url ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...url rights...

17
Hokkaido University of Education Title �(2) : Author(s) �, �; �, Citation �. �, 65(2): 359-374 Issue Date 2015-02 URL http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7678 Rights

Upload: hoangque

Post on 25-May-2018

226 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

Hokkaido University of Education

Title単学級の学級担任が抱える困難と課題(2) : 単学級担任経験者への事後

調査を通して

Author(s) 深見, 智一; 津田, 順二

Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 65(2): 359-374

Issue Date 2015-02

URL http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7678

Rights

Page 2: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号Journal of Hokkaido University of Education (Education) Vol. 65, NO.2

平成 27年 2月February, 2015

単学級の学級担任が抱える困難と課題(2)

単学級担任経験者への事後調査を通して

深見智一*・津田順二料

*北海道鶴居村立幌呂小学校

**北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻

Challenges and issues of the Homeroom teacher with one class per Grade (2)

Through the investigation of an experienced Teacher with One class per Grade

FUKAMI Tomokazu* and TSUDA ]unji**

* Hokkaido Tsurui Hororo Elernentary School

**Hokkaido University of Education Advanced Teacher Professional Developrnent Prograrn

概要

北海道東部地域の公立X小学校で単学級担任を経験した教員への調査をもとに,単学級担任

の学級経営を支援する効果的な事例を検討する。異動後に振り返ったX小学校での教育実践上

の困難や異動後も単学級担任の経験が役に立っているかについて調査した。その結果,単学級

担任を支援する取り組みとして, 1学年につき複数の学級がある学校のように,定例的な学年

打ち合わせがなくても,職場の中での教員相互の「つながり」によって,若手教員でも自信を

もって学級経営を行っていくことができることが明らかになった。また,その背後には,教員

一人一人が白校の状況を客観的に分析できていることや校長をはじめとする管理職のリーダー

シップが重要であることも明らかになった。

はじめに

回全体の少子化の進行に伴い,学校の小規模化

がすでに進行し始めている。貞賢(2010)によれば,

統廃合などの適正配置が行われない場合, 2035年

には全国で単学級の小学校が標準となるダウンサ

イジングが予想されている 1

郡部の学校が多い北海道では,かねてから小規

模校の比率が高い傾向にあったが,近年,中心市

街地の人口減少が進む都市部においても学校の小

規模化が進行している。加えて,地域特有の課題

として,北海道東部地域では,複式学級になるほ

ど児童数は減少しないものの,複数学級になるほ

どの増加も見込まれない単学級の小学校が多い。

359

Page 3: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

深見智一・津田順二

なおかつ,距離的な制約があることから,統廃合

で「適正」な学校・学級規模を維持することはそ

もそも難しく,単学級の小学校は今後も一定の割

合で存続し続けなければならない状況にある 110

そこで,単学級担任の現状と課題について明らか

にするために,筆者が行った北海道東部地域の小

学校の単学級担任への調査[調査 1, 2012年7月]

から,現状と課題について次のような結果が得ら

れたIII (深見2013)。

単学級担任として困難に感じることで多く挙げ

られたのは,「学校行事への取り組みJJ ~学年打ち

合わせなど学級について相談する場がないこと」

『授業の準備」であった。特に,仕事量の多さに

関して,単学級担任の負担の大きさが明らかに

なった。一方,やりやすさを感じることについて

は,「学習の進度(進度の調整,時間割の作成)JJ '授

業の進め方(導入から展開・まとめまでの流れ,

発問や指示など)J'学級(学年)通信の作成」が

挙げられた。

また,単学級担任の抱える困難について,若手

と中堅・ベテラン教員の意識の差があることも明

らかになった。例えば,教職経験年数 1-10年日

の教員の51.4%の教員が『学年打ち合わせなど

学級について相談する場がないこと』を困難なこ

ととして選択している。それに対して,中堅・ベ

テランでは36.2%の選択に留まっていた O 逆に,

学年打ち合わせがないことを楽だと感じている教

員が若手の 2倍となっていたO 自分の望む学級経

営ができると考える中堅・ベテランと相談相手が

いなくて困っている若手の意識の差が見られる学

校もあった。また,複数学級が中心となる小学校

の中での単学級担任は,相談する場がないことを

特に強く感じていることも明らかになった。

学校課題に対してチームで対応することが一層

求められている今日,個業化が進むことは望まし

いことではない。むしろ,人的な制約がある学校

でも,管理職や先輩教員が若手をフォローアップ

し,相互に協力し合う校内体制作りが求められて

いる。しかし,どのような校内での取り組みが効

果的であるかは詳しく検討することができなかっ

360

た。

本研究では,先行調査となった調査 1に基づき,

単学級担任の学級経営を支援する効果的な事例を

検討していく中で,回答傾向が他校と異なったX

小学校に着目する。 x小学校は,「学年打ち合わ

せなど学級について相談する場がないこと」を選

択した教員の割合が他校に比べて低かった。むし

ろ,教員相互の多様な「つながり」があることで,

若手教員であっても十分に学級経営をうまく行っ

ていくことができ,結果的に学級担任としての力

量もある程度備わった(備わってきている)とい

う満足感につながっていた。

そこで, X小学校に勤務し,単学級担任を経験

した教員に協力を依頼し,異動後に振り返ったX

小学校での取り組みや「現任校で勤務する中で,

X小学校における普通学級担任の経験が役に立っ

たと感じるか」について調査を行った。[調査2,

2013年3月.......2014年3月]この調査結果をもとに,

単学級担任を支援する取り組みとして,どのよう

な効果的な事例があるのかを検討する。

2 研究の概要

(1) 調査方法

本調査では,北海道釧路教育局管内の公立X小

学校に2008(平成18)年度から2014(平成25)年

度に勤務したことのある教員で,普通学級担任の

経験がある教員を対象に行った。 x小学校を抽出

したのは,調査 1で回答傾向が他校と異なり,な

おかつ,事前の予備調査から,単学級担任経験者

を過去数年間にさかのぼって追跡することが可能

と判断したからである。対象者は19人で,そのう

ち16人の協力を得ることができた。主に,無記名

の質問紙法で、調査を行った。加えて,記名を頂き,

追加の調査に承諾頂いた教員には,質問紙法での

回答についてさらに詳細を調査することにした。

調査の時期は,2013年3月から2014年3月である。

質問紙法は調査 1で実施した内容に,「X小学

校在任中に」という文言を必要に応じて追加した。

選択式を中心に,一部記述部分も取り入れた。

Page 4: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

単学級の学級担任が抱える困難と課題121

なお,調査をする時期の前後には,教育行政の

施策として,初任者研修から初任段階を通じた継

続的な研修への移行,都市部と単学級・複式学級

が多くある郡部聞の異動促進,教職員構成の適正

化を重視した広域人事の推進,全道的・長期的展

望に立った人事異動が北海道教育委員会によって

実施もしくは段階的に実施される予定となってい

た。これらの施策は,単学級担任の学級経営に一

定程度貢献すると思われるが,単学級担任を支援

する目的が中心となってはいないことに留意する

必要がある。

(2) 回答者に関わる基礎データ (x小学校着任

時)

①回答者の人数

調査対象者:19名,回答者:16名(回収率

84.2%)

②X小学校着任時の年齢,教職経験年数

調査 2の回答者のX小学校着任時の年齢は,

21-25歳, 26-30歳の割合が高い。(表 1)

表1 調査2回答者の年齢 (x小学校着任時) n =16

年齢 21~25 26~30 31~35 36~40 41~50 51~60 合計

人数 5 6 2 2 1 16

31.3% 37.5% 12.5% 12.5% 6.3%

なお, x小学校は,へき地に所在する小学校で

ある。一般的に,北海道東部地域においては, 4

~7 年が異動基準年数となっており,へき地に所

在する学校ほど勤続年数が短くなる傾向にある o

x小学校も例外ではなく,教員のおよそ 3分の l

が毎年入れ替わることになる。その際,年度によっ

て多少異なるものの,基準年数に達した教員の後

任として新採用教員が着任することが多いので,

平均年齢が低くなる傾向にある。

表2 調査2回答者の教職経験年数 (x小学校着任時) n =16

年齢 1-5 6-10 11-15 16-20 21-30 31 合計

人数 1 0 2 1 2 0 1 16

62.5% 12.5% 6.3% 12.5% 6.3%

X小学校が初任校であった教員は, 1-5年目に

着任した10名の教員のうち, 8名(50.0%)であっ

た(表2)0x小学校が2校目である教員を含め,

5年目以下の教職経験年数で着任した教員は,全

体の 6割(62.5%)である。年齢と関連して, X小

学校着任時の教職経験年数の平均が低い(平均

7.56年)ことも, X小学校の特徴の一つであり,

X小学校が,とりわけ若い教員が多く着任する学

校の一つであることを裏付けている。なお,管理

職は校長・教頭ともに 2校目以降の異動で着任す

る例が多く,前任校はX小学校の規模よりも小さ

いことが多い。

(3) 質問項目

設聞を 9問とし,選択式及び百己述式(一部)で

回答を求めた。

(1)単学級の担任をしていて,学級担任が一人し

かいないために困難に感じたこと

(2)単学級の担任をしていて,学級担任が一人し

かいないために楽に感じたこと

(3)学級経営で困ったことを相談した相手

(4)現任校で勤務する中で, x小学校における普

通学級担任の経験が役に立ったと感じるか

(5)現任校で勤務する中で, x小学校における普

通学級担任の経験がハンデになった・物足り

なかったと感じるか

(6)学級担任の負担を減らすために, X小学校に

おいて,どのような取り組みがあれば良かっ

たか

(7) 1ヶ月あたり,先生ご自身が購入される(さ

れた)教育関係図書の平均的な購入費につい

て, X小学校在任時と現在との比較

(8)先生ご自身が教育実践の指針やモデルと捉え

る(捉えていた)教育研究者や教育実践家に

ついて, X小学校在任時と現在との比較

(9)学校の校内研修や教育委員会などが主催する

公的な研修以外の自主的(インフォーマル)

な研修で,先生ご自身が行っていた(行って

いる)ものについて, X小学校在任時と現在

との比較

361

Page 5: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

深見智一・津田順二

3 結果

(1) 学級担任として困難に感じることについて

(表 3)

①『学校行事への取り組み』について

困難なものとして,最も回答数が多かったのは,

「学校行事への取り組み」であった。これは,調

査 1と同じ傾向であった。ただ,教職員の構成(年

齢,教職経験年数,前任校の規模),地域性,児

童や保護者の実態などの諸条件が異なるために,

調査 1と調査2を単純に比較することはできない

ことに留意する必要がある。この点を踏まえて,

記述やインタビ、ユーによる調査を吟味し,困難に

感じた要素を「複数学級であれば解消できそうな

問題」と「教師個人の能力・経験の問題」の 2つ

に大別した。

へき地校で学校の教育活動と地域の行事等との

関わりが密接であることに関して負担を感じてい

るかどうかは,今回の調査では,記述・インタ

ビュー共に見られなかった。

なお, X小学校においては,学校改善計画の中

で,行事の見直しが毎年行われており,時数の削

減や内容の見直しについて定期的に検討がなされ

ていた。また,学級活動を除くクラブ活動,児童

会行事,学校行事の総計は, X小学校は82時間(平

成23年度)と全国的な平均と大きな差は見られな

かった lV

ただ,授業の準備以上に,学校行事への負担感

が多く選択されていることは,望ましい状況であ

るとは言えない。限られた年間授業日数の中で,

単学級担任の放課後の時間が学校行事への準備に

多く当てられる現状は,担任が十分な教材研究の

時聞が確保できないことや,各教科や領域の専門

性が向上しないことにつながる可能性もある。ま

た,児童の学習の質の保障を考えると,単元の学

習が断続的になること,授業中の集中力が低下す

表3 単学級担任として困難に感じたこと(教職経験年数別) n =15

教職経験年数 6-10 若年層 11-15 16-20 21-25 26以上中堅ベテラン 全体

回答者数日=10 日=2 日=12 日=2 n = 4 n = 16

いずれにもあてはまらない 2 2

100% 100% 50.0% 12.5%

授業の準韓(教絵研究F 教具・ブワントの準舗など) 5 7 7

60.0% 50.0% 58.3% 43.89も

投棄の進め方(援業の誼札発問や指示など) 4 4 4

40.0% 33.3% 25.0%

空き韓関や交換授業ができない 2 3

10.0% 50.0% 16.7% 50.0% 25.0% 18.8%

学習の進度(進度調整,待問割の作成) 4 4 5

40.0% 33.3% 50.0% 31.3%

学技fi事の準嬬や進め方 寺 2 11 12

90.0% 100% 91.7% 50.0% 25.0% 75.0%

生徒指導上の問題への対応 2 3 3

20.0% 50.0% 33.3% 18.8%

保護者への対応(苦情相談など) 1

50.0% 8.39も 6.25%

学級懇談会,個人面談などの準構や進め方

学級通信の作成

学年打ち合わせなど学級について相談する場がないこと ワ】 2 2 4

20.0% 16.7% 100% 25.0% 25.0%

そのほか

50.0% 6.25%

362

Page 6: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

単学級の学級担任が抱える困難と課題121

表4 行事に関する単学級担任が抱える問題

複数学級であれば解消できそうな問題 教師個人の能力・経験の問題

[分担ができれば減少する仕事量] 「もともと音楽の指導が苦手な

. I割り振りをして分担することができないので,一人でやるべきことが多く, ので,歌や器楽を指導しなくてはならない学芸会が非常に大変だっ授業の準備や学級通信の作成などが後回しになり,行事前になると退勤時刻がた。学年ごとに行うので,隣の学非常に遅くなる。J (着任時 1年目)

「学芸会は,器楽・歌・遊戯を一人で指導するので,一か月前から計画的に 年の先生に指導してもらうこともできないので,この指導でいいの取り組んでいくのが大変。J (着任時 1年目)

. I運動会や学芸会では,種目・演目によっては,準備するものが多かったり, か?という疑問は常にあった。(着任時 1年目)移動するのに大変なものがあったりするので,一人だと大変である。特に,低

「行事の発表を考えるのは,経学年だと,子どもの力も頼れないので…。J (着任時 1年目)「分担ができず,学級のもの(学年の発表で使うもの)は基本的に担任が準 験の浅い自分にとってはとても苦

労した。J (着任時 1年目)備せざるを得なかった。J (着任時 8年日)[学年内で相談できればより円滑に進む業務内容]「大きな行事の時に,すぐに準備の事などで確認できる先生がいないのは不

その他

安だ‘った。(困難というわけではないが。)特に,学芸会の準備は大変だ‘った。」 「行事指導の際,個別に指導を(着任時 5年日) している際に,ほかの児童への対「一人ということで,学芸会などの発表内容についてアイデアが乏しい。そ 応ができず,困った。J (着任時 1

の学校でこれまでどういう演目が行われてきたかもわからないので,当初は雰 年目)囲気がつかめなかった。J (着任時10年日) 「昨年までの流れや学校の慣例

「すべてを一人で考えなくてはならないことが多く,教育活動の多様性や新 についての情報が少なかった。」しいアイデイアを出すことが難しい。J (着任時四年目)

ること,家庭学習の時聞が確保されず,生活リズ

ムが乱れやすくなること,学習規律が徹底されな

くなるなど,児童の側にも学習内容や学習規律の

定着に課題が見られるようになることが指摘され

ており,単学級の小学校に限らず,今後も継続的

な検証が必要である VO

②『授業の準備』について

次に,『授業の準備』が挙げられた。多く選択

された理由としては,複数学級の小学校のように,

学年団で教科担当を決めて分担ができないという

ことよりは, X小学校が初任校である教員が多い

ことが考えられる。それで,単学級ゆえの課題と

いうよりは,若手教員ゆえの課題と考えられる。

記述等では,

「初任者の時は,学習指導で何をどうやった

ら良いのか全く分からず,参考になるものすら

よく分かつていなかったので苦労した。J (着任

時 1年日)

「初任者で全く経験がない状態で,次の日の

授業を準備していても,時間配分やこれで子ど

もの反応はいいのか?ということに常に悩んで

いたJ (着任時 1年日)

(着任時20年目)

「教えることが不得意な科目もあり,すぐに

アドバイスを求められる先生がたくさんいるわ

けではないので,戸惑うことはあった。J (着任

時 5年日)

という意見が見られた。

初任者の発達課題として,吉崎(1998)は, 1時

間の授業の流れや単元全体のイメージがわくこと

(授業設計段階),適切な授業ルーティンの確立

と可能な限りでの学習者に応じた柔軟な対応(授

業実施段階)を挙げている。単学級の場合は,学

年内で教科についての話し合いが定例化されない

ことから,学級経営の中核を占める授業作りにつ

いて,初任者指導教員やメンターなどのフォロー

システムなど,単学級小学校ならではの仕組みづ

くりが重要と言える V10 また,学校規模や教職員

の構成を踏まえ,一人一人のニーズに合った校内

研修を実施していくことも重要である。

③『学習の進度(進度の調整,時間割の作成)JJ

について

3番目には,『学習の進度(進度の調整,時間

割の作成)JJ に関わることが挙げられた。隣接学

363

Page 7: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

深見智一・津田順二

級がない分,年間指導計画を予定通りに消化でき

るかという不安や時間割作成時の時数管理の煩雑

さが理由となっていた。教職経験年数が10年まで

の教員は,学習の進度については,「困難Ji楽(や

りやすい)Jのいずれでも多く選択しており,徐々

に経験を重ねることで,自らの裁量で進度を調整

することができることにやりやすさを感じていた

教員が多いことも分かつた。

(2) 学級担任としてやりやすさを感じることに

ついて(表 5)

①『学習の進度(進度の調整,時間割の作成)JJ

について

最も回答数が多かったのは,先行調査 (73.2%)

と同様に「学習の進度(進度の調整,時間割の作

成)JJであった。

主な意見として,

「学級聞で進度を合わせる必要がないので,

子どもたちの実態に合わせて,かけたい内容に

かけたい時間をかけることができた。J (着任時

1年日)

「学級の実態に応じて,自分の考えで時間割

を作成することができ,時間をかけたい単元が

あった時に,ある程度自由に時間を確保して授

業を行うことができた。J (着任時 1年目)

「時数の調整だけきちんとしておけば,自由

に時間割を作って授業を組み立てることができ

た。J (着任時 5年日)

「子どもの実態に合わせて時間割を構成し,

進めることができた。J (着任時8年目)

「クラスの実態に応じて学習進度が調整でき

たJ (着任時10年日)

という意見が挙げられた。

前の設問では,困難と回答された割合も高かっ

た。その一方で,初任期や異動直後の戸惑いが,

表5 単学級担任として楽に感じたこと(教職経験年数別) n =16

教職経験年数 6 -10 若年層 11-15 16-20 21-25 26以上中堅ベテラン 全体

回答者数 日=10 n = 2 n = 12 n = 1 日 =2 日 =1 日=4 n = 16

いずれiこもあてはまらない 戸d 2 7

50.0% 4l.7% 50.0% 100% 50.0% 43.8%

授業の準構(教材研究,教其,プリントの準舗など) l 2 3

10.0% 8.39も 100% 50.0% 50.0% 18.8%

投業の進め方{援業の誼札発関や指示など) 4 リ円? も

40.0% 50.0% 41.7% 50.0% 25.0% 37.5%

空き持聞や交換襲業ができない

学習の進霞(進震調整委持関割の作成) も 7 2 a 60.0% 50.0% 58.3% 100% 50.0% 50.0% 56.3%

学校行事の準櫨や進め方 1 l

10.0% 8.39も 6.3%

生徒指導上の問題への対応

保護者への対応(苦情相談など) l l

10.0% 8.3% 6.3%

学級懇談会費 f属人面談などの準i情や進め方 1

50.0% 8.39も 6.3%

学級通信の作成 3 2 6

30.0% 100% 4l.7% 100% 25.0% 37.5%

学年打ち合わせなど学級について相談する場がないこと 4 4 4

40.0% 33.3% 25.0%

そのほか

364

Page 8: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

単学級の学級担任が抱える困難と課題121

経験を重ねるごとに徐々に解消されていくなか

で,学習進度の調整ができることを単学級ならで

はメリットと捉え直した教員が多いと考えられ

る。また,現任校において,時間割や進度で隣接

学級との調整を求められる機会が多いことから,

現任校での現状と比較すると,回想的にやりやす

かったと回答する教員が多かった。

②『いずれにもあてはまらない」という回答につ

いて

複数選択した中の一つであったが,記述やイン

タビューからは,そもそも,-~この教え方でいい

のだろうかJJ ~もっとやるべきことはあるのでは

ないか」と常に試行錯誤の日々で楽に感じること

はない。J (着任時31年目)という意見にあるよう

に,楽(やりやすい)という設問自体に問題がな

かったか再検討の余地はある。また,「初任者だ、っ

たので,「楽』に感じることはなかった。J (着任

時 1年目), ,-単学級が初めてだ、ったので,逆に不

安があったJ (着任時 5年目)というように,初

任者であることや初めての単学級担任ということ

が不安要素となっていたこともあった。このよう

な不安を取り除く取り組みが重要であることを改

めて確認できる。 x小学校に勤務した経験を肯定

的に捉えている教員が多いことを考えると(後

述), ,-いずれにもあてはまらない」ということが

直ちにマイナスの評価につながっているとは言え

ない。

③「学級通信の作成』および「捜業の進め方」に

ついて

X小学校では,学級(学年)通信が週に 2~3

回程度発行されており,発行頻度は高い。それで

も,負担に感じるよりも楽に感じていると答えた

教員が多いのは,「自分の書きたいときに,書き

たいことを書いたり,個人的に思ったことを伝え

られたので,人のことを気にしたり合わせたりし

ない分,楽であるJ (着任時 1年日)という意見

に代表されるように,共通に発行日が設定されて

いないことや書く内容についての自由度が高いこ

とが,負担軽減につながっていると考えられる。

また,若手教員が児童や保護者の信頼を得るため

の情報発信ツールとして活用していることも考え

られる。

このように,学級担任の自由度の高さが確保さ

れつつも,管理職による文書のチェックにより,

適切な管理の下で発行されている。また,職員室

内・廊下での全学年の学級通信の掲示が行われて

いることで内容についての相互批評も行われてい

ると言う。さらに,前年度までの学級通信が参考

資料として引継がれており,学級通信の作成に必

要以上の時間がとられないことが時間的なゆとり

をもたらしている。

「授業の進め方」は,教員個々の力量が問われ

るとことであるが,やはり,自由度の高さがやり

やすさにつながっていると考えられる。

(3) 先行調査と大きく結果が異なる点の分析

先行調査と大きく異なる点は,学年打ち合わせ

がないことについて困難と感じた割合がX小学校

においては低いことであった。調査 1では,教職

経験年数 1-10年目の教員の51.4%,全体の42.7%

が困難と選択していたが,調査2では,サンプル

数の違いはあるものの,若年層の20.0%,全体で

も25.0%しか困難と選択していなかった。一方で,

楽に感じたことの割合は,調査 1では,教職経験

年数 1-10年目の教員の11.4%,全体の17.1%だ、っ

たが,調査2では,若年層の33.3%,全体の25.0%

であった。

単学級担任の困難さはX小学校においても他校

においても大きく変わるものではない。しかし,

X小学校では学級経営等で困ったことがあったと

きに,相談する相手が職場内に多くいたことで,

複数学級の小学校において定例で行われている学

年打ち合わせがなくても困難に感じることはない

と回答する傾向が見られた。

相談相手に関する記述などでは,

「学年ブロック(低・中・高)というくくり

ではなく,その時,職員室にいる先生みんなで

共有(みんなに聞いてもらう)ということが多

かった気がする。J (着任時 1年目)

「事務職員や養護教諭がよく子どもたちを見

365

Page 9: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

順二

X小学校では,学級経営について最もよく相談

する相手は,隣の学年の担任,教頭,教務主任が

ほぼ同じ割合となった。(表 6)

智一・津田深見

てくれていたので,普段から気軽に子どもたち

の話ができてよかったです。職員室で子どもた

ちの話をいろいろできる雰囲気が好きでした。

学級経営についてよく相談していた相手 n=16

川山のふー、

担いを担い

度て級度て員

年し学年し教

今任る昨任た

年員担れ年6l

2年あ4・任

の事5で'任担

隣の(任、は担年

級て別級

学つ特学

流なる援任

交とい支担

ιι 主我明

LVA九

キ均ぜ教頭校長

表 6みんな(職員)が,

てくれるのが小規模のいいところかなと思いま

す。J (着任時 1年目)

「個人的に同じ学校で親しかった先生がほと

んどで,大学の先輩や放課後に職員室に残って

いた先生などその都度色々でした。J (着任時 1

どの子の話をしても分かつ

2

12.5%

9

56.3%

7

43.8%

7

43.8%

9

56.3%

3

18.8% 37.5%

偏りがなかった理由としては,単学級のスケー

ルメリットを生かして,全校児童の顔と名前が一

致していることで,子ども像を共通化することが

でき,児童について誰とでも交流することができ

たことが考えられる。また,数値化は難しいもの

の,職員同士の親和性が高いことにより,相談し

やすい雰囲気があったことも予想される。

X小学校の学校組織の中では,天笠(2011)にあ

るように,校長,教頭,教務主任,学年主任とい

う縦のライン系列(階層化)での統制が過剰では

なかったと言える。そして,情報の交流や共有に

よって,一般教員同士の関心を妨げる専門化が進

まず,担任一人一人の自律性を前提とした学級経

営がなされていた V110

一方で,相談する相手がうまく見つかっていな

かったような場合は,困難について述べている意

年日)

「気楽な面もあったが,本当にこれで良いの

か?と不安を感じることも多かった。それでも,

担任の先生方はみんな同じ状況なので,お互い

に助け合う雰囲気があった。J (着任時 1年日)

「厳しく指導してくれる教頭,同じ初任者と

して着任した先輩,その中間的な存在の教務主

自分の指導の良いところも悪いところ

とにかく話しかけてもらえること

任など,

も合わせて,

が多く,相談しやすい雰囲気だった。J (着任時

1年日)

「順序はそのときによってちがうが,小さい

学校なので誰とでも相談しやすい環境でした。」

(着任時 5年目)

見も見られた。

「ー学年一人で運営するにあたって,経験も

浅い自分が学習進度や行事の発表などを考える

のは,とても苦労しました。同じ学年の先生が

いれば,同様の悩みも学年打ち合わせなどであ

る程度共有できたと思うので、すが。J (着任時 1

年日)

「学級を学級担任一人で見る時代ではないと

言われますが,実際,何か問題があった時に,

担任が一人で対応しなければならないという状

況に着任当初は戸惑いました。J(着任時 5年目)

「マニュアル的ではあるが,教務主任,教頭

に報告・相談をよくしていた。突発的な問題が

あった時は,その都度違っていたように思う。」

(着任時 5年日)

「養護教諭に高学年女子の様子などをよく聞

いた。J (着任時10年目)

iOO先生(注:職場内の同僚)に話を聞い

てもらうこと。特別支援学級の先生がいて,た

くさん話し合う時聞があり,たくさん協力して

もらった。J (着任時12年目)

・「毎日の教育活動に関わって,日常的に相談・

協力をいただいていました。J (着任時19年日)

自由に職員室の中で子ど

この順序

i)11貢序を選んだが,

もたちの話をすることができたので,

の限りではない。J (着任時31年目)

このような場合に備え,管理職が相談相手となという意見が挙げられた。

366

Page 10: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

単学級の学級担任が抱える困難と課題121

ることや相談相手をコーデイネートするような働

きかけも重要と言える。

(4) 単学級担任の経験が異動後に役立つている

かについて

調査2では,「現任校で勤務する中で, x小学

校における普通学級担任の経験が役に立ったと感

じることはありますか?J という設問を設けた。

その結果,よくある,やゃあると答えた教員の割

合は87.5%となった。(表 7)

表 7 単学級担任の経験が役に立ったか n =16

よくある ややある あまりない 全くない 無回答

10 4

62.5% 25.0% 6.3% 6.3%

単学級担任の経験を生かして,学級担任として

の一通りの業務を円滑に行うことができることに

メリットを感じている教員が多いことが記述等か

らも分かる。

[学級担任として]

「時数集計や時間割作成など学年主任が休ん

だ場合でもこなすことができる。J (着任時 1年

日)

「年間を見通して教育活動を進めていくこと

ができる。J (着任時 1年目)

「行事等,基本的に一人で、仕事を行っていた

ので,他の先生からは「大変』という声も聞こ

えるが,今も当然のようにできる。J (着任時 1

年目)

. ,-自分一人でやらなければいけなかったので,

現在の環境 (4学級)では,分担が行われ一人

当たりの仕事量は少ない。(その分, フォロー

にまわることもあるが・.) J (着任時 5年目)

「学年運営に必要な仕事は一通りこなすこと

ができる。現在もスムーズに学年主任業務を行

えている。J (着任時8年日)

「担任が学年に一人なので,素早い判断や行

動力が求められたことが,今も役立つている。」

(着任時10年目)

[教員全般として]

「何となく他の学年の様子も見渡せる。その

ような意識を持っているJ (着任時 1年日)

. ,-すべてが役に立っている。J(着任時12年日)

[学習指導に関わって]

「すべての教科を一人で教えていたので,一

通りの教科を指導できることや,その時作った

教材を再度使うことができる。J(着任時 1年目)

[小規模校での勤務に関わって]

「校務分掌の部長をすることができたので,

異動後に違う分掌の部長になっても,分掌の仕

事の進め方や仕事の割り振りなどをスムーズに

行うことができている。J (着任時 1年目)

「地域の中の学校に勤務できたことで,それ

ぞれの地域の実態に却した教育の形があるとい

うことができたのが良かった。J(着任時 5年日)

と肯定的な回答が多くあった。

一方で,教務主任になったことや,管理職への

昇任により,担任業務から離れたことで,直接的

には役に立ってはいないという意見も見られた。

「役に立った」こととは反対に,「現任校で勤

務する中で, X小学校における普通学級担任の経

験がハンデになった・物足りなかった感じること

はありますか?J という設問では,「あまりない」

「全くない」を合わせると,半数以上がハンデと

はなっていないという回答をしていた。

表 8 単学級担任の経験がハンデとなったか n =16

よくある ゃゃある

4

25.0%

あまりない

4

25.0%

ややあると感じた回答では,

全くない

7

43.8%

「小規模校から大規模校へ異動し,

無回答

1

6.3%

あらゆる

面で学校のルールが分からない(事務処理等も

含む)oJ (着任時 1年目)

「授業や学級経営のネタが少なかった,いろ

いろな面で、の視野が狭かったと日々感じるJ(着

任時 1年日)

367

Page 11: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

深見智一・津田順二

「自分でやりたいことがあっても,足並みを

揃えなければならないので,できないこともあ

る。(ハンデとか物足りないということではな

いかもしれませんが。)J (着任時 5年日)

「他の先生に合わせづらく感じる部分があっ

た。ついつい,自分のペースで仕事を進めよう

としてしまう。J (着任時8年目)

という意見が見られた。

ハンデを感じると答えつつも,前の設問では,

単学級担任の経験が役に立っていると回答してい

る教員が多いことから,単学級担任の経験を肯定

的に捉えている教員が多く,単学級での経験が生

かされていると言える。

(5) 管理職への聞き取り調査から

単学級の学級経営には多様な能力が求められ,

学級経営案の作成,教材研究などの授業準備,学

習ルールの確立,教材の選定,係活動や当番活動,

掲示物などの教室環境の整備等,一人でこなすべ

き仕事が多く,自由度も高い。

このような中で,若手教員は,自律的な学級経

営ができるようにスキルアップをしたいと望みつ

つも,現実的には,可能であればアドバイスを受

けたい,指導されたいという気持ちを持っている

教員が多い。また,中堅教員や数年の経験を経た

若手教員の中には,初任者や新規異動者が,単学

級担任として「自立」していくことができるよう

に,適切なアドバイスや指導をしたいという積極

的な思いを持っている教員もいる。管理職も自ら

適切な指導・助言をしたいと思いを持ちつつ,実

際には学級担任の自律性を尊重するために教員相

互に学び合うことを期待している。

そこで,単学級の学校経営の視点として, x小

学校のように,職員同士をはじめとする多様な「つ

ながり」により,チームとして職務にあたろうと

する職員集団づくりや保護者や地域を巻き込んだ

学校経営を行うことが重要である。

X小学校は,管理職が単学級小学校及び単学級

担任の強み・弱みを的確に把握し,むしろプラス

面と捉えて若手育成の機会と捉えて明確なピジョ

368

ンを示している。 x小学校の「つながり」を創り

だすグランドデザインをしていたのはある年度の

管理職である。実際, x小学校の管理職経験者 (x

小学校の校内体制を考慮し,教務主任も含めた)

に聞き取りをしたところ,そのような意識が見ら

れた。

. A教務主任 (40代, x小学校で単学級担任も

経験している。)

単学級だと色々な面でどうしても学級ごとの

凸凹が出てくる。これは,やむを得ないことで

ある。ただ,保護者はそういう部分には敏感な

ので,それが目立たないようにしていくことが

大切である。そのためには,学校生活の大部分

を占める授業力をつけていくことが大事。それ

で,校内研修が重要になるが,教務主任の立場

としては,スケジュールの適正な管理をするこ

とで,研修日をしっかり確保し,先生たちが勉

強する場を作っていきたい。

教務主任なので,各学級担任をアドバイスす

る立場にはあるが,各ブロックに中心的な先生

がいるので,そのアドバイスと矛盾しないよう

に気を付けている。

. B教頭 (40代)

中堅くらいになると,どうしても「聞きたかっ

たら聞いて」という感じになりやすい。分から

ないことがあれば聞いてくれればいいと思って

いても,今の若い先生方は聞いてこない先生が

多い。また,言葉では伝わらない感覚に気づか

ない先生が増えてきた。若手でも,言われるの

はいやという雰囲気を持ってしまう先生も中に

はいる。そこをコーデイネートするのが教頭の

仕事である。直接指導するのではなく,各学年

ブロックのリーダーの先生にお願いする。ブ

ロックのリーダーの先生の力量からすると,自

分の学級がうまくいくのは当たり前で,それ以

上を期待しているし,それだけの能力を持って

いる。

. c校長 (50代)

何でも学校だけでできる時代ではなくなって

Page 12: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

単学級の学級担任が抱える困難と課題121

きた。例えば,学力の問題。絡んでいる要素が

多すぎて,学校だけで何とかしようと思ってい

ても難しい。ボランテイアを地域や保護者にお

願いするなど簡単にできることから地域との連

t莞を立台めている。

組織的にできるように人を動かすことも重

要。ないものねだりではなく,今いる若い先生

方の力を引き出して,一人ひとりの意識を変え

て学校を作っていく。結局は「人」であり,個

人の力量アップを図れるのは研修である。授業

研では,細かいことだが授業の微細な技術にも

触れている。昔は,そういうことは雑談で話し

ていたが,そんな時間も減ってきているので,

できることは限られた時間の中でやるようにし

ている。校外への研修も,配当予算はあまりな

いが,行きたいと思う研修に先生方が参加しや

すいように,教務主任,場合によっては教頭の

補欠体制を組めるようにしている。

先生方を先生方で育てていくための意識改革

を自ら取り組むだけでなく,職員に伝えていく

ことが重要である。

しかし,上記のような取り組みを,ただ単にラ

イン・スタッフ組織のようにトップダウンで進め

ると,必ずしも構成員の理解を得られるわけでも

なく,ともすると,必要性を感じることができず

に抵抗感を示すことも考えられる。

そこで, X小学校では,年度末の校内研修の中

で自校の強みや弱みを理解するための SWOT分

析のようなものを行っている。その中で,単学級

である白校の強み・弱み・課題などを教員自身が

的確に把握し,一つ一つの校内システムに必然性

があることを共通理解している。そして,学期ご

との学校経営反省とあわせて,管理職の異動が

あっても継続されている。さらに,その白校の分

析を通して,新採用の教員や新規異動者へのフォ

ローアップへの意識も高まっていく。

本調査では,職場の親和性に関しては,数値化

することはできない。それでも, X小学校におい

ては,管理職のグランドデザインのもと,一般教

員も白校の状況を客観的に分析したうえで,チー

ムとして単学級担任を支援する「つながり」を創

りだしていると言える。

(6) 単学級担任を支援する「つながり」を創り

だす取り組みについて

X小学校では,単純に職場の人間関係の良さに

依拠するということではなく,組織の力を活用し

て個人の力量を高め,多様な「つながり」を創り

だしていくことで支援していく方策(下記参照)

が意図的・計画的に校内外で実施されていた。

①個別のニーズに即した校内研修

②学年ブロックの活用

③保護者とのつながり

④保小・小中連携

⑤地域との良好なつながり

⑥自己研修による学校外とのつながり(各種研

修会への参加,図書の購入等)

①個別のニーズに即した校内研修

教員一人一人のスキルアップを図るために,研

究授業後のワークショップ型の研修を通して,学

級の様子や授業を公開し忌障なく話し合える機会

を設定している。また,年度によっては,学校全

体の研修課題に基づいた個人テーマを設定し,担

任外の教員や養護教諭等も含めて個別のニーズに

即した校内研修を実施していたこともあった。

X小学校が個別のニーズに却した校内研修を

行ったのは,学校が抱えている課題について,校

内研修を通して解決していきたいという校長及び

その意を受けた研修主任の意向がきっかけであ

る。 x小学校は,初任者の着任が多く,経験の浅

369

Page 13: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

深見智一・津田順二

さ,力量のパラっき,得意・不得意の違いが目立っ

ていた。このような中で,日常の授業実践になか

なかつながらない授業研究そのものに対する「つ

らさ」が若手教員を中心に多く見られた。さらに,

年度によっては,生徒指導上の問題が複数の学級

で起こる事態も度々起きていた O このような中で,

X小学校が校内研修に個人テーマを設定したり,

ワークショップ型の研修を取り入れたりするよう

になった年度の学校教育計画の中には次のような

文章が見られる。

今年度はこれまでの研究の視点を大きく変え,地に足

をつけた日常の授業実践を大切にしていく必要があると

考えた。児童の実態を検討するにあたっては I日の前

の児童の姿は,教師の指導の結果である」ことを前提に,

現在の児童の長所と短所それぞれを生み出した要因を分

析する。そして,児童の分析に対応した形で,これまで

の教師(学級担任)の指導の長所と短所も分析する。こ

れら両方の分析をもとに,目指す子ども像について共通

理解を図り,その実現に向けて児童にどのような指導が

必要かを検討し,特定の教科・領域にとらわれず,必要

な研修を行っていきたい。

2カ年計画の 1年目である今年度は,特定の教科・領

域に焦点化せずに I授業づくり JI人間関係づくり JI学

習・生活習慣づくり」の 3つのブロックを構成し,自己

の研修テーマを設定したうえで,すべての教育活動から,

「自分に自信をもち,友達の良さを認め合える」児童を

目指して研修を進める。

「授業づくり」ブロックでは,基礎基本の確かな定着

を目指して,児童の実態にあった満足感をもてる授業を

するために,意見を発表し交流する「伝え合う」授業づ

くりを通して自分の考えがもててよかった」と自分

自身を認める自己肯定感を高める授業改善に取り組む。

「人間関係づくり」ブロックでは,自分が集団の一員

として必要とされ,認められているという自己有用感を

高めるための教育活動の在り方について,異学年交流活

動の改善や Q-Uを用いた児童理解と学年・学級経営の

改善,校内の環境整備を通して研究していく。

「学習・生活習慣づくり」では,自分も他の人も大切

にされる落ち着いた生活を送るための自己指導力を高め

る取組として,掃除や給食当番,班活動や,家庭学習カー

ドなどの活用など教科外領域について研究を行う。

これらの 3ブロックの活動を通して,すべての教職員

が,自らの専門性を高め,自らの指導力の向上を図る研

修とする。

(ヲ|用 :X小学校学校経営計画書より)

370

その結果,教員による校内研修への満足度は前

年度比で約 2倍となった(表 9)。また,保護者

や児童の学校評価からも,前年度より「分かりや

すい授業」が行われているという評価結果が見ら

れた。

表9 教職員による学校評価アンケート 最大値2

項 目 当該年度前年度

校内研修を通じ教締一人}人が内容や指導方法1.86 1.0

の改善を意識した授業づくりに努めている。

教師としての専門性を高め,日常的に授業力の向

上や改善に努めるなど研修活動を積極的に推進し 1.8 1.0

ている。

②「学年ブロック」の活用

学年ブロックの設定により,中堅・ベテランの

教員が若手教員に目配りする機会を意図的に設定

し,ともすると,{固人営業」に慣れてしまう中堅・

ベテランの指導力を効果的に活用している。単学

級の学級経営では,ある程度熟達した能力を持つ

教員にとっては,自由度の高い学級経営ができる

ことになる。一方で,若手教員にとっては,学習・

生活・行事面などで多くの判断や準備を迫られる

ことから,自由度の高さよりも相談機能が働かな

いことがかえって負担となるのである。

X小学校においては,担任相互の相談機能を強

化するため, 2ないし 3学年ごとのブロック(グ

ループ)を形成し,学年を横断した学年ブロック

を形成している。この学年ブロックでは,学年主

任役の中堅・ベテラン教員が中心となり,学習進

度の確認,生徒指導上の問題事項の確認,学級通

信等のチェック,行事の役割分担などを行ってい

る。複数学級の小学校と同様,若手とベテランの

バランスを考慮し,可能な限りペアになるように

人事配置している。また,月に 1~2 回程度の不

定期ながら,授業時数を調整し,学年ブロックの

ミーテイングの時間を設定している。この時間に

は,会議や少年団などの予定を入れないよう調整

されている。中堅・ベテラン教員が 2~3 名いる

単学級小学校においては,このような人事体制と

打ち合わせの時間の意図的・計画的な設定が効果

Page 14: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

単学級の学級担任が抱える困難と課題121

的と言える。なお,学年ブロックのリーダー(主

任)は,校務分掌のリーダーも兼ねていることか

ら,分掌の主任が構成員となっている「校務運営

委員会」の際に,各学級の情報が管理職・ミドル

リーダーで共有され,その後の指導・助言に生か

されている。

③保護者とのつながり

学級担任による定期的な学級懇談会・家庭訪

問,学級通信の多頻度の発行が行われ,積極的に

学校の様子を家庭に発信する努力が払われてい

る。また,担任外の教員も,地域の町内会や同好

会活動などを通して得られた保護者からの情報や

要望などを積極的に拾い上げ,情報の共有を図っ

ている。さらに,管理職も学校通信や PTAの各

種会合を通して,学級の様子や学級担任の努力を

積極的に広報している。へき地においても,学級

担任に却戦力を求める傾向は強くなっていること

も事実ではあるが,このような取り組みを通して,

若手教員を育てる(見守る)という保護者の雰囲

気が醸成されている。

④保小・小中連携

小学校と保育園の保育士,中学校の教員との定

期的な連携協議会の実施が行われており,入学・

進学を見据えた保・小-中の接続が考慮されてい

る。また,行事や通常の授業の定期的な参観など,

特別の準備を必要としない双方向の交流も行われ

ており,学校が聞かれる体制が整えられている。

⑤地域との良好なつながり

へき地校の地域性を生かし,「地域との良好な

つながり」が築かれており,地域人材の活用,学

校評議委員会を生かした情報交流が行われてい

る。地域の人材の活用では,生活科の時間や総合

的な学習の時間において地域の人材の積極的な活

用を行っている。担任外の教務主任が窓口となり,

学校が保護者や地域住民の手助けを必要としてい

ることを年度当初にリストアップし,協力を依頼

している。学級担任が打ち合わせをするのではな

く,教務主任が中心となることで,校外の専門家

の知識や自然資源を有効に教育活動に生かせるだ

けではなく,学級担任の負担を減らすという副次

的な効果もある。また,地域の有力者が評議員と

なっている学校評議委員会の活用により,学校が

置かれた状況や直面している課題,学校の重点目

標を地域住民と共有することで,学校と保護者,

地域住民のつながりが構築されている。

⑥「自己研修による学校外とのつながり」

一般的に単学級の小学校では,大規模校に比べ

て,学級担任をしない担任外の教員が少ないため,

校外の研修に参加することは事前の調整をかなり

要する。また,へき地ゆえに時間や交通手段,予

算の制約もあり,校外で行われる研修会等に物理

的に参加しにくい状況もある。

しかし,インフォーマルな学びである教育に関

する研究会・同好会への参加は積極的で, X小学

校ではほとんどの教員が何らかの研究会や同好会

に参加していた(表10)0 1"いろいろな研究会に参

加することで,校内とは違った新しいアイデアを

得ることができるJ (着任時 1年目)という意見

に代表されるように,校外での学びを校内で生か

そうとする姿勢が分かる。

表10 X小学校在任時の自主的(インフォーマル)

な』汗f~ n =16

X小学校在任時 現任校

いずれにもあてはまらない 1 ( 1 ( 6旬3%)

テレビの「教育を主題とした番組」を見る 3 (18.8%) 2 (12 5%)

新潟の「教育に関する記事」を読む 6 (37.5%) 9 (56.3%)

個人的に持っている研究テーマについての 6 (37.5%) 8 (50.0%) 自己研修を行う

教育に関する研究会・同好会等への参加 8 9

個人で定期的に購入している教育関係の雑12(75.0%) 6 (37 5%)

そのほか 1 ( 2 (12.5%)

無記入

また,図書の平均購入額からも,図書の定期的

な購入によって自己研修を行っていることが分か

る(表11)0 X小学校は,へき地に所在し,教育

関係図書を扱う大きな書屈が存在しない。しかし,

X小学校では,他の単学級小学校と比べて,図書

購入費の平均額が高く,担任業務に必要な情報収

集を積極的にしていたと考えられる。異動後,図

371

Page 15: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

深見智一・津田順二

表11 X小学校在任時の月ごとの平均教育関係図書 表12 X小学校在任時の教育実践の指針やモデル n=16

購入費 n =16 X小学校在任時 現任校

X小学校在任時 現任校 教育学や心理学の研究者 3 (18.8%) 4

購入していない

~999円

1000丹-2999丹

3000円~4999円

5O()O悶~ヲ99!}汚

10000円~14999円

15()O日間~

無記入

8 (50.0%)

2 (12.5%)

5 (31.3%)

1 ( 6.3%)

1 ( 6.3%i

2 (12 5%)

引56.3%i

3 (18五

1 ( 6.3%)

全国的に著名な教育実践家 10(62 5%) 9 (56 3%)

身近な教育実践家 5 (31.3%) 10(62ム

誰もいない 2 (12 5%) 1 ( 6 3%)

無記入 1 (

ここまで, x小学校の取り組みをまとめると,

書購入額が下がっている教員が多いことの要因と

しては,経験年数の増加によって読書量の減少が

見られること,都市部の学校に在籍していること

で図書以外の研修方法も選択しやすくなったこと

が考えられる。

-校長,教頭,教務主任,学級担任という縦の

ライン系列(階層化)での統制が過剰ではない

こと,

-様々なつながりによって情報の交流や共有が

図られ学級担任同士の関心を妨げる個業化が進

まないこと

参考までに,教育実践の指針やモデルは,「身

近な教育実践家」よりも「全国的に著名な教育実

践家」の選択が多かった。職場内でのつながりの

強さから,「身近な教育実践家」の選択が多くな

るかと予想していたが,学校外でのつながりや学

びを積極的に求めようとする意欲の表れと考えら

れる(表12)。

が満たされているにより,単学級担任の自律性が

形成・維持され,単学級担任をサポートする体制

が生み出されていると言える。

(7) 単学級担任のサポートのためにどのような

取組があれば良かったか

「学級担任の負担を減らすために, x小学校に

おいて,どのような取り組みがあれば良かったと

表13 単学級担任としてどのようなサポー卜が必要だったか

単学級ゆえの課題に関して 初任者・若手教員が多いことに関して その他

-今思えば,ネタが少なかった,視野 -初任者に合った校内研修のテーマ。 -協力して頂いたほうなので,あまり

が狭かったと感じるので,多くの経験 校内研修のテーマと自分のニーズとが 負担に思ったことがない。 x小学校の

を持つ先生からのアドバイスや仕事術 ミスマッチしていた。(着任時 1年目) 児童数もちょうど良かった。(1年目

などを学べる機会,サポートがあると -先輩教員に学ぶという機会。(着任 に着任)

良い。(着任時 1年目) 時5年目) -行事の負担を減らす。できれば,種

-すべての教科を一人で考え,一人で -専科の教員がいればよかった。特に 目を減らす。(着任時 1年目)

教えるため,内容や指導方法が偏って 音楽。(着任時 8年目) -校外研修に参加すると,半日日程の

いても気づきにくい。可能であれば, -教務主任や管理職の働きかけが大 研修でも移動時間を考えて 1日休まな

教務主任や管理職にも授業に入っても 切。(教頭や教務主任の)学級担任へ くてはならないので,距離的な問題は

らう。でも,人数的には厳しいと思う。 の気遣いや相談できる雰囲気づくりが 感じていました。(着任時 5年目)

(着任時 1年目) 必要。担任が一人で抱え込まないシス -少年団活動を割り当てない。(着任

-大変なことはありますが,少ない教 テム作りが大切。(着任時10年目) 時12年目)

員数を考えると,なかなか新しい取り -自分自身では自由にやらせてもらう .25入学級,担任複数制をA小学校だ

組みは難しかったと思う。(着任時 5 ことができた。若い先生が多いので, けではなく,全国的に。(着任時31年目)

年目) 00教頭のように若い先生を鍛えよう -担任外の教職員が効率的に働くこと

-一つの学級を複数の目で見るシステ としてくださる方が必要。(着任時12 (着任時20年目)

ム(着任時 5年目) 年目)

'TTによる困り感のある子への指 -教員の意欲を引き出す管理職からの

導。少しはあったが,恒常的にはなかっ 働きかけ,一般教員の意欲をなくす言

たので。(着任時19年目) 動を控える。(着任時20年目)

372

Page 16: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

単学級の学級担任が抱える困難と課題121

思うか。」という質問をした。

なお,調査協力者のX小学校在任期間には幅が

あるので,回答があった意見の中でも,すでに実

行されているものもある。

5 今後の課題

単学級担任は,初任者であっても「学級をこの

ようにしたい」というビジョンをもち,基本的に

はそのビジョンを同僚や管理職から尊重される

「自律'性」が認められる。一方,消極的に考えれ

ば,初任者にとっては,そのような自律性・広範

な裁量がかえって苦痛となることもある。判断に

困った挙句,自らの判断が子供たちにとっては最

善の選択ではなく,負の連鎖を引き起こすきっか

けにもなりf号るのである。

木原(2004)は,これまでの日本の学校現場では,

熟練教員が持つ優れた見識が職場で生かされてき

たことや技術伝承が継続的に行われてきたことに

より若手教師が成長してきた一方,メンタリング

という言葉こそ使われはしないが,メンタリング

と呼ぴうる熟練教師と初任教師のコミュニケー

ションが成立してきたと説明する。 x小学校のよ

うな取り組みは,本来であれば職員室内で自然発

生的に行われていたことであるが,敢えてそれを

システムとして創りだすことにより,教員同士の

「つながり」を生み出すきっかけとなっている。

今回の事例では, x小学校の管理職のリーダー

シップに着目したが,管理職の意識が単学級小学

校の学校経営や単学級担任の学級経営にどのよう

な影響を与えているのか事例をさらに検討してい

く必要がある VIno また, 2校目で単学級小学校

に異動する教員の増加が今後見込まれることか

ら,初任者層の課題だけではなく,複数学級から

単学級に異動した教員が抱える課題について調査

することも必要となってくるであろう。

なお,本調査では,在任期間中に困難に感じた

ことについて調査を行ったが,調査回答者から,

困難に感じたのは,必ずしも在任期間中ず、っと感

じていたということではなく,ある一定の時期で

あったという意見があった。このことから,設問

そのものを再検討する余地がある。例えば,単学

級担任として困難を感じたことがあったか,あっ

たとすれば特にどの時期か, と守んな困難だ、ったの

か,いつ解決されたかというように細分化した設

聞が考えられる。また,臨時的任用期間を経て採

用になる教員も増えていることから,教職経験年

数や年齢だけで単学級担任の困難を分類すること

も再検討が必要かもしれない。

いずれにしても,学級経営にとどまらず,学校

行事や校内研修のあり方などを含めて,学校全体

のシステムを継続的に見直していくことが,単学

級担任の学級経営を支援していくことにつながる

ことから,単学級担任の実態を丁寧に分析し,改

善の方策を検討することが求められている。

謝辞

本調査に際し,大変お忙しい中,調査にご協力

いただいたX小学校の関係者の皆様に心から感謝

申し上げます。

、王

1 貞債斎子, 2010, i人口予測データを用いた公教育規

模と公教育費規模推計一持続可能な公教育財政システ

ム構築に向けた2035年の政策シュミレーション」日本

教育行政学会年報36号, 89-104

11 玉井康之, 2010, iへき地小規模校の存続をめぐる

相克と学校経営の課題:統廃合と存続の葛藤をとらえ

る分析の視座を中心にしてJ ~へき地教育研究~ 65,

137-141

III 深見智一, 2013, i単学級の学級担任が抱える困難と

課題一釧路管内の普通学級担任へのアンケート結果の

考察一J ~北i毎道教育大学大学院教育学研究科高度教職

実践専攻研究紀要』第 3号, 59-74

lV 文部科学省, 2011, i平成23年度公立小・中学校にお

ける教育課程の編成・実施状況調査の結果について」

5-6

v 北海道教育委員会, 2013, i平成25年度小学校教育課

程改善の手引学校がチームとなって取り組む学校力・

授業力の強化J,11-12

Vl 吉崎静夫, 1998, i一人立ちへの道筋J,浅田他「静

聴する教師教師学への誘いJ,168-171,金子書房

Vll 天笠茂, 2011, nつながり」で創る学校経営(学校

373

Page 17: URL ...s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/7678/...URL Rights 北海道教育大学紀要(教育科学編)第65巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education

深見智一・津田順二

管理職の経営課題 これからのリーダーシップとマネ

ジメント)~, 46-48,ぎょうせい

Vlll へき地小規模校の学校経営,管理職のリーダーシッ

ブに関わるものとして,以下のものが挙げられるが,

単学級に特化したものはない。

玉井康之, 2004, Iへき地小規模校経営の特性と学校

管理職の役割J ~へき地教育研究~ 59, 51-57

川前あゆみ, 2009, I北海道小学校長から見たへき地

小規模校の現状と課題J ~北海道教育大学釧路校研究紀

要』第41号, 105-121,

滝川敦善, 2010, Iへき地・小規模校教育における教

頭の役割J ~へき地教育研究~ 65, 9-13

川前あゆみ, 2012, I北海道のへき地・小規模校を取

り巻く現状と担い手教師の育成の課題J ~北海道大学大

学院教育学研究院紀要』第116号, 117-127

(深見智一北海道鶴居村立幌呂小学校教諭)

(津田順二釧路校教授)

374