yk42工区(2)・yk43工区(b(2)・d(2)・f(1)・h連結...

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駒井ハルテック技報 Vol.7 2017 81 図-1 位置図 写真-1 生麦 JCT 改築後の全景 YK42 工区(2)・YK43 工区(B(2)・D(2)・F(1)・H 連結路) 上部・橋脚工事 CONSTRUCTION OF THE NAMAMUGI JUNCTION WORKING AREA(2) OF YK4243 1. まえがき これまで生麦ジャンクション(以下,生麦 JCT)は, 首都高速神奈川 1 号横羽線(以下,横羽線)と神奈川 5 号大黒線(以下,大黒線)を結ぶ JCT であったが,新た に神奈川 7 号横浜北線(以下,横浜北線)が開通し,生 JCT で横羽線,大黒線と繋がることにより,横浜方面, 横浜北線方面を加えた全方向をつなぐ JCT へと機能拡張 されることになる(図-1) .本工事では,この生麦 JCT の改良工事において,横羽線,大黒線,横浜北線を結ぶ 新規連結路の建設および改築工事を実施した.完成後の 全景を写真-1 に示す. 本報告では,「既設門型鋼製橋脚の改築」および「Y の分岐部を含んだ DH 分流路」の設計および施工につい て記載する. 2.工事概要 工事概要を以下に示す. 工事名:YK42 工区(2) YK43 工区(B(2) D(2) F(1) H 結路) 上部・橋脚工事 路 線 名:高速神奈川 7 号横浜北線,神奈川 5 号大黒線 工事箇所:神奈川県横浜市鶴見区生麦 1 丁目~2 丁目 期:自 平成 23 9 1 至 平成 28 6 25 主:首都高速道路株式会社 神奈川建設局 構造形式:BF 合流路 4 径間連続鋼床版箱桁橋+5 径間の 3 径間連続鋼床版箱桁橋 BF 連結路 3 径間連続鋼床版箱桁橋+3 径間連 続鋼床版鈑桁橋 DH 分流路 4 径間連続鋼床版箱桁橋の内 2 +3 径間連続鋼床版箱桁橋 DH 連結路 5 径間連続 RC 床版非合成鈑桁橋+ 3 径間連続 RC 床版非合成鈑桁橋 本線内回り 5 径間連続鋼床版箱桁橋 本線外回り 5 径間連続鋼床版箱桁橋 鋼製橋脚 15 横羽線改築 単純鈑桁橋の一部桁撤去 大黒線上り改築 単純合成鈑桁橋 2 連の一部撤去・改築 大黒線下り改築 単純合成鈑桁橋 2 連の一部撤去・改築 3.既設門型鋼製橋脚の改築に関する設計検討 3.1 概要 生麦 JCT の機能拡張のため,昭和 62 年に建設され, 平成 10 年に耐震補強された P22 門型鋼製橋脚へ,新設 PN 17 橋脚を一体化させて図-2 に示す 3 本柱の門型 鋼製橋脚への改築を行った. 井藤 一彦* 園部 歩** 下村 康一郎*** 桜井 宏之**** Kazuhiko Ito Ayumu Sonobe Kouichiro Shimomura Hiroyuki Sakurai * 工事本部 橋梁工事部 工事 2 *** 製造本部 鉄構設計部 設計課 ** 技術本部 橋梁設計部 東京設計課 **** 工事本部 橋梁工事部 計画 1 出展:国土地理院電子地形図

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Page 1: YK42工区(2)・YK43工区(B(2)・D(2)・F(1)・H連結 …土木構造物汎用解析プログラムは midas Civil を用いた. (2) 解析モデル 解析モデル図は 図-5

駒井ハルテック技報 Vol.7 2017

81

図-1 位置図

写真-1 生麦 JCT 改築後の全景

YK42 工区(2)・YK43 工区(B(2)・D(2)・F(1)・H 連結路)

上部・橋脚工事

CONSTRUCTION OF THE NAMAMUGI JUNCTION WORKING AREA(2) OF YK42・43

1. まえがき

これまで生麦ジャンクション(以下,生麦 JCT)は,

首都高速神奈川 1 号横羽線(以下,横羽線)と神奈川 5

号大黒線(以下,大黒線)を結ぶ JCT であったが,新た

に神奈川 7 号横浜北線(以下,横浜北線)が開通し,生

麦 JCT で横羽線,大黒線と繋がることにより,横浜方面,

横浜北線方面を加えた全方向をつなぐ JCT へと機能拡張

されることになる(図-1).本工事では,この生麦 JCT

の改良工事において,横羽線,大黒線,横浜北線を結ぶ

新規連結路の建設および改築工事を実施した.完成後の

全景を写真-1 に示す.

本報告では,「既設門型鋼製橋脚の改築」および「Y 型

の分岐部を含んだ DH 分流路」の設計および施工につい

て記載する.

2.工事概要

工事概要を以下に示す.

工 事 名:YK42 工区(2)・YK43 工区(B(2)・D(2)・F(1)・H 連

結路)上部・橋脚工事

路 線 名:高速神奈川 7 号横浜北線,神奈川 5 号大黒線

工事箇所:神奈川県横浜市鶴見区生麦 1 丁目~2 丁目

工 期:自 平成 23 年 9 月 1 日

至 平成 28 年 6 月 25 日

施 主:首都高速道路株式会社 神奈川建設局

構造形式:BF 合流路 4 径間連続鋼床版箱桁橋+5 径間の

内 3 径間連続鋼床版箱桁橋

BF 連結路 3 径間連続鋼床版箱桁橋+3 径間連

続鋼床版鈑桁橋

DH 分流路 4 径間連続鋼床版箱桁橋の内 2 径

間+3 径間連続鋼床版箱桁橋

DH 連結路 5 径間連続 RC 床版非合成鈑桁橋+

3 径間連続 RC 床版非合成鈑桁橋

本線内回り 5 径間連続鋼床版箱桁橋

本線外回り 5 径間連続鋼床版箱桁橋

鋼製橋脚 15 基

横羽線改築 単純鈑桁橋の一部桁撤去

大黒線上り改築 単純合成鈑桁橋 2 連の一部撤去・改築

大黒線下り改築 単純合成鈑桁橋 2 連の一部撤去・改築

3.既設門型鋼製橋脚の改築に関する設計検討

3.1 概要

生麦 JCT の機能拡張のため,昭和 62 年に建設され,

平成 10 年に耐震補強された P22 門型鋼製橋脚へ,新設

の PN 本 17 橋脚を一体化させて図-2に示す 3 本柱の門型

鋼製橋脚への改築を行った.

井藤 一彦* 園部 歩** 下村 康一郎*** 桜井 宏之****Kazuhiko Ito Ayumu Sonobe Kouichiro Shimomura Hiroyuki Sakurai

* 工事本部 橋梁工事部 工事 2 課 *** 製造本部 鉄構設計部 設計課

** 技術本部 橋梁設計部 東京設計課 **** 工事本部 橋梁工事部 計画 1 課

出展:国土地理院電子地形図

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工事報告(橋梁)

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3.2 設計条件

P22 門型鋼製橋脚建設時と本工事において設計条件が

異なる項目を以下に示す.

(1) 横浜北線上部工形式

建設当初:RC 床版鋼鈑桁

本 工 事:鋼床版箱桁

(2) 上部工活荷重

建設当初:TL-20

本 工 事:B 活荷重

(3) 耐震設計

建設当初:レベル 1 地震動による照査

改 築:レベル 2 地震動(保有水平耐力)による照査

本 工 事:レベル 2 地震動(動的解析)による照査

前述の異なる点を踏まえて,本工事の設計条件にて常

時・地震時に対する照査を行い,補強が必要と判断した

部位に補強部材の設置を検討した.本工事における設計

フローを図-3 に示す.

3.3 設計解析結果について

(1) 静的解析結果

前述の設計条件の変更により死荷重を低減できたこと

から,B 活荷重であっても全て許容値に収まった.

(2) 動的解析結果

本線,BF,DH 連結路,大黒線の上部工を上載したモ

デルとして動的解析を実施した.その結果より,塑性化

する既設部材に対し,座屈パラメータを満足するように

図-4 に示す A:縦リブ増設補強,B:横リブ増設補強,

C:既設横リブ補強(当て板補強)を実施した.これは

局部座屈を防いで,じん性を確保するためである.

(3) 隅角部の構造安全性の検証

既設橋脚の隅角部を動的解析断面力で照査すると,補

強だけでは満足せず,主要部材の断面見直しが必要とな

るため,ファイバー・シェル要素を用いたプッシュオー

バー解析を用いて隅角部の耐力を評価し,構造安全性を

検証した.

図-2 既設門型橋脚改築後の全体図

図-3 門型橋脚改築に関する設計フロー

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駒井ハルテック技報 Vol.7 2017

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図-7 柱基部曲げモーメントと橋脚天端変位グラフ

図-4 補強配置図 図-6 P22 橋脚隅角部モデル図

3.4 有限要素解析による構造安全性の検証

(1) 使用プログラム

土木構造物汎用解析プログラムは midas Civil を用いた.

(2) 解析モデル

解析モデル図は図-5 に示す.各部材の要素は下記分類

で定義した.

①P22 橋脚の隅角部:非線形シェル要素(図-6)

②柱部および P22 橋脚の梁部:非線形ファイバー要素

③PN 本 17 橋脚の隅角部および梁部:線形梁-柱要素

また,モデルの違いが解析結果に影響しないことを確

認するために,全ての隅角部を梁-柱モデルとした解

析も行った.

(3) プッシュオーバー解析結果の考察

プッシュオーバー解析による柱基部の面内曲げモーメ

ントと橋脚天端の変位の関係を,動的解析の結果と比較

し(図-7),ほぼ同じ結果を示したことから,同程度の

断面力が生じているものと判断し,隅角部の耐力を判定

した.

図-8 隅角部 B ミーゼスコンター図

746.0 500.0 450.0 400.0 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

単位:N/mm2

○B

○A

P22 橋脚左柱

P22 橋脚左柱

○A

○B 下フランジ平面 ミーゼスコンター図

隅角部 B 着目 ミーゼスコンター図

※赤色部:ファイバー要素,黒色部:シェル要素,実線:線形梁-柱要素

図-8

図-5 解析モデル図

PN 本 17 橋脚上層右柱

PN 本 17 橋脚下層右柱

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工事報告(橋梁)

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写真-2 P22 既設橋脚

1318 1527

セッティングビーム(400H)

968

LJ1

1500

エレクションピース ストロングバック

油圧ジャッキ

引寄せ設備

新設梁

既設柱

(4)隅角部の考察

図-8 に示すとおり,隅角部で降伏に至る箇所は,ウェ

ブとフランジの交差範囲に留まり,隅角部全体への降伏

域の広がりも小さいため,動的解析断面力結果による補

強を行わなくても隅角部が一部損傷する可能性はあるが

橋脚の構造は保持できると判断した.

3.5 架設計画

(1) 3 次元計測を反映した設計・施工

既設橋脚に新設梁部材を連結するため,既設橋脚の中

間梁の仕口の位置を正確に把握する必要があった.既設

橋脚の設置状況を写真-2 に示す.

仕口の計測は路下規制の制約と工場製作の工程を踏ま

え,トータルステーションを用いた 3 次元計測を用いて

形状を決定し,部材は仕口調整可能な構造にて製作した

後,足場設置後に再計測により仕口調整を行う手順とし

た.

3 次元計測と再計測の比較を行うと梁軸方向はほぼ一

致したが,梁軸直角方向は上梁で 5mm(設計値とは

35mm),下梁では 20mm(設計値とは 30mm)異なって

いた. 新設柱の架設後に既設柱梁部仕口、新設柱梁部仕

口を計測した結果,新設柱と既設柱の仕口の向きの誤差

が上梁では 66mm あり(図-9),製作済み部材の仕口角度

を調整代にて工場にて形成し接合した.

また,梁のずれは事前の想定範囲であり,梁の上部工

支点位置の想定ずれ量に合わせ,拡幅した支承台座を製

作し架設を完了した.

(2) 制限された時間での架設

中間梁の架設地点は市道大黒橋通り上であるため,以

下に示す制約条件の中で架設する必要があった.

1)ベント設置不可

2)通行止めは 22:30~05:00

3)架設地点には地組ヤード無し

架設工法は多軸自走台車を使用したクレーン一括架設

工法を採用した(写真-3).また,作業時間の短縮のため

以下の対策を採用した.

1) 地組ヤードから架設地点付近の街路を規制したヤー

ドへ多軸自走台車での事前移動

2) 梁の連結部は新設側を現場溶接から HTB ボルト継手

へ変更

夜間架設当日は,新設側の連結部のボルト部の孔合わ

せと必要ボルト本数を本締めし,既設側の溶接部は図-10

に示すように後日開先の調整が可能なようにセッティン

グビームと引き込み設備にて仮固定した.

写真-3 PN 本 17 梁架設(新設脚)

図-9 PN 本 17 梁平面概要図

図-10 既設脚側固定用設備図

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駒井ハルテック技報 Vol.7 2017

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図-12 鋼床版デッキプレートの折り曲げ方針

4.DH 分流路

4.1 概要

DH 分流路は図-11 に示すように横羽線から大黒線と

横浜北線に分流する分岐部を含み,1 箱桁から 2 箱桁へ

桁数が変化する鋼床版箱桁橋である.構造が複雑である

ため,製作を考慮した設計と桁数が変化する構造の安全

性の確認を行った.

また,本工事で採用した限られたヤード内での大ブロ

ック架設工法と,ベントが無い場合の架設方法について

報告する.

4.2 製作性を考慮した設計

(1) 異なる横断勾配が交差するデッキプレートの製作

本橋梁は曲率が最小 R=50m と小さく,分岐部におい

ては 10%と 1.5%の横断勾配が交差しており ,鋼床版のデ

ッキプレートの折れ角が大きいため,曲率に合わせて鋼

床版のデッキプレートを折り曲げることが困難であった.

そこで図-12 に示すように,ブロック間でデッキプレー

トを折り曲げるラインを直線補完して製作した.直線補

完した場合の曲率に対する平面でのサグ量は 120mm で

あり,サグ量に対して舗装が増厚になる量は 10mm 程度

であっため,直線補完しても問題無いと判断した.なお,

縦リブが鋼床版デッキの折曲げラインを跨ぐ場合は,デ

ッキプレートの折曲げ形状に合わせて縦リブを製作する

ため,バルブ PL から板リブに変更した.

図-13 DH 分流路の PN 本 15 橋脚上支点部構造図

(a)下フランジ平面図

(c)支点部断面図

(b)アウトリガー上フランジ平面図

図-11 DH 分流路平面図

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工事報告(橋梁)

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図-14 有限要素解析モデルの範囲

図-16 FEM 解析結果

(b)対策後

(a)対策前

図-15 解析モデル

(2) 斜角が小さい PN 本 15 橋脚の支点構造

横浜北線の本線を支持する PN 本 15 橋脚は本線に合流

する DH 分流路の支点も兼ねるため,68°の斜角を有し,

負反力が生じることから,アウトリガー構造を採用した.

そこでアウトリガーフランジの裏控え材や支点上補剛材,

ダイアフラム,ジャッキアップ補剛材,縦リブ,支承補

強リブの主要部材に加え,現場溶接線もあり,製作性,

施工性,取合いを考え,部材を兼用するなど合理的な構

造検討を行った.

1)縦リブと支承補強リブの兼用

図-13(a)に示すように橋軸直角方向の支承補強リブと

下フランジの縦リブを兼用させ,支点周りの煩雑さを解

消した.

2)アウトリガーフランジ控え材の構造

維持管理時の通行性,横リブ,縦リブの取付作業空間

を確保するために,図-13(b)に示すように裏控え材に切

欠きを設けた.

4.3 主桁本数変化部の応力性状確認

1 箱桁から 2 箱桁に変化する部分では断面が急変し,

応力分布が複雑となるため,格子解析では確認できない

応力性状を有限要素解析で確認した.

(1)解析モデル

1)解析モデルの範囲

有限要素解析を行う範囲は 1 箱桁から 2 箱桁へ変化す

る横梁 C4 を中心とし,前後の格点 C3~C5 の約 10m の

区間としてモデル化を行った(図-14).

2) 有限要素解析モデル

C3~C5 間の主桁は全てはシェル要素でモデル化し,

鋼床版のバルブリブは簡略化のために板リブとしてモデ

ル化した.また,モデル化した部材端部に格子解析で求

めた断面力を与えることによって,つり合い状態を担保

して解析を行うこととした(図-15).

(2) 解析結果および考察

1) 格子解析と有限要素解析結果の比較

有限要素解析と格子解析の結果を比較すると,発生応

力度の分布傾向はほぼ一致していたが,横梁部は格子解

析に比べ有限要素解析の値が,曲げ応力度で 30%,せん

断応力度でほぼ 0N/mm2(格子解析では 50N/mm2)と小

さくなり,主桁ウェブと下フランジ,デッキプレートに

ついては 20%程度大きくなる傾向を示した.格子解析で

は 1 箱桁→C4 横梁→2 箱桁でモデル化しているため C4

横梁で断面力を伝達しているが,有限要素解析では横梁

を介さず主桁でも断面力を伝達しているためと考えられ

る.

2) 断面急変部の応力集中について

縦リブから主桁ウェブに断面変化する部位において図

-16(a)に示すように応力集中が生じていたので,断面の

急変を防ぐため図-16(b)に示すように緩衝部材を設けて

応力集中を改善した.

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駒井ハルテック技報 Vol.7 2017

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4.4 大ブロック架設

(1) PN 本 15~16 間

本橋梁の架設地点は既存の横羽線上に位置するため,

夜間通行止めの限られた時間内で架設する必要があった.

また,本橋梁架設時点においては上層の本線の主桁架設

が完了しており,限られたスペース内での架設作業とな

った.

そこで架設工法は短時間で施工を実現するため,地組

位置から吊上げ位置まで自走台車で移動させ,大ブロッ

クによる一括架設工法を採用した(写真-4).また,図-17

に示すように横羽線本線部から PN 本 15 の下層梁と上層

梁の間に大ブロックを差し込み,所定位置へ移動して吊

りワイヤーと上層桁が干渉しないように架設を行った.

写真-4 PN 本 15~16 一括架設

図-17 PN 本 15~16 間架設時計画図

(2) PNH1~2 間

本橋梁の架設地点はキリンビール株式会社横浜工場敷

地内であり,以下の制約条件があった.

①敷地内への進入可能日は工場の操業に影響の少ない

日のみとする.

②1250t 吊りクレーンの能力によりブロックを 2 分割す

る必要があるため,敷地内にベントが必要である.

③敷地内でのベント設置と撤去は限定日のみで行う.

そこで,その対策として 2 分割した地組ブロックを受

け,一日で設置撤去が可能となる写真-5 に示す自走台車

上にベントを設置した移動ベントを採用した.写真-6 に

架設状況を示す.

写真-5 移動ベント

写真-6 PNH1~2 間の架設状況

(3) 完成系に合わせた架設工法の採用

以下に主桁の架設順序とその時の支持状態を記載し,

DH 分流路全体を図-18 に示す.

①PN 本 15~PN 本 16 支点支持

②PNH1~PNH2 支点支持

③PNH1~PNBD1 多点支持

④PNH1~PN 本 15 多点支持

上層

移動ベント

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工事報告(橋梁)

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HGL

HGC

HGRGC

ORE

DGL

D GC

DGR

PNH1-B

J1

R1

R2C1

R3R4

R5

J2C2

R6R7

R8C3

R9R10

J3

C4-B

C4

C4-F

J4

R11

R12C5

R13

R14

R15

J5C6

R16

R17

R18

C7

R19

R20

J6

R21

C8

R22

R23

R24

C9 J7

R25

R26

R27

R28

R29

R30

J8

R31

R32

R33

R34

J9

R35

R36

R37

R38

R39

DL1 DL

2

DL2'

DDGL

DGC

DGRD'

DR2

DR2'

RD13

DR1

PN本11

RD2

DJ1

RD3

RD4

CD1

RD5

RD6

DJ2

RD7

CD2

RD8

RD9

RD10

DJ3

CD3

RD11

RD12

CD4

DJ4

RD16

RD14

RD15

CD5

RD18

R D17

DJ5

RD19

CD6

RD20

RD21

RD22

DJ6

RD24

CD7

RD23

RD25

RD26

CD8

RD29

DJ7

RD27

RD28

CD9

RD30

RD31

DJ8DJ9

RD32

RD33

P12-B

RD34

PN本12

RD35P12

-F RD36RD3

7

RD39RD38

RD40RD41

RD42RD43

RD44RD45

RD46RD47

RD49RD48

RD52RD50 RD51

RD54RD53 RD55 RD56 RD57 RD58 RD59 RD60 RD61 RD62 RD63 RD64RD66

RD65RD67

RD68 RD69 RD70

PNBD1

PNBD1'RD71

RD74

RD72RD73

RD75RD76

RD 78

RD 77

RD79

R D80RD81

R D82

RD83RD84

RD85

RD87

RD86

RD88

RD89

RD90RD91

R D9 2RD 93

RD94

RD95

RD9 6

RD97

RD98

RD99

RD100

RD101

RD102

R D103

RD 104RD1 05RD 10 6

RD107 RD108

PNH1-F

HL1 HL2'HL2

H-S

H

HGL

HGC

HGR

H'

HR2

ORE

HR2'

HR1

RH1RH2

RH3

CH1

RH4RH5

HJ1

RH6

CH2

RH7RH8

RH9

CH3

HJ2

RH10

RH11

RH12

CH4

RH13

RH14RH1

5

HJ3

CH5

RH16RH17

RH18

CH6

RH19RH20

HJ4

RH21

CH7

RH22RH23

RH24

CH8

HJ5

RH25RH26RH27

CH9

RH28RH29

HJ6

RH30RH31RH32RH33

HJ7

RH34RH35RH36

RH37

HJ8

RH38RH39

RH40RH41

HJ9

RH42

RH43RH44

RH45

RH46RH47

RH48

RH49

RH50

RH51

RH52RH53

RH54

RH55RH5

6RH57

RH58

RH59

RH60

RH61

RH62

RH63

RH64

RH65

RH66

RH67

RH68

PNH2

PNH2-S

PN本16

PN本15

PNH1

PNH1

901.5 63357.6 支間長 70103.1(D測線上) 76500 78700 9501854.2 桁長 290512.2(D測線上) 350

橋長 292716.4(D測線上)

PN本11 PN本12 PNBD1 PNH1 PNH2

内回り 隣接工区施工範囲

隣接工区施工範囲

橋長 204723.7(H測線上)

600.1 54100 支間長 69447.9(H測線上) 79175.3 950.3100

桁長 204273.6(H測線上)350.1

PN本16 PN本15 PNH1 PNH2H 連 結 路 側 面 図

DGRHGL

E

E F M

FF

M

M

R

架設方向

架設方向①大ブロック架設

⑤クレーンベント架設

②大ブロック架設+クレーン単材架設

④クレーンベント架設

(支点支持)

(多点支持)

(支点支持)

(多点支持)③クレーンベント架設

(多点支持)

①大ブロック架設 ⑤クレーンベント架設 ②大ブロック架設+クレーン単材架設

②大ブロック架設+クレーン単材架設④クレーンベント架設③クレーンベント架設

PNH2

550mm上げ超し

PNH2

550mm上げ超し

(支点支持)(多点支持)(多点支持)

(支点支持)(支点支持) (多点支持)

PN本16

165mm上げ超し

:支承

:大ブロック架設

:調整ブロック

凡例)

架設方向架設方向

架設方向

閉合ブロック(調整ブロック)

閉合ブロック(調整ブロック)

D 連 結 路 側 面 図

○内の番号は架設順序を示す

D 連 結 路

H 連 結

架設方向

本橋は設計時に架設条件が決められず,完成系で設計

されている.しかし架設条件を調査・決定した結果,全

ての径間で多点支持は採用できず設計条件と一致させる

ことができなかった.そのため,完成系の断面力と一致

する施工方法を検討し,③④の施工を行う前に PNH1~

PNH2 の PNH2 でジャッキアップし,同様に⑤の施工を

行う前に PN 本 15~PN 本 16 の PN 本 16 でジャッキアッ

プし,併合後にジャッキダウンする工法を採用した.併

合時のデッキ高さは規格値を満足する結果であった.

(4) 架設時の安全対策

事前の解析で PNH1~2 間は曲線桁の影響でベント解

放時に PNH1 支承部で大きな水平力(1000kN 程度)が発生

するため,ベント解放前に支承を固定し,安全性を確保

した.

5.あとがき

本橋の施工においては,首都高速横羽線の通行止め 18

回,産業道路,大黒橋通りの通行止め 17 回を実施し,

1250ton 吊りクローラクレーンを使用しての大ブロック

架設を 12 回実施した大規模架設であった.また,架設地

点の大部分は首都高速道路,街路(市道幹線 23 号線大黒

橋通,県道 6 号産業道路,市道 218 号),キリンビール株

式会社横浜工場敷地内の上空という厳しい条件であった

ため,大半の作業は夜間施工かつ,狭隘な場所での施工

のため難易度は非常に高かった.さらに,既設桁,既設

橋脚を改築して,新設桁,新設橋脚を連結するといった

施工もあり,多種多様な施工方法・技術を駆使した現場

であった.

このような厳しい条件ではあったが,無事完成するこ

とができ,この現場で得られた経験・技術は当社として

かけがえの無いものとなった.

最後に,本橋の施工に伴い,ご指導とご協力をいただ

いた首都高速道路株式会社および関係各位に深く感謝い

たします.

図-18 DH 分流路とモーメント連結対策