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熱力学第1法則

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Page 1: 熱力学第1法則 - 筑波大学 大学院 構造 エネルギー 工学 …abe/ohp-thermal_dynamics/thermal...動作流体 実際に熱で仕事を行うためには動作流体

熱力学第1法則

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熱力学第1法則(the first law of thermodynamics)

☆ 経験的事実や実験

機械的仕事は熱に変換することができる

熱はその一部を機械的仕事に変換できる

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ジュールの実験

• 分銅の落下と水の温度上昇との関係から,機械的仕事 [kgfm]は,熱([kcal]と等価であり,量的に次の関係があることを明らかにした.

• : 熱の仕事当量 kgfm/kcal

• : 仕事の熱当量 kcal/ kgfm

W J Q= *

Q A W= *

J *

A*

J * = 427A

J*

*= =1 1

427

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熱の仕事当量を定めたジュールの実験装置

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熱力学第1法則

「熱と仕事は等価であり,ともにエネルギーの一

形態である.

熱を仕事に変えることも,その逆も可能である.」

→ 熱現象まで含めたエネルギー保存則

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☆ 実際に熱で仕事を行うためには動作流体が必要 → 内部エネルギーの導入

動作流体(working fluid)

• 内部エネルギー( internal energy )

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☆ 実際に熱で仕事を行うためには動作流体が必要 → 内部エネルギーの導入

動作流体(working fluid)

• 内部エネルギー( internal energy)

熱機関等で動力を発生させるために使われる流体・・・ 水蒸気,燃焼ガス

動作流体内部にたくわえられたエネルギー・・・ 分子・原子など物質の構成粒子の運動エネルギー

※ 嵐や竜巻などの流体そのものの運動エネルギー(マクロ)とは異なるという意味で「内部」という.

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☆ 実際に熱で仕事を行うためには動作流体が必要 → 内部エネルギーの導入

Q U U W= − +( )2 1

WUQ Δ+Δ=Δ′ = + ′d Q dU d W

… 熱力学第1法則

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動作流体

☆ 実際に熱で仕事を行うためには動作流体が必要 → 内部エネルギーの導入

※dUが状態量であるのに対して, d’Qとd’Wは状態量ではないことに注意する.

(「 d 」にダッシュ「 d’ 」をつけて区別する)

「 d’Q 」の符号:

動作流体に入る熱を正(+)

動作流体から出ていく熱を負(-)

「 d’W」の符号:

動作流体が外部にする仕事を正(+)

動作流体が外部からされる仕事を負(-)

+ 熱 -

+ 仕事 -

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内部エネルギーを主にした表現・・・ 符号に注意!

「なっとくする演習・熱力学」 著者:小暮陽三,出版社:講談社

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エンタルピー

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エンタルピー(enthalpy)

☆ 動作流体の加熱 →

※これらは同時に起こる↓

まとめて「エンタルピー」と呼ぶ

エンタルピーH:

※U,p,Vは状態量なので,Hも状態量である.

1.内部エネルギーの増加2.膨張による機械的仕事

H U pV= +

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エンタルピー(enthalpy)

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例題5

• 動作流体が圧力147 kPa,容積2.8 m3 の状態から,圧力1.76 MPa,容積0.3 m3 の状態に変化し,エンタルピーが145 kJ増加した.こ

のときの内部エネルギーの変化量を求めよ.

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例題5

( )

3

6332211

1122

11221212

2222

1111

106.283.01076.18.21014710145

×=

××−××+×=

−+Δ=Δ∴−+Δ=Δ

−+−=−+=+=

VpVpHUVpVpUH

VpVpUUHHVpUH

VpUH

A. 28.6 kJ

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熱力学の基礎式

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熱力学の基礎式

熱力学第1法則より,圧力の動作流体の容積がだけ増加するときに外部に対してする仕事は,これを前式に代入して

… 熱力学第1基礎式

一方,エンタルピーの定義式より,H,U,pおよびVはいずれも状態量であるから,これらの微小量

を考えると,となり,これに を代入すると,

これを熱力学第1基礎式に代入すると,… 熱力学第2基礎式

′ = + ′d Q dU d W

′ =d W pdV

∴ ′ = +d Q dU pdVH U pV= +

dH dU d pV= + ( )d pV pdV Vdp( ) = +

VdppdVdUVdppdVdUdH ++=++= )()(VdpdHpdVdU −=+ )(

∴ ′ = −d Q dH Vdp

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☆ 動作流体を加熱するとき,

(1) 容積が変化しない場合(定容過程) ・・・ 例)ボンベの加熱

(2) 圧力が変化しない場合(定圧過程) ・・・ 例)熱気球の加熱

∴ ′ = +d Q dU pdV0=dV

dUQd =′∴

熱力学第1基礎式より,

容積が変化しないから,

※ 加熱量は内部エネルギーの増加量に等しい

∴ ′ = −d Q dH Vdp0=dp

dHQd =′∴

熱力学第2基礎式より,

圧力が変化しないから,

※ 加熱量はエンタルピーの増加量に等しい

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熱力学第1法則のまとめ

☆ 熱力学第1法則 …

使いやすいように変形 ↓

熱力学第1基礎式 …熱力学第2基礎式 …

※ 定容過程では,「加熱量」は「内部エネルギー」の増加量に等しい.

※ 定圧過程では,「加熱量」は「 エンタルピー 」の増加量に等しい.

′ = + ′d Q dU d W

′ = +d Q dU pdV′ = −d Q dH Vdp

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例題6

標準大気圧(101.3 kPa)下で,ある量の水をす

べて蒸発させるために潜熱として4.52 MJの熱

を加えなければならない.そのとき容積は

0.002 m3から1673倍に膨張する.

(1)内部エネルギーの変化量を求めよ.

(2)最初の水のエンタルピーは840 kJであった.

蒸発後の水蒸気のエンタルピーを求めよ.

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例題6

( )6

36

1018.4002.01673002.0103.1011052.4

×=

−×××−×=

Δ−Δ=ΔΔ+Δ=Δ

+=′

VpQUVpUQ

pdVdUQd

pVHQVdpdHQdΔ−Δ=Δ

−=′

0=Δp

QHHQΔ=ΔΔ=Δ 6

3612

12

1036.5108401052.4

×=

×+×=

+Δ=Δ=−HQHQHH

(1) 熱力学第1基礎式より,

A.4.18 MJ

(2) 熱力学第2基礎式より,

定圧過程だから,

A.5.36 MJ

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熱容量と比熱

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熱容量と比熱

気体に熱d’Qを加え,その温度がdTだけ上昇した場合,その気体の「熱容量C」,また,単位質量あたりの熱容量である「比熱c」を

それぞれ, , と定義する.

※ 加熱に必要な熱d’Qは,状態量ではない.… 加熱の条件によって異なる

dTQdC′

=dT

qdc′

=

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<定容熱容量(heat capacity at constant volume)>… 容積一定の場合

• 熱力学第1基礎式 より,容積一定であるから

• これを熱容量の定義式に代入し,内部エネルギーUが温度Tだけの関数であることを考えると,定容熱容量CVは次のようになる.

′ = +d Q dU pdVdV = 0

∴ ′ =d Q dU

CQT

UT

dUdTV

V V

=′⎛

⎝⎜

⎞⎠⎟ =

⎛⎝⎜

⎞⎠⎟ =

∂∂

∂∂

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<定容熱容量(heat capacity at constant volume)>… 容積一定の場合

逆に,内部エネルギーの変化量ΔUは次のように計算できる.

さらに,定容比熱cvについて同様に考えると次のようになる.

∫ ∫==Δ

=

dTCdUU

dTCdU

V

V

∫=Δ

=

=⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛=⎟⎟

⎞⎜⎜⎝

⎛ ′=

dTcu

dTcdudTdu

Tu

Tqc

V

V

VVV ∂

∂∂∂

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<定圧熱容量(heat capacity at constant pressure)>… 圧力一定の場合

熱力学第2基礎式 より,圧力

一定であるから

これを熱容量の定義式に代入し,エンタルピー

Hも温度Tだけの関数であることを考えると,定

圧熱容量CPは次のようになる.

′ = −d Q dH Vdpdp = 0

∴ ′ =d Q dH

C QT

HT

dHdTP

P P

=′⎛

⎝⎜

⎞⎠⎟ =

⎛⎝⎜

⎞⎠⎟ =

∂∂

∂∂

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<定圧熱容量(heat capacity at constant pressure)>… 圧力一定の場合

逆に,エンタルピーの変化量ΔHは次のように計算できる.

さらに,定圧比熱cpについて同様に考えると次のようになる.

∫ ∫==Δ

=

dTCdHH

dTCdH

P

P

∫=Δ

=

=⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛=⎟⎟

⎞⎜⎜⎝

⎛ ′=

dTch

dTcdhdTdh

Th

Tqc

P

p

PPP ∂

∂∂∂

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マイヤーの関係式

気体を加熱して温度をΔTだけ上昇させる.

定容加熱,定圧加熱の二つを考える.内部エネルギーは温度のみの関数なので,両者においての増加量Δuは等しい.定圧過程の方が膨張仕事Δwの分だけ余計に熱が必要である.より定容過程に必要な熱:定圧過程に必要な熱:

wuq Δ+Δ=ΔuqV Δ=Δ

wuqP Δ+Δ=Δwqq VP Δ+Δ=Δ

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マイヤーの関係式[定圧過程に必要な熱]

= [定容過程に必要な熱] + [外部仕事に必要な熱]

・・・ ①

定圧過程の開始時の気体の状態方程式:

・・・ ②

終了時の気体の状態方程式:

・・・ ③

③-②より,

①に代入して,

∴ ・・・ マイヤー(Mayer)の関係式

vpTcTc VP ΔΔΔ +=

RTpv =

( ) ( )TTRvvp ΔΔ +=+

TRTcTc VP ΔΔΔ +=

⎩⎨⎧

=−+=

RccRcc

VP

VP

∴TRvp ΔΔ =

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比熱比(ratio of the two specific heats)

比熱比: →

これをマイヤーの関係式と連立させると,

※ 分子の構成原子数が増すほどκの値は1に近づく

V

P

cc

=κ VP cc κ=

⎪⎪⎩

⎪⎪⎨

−=

−=

Rc

Rc

P

V

1

11

κκ

κ

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気体の定数表

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例題7

• ある気体の内部エネルギーu[kJ/kg],温度t[℃],圧力p[kPa],比容積v[m /kg]の間に次

の関係式が成り立つとき,この気体の定容比熱CV及び定圧比熱CPを求めよ.

u t= +0 067 127.)380(134.0 += tpv

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例題7

u t= +0 067 127.

92.177201.0 +=+= tpvuh

( ) 067.0127067.0 =+=⎟⎠⎞

⎜⎝⎛∂∂

= tdtd

tuc

VV

( ) 201.092.177201.0 =+=⎟⎠⎞

⎜⎝⎛∂∂

= tdtd

thc

PP

A. cv = 0.067 kJ/(kg・K), cp = 0.201 kJ/(kg・K)

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気体の膨張ジュール-トムソン実験

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気体の膨張実験 <ジュールの実験>

A:気体 B:真空

自由膨張

※ 温度変化が無いことを確認 ・・・ ジュール効果

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気体の膨張実験 <ジュールの実験>の意味すること

「ジュールの実験」は内部エネルギー一定で容積を変える実験(自由膨張)

熱力学第一法則より,温度不変 →自由膨張 →

よって、内部エネルギーUを温度Tと体積Vの関数と考えると,

体積は変化しても温度は変化しない

すなわち,「内部エネルギーは体積に関係なく,温度のみの関数である.」

WUQ Δ+Δ=Δ0=ΔQ0=ΔW

120 UUU −==Δ 21 UU =∴

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ジュール-トムソンの細孔栓実験

ゆっくり,ピストン1を押してゆく

熱平衡状態 = 準静的過程

実験結果

温度低下

ジュール-トムソン効果

21 pp >

絞り膨張

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ジュール-トムソンの細孔栓実験

熱力学第一法則より,

断熱変化 →

実際には温度低下する場合と温度上昇する場合がある

→ 分子間力の効果

「ジュール-トムソンの実験」はエンタルピー一定で圧力を変える

実験(絞り膨張)

WUQ Δ+Δ=Δ0=ΔQ

22110 2

0

12

1

VpVpdVpdVpWV

V+−=+=Δ ∫∫

21

222111

221112

2211

00

HHVpUVpU

VpVpUUVpVpU

=∴+=+

+−−=+−Δ=

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等温過程と断熱過程

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等温過程(isothermal process)

☆ 状態1から状態2へ等温的に膨張仕事をする場合

p v T1 1 1 p v T2 2 2

1212 Wq

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外部にした仕事

状態方程式より ,

等温過程だから よって

外部にした仕事 は

ここで

より

これを代入して

より だから

111 RTvp = p v RT2 2 2=

T T1 2= p v p v1 1 2 2=w12 ∫=

2

112 pdvwRTpv =RT

vp 1=

[ ]1

212

21

2

112 ln)ln(lnln1vvRTvvRTvRTdv

vRTw =−===∴ ∫

2211 vpvp =2

1

1

2

pp

vv

=

∴ = =w RT vv

RT pp12

2

1

1

2

ln ln

p v T1 1 1 p v T2 2 2

1212 Wq

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供給された熱

熱力学第1基礎式より,

単位質量当たりでは,

理想気体の内部エネルギーは等温過程では変化しないので,

よって,供給された熱q12は,

pdVdUQd +=′

pdvduqd +=′

0=du pdvqd =′∴

12

2

1

2

112 wpdvqdq ==′= ∫∫

2

1

1

21212 lnln

ppRT

vvRTwq ===∴

p v T1 1 1 p v T2 2 2

1212 Wq

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断熱過程(adiabatic process)

☆ 状態1から状態2へ断熱的に膨張仕事をする場合

p v T1 1 1 p v T2 2 2

12W

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断熱過程(adiabatic process)

☆ 状態1から状態2へ断熱的に膨張仕事をする場合

<p,v,Tの関係>

熱力学第1基礎式より

断熱変化だから

さらに

これらを上式に代入して … ①

次に状態方程式 の全微分をとると

… ②

さらに … ③

②と③を①に代入して整理すると

′ = +d q du pdv

′ =d q 0

du c dTV=

pdvdTcV +=0

pv RT=

pdv vdp RdT+ =

∴ = +dTR

pdv vdp1 ( )

c RV =−1

1κvdp pdv+ =κ 0

∴ + =dpp

dvv

κ 0

p v T1 1 1 p v T2 2 2

12W

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断熱過程(adiabatic process)

これを積分して (Cは定数)

(C1は定数)

状態方程式 と連立させてをv消去すると

(C2は定数)

また,pを消去すると

(C3は定数)

これらの関係式をポアッソン(Poisson)の式と呼ぶ

Cvp =+ lnln κ

ln pv Cκ =

∴ =pv Cκ1

pv RT=

∴ ⋅ =−

T p C1

2

κκ

∴ ⋅ =−T v Cκ 13

p v T1 1 1 p v T2 2 2

12W

0=+vdv

pdp κ

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断熱過程において外部にした仕事

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

−=== −−

−∫∫ 12

11

12

1 1

2

11211

1 κκκ

κ vvCdvvCpdvw

( )

( )

( ) ( )

( )( )

⎪⎭

⎪⎬⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

−=

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

−−

=

⎪⎭

⎪⎬⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

−=

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧−

−=

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧−

−=

−⋅=−−

=

⋅−⋅−

=

⋅−⋅−

=⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

−=

−−−−

κκ

κ

κ

κ

κ

κ

κκκκ

κκ

κκκ

κ

κ

κκ

1

2

1111

1

11

1

1

22

11

1

2

111

111

22111

11

2211

2121

2211

22111112

11

112

11

11

11

11

11

1

11

1111

1

ppvp

Cpp

Cpp

vp

vvvp

vvCvvCvp

vpvpvp

TTCTTR

vpvp

vvCvvCvv

Cw

p

この式を元に、外部にした仕事は、以下のように様々な形式で表現できる。

また、熱力学第一法則の第一基礎式 において、断熱を仮定すると、dvpdudq ⋅+=

p v T1 1 1 p v T2 2 2

12W

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断熱過程において外部にした仕事

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

−=== −−

−∫∫ 12

11

12

1 1

2

11211

1 κκκ

κ vvCdvvCpdvw

( )

( )

( ) ( )

( )( )

⎪⎭

⎪⎬⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

−=

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

−−

=

⎪⎭

⎪⎬⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

−=

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧−

−=

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧−

−=

−⋅=−−

=

⋅−⋅−

=

⋅−⋅−

=⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

−=

−−−−

κκ

κ

κ

κ

κ

κ

κκκκ

κκ

κκκ

κ

κ

κκ

1

2

1111

1

11

1

1

22

11

1

2

111

111

22111

11

2211

2121

2211

22111112

11

112

11

11

11

11

11

1

11

1111

1

ppvp

Cpp

Cpp

vp

vvvp

vvCvvCvp

vpvpvp

TTCTTR

vpvp

vvCvvCvv

Cw

p

この式を元に、外部にした仕事は、以下のように様々な形式で表現できる。

また、熱力学第一法則の第一基礎式 において、断熱を仮定すると、dvpdudq ⋅+=

( ) ( )21

2

1

2

112 uudupdvw −=−==∴ ∫∫dvpdudq ⋅−=→= 0

p v T1 1 1 p v T2 2 2

12W

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断熱変化と等温変化: 供給された熱

• 断熱過程の場合:

• 等温過程の場合:

• ここで、 であるから、

• 断熱線の傾斜のほうが大きいことが分かる。

012 =q

0=dT

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−=∴

=⋅+⋅=

vp

dvdp

dvpvdpRTpv

0)(一定

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛⋅−=⎟⎟

⎞⎜⎜⎝

⎛ ⋅−=∴

=⋅+⋅⋅

=

vp

vvp

dvdp

vdpdvvppv

κκ

κ

κ

κ

κκ

κ

1

1 0一定

1>κ

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例題8

• 圧力0.1 MPa,温度300K,比熱比1.4の空気を0.001 m3のシリンダに充填し,容積が1/5になるまでピストンで断熱的に圧縮した.このときの圧力と温度を求めよ.

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例題

• 断熱変化において、外部になされる仕事を現す式を導きなさい。

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例題8回答の方針

より,

より,

1Cpv =κ κκ = 2211 vpvp

=⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛=∴

κ

2

112 v

vpp

31 CvT =⋅ −κ 1

221

11−κ−κ ⋅=⋅ vTvT

=⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛=∴

−1

2

112

κ

vvTT

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熱力学第2法則(the second law of thermodynamics)

<可逆変化と不可逆変化>☆ 不可逆変化(irreversible change)

… ある変化を起こしてそれを元に戻すとき,外部に対して何らかの影響を及ぼしてしまうような変化.

振り子 インクの拡散 熱伝導

☆ 可逆変化(reversible change) … 不可逆でない変化

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熱力学Ⅰ 平成23年度中間試験

• 科目番号: FG40171,FG50171• 受講対象: 工学システム学類

• 単位数: 2単位 必修科目

• 標準履修年次: 第2学年

• 日時: 6月7日(火)2時限(10:10-11:25)

• 教室: 3A304

• 教科書・資料等: 持込不可

• 電卓: 持ち込み可

• 試験範囲: 熱力学第一法則まで