大 阪 大 学 歯 学 会 第66回総会 第 129回 例会...大 阪 大 学 歯 学 会...

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大 阪 大 学 歯 学 会 第 66回総会 第 129回 例 会 プログラムおよび講演抄録集 日  時 令和 2 年 1月 23 日(木)16:30 ~18:45 場  所 大阪大学歯学部 口腔科学研究棟5階 弓倉記念ホール 特別講演 「キャリアパス」と「5年間でスベキこと」  大阪大学大学院歯学研究科 イノベーティブ・デンティストリー戦略室 十河 基文 受賞講演 令和元年度 大阪大学弓倉学術賞・奨励賞 表彰および受賞講演 「 顎顔面の発生に必要不可欠なレチノイン酸 -Gata3 シグナルの同定 」 大阪大学歯学部附属病院 矯正科(歯科矯正学教室) 黒坂 寛 「ストロンチウム徐放型バイオアクティブガラスの創製と歯科材料への応用 」 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 (歯科理工学教室) 佐々木 淳一 講演者へのお願い 1)発表に用いる電子ファイル(Power Point)を、歯学会事務室へ ご送付願います。 2)発表用 PC は、Windows10 + PowerPoint 2013 です。 3)液晶プロジェクターは一面の使用が可能です。 4)一般演題の発表時間は 8 分、討論は 2 分です。 参加者へのお願い 1)日歯生涯研修カードをお持ち下さい。

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大 阪 大 学 歯 学 会第 66回総会第 129回 例会

プログラムおよび講演抄録集

日  時 令和 2年1月23日(木)16:30 ~18:45

場  所 大阪大学歯学部 口腔科学研究棟5階 弓倉記念ホール

特別講演 「キャリアパス」と「5年間でスベキこと」      大阪大学大学院歯学研究科 イノベーティブ・デンティストリー戦略室 十河 基文

受賞講演 令和元年度 大阪大学弓倉学術賞・奨励賞 表彰および受賞講演    

      「 顎顔面の発生に必要不可欠なレチノイン酸 -Gata3 シグナルの同定 」

     大阪大学歯学部附属病院 矯正科(歯科矯正学教室) 黒坂 寛

「ストロンチウム徐放型バイオアクティブガラスの創製と歯科材料への応用」

     大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 (歯科理工学教室) 佐々木 淳一

講演者へのお願い1)発表に用いる電子ファイル(Power Point)を、歯学会事務室へ  ご送付願います。2)発表用 PCは、Windows10 + PowerPoint 2013 です。3)液晶プロジェクターは一面の使用が可能です。4)一般演題の発表時間は 8分、討論は 2分です。

参加者へのお願い1)日歯生涯研修カードをお持ち下さい。

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プログラム

開会の挨拶(16:30)                               会 長:今里  聡  

【一般演題 】(16:35 ~ 17:05)                                       座 長:田中  晋  

(16:35 ~ 16:45)1)幼若ラットの成長に伴う口腔機能の変化 ----------------------------------------------------------------------------------------------------1  大阪大学大学院歯学研究科 高次脳口腔機能学講座(口腔生理学教室)1

大阪大学歯学部附属病院 障害者歯科治療部 2

○下田 麻央 1, 2、豊田 博紀 1、片桐 綾乃 1、佐藤 元 1、秋山 茂久 2、加藤 隆史 1

(16:45 ~ 16:55)2)口腔粘膜における液状化検体細胞診診断性能に関する検討 ------------------------------------------------------------------------ 2   大阪大学歯学部附属病院 検査部 ○大家 香織、近堂 侑子、岸野 万伸、福田 康夫、古郷 幹彦

(16:55 ~ 17:05)3)下顎埋伏智歯抜歯に伴うオトガイ神経領域知覚異常のリスク因子 ----------------------------------------------------------------- 3   大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔病因病態制御学講座 ( 口腔外科学第二教室 ) ○窪田 星子、今井 智章、中澤 光博、鵜澤 成一

休 憩 (17:05 ~ 17:10)

(17:10 ~ 17:15)令和元年度 大阪大学弓倉学術賞・奨励賞 表彰式

【受賞講演 】令和元年度 大阪大学弓倉学術賞・奨励賞 受賞講演(17:15 ~ 17:45)

                                     司 会:仲野 和彦

(17:15 ~ 17:30)弓倉学術賞4)顎顔面の発生に必要不可欠なレチノイン酸 -Gata3シグナルの同定 ------------------------------------------------------------- 4   大阪大学歯学部附属病院 矯正科 ( 歯科矯正学教室 )  黒坂 寛

(17:30 ~ 17:45)

弓倉奨励賞5)ストロンチウム徐放型バイオアクティブガラスの創製と歯科材料への応用 -------------------------------------------------------- 5   大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 ( 歯科理工学教室 )  佐々木 淳一

休 憩 (17:45 ~ 17:50)

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(17:50 ~ 18:20)【特別講演】

6)「キャリアパス」と「5年間でスベキこと」 ---------------------------------------------------------------------------------------------------- 6 大阪大学大学院歯学研究科 イノベーティブ・デンティストリー戦略室 十河 基文

休 憩 (18:20 ~ 18:30)

総 会 (18:30 ~ 18:45)

閉会の挨拶(18:45)                  副会長:仲野 和彦

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開会の挨拶(16:30)                    会 長:今里 聡

阪大院歯高次脳口腔機能学講座(口腔生理学教室)1

大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部 2

○下田 麻央 1,2

  豊田 博紀 1

  片桐 綾乃 1

  佐藤 元 1

  秋山 茂久 2

  加藤 隆史 1

【目的】 幼若ラットにおいて獲得した口腔機能の発達過程を評価できるin vivo の実験系は極めて少ない。本研究では、ラットにおいて、生後発達段階を示す行動の出現時期を同定し、発達に伴う舐め行動(リッキング ) やパスタ摂食の変化を調べた。

【方法】 SDラットを用いて以下の行動観察実験を実施した。 1. 行動発達の観察 : 母ラットと飼育中の仔ラットを、生後 14日 (P14) からP34 の期間、ビデオ

撮影した。ビデオ記録から開眼・匂い嗅ぎや飲水・食餌行動の開始日を同定した。 2. 口腔機能の評価 : P18 からP50まで以下のタスクを実施した。  1) リッキングの評価 : 4 時間の絶水後の仔ラットに、シャッターユニット付きケージ内で1.0 M のスクロース溶液を提示した。シャッターの開放からリッキング開始までの潜時と、開始後 10 秒間のリック数を計測した。  2) パスタ摂食の評価 : 4 時間の絶食後の仔ラットに、パスタ(長さ4 cm、φ0.9 mm: 2 本、 φ1.4mm: 1 本、φ1.9mm: 1 本 )を細いものから順に与えた。パスタを完食するまでビデオ 記録し、その時間を計測した。

【結果】 1. 開眼・匂い嗅ぎ行動・飲水行動は P14 から認められ、P16 には全個体で確認された。食餌 行動は P16から開始し、P17には全個体で確認できた。 2. 1) リッキング潜時はP18(82.8±53.0 s)からP24(7.7±7.1 s)で急減し、以降は一定だった。 リック回数はP18(4.4± 3.8 回 ) からP21(51.8± 8.5 回 ) へ急増した後、P36(65.3± 7.5 回 )まで漸増、その後は一定だった (P50:73.9 ± 4.6 回)。  2) P29までに全個体がパスタを完食できるようになり、パスタ完食時間 (mean ±SD) は太い パスタほど長かった (φ0.9 mm : 12.6± 2.9 s ; φ1.4 mm : 84.2± 28.5 s ; φ1.9 mm : 162.4 ± 48.6 s)。以後、φ0.9mm の完食時間は変化しなかったが、P50 にかけてφ1.4 mm, φ1.9mmのパスタ完食時間は経日的に減少した (φ0.9 mm: 9.7± 4.0 s; φ1.4 mm: 31.2± 9.9 s; φ1.9 mm: 59.8± 15.7 s)。

【考察】 飲水・食餌行動はP16からP17 で開始したが、離乳時期とされるP21後もリッキングやパスタ摂食は異なる経日的変化を示した。以上から、獲得した口腔機能が発達とともに変化するメカニズムを解明するために今回の評価法を活用できる可能性が示唆された。

1)幼若ラットの成長に伴う口腔機能の変化

(16 : 35 ~ 16 : 45)

座 長:田中 晋

【 一般演題 】(16:35 ~ 17:15)       

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大阪大学歯学部附属病院検査部

○大家 香織近堂 侑子岸野 万伸福田 康夫古郷 幹彦

【背景・目的】 近年、口腔および咽頭領域に発生する悪性腫瘍による死亡者数は微増を続けている。死亡者数減少や予後成績向上のためには病変の早期発見が重要であり、その為の検査方法の一つとして擦過細胞診が存在する。口腔擦過細胞診の普及は婦人科など他臓器と比較して遅れていたが、口腔がん検診に応用する試みが少しずつ広まり、2015 年には日本臨床細胞学会から口腔領域も含む消化器細胞診ガイドラインが出版された。今回、そのガイドラインに即した当院における口腔擦過細胞診診断性能を検討した。また、採取した検体の処理方法には従来型塗抹細胞診(conventional exfoliative cytology : CEC)と液状化検体細胞診(liquid based cytology: LBC)が存在するが、当院では採取検体の取り扱いと標本作製の標準化が容易なLBC普及を推奨している。その根拠として、CECを用いなくともLBCのみで良好な結果が得られることを示す。

【方法】 本研究では、CEC・LBC併用法とLBC 単独法の2 種類の細胞学的診断結果を用いた。CEC・LBC併用法は 2014 年 4月から2015 年12月まで、LBC 単独法は 2015 年12月から2017年 6月までの間に当院で行われたものである。その中から生検または手術により組織学的に診断が確定した症例を抽出した。一人につき複数の病変が存在する場合は、それぞれを別症例として数えた。また、粘膜上皮と関連しない深在性病変は除外した。各方法に関して、細胞学的診断結果と組織学的診断結果を比較することにより、細胞学的検査結果の正診率、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、判定困難および検体不適正の割合を算出した。

【結果】 CEC・LBC併用法では、正診率、感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、判定困難、および検体不適正の割合は、64% (P≦ 0.023)、61%、73%、86%、41%、3.4%、0.83%であった。同様にLBC 単独法では、それぞれ 60% (P≦ 0.024)、55%、79%、92%、29%、0%、1.2%であった。

【考察】 LBCは良好な特異度、陽性的中率を示し、判定困難と不適切検体の割合も低値であった。CECは検体採取者の手技によっては判定困難となる場合があるが、LBCは手技による影響が非常に少なく、標本作製の標準化が可能で、口腔細胞診の普及および口腔粘膜病変の早期発見に大いに貢献できると考えられた。

2)口腔粘膜における液状化検体細胞診診断性能に関する検討

(16 : 45 ~ 16 : 55)

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阪大院歯顎口腔病因病態制御学講座(口腔外科学第二教室)

○窪田 星子 今井 智章 中澤 光博 鵜澤 成一

【緒言】 下顎埋伏智歯抜歯は最も頻度の高い口腔外科処置のひとつである。同抜歯に伴うオトガイ神経領域知覚異常の発症率は 0.4%~ 8.4%と報告されており、長期間にわたって患者のQOLを損うことも少なくない。従って、同リスクを術前に予測することは重要である。従来、パノラマX線写真における下顎管形態や智歯歯根との関係性から同リスクについての研究が数多くなされてきた。最近、CTによる解析も報告されるようになってきたが、MD-CTが大半であり、被曝量の少ないCBCTを主体としたリスク因子解析の報告はほとんどない。今回、下顎埋伏智歯抜歯施行例における同リスク因子の同定を目的として研究を行った。

【方法】 2010 年10月~ 2018 年 4月の期間中、当科でパノラマX線写真とCBCTの撮影後に同抜歯を施行した858 名1177 歯を対象とし、知覚異常発症例と非発症例(対照群)について後ろ向きに検討した。なお、対照群はランダムにサンプリングされた 235 名 300 歯とした。検討項目は性別、年齢、抜歯側、麻酔方法、術者の経験、Pell&Gregory 分類、CBCT所見(下顎管の頬舌的走行位置、断面形態、壁欠損に接する歯根数)とした。アウトカムを抜歯 1週間後の知覚異常の有無とした。統計ソフトはSPSS 25.0を使用し、統計学的有意水準は 5%とした。

【結果】 知覚異常群は 858 例中 25 例(2.9%)であった。そのうち、18 例は術後 6ヶ月以内に回復したが、1例は症状が継続した。また、6 例は術後 6ヶ月以内の経過観察中に脱落した。 多変量ロジスティック回帰分析により、①年齢 >30 歳 (オッズ比 4.99 ; p = 0.008)、②下顎管の舌側 / 歯根間走行 (オッズ比 7.21 ; p < 0.001)、③下顎管壁欠損に接する複数歯根 (オッズ比 3.75 ; p = 0.015) が、知覚異常の有意な独立因子として同定された。

【考察】 当科においては、下顎埋伏智歯抜歯に際し、上記 3因子をふまえて知覚異常発生リスクを想定し、同抜歯のインフォームドコンセントを行うことが望ましいと考えられた。なお、本研究の限界として、智歯歯根形態や下顎管露出などの術中所見、抜歯手技の詳細は未検討であることが挙げられる。

3)下顎埋伏智歯抜歯に伴うオトガイ神経領域知覚異常のリスク因子

(16 : 55 ~ 17 : 05)

休 憩 (17:05 ~ 17:10)

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(17 : 15 ~ 17 : 30)

 胎生時における顎顔面の発生は複雑かつ精巧な過程を経て行われる。その過程において不具合が生じると顎顔面形成不全が生じる。顎顔面形成不全は全ての先天性疾患の中でも30%以上の高頻度で発生し、患者の生活の質(QOL)を著しく低下させる。現在でも継続的に基礎的な側面からも多くの原因究明が行われているが未だ解明されていない部分が多い。本研究では胎児発生中のレチノイン酸合成に必要不可欠な酵素、Retinol dehydrogenase 10 (Rdh10) 遺伝子の機能阻害を行ったマウスにおいて口唇口蓋裂と後鼻孔閉鎖が併発する事を見出し、それらの発症メカニズムを解明した。具体的には胎生の顎顔面発生においてレチノイン酸シグナルは上皮の規律的な細胞増殖に深く関わり、その阻害が後鼻孔閉鎖や口唇裂を引き起こす事を解明した。さらにこの上皮の細胞増殖の変化はレチノイン酸シグナルの低下によって引き起こされるFibroblast growth factor 8 (Fgf8) の異常な亢進で引き起こされる事を見出した。また詳細な組織学的な解析により継続的な鼻腔の陥凹には規律的な細胞増殖が必要である事が明らかとなり、本研究で用いたRdh10 機能阻害マウスでは細胞増殖を起こすはずの細胞群の著しい細胞死の亢進が認められた。またこの表現型を起こすためにはE8.5までにRdh10 が取り除かれる必要があり、それ以降の機能阻害では同じ表現型は起こらない事が判明した。また神経堤細胞特異的なRdh10 除去は表現形を認めないことから、胎生上皮におけるE8.5以前Rdh10 が行うレチノイン酸合成が正常な鼻腔形成に必要不可欠である事を見出した。この成果は複雑な顎顔面形成不全を理解する上で非常に重要な発見であり、同症状の診断法や治療法開発の基礎的知見となる事が予想される。その後の継続的な研究により現在ではRdh10 の下流で働く遺伝子群を同定しており、候補遺伝子のひとつにGata3 が挙げられる。我々は既にGata3 の機能阻害マウスを作製し、鼻腔の形成不全が起こる事を突き止めている。これらの事より胎児の鼻腔形成にはレチノイン酸 -Gata3 シグナル経路が非常に重要な役割を果たす事を強く示唆するものである。本研究及び本研究から派生した結果よりレチノイン酸 -Gata3 シグナルが顎顔面形成に関係する事を解明した。本シグナル経路は今までに提唱された事のない全く新しいシグナル経路であり、今後顎顔面形成不全の新たな病因として注目される。

       大阪大学歯学部附属病院 矯正科(歯科矯正学教室)黒坂 寛

4)顎顔面の発生に必要不可欠なレチノイン酸 -Gata3シグナルの同定

【受賞講演】令和元年度 大阪大学弓倉学術賞・奨励賞 受賞講演 (17:15 ~17:4 5)

  司会:仲野 和彦

令和元年度 大阪大学弓倉学術賞・奨励賞 表彰式(17 : 10 ~ 17 : 15)

弓倉学術賞

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(17 : 30 ~ 17 : 45)

 骨や歯などの硬組織の欠損は、生活の質(QOL)の低下に直結することから、これら硬組織を修復、あるいは再生させるための新規材料の開発は、近年ますます注目されている。硬組織のための医用材料としては、無機系材料、金属系材料、高分子材料が用いられるが、とくに、リン酸系無機材料は硬組織と組成が近似しており、他の材料と比較してその再生に有利であると考えられている。さらに、このリン酸系無機材料のうち、非晶質材料であるガラスは、組成変化を与えても液体のように均一な性状が得られるため、種々の物質を添加することが可能である。 ところで、ストロンチウムは、化学的に第 2族元素に分類され、周期表ではカルシウムの直下に位置することから、カルシウムに類似した性質を示す。骨粗鬆症の薬に使用されるラネル酸ストロンチウムは、前骨芽細胞のカルシウム受容体を刺激することで骨芽細胞への分化を促進させる。さらに、骨芽細胞への分化によって、細胞からのオステオプロテゲリン産生を誘導し、RANKLを介した破骨細胞分化を抑制する。ストロンチウムは、このようなメカニズムで結果的に生体内において骨量を増加させるといわれている。 これらを背景として、演者らは、ストロンチウムを徐放するバイオアクティブガラスを作製すれば、硬組織の再生を積極的に誘導する材料として利用でき、歯科領域においては骨補填材、逆根管充填材や仮封材として応用できるのではないかと着想し、研究をスタートさせた。まず、ストロンチウムを徐放するバイオアクティブガラスを作製するために、45S5 バイオガラスに酸化ストロンチウムを添加したバイオアクティブガラスを作製した。このガラスから徐放される各種イオンの濃度を測定したところ、ストロンチウムやカルシウムが3週間以上にわたって継続的に徐放されることが分かった。一方、バイオアクティブガラス単体では賦形性に乏しく、機械的強度を有する硬化体を形成することが困難であることから、臨床的な操作性に劣ってしまう。そこで、ストロンチウムを徐放するバイオアクティブガラスを既存のグラスアイオノマーセメントと組み合わせることで、機械的強度が高く、さらに硬組織再生能を有する新規無機材料の開発を試みた。本講演では、これらの研究成果の概略を紹介する。

       大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座(歯科理工学教室)佐々木 淳一

5)ストロンチウム徐放型バイオアクティブガラスの創製と歯科材料への応用

休 憩 (17:45 ~ 17:50)

弓倉奨励賞

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 歯学会例会では新任教授が「特別講演」を担うということで、129 回は十河がいたします。頂戴した30 分の講演時間の中で、2つの柱でお話します。

■ キャリアパス: 今回は1診も聴講する可能性があると聞いています。教授着任後、毎年1診・臨床実習終了直後に行っている 「総合歯科学特論(キャリアパス)」のアンケートにはいつも「もっと早く聞きたかった」と書かれているので、その一部をまずはお話します。 一般社会において「キャリアパス」は、就職した会社の中で「どのように自分がレベルアップできるか」を企業側が提示したり、また一方で、終身雇用でなくなった昨今「キャリアプラン」「キャリアデザイン」という言葉で転職する者や就職前の学生はもちろんのこと、今の社会人は「2~3 年後、さらには10 年後、20 年後の自分の姿を明確に描くことが重要である」とされています。 歯学部では大学を卒業すると、大学 /研究機関 /行政、病院 /開業医勤務、開業といった就職先や、研究者/臨床家などという職種が組み合わせで様々なキャリアパスが考えられます。そんな多様な自分のキャリアを考えるためには「より多くの人の話を聞くべきだ」とも言われており、恐らく私は日本の歯科医師の中でも「変わったキャリア」を持つ5人の中の1人ではないかと思っています。臨床が好きで/研究も好きで/学生教育が大好きな「大学人」としての立場と、決して儲かってはいないものの 50人弱の社員を雇用する阪大歯学部発ベンチャー(総長に兼業許可)の「企業人」としてのキャリアをお話したいと思います。

■ 社会実装 /産学連携の意識化 ID 戦略室の教授着任の 5 年の中で、十河がすべきことは大きく2 つあります。1つは部局内の「特許に対する研究者の意識改革」です。もう1つはチャレンジにはなりますが、そんな特許を含めた各研究者の「研究成果の社会実装の支援」また「産学連携による具体的な製品化」です。 大学で研究するのは当然ですが「研究を真摯にやっている」だけではなく、特許も意識して最終的なアウトプットを考えることが「令和の研究者」だと思っています。2001年来日したノーベル生理学・医学賞選考委員会・ノーベル会議議長をしていたアニタ・アペリア教授は「ノーベル賞授賞者の選考のスクリーニングとしてその研究者がどのような特許を出しているかを調べている」と明確に語っています。 私が2補に残った約 30 年前、「臨床、研究、教育の3本柱だ」と言われたところに今はさらにもう1本「産学連携 /社会実装」の柱を意識の中で加えていただきたく、また国からの運営費交付金が削減される中、指定大学になった阪大は恐らく最初の方に「自分で稼ぎなさい」といわれることになるでしょう。その前に歯学研究科も準備体操をすべきだと思っているそんなお話をできればと思っています(今、抄録をこんな広く書いて、時間足りるかなぁ…)。

       大阪大学大学院歯学研究科 イノベーティブ・デンティストリー戦略室

    十河 基文

6)「キャリアパス」と「5年間でスベキこと」 

【特別講演】(17: 5 0 ~18 : 2 0)

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休 憩 (18:20 ~ 18:30)

総 会 (18:30 ~ 18:45)

閉会の挨拶 (18:45)                   副会長:仲野 和彦

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