伝熱工学講義ノート 第8版 -...

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埼玉工業大学(小西克享) 伝熱工学講義ノート(第 8 版) 1/178 1 伝熱工学講義ノート (第 8 版) 埼玉工業大学工学部機械工学科 小西克享

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埼玉工業大学(小西克享) 伝熱工学講義ノート(第 8 版) 1/178

1

伝熱工学講義ノート

(第 8 版)

埼玉工業大学工学部機械工学科

小西克享

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埼玉工業大学(小西克享) 伝熱工学講義ノート(第 8 版) 2/178

2

はじめに

やかんで湯を沸かす.冷蔵庫で氷を作る.洗濯物が乾燥する.路面の水が蒸発する.等々,日

常的に目にする機会の多い事柄は,すべて熱の移動を伴う現象である.工業的にも生産工程にお

いて,加熱や冷却といった熱の問題は避けて通ることができない.熱の移動に関する知識は伝熱

工学として理論的に体系化され,熱の概念を扱う熱力学とともに熱工学分野の重要な科目となっ

ている.機械系エンジニアにとって,伝熱の基本的な知識は必要不可欠である.

本書は教員が講義する上で用いる講義ノートの形式をとっており,伝熱工学に関する要点をま

とめると共に,式の導出を詳細に解説している.各項目に関して,市販の教科書の解説を熟読す

ると共に本書を併用することによって,重要事項の理解が容易になるものと期待している.

内容は今後とも加筆修正の予定である.内容に関して不明な点やお気付きの点があれば著者ま

でご連絡いただきたい.

平成 26年 9月 1日

埼玉工業大学 工学部 機械工学科 小西克享

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目次

第 1章 伝熱工学の基礎事項

1.1 伝熱の定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

1.2 伝熱の本質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

1.3 伝熱の 3形式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

第 2章 定常熱伝導

2.1 熱流束(heat flux) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

2.2 フーリエの法則 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

2.3 熱伝導率,λ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

2.4 温度場 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

2.5 平行平板の熱伝導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

2.6 円管の熱伝導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

2.7 球状壁の熱伝導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

熱伝導のまとめ1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

熱伝導のまとめ2(伝熱量の式) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

第 3章 熱通過

3.1 熱伝達率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

3.2 平板壁の熱通過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

3.3 多層平板壁の熱通過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

3.4 円管の熱通過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

3.5 多層円管の熱通過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

3.6 伝熱面付着物の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

第 4章 熱交換器の伝熱計算

4.1 熱交換器の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42

4.2 温度差 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42

4.3 対数平均温度差 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

4.4 温度効率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48

4.5 エネルギー効率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

第 5章 フィンの伝熱

5.1 温度分布の式と全放熱量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

5.2 フィン効率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

5.3 フィン付き伝熱面からの放熱量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55

5.4 フィン付き伝熱管の放熱量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57

第 6章 無次元数

6.1基本単位と次元式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60

6.2 無次元数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60

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6.3 レイノルズ数(Re数): 流れの特性を表す無次元数 ・・・・・・・・・・・・・・ 60

6.4 ヌセルト数(Nu数): 熱伝達の大きさを表す無次元数 ・・・・・・・・・・・・・・ 62

6.5 プラントル数(Pr数): 流れと熱移動の相関を示す無次元数 ・・・・・・・・・・・・・・ 63

6.6 グラスホフ数(Gr数): 自然対流の強さを示す無次元数 ・・・・・・・・・・・・・・ 63

第 7章 次元解析

7.1 次元式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

7.2 物理系と工学系の次元式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64

7.3 バッキンガムのπ定理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65

7.4 次元解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67

7.5 次元解析のメリット ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69

7.6 対流熱伝達の実験式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69

第 8章 沸騰

8.1 沸騰様式の分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74

8.2 沸騰熱伝達の様相 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74

8.3 核沸騰と伴流 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74

8.4 沸騰特性曲線 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75

8.5 飽和温度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75

8.6 臨界点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77

8.7 二相流 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77

8.8 核沸騰における熱伝達率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77

8.9 バーンナウト熱流束 maxq [W/m2]の値 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 78

第 9章 凝縮

9.1 凝縮の分類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79

9.2 凝縮熱伝達 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79

9.3 膜状凝縮の熱伝達率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80

9.4 滴状凝縮の熱伝達率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81

9.5 直接接触凝縮の熱伝達率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81

第 10章 放射伝熱

10.1 放射伝熱の概念 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82

10.2 熱放射の基本法則 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82

10.3 高温ガスの熱放射 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85

10.4 二面間の放射伝熱 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86

10.5 放射熱の遮断 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91

10.6 形態係数の算出式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93

10.7 形態係数に関する法則 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94

第 11章 太陽放射

11.1 データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96

11.2 太陽放射のメカニズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97

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11.3 太陽定数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97

11.4 太陽放射の組成(太陽からの放出時) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97

11.5 地表に到達する成分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98

11.6 日射量の測定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98

第 12章 物質拡散(拡散)

12.1 拡散現象 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100

12.2 フィック(Fick)の法則(拡散方程式) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101

12.3 境界層の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105

12.4 拡散に関する無次元数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106

12.5 拡散係数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107

12.6 液滴の蒸発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107

第 13章 内部発熱問題

13.1 内部発熱を伴う円柱内部の熱伝導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111

13.2 発熱体を内部にもつ円筒の熱伝導 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112

13.3 発熱体から液体への熱伝達 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113

第 14章 Excelによる非定常および定常伝熱計算

14.1 熱伝導方程式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118

14.2 差分近似 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 122

14.3 表計算による直交座標系非定常熱伝導の数値解法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125

14.4 表計算による円柱の非定常熱伝導の数値解法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133

14.5 直交座標系定常熱伝導の数値解法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135

14.6 円柱座標系定常熱伝導の数値解法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144

14.7 熱交換器の定常熱伝導の数値解法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147

14.8 フィンの定常熱伝導の数値解法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 153

14.9 非定常拡散の数値解法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156

理解度チェック ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 158

理解度チェック解答 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 175

引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 178

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第 1章 伝熱工学の基礎事項

1.1 伝熱の定義

伝熱 (heat transfer) = 熱の移動

工学の分野では熱,物質,電子,情報などの移動や伝達の問題を扱うことが多い.これらの要

素は相互に関係を持ち,組み合わせによって熱流体,熱電子,電磁流体など呼ばれる.伝熱工学

は主に熱の移動を扱う学問分野であるが,熱に移動には物質の移動を伴う場合と,伴わない場合

がある.

物質の移動を伴う場合 → 流体の伝熱

物質の移動を伴わない場合 → 固体内部の伝熱,熱放射

このほか,

物質のみの移動=流動(流体)および物質拡散

電子の移動=電流

情報の移動=通信(情報伝達)

などがある.

1.2 伝熱の本質

熱の本質は分子の振動(もしくは回転)による運動エネルギーであり,熱はエネルギーの一種

と言える(熱力学の第 1 法則).振動(回転)が激しければ激しいほど高温となる.伝熱とは,

より激しく振動(回転)する分子が振動(回転)の弱い周囲の分子をより激しく振動(回転)さ

せる.このとき,分子から分子に運動エネルギーの伝播が起き,熱は高温から低温に流れるとい

う現象(熱力学の第 2 法則)が発生する.また,物質はその表面から電磁波を放出するとともに,

他からの電磁波を吸収して熱に変換する性質がある.このため,物体間では電磁エネルギーの伝

播が起こる.これがもう一つの伝熱の本質である.

(1) 振動(回転)エネルギーの伝播=分子の振動もしくは回転のエネルギーが伝達

① 固体,静止液体,静止気体の場合

物体(固体,静止液体,静止気体)が暖められると,物体を構成する分子が強く振動する.液

電子 物質

情報

電磁流体

熱流体

熱電子

通信

流動 電流

伝熱

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体や気体の場合は分子が回転することもある.分子の振動(回転)は周囲にある他の分子を振動

(回転)させるため,振動(回転)のエネルギーは次々と分子間を伝播して行く.分子の振動も

しくは回転のエネルギーが周囲に伝播する現象を熱伝導という.

② 流れがある場合

流れが存在すると(分子が流れていると),分子間の接触が静止時より活発となって分子の振

動(回転)が周囲に伝播しやすくなり,伝熱が促進される.壁面近傍の温度分布は急勾配となる.

温度差によって流体内部には密度差が発生し,周囲より軽い部分には浮力が生じて上昇しようと

するため,自然に流れが発生する.これを自然対流と呼ぶ.(強制的に流れを発生させた場合は

強制対流という)対流がある場での熱移動は対流熱伝達と呼ばれる.

参考:電流

電子が左端から流れ込むと,左端の原子は流れ込んだ電子を取り込み,持っていた電子(自由

電子)を隣の原子に渡す.電子の受け渡しは連鎖的に発生する.これが電流(電子の流れ)であ

る.電子そのものが導体内を通過する速度は遅いが,導体内部の自由電子ほぼ一斉に移動するた

め,電気が伝わる速度はきわめて高速である.

分子(粒子)の振動

振動:弱

低温側

振動:強

高温側 熱の流れ

固体(静止流体)内部

振動が減衰しながら伝わる

分子(粒子)

流れ=分子(粒子)の流れ

振動伝播

分子(粒子)の振動

流れがある場合

(対流熱伝達)

流れ=0のとき

(熱伝導)

壁面からの高さ

y

壁面 壁面

温度分布

は直線的

温度 温度

y

温度分布は壁面近傍

で急激に変化する

分子

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(2) 電磁エネルギーの伝播=電磁波

すべての物体からは電磁波が放出されている.その強さ(放出されるエネルギー)は絶対温度

の 4 乗に比例している.これを熱放射という.物体は電磁波を放出すると同時に,他の物体から

放出された電磁波を吸収している.このため,放出する電磁波のエネルギーより吸収するエネル

ギーの方が大きい場合,物体は加熱され,放出量が上回る場合には冷却されることになる.

例題 1.1 伝熱の本質は何と何か?

解答 「運動エネルギーの伝播」と「電磁エネルギーの伝播」

1.3 伝熱の 3形式

(1) 熱伝導 (heat conduction):

固体(静止液体・静止気体)中を熱が高温部から低温部に移動する現象を熱伝導という.

熱力学の第 2 法則

ex)金属棒の一方を加熱すると,他方は徐々に暖かくなる.

(2) 対流熱伝達 (heat convection, convection heat transfer):

流れ場における熱の移動.特に,流体から固体壁(もしくはその逆)へ熱が移動する現象を対

流熱伝達という.

ex)やかんで湯を沸かす.

(3) 熱放射 (thermal radiation):

e e e

e e

電子の流れ=電流(向きは逆)

自由電子

密着の場合,ほぼ同時に運動

球が離れている場合,遅れて運動

押す

押す

球の衝突(距離による違い)

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あらゆる物体は,物体の温度に応じて様々な電磁波を物体表面から放出(放射)している.放

射された電磁波を他の物体が受けると,電磁波はその物体表面で吸収されて熱に変わる.このよ

うな伝熱を熱放射という.

ex)日に当たると暖かい.

例題 1.2 対流熱伝達は,伝熱の本質のどれに該当するか?

解答 「運動エネルギーの伝播」

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第 2章 定常熱伝導

2.1 熱流束(heat flux)

単位時間 [s]に単位面積 [m2]を通過する熱量 [J]を熱流束 (heat flux) [W/m2]と呼ぶ.速度を

表わす「流速」とは字が異なるので注意が必要である.一般に,熱が伝わる物体(物質)の断面

積が変化するため,熱流束は次の微分形で表わされる.

qdQ

dA [W/m2]

ここで,Qは単位時間当たりの通過熱量(伝熱量)[J/s],Aは断面積 [m2]である.

参考:熱流束の単位は次のように導出される.

単位222 m

W

m

J/s

sm

J

通過熱量(断面を通過する熱量,伝熱量ともいう)は熱流束を断面積で積分したものとなり,次

式で表される.

通過熱量 Q qdA

定常状態のとき,熱が伝わる物体(物質)の断面積が変化する・しないにかかわらず,どの断

面でも通過熱量(伝熱量)は一定となる.

参考:通過熱量に差が生じる場合は,図に示すように加熱もしくは冷却が起こる非定常現象

となる.

一方,断面積が一定なら熱流束は一定となるが,断面積が変化する場合は断面積が小さい所ほど

熱流束が大きくなる.

断面積一定の場合

断面積が一定の場合,どの断面でも通過熱量(伝熱量)は等しい.同様に,熱流束もどの断面

でも等しくなる.熱流束 q を,断面積を Aとすると通過熱量 Qは,

qAdAqqdAQ

と表される.dAの積分は断面積を表す.すなわち, A dA

Q1>Q2 Q1<Q2

物体の温度上昇 物体の温度降下

A

Q

q

A

積分は面積を

求めること

q 一定

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断面積が変化する場合

伝熱量は定常状態なら,どの断面でも通過熱量(伝熱量)は等しい.(熱流束は等しくない.)

通過熱量は

Q Q Q Q1 2 3 ( )一定

となり,このとき,熱流束 q は

qdQ

dA

であるから,各断面の位置で

qdQ

dA1

1

, q

dQ

dA2

2

, q

dQ

dA3

3

となる.断面積が異なるから熱流束は一定とはならない.断面積が小さい所ほど熱流束が大とな

る.

q q q1 2 3 (q q q1 2 3 )

例題 2.1 定常熱伝導で,断面積が異なる場合,熱流束は大きいのは断面積の大きい方かそれと

も小さい方か?

解答 小さい方

例題 2.2 断面積が 10.0cm2の金属棒の内部を 200Wの熱が流れているとき,熱流束は何W/m2か?

解答

5

41000.2

100.10

200

dA

dQq W/m2

2.2 フーリエの法則

フーリエの法則とは,通過熱量(伝熱量)は温度勾配に比例するという伝熱工学においてもっ

とも重要な法則である.

水=冷却=低温

A1 A3

A2

Q3 Q2 Q1

熱の移動

火=加熱=高温

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注意:伝熱工学では,温度を表す変数としてを用いることが多いため,本書においてもを

用いることとする.

フーリエの法則を式で表すと次のようになる.これをフーリエの式という.

単位時間に微小面積 dAを通過する熱量

比例定数=熱伝導率(物質により値が異なる)

フーリエの式 dAdx

ddQ

温度勾配

dQをプラスにするため,符号をマイナスにする

熱は高温側から低温側へ流れる

このとき,d

dx

0

温度勾配と伝熱量の関係は,次の図のようになる.

フーリエの式を熱流束で表すと,次式となる.

qdQ

dA dA

d

dxdA

d

dx

1

重要: フーリエの式を解く(積分する)と,温度分布が求まる.

例題 2.3 平板壁の両面温度が 80℃と 20℃で,平板壁の厚さが 10.0cm のとき,この平板壁内部

の温度勾配は何 K/mか?

解答

600100.0

0.800.2012

dx

dK/m

x

dQ

q1

q2

q1< q2

温度勾配緩やか→伝熱量小

温度勾配急→伝熱量大

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2.3 熱伝導率,λ

熱伝導率λ [W/(mK)]とはその材質の熱の伝わりやすさを示す物性値であり,物質の種類によっ

て固有の値を持ち,熱伝導率の値は,金属>液体>気体 の順となる.例えば 0℃において,グ

ラスウール 0.040,空気 0.554,鉄 83.5,銅 403 である 1).熱伝導率が小さな材質は,「保温材」

や「断熱材」と呼ばれるが,実際に熱伝導率が 0 の物質は存在しない.

熱伝導率は温度の影響を受けるため,厳密には熱伝導率の値は一定ではない 2).ただし,狭い温

度範囲では差はわずかでありことから,計算を簡単にするため一定とおくことが多い.

1) 引用文献 1 参照

2) 本書 p.15 例題 2.6 参照

2.4 温度場

温度場とは,時間的・空間的に温度分布が存在する場のことである.時間的に変化しない定常

状態における温度分布(定常温度分布)は物体の 3 次元的な形により決る.温度分布が時間的に

変化する場合,非定常温度分布と呼ばれる.

空間的温度場

1 次元温度分布: f x

2 次元温度分布: yxf ,

3 次元温度分布: zyxf ,,

非定常温度場

1 次元温度分布: txf ,

2 次元温度分布: tyxf ,,

3 次元温度分布: tzyxf ,,,

温度場の区別

空間的 時間的

1 次元:温度が x軸方向のみに変化 定常:時間的に温度分布が変化しない

2 次元:x,y 非定常:時間的に変化

3 次元:x,y,z

組み合わせによって呼び方が変わる.例)1 次元定常温度場

温度分布 が存在

温度場

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2.5 平行平板の熱伝導

(1) 単層平行平板

平板内の温度分布は,熱流速に対するフーリエの式

dx

dq

から求めることができる.ただし,x の正の方向に熱が移動する場合 Q>0.逆向きの場合 Q<0 と

なる.

フーリエの式を変形すると

dq

dx

両辺を積分すると

dq

x

dx

に無関係

q

dx

x C C不定積分 積分定数:

q

x Cq

x C ...(1)

(1)式は,x の 1 次関数だから,平板内の温度分布は,下図の赤い線のように直線となることが分

かる.

次に,境界条件を用いて積分定数を決定する.

境界条件(B.C. Boundary Condition の略)を次のようにおく.

)3(

)2(0

2

1

で右端

で左端

Lx

x

(2)式を(1)式に代入すると

11 0 CC

よって

1

xq

(4)

(3)式を(4)式に代入すると

q

L

dx x

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15

2 1 q

L

12

L

q もしくは 21

L

q [W/m2] (5)

平行平板の熱流束は①熱伝導率と温度差に比例し,②板厚に反比例する.

面積 A [m2]を t 秒間に流れる熱量は,次式で与えられる.

AtL

qAtQ 12

[J] もしくは AtL

Q 21

単位:[W/m2][m2][s]=[W・s]=[J]

例題 2.4 壁の外気に触れる面から 2 ヶ所(x1, x2 [m])で温度を測定したところ,θ1, θ2[℃]となっ

た.このとき,熱流束 q[W/m2]はいくらになるか.

解答

12

12

xxdx

dq

012

12

xx

より 0q

符号は方向を示す. 0q なら x 軸の負の方向に熱が流れる.

例題 2.5 平板壁の両面温度差が 80℃で,平板壁の厚さが 10.0mm,熱伝導率が 1.74 W/(mK)

のとき,この平板内部を板厚方向に伝わる熱流束は何 W/m2か?

解答

13920100.0

0.8074.1

dx

dq W/m2

例題 2.6 熱伝導率が温度によって変化する場合の平行平板内温度分布を求めよ.(金属では高

温で,熱伝導率が小さくなるものが多い.例えば,銅.)

解答

熱伝導率を 0 とおく.

外気

(表面)

x1

x2

q

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 16/178

16

dq

dx

より d qdx

両辺を積分すると

dxqd

を代入すると

dxqd

γを積分定数とすると,

qx 2

2

1 (1)

境界条件 0x で 1 より

02

11

2

1 (2)

境界条件 lx で 2 より

ql 2

2

22

1 (3)

(2)-(3)より,

ql 21

2

2

2

12

1

熱流束は

21

2

2

2

1

1

2

1

llq

となる.(1)-(2)より,

0222

022

2

1

1

2

1

2

1

2

1

2

1

2

1

2

qx

qx

qx

解の公式より

qxqx 2222 1

2

1

22

1

2

1

2

0x を代入すると,

λ

θ

λ

θ

β β

熱伝導率 の変化

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 17/178

17

11

1

2

1

2

1

2

1

2

2,

2

となるが,境界条件 0x において, 1 であることを考慮すると,

qx22 1

2

1

22

のみが,解となることがわかる.この解は,関数 0,0,0 cbacxbay と同様

のグラフを描くことになる.ここで, 0,0,0

cba

c

bxcacxbay

は,次図のように, 0 ccxy の原点を(0, 0)から

a

c

b, に平行移動したグラフである.

よって,温度分布は,下図のように上に凸の曲線となる.

0 のとき,この解は関数 0,0,0 cbacxbay と同様のグラフを描くこと

になる. 0,0,0

cba

c

bxcacxbay は,下図のように,

0 ccxy の原点を(0, 0)から

a

c

b, に平行移動したグラフである.

y

x

0 l

この部分が温度分布となる

-a

b/c

x 0 l

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 18/178

18

よって,温度分布は下図のように下に凸の曲線となる.

参考: 2次関数(放物線のグラフ)の性質

y

x

0

a

l

この部分が温度分布となる

-b/c

x 0 l

y

x

y

x

y

x

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 19/178

19

(2) 多層平行平板

熱伝導率λが温度に関係なく一定のとき

①どの層も温度分布は直線

②どの層も熱流束 q は一定

q の値が一定でなければ,どこかの層で

発熱→温度上昇を続ける 温度分布は非定常

吸熱→ 下降

第 1 層から第 n 層までのフーリエの式を変形して,温度に関する式を導くと,

第 1 層 qq1

11212

1

1

第 2 層 qq2

22323

2

2

...

第 n 層 qqn

n

nnnn

n

n

11

y

x

y

x

y

x

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 20/178

20

となるので,枠内の式の両辺をそれぞれ合計すると

n

i i

i

n

nn qq

12

2

1

111

これより

n

i i

i

nq

1

11

[W/m2]

通過熱量は

n

i i

i

n

A

qAQ

1

11

1

[W]

熱伝導抵抗 Rを

n

i i

i

AR

1

1

[K/W]

とおくと

RR

Q nn 1111

[W]

となる.

例題 2.7 図のように 2 層からなる炉壁がある.熱伝導率が 21 のとき,2 層の定常温度分布

として最もふさわしいいのは a, b, c のどれか?

解答 b

例題 2.8 図の 2 点 A,B の温度を求めよ.

a b c

2 m

2 m

2 m 2 m 2 m

10 C

20 C

同じ

B A

30 C

60 C 50 C

40 C

熱の流れる方向

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 21/178

21

解答

熱平衡を考えると,A点に関して

A A B A A50

2

40

2 2

30

2 (1)

A点に入る熱量 A点を出る熱量

B 点に関して

B B A B B60

2 2

10

2

20

2 (2)

B 点に入る熱量 B 点を出る熱量

(1)式より

1204304050 BAAABAA

(2)式より

904201060 BABBABB

2 つの式を連立して解くと

15 570 38

4 38 120 32

A A

B

C

C

2.6 円管の熱伝導

(1) 単層円管

平板の場合,xのどの位置においても

熱流束 constdx

dq

(一定)

通過熱量 constqAQ

すなわち,熱流束 q,通過熱量 Qは一定となる.

一方,円管の定常熱伝導では通過熱量 Q は一定であるが,任意の半径 r における熱流束は変化す

る.重要

l

dr

r 2 r 1

q2 q1

r

1

2

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 22/178

22

通過熱量21 QQ

熱流束q q1 2

注意:21 QQ 円管の温度が上昇 or 降下する過程(途中)にある非定常

通過熱量の計算式を求める.

半径 r の位置での熱の通過面の面積を Aとすると

dr

dAQ

r の正の方向に熱が移動する場合 Q>0.逆向きの場合 Q<0 となる.ここで,半径 r,長さ l の円筒

面の面積は rlA 2 より,円管のフーリエの式は

dr

drlQ

2

となる.この式を変形すると

r

dr

l

Qd

2

不定積分の公式 Crr

dr ln を適用して,与式を積分すると

Crl

Q ln

2

ここで,B.C. を次のようにおく.

)2(

)1(

22

11

rr

rr

(1)式より

)3(ln2

11 Crl

Q

(2)式より

)4(ln2

22 Crl

Q

(3)式-(4)式より

]W[

ln

2

ln2

lnln2

21

2

1

2

12121

r

r

lQ

r

r

rl

Qrr

l

Q

この式は,対数関数の関係式

1

2

2

1 lnlnr

r

r

r より

]W[

ln

212

1

2

r

r

lQ

と表記することもできる。熱流束は

y

x 0

1

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 23/178

23

]W/m[

lnln

2

2

1 2

12

1

2

12

1

2

r

rr

r

r

l

rlA

Qq

直径で表示すると

]W[

ln

212

1

2

d

d

lQ

]W/m[

ln

2 2

12

1

2

d

dd

q

例題 2.9 円管内部の任意の半径 r における温度を与える式を導け.

解答

円管のフーリエの式 12

1

2ln

2

r

r

lQ は任意の位置において成立する.よって,r と r1間

に適用すると

)1(

ln

2

ln

21

1

12

1

2

r

r

l

r

r

lQ

(1)式を整理すると

1

1

2

121 ln

lnr

r

r

r

(2) 多層円管

一つめの層に関して,通過熱量はフーリエの式より

12

1

2ln

2

r

r

lQ

となるから,温度差は

r 2 r 1

1

2

r

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 24/178

24

1

212 ln

2 r

r

l

Q

となる.よって,各層の温度差を並べると

i

in

i i

n

n

n

n

nn

r

r

l

Q

r

r

l

Q

r

r

l

Q

r

r

l

Q

1

1

11

11

2

3

2

23

1

2

1

12

ln1

2

ln2

ln2

ln2

辺々足し合わせると,

よって

i

in

i i

n

r

r

lQ

1

1

11

ln1

2

となる.

例題 2.10 図のように,熱伝導率の異なる 2種類の保温材を同量ずつ円管の周りに施工するとき,

保温性が良いのはどちらか調べよ.ただし, 21 とし,円管表面温度 1 と保温材の最外周部の

温度 2 は同じとする.

解答

温度差を 21 ,パイプの長さを l とすると,通過熱量はそれぞれ

15

7.18ln

1

10

15ln

1

2

15

7.18ln

1

10

15ln

1

2

12

12

21

12

lQ

lQ

b

a

10cm

15cm

18.7cm

λ1

λ2

λ2

λ1 15cm

18.7cm

(a) (b)

n+1

2

n

3 1

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 25/178

25

よって,両者の差をとると

15

7.18ln

1

10

15ln

1

15

7.18ln

1

10

15ln

1

15

10ln

7.18

15ln

1

15

10ln

7.18

15ln

1

2

15

7.18ln

1

10

15ln

1

1

15

7.18ln

1

10

15ln

1

12

15

7.18ln

1

10

15ln

1

2

15

7.18ln

1

10

15ln

1

2

1221

2112

1221

12

12

12

21

12

l

l

llQQ ba

15

7.18ln

1

10

15ln

1

15

7.18ln

1

10

15ln

1

1515

107.18ln

11

2

15

7.18ln

1

10

15ln

1

15

7.18ln

1

10

15ln

1

10

15ln

15

7.18ln

11

2

1221

21

21

1221

21

12

l

l

21 のとき 011

21

たとえば 061.03

1

2

1

018499.01515

107.18ln

02 21 l

0分母

より, baba QQQQ 0

よって,通過熱量は aQ の方が小さい.よって,保温効果は a の方がよい.

2.7 球状壁の熱伝導

円管の場合と同様に,任意の半径 r における通過熱量 Q は一定でるが,熱流束 q は一定ではな

い.

フーリエの法則より

dr

dAQ

r の正の方向に熱が移動する場合 Q>0.逆向きの場合 Q<0 となる.r の位置における面積は,

24 rA

より

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 26/178

26

2

2

4

4

r

drQd

dr

drQ

不定積分の公式 Crr

dr

12

より

Cr

Q

1

4

B.C.

)2(

)1(

22

11

rr

rr

(1)より

Cr

Q

1

1

1

4

(2)より

Cr

Q

2

2

1

4

辺々を引いて

12

12

11

4 rr

Q

よって

12

12

11

4

rr

Q

半径 r の位置における熱流束は,球の表面積が 24 rA なので

12

12

2

12

12

21111

4

4

1

rrr

rr

rA

Qq

直径で表わすと

12

12

12

12

12

12

11

2

22

4

11

4

ddddrr

Q

12

12

2

12

12

212

12

2 11

2

22

2

11

ddd

dd

d

rrr

q

ここで,

2

12 dd

とおくと

2112

21

12

211

dddd

dd

dd

2

1

r dr

球殻の断面

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 27/178

27

なので

1221

12

21

12

12

2

2

11

2

dd

dddd

Q [W]

122

2112

21

2

1

d

dddd

dA

Qq [W]

例題 2.11 球殻内部の任意の半径 r における温度を与える式を導け.

解答

12

12

11

2

dd

Q

は任意の直径間でも成立するから

1

1

12

12

11

2

11

2

dddd

Q

に関して解くと

1

12

121

11

11 dd

dd

温度分布の式を変形すると

d

dd

d

dd

1

11

1

11

12

12

1

12

121

ここで,定数を

12

12

1

12

121 11

1

11

dd

Bd

dd

A

とおけば,

d

BA

と表すことができる.これは,双曲線d

B が Aだけθ方向に平行移動したことを示す.

r2 (d2)

r1 (d1)

r

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 28/178

28

熱伝導のまとめ1

項目 平行平面板 円管 球殻

フーリエの

dxq

d

dx

dq

r

dr

l

Qd

dr

drlQ

2

2

2

2

4

4

r

drQd

dr

drQ

温度分布

[℃]

xL

xq

121

1

直線

1

1

2

121 ln

lnr

r

r

r

対数曲線

1

12

121

1

12

121

11

11

11

11

dd

dd

rr

rr

双曲線

熱流束

[W/m2]

12

L

q 12

1

2ln

r

rr

q

12

1

2ln

2

d

dd

q

12

12

2 11

rrr

q

12

12

2 11

2

ddd

q

122

21

d

ddq

2

12 dd

単位時間当

たりの通過

熱量

[W=J/s]

AL

Q 12

12

1

2ln

2

r

r

lQ

12

1

2ln

2

d

d

lQ

12

12

11

4

rr

Q

12

12

11

2

dd

Q

1221

ddQ

t 秒間の全通

過熱量

[J=Ws]

AtL

Qt 12

t

r

r

lQt 12

1

2ln

2

tdd

t

rr

tQ

1221

12

12

11

4

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 29/178

29

伝熱量RR

Q

21 と表した場合,Rを熱伝導抵抗[K/W]と呼ぶ.(電流R

Ei )

0Q :x 軸の正の方向に熱が移動

0Q :x 軸の負の方向に熱が移動

単層の場合

平行平面板 円管 球殻

熱伝導抵抗

[K/W]

面積 A[m2]の平板の

熱伝導抵抗は次式と

なる

A

LR

長さ l[m]の円管の熱

伝導抵抗は次式とな

1

2ln2

1

r

r

lR

1

2ln2

1

d

d

lR

12

11

4

1

rrR

12

11

2

1

ddR

21ddR

多層の場合

平行平面板 円管 球殻

熱伝導抵抗

[K/W]

面積 A[m2]の平板の

熱伝導抵抗は次式と

なる

n

i i

iL

AR

1

1

長さ l[m]の円管の熱伝

導抵抗は次式となる

n

i i

i

i r

r

lR

1

1ln1

2

1

n

i i

i

i d

d

lR

1

1ln1

2

1

n

i ii rrR

1 11

111

4

1

n

i ii ddR

1 11

111

2

1

n

i iii

i

ddR

1 1

1

熱伝導のまとめ2(伝熱量の式)

平板

021 AL

Q

(温度差>0 となるように計算する)

021 AL

Q

注意:xの負の方向に 0Q としたいときは 1 と 2 を交換

012 AL

Q

x

Q>0

x

Q<0

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 2 章 定常熱伝導 30/178

30

円管

0

ln

221

1

2

r

r

lQ

0

ln

221

1

2

r

r

lQ

注意:r の負の方向に 0Q としたいときは 1 と 2 を交換

0

ln

212

1

2

r

r

lQ

球殻

011

421

21

rr

Q

011

421

21

rr

Q

注意: r の負の方向に 0Q としたいときは 1 と 2 を交換

011

412

21

rr

Q

l

r 2 r 1

Q>0

1

2

l

r 2 r 1

Q<0

1

2

2

1

r1

r2

2

1 r1

r2

Q>0

Q<0

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 31/178

31

第 3章 熱通過

3.1 熱伝達率

流れが存在すると,流体内部の温度分布は流速に依存して変化する.この原因は流動によって

分子間の接触が活発となり,エネルギの伝播が促進されることによる.たとえば,平板に沿う流

れがある場合,壁面から遠く離れた位置では温度は一様である.一方,壁面に近づくにつれて温

度は急激に変化するが,壁面近傍での温度分布は直線ではなく,曲線となる.一般に流速が増加

すると,壁面近傍の温度分布は左下図の AからBのように壁面近傍で大きく変化する特徴を持つ.

このとき,熱伝達率は BA hh となる.仮に,流れが無い場合は右下図の C のような分布となる.

(ただし,重力下では温度差に伴う自然対流が発生するので,完全に流れが無い状態の実現は難

しい.)

注意:熱伝達における固体壁に接する位置での流体内部の温度勾配に起因する熱移動であり,伝

熱の本質は熱伝導である.

流体から壁面もしくはその逆で壁面から流体に熱が伝わる場合,伝熱量は流れ場の様子によっ

て異なるため,計算は容易ではない.そこで,簡便な方法として以下に示す熱伝達の式が考案さ

れた.

熱伝達の式=流体―固体壁間の伝熱において,単位時間当たりの通過熱量を与える経験式.

Q h A f w [W]

固体壁温

流体の温度

伝熱面積

熱伝達率(流れの速度に依存),W/(m2・K)

熱伝達の式における比例定数を熱伝達率という.この熱伝達率は流れの速度に依存するため,

物性値(物質固有の値)ではなく経験値である.熱伝達の式は簡便で扱いやすいものであるが,

熱伝達率の推定が容易ではない.伝熱工学のテキストや資料には,いろいろな状況を想定した推

定値が提案されているが,熱伝導率と異なり値には幅がある.熱伝達率の値が 10 なのか 100 なの

かといったオーダーは簡単に推定できるが,厳密な値を求めることは困難である. ただし,特定

の状況に対しては,のちに解説する無次元数(ヌッセルト数,Nu 数と標記)を用いた実験式が提

B

θf

温度分布

hB

B

固体壁

A

hA

u θw

固体壁

θw

流れがあるとき 流れがないとき

C

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 32/178

32

案されているので,適用できる場合には利用すべきである.

壁面において,流体側の熱伝導量は壁面側の熱伝導量に等しいとみなすことができる.このた

め,熱伝達の式,熱伝導の式の関係を以下のように求めることができる.

熱流束 qQ

Ah f w

壁面における流体側の熱伝導量は

0,

xf

fdx

dAQ

壁面での温度勾配

流体に接する壁面内部の熱伝導量は

0,

xw

wdx

dAQ

これらは等しいから

0,0,

xw

w

xf

fwfdx

dA

dx

dAAh

となる.

例題 3.1 100℃の流体と 10.0℃の壁面との間で対流熱伝達が行われている.熱伝達率が

70.0W/(m2K) のとき,流体から壁面への熱流束は何 W/m2となるか?

解答

6300)0.10100(0.70 wfhq W/m2

3.2 平板壁の熱通過

固体壁をはさんで,流体から別の流体に熱が移動する伝熱形式は,熱通過と呼ばれる.このと

き,流体から固体壁へは熱伝達,固体内部は熱伝導,固体壁から流体は熱伝達が行われ,しかも

それらは同時に行われている.例えば,平板の熱通過は,図のように高温の流体から固体壁を通

して低温の流体に熱が移動する.

熱伝導

熱伝達

熱伝達

固体壁 低温流体

温度境界層が発達

高温流体

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 33/178

33

熱通過では次の 3 つの方程式が考えられる.

高温流体側熱伝達 q h f w1 1 1 1

固体壁内熱伝導 q w w2 1 2

低温流体側熱伝達 q h w f3 2 2 2

一般にh h1 2 (流れの速度が異なるため)

前式より

f w

w w

w f

q

h

q

q

h

1 11

1

1 2 2

2 23

2

辺々加えると

f f

q

hq

q

h1 2

1

1

23

2

定常状態では

q q q q1 2 3 とおくと

21

21

21

21

11

1

11

ff

ff

hh

q

hhq

21

11

1

hh

k

[W/(m2・K)]

とおけば

21 ffkq

ここで,k は熱通過率と呼ばれる.平板の熱通過率の単位は熱伝達率の単位[W/(m2・K)]と同じであ

る(注意:円管および球殻の熱通過率の単位は熱伝導率と同じ[W/(m・K)]).

平板の通過熱量を R

kAQff

ff

21

21

と表したとき,

21

1111

hhAAkR

[K/W]

を熱通過抵抗(もしくは,全熱抵抗)という.ここで,

熱伝達抵抗1

1

1

AhRconv

熱伝導抵抗

ARcond

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 34/178

34

熱伝達抵抗2

2

1

AhRconv

とおくと,

21 convconvdconv RRRR

となる.

注意:次のように熱通過率の逆数 R を熱通過抵抗とする文献もある.この場合,単位が異なるの

で注意が必要.

21

111

hhkR

[(m2・K)/W]

熱通過の式では,温度として 2 つの流体温度 1f , 2f を必要とするが,平板壁の温度は不要で

ある.すなわち平板壁の温度が不明でも,伝熱量を推定することができ,大変有用である.

注意:平板壁の両側の温度 1w , 2w が測定できれば,平板壁内の熱伝導のみを考えればよく,よ

り正確な伝熱量が計算できる.

例題 3.2 図のような平板壁における熱通過率はいくらか.

高温流体側熱伝達率:h1 =70.0W/(m2K)

平板厚さ: =10.0mm

平板の熱伝導率: =1.74W/(mK)

低温流体側熱伝達率:h2 =20.0W/(m2K)

解答

3.14279.14

20

1

74.1

001.00.10

0.70

1

1

11

1

21

hh

k

3.3 多層平板壁の熱通過

平板壁が多層の場合の熱通過の式

熱流束は

21 ffkq

熱通過率は

211

11

1

hh

kn

i i

i

[W/(m2・K)]

熱通過抵抗は

211

1111

hhAAkR

n

i i

i

[K/W]

注意:次のように熱通過抵抗を単に熱通過率の逆数とする文献もある.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 35/178

35

211

111

hhkR

n

i i

i

[(m2・K)/W]

例題 3.3 多層平板壁の熱通過率 k は,h h i i1 2, , / の最小値よりさらに小さいことを示せ.

解答

h h i i1 2, , / のうち,最も小さいものを a,それ以外を biで表すと

1 1 1 1 1

1 1 2 1

1

k h h a b

i

ii

n

ii

n

と表すことができる.bi>0 より

akakbak

n

i i

110

111 1

1

すなわち,kはh h i i1 2, , / のうち,最も小さいものよりもさらに小さい.

例題 3.4 図のように内部が 1400℃となる炉を製作する.耐火壁を厚さ 20cm の耐火レンガで作

り,外側を断熱材で覆う構造とするとき,断熱材の厚さを決定せよ.ただし,物性値は図中の通

りとする.

解答

耐火レンガを通過する熱量は,1m2当り

W3480100014002.0

74.121 wwQ

熱通過の計算⇒断熱レンガ+熱伝達

3480

6.11

1

186.0

01000

1 2

22

2

22

h

Qfw

より

m0374.02

3.4 円管の熱通過

① 円管内側における伝熱

θw1=1400℃

θw2=1000℃

? ℃

θf2=0℃

耐火

断熱

1.74W/(mK)

λ2=0.186W/(mK)

h2=11.6W/(m2K)

20cm

δ2 cm

炉内

外気

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 36/178

36

高温流体側(熱伝達) 11111 wfldhQ (3.4.1)

管の内側面積 温度差=流体から壁へ

円管壁内部(熱伝導)

1

2

212

ln

2

d

d

lQ ww

(3.4.2)

② 円管外側における伝熱

低温流体側(熱伝達) 22223 fwldhQ (3.4.3)

管の外側面積 温度差=流体から壁へ

定常状態では

QQQQ 321

とおけるから

ldh

Qwf

11

11

Ql

d

d

ww

2

ln1

2

21

ldh

Qfw

22

22

辺々足し合わせると

ldhd

d

dh

Qff

11ln

2

11

221

2

11

21

これより

l

d2 d1

Q2 w1

w2

f1

f2

Q1

Q3

h1

h2

内側熱伝達による熱伝達量

壁の熱伝導による熱伝導量

外側熱伝達による熱伝達量

Q1 内側から外側に通過する熱通過量

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 37/178

37

221

2

11

21

1ln

2

111

dhd

d

dhl

Qff

(3.4.4)

したがって,R

Qff

21 とおけば,熱通過抵抗は

221

2

11

1ln

2

111

dhd

d

dhlR

[K/W] (3.4.5)

また,

221

2

11

21

1ln

2

11

dhd

d

dh

lQff

と表されるから

21 fflkQ

とおけば,熱通過率は

221

2

11

1ln

2

11

1

dhd

d

dh

k

[W/(mK)] (3.4.6)

となる.この場合,熱通過率の単位[W/(mK)]が平板の場合[W/(m2K)]と異なるので注意のこと.

熱通過抵抗は,次式で表される.

221

2

11

1ln

2

1111

dhd

d

dhllkR

[K/W]

参考:円管の熱通過では,長さ基準の熱通過率と面積基準の熱通過率を区別する必要がある.面

積基準の熱通過率では,また,円管内側の面積を基準とする場合と,円管外側の面積を基準とす

る場合の 2 種類がある.長さ基準の熱通過率はどの面でも一定であるが,面積基準の熱通過率で

は,内面と外面で熱通過率の値が異なることになる.

熱通過率の単位が異なることにも注意が必要である.

長さ基準の熱通過率 21 ffkLQ : kの単位=W/(mK)

内側面積基準の熱通過率 2111 ffAkQ : k1の単位=W/(m2K)

外側面積基準の熱通過率 2122 ffAkQ : k2の単位=W/(m2K)

ここで,

2

114

dA

:円管内側の面積

2

224

dA

:円管外側の面積

21 AA なので, 21 kk

221

2

11

1ln

2

11

dhd

d

dh

kk

[W/(mK)]

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 38/178

38

221

2

11

2

1

221

2

11

2

11

1 1ln

2

11

4

1ln

2

11

4

1

dhd

d

dh

dl

dhd

d

dh

l

dA

lkk

[W/(m2K)]

221

2

11

2

2

221

2

11

2

22

2 1ln

2

11

4

1ln

2

11

4

1

dhd

d

dh

dl

dhd

d

dh

l

dA

lkk

[W/(m2K)]

上記の(3.4.6)式は長さ基準の熱通過率であるが,πの値を含まないことが異なる.

3.5 多層円管の熱通過

熱通過率は

121

1

11

1ln

1

2

11

1

n

n

i i

i

i dhd

d

dh

k

[W/(mK)] 単位に注意

熱通過抵抗は,次式で表される.

121

1

11

1ln

1

2

1111

n

n

i i

i

i dhd

d

dhllkR

[K/W]

例題 3.5 鉄管の周囲を保温材で覆った 2層管がある.内部は 100℃の温水が流れており,外気温

度は 20℃とする.鉄管は外径 30mm,肉厚 2mm とし,保温材の肉厚は 20mm である.2 層管の熱

通過率はいくらか?また,長さ 1m当たりの通過熱量はいくらか?

ただし,

鉄の熱伝導率は 1 40.0W/(mK)

保温材の熱伝導率は 2 0.300W/(mK)

お湯側熱伝達率: 1h =70.0W/(m2K)

外気側熱伝達率:h2 =1.00W/(m2K)

解答

熱通過率は

mKW/0615.0061542.0

070.000.1

1

030.0

070.0ln

300.02

1

026.0

030.0ln

0.402

1

026.00.70

1

1

1ln

1

2

11

1

121

1

11

n

n

i i

i

i dhd

d

dh

k

通過熱量は

5.15467.15201001061542.021 fflkQ W

20 30 20

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 39/178

39

3.6 伝熱面付着物の影響

長時間使用していると,伝熱面にはさまざまな付着物が堆積する.水との伝熱面では,湯あか,

さび,ごみなど,ガスとの伝熱面では,すす,オイルなどが考えられる.これらの付着物は熱伝

導抵抗となるため,装置の性能に影響を与えることになる.付着物の厚さを s ,熱伝導率を s と

すると,付着物の熱伝導抵抗は

平板壁の場合,

A

r

AR s

s

ss

[K/W]

となる.ここで,s

ssr

は汚れ係数[m2K/W]と呼ばれる.汚れ係数の値は 0.0002 m2K/W 程度であ

る.

円管内側の場合,

[K/W]22

1

2

1

2

1

1ln2

1ln

2

1ln

2

1

11111

11

1

1

1

ld

r

lr

r

lrrlrl

rlr

r

lr

r

lR

ss

s

ss

s

s

s

s

s

s

sss

s

ただし, 11

r

s

円管外側の場合,

1[K/W]22

1

2

1

1ln2

1ln

2

1

2222

22

2

rld

r

lr

r

lrrl

rlr

r

lR

sss

s

ss

s

s

s

s

s

s

ただし,

となる.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 40/178

40

まとめ

熱通過抵抗(熱抵抗)R=熱伝達抵抗 Rconv+熱伝導抵抗 Rcond+付着物の熱抵抗 Rs

表.付着物がない場合とある場合の比較

平板通過熱量 R

kAQff

ff

21

21

[W] →

kAR

1 [K/W]

円管通過熱量 R

lkQff

ff

21

21

[W]→

lkR

'

1' [K/W]

付着物がない場合 付着物がある場合

熱通過率

W/(m2K)

21

11

1

hh

k

2

21

1

11

1

hrr

h

k

ss

熱通過抵抗

K/W

21

111

hhAR

21

111

hhARconv

ARcond

2

21

1

111

hrr

hAR ss

21

111

hhARconv

ARcond

A

rrR ss

s21

熱通過率

W/(mK)

221

2

11

1ln

2

11

1

dhd

d

dh

k

222

2

1

2

1

1

11

1ln

2

11

1

dhd

r

d

d

d

r

dh

kss

熱通過抵抗

K/W

221

2

11

1ln

2

111

dhd

d

dhlR

2211

111

dhdhlRconv

1

2ln2

1

d

d

lRcond

222

2

1

2

1

1

11

1ln

2

111

dhd

r

d

d

d

r

dhlR ss

2211

111

dhdhlRconv

1

2ln2

1

d

d

lRcond

2

2

1

11

d

r

d

r

lR ss

s

例題 3.6

1x のとき, xxxx )1ln(,)1ln( となることを確かめよ.

ヒント:次の値を計算してみる.

)1011ln( 1 )1011ln( 1

)1011ln( 2 )1011ln( 2

)1011ln( 3 )1011ln( 3

)1011ln( 4 )1011ln( 4

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 3 章 熱通過 41/178

41

解答

0953101798.0)1011ln( 1 51053605156.0)1011ln( 1

53170099503308.0)1011ln( 2 5350100503358.0)1011ln( 2

330840009995003.0)1011ln( 3 33580010005003.0)1011ln( 3

0033330000999950.0)1011ln( 4 003330001000050.0)1011ln( 4

例題 3.7

厚さ 2mmの鉄板でできたお湯のタンクがある.内部は 100℃の温水が流れており,外気温度は

20℃とする.このタンクの熱通過率と 1m2 当りの通過熱量はいくらか?また,お湯側に湯あかが

発生し,汚れ係数が 0.0002 m2K/W のとき,熱通過率と 1m2当りの通過熱量はいくらになるか?

ただし,

鉄の熱伝導率は 1 40.0W/(mK)

お湯側熱伝達率: 1h =70.0W/(m2K)

外気側熱伝達率:h2 =1.00W/(m2K)

とする.

解答

湯あかがない場合,

98586.0

00.1

1

0.40

002.0

0.70

1

1

11

1

21

hh

k

W/(m2K)

8688.7820100198586.021 ffkAQ W

湯あかがある場合,

98567.0

00.1

10

0.40

002.00002.0

0.70

1

1

11

1

2

21

1

hrr

h

k

ss

W/(m2K)

8536.7820100198567.021 ffkAQ W

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 4 章 熱交換器の伝熱計算 42/178

42

第 4章 熱交換器の伝熱計算

4.1 熱交換器の種類

(1) 並流式熱交換器と向流式熱交換器

熱交換器にはさまざまな形式があるが,伝熱計算が容易な熱交換器としては並流式熱交換器と

向流式熱交換器に限られる.これらは,図のように高温側と低温側の流体の向きが異なる.並流

式は2つの流体が同じ向きに流れ,向流式では逆方向に流れる.

(2) 直交流式

2 つの流体の流れの方向が直交する形式のもの.伝熱計算は容易ではなく,数式で扱うことが

困難である.

4.2 温度差

(1) 温度差の式

熱交換器の入り口から xの位置にある微小部分 dxを通って高温流体 A→低温流体Bへ伝わる熱

量は

dAkdQ BA

熱通過率

と表される.

x dx dx x

dθB<0 dθB>0

dθA<0 dθA<0 A

B

A

B

A

B

A

B

流体 Aの入口温度

流体 Bの入口温度

Aと Bの入口 Aと Bの出口 Aの入口 Aの出口

熱の移動 熱の移動

出口温度

出口温度 出口温度

出口温度

入口温度

入口温度

Bの出口 Bの入口

向流式熱交換器

並流式熱交換器

温度変化

入口からの距離

dQ

dQ dQ

dQ

dx x

dA

dQ 低温流体 B

高温流体 A

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 4 章 熱交換器の伝熱計算 43/178

43

Aの失う熱量は

APA dCGdQA (Q mc t の関係と同じ.値を正にするため,-を付ける)

0Ad (並流,向流とも)

Bの得る熱量は

向流

並流

向流

並流

BPB

BPB

B

B

dCG

dCGdQ

d

d

B

B

0

0

より

向流

並流

B

A

PB

B

PA

A

CG

dQd

CG

dQd

温度差の変化

dADkdQCGCG

dd BA

PBPA

BA

BA

11

ただし,

BA PBPA CGCGD

11

ここで, BA とおくと

DkdAd

dADkd

dddd BABA

積分区間は,入り口(x=0)から距離 xの位置で,温度差は1→ ,伝熱面積は 0→A となる.

両辺を積分すると

1

1 0

d Dk dAA

1

xdx x C ln より

DkA

DkA

1

1

1

ln

lnlnlnln1

右辺

左辺=

ここで,xeyxy ln の関係より

DkA

DkA

e

e

1

1

よって,高温流体と低温流体の温度差は,指数関数で表されることがわかる.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 4 章 熱交換器の伝熱計算 44/178

44

(2) 流量と温度分布の関係

図で,高温側および低温側の流体の温度分布が aおよび a’のとき,高温側の流量が増加すると,

温度分布は b および b’となる.高温側の流量が無限大のとき,高温側は c のように温度一定とな

るが,低温側は c’のようになる.

4.3 対数平均温度差

高温流体と低温流体の温度差は,指数関数で表されるため,一定とはならない.温度差が変化

するため,伝熱量の計算は複雑となる.そこで,温度差の平均値を用いることで,単純な熱通過

の問題に置き変える必要がある.この温度差は,後述のように式中に対数関数が含まれるため,

対数平均温度差と呼ばれる.

対数平均温度差 m を用いると,交換熱量は単純な熱通過問題として解くことができる.

平板式熱交換器の場合 mkAQ となる.(Aは伝熱面積)

円管式熱交換器の場合 mlkQ ' となる.(lは管長)

注意:熱通過率の単位に注意

k:W/(m2K),k’:W/(mK)

低温側 g1

b

w1

高温側 a

c

a’

b’

c’

伝熱面積 A(距離に比例) 0

並 流

向 流

タンクでは

対数平均温度差を用いることで,タンクと同じような熱通過の問

題に置き換えることができる.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 4 章 熱交換器の伝熱計算 45/178

45

対数平均温度差の導出

高温流体と低温流体の温度差の平均を m とすると, m =グラフの面積/底辺となる.よっ

111 1

0

1

0

1

0

DkA

A

DkAA

DkAA

m eDkA

eDkA

dAeA

dAA

ここで,

DkAe

1

だから

1

ln

DkA

1

1

1

1

1

ln

1

ln

m

入口と出口の温度差を 1 2, とすると, 2とおいて

A 0

温度差の変化(指数曲線)

指数曲線の描く面積

A

B

並流式熱交換器の熱通過

の式で計算できるが,

と が不明なので,

平均値 も も不明

と の温度差を の平均値 を

使い, として計算できる.

となる.式を解くと

と表わされるため,

対数平均温度差と呼ばれる.

面積等価

A

B

一般的な熱通過問題

(流体の温度一定)

面積

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 4 章 熱交換器の伝熱計算 46/178

46

2

1

21

1

2

12

lnln

m

参考)対数平均温度差の式を以下にように表わすと,添え字の順番を暗記しやすい.

21

21

2

1

21

12

12

1

2

12

lnlnln

lnlnln

m

m

1 と 2 の温度差が小さいとき,次のように,算術平均を用いても誤差は少ない.

2

21

m

熱交換による伝熱量は

mkAQ

となる.

例題 4.1 質量流量 1.00t/h のガスを 15.0℃から 40.0℃まで加熱することが出来る平板式熱交換器

を設計したい.加熱には 300kg/h の温水を用いる.図を参考にして,並流,向流それぞれの伝熱

面積を求めよ.ガスの比熱は 1.00kJ/(kgK),水の比熱は 4.1868kJ/(kgK),熱通過率は 29.1W(m2K) と

する.温水入口温度を 80℃とする.

解答

水が失った熱量 21 wwwwwww WcWc

ガスが得た熱量 12 ggggggg WcWc

両者は等しいから

1221 ggggwwww WcWc

より

向流

1t/h=1000kg/h 1t/h=1000kg/h

300kg/h 300kg/h

並流

w2

g1=15.0℃

w2

g2=40.0℃ g1=15.0℃

w1=80.0℃ w1=80.0℃

対数平均温度差(並流,向流とも同一)

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 4 章 熱交換器の伝熱計算 47/178

47

℃1.60

9.1980

6944W6944J/sJ/h10250.150.401000101.080300101868.4

2

2

63

2

3

w

w

w

対数平均温度

222

111

2

1

21

ln

gw

gw

m

を用いると,熱交換による伝熱量は

mkAQ

したがって

mk

QA

並流のとき,

1.200.401.60

0.650.150.80

222

111

gw

gw

256.38

1.20

0.65ln

1.200.65

ln2

1

21

m ℃

2m24.62376.6

256.381.29

6944

mk

QA

向流のとき,

1.450.151.60

0.400.400.80

122

211

gw

gw

499.42

1.45

0.40ln

1.450.40

ln2

1

21

m ℃

2m61.56148.5

499.421.29

6944

mk

QA

向流のとき, 1 と 2 の温度差が小さいので,次式を用いても良い.

55.422

1.450.40

2

21

m ℃

2m61.56081.5

55.421.29

6944

mk

QA

と同じ結果が得られる.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 4 章 熱交換器の伝熱計算 48/178

48

4.4 温度効率

次の式で表わされる効率である.熱交換器において,温度 1B の低温流体 B が到達しうる最高

温度は,高温流体の入口温度である 1A である.よって,2つの流体の入り口温度差に対して,実

際の温度上昇分がいくらになるかは,熱交換器の性能を表わす指標となる.

(冷却時)最大温度降下分

実際の温度降下分

(加熱時)最大温度上昇分

実際の温度上昇分

t

並流,向流とも

流体 A:11

21

BA

AAAt

流体 B:11

12

BA

BBBt

横軸:pAAcG

kANTU :伝熱単位数

NTU=Number of Heat Transfer Unit の略

パラメータ β:高温側流体 Aと低温側流体 Bの熱容量の比:pBB

pAA

cG

cG

β = 1→ 高温側 Aと低温側 Bは同じ熱容量

β = 0→ 高温側 Aは低温側 Bと比べて熱容量は無視できる

βが1に近づく(高温側 Aと低温側 Bの熱容量が近づく)につれ,向流式の方が,温度効率が高

くなる(出口温度が同じでよければ熱交換器を小型化できる)ことが分かる.

並流,向流,直交流の温度効率を 321 ,, とすると, 132 となる.

NTU

:熱容量の差が大きい

(並流式)

1

0 1 2 3 4

(向流式)

:熱容量が同じ

温度効率の変化

A

B

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 4 章 熱交換器の伝熱計算 49/178

49

4.5 エネルギー効率

熱交換器において,温度 1B の低温流体 B が到達しうる最高温度は,高温流体の入口温度であ

る 1A である.このとき,低温流体 Bが得る熱量は

11max BABBB wcQ

となる.一方,温度 1A の高温流体 Aが到達しうる最低温度は 1B である.このとき,高温流体 A

が放出する熱量は

11max BAAAA wcQ

となる.実際に熱力学的に交換可能な最大熱量は, maxAQ か maxBQ のどちらかのうち小さい方で

ある.これを maxmax ,min BA QQ と表記する.

実際に,交換が行われる熱量は,高温流体 A,低温流体 Bともに等しい.

1212 BBBBAAAA wcwcQ

両者の比をエネルギー効率と言う.

maxmax ,min BA QQ

Q

A

B

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 50/178

50

第 5章 フィンの伝熱

伝熱の分野では,魔法瓶のように保温することが重要な場合と,冷凍機のように積極的に冷却

(放熱)させることが重要な場合があり,それぞれに方法や概念が異なる.

① 保温する=伝熱抵抗を増やす=伝熱(放熱)面積を減らし,保温材(断熱材)を巻き付ける.

② 冷却(放熱)を促進する=伝熱(放熱)面積を増やす=フィンを付ける.

5.1 温度分布の式と全放熱量

フィンの放熱効果を確認するには,フィンからの全放熱量の算出が不可欠である.放熱量を算

出するには,フィンの温度分布を求める必要がある.フィンの温度分布がわかると,フィンから

の全放熱量はフィン付け根における熱伝導から求めることができる.

フィンの温度分布は以下のようにして求めることができる.

フィンの微小部分における熱の移動を考えると,

微小部分への入熱 dQ’

微小部分からの放熱

熱伝導によるもの dQ”

大気への熱伝達 dQ

断面積 A,周囲長 S の断面が円形のフィンを考える.定常状態を仮定すれば,微小要素におい

て流入熱量と放熱量を等しくおくことができる.

"'"' dQdQdQdQdQdQ (5.1.1)

ここで,フーリエの法則から

dxdx

d

dx

dAdQ

dx

dAdQ

"

'

断面積 A

0

x dx

dQ” dQ’

dQ

周囲長 S

雰囲気温度

壁面

フィン

フィンの温度分布

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 51/178

51

①式に代入すると

dxdx

dAdx

dx

d

dx

dAdQ

2

2

(5.1.2)

熱伝達の式より

SdxthdQ 0 (5.1.3)

(5.1.2)式=(5.1.3)式とおけば

Sdxthdxdx

dA 02

2

変形すれば

02

2

tA

hS

dx

d

:温度 θに関する線形2階常微分方程式

が得られる.ここで, Θt=0 とおくと

ΘA

hS

dx

Θd

dx

Θd

dx

d

dx

dx

d

2

2

2

2

2

2

,

と変形される.

そこで,

A

hSm

2

(mの単位は,m-1 になる.)

とおくと

x dx

θ

参考:

ymdx

yd 2

2

2

の一般解は

mxmx eCeCy 21

で与えられる.

証明,一般解を微分すると

ymeCeCmemCemCdx

yd

meCmeCdx

dy

mxmxmxmx

mxmx

2

21

22

2

2

12

2

21

となり,微分方程式を満たしていることがわかる.

dx

S:周囲長

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 52/178

52

Θmdx

Θd 2

2

2

となる.この微分方程式の一般解は

mxmx eCeCΘ 21 (5.1.4)

とおくことが出来る.ただし, 21, CC :積分定数

次に,境界条件を用いて,積分定数を決定する.

・熱伝達による放熱 lllx hAΘthAQ 0

・熱伝導による入熱 Adx

dΘA

dx

dQ

lxlx

lx

l

lx

lx

l

Θh

dx

Adx

dΘhAΘ

を xで微分すると

mxmx meCmeC

dx

dΘ 21

なので

021

2121

Ch

meCh

me

eCeCh

meCmeC

mlml

mlmlmlml

(5.1.5)

ここで,(5.1.4)式に 0x を代入すると, 210 CCΘ ,また, 000 tΘ より

1002

0021

CtC

tCC

これを(5.1.5)式に代入すると

001

1001 0

teh

mCeh

meh

m

Cteh

mCeh

m

mlmlml

mlml

mlmlmlml

ml

mlml

ml

eem

hee

em

h

t

eh

meh

m

eh

m

tC

1

00001

l

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 53/178

53

mlmlmlml

ml

mlml

ml

eem

hee

em

h

t

eh

meh

m

eh

m

tCtC

1

00

001002

mx

mlmlmlml

ml

mx

mlmlmlml

ml

e

eem

hee

em

h

te

eem

hee

em

h

tt

Θt

11

00000

0

mlmlmlml

lxmlxmlxmlxm

mlmlmlml

mlmxmlmx

eem

hee

eem

hee

tt

eem

hee

em

he

m

h

tt

000

000

11

フィンからの全放熱量は

mlmlmlml

mlmlmlml

mlmlmlml

mlml

x

mxmx

x

eem

hee

eem

hee

tAm

eem

hee

em

he

m

h

tAm

CCAmmeCmeCAmeCmeCA

dx

dAQ

00

00

21

0

2

0

1021

0

11

配に比例フィン付け根の温度勾

5.2 フィン効率

フィンの形状や配置が複雑になると,解析的に伝熱量を求めることが困難となる.このような

場合,次のフィン効率を用いて評価を行う.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 54/178

54

00

00

00

0

00

00

0

11

t

t

A

AtA

tA

dAtdA

t

Ath

dAth

mmx

x

熱量温度に等しい場合の放フィンの全表面が根元

実際の放熱量

ただし,

x :根元より,xの距離におけるフィン表面の温度

0 :根元の温度

m :フィン表面の平均温度

0t :周囲媒質の温度

A:フィンの表面積

フィン効率を用いると,フィン表面の平均温度は

000 ttm

と表される.

矩形断面のフィン効率は

b

h

ee

ee

l ll

ll

2

1

である.ただし,h:熱伝達率,λ:熱伝導率

例題 5.1 図のようなフィンが 800℃の壁面から,20℃の空気中に突き出している.このフィンの

全放熱量はいくらか?フィン表面の平均温度はいくらか?また,表面温度が平均温度に等しくな

るのは壁から何 mm の位置か?ただし,熱伝導率は 5.46 W/(mK),熱伝達率は 3.23h

W/(m2K)

解答

断面積4105.103.0005.0 A m2

周囲長 07.003.0005.02 S m

5.00mm

500mm

30.0mm

b

l

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 55/178

55

292.152916.15

835.233105.15.46

07.03.234

2

m

A

hSm

3.209225.20925.0292.15 eeml

3.20923.2092

13.2092

3.20923.2092

13.2092

mlml

mlml

ee

ee

1

mlmlmlml

mlmlmlml

eem

hee

eem

hee

フィンの全放熱量

W2.831852.83120800292.15105.15.46 4

00

mlmlmlml

mlmlmlml

eem

hee

eem

hee

tAmQ

フィン効率は

14127.05.0157.14

1

703520

1703520

703520

1703520

5.0157.14

11

703520

157.14005.05.46

3.2322

5.0157.14

ll

ll

l

ee

ee

l

ee

b

h

フィン表面の平均温度は

13019.130202080014127.0000 ttm ℃

温度分布は

mx

mx

mx

mx

mlmlmlml

mlmxmlmx

ee

e

e

eem

hee

em

he

m

h

tt

9.2160106228.426.305

3.20925.46292.15

3.233.2092

3.2092

5.46292.15

3.231

3.20925.46292.15

3.231

208002019.130

11

4

000

ここで, temx とおくと

09.216026.305106228.4

9.2160106228.426.305

24

4

tt

tt

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 56/178

56

解の公式から

8.10660320

106228.42

25.30526.305

106228.42

9.2160106228.4426.30526.305

4

4

42

or

t

よって

)(5.087628.0292.15

400.13400.13660320lnln 不適 xtmx

もしくは

)(5.0156.015560.0292.15

3795.23795.28.10lnln 適合 xtmx

距離は 0.156m=156mm

5.3 フィン付き伝熱面からの放熱量

フィン付け根温度と雰囲気温度から放熱量を求める方法について述べる.

フィンの付いた伝熱面から放熱量は,フィンのない部分からの放熱量とフィン部分からの放熱

量の合計となる.

フィンのない部分からの放熱量は

00 tAhQ wfw

フィン部分からの放熱量は,

0tAhQ mfff

ただし,

fh :壁面の熱伝達率(壁面外側とフィン部分は同じとする)

wA :フィンを除いた壁面の外側伝熱面積

0 :壁面の温度=フィン付け根部分の温度

fA :フィンの伝熱面積

m :フィン表面の平均温度

0t :雰囲気温度

h1

t0

λ

P

t0

m

0

Aw Aw

hf

L

A

1

f1

lw

Qw

Qf

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 57/178

57

よって,フィン付き伝熱管全体の放熱量は

000 tAhtAhQQQ mffwffw (5.3.1)

フィン表面の平均温度は

000 ttm

①に代入すると

fwf

ffwfffwf

AAh

t

tAhAhtttAhtAhQ

1

00

00000000

(5.3.2)

ここで,熱伝達抵抗として

fwf

fAAh

R

1

とおけば,放熱量は

fR

tQ 00

(5.3.3)

となる.フィンがない場合の熱伝達抵抗はwf

fAh

R1

であるから,フィンが付いたことにより,

熱伝達抵抗は減少することになる.

5.4 フィン付き伝熱管の放熱量

流体温度と雰囲気温度から放熱量を求める方法について述べる.

円管内面での熱伝達量および円管内部の熱伝導量は Qに等しく,それぞれ次のようにおける.

円管内側(熱伝達) 111 fAhQ (5.4.1)

円管壁内部(熱伝導)

1

2

01

ln2

1

r

r

l

Q

(5.4.2)

フィンからの放熱は,(5.3.2)式より

r2 r1

h1 t0

λ

P

t0

m

0

Aw Aw

rf

hf

L

A

1 f1

lw

Qw Qf

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 58/178

58

fwf AAh

tQ

100

(5.4.3)

(5.4.1)式,(5.4.2)式,(5.4.3)式より

Ah

Qf

1

11

1

201 ln

2

1

r

r

lQ

fwf AAh

Qt

1

00

辺々足し合わせると

fwffwf

fAAhr

r

lAhQ

AAhQ

r

r

lQ

Ah

Qt

1ln

2

111ln

2

1

1

2

11

2

1

01

ここで,熱通過抵抗を

fwf AAhr

r

lAhR

1ln

2

11

1

2

1

とおけば,通過熱量は

R

tQ

f 01

となる.

例題 5.2 外径 20mm,肉厚 1mmの円管がある.この円管に外径 100mm,肉厚 1mm の環状フィ

ンを 10mmごとに付けた場合,放熱量はフィンを付けない場合の何倍になるか?

ただし,フィン効率は 60%,フィン側の熱伝達率は 50W/(m2K),管内の熱伝達率は 5000W/(m2K),

円管の熱伝導率は 400W/(mK),管内部の流体と雰囲気の温度差は常に一定とする.

解答

フィンがない場合,熱通過抵抗は

lll

lll

Ahr

r

lAhR

f

0.2

1

800

10536.0

180

1

02.0250

1

018.0

02.0ln

4002

1

018.025000

1

1ln

2

11

21

2

11

1

フィンがある場合,フィンを除いた円管の外側伝熱面積は

ll

nldA ww 36.001.0

001.001.002.02

ただし, wl はピッチ-フィンの高さ( hP ),nはフィンの枚数

フィンの伝熱面積は,

ll

nrrA ff 48.001.02

02.0

2

1.022

22

2

2

2

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 5 章 フィンの伝熱 59/178

59

フィンがある場合の熱通過抵抗は

lll

llll

AAhr

r

lAhR

fwf

4.32

1

800

10536.0

180

1

6.048.036.050

1

018.0

02.0ln

4002

1

018.025000

1

1ln

2

11

1

2

1

2

放熱量の比は,熱通過抵抗の比となるから

8.13835.13

4.32

1

800

10536.0

180

10.2

1

800

10536.0

180

1

4.32

1

800

10536.0

180

10.2

1

800

10536.0

180

1

2

1

1

2

1

2

lll

lll

R

R

R

R

Q

Q

答え:13.8倍

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 6 章 無次元数の導入 60/178

60

第 6章 無次元数の導入

6.1 基本単位と次元式

比重や比率などの例外を除き,たいていの物理量(長さ,重さなど)にはそれぞれの単位があ

る.物理量の種類は多く使われている単位も多数あるものの,興味深いことに基本となる単位は

7 つの『基本単位』(長さ[m],質量[kg],時間[s],温度[K],電流[A],物質量[mol],光度[cd])と

2 つの補助単位(平面角[rad],立体角[st])だけである.すなわち,すべての物理量の単位はこれ

らの単位の組み合わせで決定される.基本単位と補助単位の組み合わせて作られた単位を『組み

立て単位』という.特に伝熱工学で扱う力学系の物理量に関しては,4 つの基本単位(長さ[m],

質量[kg],時間[s],温度[K])があれば十分で,基本単位の組み合わせですべての単位を決定する

ことができる.たとえば,圧力の単位は, Pa(パスカル)であるが,定義から Pa=

N/m2=(kgm/s2)/m2=kg/(ms2)となり,長さ[m],質量[kg],時間[s]の 3 つが組み合わされたものである

ことが分かる.

物理量が単位を持つとき,物理量は次元を持つともいう.(次元の定義は第 7 章参照.このほ

か,次元は空間の軸を示すことがある.例.3 次元空間)

物理量に単位がない場合,その物理量は無次元であるという.例.比重,比率

6.2 無次元数

単位を持たない数を無次元数という.次元を持つ数を次元のない状態にすることを無次元化と

いう.たとえば,マラソンの距離を例にとると,「ランナーが 21.0975km の地点を通過」と表現

することと「ランナーが全行程 42.195kmの 1/2 を通過」は同じ意味になる.

21.0975km=全行程の 1/2

この場合,21.0975kmを無次元数である 1/2 という比率で表したことになる.物理現象の中には流

体現象のように相似則が成り立つものがあり,無次元数を用いることで大きさに関係なく現象を

パターン化して表すことができるという工学上のメリットが生まれる.

6.3 レイノルズ数(Re数): 流れの特性を表す無次元数

たとえば,翼の断面形状を同じにして,流速を調節すれば,全く同じ流れのパターンを作り出

すことができる.このときの条件は,Re 数と呼ばれる無次元数を同じにすることである.Re 数が

同じなら,流れのパターンは同じになることから,飛行機の翼周りの流れの様子を模型の翼で確

かめることが出来る.

Re 数が同じ=翼周りの流れのパターンは同じ=相似則

飛行機の翼,Re 数=3.0×105

模型の翼,Re 数=3.0×105

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 6 章 無次元数の導入 61/178

61

(1) 定義:

uLLuRe

動粘性係数

代表長さ代表速度 単位計算 1

/sm

mm/s2

(無次元)

① 平板の場合,前縁からの距離 x [m]におけるレイノルズ数は

xuRe

ただし, u :主流速度[m/s],x:前縁からの距離[m],

:動粘性係数 [m2/s],μ:粘性係数[Pa・s],ρ:流体密度[kg/m3]

② 管内流の場合,内径 d [m]の管内におけるレイノルズ数は

duRe

管の断面が円以外の場合は,次の相当直径 deを用いる.(円管の場合, dde となる)

L

Sde

4

ただし,S:流路断面積[m2],L:管断面のぬれぶち長さ[m]

(2) レイノルズ数(Re数)の物理的意味

uLuL

LL

uL

uL

Re

2

23

粘性力

慣性力

慣性力=質量×加速度L

uL

23

粘性力=せん断応力×面積22 L

L

uL

dy

du

Re 数→小=慣性力が小,粘性力が大=粘り気のある流れ=乱れが発生しにくい=層流

Re 数→大=慣性力が大,粘性力が小=さらさらの流れ=乱れが発生し易い=乱流

参考:Re 数は粘性の影響を受ける流動現象の解明に用いられる.

(3) 臨界 Re数・・・層流から乱流に遷移の始まる Re数

① 平板に沿う流れ

層流←小←3.2×105→大→乱流

Re=3.0×105

Re=0

Re=100 Re=20000

x 層流境界層

乱流境界層

層流底層

層流

層流域

乱流域

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62

② 円管内流れの場合

層流←小←2300→大→乱流

熱伝達率小←→熱伝達率大

6.4 ヌセルト数(Nu数): 熱伝達の大きさを表す無次元数

(1) 定義:

hLLhNu

熱伝導率

代表長さ熱伝達率 単位計算 1

W/(mK)

mK)W/(m2

(無次元)

参考:熱伝達における熱流束の式は, wfhq

流速が増加すると,壁面近傍の温度分布は Aから B に変化する.このとき,熱伝達率は BA hh

となる.

熱伝達量は

AhQ wf

壁面での熱伝導量は

Ady

dQ

y 0

流体の熱伝導率 壁面での流体の温度勾配

両者は等しいから

wf

y

y

wf

dy

d

hA

dy

dAh

0

0

単位:m

1

W/(mK)

K)W/(m 2

そこで,代表寸法を乗じると無次元化できる.整理すると

乱流+層流

層流

流速分布

d

Re>2300 の場合

入口

層流速度境界層

層流

層流域

乱流域

層流域

乱流域

層流域

B

θf

温度分布 hB

B

固体壁

A

hA

u θw

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63

基準温度勾配

壁面での温度勾配

L

dy

d

hL

wf

y

0

これを Nu 数という.

6.5 プラントル数(Pr数): 流れと熱移動の相関を示す無次元数.(水は Pr>1,空気は Pr<1)

aa

Pr

熱拡散率

動粘性係数

密度

粘性係数 ,

pCa なので,

pCPr

6.6 グラスホフ数(Gr数): 自然対流の強さを示す無次元数.

gLgLGr

33

動粘性係数

温度差体膨張係数重力加速度代表長さ

注意:グラスホフ数はレイノルズ数の一種である.

Pr<1

温度境界層 速度境界層

Pr=1

温度境界層 速度境界層

Pr>1

温度境界層 速度境界層

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 64/178

64

第 7章 次元解析

7.1 次元式

伝熱工学で扱う力学系の物理量の基本となる単位(基本単位)は4つである.それらを記号

M,L,S,T で表す.

基本単位

すべての物理量は,基本単位の組合せで表わすことができ,これを組立単位という.したがって

組立単位は,基本単位の記号である M,L,S,T での組み合わせ表わすことができ,記号化した単位

の式を次元式という.次元式に含まれる基本単位の指数を次元という.

例)仕事=質量×重力加速度×高さ

単位 m・g・h→kg・m/s2・m→kg・m2/s2

ML2/S2:基本単位の組合せで表すことができる.

仕事:ML2/S2

次元式

次元

仕事の次元式は ML2/S2で表される.仕事は,質量が次元 1,長さが次元 2,時間が次元-2 の物理

量である.

7.2 物理系と工学系の次元式

力学系の物理量は M,L,S,T の 4 つで表すことができるが,これに副次元として,力[F]と熱量[Q]

を加えると,次元式が簡素化できる.たとえば,仕事は,ML2/S2が FLとなる.M,L,S,T の 4 つの

みで表す場合は,物理系(もしくは MLST 系)次元式といい,M,L,S,T,F,Qの 6 つで表す場合は工

学系(もしくは MLSTFQ系)次元式という.

主な物理量の次元式は次表の通り.

物理量 記号例 SI 単位 物理系

(MLST 系)

工学系

(MLSTFQ系)

質量 M kg M M

長さ L, l m L L

時間 t s S S

温度 θ, T K, ℃ T T

力 F N=kgm/s2 ML/S2=MLS-2 F

モーメント M Nm=kgm2/s2 ML2/S2=ML2S-2 FL

トルク T Nm=kgm2/s2 ML2/S2=ML2S-2 FL

熱量 Q J=Nm=kgm2/s2 ML2/S2=ML2S-2 Q

仕事 W J=Nm=kgm2/s2 ML2/S2=ML2S-2 FL=Q

エネルギー E J=Nm=kgm2/s2 ML2/S2=ML2S-2 FL=Q

質量[M],長さ[L],時間[S],温度[T]

M: 1 乗

L: 2 乗

S: -2 乗

仕事とは重力の働く場で質量 mの物体を高さ h だ

け持ち上げるのに必要なエネルギーmgh のこと.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 65/178

65

動力,仕事率 P W=J/s= kgm2/s3 ML2/S3=ML2S-3 QS=QS-1

速度 u, v, w m/s L/S=LS-1 L/S=LS-1

加速度 α m/s2 L/S2=LS-2 L/S2=LS-2

重力加速度 g m/s2 L/S2=LS-2 L/S2=LS-2

質量流量 G kg/s M/S=MS-1 M/S=MS-1

体積流量 Q m3/s L3/S=L3S-1 L3/S=L3S-1

圧力 p Pa=N/m2=kg/(ms2) M/(LS2)=ML-1S-2 F/L2=FL-2

応力 σ Pa=N/m2=kg/(ms2) M/(LS2)=ML-1S-2 F/L2=FL-2

体積弾性率

=1/圧縮率 K N/m2 M/(LS2)=ML-1S-2 F/L2=FL-2

比重量 γ N/m3=kg/(m2s2) M/(L2S2)=ML-2S-2 F/L3=FL-3

密度 g kg/m3 M/L3=ML-3 FS2/L4=FS2L-4

粘性係数 μ Pa・s=Ns/m2 M/(LS)=ML-1S-1 FS/L2=FSL-2

動粘性係数 m2/s L2/S=L2S-1 L2/S=L2S-1

比エンタルピ h J/kg=Nm/kg=m2/s2 L2/S2=L2S-2 Q/M=QM-1

比内部エネルギー u J/kg=Nm/kg=m2/s2 L2/S2=L2S-2 Q/M=QM-1

比エントロピ s J/(kgK) L2/(S2T)=L2S-2T-1 Q/(MT)=QM-1 T-1

比熱 c, cp J/(kgK) L2/(S2T)=L2S-2T-1 Q/(MT)=QM-1 T-1

熱容量 C J/K ML2/(S2 T)=ML2S-2T-1 Q/T=QT-1

熱伝導率 λ W/(mK) = kgm/(s3K)

ML/(S3T)=MLS-3T-1 Q/(LST)=QL-1S-1T-1

熱拡散率

(温度伝導率)

pca

m2/s L2/S=L2S-1 L2/S=L2S-1

熱伝達率 h W/(m2K) = kg/(s3K)

M/(S3T) =MS-3T-1 Q/(L2ST)=QL-2S-1T-1

熱流束 q W/ m2 =Nm/ (sm2)

=kgm2/(s3 m2) = kg/s3

M/S3 =MS-3 Q/(L2S)=QL-2S-1

7.3 バッキンガムのπ定理

すべての物理現象は,無次元数を適当に組み合わせることで記述することができる.

たとえば,歩いた道のり L [m]と時間 t [s]の関係は,歩く速度を v [m/s]とすれば

vtL

であるが,歩く標準速度を 0v と定めると,

tvrL v 0

となる. vr は標準速度に対するその人の歩く速度の比である.そこで,全行程距離 L0で両辺を割

れば

m

sm/s

m

m

0

0

0 L

tvr

L

L v

となり,単位は消滅する(無次元化).2つの無次元数を

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 66/178

66

0

1L

L ,

0

2L

vt

と定義すれば,

21 vr

となる. 1 は道のりの到達度を表す無次元数で, 2 は速度と時間の積を表す無次元数である.こ

のように無次元数を導入することで,道のりを直接表す代わりに到達度として表すことができる.

この場合は,関与した物理量は,道のり[m],時間[s],全行程距離[m],標準速度[m/s]の 4 つであ

るが,含まれている基本単位は[m]と[s]の 2 つだけである.

ある物理現象の特性を表すのに必要で,かつ互いに独立した無次元数の数は,その現象に関係

する物理量の全数 n から,n 個の物理量の次元式を表すのに必要な基本単位の数 m を差し引いた

ものに等しい.これを「バッキンガムの π定理」という.

注意:道のりの例のように,mは常に 4 とは限らない.

n-m個の無次元数を mn ,,,, 321 とすれば,現象を表す特性方程式は次のように表される.

0,,,, 321 mnf →無次元数による特性方程式

ただし,

n :温度,速度など,その現象に含まれる物理量の数

m: n 個すべての物理量の次元式に含まれる基本単位の数

例題 7.1 n=6, m=4 のとき,グラフは図の 7.1 から 7.3 のどれで表わされるか?

解答

246 mn

よって,物理現象を表す式は

0, 21 f または 21 f

となる.グラフは図 7.2 で表される.

例題 7.2 n=7, m=4 のとき,グラフは図の 7.1 から 7.3 のどれで表わされるか?

解答

347 mn

よって

0,, 321 f または 321 , f

となる.グラフは図 3 で表される. 3 はグラフのパラメータとなる.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 67/178

67

7.4 次元解析 1)

流れを伴う熱移動では,熱伝導率と異なり熱伝達率は流体の種類や流速などの影響を受ける.

関与する因子は多数考えられるため,実験結果からそれらの因子を直接含む熱伝達率の実験式を

導出することは容易ではない.そこで,以下に述べる次元解析の手法を用いて,関与する因子か

ら必要となる無次元数の数を求め,無次元化された熱伝達率に関する実験式の導出が試みられた.

参考文献:1) 一色・北山,最新機械工学シリーズ 7 伝熱工学(改訂・SI 併記),森北出版,pp.81-85.

熱移動に関与する物理量は,以下のとおりとする.

物理量 記号 MLST 次元式

熱伝達率 h M/(S3T)

流体の密度 ρ M/L3

定圧比熱 cp L2/(S2T)

代表寸法 D L

流体の熱伝導率 λ ML/(S3T)

流速 w L/S

流体の粘性係数 μ M/(LS)

関与する 7 つの物理量に対して,次の方程式が成立する.

0,,,,,, wDchf p

これらに含まれる基本単位は M, L, S, T の 4 つである.バッキンガムの π定理より,必要な無次元

数は

347 mn

である.したがって,3 つの無次元数 321 ,, を用いれば,上記の方程式を

0,, 321 f または 321 , f

の形に変換することができる.π として様々なものが選択できるが,最も都合の良い式が完成す

るように選択することが望ましい.この例では,7 つの物理量のうち,hに関する実験式導出を目

的とするので,h を無次元化したものをまず 1 とする.残りは,ρ,cpを無次元化して,それぞれ

32 , とすることを考える.7 つの物理量から h,ρ,cpを除いた残りの 4 つの物理量(基本量と

いう) ,,, wD を用いて, 321 ,, をそれぞれ次のように表す.

x

図 7.1 図 7.3 図 7.2

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 68/178

68

3333

2222

1111

3

2

1

dcba

p

dcba

dcba

wD

c

wD

wD

h

分母の次元は

bdcbdcbadb

dcb

a

TSLM

LS

M

S

L

TS

MLL 3

3

となる.そこで

3333333333

2222222222

1111111111

TSLM

TSL

TSLM

ML

TSLM

TSM

3

122

3

3

3

2

3

131

1

bdcbdcbadb

bdcbdcbadb

bdcbdcbadb

分子分母の次元を比較すると, 1 に関して

1

111

1111

11

1

33

0

1

bT

dcbS

dcbaL

dbM

これを解くと, 0,0,1,1 1111 dcba となる.よって

数NuhD

wD

h

00111

となる. 1 はヌセルト数であることが分かる. 2 に関して

2

222

2222

22

0

30

3

1

bT

dcbS

dcbaL

dbM

これを解くと, 1,1,0,1 2222 dcba となる.よって

数ReDwDw

wD

11012

となる. 2 としてレイノルズ数を適用できることが分かる. 3 に関して

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 69/178

69

3

333

3333

33

1

32

2

0

bT

dcbS

dcbaL

dbM

これを解くと, 1,0,1,0 3333 dcba となる.よって

数Pra

c

wD

c pp

10103

3 としてプラントル数を適用できることが分かる.結果として,

0,, PrReNuf もしくは, PrRefNu ,

となる.結局,熱伝達率 h を含む Nu 数が,Re 数および Pr 数の関数として定義されることになる.

熱伝達率は次式を用いて Nu 数から求めることができる.

D

Nuh

7.5 次元解析のメリット

熱伝達率 h を残りの物理量で表せば,

),,,,,( wDcfh p

となり,6 つの独立変数が含まれる.パラメータが多すぎるため,グラフ化することは困難であ

る(図 7.4).グラフ化ができなければ,実験式の導出は不可能である.

一方,次元解析により,熱伝達率 h を含む Nu 数が Re 数と Pr 数の関数,

PrRefNu ,

であることが分かったので,Re 数と Pr 数を変更した実験を行い,実験結果を図 7.5 のように表示

すれば,具体的な関数形を求めることが可能となる.実際,次節のように様々な実験式が提案さ

れている.

7.6 対流熱伝達の実験式

7.6.1 実験式に用いられる無次元数

h

x

Re

Pr

図 7.4 図 7.5

?

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 70/178

70

種々の実験を通して,対流熱伝達に関する実験式が提案されている.

① 強制対流: PrRefNu ,

c, m, n を定数として

nmPrcReNu

と表される.ここで,

hLNu であるから,

LNuh

として,熱伝達率を求めることができる.

② 自然対流: PrGrfNu ,

c, m, n を定数として

nmPrcGrNu

と表される.

7.6.2 強制対流熱伝達の実験式の例

各種の実験式は,日本機械学会「伝熱工学資料(改訂第 4 版)」丸善に詳しく掲載されている.

ここではその一部を紹介する.

(1) 水平平板で平板先端から等温に保たれる場合 (伝熱工学資料 p. 46 より)

①層流熱伝達

平板先端から x の位置における局所ヌセルト数 xNu および平板先端から x の位置までの区間の

平均ヌセルト数 mNu は

局所ヌセルト数 2/1

xx RePrCNu (7.6.1)

平均ヌセルト数 2/12 xm RePrCNu (7.6.2)

ただし,

2.0909.01564.0

5.0332.0

2/12/1

3/1

PrPrPr

PrPrPrC

5.02.0 Pr の場合,Evans, H. L., Int. J. Heat Transfer, 5 (1962), 35. の表参照

②乱流熱伝達

Johnson-Rubesin の式

5/43/20296.0 xx RePrNu 55.0 Pr (7.6.3)

(2) 水平平板で平板先端から等熱流束で加熱する場合 (伝熱工学資料 p. 47 より)

①層流熱伝達

局所ヌセルト数2/13/1458.0 xx RePrNu (7.6.4)

②乱流熱伝達

55.0 Pr の場合,(7.6.3)式を適用する.

(3) 管内強制対流層流熱伝達

管内流の場合,境界層が十分発達した領域では,Nu 数は一定となり下記の①のようになる.一

方,乱流では Nu 数は Re 数と Pr 数の関数として表わされる.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 71/178

71

(伝熱工学資料 p. 51 より)

① (伝熱壁)円管

管摩擦係数 Ref /16

熱流束一定

壁温一定

36.4

66.3

Nu

② (伝熱壁)矩形管(幅 a×高さ b)

ab / 0 0.2 0.5 1

管摩擦係数 f 24/Re 19.1/Re 15.6/Re 14.2/Re

Nu 壁温一定 7.54 4.8 3.38 2.97

Nu 熱流束一定 8.23 5.70 4.11 3.60

7.6.3 管内強制対流乱流熱伝達の例 (伝熱工学資料 pp. 55-56 より)

(1) 水の場合

Colburn の式

3/18.0023.0 PrReNu

常圧下の空気の熱物性値(伝熱工学資料,p.329 より)

温度 密度 定圧比熱 粘性係数 動粘性係数 熱伝導率 温度伝導率 プラントル数

T ρ cp μ ν λ a PrK kg/m3 kJ/(kgK) μ Pas mm2/s mW/(mK) mm2/s100 3.6109 1.072 7.1 1.97 9.22 2.38 0.826150 2.3661 1.018 10.4 4.40 13.75 5.71 0.770200 1.7679 1.009 13.4 7.58 18.10 10.15 0.747240 1.4715 1.007 15.5 10.5 21.45 14.48 0.728260 1.3578 1.007 16.6 12.2 23.05 16.86 0.725280 1.2606 1.007 17.6 14.0 24.61 19.39 0.720300 1.1763 1.007 18.62 15.83 26.14 22.07 0.717320 1.1026 1.008 19.69 17.86 27.59 24.82 0.719340 1.0376 1.009 20.63 19.88 29.00 27.70 0.718360 0.9799 1.011 21.54 21.98 30.39 30.68 0.717380 0.9282 1.012 22.42 24.15 31.73 33.78 0.715400 0.8818 1.015 23.27 26.39 33.05 36.93 0.715420 0.8398 1.017 24.10 28.70 34.37 40.24 0.713440 0.8016 1.020 24.90 31.06 35.68 43.64 0.712460 0.7667 1.023 25.69 33.51 36.97 47.14 0.711480 0.7347 1.027 26.46 36.01 38.25 50.69 0.710500 0.7053 1.031 27.21 38.58 39.51 54.33 0.710550 0.6412 1.041 29.03 45.27 42.6 63.8 0.709600 0.5878 1.052 30.78 52.36 45.6 73.7 0.710650 0.5425 1.064 32.47 59.9 48.4 83.9 0.714700 0.5038 1.076 34.10 67.7 51.3 94.6 0.715800 0.4408 1.099 37.23 84.5 56.9 117 0.719900 0.3918 1.122 40.22 102.7 62.5 142 0.7221000 0.3527 1.142 43.08 122.1 67.2 167 0.7321100 0.3206 1.160 45.84 143.0 71.7 193 0.7421200 0.2939 1.175 48.52 165.1 75.9 220 0.7511500 0.2351 1.212 56.11 238.7 87.0 305 0.782

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 72/178

72

(2) 気体の場合

Kays の式

5.08.0022.0 PrReNu 0.15.0 Pr

3/188.0

015.0 wfm PrReNu Pr50

m:混合平均温度,w:壁温,f:mと wの平均温度(膜温度という)

例題 7.3 Nu数が 33.08.0023.0 PrRe とおくことが

できる気体と固体壁の熱伝達がある.物性値が表

のようになるとき,次の各問に求めよ.

(1) Re 数はいくらか?

(2) Pr 数はいくらか?

(3) Nu 数はいくらか?

(4) 熱伝達率はいくらか?

解答

(1) 6

5105.2

102

5.0100

uLRe

(2) 3333.1103

10221012

53

pp ccPr

(3) 3.33213333.1105.2023.0023.033.08.0633.08.0 PrReNu

(4)

hLNu より 19928.199

5.0

1033.3321 2

L

Nuh

W/(mK)

7.6.4 自然対流熱伝達の実験式の例

平板まわりの自然対流熱伝達 (伝熱工学資料 p. 69 より)

次元解析の結果から,自然対流熱伝達では Nu 数は PrGrfNu , と表される.ここで,レー

レー数

GrPrRa

を用いて,局所 Nu 数と Ra 数の関係をグラフに表すと図のようになる.Ra 数の小さい領域は層流

域で,高い部分は乱流域となる.

遷移下限の Gr 数は

PrGr 9101.2 , 2007.0 Pr 0

である.

物性値[単位] 値

動粘性係数 ν[m2/s] 2×10-5

熱伝導率 λ[W/(mK)] 3×10-2

比熱 cp[kJ/(kgK)] 1

速度 u[m/s] 100

密度 ρ[kg/m3] 2

固体壁の代表長さ L[m] 0.5

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 7 章 次元解析 73/178

73

log Nu

log Ra

遷移域

層流域

乱流域

外乱大の

とき

外乱小の

とき

一様伝熱面温度の場合の局所 Nu 数の変化

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章 沸騰 74/178

74

第 8章 沸騰

8.1 沸騰様式の分類

沸騰現象は流動形式とバルク液温に関して次のように分類される.

流下の沸騰)強制流動沸騰(強制対

下の沸騰)プール沸騰(自然対流流動形式による分類

温度以下)サブクール沸騰(飽和

温が飽和温度)飽和沸騰(バルクの液バルク液温による分類

8.2 沸騰熱伝達の様相

静止した流体の沸騰(=プール沸騰)は次のようなプロセスを経る.

① 伝熱面温度が上昇すると,水温が飽和温度(沸点)以下でも気泡が発生する.この気泡は不

完全なもので,ある程度成長すると,冷却されてやがて消滅してしまう.(サブクール沸騰)

② さらに,伝熱面の温度が上昇すると,気泡は消滅することなく成長を続けるようになる.(核

沸騰)このとき,気泡の形状や大きさは伝熱面の状態に大きく依存する.

③ 伝熱量をさらに増やすと,伝熱面の金属に溶融温度の低いものを用いた場合には,焼切れて

しまう(バーンアウト).このときの熱流束をバーンナウト熱流束(もしくは限界熱流束)と呼

ぶ.

④ バーンナウト点を過ぎて,金属が溶融しない場合,水が伝熱面から完全に離れ,水と伝熱面

の間が蒸気で隔てられるようになる.(膜沸騰)

熱伝達率は,核沸騰>膜沸騰となる.

8.3 核沸騰と伴流

気泡の上昇によって,下部に巻き込むような流れが生じる.この流れを伴流と呼ぶ.

気泡成長

気泡消滅

サブクール沸騰

水面

水蒸気

膜沸騰

蒸気放出

(低負荷)

(高負荷)

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章 沸騰 75/178

75

8.4 沸騰特性曲線

伝熱面から水への熱流束(伝熱面熱流束)と,伝熱面温度と飽和温度の差(伝熱面過熱度)の

関係を示す曲線を沸騰曲線という.

A’→A 間は非沸騰領域で自然対流が発生している.熱流束 q を増やして A 点に到達すると,気

泡の発生が観察される.この A 点を沸騰開始点という.A 点からさらに q が増えると,極大熱流

束点であるバーンナウト点 B に達する.この AB 間は核沸騰領域である.B 点を過ぎると伝熱面

は蒸気膜で覆われるため,伝熱面温度が急上昇して G 点に到達し,伝熱面は赤熱状態となる.G

点は膜沸騰領域である.核沸騰から膜沸騰の遷移は急激に起きることが特徴である.このとき,

一般の金属では溶融点を越えることが多いため,伝熱面が焼損する.バーンナウトとは「焼き切

れ」の意である.逆に G 点から q を減らすと,D 点に達する.D 点は極小熱流束点である.D 点

よりさらに q を減らすと,膜沸騰から急に核沸騰に変化して H 点に遷移する.B→G,D→H 間の

現象はきわめて不安定である.

8.5 飽和温度

水が沸騰する温度(飽和温度)は雰囲気の圧力によって異なり,図のように圧力が大きいほど

伴流 気泡が成長し上昇する

この場所を核として気泡発生

気泡の上昇に伴い,周囲の水が流入する

伝熱面熱流束

log q

A

B

D

G

logΔTsat

非沸騰 核沸騰

遷移

沸騰 膜沸騰

壁面温度

水の飽和温度

(沸点,沸騰点)

伝熱面過熱度

水との伝熱面積

沸騰開始点

バーンナウト点

縦軸 q [kW/m2]

横軸

A’

H

熱流束

沸騰曲線

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章 沸騰 76/178

76

飽和温度も高くなる.

飽和温度と飽和圧力の関係は,機械工学便覧に記載されており,次表に抜粋を示す.

水の飽和表.日本機械学会編「(新版)機械工学便覧 A6 熱工学」より抜粋

圧力 温度MPa ℃ ν' ν" h' h" r=h"-h'

0.07 89.96 0.00103612 2.36473 376.768 2660.1 2283.3

0.1 99.63 0.00104342 1.69373 417.510 2675.4 2257.9

0.10133 100.00 0.00104371 1.67300 419.064 2676.0 2256.9

0.15 111.37 0.00105303 1.15904 467.125 2693.4 2226.2

0.2 120.23 0.00106084 0.885441 504.700 2706.3 2201.6

0.3 133.54 0.00107350 0.605562 561.429 2724.7 2163.2

0.4 143.62 0.00108387 0.462224 604.670 2737.6 2133.0

0.5 151.84 0.00109284 0.374676 640.115 2747.5 2107.4

比体積, m3/kg 比エンタルピ kJ/kg

hhr

水の飽和表をグラフで表すと次図のようになる.

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

0.4

0.45

0.5

90 100 110 120 130 140 150

蒸気圧曲線

圧力

[MPa]

温度 [℃]

水温

時間

0.1013MPa のとき

0.4760MPa のとき

沸騰

飽和温度

沸点

150℃

100℃

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章 沸騰 77/178

77

8.6 臨界点

水を一定圧力の下で加熱すると,やがて飽和温度に達して飽和水となる.飽和水をさらに加熱

すると水蒸気が発生し,飽和状態の水と水蒸気が混在した湿り蒸気となる.湿り蒸気の状態では

いくら加熱しても温度は一定である.湿り蒸気をさらに加熱すると,やがてすべてが水蒸気とな

って乾き飽和蒸気となる.乾き飽和蒸気をさらに加熱すると,再び温度が上昇し,過熱蒸気とな

る.ある圧力を超えると,ある温度まで過熱されると,蒸発現象を伴わずに一気に液体から蒸気

に変化する.このときの圧力と温度の状態を臨界状態という.臨界状態における温度を臨界温度,

圧力を臨界圧力という.p-v 線図および T-s 線図上で,臨界状態はひとつの点で示される.この点

を臨界点という.

8.7 二相流

管内の液体が沸騰しながら流れるとき,液体から発生した蒸気泡が液体中に混在することにな

る.このような流れを二相流という.気泡の体積含有率をボイド率という.蒸気重量比を乾き度

という.二相流は流の形式により,次のように分類される.

(1) 気泡流:単独の小気泡が混入

(2) スラグ流:大きな気泡の塊が流路をふさぐように存在.

(3) 環状流:液体部分が管内壁に押し付けられ,中央を蒸気が通過

(4) 噴霧流:液体が液滴となって気流中に存在

8.8 核沸騰における熱伝達率

各種の実験式は,日本機械学会「伝熱工学資料(改訂第 4 版)」丸善に詳しく掲載されている.

ここではその一部を紹介する.

熱伝達率は,次の形式で与えられる.(伝熱工学資料 p. 128 より)

nqpfRcgh

ただし,

c:液体によって決まる定数

R:表面性状を規定する因子

p

v

液体

湿り蒸気

過熱蒸気

c 臨界点

等圧加熱

飽和蒸気線

T

s

液体

湿り蒸気

過熱蒸気

c 臨界点

等圧加熱

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 8 章 沸騰 78/178

78

pfRg , :表面性状および圧力の影響を表す関数

pRnn

ppfRRg , として与えられる.( pR nn , は定数)

n:熱流束に対する依存性を示す指数

(低熱流束域3

2n ,高熱流束域

5

4n を推奨)

8.9 バーンナウト熱流束 maxq [W/m2]の値 (伝熱工学資料 p. 130 より)

加熱機器はバーンナウト熱流束以内で動作させる必要があり,正確な推定が重要となる.

Rohsenow と Griffith の式がもっとも簡単で利用しやすい.

0121.0

6.0

max

vl

v

vvh

q

[m/s]

ただし, vh :蒸発熱 J/kg, v :蒸気の密度 kg/m3, l :液体の密度 kg/m3

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 9 章 凝縮 79/178

79

第 9章 凝縮

9.1 凝縮の分類

気相から液相への変化を凝縮という.沸騰や蒸発とは逆の現象.

条件によって凝縮された液相の状態が異なり,次のように分類される.

・膜状凝縮:固体表面に膜状の液相を形成するもの

・滴状凝縮:固体表面に液滴を形成するもの.熱伝達率大

・直接接触凝縮:蒸気が低温流体に触れて直接凝縮するもの.固体表面への伝熱が無く,凝縮量

は低温流体の熱容量によって決定される.

固体表面が存在するとき,膜状凝縮になるか滴状凝縮になるかを決定する因子は,固体表面の材

質,表面の汚染度,有機物(油)の付着,蒸気の清浄度などである.

膜状凝縮 滴状凝縮

清浄 ← 汚染度 → 汚染

無 ← 油 → 付着

9.2 凝縮熱伝達

凝縮が起きるとき,液体の膜表面と蒸気の間では対流熱伝達,膜内部と伝熱面では熱伝導によ

り熱移動が起きる.液体の膜表面と蒸気との間の熱伝達率を hc,液膜の熱伝導率を l ,液膜の厚

みを δ,蒸気の飽和温度を Ts,液膜の表面温度を Tlw,伝熱面の温度を Twとすると,熱流束は

液体の膜表面→蒸気: lwsc TThq (9.2.1)

液体の膜表面内 : wlwl TTq

(9.2.2)

となる.(9.2.1)式,(9.2.2)式より

c

lwsh

qTT (9.2.3)

液膜 液滴

膜状凝縮 滴状凝縮

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 9 章 凝縮 80/178

80

/l

wlw

qTT (9.2.4)

(3),(4)より

qh

TTlc

ws

/

11

ここで, /lch のため,

/

11

lch

よって

wsl

lllc

ws

TTq

qqqh

TT

/

1

/

11

凝縮熱伝達では,熱伝達率を

lh とおくことができる.→熱伝達率は液膜の厚みで決まり,液

膜が薄いほど値が大きくなる.

9.3 膜状凝縮の熱伝達率

各種の実験式は,日本機械学会「伝熱工学資料(改訂第 4版)」丸善に詳しく掲載されている.

ここではその一部を紹介する.

(1) 体積力対流凝縮(液膜内の液体が重力によって流れ落ちる場合)(伝熱工学資料 p. 148より)

① 層流液膜

4/1

94.0

Ph

PrGaNu Ll

l , 添え字 L:液体,l:代表寸法に伝熱面長さを取る.

2

3

2

3

,

gdglGa :ガリレオ数

hTTcPh wspl / :相変化数, h :凝縮の潜熱

② 乱流液膜

6/1*5/2*

035.0 LLl RePrNu , LRe :二相レイノルズ数

液膜

Tlw

Ts

Tw

伝熱面 δ

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 9 章 凝縮 81/178

81

lll gNu 3/12*

/ :凝縮数, α:熱伝達率

(2) 強制対流凝縮(液膜内の液体が蒸気の流れの影響を受ける場合)(伝熱工学資料 p. 148より)

① 層流液膜

2/1

12 Lll ReNu

3/1

1 2.145.0

RPh

PrL

2/1

vv

LL

u

uR

:ρu比

② 乱流液膜

8.015/12/13/1

156.0 LlLl RePhRPrNu

これらの他に,体積力対流と強制対流の共存する場合,層流と乱流以外に波状流に対する式があ

る.

9.4 滴状凝縮の熱伝達率

未解明な部分が多く,実験データも不十分である.

9.5 直接接触凝縮の熱伝達率

噴流上への凝縮,落下液滴上への凝縮などに対する式が提案されている.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 82/178

82

第 10章 放射伝熱

10.1 放射伝熱の概念

入射エネルギ Qが平面に入射するとき,平面で一部は反射され,一部は吸収され,残りは透過

される.

これらのエネルギには,エネルギ保存が成り立つから

DRA QQQQ (10.1.1)

の関係がある.両辺を Qで割ると

Q

Q

Q

Q

Q

Q DRA 1

となる.ここで

*a

Q

QA :全吸収率, *

rR

Q

Q :全反射率,

*

pD

Q

Q :透過率

とおくと

1*** pra (10.1.2)

となる.このとき,

1* a , 0** pr のとき,完全黒体(すべてを吸収する)

1*r , 0

** pa のとき,完全白体(すべてを反射する)

1*p , 0

** ra のとき,透過体(すべてを透過する)

と呼ばれる.

例題 10.1 全吸収率が 0.1,全反射率が 0.2の平面がある.この平面の透過率はいくらか?

解答

7.02.01.011***

rp a

10.2 熱放射の基本法則

(1) プランクの法則

物体からはいろいろな波長のエネルギ(熱放射エネルギ)が電磁波として放出されている.放

射される波長の範囲や放出されるエネルギ量はその物体の温度によって異なる.単位時間,単位

面積当りに放出されるエネルギ量(放射能)は波長と温度の関数となり,波長 λ での放射能(=

Q

QR

QA

QD

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 83/178

83

単色放射能)は次のように記述できる.

TfE , [W/m3]

ただし,T:絶対温度

また,全放射能 Eは,単色放射能 E を波長 λで積分したものとなり,次式で表すことができる.

dEE

0

[W/m2]

完全黒体について,黒体の単色放射能は

1/5

1

2

Tcbe

cE

[W/m2] (10.2.1)

で表され,これをプランクの法則という.ただし,

λ:波長 m

T:物体表面の絶対温度 K

c1=3.7413×1016 Wm4/m2=Wm2プランクの第1定数

c2=1.4388×10-2 mK プランクの第2定数

ある物体のある温度における放射能と同じ温度における完全黒体の放射能の比を放射率と言う.

放射率

bE

E

放射率がすべての波長に対して一定となる物体を灰色体という.実際の物体の放射率は波長によ

って異なる.

例題 10.2 波長が 0.550μmの場合,温度 1000Kにおける黒体の単色放射能は何W/m2か?

解答

5

10001055.0

104388.156

16

/5

1 1063.1162884

110550.0

107413.3

16

22

ee

cE

Tcb

W/m2

(2) ウイーンの変位則

物体表面の温度が増加すると,単色放射能のピークは短波長側へずれる.これは物体の温度が

高くなるにつれて,表面の色が赤→黄→白へと変化することに対応している.

3

max 1090.2 T [mK] (10.2.2)

の関係が成立する.これを,ウイーンの変位則という.

λ

Ebλ

灰色体

完全黒体

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 84/178

84

(3) ステファン-ボルツマンの法則

物体が放出する全エネルギ量は

4

0 /5

1

0 12Td

e

cdEE

Tcbb

(10.2.3)

この式をステファン-ボルツマンの法則という.σはステファン-ボルツマン定数という.

81067.5 W/(m2K4) (10.2.4)

完全黒体の場合 484 1067.5 TTEb

灰色体の場合 484 1067.5 TTEE b

(4) キルヒホッフの法則

bTT の場合を考える.熱の出入りはなく,2面は平衡状態にあるから,灰色体の放出エネル

ギについて,

QE

が成立する.したがって

b

bE

EaaEE 吸収率

一方,放射率の定義は

放射率bE

E

であるから,

a (10.2.5)

となる.すなわち,物体の放射率εと吸収率 a は等しい.これをキルヒホッフの法則という.

Ebλ

λ

黒体の単色放射能と波長の関係

800K

1200K

可視部 赤外部

ウイーンの変位則

温度が上がると,ピークの

位置が短波長側へずれる

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 85/178

85

(5) ランバートの法則

面要素 dA1から,半径 1 の球面上の面要素 dA2に到達するエネルギ dQ12は次式で表される.こ

れをランバートの法則という.

dwdAIdQ cos121

ただし,

dwは面要素 dA1の中心から見た面要素 dA2の立体角

Iは放射強さ

放射強さ Iと放射能 Eには次の関係がある.

EI

1 (10.2.6)

10.3 高温ガスの熱放射

CO2, H2Oなどの三原子分子は放射線をよく吸収する.N2, O2, H2などは無視できる.

温度 Tgのガス塊から温度 T1の黒体微小平面 dAが受ける放射エネルギは

dATTdQdQ ggbgg

4

1

4 (10.3.1)

と表される.ただし,

g :ガスの放射率

bdQ :温度の黒体から受ける場合の放射エネルギ

Eb

(1-a)Eb

T Tb

灰色体

完全黒体

E

完全黒体は放射エ

ネルギをすべて吸

(1-a)Eb

aEb

dA1

dA2

φ

φ r=1

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 86/178

86

燃焼ガスの放射率は,炎が黄色く輝かない「不輝炎」では,CO2, H2Oなどの含有率で決定される.

炎が黄色く輝く「輝炎」では,炎の中の炭素粒子から固体放射が行われるため,「不輝炎」より

放射率は高くなる.

10.4 二面間の放射伝熱

(1) 黒体 2 面間のとき

図において,dA1,dA2は黒体面 A1,A2上の微小要素面,r を 2 面間の距離, 21, を垂線と r

とのなす角とする.

dA1から dA2に放射されるエネルギは,

111112 cos ddAIdQ b

立体角の定義より

2

221221

2 coscos

r

dAddAdr

よって

212

2112

2211112

coscoscoscos dAdA

rI

r

dAdAIdQ bb

参考

円周 rl 2 (2πrad = 360度=1周)→円弧なら rddl

円の面積 2rS 扇形なら dr

dS2

2

球の表面積 22 4 rdS 扇形なら drdS 22

同様に,dA2から dA1に放射されるエネルギは,

212

21221

coscosdAdA

rIdQ b

正味の放射伝熱量は

A1

A2

r

r

(立体角)

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 87/178

87

212

21212112

coscosdAdA

rIIdQdQdQ bb

放射強さ Iと放射能 Eには, EI

1 の関係があるから,黒体 2面間の放射伝熱の基礎式は

212

214

2

4

1212

2121

coscoscoscos1dAdA

rTTdAdA

rEEdQ bb

となる.面 A1から面 A2への放射伝熱量 Q は,次のように上式を積分することで求めることがで

きる.

1 2

1 2

1 2

212

214

2

4

1

212

214

2

4

1

coscos

coscos

A A

A A

A A

dAdAr

TT

dAdAr

TT

dQQ

ここで,

1 2

212

21

1

2,1

coscos1

A AdAdA

rAF

(10.4.1)

とおくと,放射伝熱量 Qは

1

4

2

4

12,1 ATTFQ [W] (10.4.2)

と簡単な表記となる. 2,1F は面相互の位置関係から幾何学的に決定されるため,形態係数という.

2 つの面が互いに平行に向かい合い,無限に続く場合,形態係数は 12,1 F となる.このほかの形

態係数の値は,いろいろな伝熱関連の資料に掲載されている.

(2) 無限平行 2平面の場合

形態係数は 12,1 F となる.

① 黒体の場合

2つの面が共に黒体の場合,単位面積当たりの放射伝熱量は

4

2

4

1 TTQ [W/m2]

となる.

② 灰色体の場合

黒体ではない場合,一部のエネルギは吸収され,残りは反射されることになる.この吸収と反

射は無限に続く.

1 2

E1

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 88/178

88

面 1と 2の放射能を 21, EE とする.吸収率は放射率 21, に等しいので,面 2が吸収する放射

エネルギは

2

2

2

12112

1

2

2

2

121212122

11111

1111

E

EEEQ

となる.大括弧の中は,初項 1,公比 21 11 の等比級数であるから,二項級数の公式

x

xx1

11 2

に当てはめると

21

2

2

2

121111

111111

よって

21

122

111

EQ

となる.

4

111 TE

なので,代入すると

21

4

1212

111

TQ [W/m2]

同様に,面 1が吸収する放射エネルギは

21

4

2211

111

TQ [W/m2]

面 1から 2に伝わる放射伝熱量 Qは両者の差であるから

4

2

4

1

21

4

2

4

1

2121

214

2

4

1

21

2112

111

11111

TT

TTTTQQQ

ここで,

111

1

21

sf (10.4.3)

とおけば,

4

2

4

1 TTfQ s [W/m2] (10.4.4)

となる. sf を放射係数という.

(3) 灰色体の有限平板の場合

面 1 から放射されたエネルギが吸収される様子は次の図の通りとなる.(二つの平板は平行で

ある必要はなく,角度を持つ平板でもよい.)面 1と 2の面積を A1,A2,面 1から 2への形態係

数を F12,面 2から 1への形態係数を F21とする.面 1と 2の放射率を 21, とする.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 89/178

89

図より,面 2が吸収する放射エネルギは,

211221

1

4

12112

21

2

2

2

1

2

12

3

21212112

2

2121212

111

1111

FF

ATF

EFFEFFEFQ

[W]

同様に,面 1が吸収する放射エネルギは,

211221

2

4

221211

111

FF

ATFQ [W]

二面間の放射伝熱量 Qは両者の差だから

1

4

2

4

1

211221

2112

111ATT

FF

FQ

(10.4.5)

となる.さらに,後述の形態係数の交換則

221112 AFAF

を適用すると,

1

4

2

4

1

21

2

12

2

1

2112

111

ATT

FA

A

FQ

(10.4.5)

となる.ここで,放射係数を

21

2

12

2

1

2112

211221

2112

111111

FA

A

F

FF

Ffs (10.4.6)

とおくと

1

4

2

4

1 ATTfQ s [W]

となる.

(4) 灰色体 1が灰色体 2で完全に囲まれる場合

面 1 から放射されたエネルギが吸収される様子は次の図の通りとなる.面 1 と 2 の面積を A1,

A2,面 1から 2への形態係数を F12,面 2から1への形態係数を F21とする.面 1と 2の放射率を 21,

とする.面 1は面 2に完全に囲まれているから,

1 2

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 90/178

90

2

121

12 1

A

AF

F

となる.

図より,面 2が吸収する放射エネルギは,

12212

1

4

121

12

2

2

2

121122121122

1

1111

F

AT

EFEFEQ

[W]

同様に,面 1が吸収する放射エネルギは,

11111

2

21

1

1

4

2

12212

1

4

221

12212

2

4

221211

F

AT

F

AT

F

ATFQ [W]

二面間の放射伝熱量 Qは両者の差だから

1

4

2

4

1

22

1

1

1

4

2

4

1

2

21

1

12

111

1

111

1ATT

A

AATT

F

QQQ

(10.4.7)

となる.ここで

E1

合計

合計

合計

2

1

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 91/178

91

111

1

111

1

22

1

12

12

1 A

AF

fs (10.4.8)

とおくと

1

4

2

4

1 ATTfQ s [W]

となる.

(4) 二面間の放射伝熱量

1の面を基準にした二面間の放射伝熱量は,次式で与えられる.

1

4

2

4

1 ATTfQ s [W](灰色体の場合) (10.4.9)

ここで, sf は,放射係数である.

放射係数は,面 1から 2への形態係数 F12,面 2から 1への形態係数 F21および面 1と 2の放射

率を 21, の関数となる.

212112 ,,, FFffs

と表すことができ,具体的には以下の通りとなる.

完全黒体の無限平行平板の場合

12Ffs (10.4.10)

灰色体の有限平行平板の場合

21

2

12

2

1

2112

211221

2112

111111

FA

A

F

FF

Ffs (10.4.11)

灰色体 1が灰色体 2で完全に囲まれる場合

111

1

111

1

22

1

12

21

1 A

AF

fs (10.4.12)

例題 10.3 2000Kと 1000Kの無限平行黒体面間で放射伝熱される熱量は何 W/m2か?

解答

54484

2

4

1 1051.8850500100020001067.5 ≒TTQ W/m2

例題 10.4 空気中に十分に広い 2 平行面が対峙しているとき,放射率がともに 0.200 とする放射

係数はいくらか?

解答

111.09

1

1200.0

1

200.0

1

1

111

1

21

sf

10.5 放射熱の遮断

(1) 遮熱板の効果

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 92/178

92

図のように,温度が 21, TT 21 TT の平行 2平面 1,2の中間に遮熱板 3を挿入する.真空中でし

かも遮熱板が箔のように薄い場合,熱伝導および対流熱伝達による遮熱板への伝熱,および放熱

が無視できるから,定常状態では遮熱板の温度 2T は放射伝熱のみによって決定され, 231 TTT

となる.

1-3間および 3-2間の放射伝熱量は

4

3

4

113

4

3

4

1

31

13

111

TTfTTQ s

4

2

4

332

4

2

4

3

23

32

111

TTfTTQ s

と表される.定常状態では, 3213 QQ より

1332

4

232

4

1134

3

4

2

4

332

4

3

4

113

ss

ss

ss

ff

TfTfT

TTfTTf

ここで,3つの面の放射率が等しい場合

321

となるから,

sss fff 1332

とおけば,

2

4

2

4

1

4

2

4

1

1332

4

232

4

1134

3

TT

ff

TfTf

ff

TfTfT

ss

ss

ss

ss

よって,放射伝熱量は

4

2

4

1

4

2

4

14

1

4

3

4

132132

1

21

2TTf

TTTfTTQQQ ss

(10.5.1)

となる.放射率が同じ場合,遮熱板を 1 枚挿入することで放射伝熱量を 1/2 に減少することがで

きる.

(2) 遮熱板を 2枚挿入する場合

1 2 3

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 93/178

93

1-3間,3-4間および 4-2間の放射伝熱量は

4

3

4

1 TTfQ s

4

4

4

3 TTfQ s

4

2

4

4 TTfQ s

これらより

sf

QTT

4

3

4

1

sf

QTT

4

4

4

3

sf

QTT

4

2

4

4

3式の両辺をそれぞれ足し合わせると

sf

QTT

34

2

4

1

よって,

4

2

4

13

1TTfQ s (10.5.2)

となって,放射伝熱量は 1/3となる.

以上のことから,放射率が同じ場合,遮熱板の枚数を nとすると,放射伝熱量は 1/(n+1)となるこ

とがわかる.

例題 10.5 放射熱を 10 分の 1 するには,遮熱板を何枚挿入すればよいか.ただし,伝熱面と遮

熱板の放射率は等しいとする.

解答 9110 枚

10.6 形態係数の算出式

1の面から 2の面に放射する場合の形態係数の定義式は

1 2 3

4

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94

1 2

212

21

1

2,1

coscos1

A AdAdA

rAF

(10.6.1)

形態係数の計算式の具体例を以下に示す.

① 周囲を取り囲まれた面

2

11,22,1 ,1

A

AFF (10.6.2)

② 小さな円から平行な大きな円(軸一致)

222222222

22,1 42

1bahbahba

bF (10.6.3)

上記の式を含め,形態係数の式の詳細は,下記資料を参照のこと.

『埼玉工業大学 技術資料(小西克享) 形態係数の式(平行面間)』

http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Pdf/ParallelGeometricFactor.pdf

『埼玉工業大学 技術資料(小西克享) 形態係数の式(垂直面間)』

http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Pdf/VerticalGeometricFactor.pdf

形態係数の導出過程は,小西研究室のホームページから下記 URL(技術資料のページ)を参照の

こと.(形態係数の式ごとに用意された pdfファイルを参照可)

http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Tech_inform.html

10.7 形態係数に関する法則

(1) 形態係数の交換則

面積が A1と A2の 2面間の形態係数には次の関係がある.

122211 ,, FAFA (10.7.1)

ただし, 2,1F は,1 の面から 2の面に放射する場合の形態係数で, 1,2F は,2の面から 1 の面に放

射する場合の形態係数

黒体 2面間の放射伝熱量は,

1

4

2

4

12,1 ATTFQ [W] (10.7.2)

もしくは

A1

A2

面 1

面 2

h

A1

A2 a

b

半径 aの円

半径 bの円

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 10 章 放射伝熱 95/178

95

2

4

2

4

11,2 ATTFQ [W] (10.7.3)

で計算され,値は一致する.

注意:伝熱量を 2

4

2

4

12,1 ATTF もしくは 1

4

2

4

11,2 ATTF として計算するのは間違いで,形態

係数と面積の組み合わせに注意しなければならない.

(2) 離れた位置におかれた平板間の形態係数

4,342,3

1

34,3142,31

1

321 1 FF

A

AFF

A

AF

, (10.7.4)

まとめ

1.温度 T1[K],放射率εの面から放射される熱量(放射熱量)は

4TQ [W/m2]

2.温度 T1 [K],放射率1の面 1から温度 T2 [K],放射率2の面 2に放射で伝わる熱量(放射伝熱

量)は

42

41 TTfQ s [W/m2]

面 1の面積を A1とすれば,面全体では

14

24

1 ATTfQ s [W]

ただし,

sf :放射係数

81067.5 W/(m2K4):ステファン-ボルツマン定数

21, TT :熱源温度および受熱面温度 [K]

完全黒体の無限平行平板の場合, 1sf

完全黒体の平行平板の場合, 12Ffs

灰色体の無限平行平板の場合,1

11

1

21

sf

灰色体の有限平行平板の場合, 212112

2112

111

FF

Ffs

灰色体が完全に囲まれる場合,

111

1

22

1

1 A

Afs

A2

A1

A3

A4

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 11 章 太陽放射 96/178

96

第 11章 太陽放射

11.1 データ (http://ja.wikipedia.org/wiki/より)

太陽は,中心核(コア)・放射層・対流層(表面対流層)・光球・彩層・遷移層・コロナから

なる.

光球直径 1,392,000km(地球との直径比 109)

質量 1.9891×1030 kg(太陽系の 99%)

表面温度 5,780K

中心温度 1.5×107K

コロナの温度 5×106K

参考:放射層は太陽半径の 20%~70%の所にあり,対流層は 70%~100%の所にある.光球の厚さ

は 300~500km,温度は 5,800~6,000K,地球上から視認できる太陽光は,光球から発せられてい

る.彩層の厚さは約 2,000km,温度は光球よりやや低く,4,700~5,800K.紅炎(プロミネンス)

が発生することがある.遷移層はわずか 100km ほどの厚みで,急激に温度が上昇する.コロナは

太陽大気の外層で,太陽半径の 10 倍以上の距離まで広がる.コロナの温度は太陽表面温度よりは

るかに高く,太陽最大の謎.コロナからは太陽風(極めて高温~106K で電離した粒子 = プラズ

マ,地球の公転軌道に達するときの速さは約 300~900km/s,平均約 450km/s)が出る.プロミネ

ンスは彩層の一部が,磁力線に沿って,上層大気であるコロナ中に突出したもの.最大の高さは

1997 年に観測された 350,000 km(地球直径の約 28 倍).

平均公転半径 1 億 4959 万 7870km

太陽から見た地球の角直径 (平面角 )は

1/11,000rad, 立体角は 1/140,000,000sr

太陽 地球

d=1,392,000km

赤道面にて

d=12,756.3km

r r

r r2

1rad 1sr (ステラジアン)

立体角

全立体角=4π[sr]

平面角

全平面角=2π[rad]

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 11 章 太陽放射 97/178

97

11.2 太陽放射のメカニズム (http://ja.wikipedia.org/wiki/より)

核(太陽中心部,約 0.2 太陽半径)では核融合により,水素原子 4 個がヘリウム原子 1 個に変

換され,1 秒間に 430 万トンの質量が 3.8×1026J のエネルギを発生する(TNT 火薬換算で 9.1×1016

トンに相当).発生したエネルギの大部分はガンマ線に変換される.太陽中心部では 1500 万 K

という高温のために電子や陽子が固定されずに飛び交っており,これらがガンマ線の直進を阻害

するため外に放射されない.直進を阻害されたガンマ線は近くのガスに吸収されてエックス線と

して放出されるが,エックス線も電子や陽子に直進を阻害される。再びガスに吸収され放出され

る事を繰り返し,だんだんと波長が長い電磁波に変わっていく.このように,ガンマ線は周囲の

プラズマと相互作用しながら次第に「穏やかな」電磁波(紫外線や,それより波長が長い可視光

線、赤外線)に変換され,数十万年かけて太陽表面(光球)にまで達し,太陽光として放出され

る.

参考:太陽で主に起こっている核融合反応(陽子-陽子連鎖反応)

水素(陽子,p)同士が直接反応する水素核融合.陽子-陽子連鎖反応,p-p チェインなどともい

う.

① p + p → 2H + e+ + νe

2 つの陽子が融合して、重水素となり陽電子とニュートリノが放出される.

② 2H + p → 3He + γ

重水素と陽子が融合してヘリウム 3 が生成され、ガンマ線としてエネルギが放出される.

③ 3He + 3He → 4He + p + p

ヘリウム 3 とヘリウム 3 が融合してヘリウム 4 が生成され、陽子が放出される.

11.3 太陽定数 (http://ja.wikipedia.org/wiki/より)

太陽定数とは,地球の大気表面に垂直に入射する単位面積当たりの太陽放射の量.これは可視

光線だけではなく,あらゆる波長の電磁波を全て含めた値である.人工衛星の測定では,1.366

kW/m2=約 2 cal/(cm2 min)=1cm2の受光面では 1cm3の水を 1 分間に 2℃上げるだけのエネルギ.

地表への太陽放射は 440W/m2~540W/m2(北緯 65 度における値).地球に届いた太陽放射のうち,

約 65%が熱となる.

地球の断面積127,400,000 km2をかけると地球全体が受け取っているエネルギは1.740×1017Wと

なる。太陽が放出しているエネルギの量は約 3.86×1026W.図 2)のように太陽定数は周期的に変動

する(0.1%程度).

11.4 太陽放射の組成(太陽からの放出時) (http://ja.wikipedia.org/wiki/より)

太陽放射の約半分は可視光線であり,残り半分は赤外線や紫外線が占める.

ガンマ線:ごく微量

X 線:ごく微量

紫外線(~0.4μm):約 7%

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98

可視光線(0.4μm~0.7μm):約 47%

赤外線(0.7μm~100μm):約 46%

電波(100μm~):ごく微量

ニュートリノ:核融合によって発生するニュートリノは,電子や陽子などに直進を阻害されな

いため,ほぼ全て外に放射されており,地球にも到達している.

このほか,α線,β線,電子,ヘリウム原子核,陽子などが太陽フレア(太陽大気の爆発現象)

などによって発生する.

11.5 地表に到達する成分

可視光線:大気を通過する割合が大きい

紫外線:0.2~0.3 μm の紫外線はオゾン(O3)に強く吸収される.

赤外線:一部の波長(8~13μm)を除いて,大気に吸収される.

地球に届いた太陽放射のうち、約 65%が熱となる.

11.6 日射量の測定

(1) 日射計の種類

図 11.1 に示すように全天日射計と直達日射計がある.

(2) 全天日射計の原理

① 図 11.1(a)のタイプ

受熱板に日光が当たると,ヒートシンクとの間に温度差が生じる.ヒートバランスの式は

LCR QACAQ 01 (11.6.1)

となる.ただし,QR:太陽からの入射日射量,C:受熱板とヒートシンク間の熱伝導線の熱コン

ダクタンス=1/熱伝導抵抗,QL:ヒートシンク以外への熱損失,AC:熱伝導線の断面積

② 図 11.1(b)のタイプ

黒い受熱板と白い受熱板に日光が当たると,2 つの面の放射率が異なることにより温度差を生

じる.ヒートバランスの式は,

黒い受熱板に関して

1011 LCR QACAQ

白い受熱板に関して

2022 LCR QACAQ

両辺の差をとると

212121 LLCR QQACAQ (11.6.2)

となる.

③ 図 11.1(c)のタイプ

広い受熱板と狭い受熱板に日光が当たると,2 つの面の面積が異なることにより温度差を生じ

る.ヒートバランスの式は,

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 11 章 太陽放射 99/178

99

広い受熱板に関して

1011 LCR QACAQ

狭い受熱板に関して

2022 LCR QACAQ

両辺の差をとると

212121 LLCR QQACAAQ (11.6.3)

となる.

(3) 直達日射計の原理

図 11.1(c)において,受熱板 1 に入射光が当たると,1 の温度が上昇する.日光が当たらないダ

ミーの受熱板 2 に通電して,12 間の温度差がなくなったとき,2 への通電量は入射日射量に相当

する.端子間電圧を E[V],電流を I[A]とすれば,

1011 LCR QACAQ

202 LC QACEI

より,両辺の差をとるとヒートバランスの式は,

21211 LLCR QQACEIAQ (11.6.4)

となる.

散乱光 直射光

A, ε1, θ1

透明ドーム

A, ε1, θ1

A, ε1, θ1

A1, ε1, θ1

A2, ε1, θ2

ヒートシンク θ0 ヒートシンク θ0 ヒートシンク θ0

直射光

直達日射計

mV

加熱

全天日射計

(a) (b) (c)

熱電対

C

C

C

C

C

1

2 E

I

ヒートシンク θ0

C

C

1 2

図 11.1 全天日射計と直達日射計

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100

第 12章 物質拡散(拡散)

12.1 拡散現象

(1) 相互拡散

濃度勾配に比例して,物質(分子)が移動する現象を拡散という.図で,ガス Aと Bを隔てて

いた壁を取り除くと,Aの分子は Bの中に,また Bの分子は Aの中に進入し,やがて容器全体は

Aと B が完全に混合されて均一な状態となる.このように分子が相互に移動する現象を相互拡散

という.物質(分子)が拡散する速度は,濃度勾配に比例する.熱伝導によって熱が拡散する速

度が温度勾配に比例する点と類似性がある.

物質拡散:濃度勾配に比例して,物質(分子)が移動

熱拡散:温度勾配に比例して,熱が移動

(2) 液体の蒸発

大気圧下では,水は 100℃で沸騰して水蒸気となる.しかし,冬でも路面の水は蒸発してやが

てなくなり,干し物も乾く.水温が 100℃のはずはなく(実は,水温は大気の温度より低い),

水は沸騰させなくても蒸発することは明らかである.沸点(飽和温度)未満の液体が蒸発する現

象は,拡散によって引き起こされる.その系が保有できる液体の蒸気量(飽和蒸気量)は,系の

温度・圧力によって決まっているため,限界に達した場合は蒸発が停止する.最終的に系の蒸気

は飽和状態となり,蒸気の分圧はその温度における飽和蒸気圧に等しくなる.

A

拡散停止

A濃度

容器

B

B濃度

壁 A+B A B

A B A B

空気

蒸発減少

空気

+

飽和蒸気 蒸発大

空気+蒸気

蒸発停止

飽和状態

=湿度 100%

濃度

飽和状態

全域が飽和状態

気液界面より蒸気の流れが発生

(ステファン流=界面から発生する分子の流れ)

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101

注意: 液体表面近傍の蒸気は常に飽和状態で,系の蒸気分圧が飽和蒸気圧となるまで拡散現象は

継続する.蒸発に伴い,液体から蒸発潜熱が奪われるため,液体の温度は低下することになる.

参考:

相対湿度φ [%]は飽和水蒸気圧力に対する水蒸気分圧の比(もしくは系の飽和水蒸気量に対す

る水蒸気量の比)であり,次式で表される.

100S

OH2 p

p (12.1.1)

絶対湿度 xは相対湿度φ [%]から計算することができる.

1100

622.0

100

100622.0

S

S

S

p

ppp

p

x

(12.1.2)

ただし,

p:大気圧力(もしくは系の圧力)

OH2p :気温(もしくは温度)θ℃における水蒸気分圧[Pa]

Sp :気温(もしくは温度)θ℃における飽和水蒸気圧[Pa]

θ℃における空気中の飽和水蒸気圧を求める式は多数提案されているが気象の分野では,次の

Magnus Teten (1967)の近似式が一般的である.

7858.03.237

5.7log10

Sp (12.1.3)

もしくは,対数の定義より

3.237

5.7

101066.6

Sp [hPa] (12.1.4)

12.2 フィック(Fick)の法則(拡散方程式)

1855年,Adolf Eugen Fickによって発表された.気体,液体,固体(金属)どの拡散にも適用で

きる.

(1) フィック Fickの第 1法則:定常状態の拡散

単位面積当たりの成分の拡散モル速度n [mol/(m2s)]は,モル濃度 n [mol/m3]の勾配 dxdn / に比例

する.比例定数を拡散係数 D [m2/s]という.

dx

dnDn (12.2.1)

x

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102

相互拡散(1と 2の 2種類の成分が互いに拡散する)の場合,1と 2の成分の単位面積当たりの

モル移動速度は次式で表される.

dx

dnDn

dx

dnDn 2

21

1 , (12.2.2)

注意:1の成分と 2の成分の拡散係数は等しい.

アボガドロの法則より,系の全体のモル数は場所に関係なく一定である.全成分のモル濃度を

n[mol/m3]とすると,位置に関係なく

constnnn 21

が成立しなければならない.よって,式(12.2.2)は

dx

nndnDn

dx

nndnDn

/,

/ 22

11 [mol/(m2s)] (12.2.3)

と変形することできる.この式ではモル濃度の代わりにモル分率が使用できるので便利である.

一方,アボガドロの法則よりモル数比は圧力比に等しいから,成分の分圧を p1, p2 [Pa],合計の圧

力を p[Pa]とすれば,位置に関係なく

constppp 21

が成立しなければならない.モル数の比と圧力の比は等しいから

p

p

n

n

p

p

n

n 2211 ,

と表すことができる.気体の状態方程式

mRTpV

(ただし,圧力 p[Pa],体積 V[m3],モル数 m[mol],ガス定数 R=8.31447[J/(molK)],絶対温度 T[K])

を変形すれば,

RT

p

V

mn

となるから,式(12.2.3)に代入すると,圧力分率に対して

dx

dp

RT

D

dx

ppd

RT

pDn 11

1

/ [mol/(m2s)] (12.2.4)

dx

dp

RT

D

dx

ppd

RT

pDn 22

2

/ [mol/(m2s)] (12.2.5)

が得られる.

注意: 2つの成分の移動速度には 12 nn の関係がある.

1の濃度

2の濃度

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103

質量濃度w [g/m3]は,モル濃度 n [mol/m3]と分子量M[g/mol]の積であるから.拡散質量速度 21, ww

[g/(m2s)]は

dx

dwDnMw

dx

dwD

dx

nMdD

dx

dnDMnMw

2

222

1111

1111

(12.2.6)

となる.1と 2の成分の質量分率 21, ff は,混合気の平均分子量を M,全モル数を nとすれば

Mn

nMf

Mn

nMf 22

211

1 , (12.2.7)

より

Mn

nn

MMn

n

Mn

n

M

f

M

f 11 2121

2

2

1

1

(12.2.8)

さらに,(12.2.7)式と(12.2.8)式より

2

1

1

1

1

2

1

1

11

1

2

2

1

11

11

11

1

1

1

11

M

M

f

M

f

M

f

M

fM

f

M

f

M

fM

fM

n

n

(12.2.9)

(12.2.9)式を xで微分すると

dx

df

MM

M

dx

df

M

f

M

fMM

MM

dx

df

M

Mff

M

M

dx

df

fM

M

f

M

M

dx

dff

M

M

M

M

f

dx

dr

M

M

f

dr

d

M

M

f

dx

d

n

n

dx

d

1

21

2

1

2

2

2

1

12

21

211

2

2

111

2

1

1

2

1

2

2

1

1

2

1

12

1

2

1

2

2

1

1

1

2

1

1

1

2

1

1

1

1

11

1

11

1

11

1

1

11

1

1

(12.2.10)

また,混合気の密度は

nM [mol/m3×g/mol=g/ m3]

であるから,拡散質量速度は

dx

df

MM

MD

dx

df

M

MD

dx

nndnDMnMw 1

1

1

2

11111

/

(12.2.11)

dx

df

MM

MD

dx

df

M

MD

dx

nndnDMnMn 2

2

2

1

22222

/

(12.2.12)

となる.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 12 章 物質拡散(拡散) 104/178

104

(2) 二成分の相対速度

分子の移動速度を 21, VV [m/s]とすれば,

222111 , VnnVnn

sm

mol

s

m

m

mol23

であるから,

2

22

1

11 ,

n

nV

n

nV

したがって,成分 1と 2の相対速度は

2

2

1

121

n

n

n

nVV

(12.2.13)

ここで

11112

2 ndx

dnD

dx

dn

dx

dnD

dx

nndD

dx

dnDn

(12.2.14)

の関係があるから,

dx

dnD

nn

n

dx

dnD

nn

nn

dx

dnD

nndx

dn

n

D

dx

dn

n

DVV 1

21

1

21

211

21

1

2

1

1

21

11

(12.2.15)

となる.モル分率を用いると

dx

ndnD

nn

nVV

/1

21

2

21 (12.2.16)

ここで,(12.2.10)式より

dx

df

MM

M

n

n

dx

d 1

21

2

1

なので,質量分率を用いると

dx

dfD

ffdx

df

MM

MD

nn

n

dx

ndnD

nn

nVV 1

21

1

21

2

21

2

1

21

2

21

1/ (12.2.17)

(3) 静止液面から空気中に拡散する蒸気成分の拡散モル速度

液面において,蒸気成分は拡散により移動できるが,空気は液面を越えて移動できないから静

止していると考えられる.この場合,相互拡散と異なり,蒸気成分の拡散移動速度は上記の成分

1と 2の相対速度で示される値となり,空気の速度は 0となる.蒸気成分の拡散移動速度は

dx

dnD

n

n

dx

dnD

n

n

dx

dnD

nn

nnVVnn 1

1

1

2

1

21

12111

1 (12.2.18)

モル分率を用いる場合は

dx

nndD

nn

n

dx

nndD

nn

n

dx

nndD

n

nn

/

/1

// 1

1

1

1

2

1

2

2

1

(12.2.19)

圧力比を用いる場合は

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 12 章 物質拡散(拡散) 105/178

105

dx

ppd

RT

pD

ppn

/

/1

1 1

1

1

(12.2.20)

成分分圧[Pa]を用いる場合は

dx

dp

RT

D

ppn 1

1

1/1

1

(12.2.21)

質量濃度[g/m3]を用いる場合,拡散質量速度 1w [g/(m2s)]は

dx

dwD

wM

w

dx

nMdD

nM

nM

dx

dnD

n

nMnMw 1

11

111

11

11

1

111111

(12.2.22)

質量分率を用いると場合,

dx

dfD

f

nM

dx

dfD

f

nM

dx

dfD

nM

Mn

nM

dx

df

MM

MD

n

nM

dx

nndD

n

nMnMw

1

1

1

2

1

22

1

21

2

2

2

11

2

2

1111

1

/

(12.2.23)

ここで,混合気の密度は

nM [mol/m3×g/mol=g/ m3]

なので

dx

dfD

fw 1

1

11

1

(12.2.24)

となる.

(4) フィック Fickの第 2法則:非定常状態の拡散

非定常状態における物質の拡散は,Dを拡散係数[m2/s],nをモル濃度 [mol/m3]として以下の式

で表される.

1次元:2

2

x

nD

t

n

2次元:

2

2

2

2

y

n

x

nD

t

n

3次元:

2

2

2

2

2

2

z

n

y

n

x

nD

t

n

これらの式は,フーリエの熱伝導方程式と式の形が同一であることから,温度分布と濃度分布の

解の形は同じものとなる.

12.3 境界層の種類

境界層には速度,温度,濃度の 3種類がある.

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106

12.4 拡散に関する無次元数

拡散では,次の無次元数が重要

(1) シュミット数:Sc

D

Sc

ただし, :動粘性係数,D:拡散係数

Sc数が 1のとき,温度境界層と濃度境界層は完全に一致する.Sc<1のとき,濃度境界層は温度境

界層よりも壁面に近づき,Sc>1では反対となる.現象の類似性から,熱伝達におけるプラントル

数 Prに対応している.

温度境界層と濃度境界層

参考:Pr数が 1のとき,温度境界層と速度境界層は完全に一致する.Pr<1のとき,速度境界層は

温度境界層よりも壁面に近づき,Pr>1では反対となる.

温度境界層と速度境界層

速度境界層 温度境界層 濃度境界層

u θ n

θ

Sc<1

温度境界層 濃度境界層

Sc=1

温度境界層 濃度境界層

Sc>1

温度境界層 濃度境界層

Pr<1

温度境界層 速度境界層

Pr=1

温度境界層 速度境界層

Pr>1

温度境界層 速度境界層

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 12 章 物質拡散(拡散) 107/178

107

(2) シャーウッド数:Sh

D

LhSh D

ただし, Dh :物質伝達率,拡散速度 21 nnhV D とおいた場合の Dh

D:拡散係数

現象の類似性から,強制対流熱伝達におけるヌセルト数 PrRefNu , に対応している.次のよ

うな関係がある.

ScRefSh ,

例えば,

48.08.0024.0 PrReNu

で表される強制対流熱伝達があるとき,拡散に対して

48.08.0024.0 ScReSh

の関係が成立する.

12.5 拡散係数

(1) 0℃,0.1013MPaの空気中における各種ガス成分の拡散係数

拡散係数の代表的な値は以下のとおり.単位は cm2/s(甲籐好郎「伝熱概論」養賢堂,p. 222よ

り)

酸素 O2=0.178,炭酸ガス CO2=0.138,水素 H2=0.611,水蒸気 H2O=0.22,メタン CH4=0.196

プロパン C3H8=0.0878

(2) 温度・圧力の影響

温度 T[K]および圧力 P[MPa]における拡散係数は次式で与えられる.

p

p

T

TDD

m

0

0

0

(12.5.1)

ただし,添え字 0は標準状態を示す. 2m (H2Oのみ 75.1m )

12.6 液滴の蒸発

高温雰囲気中に液滴がおかれた場合,液滴直径 2 乗値の時間的変化は図のようになる.液滴が

高温雰囲気に接したのち,最初は液滴の内部温度が上昇するため,液滴は緩やかに蒸発する.こ

の期間を初期加熱期間という.この期間は液体の種類や直径,雰囲気温度によって異なる.揮発

性の高い液体や直径が小さい場合,高温の場合は短い期間となる.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 12 章 物質拡散(拡散) 108/178

108

液滴の温度が飽和すると安定した蒸発が行われる主蒸発期間に移行する.主蒸発期間において,

直径を D[m],時間を t[s]とすると

constKdt

dD

2

(12.6.1)

が成立する.これを D2 乗法則といい,K[m2/s]を蒸発係数といい,値は液体の種類や雰囲気温度

によって異なるが,液滴の大きさには関係なく一定である.なお,蒸発係数の単位は拡散係数と

同じである.

KdtdD 2

を積分すると,

CKtD 2

初期条件を 0t で, 0DD (液滴初期直径)とし,初期加熱期間を無視することができれば

2

0DC

となるから,代入すると

KtDD 22

0 (12.6.2)

となる.これより液滴直径が初期直径 0DD から 0D となる(消滅する)までの時間(液滴の

寿命)は

K

Dtl

2

0 (12.6.3)

液滴の表面積は

2DS [m2]

であるから

dt

dD

dt

dS 2

となり,表面積に関して

Kdt

dS (12.6.4)

となる.蒸発量をW とすると,

dt

dVW

ここで,3

6DV

なので

初期加熱期間 主蒸発期間

D2

t

液滴大

液滴小 -K

1

-K

1

液滴

D

r

w1w w1r

θw θ 温度分布

蒸気濃度分布

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 12 章 物質拡散(拡散) 109/178

109

DKdt

dDD

dt

dDD

dt

dD

dD

Dd

dt

dD

dD

dD

dt

dD

dt

dV

445.1

6

66622

15.12

2

2

5.122

2

33

よって

DKdt

dVW

4 (12.6.5)

となる.これより,蒸発量が最大となるのは初期直径の時で,値は

KDW 0max4

(12.6.6)

となる.

参考

蒸発量は蒸気の対流分と拡散分の和となり,次式で表される.

dr

dfDSWfW e

11

ただし,S:液滴表面積,De:拡散係数

例題 12.1 体積が 1mm3の液滴 1つを体積が 0.5mm3の液滴 2つに分裂させた場合,蒸発時間,蒸

発量はどのように変化するか.ただし,初期加熱期間は無視できるものとする.

解答

体積が 1mm3の液滴 1つの場合,液滴の直径は

333

1

61

66

VD

液滴の寿命は

3

2232

11

6161

KKK

Dt

最大蒸発量は

3

11max

6

44

KKDW

体積が 0.5mm3の液滴 1つの場合,液滴の直径は

333

2

35.0

66

VD

液滴の寿命は

3

2232

22

3131

KKK

Dt

最大蒸発量は 2つの液滴分の合計であるから

3

22max

3

42

42

KKDW

寿命比は

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 12 章 物質拡散(拡散) 110/178

110

62996.02

1

6

3

61

31

3

2

3

2

3

2

3

2

1

2

K

K

t

t

最大蒸発量比は,液滴 1つと 2つの比であるから

5874.11

22

2

6

32

6

4

3

42

1

2

3

2

33

3

3

3

1max

2max

l

l

t

tK

K

W

W

となる.液滴の寿命と最大蒸発量比は逆数の関係にある.

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 13 章 内部発熱問題 111/178

111

第 13章 内部発熱問題

13.1 内部発熱を伴う円柱内部の熱伝導

発熱体の単位体積当たりの発熱量を w [W/m3]とする.

注意:発熱体の問題では,発熱量として単位体積当たり[W/m3],単位長さ当たり[W/m],発

熱体全体[W]などが混在するため注意が必要である.いつも,単位体積当たりの発熱量[W/m3]

から考えると間違いにくい.

半径 Rh [m](直径 Dh [m])の発熱体の場合,長さ l [m]からの発熱量は

wlRQ h

2 [W]

発熱体内部の半径 r [m]の位置における発熱量は,その内部に含まれる発熱体の体積と wの積とな

るから

wlrQ 2 [W]

となる.半径 r [m]の位置における熱流束は,円筒面の面積で割ればよいから

222

2 rw

rl

wlr

rl

Qq

[W/m2]

となる.この qは半径によって値が異なることがわかる.フーリエの法則より,熱流束は

dr

dq

と表されるから,2つの式を等しくおくと

2

rw

dr

dq

となるから,変形すると

rdrw

d

2

積分すると

Crw

2

4

Rh

1

2

r

q 放物線

電流

l

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 13 章 内部発熱問題 112/178

112

積分定数 Cを決定するため,境界条件を円柱の外表面 hRr で, 2 とすれば

CRw

h 2

24

より

2

24

hRw

C

従って,温度分布は字式に示すように,上に凸の放物線となる.

2

222

2

2

444

rR

wR

wr

whh (13.1.1)

発熱体の中心温度は, 0r で与えられるから

2

2

2

22

14

04

hh Rw

Rw

(13.1.2)

となる.

13.2 発熱体を内部にもつ円筒の熱伝導

発熱体の外面から発生する単位長さ当たりの熱量を LQQ /' とすると,円筒内面に Q’が与え

られる熱伝導問題となる.

この Q’は円筒内部では,どの半径においても等しい.円筒内の熱流束は

dr

d

r

Qq

2

' [W/m2]

と表されるから,変形すると

参考:

Cx

xdxyxdx

dyxy

Cxxdxyxdx

dyxy

Cxdxydx

dyxy

22

22

11

22

22

Rh

1

2

r

q

放物線

対数曲線

l

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 13 章 内部発熱問題 113/178

113

drr

Qd

1

2

'

積分すると,

CrQ

ln2

'

境界条件を発熱体の外面 hRr で, 2 とする.式に代入すると

CRQ

h ln2

'2

積分定数は

hRQ

C ln2

'2

したがって,温度分布は

h

hhR

rQRr

QR

Qr

Qln

2

'lnln

2

'ln

2

'ln

2

'222

(13.2.1)

となる.円筒の肉厚をδとすれば,円筒の外面 hRr での温度は

h

h

R

RQ

ln

2

'2 (13.2.2)

発熱体の単位体積当たりの発熱量は

22

'

hh R

Q

lR

Qw

であるから,発熱体の中心温度は,前節を参考に

22

22

2

2

14

'

4

'

4

QR

R

Q

Rw

hh

h (13.2.3)

となる.

13.3 発熱体から液体への熱伝達

図のように発熱体の周囲を液体が流れる場合を考える.

(1) 液体の温度分布

周囲が断熱されている場合,発熱体から発生した熱量はすべて流体の温度上昇に費やされる.

このとき,発熱体の単位体積当たりの発熱量を w [W/m3],液体の体積流量をV [m3/s]とすれば,

入口から xの位置において,

発熱体の微小部分から液体へ与えられる熱量は

wdxRQ h

2

1

微小部分に流入する液体の熱量は

VcQ 2

微小部分から流出する液体の熱量は

参考: Cx

xdxyxdx

dy

xy

1lnln

1

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 13 章 内部発熱問題 114/178

114

dVcQ 3

微小部分から外気への熱損失は,管の厚さを無視すると

04 Q

よって,ヒートバランスは

321 QQQ

より

dVcwdxR

dVcVcwdxR

h

h

2

2

積分すれば

CVcwxR

dVcdxwR

h

h

2

2

境界条件として,管入口の条件( 01 xat )を与えると

CVc 10

より

1 VcC

となる.よって温度分布は

1

2 VcVcwxRh

1

2

x

Vc

wRh

(13.3.1)

出口温度は

1

2

2

L

Vc

wRh

(13.3.2)

長さ L[m]の発熱体の発熱量 Q[W]が与えられる場合は,

LwRQ h

2

より

液温 θ

θ+dθ

x dx

Rh

Rp

Q1

Q2 Q3

Q4=0

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 第 13 章 内部発熱問題 115/178

115

LR

Qw

h

2

出口温度の式に代入すると

112

2

2

Vc

QL

LR

Q

Vc

R

h

h

(13.3.3)

となる.

(2) 発熱体の表面温度の変化

発熱体の微小部分から液体への熱伝達において,熱伝達率を hとしたとき,ヒートバランスは

wh

R

hwR

dxRhwdxR

hw

wh

hwh

2

2

22

θの式を代入すると,

1

2

1

2

22

w

h

Rx

Vc

wRx

Vc

wRw

h

R hhhhw

ここで

LR

Qw

h

2

を代入すると,発熱体の表面温度は

12

LRh

Qx

LVc

Q

h

w (13.3.4)

(3) 周囲が断熱されていない場合の温度変化

発熱体の微小部分から液体へ与えられる熱量は

wdxRQ h

2

1

微小部分に流入する液体の熱量は

液温 θ

θ+dθ

x dx

Rh

Rp

Q1

Q2 Q3

Q4≠0

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116

VcQ 2

微小部分から流出する液体の熱量は

dVcQ 3

微小部分から外気への熱損失は,管の厚さを無視すると

dxRkQ pa 24

ただし,kは熱通過率, pR は管の外半径, a は外気温度とする.

ヒートバランスは

4321 QQQQ

となるから

dxRkdVcdVcwdxR pah 22

整理すると

dxVc

kR

wkR

R

d p

p

ha

2

2

2

両辺を積分すると

CxVc

kRw

kR

Rdx

Vc

kR

wkR

R

d p

p

h

a

p

p

h

a

2

2ln

2

2

2

2

境界条件( 01 xat )を代入すると

w

kR

RC

p

ha

2ln

2

1

となるから,上記の式に代入すると

w

kR

Rx

Vc

kRw

kR

R

p

ha

p

p

ha

2ln

2

2ln

2

1

2

変形すると

xVc

kR

wkR

R

wkR

R

xVc

kR

wkR

R

wkR

R

p

p

h

a

p

h

a

p

p

ha

p

ha

2

exp

2

22

2

2ln

2

1

2

2

1

2

従って,液体の温度変化は

参考:

Cax

dxaxyaxdx

dy

axy

Cx

xdxyxdx

dy

xy

1

lnln1

1lnln

1

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117

xVc

kRkRwRwR

kR

xVc

kRw

kR

Rw

kR

R

p

aphh

p

a

p

p

ha

p

ha

2exp2

2

1

2exp

22

1

22

2

1

2

ここで,LR

Qw

h

2

を代入すると,

xVc

kRLkRQQ

LkR

xVc

kRkR

LR

QR

LR

QR

kR

p

ap

p

a

p

ap

h

h

h

h

p

a

2exp2

2

1

2exp2

2

1

1

12

2

2

2

(13.3.5)

となる.出口 Lx では

L

Vc

kRLkRQQ

LkR

p

ap

p

a

2exp2

2

112 (13.3.6)

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 118/178

118

第 14章 Excelによる非定常および定常伝熱計算

14.1 熱伝導方程式

(1) 定常温度場の特徴

ある場所の温度が時間的に変化しない→定常熱伝導が行われている.

フーリエの式dx

dq

を解けば,温度分布の式 xf が求まる.

(2) 非定常温度場の特徴

ある場所の温度が時間的に変化する.

(3) 温度の時間的変化を求めるための方程式

小さな立方体の要素に対して,x方向に熱の出入りを考える.

もし,dQ dQx x

なら x 方向には温度の時間的変化が存在しない.

定常

x

=f(x)

t

x の位置における

は変化しない

空間的温度分布 時間的温度分布

x

=f(t, x)

t

x の位置における

が変化する

空間的温度分布 時間的温度分布

dQx” dQx’

y

x

z

dz

dy dx

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 119/178

119

ここで,温度勾配の表し方は,

d

dx

:温度が 1 次元(x)に変化する場合の x 方向の温度勾配

x

:温度が x 方向以外にも変化する場合の x 方向の温度勾配

左側の面

dt 秒間に左側の面(面積 dA=dydz)に dQx’ [J]の熱量が流入すると

(dQと dQ’の単位の違いに注意)

dydzdtx

dAdtx

dQx

(14.1.1)

右側の面

温度変化を考える.

右側の面では,温度は, dxx

に変化する.熱量は

dydzdtdxxx

dQx

(14.1.2)

ここで

dxxx

dxxxx

dxxx 2

2

となるから,x 方向の熱量差は

dxdydzdtx

dydzdtdxxx

dydzdtx

dQdQdQ xxx 2

2

2

2

y 軸に関して

dxdydzdty

dQdQdQ yyy 2

2

z 軸に関して

x

=f(x)

dx

dx

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 120/178

120

dxdydzdtz

dQdQdQ zzz 2

2

全体では

dxdydzdtzyx

dQdQdQdQ zyx

2

2

2

2

2

2

熱量に関する公式 mcQ を微小要素に適用すると,

dxdydzdm

図より, dtt

したがって,要素の温度がだけ上昇するのに必要な熱量は

dt

tcdxdydzcdmdQ p

となる.整理すると

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

2

zyxct

tc

zyx

dtt

cdxdydzdxdydzdtzyx

p

p

p

ここで,熱拡散率,もしくは温度伝導率として

]s/m[ 2

pca

(14.1.3)

とおくと

2

2

2

2

2

2

zyxa

t

直交座標系の非定常熱伝導方程式 (14.1.4)

が得られる.(14.1.4)式はフーリエの微分方程式ともいう.

温度伝導率 a [mm2/s]の値は,空気 21.9,水 0.147,鉄 10~17.5,銅 100 である.引用文献 1)

定常状態では 0

t

より直交座標系の定常熱伝導方程式は次式となる

t

=g(t)

dt

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 121/178

121

02

2

2

2

2

2

zyxa

(14.1.5)

参考:フーリエの法則は定常熱伝導に関する法則で,1次元の場合

dx

dq

(14.1.6)

これを 3 次元に拡張すると,x, y, z の各方向にそれぞれ熱流束が次のように定義される.

x 方向:x

qx

y 方向:y

q y

z 方向:z

qz

(14.1.4)式より,1次元定常熱伝導方程式は

02

2

x

(14.1.7)

となるが,(14.1.6)式に境界条件を適用して解くことに

より得られる温度分布の式は

1

xq

(14.1.8)

である.(14.1.8)式を x で 2 階偏微分すると,

02

2

x

q

x

となるから,(14.1.6)式と(14.1.7)式の解は同じであることが分かる.

(4) 直交座標系の熱伝導方程式

直交座標系の非定常熱伝導方程式(フーリエの微分方程式)は,次のとおりである.

t

定常状態

傾き=0

時間的変化だけが問題の場合

x 方向以外の空間的変化も考え

る場合

q

x

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 122/178

122

3 次元:

2

2

2

2

2

2

zyxa

t

(14.1.9)

2 次元:

2

2

2

2

yxa

t

(14.1.10)

1 次元:

2

2

xa

t

(14.1.11)

ただし, ]s/m[ 2

pca

(熱拡散率,もしくは温度伝導率) (14.1.12)

定常状態では, 0

t

となるので,直交座標系の定常熱伝導方程式は,次式で表わされる.

3 次元: 02

2

2

2

2

2

zyx

(14.1.13)

2 次元: 02

2

2

2

yx

(14.1.14)

1 次元: 02

2

x

(14.1.15)

(5) 円柱座標系の熱伝導方程式

直交座標系は座標変換により,円柱座標系に変換することができる.

3 次元:

2

2

2

2

2

11

zrrr

rra

t

(14.1.16)

2 次元:

2

2

2

11

rrr

rra

t (14.1.17)

1 次元:

rr

rra

t

1 (14.1.18)

定常熱伝導方程式は,次式で表わされる.

3 次元: 011

2

2

2

2

2

zrrr

rr

(14.1.19)

2 次元: 011

2

2

2

rrr

rr (14.1.20)

1 次元: 01

rr

rr

(14.1.21)

14.2 差分近似

(1) 導関数の差分近似(差分化)

差分近似とは微分を時間もしくは空間の有限差の割り算に置き換えることである.差分近似を

行うことにより,微分方程式を四則演算で解くことができる.

① 1階導関数

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 123/178

123

関数 )(xu の n-1 階導関数 )()1( xu nが連続で,n 階導関数 )()( xu n

が存在するとき,刻みを h とす

ると,Taylor の定理から

)(6

1)(

2

1)()()(

)(6

1)(

2

1)()()(

32

32

xuhxuhxuhxuhxu

xuhxuhxuhxuhxu

ここで,展開式の左辺右辺それぞれを差し引くと

)()(2)()( 3hOxuhhxuhxu

ただし, )( 3hO は h の 3 次以上を含む項とする.ここで

)( 3hO を無視すれば,

h

hxuhxuxu

2

)()()(

中心差分近似 (14.2.1)

となり,1 階導関数を元の関数から計算できるようになる.このとき,h は小さければ小さいほど,

計算精度が向上する.一方,最初の展開式を

)()()()( 2hOxuhxuhxu

とする.ただし, )( 2hO は h の 2 次以上を含む項とする.ここで, )( 2hO を無視すれば,

h

xuhxuxu

)()()(

前進差分近似 (14.2.2)

② 2階導関数

次に,展開式の左辺右辺それぞれを加えると

)()()(2)()( 42 hOxuhxuhxuhxu

ただし, )( 4hO は h の 4 次以上を含む項とする.ここで, )( 4hO を無視すれば,

2

)()(2)()(

h

hxuxuhxuxu

中心差分近似 (14.2.3)

(2) フーリエの微分方程式の差分近似

直交座標系の 1 次元の場合,フーリエの微分方程式は

2

2

xa

t

数値解法を行うには微分方程式を差分近似(差分化)しなければならない.

x

u

x x-h x+h x

u

x x-h x+h

中心差分近似 前進差分近似

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 124/178

124

ここで, tx, を時刻 t,位置 x における温度, ttx , を位置 x におけるt 後の温度, txx , を時刻

t における位置 x の位置からx だけ右側の位置における温度, txx , を時刻 t における位置 x

の位置からx だけ左側の位置における温度とすると,

時間に関して,前進差分近似を適用すれば,次式が得られる.

tt

txttx

tx

,,

,

空間に関して,中心差分近似を適用すれば,次式が得られる.

2

,,,

2

,,,

,

2

2 22

xxx

txxtxtxxtxxtxtxx

tx

これらをまとめると,フーリエの微分方程式の差分近似は

2

,,,,, 2

xa

t

txxtxtxxtxttx

と表される.新しい時刻にける温度を求めるには,

txtxxtxtxxttxx

ta,,,,2, 2

ここで

2x

tarc

とおけば,

txxtx

c

txxctxtxxtxtxxcttxr

rr ,,,,,,,, 21

2

となる.ここで,位置 x を i (i=0, 1, 2, …)を用いて表わし,さらに 1 ixx , 1 ixx と

する.板厚を n 分割すれば,左端を 0i ,右端を ni となる.また,時刻 t を j (j=0, 1, 2, …)

を用いて表わし, 1 jtt とすれば,差分式は次式となる.

jiji

c

jicjijijijicjir

rr ,1,,1,,1,,11, 21

2 (14.2.4)

例題 14.1 次の図のように板厚を 4 分割する場合,新しい時刻における温度の計算式を求めよ.

解答

左面

右面

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 125/178

125

(14.2.4)式より,x の位置に対応して次の 3 つの式が得られる.これらを順次解けば次々と温度

の変化を求めることができる.

jj

c

jcj

jj

c

jcj

jj

c

jcj

rr

rr

rr

,4,3,21,3

,3,2,11,2

,2,1,01,1

21

21

21

ただし,右端 0x および左端 Lx における温度 1,0 j および 1,4 j は境界条件として値を与

える.

14.3 表計算による直交座標系非定常熱伝導の数値解法

14.3.1 平行無限平板の両表面温度(境界条件)が一定の場合

(1) 表を用いた直交座標系 1次元非定常熱伝導の計算

2/1cr の場合,温度を求める式は

jijiji ,1,11,2

1 (14.3.1)

となる.高温の状態から冷却されることを想定して,計算過程を表にしてまとめると,次のよう

になる.ただし,板厚は 4 分割するものとする.

表計算のセルの数式は

2 行目は初期温度

B 列と F列は板の表面温度(境界条件)

C3 のセルは,C3=(B2+D2)/2

となる.

A

時刻

B

板の左端

C D

板の中央

E F

板の右端

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 0 1000 1000 1000 0

3 j=1 (t=Δt) 0 (0+1000)/2

=500

(1000+1000)/2

=1000

(1000+0)/2

=500

0

4 j=2 (t=2Δt) 0 500 500 500 0

5 j=3 (t=3Δt) 0 250 500 250 0

6 j=4 (t=4Δt) 0 250 250 250 0

(2) Excelのスプレッドシート(表計算機能)を用いた計算

表計算には,Excelのスプレッドシートを用いると簡便であり,直交座標系の 1 次元非定常熱伝

導の計算を簡単に行うことができる.グラフも簡単に作成できる.

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 126/178

126

表計算は次の手順で行う.

① 次の表に示すように Excel の各列を,A 列は時間刻み,B 列は )0(0 xi の位置,C 列は

)(1 xxi の位置,・・・と対応させ,表の 2 行目から,時間刻み j に対応して 0, 1, 2, ...

とする.

② 境界条件である初期温度を 2 行(B2から F2)に与える.

③ 境界条件を B列と F列に与える.

④ C3 セルの数式を

C2=(B2+D2)/2 (14.3.2)

とする.

⑤ C3 セルをコピーして空きのセルに貼り付ける.

以上の作業が終了すると,自動的に表計算が完了する.

まとめ:表計算のセルの数式は

2 行(B2 から F2)=初期温度

B 列=0(境界条件)

C3=(B2+D2)/2(C3 から E11 の領域は C3 を貼付)

F 列=0(境界条件)

上記の計算表に対応して,スプレッドシートを次のように記述する.

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 0 1000 1000 1000 0

3 j=1 (t=Δt) 0 =(B2+D2)/2 C3 を貼付 C3 を貼付 0

4 j=2 (t=2Δt) 0 C3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 0

5 j=3 (t=3Δt) 0 C3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 0

6 j=4 (t=4Δt) 0 C3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 0

7 : : : : : :

(3) Excelのグラフツールによる温度変化のグラフ化

Excel のグラフツールを用いると,温度変化の様子を簡単にグラフ化することができる.グラフ

を作成するには,下図を参考にデータ領域を選択し,挿入→グラフ→折れ線と選択する.

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 127/178

127

データの選択で,行と列の切り替えを行うことにより座標軸を入れ替えると,部材内部の温度

分布を示すこともできる.

(4) 計算結果に及ぼす rcの影響

cr を小さくすればするほど,計算精度が向上する.たとえば, 8/1cr の場合,差分近似式は,

jijijiji ,1,,11, 68

1 (14.3.3)

表計算のセルの数式は

2 行(B2 から F2)=初期温度

B 列=0(境界条件)

C3=(B2+6*C2+D2)/8(C3 から E11 の領域は C3 を貼付)

F 列=0(境界条件)

グラフは次のようになり,温度が徐々に低下していく様子が得られる.さらに,x の分割数を

増やすほど,なめらかな温度分布の変化が得られる.

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 128/178

128

cr の値に対する同一時刻での値の変化を表に示す.この表より, cr が小さくなるにつれて値が

漸近していく様子がわかる.

表.中心位置 i=2 (x=2x)における同一時刻の計算値比較

cr =1/2 cr =1/4 cr =1/8 cr =1/16 cr =1/32

同一時刻の t Δt 2Δt 4Δt 8Δt 16Δt

温度 1000 875 868.1640625 865.3298058 864.1273074

(5) 時間刻みを指定する場合

Δx は板厚を等分割する関係で, cr の値を指定した場合,Δt はきれいな数値にはならない.特

定の時刻まで計算する場合は,Δt を 0.001s のように指定し, cr の値を

2x

tarc

(14.3.4)

の式から求め,温度を次式から計算する方が便利である.

txtxxtxtxxcttx r ,,,,, 2 (14.3.5)

また,精度の高い計算を行うには,空間の刻みΔx を小さくし,さらにΔx 対してΔt を十分小さ

くしなければならない.

例題14.2 直交座標系の1次元熱伝導方程式を 4/1cr とした場合の差分式を示せ.また,j=4 (t=4

Δt)まで計算して表を完成せよ.

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 0 1000 1000 1000 0

3 j=1 (t=Δt) 0 0

4 j=2 (t=2Δt) 0 0

5 j=3 (t=3Δt) 0 0

6 j=4 (t=4Δt) 0 0

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 129/178

129

解答

差分近似式は, txxtxtxxttx ,,,, 24

1

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 0 1000 1000 1000 0

3 j=1 (t=Δt) 0 750 1000 750 0

4 j=2 (t=2Δt) 0 625 875 625 0

5 j=3 (t=3Δt) 0 531.25 750 531.25 0

6 j=4 (t=4Δt) 0 453.125 640.625 453.125 0

例題 14.3 直交座標系の 1 次元熱伝導方程式を 16/1cr とした場合の差分式を示せ.また,j=4

(t=4Δt)まで計算して表を完成せよ.

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 0 1000 1000 1000 0

3 j=1 (t=Δt) 0 0

4 j=2 (t=2Δt) 0 0

5 j=3 (t=3Δt) 0 0

6 j=4 (t=4Δt) 0 0

解答

差分近似式は, txxtxtxxttx ,,,, 1416

1

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 0 1000 1000 1000 0

3 j=1 (t=Δt) 0 937.5 1000 937.5 0

4 j=2 (t=2Δt) 0 882.8125 992.1875 882.8125 0

5 j=3 (t=3Δt) 0 834.4726563 978.515625 834.4726563 0

6 j=4 (t=4Δt) 0 791.3208008 960.5102539 791.3208008 0

14.3.2 平行無限平板の両表面温度(境界条件)がフローティングとなる(変動する)場合

たとえば,水中で高温金属を冷却する場合,平行平板の表面温度は時間とともに減少する.こ

のような場合,次の方法で計算することができる.

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 130/178

130

計算方法

① 内部温度の計算

板の内部(x=x, 2x, 3x, ・・・)の温度は,境界固定の場合と同じ(2.5)式を用いる. 2/1cr と

すると

jijiji ,1,11,2

1 (14.3.6)

ただし, 1,,2,1 ni

② 表面温度の計算

左側の壁面境界 0i における伝熱は,流体から壁面への熱伝達と壁面内部の熱伝導に分けら

れる.を平板の熱伝導率,h を熱伝達率とすると,壁面における伝熱は図のとおりである.

セルと格子点の対応関係

注意:緑の部分は,格子点に対応するスプレッドシートのセルを表す.

は平板の熱伝導率,h は熱伝達率として熱平衡を考えると,流体から壁面への熱伝達による

伝熱量は平板内を熱伝導で伝わる熱量に等しいから

1,01,11,0

jjfjx

h

式を変形すると

xh

xh

xh

xh

xh

xh

jfjf

j

jfj

1

1,11,1

1,0

1,11,0

ここで,

xh

rf

(14.3.7)

とおくと

f

jff

jr

r

1

1,1

1,0

(14.3.8)

となる.

jjx

,0,1

jfh ,0

流体側

壁面内部

0i

壁面

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 131/178

131

右端の表面温度も同様に計算できる.

f

jnff

jnr

r

1

1,1

1,

4fr , 0f の場合,平板左端 x=0 で

1,11,0 8.0 jj (14.3.9)

となる.流体の温度が同じなら,平板右端 x=Lの値は x=0 の値と同じになる.

平行平板内(x=x, ・・・)の温度計算は,表面温度が固定される場合と同一である.たとえば

2/1cr の場合,

jijiji ,1,11,2

1

となる.

表計算のセルの数式は,

2 行(B2 から F2)=初期温度

B3=0.8*C3(B4 から B11 は B3 を貼付)

C3=(B2 +D2)/2(C3 から E11 の領域は C3 を貼付)

F3=0.8*E3(F4 から F11 は F3 を貼付)

スプレッドシートは以下のとおりである.

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 1000 1000 1000 1000 1000

3 j=1 (t=Δt) =0.8*C3 =(B2+D2)/2 C3 を貼付 C3 を貼付 =0.8*E3

4 j=2 (t=2Δt) B3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 F3 を貼付

5 j=3 (t=3Δt) B3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 F3 を貼付

6 j=4 (t=4Δt) B3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 C3 を貼付 F3 を貼付

左面

右面

温度分布の変化

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 132/178

132

結果は次のようになる.

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 1000 1000 1000 1000 1000

3 j=1 (t=Δt) 800 1000 1000 1000 800

4 j=2 (t=2Δt) 720 900 1000 900 720

5 j=3 (t=3Δt) 668 860 900 860 668

6 j=4 (t=4Δt) 635.2 794 860 794 635.2

グラフは次の図のとおりとなる.

例題 14.4 境界条件がフローティングとなる場合の直交座標系 1 次元熱伝導方程式を 4/1cr ,

4fr として,j=4 (t=4Δt)まで計算して表を完成せよ.

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 1000 1000 1000 1000 1000

3 j=1 (t=Δt)

4 j=2 (t=2Δt)

5 j=3 (t=3Δt)

6 j=4 (t=4Δt)

解答

差分近似式は,i=0 で

jj ,11,0 8.0

i≧1 で

txxtxtxxttx ,,,, 24

1

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 133/178

133

A B C D E F

1 i=0 (x=0) i=1 (x=Δx) i=2 (x=2Δx) i=3 (x=3Δx) i=4 (x=L)

2 j=0 (t=0) 1000 1000 1000 1000 1000

3 j=1 (t=Δt) 800 1000 1000 1000 800

4 j=2 (t=2Δt) 760 950 1000 950 760

5 j=3 (t=3Δt) 732 915 975 915 732

6 j=4 (t=4Δt) 707.4 884.25 945 884.25 707.4

14.4 表計算による円柱の非定常熱伝導の数値解法

(1) 円柱の外面温度が一定の場合の非定常 1次元温度分布

直交座標における非定常熱伝導方程式

2

2

2

2

2

2

zyxa

t

は座標変換により,次のように円柱座標系に変換することができる.

2

2

2

2

2

11

zrrr

rra

t

(14.4.1)

1 次元の場合,

rrra

rr

rra

t

112

2

(14.4.2)

となり,これを差分近似すると,時間に関して,前進差分近似を適用すれば,次式が得られる.

tt

trttr

tx

,,

,

空間に関して,中心差分近似を適用すれば,次式が得られる.

rr

trrtrr

tr

2

,,

,

2

,,,

,

2

2 2

rr

trrtrtrr

tr

これらをまとめると,フーリエの微分方程式の差分近似は

rrra

t

trrtrrtrrtrtrrtrttr

2

12 ,,

2

,,,,,

ここで,半径方向に肉厚を n 分割し,円管内面を 0i ,外面を ni とし,時間刻みを j で表わ

し,さらに

rir

とおけば,

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 134/178

134

jijiji

trrtrrtrrtrtrr

jijijijijijiji

iir

a

ir

a

rrira

t

,1,,12

,,,,,2

,1,1

2

,1,,1,1,

2

112

2

11

2

12

2

12

ここで

2r

tarc

として整理すると

jiji

c

jic

jijijijicji

irir

iir

,1,,1

,,1,,11,

2

112

1

2

11

2

112

2

11

(14.4.3)

また,温度分布が中心軸に対して線対称の場合,

jj ,1,1

とおけるので,中心軸(i=0)上の温度は

jj

c

cjj

c

jcjr

rr

r ,1,0,1,0,11,0 221

02

112

1

02

11

(14.4.4)

例題 14.5 円柱内部の初期温度が 100℃,外面が 0℃のとき,円柱内部の温度変化を示せ.(Excel

の反復計算の設定は不要)

表計算のセルの数式は

3 列=初期温度

L 列=円柱外面の温度(境界条件)

B4=(2*B3+2*C3)/4(B5 から B17 は B4 を貼付)中心軸(i=0)上の温度

C4 =((1-0.5/C$2)*B3+2*C3+(1+0.5/C$2)*D3)/4(C4 から K17 の領域は C4 を貼付)

解答

(2) 円柱の外面温度がフローティングとなる(変動する)場合の非定常 1次元温度分布

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 135/178

135

内部温度は,(14.5.2)式から求められる.を円柱の熱伝導率,h を熱伝達率とすると,円柱表

面の温度は,次式から求まる.

f

jnff

jnr

r

1

1,1

1,

(14.4.5)

ただし,

xhrf

(14.4.6)

とおく.

例題 14.6 円柱内部の初期温度が 100℃,外面が 0℃のとき,円柱内部の温度変化を示せ.ただ

し,流体の温度 0f , 4fr とする.(Excelの反復計算の設定は不要)

表計算のセルの数式は

3 列=初期温度

M列=流体の温度(境界条件)

B4=(2*B3+2*C3)/4(B5 から B17 は B4 を貼付)中心軸(i=0)上の温度

C4 =((1-0.5/C$2)*B3+2*C3+(1+0.5/C$2)*D3)/4(C4 から K17 の領域は C4 を貼付)

L4 =0.8/1.8*K4(L5 から L17 は L4 を貼付)円柱外面の温度

解答

14.5 直交座標系定常熱伝導の数値解法

(1) 直交座標系定常熱伝導の差分近似

直交座標系の定常熱伝導方程式は,(14.1.14),(14.1.15)式より

1 次元: 02

2

x

2 次元: 02

2

2

2

yx

差分化すると,

1 次元:

02

2

x

xxxxx

2 次元:

022

2

,,,

2

,,,

yx

yyxyxyyxyxxyxyxx

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 136/178

136

これを x と yx, について解くと,x の位置における温度は

1 次元:2

xxxxx

(14.5.1)

1 次元の場合,ある位置(x)の温度は,両側の位置(x-x), (x+x)における温度の算術平均値となる.

x

yrxy

とおくと,

2 次元:

122

,,,,

2

,

xy

yyxyyxyxxyxxxy

yxr

r (14.5.2)

2 次元の場合,ある位置(x,y)の温度は,上下左右の位置(x,y-y), (x,y+y), (x-x,y), (x+x,y)における

温度から計算される.

(2) 直交座標系の 1次元定常熱伝導(平板の熱伝導)

① 1次元定常熱伝導方程式の差分化

直交座標系の定常熱伝導方程式は,(14.5.1)式より x 方向のきざみを i で表わすと,

2

11 ii

i

(14.5.3)

② Excelのスプレッドシート(表計算機能)を用いた直交座標系 1次元定常温度場の計算

温度分布を解くには,境界条件が必要となる.1 次元の場合,境界条件は両端の温度である.

境界条件である左端の温度を0, 右端の温度をnとおき,温度場を n 分割すると,n-1 個の温度場

内部の温度 121 ,, n に関して,次の n-1 個の方程式ができる.

2

201

2

312

2

21

nnn

121 ,, n を求めるには,この連立方程式を解かねばならない.解を得るには一般にはプログ

ラムによる数値解法が必要であるが,Excelを用いるとプログラムが不要であり,簡単に計算を行

うことができる.

Excel を用いて温度分布を計算するには次の手順に従う.

手順 1. 反復計算の設定

Excel を用いて定常温度場の計算を行う場合,通常の設定では循環参照に関する警告が表示され

る.これは値が不定なセルを利用して,別のセルを計算するためにセルの値が決定できないため

である.この問題を解決するには,循環参照を許可する設定が必要である.この設定により,Excel

内部で設定した誤差範囲になるまで自動的に反復計算(収束計算)が行われる.

反復計算を設定する手順は,次の通りである.

「ツール」→「Excel のオプション」→「数式」で「反復計算を行う」をチェックして,「OK」

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137

をクリックする.

手順 2. セルの記述

1 次元温度場を 5分割する場合を考える.スプレッドシートの A列を温度場左端 x=0,F列を右

端 x=L,とみなすことができる.B列から E 列は温度場内部の位置

Li

xi5

(i=1,2,3,4)

に相当する.計算結果は温度場の長さ Lや,刻みx に無関係である.

左端 1000℃,右端が 0℃の場合,A1 セルに 1000,F1 セルに 0 を入力する.

このとき B1 セルの数式は=(A1+C1)/2 となる.B1 セルをコピーして空きのセルに貼り付ける.

A B C D E F

1 1000 =(A1+C1)/2 B1 セルを貼付 B1 セルを貼付 B1 セルを貼付 0

次の計算結果が表示される.少数点以下の数値は収束誤差である.誤差を減らすには,「変化の

最大値」をより小さくする.

A B C D E F

1 1000 800.0012 600.0016 400.0013 200.0007 0

Excelのグラフ作成機能(2-D折れ線)を用いると,次の温度分布図が得られる.

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 138/178

138

(3) 直交座標系の 1次元熱通過(平板の熱通過)

平板の両面を流体が流れる熱通過の問

題では,平板の両面における熱伝達による

伝熱量と平板内部の熱伝導による伝熱量

が等しいとおくことで,平板の表面温度を

次式のように求めることができる.

左の面では

01011

xh f

より

xh

xh f

1

111

0 (14.5.4)

右の面では

122 nnnfx

h

より

xh

xh nf

n

2

122

(14.5.5)

x 方向を 5 分割するものとして,表のように A1 セルと H1 セルの流体の温度 1f , 2f を与え

る.

1000,500,500 21 x

hh

の場合を想定すると,平板の表面温度は(5.5)式および(5.6)式か

ら表面温度は

左面:B1=(500*A1+1000*C1)/1500 ①

右面:G1=(500*H1+1000*F1)/1500 ②

A B C D E F G H

1 1000 ①式 =(B1+D1)/2 =C1 セル =C1 セル =C1 セル ②式 0

Excelのグラフ作成機能(2-D折れ線)を用いると,次の温度分布図が得られる.

熱伝導

熱伝達

熱伝達

固体壁 低温流体

温度境界層が発達

高温流体

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 139/178

139

(4) 直交座標系の 2次元定常熱伝導

① 2次元定常熱伝導方程式の差分化

直交座標系の 2 次元定常熱伝導方程式は,(14.5.2)式より,x 方向のきざみを i,y 方向のきざみ

を j で表わし, xyr =1 とおくと次のように 4 つの位置の算術平均値となる.

4

,,,,

,

yyxyyxyxxyxx

yx

(14.5.6)

② 長方形断面の場合(2次元)

2 次元の例として辺の比が 1:2 の長方形を考える.この場合,境界条件として長方形の周囲の温

度を与えなければならない.

温度場を Excelで求める.

手順 1. 以下の手順で反復計算の設定する.

「ツール」→「Excel のオプション」→「数式」で「反復計算を行う」をチェックして,「OK」

をクリックする.「変化の最大値」を 0.000001 に変更する.

手順 2. セルの記述

x 方向を 5 分割,y 方向を 10 分割するものとして,以下のように境界条件を与え,セルの書式

を設定する.

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 140/178

140

A B C D E F

1 1000 800 600 400 200 0

2 900 =(A2+C2+B1+B3)/4 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 50

3 800 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 100

4 700 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 150

5 600 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 200

6 500 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 250

7 400 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 300

8 300 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 350

9 200 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 400

10 100 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 450

11 0 100 200 300 400 500

Excelの等高線グラフ作成機能を用いると,次の温度分布図が得られる.

③ 矩形管の場合(2次元)

Excel のスプレッドシートは断面の境界位置の温度を指定することにより,へこみや穴を有する

長方形断面にも対応することができる.下の例は,矩形パイプ断面の場合を示す.

A B C D E F

1 200 200 200 200 200 200

2 200 =(A2+C2+B1+B3)/4 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 200

3 200 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 200

4 200 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 200

5 200 B2 セルを貼付 0 0 B2 セルを貼付 200

6 200 B2 セルを貼付 0 0 B2 セルを貼付 200

7 200 B2 セルを貼付 0 0 B2 セルを貼付 200

8 200 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 200

9 200 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 200

10 200 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 B2 セルを貼付 200

11 200 200 200 200 200 200

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 141/178

141

結果は次の通りである.

(5) 矩形管の外面温度(境界条件)がフローティングとなる(変動する)場合

① 内部温度の計算

2 次元:4

1,1,,1,1

,

jijijiji

ji

(14.5.7)

ただし, 1,,2,1,1,,2,1 nimi .内部の空隙部を除く.

② 表面温度の計算

壁面の温度が変化する場合,壁面の温度を計算する式が必要となる.計算格子の配置パターン

は,上下左右の壁面と,四隅のコーナーの 8 種類あり,それぞれ式が異なるため,格子ごとに数

式を変更しなければならない.

左側の壁面 0i における伝熱は,流体から壁面への熱伝達(x 方向)と壁面内部の熱伝導に

分けられる.を平板の熱伝導率, f を流体の熱伝導率とする.壁面では固体壁と流体が接し

ているため,壁面に沿う熱伝導は流体内部の熱伝導と固体壁内部の熱伝導が合成されたものと考

え,熱伝導率は簡単化のため平均値2

f

を用いる.h を熱伝達率,左側の流体温度を fL と

すると,壁面における伝熱は図のとおりである.熱平衡を考えると,

jjjjjjjfLyxy

h ,01,0,0,11,0,0,0

(14.5.8)

左面の熱平衡

(0,

j)

(0, j+1)

(1, j)

流体 f

(0, j-1)

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 142/178

142

j,0 について整理すると,

yx

jjyjxfL

jrr

rr

21

1,01,0,1

,0

(14.5.9)

ただし,xh

rx

, yh

ry

,xh

rx

, yh

ry

とおく.

同様に右の面 mi において

yx

jmjmyjmxfR

jmrr

rr

21

1,1,,1

,

(14.5.10)

上の面 0j における熱平衡を考えると,

0,1,0,0,10,10,0, iiiiiiifUyxx

h

(14.5.11)

上面の熱平衡

0,i について整理すると

yx

iyiixfU

irr

rr

21

1,0,10,1

0,

(14.5.12)

同様に,下の面 nj において

yx

niyninixfD

nirr

rr

21

1,,1,1

,

(14.5.13)

左上隅 0,0 ji における熱平衡を考えると,

0,01,00,00,10,0

yx

h f

0,0 について整理すると

yx

yxf

rr

rr

1

1,00,1

0,0

(14.5.14)

(i,

0)

(i, 1)

流 体f

(i-1,0

)

(i+1,

0)

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 143/178

143

左上端の熱平衡

同様に,右上隅 0, jmi では,

yx

mymxf

mrr

rr

1

1,0,1

0,

(14.5.15)

左下隅 nji ,0 では,

yx

nynxf

nrr

rr

1

1,0,1

,0

(14.5.16)

右下隅 njmi , では,

yx

nmynmxf

nmrr

rr

1

1,,1

,

(14.5.17)

③ セルの記述

2 次元の例として辺の比が 1:2 の長方形を考える.この場合,境界条件として長方形の周囲の温

度を与えなければならない.

x 方向を 5 分割,y 方向を 10 分割するものとして,以下のように境界条件を与え,セルの書式

を設定する. 4 yx rr , 0f の場合,

A B C D E F G H I J K H H

1 rx 4 ry 4 rx’ 1 ry’ 1

2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

3 0 (14.5.14)

(14.5.11)

(14.5.11)

(14.5.11)

(14.5.11)

(14.5.11)

(14.5.11)

(14.5.11)

(14.5.11)

(14.5.11)

(14.5.15)

0

4 0 (14.5.9)

式 (5.15)式 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

5 0 (14.5.9)

式 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

6 0 (14.5.9)

式 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

7 0 (14.5.9)

式 =C3 =C3 =C3 100 100 100 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

8 0 (14.5.9)

式 =C3 =C3 =C3 100 100 100 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

9 0 (14.5.9)

式 =C3 =C3 =C3 100 100 100 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

10 0 (14.5.9)

式 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

11 0 (14.5.9)

式 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

12 0 (14.5.9)

式 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3 =C3

(14.5.10)

0

13 0 (14.5.16)

(14.5.12)

(14.5.12)

(14.5.12)

(14.5.12)

(14.5.12)

(14.5.12)

(14.5.12)

(14.5.12)

(14.5.12)

(14.5.17)

0

14 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

(0,

0)

(0, 1)

(1, 0)

流体 f

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 144/178

144

計算結果は下図のとおりとなる.

(6-06) 2 次元定常温度分布(矩形管境界浮動).xlsx

14.6 円柱座標系定常熱伝導の数値解法

(1) 円柱の 1次元定常温度場の計算

定常の場合,熱伝導方程式は,(14.1.21)式から

01

2

2

rrr

(14.6.1)

差分近似すると

02

112

2

11

02

12

02

12

11

1111

11

2

11

iii

iiiii

iiiii

ii

i

rrir

より

11

2

11

2

11

2

1iii

ii (14.6.2)

例題 14.7 外径が 200mm,肉厚が 80mmの円管がある.円管の内面温度が 100℃,外面温度が 0℃

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 145/178

145

のとき,円管内部の定常状態における温度分布を求めよ.(Excelの反復計算の設定をすること.)

解答

円管を半径方向に 10 等分すれば,

1010

100

10

rr mm

円管の内面

2

10

80100i では, 100,2 j

円管の外面 10i では, 0,10 j

温度の差分式は

jijiji

ii,1,1,

2

11

2

11

2

1 9,,4,3 i

下段は円管の定常熱伝導の解析解である.

21

1

2

11

ln

ln

r

r

r

r

数値解と解析解の差はから,Excelによる計算誤差はわずかであることがわかるが,さらに誤差を

減らすには,刻みの数を大きくすればよい.

表計算のセルの数式は

D3=円管内面温度(境界条件)

L3=円管外面温度(境界条件)

E3 =((1-0.5/E2)*D3+(1+0.5/E2)*F3)/2(F3 から K3 は E3 を貼付)

E4 =100-100/LN(5)*LN(E2/2)(F4 から K4 は E4 を貼付)解析解

E5=E3-E4(F5 から K5 は E5 を貼付)(誤差)

(4) 円管の 2次元定常温度場の計算

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 146/178

146

2 次元定常熱伝導方程式は

01111

2

2

22

2

2

2

2

rrrrrrr

rr (14.6.3)

差分近似すると

021

2

122

1,,1,

22

,1,1

2

,1,,1

jijijijijijijiji

rirrir

式を変形すると

02121214

02121214

022

214

02

244

02222

1,1,,1,1

2

,

22

1,1,,1

2

,1

2

,

22

1,1,,1

2

,1

22

,1

2

,1

22

,

22

1,1,,1,1

2

,1,1

22

,,

22

1,,1,,1,1

2

,1,,1

22

jijijijiji

jijijijiji

jijijiji

jijiji

jijijiji

jijijiji

jijijijijijijiji

iiii

iiiii

ii

iii

i

ii

ii

より

14

2121222

1,1,,1,1

2

,

i

iii jijijiji

ji (14.6.4)

表計算と対応させるため,図のように中心から半径方向に m分割し,円管内面の位置を li と

する.x軸の正方向から時計回りに角度を取り,円周を n 分割する.

0j と nj は同じ位置になるから

mllinii ,,1,,0,

である.また,境界条件として, jl , および jm, を個々に与える.

例題 14.8 202,,10 nlm の場合,円管断面の定常温度分布を示せ.

y

x j=0

j=n j=n/2

j=1

i=0 m l

i=0 m l

j=0 1

n/2

=0

>0

=0

=/2

=

=3/4

=2

円管断面上の座標の定義 表計算上の座標の定義

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)

第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 147/178

147

解答

表計算のセルの数式は

B1=PI()/10 (角度刻み)

D 列=円管内面の温度(境界条件)

L 列=円管外面の温度(境界条件)

E3=E23(F3 から K3 は E3 を貼付)

E4=(E$2*$B$1*$B$1*((2*E$2+1)*F4+(2*E$2-1)*D4)+2*(E5+E3))/4/(E$2*E$2*$B$1*$B$1+

1) (E4 から K23 の領域は E4 を貼付)

E24=4(F24 から K24 は E24 を貼付)

14.7 熱交換器の定常熱伝導の数値解法

並流式と向流式熱交換器のそれぞれについて,高温流体および低温流体の温度変化を求める.

(1) 並流式熱交換器の場合

x dx dx x

dθB<0 dθB>0

dθA<0 dθA<0 A

B

A

B

A

B

A

B

流体 Aの入口温度

流体 B の入口温度

Aと B の入口 Aと B の出口 Aの入口 Aの出口

熱の移動 熱の移動

出口温度

出口温度 出口温度

出口温度

入口温度

入口温度

B の出口 B の入口

向流式熱交換器

並流式熱交換器

温度変化

入口からの距離

dQ

dQ dQ

dQ

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 148/178

148

流体 Aの温度変化は

AA PA

BA

PA

AcG

dAk

cG

dQd

式を変形すると

APA

BAA

cG

k

dA

d

差分化すると

iBiA

PA

iA

PA

iBiAiAiA

PA

PA

iBiAiAiA

Ak

cG

Ak

cG

Ak

cG

cG

k

A

AA

A

A

,1,,

,,1,,

,,1,,

1

したがって,流体 Aの温度は次式から求まる.

1

,1,

,

Ak

cGAk

cG

A

A

PA

iBiA

PA

iA

(14.7.1)

流体 B の温度変化は

BB PB

BA

PB

BcG

dAk

cG

dQd

式を変形すると

BPB

BAB

cG

k

dA

d

iAiB

PB

iB

PB

iBiAiBiB

PB

PB

iBiAiBiB

Ak

cG

Ak

cG

Ak

cG

cG

k

A

BB

B

B

,1,,

,,1,,

,,1,,

1

したがって

1

,1,

,

Ak

cGAk

cG

B

B

PB

iAiB

PB

iB

(14.7.2)

(2) 向流式熱交換器の場合

流体 Aの温度変化は,並流式の場合と同じなので,

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 149/178

149

1

,1,

,

Ak

cGAk

cG

A

A

PA

iBiA

PA

iA

(14.7.3)

流体 B の温度変化は

BB PB

BA

PB

BcG

dAk

cG

dQd

式を変形すると

BPB

BAB

cG

k

dA

d

iAiB

PB

iB

PB

iBiAiBiB

PB

PB

iBiAiBiB

Ak

cG

Ak

cG

Ak

cG

cG

k

A

BB

B

B

,1,,

,,1,,

,,1,,

1

したがって

1

,1,

,

Ak

cGAk

cG

B

B

PB

iAiB

PB

iB

(14.7.4)

流体 AB 間の温度差の解は次式で与えられるので,数値解の iA, と iB, 差 iBiA ,, と比較するこ

とにより精度を検証することができる.

ADki

BA

DkA

i ee i 000 (14.7.5)

ただし,

BA PBPA CGCGD

11 (並流) (14.7.6)

BA PBPA CGCGD

11 (向流) (14.7.7)

例題 14.9 質量流量 1.00t/hのガスを 15.0℃から 40.0℃まで加熱することが出来る並流式平板式熱

交換器において,温度分布を求めよ.加熱には 300kg/hの温水を用いる.ガスの比熱は 1.00kJ/(kgK),

水の比熱は 4.1868kJ/(kgK),熱通過率は k=29.1W(m2K)とする.温水入口温度を 80℃とする.

注意:流体の出入り口温度,流量,比熱,熱通過率,伝熱面積には関係式が成立するため,これ

らをすべて独立して値を決めることはできない.どれか一つは,従属変数として必ず他の値(独

立変数)から導く必要がある.この例では,伝熱面積を従属変数とする.

解答

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 150/178

150

水(A)が失った熱量 AnAAAAAA WcWc 0

ガス(B)が得た熱量 0BBnBBBBB WcWc

両者は等しいから

00 BBnBBAnAAA WcWc

より

℃1.60

903824719.1980

J/h10250.150.401000101.080300101868.4 633

An

An

An

(1) 並流式熱交換器の場合

伝熱面積は

1.200.401.60

0.650.150.80

222

111

gw

gw

256.38

1.20

0.65ln

1.200.65

ln2

1

21

m

2m2376.6

256.381.29

6944

mk

QA

面積を 10 等分する場合,

62376.0

10

2376.6

10

n

AA

n

流体 Aおよび Bの温度は

2216.1962376.01.29

101868.43600/300 3

Ak

cGAPA

3034.1562376.01.29

1000.13600/1000 3

Ak

cGBPB

より

2216.20

2216.19

1

,1,,1,

,

iBiA

PA

iBiA

PA

iA

Ak

cGAk

cG

A

A

3034.16

3034.15

1

,1,,1,

,

iAiB

PB

iAiB

PB

iB

Ak

cGAk

cG

B

B

流体間の温度差の解は

18816.01.291000.13600/1000

1

101868.43600/300

1

11

33

k

CGCGDk

BA PBPA

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)

第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 151/178

151

より

iiADki

BA eee 11737.062376.018816.0

00 651580

(2) 向流式熱交換器の場合

伝熱面積は

1.450.151.60

0.400.400.80

2

001

BnAn

BA

499.42

1.45

0.40ln

1.450.40

ln2

1

21

m

2m6148.5

499.421.29

6944

mk

QA

面積を 10 等分する場合,

56148.0

10

6148.5

10

n

AA

n

流体 Aおよび Bの温度は

3537.2156148.01.29

101868.43600/300 3

Ak

cGAPA

0008.1756148.01.29

1000.13600/1000 3

Ak

cGBPB

より

3537.22

3537.21

1

,1,,1,

,

iBiA

PA

iBiA

PA

iA

Ak

cGAk

cG

A

A

0008.16

0008.17

10008.17

0008.17

1

,1,,1,,1,

,

iAiBiAiB

PB

iAiB

PB

iB

Ak

cGAk

cG

B

B

流体間の温度差の解は

021355.01.291000.13600/1000

1

101868.43600/300

1

11

33

k

CGCGDk

BA PBPA

より

iiADki

BA eee 011990.056148.0021355.0

00 404080

流体の温度分布は以下のようになる.(Excelの反復計算の設定をすること.)

表計算のセルの数式は

B2=並流式の場合の流体 Aの入口温度

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 152/178

152

B3=並流式の場合の流体 Bの入口温度

L2=並流式の場合の流体 Aの出口温度

L3=並流式の場合の流体 Bの出口温度

C2=(19.2216*B2+C3)/20.2216(D2 から K2 は C2 を貼付)

C3=(15.3034*B3+C2)/16.3034(D3 から K3 は C3 を貼付)

B4=B2-B3(C4 から L4 は B4 を貼付)(温度差の数値解)

B5=65*EXP(-0.1129*B1) (C5 から L5 は B5 を貼付)(温度差の解析解)

B6=B4-B5(C6 から L6 は B6 を貼付)(誤差)

B9=向流式の場合の流体 Aの入口温度

B10=向流式の場合の流体 Bの出口温度

L9=向流式の場合の流体 Aの出口温度

L10=向流式の場合の流体 Bの入口温度

C9=(21.3537*B9+C10)/22.3537(D9 から K9 は C9 を貼付)

C10=(17.0008*B10-C9)/16.008(D10 から K10 は C10 を貼付)

B11=B9-B10(C11 から L11 は B11 を貼付)(温度差の数値解)

B12=40*EXP(0.01199*B8) (C12 から L12 は B12 を貼付)(温度差の解析解)

B13=B11-B13(C13 から L13 は B13 を貼付)(誤差)

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 153/178

153

14.8 フィンの定常熱伝導の数値解法

フィンの温度分布は

2

2

2

mdx

d

ただし,

a

A

hSm

2

ここで, 0 はフィンの付け根温度,hは熱伝達率,Sはフィンの周囲長,Aはフィンの断面積.

差分化すれば

11

22

22

11

2

2

11

2

2

2

iii

iiii

i

iii

xm

xm

mx

よって

2

22

11

xm

ii

i

(14.8.1)

実際の温度は

aii (14.8.2)

として求まる.

境界条件は, 00 xi において, a 00

フィンの先端 Lxni において,端面からの放熱が,端面におけるフィン内部の熱伝導量に

等しいと置くことにより

nnn

n

nn

lx

lx

lx

lxl

xΘh

ΘΘ

Θh

x

ΘΘ

Θh

dx

Adx

dΘhAΘthA

1

1

0

よって

xh

ΘΘ n

n

1

1 (14.8.3)

例題 14.10 次の条件におけるフィンの温度分布を計算せよ.

フィンの付け根温度 8000 ℃

外気温度 20a ℃

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)

第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 154/178

154

フィンの長さ 0.10l m

分割数 10n

熱伝導率 5.46 W/(mK)

熱伝達率 3.23h W/(m2K)

解答

断面積 4105.103.0005.0 A m2

周囲長 07.003.0005.02 S m

2917.15

835.233105.15.46

07.03.234

2

m

A

hSm

010.010

10.0

10

lx

61435.41.02917.15 eeml

より,解くべき式は

02338.22010.0835.2332

11

2

11

22

11

iiiiii

ixm

7802080000 a ℃

00501.1

010.05.46

3.231010.0

5.46

3.2311

1111

nnnnn

ΘΘΘ

xh

ΘΘ

解析解は

5.00mm

l=100mm

30.0mm

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第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 155/178

155

i

i

i

i

xmi

xmi

mlmlmlml

mlmxmlmx

ee

ee

e

e

eem

hee

em

he

m

h

tt

01.02917.15

152917.0

01.02917.15

01.02917.15

000

14.747863.3220

76555.4209614.0779.15620

61435.4

161435.4

5.462917.15

3.23

61435.4

161435.4

61435.4

5.462917.15

3.231

61435.45.462917.15

3.231

2080020

11

フィンの温度分布は以下のようになる.(Excelの反復計算の設定をすること.)

先端に近づくほど,数値解と解析解の差(誤差)が拡大する様子が分かる.誤差を減少させるに

は,分割数を増やす必要がある.

表計算のセルの数式は

10 分割の場合

B2=フィン付け根温度-周囲空気温度

C2 =(B2+D2)/2.02338(D2 から K2 は C2 を貼付)

L2=K2/1.00501(フィン先端温度)

B3=B2+20(C3 から L3 は B3 を貼付)

B4=20+32.863*EXP(0.152917*B1)+747.14/EXP(0.152917*B1)(C4 から L4 は B4 を貼付)

(解析解)

B5=B3-B4(C5 から L5 は B5 を貼付)(誤差)

フィンの熱伝導(10 分割の場合)

20 分割の場合(10 分割からの変更点のみ記載)

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)

第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 156/178

156

C2=(B2+D2)/2.005846(D2 から K2 は C2 を貼付)

L2=U2/1.002505(フィン先端温度)

B4=20+32.863*EXP(0.152917*B1)+747.14/EXP(0.152917*B1) (C3 から L3 は B3 を貼付)

フィンの熱伝導(20 分割の場合)

14.9 非定常拡散の数値解法

フィック Fick の第 2 法則より,1 次元非定常物質拡散は,D を拡散係数[m2/s],n をモル濃度

[mol/m3]として以下の式で表される.(1次元非定常熱伝導方程式と同形である)

2

2

x

nD

t

n

ここで

2x

tDrD

とおけば,

jiji

D

jiDjijijijiDji nnr

nrnnnnrn ,1,,1,,1,,11, 21

2 (14.8.1)

拡散領域の先端 ni での境界条件は,密閉容器の場合,濃度勾配が 0 となるから

1,11, jnjn nn

とおく.

例題 14.11 物質表面から物質が拡散する様子を示せ.ただし,物質表面における濃度を 1 とす

る.拡散領域の端で,濃度は 0 とする.

解答

4

1Dr とし,空間を 10 分割する.(Excelの反復計算の設定は不要.)

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版)

第 14 章 Excelによる非定常および定常伝熱計算 157/178

157

4

2 ,1,,1

1,

jijiji

ji

nnnn

容器の端では,濃度勾配が等しい条件から

1,11, jnjn nn

表計算のセルの数式は

2 行(B2 から L2)=濃度初期値

B 列=1(境界条件)

C3=(B2+D2)/2(C3 から K32 の領域は C3 を貼付)

L3=K3(L4 から L32 の領域は L3 を貼付)

1 次元物質拡散( tt 30 まで計算.表は途中まで表示)

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 158/178

158

理解度チェック,No.1 学籍番号 氏名

問題. 次の記述で,正しいものには○,正しくないものは×を付けよ.

1.たき火に当たると暖かいのは,たき火の熱が空気を伝わって身体に届くためである.

2.板厚の薄いフライパンの方が,火が通りやすいから,肉を全面むらなく焼くことが出来る.

3.魔法瓶の中には不活性ガスが詰められている.

4.金属に触れると冷たく感じるのは,金属に熱を奪われるからである.

5.手で触ったとき,体積が同じなら金属の方が木材より冷たく感じるのは,金属の方が表面温度が低

いからである.

6.アルミ箔と厚いアルミ板では感じる冷たさは同じである.

7.やかんで湯を沸かすとき,やかんの蓋を開けておくと早く沸く.

8.ビーカーで湯を沸かすとき,中をかき回した方が早く沸く.

9.同じ金属なら,重さの重いものほど暖めにくく,また,冷めにくい.

10.扇風機の風に当たると涼しく感じるのは,風の温度が部屋の空気の温度より低いからである.

11.濡れたままでいると体が冷えるのは,水が蒸発する際に体の熱を奪うからである.

12.物体の色を感じるのは,物体が表面からその色の光を放出しているからである.

13.物体に直射日光があたるとき,表面の色が黒い方が物体は温まりやすい.

14.風を当てる方が洗濯物は早く乾く.

解答欄

1 2 3 4 5 6 7

8 9 10 11 12 13 14

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 159/178

159

理解度チェック,No.2 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 熱は熱力学第 A 法則により,B 温部から C 温部に伝わる.

② 伝熱の本質は D の E や F のエネルギが伝播することと,G を放出・吸収することの 2 種類である.

③ 固体内部では,D の E が伝播する形態で熱が伝わり,伝熱形式は H と呼ばれる.

④ 流体内部では,D の流動によって D 間の接触が活発となって,E のエネルギ伝播が促進され,伝熱

形式は I と呼ばれる.

⑤ 物体は温度の4乗に比例したエネルギを G として放出しており,これを他の物体表面が吸収すると,

D を E させることにより物体内部で熱に変わる.媒体を介さずに G の形でエネルギを伝える伝熱形式

を J という.

⑥ 上記の H, I ,J を伝熱の K 形式という.

解答欄

A B C D E

F G H I J

K

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 160/178

160

理解度チェック,No.3 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 熱流束とは,単位 A,単位 B あたりに伝熱面を通過する熱量のことであり,単位は C である.熱

流束を微分形で表すと,D を面積で微分したものとなる.

② 定常状態では,D は B に関係なく E であるが,熱流束は B が小さくなると逆に大きな値となる.

③ 温度分布が f x で表されるとき,この温度分布は F 次元温度分布と呼ばれる.

④ 温度分布が時間的に変化しない場合を,G 温度分布と呼ぶ.

⑤ H の法則は,D が温度 I に比例することを示す法則である.この法則より,単位時間に微小面積

dAを通過する熱量 dQは,dQ = J dAと表せる.この式を K の式といい,この式における比例定数を

L と呼ぶ.

⑥ L の単位は M である.

解答欄

A B C D E

F G H I J

K L M

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 161/178

161

理解度チェック,No.4 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① A の法則より熱流束 q,熱伝導率λ,温度勾配dx

dの関係を式で表すと, q B となる.この式を

解くことで,C 分布が求まる.

② 平行平板の場合, 0x で 1 のとき,熱流束を q,熱伝導率をλとすると,C 分布は,

ED x で表される.よって,温度分布は F 線となる.

③ 平行平板の場合,熱伝導率をλ,板厚を L,温度差を 21 とすると,熱流束 q は G で表される.

このとき,伝熱面積を A [m2]とすると t 秒間に流れる全熱量は H と表される.

解答欄

A B C D

E F G H

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 162/178

162

理解度チェック,No.5 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 多層平行平板の定常熱伝導では,どの層の温度分布も A 線となる.また,どの層の熱 B も値は C

しい.層ごとの熱 B の値が一定でない場合は,D が上昇もしくは下降する E 定常状態にある.

② 層ごとの熱伝導率λが異なる場合には,温度分布は F 線となる.

③ n 層からなる平行平板の熱流束 q は G で表される.

④ 図のような部材の熱伝導では,A点と B 点の H はそれぞれの点における熱 I を考え,連立して解

くことで求めることが出来る.

解答欄

A B C

D E F

G H I

10 C

20 C

B A

30 C

60 C 50 C

40 C

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 163/178

163

理解度チェック,No.6 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 平行平板の定常熱伝導では,熱流束と通過熱量は共にどの位置でも A である.一方,円管の定常熱

伝導では,半径によって B は変化するが,C は一定である.同様に,球状壁でも,半径によって B は

変化するが,C は一定となる.

② 熱流束とは単位 D,単位 E あたりに伝達される熱量のことである.

③ 円管の定常熱伝導では,温度分布の式は 1 x F で表され,これは温度分布が G 曲線で表され

ることを示している.

解答欄

A B C D

E F G

1 x

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 164/178

164

理解度チェック,No.7 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

定常熱伝導における温度分布の式は,平行平板では A 線,円管では B 曲線,球殻では C 曲線で表さ

れる.

A B C

2.単層の場合における平行平板,円管,球殻の(単位時間あたりの)通過熱量 Q[W]の式を参考にし

て,n 層の場合の式を完成せよ.

単層 n 層

平行平面板 AL

Q 21

n

i

n

A

Q

1

11

1

円管 21

1

2ln

2

r

r

lQ

n

i

n

l

Q

1

11

ln1

2

1

球殻 21

21

11

4

rr

Q

n

i

nQ

1

11

111

4

1

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 165/178

165

理解度チェック,No.8 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 固体壁に沿って固体壁と温度の異なる流体の流れが存在する時,固体壁近傍には温度が急激に変化

する A 境界層が発生する.

② 平板の両側の温度を 2121, ffff ただし, ,熱通過率を k とすると,平板を通過する熱

流束は q=B となる.平板の熱伝導率をλ,厚さをδ,熱伝達率を h1, h2とすると,熱通過率は k=C とな

る.熱通過率 k の単位は D である.

解答欄

A B C D

③ 図の円管の熱通過では,円管内側は E,円管壁内部は F,円

管外側は E の熱移動が行われる.円管内側の伝熱量は Q1=G,円

管壁内部の伝熱量は Q2= H ,円管外側の伝熱量は Q3= I とな

る.

全熱通過率を k’とすると,円管を通過する熱量はQ=Q1= Q2=Q3

となる.ただし,k’= J である.

解答欄

E F G

H I J

l

d2 d1

Q2 w1

w2

f1

f2

Q1

Q3

h1

h2

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 166/178

166

理解度チェック,No.9 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 熱交換器には,A 流式,B 流式,C 交流式の 3 種類がある.A 流式と B 流式のうち,出口の温度

が同じ場合,伝熱面積を小さくできるのは B 流式である.

② 熱交換器の高温流体 Aと低温流体 B の温度差 は D と表される.ただし,熱通過率を k,

入口からの伝熱面積の合計を A,入口温度差を 1 ,また,

BA PBPA CGCGD

11 とする.

③ 熱交換器の入口と出口の温度差を 21, とすると,対数平均温度差 m は m E と表される.

④ 熱通過率を k,面積を A,対数平均温度差を m とすると,平板式熱交換器の高温流体から低温流

体への通過熱量 Qは Q= F と表される.

解答欄

A B C

D E F

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 167/178

167

理解度チェック,No.10 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① フィンの伝熱において,温度 θに関する線形2階常微分方程式は 2

2

dx

d A と表される.

ここで, Θt=0 ,A

hSm

2

とおくと,この微分方程式は, 2

2

dx

ΘdB と表すことができ,一般解は,

21, CC を積分定数として Θ C となる.境界条件を雰囲気温度 t0,フィンの根本温度 θ0,フィンの周

囲長 S,フィンの断面積 A,フィンの熱伝導率を λ,フィン周りの熱伝達率を h とすると,解はθ=D と

表される.また,フィンからの全放熱量は Q=E と表される.

② m をフィン表面の平均温度とすると,フィン効率は, F となる.

解答欄

A

B

C

D

E

F

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 168/178

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理解度チェック,No.11 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 伝熱工学において,重要な無次元数は A,B,C,D の 4 つである.A は E の特性を表す無次元数,

B は F の大きさを表す無次元数,C は E と G の相関を示す無次元数.D は H の強さを示す無次元数で

ある.A,B,C,D はそれぞれ,記号 I,J,K,L で表わされる.

② 代表速度を u,代表長さを L,動粘性係数を ν,熱伝達率 h,熱伝導率 λ,熱拡散率 a,重力加速度 g,

体膨張係数 β,温度差 Δθとすると,定義式は,I =M,J =N,K =O,L =P となる.

③ A は流体に働く Q 力と R 力の比であり,値が小さい場合は,粘り気があって,乱れのない流れ,

大きい場合はさらさらして,乱れの発生し易い流れであることを示す.前者は S 流と呼ばれ,後者は T

流と呼ばれる.

解答欄

A B C D

E F G H

I J K L

M N O P

Q R S T

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 169/178

169

理解度チェック,No.12 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 熱伝導率の単位は A で,MLST 系次元式は B である.したがって,Mの次元は C,Lの次元は D,

S の次元は E,T の次元は F である.

② 方程式 0,,,,,, wDchf p に含まれる基本単位が M, L, S, T の 4 つであるとき,次元解析に

より,方程式を G =0 または 1 H の形に変換することができる.この定理は I という.

③ ヌセルト数の実験式は強制対流熱伝達では Nu J,自然対流熱伝達では Nu K で表される.熱伝

達率 h はヌセルト数から計算でき,熱伝導率を λ,代表長さを Lとすると, h L となる.

解答欄

A B C D

E F G H

I J K L

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 170/178

170

理解度チェック,No.13 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 沸騰曲線において,縦軸は A の対数を表わし,横軸は B Twと水の C Tsの差として計算されるΔTsat

の対数を表わす.このΔTsatを D という.A'-A 間は非沸騰領域で,A-B 間は E 沸騰領域,D-I 間は F

沸騰領域である.B は G 点という.

② 水の p-v 線図および T-s 線図上で,c は H 点という.アは I の領域,イは J の領域,ウは K の領域

である.エは L 加熱を表わす.

解答欄

A B C D

E F G H

I J K L

log q

A

B

D

G

logΔTsat

沸騰開始点 A’

H

I

p

v

c

飽和蒸気線

T

s

c

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 171/178

171

理解度チェック,No.14 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 入射エネルギ Qが入射すると,平面で一部は QRのように A

され,一部は QAのように B され,残りは QDのように C される.

② 完全黒体の単色放射能は, 1/5

1

2

Tcbe

cE

[W/m2]で表

される.これを D の法則という.

③ 物体のある温度における放射能と,同じ温度における完全黒体の放射能の比を E と言う.

④ 物体表面の温度が増加すると,単色放射能のピークは短波長側へずれ, 3

max 1090.2 T [mK]の

関係が成立する.これを F の変位則という.

⑤ 物体が放出する全エネルギ量は, 4

0 /5

1

0 12Td

e

cdEE

Tcbb

で表わされる.

これを G の法則という.σは G 定数という.値は H W/(m2K4)である.

⑥ 2 面間の放射伝熱量を, 4

2

4

1 TTfQ s [W/m2]と表わすとき, sf を I という.

⑦ 2 面間の放射伝熱量を, 1

4

2

4

12,1 ATTfFQ s [W]と表わすとき, 2,1F は,1 の面から 2 の面に

放射する場合の J という.

解答欄

A B C D

E F G H

I J

Q

QR

QA

QD

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 172/178

172

理解度チェック,No.15 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① A 勾配に比例して,B(分子)が移動する現象を拡散という.

② 単位面積当たりの成分の拡散モル速度n [mol/(m2s)]は,モル濃度 n [mol/m3]の勾配 dxdn / に比例し,

dx

dnDn で表わされる.これを C 法則という.比例定数 Dを D という.単位は E である.

③ 界面から発生する分子の流れを F 流という.

④ 3 次元非定常状態における物質の拡散は,

2

2

2

2

2

2

z

n

y

n

x

nD

t

nで表される.これを G 法則と

いう.

⑤ 境界層には,速度,H,I の 3 種類がある.拡散で重要な無次元数は J と K である.

解答欄

A B C D

E F G H

I J K

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 173/178

173

理解度チェック,No.16 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 多次元熱伝導の場合,x 方向の温度勾配は A と表せる.また,温度がθの位置から dx 離れた位置

における温度は B となる.

② 非定常熱伝導の場合,時間に対する温度勾配は C となる.また,温度がθの時刻から,dt 経過した

時刻における温度は D となる.

③ 3 次元の非定常熱伝導方程式は,E となる.ここで,pC

a

は F もしくは G と呼ばれる. 3 次

元の定常熱伝導方程式は,H となる.

A B C

D E F

G H

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 174/178

174

理解度チェック,No.17 学籍番号 氏名

問題. 文章内の枠で囲まれた記号に当てはまる用語を解答欄に示せ.

① 刻みを h とするとき,関数 )(xu の 1 階導関数の前進差分近似は, )(xu A となる.また,2 階導

関数の中心差分近似は, )(xu B となる.

② 1 次元熱伝導方程式において,時間に関する前進差分近似式は

txt

,

C となる.また,空間に関

する中心差分近似式は

txx

,

2

2D となる.

2x

tar

とおいて式を整理すると,新しい時刻にける温度

は ttx, E と表される.

A B

h

2h

C D

t

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 175/178

175

理解度チェック解答

No. 1

1.× 高温になった炎から放射された電磁波が身体で熱に変わるから.

2.× 火に接触する場所とそうでない場所で温度に大きな差が出て,焼きむらが生じやすい.肉厚が

厚いと,金属内部で熱が拡散しやすいため,焼きむらが生じにくい.

3.× 減圧されている.

4.○

5.× 手で触れる前の表面温度は金属も木材も同じである.金属は熱伝導性が高く,熱容量が大きい

ため,手から多くの熱を奪うので冷たく感じる.木材は金属より熱伝導性が低く,熱を伝えにくいため,

手から奪う熱量が少ない.

6.× アルミ箔もアルミ板も最初は同じ温度である.アルミ箔は熱容量が小さいため,手を触れると

すぐに手の温度に近づく.一方,厚いアルミ板はアルミ箔より熱容量が大きいため,温度変化がアルミ

箔より小さくなり,手から熱をより多く奪うので冷たく感じる.

7.× 水蒸気が流出し,温度の低い外気と入れ替わるため熱が逃げて温まりにくくなる.

8.○

9.○

10.× 風が当たると熱伝達率が大きくなり,伝熱が促進されるために身体から熱を奪いやすくなり涼

しく感じる.

11.○

12.× 物体に光があたると,表面の特性によって特定の波長成分は吸収され,それ以外は反射される.

たとえば可視光の赤以外の波長成分が吸収されれば,赤のみが反射されるために赤く見える.黒の場合,

すべての可視光の波長成分は吸収され,白の場合は赤,緑,青の成分が反射される.

13.○

表面が黒く見えるということは,より多くの波長成分(エネルギー)を吸収するためである.

14.○

No. 2. A2,B 高,C 低,D 分子,E 振動,F 回転,G 電磁波,H 熱伝導, I 熱伝達,J 熱放射,K3

No. 3. A 時間,B 面積,C W/m2,D 通過熱量(伝熱量),E 一定,F 一,G 定常,H フーリエ, I 勾

配, J dx

d ,k フーリエ,L 熱伝導率,M W/(mK) (注:A と B は逆も可)

No. 4. A フーリエ,Bdx

dq

,C 温度,D

q ,E 1 ,F 直,G 12

Lq ,H

AtL

Q 12

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 176/178

176

No. 5. A 直,B 流束,C 等,D 温度,E 非,F 折,G

n

i i

i

nq

1

11

もしくは

n

i i

i

nq

1

11

,H 温度,

I 平衡

No. 6. A 一定,B 熱流束,C 通過熱量,D 面積,E 時間,F

1

1

2

21 ln

lnr

r

r

rx ,G 対数

No. 7. A 直,B 対数,C 双,D

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4

1

No. 8. A 温度,B 21 ffk ,C

21

11

1

hh

,DW/(m2・K),E 熱伝達,F 熱伝導,G 1111 wfldh ,

H

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l ww ,I 2222 fwldh ,J

221

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d

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No. 9. A 並,B 向,C 直,DDkAe 1 ,E

2

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,F mkA

No. 10. A 0tA

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,B Θm2 ,C mxmx eCeC 21 ,D

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00 ,F

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0

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tm

No. 11. A レイノルズ数,B ヌセルト数,C プラントル数,D グラスホフ数,E 流れ,F 熱伝達,G 熱

移動,H 自然対流,IRe,JNu,K Pr,L Gr,M

uL,N

hL,O

a

,P

gL3

,Q 慣性,R 粘性,S

層,T 乱,

No. 12. A W/(mK),BML/(S3T),C1,D1,E-3,F-1,G 321 ,, f ,H 32 ,f ,I バッキンガム

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 177/178

177

の π定理,J PrRef , ,K PrGrf , ,LL

Nu

No. 13. A 伝熱面熱流束,B 壁面温度,C 飽和温度,D 伝熱面過熱度,E 核,F 膜,G バーンアウ

ト(バーンナウト),H 臨界,I 液体,J 湿り蒸気,K 過熱蒸気,L 等圧

No. 14. A 反射,B 吸収,C 透過,D プランク,E 放射率,F ウィーン,G ステファン-ボルツマ

ン,H 81067.5 ,I 放射係数,J 形態係数

No. 15. A 濃度,B 物質,C フィックの第 1,D 拡散係数,E m2/s,F ステファン,G フィックの第

2,H 温度,I 濃度,J シュミット数,K シャーウッド数

No. 16. Ax

,B dx

x

,C

t

,D dt

t

,E

2

2

2

2

2

2

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,F 熱拡散率もしく

は温度伝導率,G 02

2

2

2

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2

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No. 17. Ah

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2,,, 2

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E txtxxtxtxxr ,,,, 2 もしくは,

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rr ,,, 2

1

引用文献

1) 一色・北山,最新機械工学シリーズ 7 伝熱工学(改訂・SI 併記),森北出版

2) 甲籐好郎「伝熱概論」養賢堂

3) 日本機械学会「伝熱工学資料(改訂第 4版)」丸善

4) 日本機械学会編「(新版)機械工学便覧 A6 熱工学」

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埼玉工業大学(小西克享)伝熱工学講義ノート(第 8 版) 理解度チェック 178/178

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伝熱工学講義ノート(第 8 版)

伝熱工学講義ノート 平成 19 年 9 月 1 日 初版

伝熱工学講義ノート(第 2 版) 平成 20 年 9 月 1 日 第 2 版

伝熱工学講義ノート(第 3 版) 平成 21 年 9 月 1 日 第 3 版

伝熱工学講義ノート(第 4 版) 平成 22 年 1 月 1 日 第 4 版

伝熱工学講義ノート(第 5 版) 平成 23 年 9 月 1 日 第 5 版

伝熱工学講義ノート(第 6 版) 平成 24 年 9 月 1 日 第 6 版

伝熱工学講義ノート(第 7 版) 平成 25 年 9 月 1 日 第 7 版

伝熱工学講義ノート(第 8 版) 平成 26 年 9 月 1 日 第 8 版

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