフォリオの構築 (最適化)目的関数を最大化するポートフォリオを最適化計算によって構築

α : 期待アクティブリターン

TE : トラッキングエラー(アクティブリスク)TC : 取引コスト

λ : アクティブリスク拒否度

Penalty : 制約を満たさない場合のペナルティー

意図しないリスクをコントロールし、無駄な取引コストを排除した効率的なポートフォリオ構築を実現

PenaltyTCTEUU

---= 2

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2010年10月現在

インデックス・クォンツ運用部

コンプライアンス・モニタリング受託監理部

受託資産企画部

債券運用部

株式運用部

総合戦略運用部

受託資産運用部

事業企画、商品企画投資マネージシステム企画・開発

国内外債券アクティブ運用、短期金融資産運用信用リスク調査・分析

国内外株式アクティブ運用国内企業調査・分析

アセットアロケーション戦略の策定オルタナティブ運用・商品開発トレーディング

公的資金・共済・非営利顧客との運用協議、運用のご説明ポートフォリオ管理・リスクモニタリング、運用コンサルティング海外受託の推進

国内外株式・債券パッシブ運用クォンツアクティブ運用計量分析、運用手法の開発、計量投資理論の調査・研究

年金運用部企業年金顧客との運用協議、運用のご説明ポートフォリオ管理・リスクモニタリング、運用コンサルティング

受託業務推進部金融法人・リテール顧客への運用営業及び営業推進

有価証券約定事務、フロントシステムへの共通データ入力・管理・開発顧客ディスクロ資料作成、情報プロセシングサービス

運用サービス部

投資マネージ事業

© [email protected]

3. クォンツ業務の実際

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プロダクトアラインアップ

3. クォンツ業務の実際

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3. クォンツ業務の実際

クォンツ・プロダクトの開発・運営・改良

部門内共通基盤

継続的なリサーチ活動

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