2016年のロシア・nis諸国の...

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ロシアNIS調査月報2017年6月号 1 はじめに 本誌では毎年6月号において、前年のロシ ア・NIS諸国の経済実績を踏まえつつ、各国の 最新の経済動向について論評するという企画 をお届けしている。本年も2016年のデータがほ ぼ出揃ったので、早速それを試みたい(『ロシ NIS経済速報』2017年4月15日および4月25 日号より再録)。なお、モンゴルは一般的には NISの範疇に入らないが、モンゴルも本レポー トの対象に加えている。 執筆は当会ロシアNIS経済研究所のスタッ フによるものであるが、ロシアについては北海 道大学スラブ・ユーラシア研究センターの田畑 伸一郎教授に特にご寄稿いただいた。 ロシア・NIS全般 経済危機はほぼ収束 表1、2に見るように、CIS統計委員会の発 表によれば、2016年のCIS全体の経済成長率は、 前年比実質プラスマイナス0%(概数)であっ たとされている。前年に陥ったマイナス成長か ら、どうにか脱した形だ。 ただし、地域最大の経済規模を誇るロシアの GDP 2016 年にも0.2 %のマイナスを記録し (年の終盤には回復に転じたが)、ロシアへの 依存度が高いベラルーシでも苦境が続いてい る。過去十数年、CIS圏では産油国が経済成長 を牽引する構図があったが、 2016年のカザフス タンはかろうじてプラスの1.0%、アゼルバイ ジャンに至ってはマイナス3.8%であり、油価 低迷の中で産油国の不振が目立った。この地域 の地政学リスクの震源となっていたウクライ ナは、 2016年に2.3%の成長を遂げたものの、過 去の落ち込みが大きかったことによる反動増 という側面が大きい。 世銀が2017年1月に発表した『世界経済見通 し』の分析によれば、 2016年のロシアのGDP小は当初の見通しより軽微であり、それは2016 年に拡張的な財政政策がとられたこと、銀行セ クターへの資本・流動性の注入があったことに 起因するという。 2014年から2016年初頭にかけ てルーブルが実質実効ベースで減価したこと も、プラス要因となった。企業が在庫積み増し を再開する中で、投資は予想よりも早く回復に 転じ、インフレが危機前の水準に戻ったことで 消費の縮小にも歯止めがかかった。一方、カザ フスタンとアゼルバイジャンでは、経済危機の 峠は越えたものの、かつては公的投資によって 支えられていた非石油セクター(カザフスタン ではサービス部門、アゼルバイジャンでは建設 部門)の落ち込みにより、成長が抑制されてい る。そして、ロシア、カザフスタン、アゼルバ イジャンの成長力が弱いことが、他の中央アジ 2016年のロシア・NIS諸国の 経済トレンド ロシアNIS経済研究所 ■ Research Report ■ 特 集 ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

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ロシアNIS調査月報2017年6月号 1

■ Research Report 2016年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

はじめに

本誌では毎年6月号において、前年のロシ

ア・NIS諸国の経済実績を踏まえつつ、各国の

新の経済動向について論評するという企画

をお届けしている。本年も2016年のデータがほ

ぼ出揃ったので、早速それを試みたい(『ロシ

アNIS経済速報』2017年4月15日および4月25

日号より再録)。なお、モンゴルは一般的には

NISの範疇に入らないが、モンゴルも本レポー

トの対象に加えている。

執筆は当会ロシアNIS経済研究所のスタッ

フによるものであるが、ロシアについては北海

道大学スラブ・ユーラシア研究センターの田畑

伸一郎教授に特にご寄稿いただいた。

ロシア・NIS全般 経済危機はほぼ収束

表1、2に見るように、CIS統計委員会の発

表によれば、2016年のCIS全体の経済成長率は、

前年比実質プラスマイナス0%(概数)であっ

たとされている。前年に陥ったマイナス成長か

ら、どうにか脱した形だ。

ただし、地域 大の経済規模を誇るロシアの

GDPは2016年にも0.2%のマイナスを記録し

(年の終盤には回復に転じたが)、ロシアへの

依存度が高いベラルーシでも苦境が続いてい

る。過去十数年、CIS圏では産油国が経済成長

を牽引する構図があったが、2016年のカザフス

タンはかろうじてプラスの1.0%、アゼルバイ

ジャンに至ってはマイナス3.8%であり、油価

低迷の中で産油国の不振が目立った。この地域

の地政学リスクの震源となっていたウクライ

ナは、2016年に2.3%の成長を遂げたものの、過

去の落ち込みが大きかったことによる反動増

という側面が大きい。

世銀が2017年1月に発表した『世界経済見通

し』の分析によれば、2016年のロシアのGDP縮

小は当初の見通しより軽微であり、それは2016

年に拡張的な財政政策がとられたこと、銀行セ

クターへの資本・流動性の注入があったことに

起因するという。2014年から2016年初頭にかけ

てルーブルが実質実効ベースで減価したこと

も、プラス要因となった。企業が在庫積み増し

を再開する中で、投資は予想よりも早く回復に

転じ、インフレが危機前の水準に戻ったことで

消費の縮小にも歯止めがかかった。一方、カザ

フスタンとアゼルバイジャンでは、経済危機の

峠は越えたものの、かつては公的投資によって

支えられていた非石油セクター(カザフスタン

ではサービス部門、アゼルバイジャンでは建設

部門)の落ち込みにより、成長が抑制されてい

る。そして、ロシア、カザフスタン、アゼルバ

イジャンの成長力が弱いことが、他の中央アジ

2016年のロシア・NIS諸国の

経済トレンド

ロシアNIS経済研究所

■ Research Report ■

特 集 ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

ロシアNIS調査月報2017年6月号 2

特集◆ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

ア諸国やコーカサス諸国の経済にも、引き続き

重荷となっている。アルメニア、ジョージア、

キルギス、タジキスタンといった小国は、いず

れも2016年にプラスの成長を遂げているもの

の、その成長率は長期的なトレンドを下回るも

のとなっている。

振り返れば、2015年のロシア・NIS経済を特

徴付けたのは、通貨の大幅な切り下げと、それ

にも関連した高いインフレ率であった。一方、

2016年になると、各国の通貨は概ね安定し、増

価に転じる国もあった。2016年末の各国通貨の

対米ドル公定レートを、2015年末のそれと比較

し、1年間で名目何パーセント増減したかを見

てみると(+が増価、▲が減価を表す)、ロシ

ア・ルーブル:+16.8%、ウクライナ・グリブナ:

▲12.1%、ベラルーシ・ルーブル:▲5.5%、モ

ルドバ・レイ:▲1.6%、カザフスタン・テンゲ:

+1.8%、キルギス・ソム:+8.9%、ウズベキ

スタン・スム:▲15.0%、トルクメニスタン・

マナト:増減なし、タジキスタン・ソモニ:▲

12.7%、アゼルバイジャン・マナト:▲13.6%、

アルメニア・ドラム:増減なし、となっている。

むろん、経済への実際の影響を考えるには、表

4に示したインフレ率を加味した実質為替レ

ートを用いる必要がある。ちなみに、ベラルー

シでは2016年7月1日に10,000分の1のデノ

ミが実施されているので(独立後3度目のデノ

ミで旧ソ連で 多)、上記の減価率はそれを考

慮して算出したものである。

再び前掲の『世界経済見通し』によれば、2017

年以降に関しては、いずれの国についても、

2016年よりも良好な経済パフォーマンスが期

待されているものの、いずれにしても2010年代

のような高度成長の展望は描かれていない。す

なわち、ロシアに関しては、2017年1.5%、2018

年1.7%、2019年1.8%という見通しとなってい

る。その他の重要国は、ウクライナが2.0%、

3.0%、3.0%、カザフスタンが2.2%、3.7%、4.0%、

ウズベキスタンが7.4%、7.4%、7.4%、アゼル

バイジャンが1.2%、2.3%、2.3%という見通し

である。 (服部 倫卓)

ロシア 油価下落の底打ちにより経済縮小も底打ち

ロシア経済は、2015年からマイナス成長とな

っていたが、2016年にはGDPの下げ幅が0.2%

となり、底を打ったと見られる。四半期別の統

計を見ると、2016年第4四半期には、GDPは対

前年同期比0.3%の増加となっている。これに

は、油価の下落が底を打ったことが寄与してい

る。GDPを生産部門別に見ると、2015年に4.6%

減少した製造業において、2016年には1.1%の

増加となったことが象徴的である。鉱工業統計

によると、製造業のなかでは、衣服、木材加工、

ゴム・プラスチック製品、電気機械、自動車、

その他輸送機器など、多くの部門で2015年にお

ける減産から増産への転換が生じている。食品

や化学は好調を維持しているが、近年の増産は

輸入代替によるところが大きいと考えられる。

製造業以外では、電気・ガス・水道、金融・保

険、不動産、運輸・通信においても、マイナス

成長からプラス成長への転換が見られた。

GDPを支出項目別に見ると、2015年に9.9%

減少した総固定資本形成の減少が2016年には

1.8%の減少になっている。投資統計を見ると、

2016年において投資を増加させる方向でもっ

とも大きく寄与したのは鉱業部門であり、対前

年比14.4%の大幅な増加となっている。農業、

商業、運輸、公務・国防・社会保障などの部門

でも投資が増加した。鉱業と運輸については、

ヤマルLNG関連の投資増加の影響を受けてい

る。

2016年における経済の大きな改善点は、2014

年から2年続けて10%を超えていたインフレ

率が5.4%に下がったことであり、1991年のロ

ロシアNIS調査月報2017年6月号 3

■ Research Report 2016年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

シア独立以降、もっとも低い上昇率となった。

これは、油価の底打ちとともに、ルーブル・レ

ートの低下が止まったことによるところが大

きかった。中銀の政策は、為替管理からインフ

レ・ターゲッティングに移行しており、中銀は

2015年8月以降、為替市場への介入をしていな

い。ルーブルの対ドル・レートは2016年1月頃

に下げ止まりとなり、2016年を通じて緩やかに

上昇した。2016年1月22日には1ドル=83.6ル

ーブルの 安値となったが、同年12月31日には

1ドル=60.7ルーブルまで回復した。油価の底

打ちにより、株価も回復傾向にある。

このように、ロシア経済は様々な点で2014~

2015年よりはかなり良い状況になったと言え

る。しかしながら、油価は依然として低い水準

にあり、家計の所得や消費などの改善はまだま

だである。実質平均賃金は、インフレ率の低下

により、2015年の9.0%の減少から、2016年には

0.7%の増加となったが、年金など賃金以外の

所得を含む可処分所得の指標で見ると、2015年

の3.2%の減少から、2016年には5.9%の減少へ

と悪化している。GDP統計のなかの家計消費は、

2015年における対前年比9.8%減少と比べると

改善したものの、2016年においても同4.5%減

少した。家計消費の不振に対応して、GDP統計

における商業部門では減少が続いており、その

うち小売業は対前年比6.1%減となっている。

油価の低迷は、対外経済関係の改善を遅らせ

ている。輸出額は対前年比17.5%減少して2,817

億ドルとなり、輸入額は同0.7%減少して1,917

億ドルとなった。原油やガスの輸出は、数量で

は前年と比べて増えたものの、金額では大きな

減少となっている。輸入に比べて輸出の方が大

きく減少したため、貿易黒字は同39.4%もの減

少となり、1,000億ドルを割り込んで、900億ド

ルとなった。貿易黒字が1,000億ドル以下とな

ったのは、2004年以来のことである。貿易黒字

の減少により、経常収支の黒字は対前年比

63.7%と大きく減少して250億ドルとなった。

これはロシアとしては、近年では相当低い水準

である。

油価の低迷は、財政の面でも深刻な影響を及

ぼしている。連邦予算で見ると、2016年の歳入

は対前年比1.5%の減少、歳出は同5.1%の増加

となり、財政赤字は2兆9,563億ルーブルとな

った。歳出が増えたことには、2016年12月に国

防費が8,000ルーブルほど増やされたことが影

響している。対GDP比で見ると、歳入は、石油・

ガス収入の減少により、近年では 低水準の

15.7%となった。歳出は、2015年をわずかに上

回る19.1%となっており、この結果、財政赤字

が2010年の水準に次ぐ3.4%という大きさとな

っている。財政赤字の7割余りは、石油・ガス

収入で蓄えられていた予備基金を取崩すこと

により補填された。予備基金は2016年に3分の

2以上取崩され、2017年中に底を突く見込みで

ある。財政赤字補填には、国有企業の株式売却

収入も充てられた。

このような状況のなかで、2017~2019年にお

いても、油価が1バレル=40ドルを想定した緊

縮予算が立てられ、財政赤字を徐々に減らすこ

とが目指されている。向こう3年間のインフレ

目標は4%とされ、2017年の経済成長予測は

0.6%と控え目なものとなっている。

(田畑 伸一郎) (ロシア経済に関しては、田畑伸一郎教授によるよ

り詳しい分析が、当会『ロシアNIS調査月報』5月号

に掲載されています。)

ウクライナ 2.3%成長も情勢の正常化は遠く

ウクライナでは、2016年にGDPが前年比実質

2.3%増を記録し、ようやくマイナス成長に歯

止めがかかった。しかし、過去の落ち込みが大

きかったことによる反動増という側面が強く、

ロシアNIS調査月報2017年6月号 4

特集◆ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

ここに来て経済回復の足枷となりかねない新

たな問題も浮上している。また、ウクライナが

国運を賭けるEUとの関係は、2016年には「一

歩前進・二歩後退」という様相を示した。

ウクライナのGDPを四半期ベースで跡付け

ると、季節調整値の前期比で、2015年第3四半

期からプラスに転じていた。その流れは2016年

に入るとさらに確実なものとなり、第1四半

期:+0.5%、第2四半期:+0.9%、第3四半

期:+1.4%、第4四半期:+1.9%と成長幅を

広げている。

2016年のGDPの中身を見ると、需要面では、

家計 終消費支出の伸びは1.8%に留まってお

り、純外需も縮小する中で、総固定資本形成の

顕著な回復が経済成長の主たる原動力となっ

たと見られる。GDPを生産部門別に見ると(▲

はマイナスを意味する)、農林水産業:+6.0%、

鉱業:▲1.0%、製造業:+3.6%、建設:+16.3%、

運輸・通信:+3.0%、金融・保険業:▲15.7%

など、まだら模様である。

ウクライナの鉱工業の減産にもようやく歯

止めがかかり、2016年には生産指数が前年比

2.4%のプラスを達成した。2015年まで政治・経

済の混乱に起因する落ち込みが激しかった部

門や地域で、情勢がある程度安定したことを受

け、反動増が生じたものだろう。その一方で、

EUとの自由貿易協定が全面発効した効果も含

め、ウクライナにもやっと「成長産業」と呼び

うる部門が出てきたことも注目される。端的な

例が、西ウクライナにおいて外資主導でEU向

けの自動車電装品生産が盛んになっているこ

とであり、電子・光学機器の生産が24.1%とい

う 大の伸びを示したのも、そうした潮流に関

係していよう。また、食品産業は、ロシア市場

を喪失するかたわら、EU向け輸出は問題を抱

えつつもそれなりに伸びており、やはり成長産

業との位置付けが可能であろう。

ウクライナの元々の基幹産業である鉄鋼業

の生産実績を見ると、2016年の各品目の生産量

は、銑鉄2,350万t(前年比8%増)、粗鋼2,420

万t(同6%増)、完成鋼材2,140万t(同6%

増)と回復を示している。ただし、鋼管の生産

は微減だったと伝えられる。

2016年の農業生産は、6.1%増という良好な

実績を示した。ただ、農作物生産が+9.7%だっ

たのに対し、天候等には左右されないはずの畜

産が▲3.6%という点が、心許ない。主要作物の

収穫量は、小麦:2,603万t(前年比▲1.8%)、

大麦:943万t(+13.8%)、トウモロコシ:2,796

万t(+19.9%)など。

日系企業のビジネスの柱にもなっている乗

用車販売は、2016年にようやく回復を示した。

同年のウクライナ市場における乗用車(新車)

販売は6万5,562台となり、前年比40.9%増とい

う大幅な伸びを示した。2016年8月に中古車の

輸入物品税が引き下げられ、これによりますま

す中古車が幅を利かすようになるとの予想も

あったが、新車販売への影響は軽微だった。過

去3年間の危機で先送りされていた需要が、顕

在化したものと見られる。

経済指標だけを見れば、安定を取り戻しつつ

あるかに思われるウクライナだが、不安材料に

は事欠かない。その際たるものは、2016年12月

末から一部のウクライナの急進派がウクライ

ナ本土とドンバス占領地を結ぶ鉄道輸送を遮

断していることであり(ポロシェンコ政権も追

認)、本土・占領地双方の経済に痛手となって

いる。IMFはドンバス封鎖問題に関連し、2017

年のウクライナの成長率見通しを1%ポイン

トほど下方修正した。また、銀行セクターでは

大きな事件が続いており、2016年暮れには 大

の民間銀行プリヴァトバンクが国有化され、

2017年に入るとロシア系銀行が圧迫されズベ

ルバンクが撤退する事態となった。さらには、

汚職疑惑を追及されていたホンタレヴァ中銀

総裁が4月10日に辞意を表明、総裁ポストが政

ロシアNIS調査月報2017年6月号 5

■ Research Report 2016年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

争の具になっている感もあり、ことほどさよう

に、構造改革のスムーズな進展は期待しにくい

状況にある。 (服部 倫卓)

ベラルーシ 長引く経済難に不満を募らす国民

2016年のベラルーシのGDPは、前年比実質

2.6%減となった。2015年の3.8%減よりは落ち

込みが軽微になったものの、現時点でCISにお

いて も経済情勢の厳しい国の一つと言わざ

るをえない。

ベラルーシはロシアへの依存度が高い国で

あり、ロシア経済が危機に陥れば、ベラルーシ

もそれに巻き込まれるのは、当然である。ただ、

現下ベラルーシの場合には、より具体的なマイ

ナス要因がある。2010年代にベラルーシが高度

成長を謳歌できたのは、ロシアから有利な条件

で原油を輸入し、それを国内2箇所の製油所で

加工して、石油製品を欧州市場等に輸出するビ

ジネスの賜物だった。しかし、2016年初めにベ

ラルーシがロシアのガス供給に対して高価格

を不服とし支払を滞らせると、ロシアは報復と

してベラルーシへの原油供給を削減した。結局、

2016年のベラルーシのロシアからの原油輸入

は数量ベースで20.7%縮小、その結果ベラルー

シの石油製品輸出も同22.7%低下した。油価が

低迷している折りだっただけに、ベラルーシに

とっての大打撃となった。なお、石油ガスをめ

ぐるロシアとベラルーシの対立はこのほどよ

うやく決着し、4月13日に政府間で合意文書が

結ばれた。

石油製品およびカリ肥料という世界的に通

用する商品を別にすると、その他のベラルーシ

の工業製品は販路をロシア市場に依存してお

り、品目によっては生産の半分以上がロシア向

けというケースも少なくない。それゆえに、ベ

ラルーシがロシアを中心とする経済統合に参

加することは不可避だが、ユーラシア経済連合

の発足にもかかわらず、ロシアの景気後退や輸

入代替政策を受け、2015年にはベラルーシから

ロシアへの輸出が大幅に減る品目が目立った。

しかし、2016年にはロシア向けの輸出がある程

度持ち直したため、2016年のベラルーシの鉱工

業生産の落ち込みは0.4%と比較的軽微であっ

た。主要部門の増減を見ると、食品産業:+

2.7%、繊維・同製品:+4.6%、コークス・石

油製品:▲16.8%、化学工業:▲3.8%、ゴム・

プラスチック:▲5.5%、冶金:▲0.3%、コン

ピュータ・電子・光学機器:+4.2%、電気機械:

+9.8%、機械設備:+5.8%、輸送手段:+12.6%

などとなっている。機械関連が息を吹き返した

一方、やはり石油を原料とする部門の不振が際

立っている。

長引く不況は、国民生活への皺寄せとなって

表れている。国民の実質可処分所得は、2015年

に5.5%低下したあと、2016年にさらに7.5%も

低下した。ウクライナ危機後にベラルーシ社会

は顕著に保守化し、厳しい社会・経済情勢にも

かかわらず、ベラルーシ国民は2015年10月の選

挙でルカシェンコ大統領の再選を選択した。し

かし、 近になって国民の不満は高まっている

模様であり、失業者に課税をするという奇抜な

政策が国民の反発を買い、この3月には久し振

りに大規模な反政府デモも発生した。

(服部 倫卓)

モルドバ 内政不安を抱えつつ、経済は回復の兆し

2016年のモルドバの経済成長率は、前年度の

マイナス0.5%から持ち直し、4.1%のプラスと

なった。上半期は1%前後の緩やかな成長であ

ったが、下半期の成長率が6%を超えて追い風

となった。GDPを支出項目別に見ると、寄与率

が大きいのは家計 終消費支出の3.2%であっ

ロシアNIS調査月報2017年6月号 6

特集◆ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

た。また生産部門別では、モルドバの 重要産

業である農業が、前年のマイナス13.4%からプ

ラス18.6%と大きく伸びたことも経済成長の

回復に影響している。

また、2016年の鉱工業生産もわずかながら

0.9%増となった。農業国であるモルドバの製

造業の約半分は農産物加工・食品産業で占めら

れており、同部門が1%増加、名産のワイン生

産も0.3%とプラスの成長になっている。

なお、モルドバ経済は海外での出稼ぎ収入に

も大きく依存しているが、モルドバ中央銀行の

データによると、2016年に海外からモルドバの

個人に送られた仕送りの総額は10億7,924万ド

ルで、前年比4.5%減となった。

モルドバの2016年の貿易収支に目を向ける

と、輸出額は20億4,534万ドルで4%増大した。

中でも、輸出の65.1%を占める対EU加盟国向

け輸出額が9.4%増と成長を見せたことが大き

く影響している。一方、輸出の20.3%を占める

対CIS諸国向け輸出額は、前年度に比べれば減

少率は落ち着いたものの、15.9落ち込んでいる。

2014年にEUとの連合協定を締結して以来、モ

ルドバの主要貿易相手国であるロシアの報復

的な関税導入措置によって対ロシア輸出が減

少しており、今なおモルドバの貿易に打撃を与

え続け、成長を鈍化させている。また、輸入額

は40億2,030万ドルで前年比0.8%と微増に留ま

っている。

2016年12月にモルドバでは約20年ぶりとな

る国民による大統領の直接選挙が行われた。当

選を果たしたドドン新大統領は、就任後すぐに

4年ぶりとなるロシアとの政府間委員会会議

を実施し、2017年1月のロシア訪問中には、

2018年末の議会選挙後にEUとの連合協定の撤

回を希望すると発言するなど、対ロシア関係の

再構築に重点を置いており、ロシアとの関係が

改善されれば、さらなる経済回復が見込めるだ

ろう。しかしフィリプ首相は欧州統合路線を曲

げておらず、親ロ派大統領の発言について、政

府の方針に影響しないと公式に発表している。

内政の混乱が続くモルドバでは、現体制にも不

調和の兆しが見られ、今後のモルドバ経済の雲

行きには依然として怪しさが残る。(森 彩実)

カザフスタン 油価底打ちで一息つくも、依然急がれる構造改革

2016年、数値に表れたカザフスタンの経済状

況は、前年より一層厳しい。GDP成長率はかろ

うじてプラスながら対前年比1.0%と前年の

1.2%からさらに減速、鉱工業生産は前年の▲

1.6%に続き▲1.1%と2年連続で下落した。油

価低迷の影響から2015年に前年比42.5%もの

減少となった輸出は2016年さらに20%低下、国

内需要の減退により輸入も減少したため収支

ではプラスを保ったが、黒字額の116億ドルは

前年比▲24.6%で、2014年比の低下幅は実に

70%に達する。経常赤字は2015年の対GDP比

3.0%から2016年は6.1%へと倍増した。

ただしこれら一連の数値をよそに、2016年の

カザフスタンの経済状況は特に後半において、

前年同期より改善されていたものと考えられ

る。 大の要因は無論、油価である。前年は年

初の1ドル=約182テンゲから年末の約339テ

ンゲへ、名目で86.2%も減価した自国通貨テン

ゲの為替レートは、2016年初より徐々に安定、

年後半に向け油価が底を打ったことから上昇

に転じ、年末には1ドル=約333テンゲと年初

比で1.8%増価した。年明け以降はさらに上昇、

2017年4月現在は310テンゲ台前半で推移して

いる。

一方、通貨の安定により抑制されるべきイン

フレ率は、2016年は14.6%と前年の6.5%から倍

増した。ただしこれは年平均をとった場合で、

前年12月比では2015年の13.6%から2016年は

8.5%へと逆に大幅に低下している。急激な物

ロシアNIS調査月報2017年6月号 7

■ Research Report 2016年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

価上昇のタイミングが前年末であったことに

鑑みれば、国民の生活実感により近いのは後者

であろう。通貨の信用回復によりカザフスタン

経済の「ドル化」は抑制され、ADBの推計によ

れば2016の国内銀行預金総額に占める外貨の

比率は前年の69.0%から54.6%へと低下した。

また、外貨準備と国家基金(通称石油基金)の

減少にも歯止めがかかり、2016年末時の外貨準

備高は年初比6.0%増の295億ドルに回復、一方、

国家基金は613億ドルで対年初比▲3.4%であ

ったが、減少幅は前年の同▲13.4%から大幅に

縮小した。2017年からは増加傾向にあり、3月

末時で年初比2.2%増の626億ドルが蓄積され

ている。

このように2016年後半から経済が快方に向

かっていたことと、ナザルバエフ大統領が2年

ぶりに年次教書演説を本来の1月に実施した

ことは無縁ではあるまい。『カザフスタンの第

三次近代化:国際競争力』と題された本年の演

説では、この数年続いた危機脱出のため国民の

団結を鼓舞するかの様な論調が影を潜め、テー

マを経済に絞り淡々と方針を語っている。曰く、

第一次近代化として市場経済化を、第二次近代

化として『カザフスタン2030』戦略の達成とア

スタナ遷都を成し遂げたカザフスタンは、今、

第三次近代化の時を迎えている。その目標は国

際競争力を得るための経済の構造的近代化で

ある―との主張だが、冒頭に掲げた「2050年ま

でに世界の先進30カ国入りする」という目標も、

列挙した輸出振興、インフラ整備への民間資金

活用、中小企業育成等の重点政策も、全体に既

視感が強い。「経済近代化」というキーワード

自体、同国が高度成長を開始した2000年初から、

産業多角化、高度技術化等、表現を変えつつ繰

り返し語られてきたそれであり、かつ繰り返さ

れてきたという事実が、従来の取り組みにおけ

る成果の乏しさを示している。

油価の底打ちに加え、カザフスタンでは2016

年7月、国内 大のテンギス油田で投資額368

億ドルの生産拡大計画が承認され、9月にはカ

シャガン油田が生産を再開した。石油セクター

が再活性化するなか、経済構造改革への真摯な

取り組みを継続できるか、今がこの国のまさに

正念場と言えるのかもしれない。(輪島 実樹)

キルギス 周辺国の景気後退から減速が続く

2016年のキルギスの経済成長率は、前年の

3.9%に続き、対前年比3.8%と減速した。プラ

ス成長が続いているとはいえ、経済依存度が高

いロシアやカザフスタンの景気後退に伴う形

で、2014年以降は成長が鈍化している。部門別

に見ると、鉱工業生産は対前年比4.9%で、近年

不振続きであったクムトール金鉱の金生産量

(前年比6%増、2016年GDPの8%、鉱工業生

産の23.4%を占める)の回復が、外需の低迷に

より生産量が落ち込んだ繊維製品等の減少を

相殺した。農林水産業とサービス業はともに対

前年比3.0%、建設は対前年比7.4%であった。

貿易面では、輸出が15億4,460万ドルと5.1%

増加したが、これも主に金の輸出増加に伴うも

のであり、輸入は3.7%減の39億1,910万ドルで

あった。キルギスは2015年にユーラシア経済連

合に加盟したが、加盟国との貿易は一貫して低

迷を続けている。キルギスの2016年における加

盟国との貿易は全体の貿易額の35.9%を占め

たが、そのうち半分以上を占めるロシアとの貿

易は、前年比32.4%縮小する結果となった。

しかし、2016年はユーラシア経済連合加盟に

よるプラスの側面も見られた。キルギス経済の

重要な収入源となっているロシアやカザフス

タンへの出稼ぎ労働者からの送金額の増加で

ある。単一労働市場により、出稼ぎ労働者は加

盟国内での就労において社会保障や多くの権

限を得られるようになった。こうした労働環境

ロシアNIS調査月報2017年6月号 8

特集◆ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

の改善もあり、2016年にロシアから本国への送

金額は、キルギス国立銀行のデータによると、

前年の16億2,240万ドルを3億ドル以上上回る

19億3,840万ドルと、ロシアの不況下にありな

がらも19.4%増加した。

目立った基幹産業のないキルギスでは、出稼

ぎ労働者の送金に頼らざるを得ない状況は以

前から変わらず、国民1人あたりのGNIは1,170

ドル(2015年世銀)と世界でも貧困国の部類に

入る。国全体の人口約600万人のうち貧困層の

数は約200万人と、3人に1人が貧困ラインで

の生活を送っており、特に南部での状況は深刻

で、地域人口の約半数が貧困層にあたる。こう

した状況は国民の不満や社会的緊張を生み出

し、さらに過激主義的組織への国の政策が脆弱

であることから、テロに対するリスクもたびた

び取沙汰されており、ビシュケクにある中国大

使館でのテロ事件やサンクトペテルブルグで

の地下鉄爆破テロ(いずれも南部出身者が犯行

に関与)も記憶に新しい。

2017年10月には大統領選挙が予定されてい

る。アタムバエフ大統領本人の出馬はないとさ

れているが、自ら創設したキルギス社会民主党

が擁立する自身の後継者の勝利を望んでいる。

2016年12月には、議会と首相の権力強化や大統

領権限の縮小などを盛り込んだ憲法改正の是

非を問う国民投票を主導したことから、自身の

側近を大統領や首相に就任、もしくは、議会を

通して退任後も影のプレイヤーとして権力を

維持するつもりだと野党勢力から批判を浴び

た。しかし、国民はこれまでの度重なる政変に

疲弊しており、何よりも政治的な安定を望んで

いる。そのため、現在アタムバエフを批判する

野党勢力はいずれも国民の支持を得るまでに

達していない状況である。政府は大統領選挙ま

でに国内の社会・経済情勢を少しでも改善して

いく必要があるだろう。 (片岡 久美子)

ウズベキスタン

大統領交代で独自ウズベク

路線モ デ ル

は変貌するか

IMF型の市場経済化を否定し、国家による強

固な経済管理のもとでの安定成長を標榜する

「ウズベク・モデル」。2016年9月2日、その

創設者であり象徴でもあったカリモフ大統領

が78歳で死去した。後継となったのが2003年か

ら首相を務めるシャフカット・ミルジヨエフで、

議会の任命により3カ月代行を務めた後、2016

年12月の大統領選挙で88.61%の支持を得て当

選した。

カリモフ大統領という強烈なカリスマのも

とで、首相の存在は政治的にも経済的にも極め

て影の薄いものであった。政権内での代行指名

と形式的選挙を経て就任、という経緯に鑑みて

も、新大統領は前任者の政策をそのまま継承す

るものと予想された。しかし、就任に先駆けて

新大統領が次々と打ち出した経済政策は、意外

にも野心的な改革・開放路線である。特に注目

されるのは2016年11月、公開コメントを求める

として外貨政策に関わる『大統領決定』の草案

を政府公式サイトに公表、為替交換自由化の意

向を示したことで、万一実現すれば外資参入

大の障害が除かれ、ウズベキスタンの国際経済

への統合が一挙に進むことになる。

12月の大統領就任演説においても、新大統領

は安定した経済発展の維持を自らに課せられ

た優先的使命であると述べ、その手段として経

済自由化と外国投資導入促進の必要性を強調

した。さらに就任後の2017年2月には大統領令

『ウズベキスタン共和国の更なる発展のため

の活動戦略について』を発令、2017~2021年の

5年間で達成すべき政治・経済における5つの

優先課題を国民に示し、うちひとつに「経済発

展と自由化」を掲げた。実現に向け政府は、マ

クロ経済安定化強化、競争力向上、農業近代化、

経済における政府のプレゼンス縮小、中小・民

ロシアNIS調査月報2017年6月号 9

■ Research Report 2016年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

間企業発展促進、投資環境改善による外国投資

導入、等の課題に積極的に取り組んでいくとい

う。

新政権が発足にあたり独自性をアピールす

るため改革路線を打ち出すことはままあるこ

とであり、掲げられた政策が額面どおり実行さ

れる保証はない。また2016年のウズベキスタン

経済はGDP成長率対前年比7.8%増、鉱工業生

産・農業生産ともに6.6%増等、依然として過去

10年来の高い成長率を保つ一方、インフレ率は

前年並みの5.6%に抑制された。財政収支は政

府公表では対GDP比0.1%の黒字、IMF推計では

同1.0%の赤字と齟齬があるが、前年並みで安

定しているという点で両者は一致している。通

貨スムの対ドル公式レートは2016年通年で▲

15%とほぼ前年並みに緩やかに低下、一方暴落

が懸念された闇レートは、ADBによれば▲

19%で、前年の▲60%に比して大幅に減価が抑

制された。つまり、2016年も従来路線に破綻は

なく、経済の安定と発展は堅固に維持されてい

ると言えよう。

ただし、このウズベクが誇る安定成長にひそ

やかな陰が差し始めているのもまた事実であ

る。過去3年の成長率は、GDPで2014年対前年

比8.0%、2015年8.0%、2016年7.8%、鉱工業生

産同8.3%、7.9%、6.6%、農業生産7.0%、6.8%、

6.6%と、依然として高率ではあるものの緩や

かに縮小している。これは従来のモデル、すな

わち天然ガス・金・綿花等の有力品目の輸出を

政府が管理し、その収益で積極的な公共投資と

給与・年金の引き上げを維持するという既存の

成長戦略が高原状態に達していることを示唆

するものではないか。

2017年初、ウズベキスタンの人口は3,200万

人を突破した。国民生活を支え、経済発展を将

来にわたって維持するには、改革実現による新

たな成長要因の獲得が望ましい。新大統領の掲

げる改革路線は果たしてポーズかリアルか。

2017年、2018年の経済成長をADBはそれぞれ

7.0%、7.3%、IMFはいずれも6%と予測してい

る。 (輪島 実樹)

トルクメニスタン 緩やかな成長を維持するも多角化は急務

域内の資源国が軒並み経済不振に陥る中、ト

ルクメニスタンは6.2%と緩やかな経済成長を

維持した。しかし、2014年まで2桁台の成長を

続けていたことを考えると、成長の減速感は否

めない。国際的な資源価格の低迷に加えて、限

定された輸出相手国の経済低迷に伴うトルク

メニスタン産のガス需要の縮小や外国投資の

縮小が影響している。

トルクメニスタンのGDPを生産部門別に見

ると、鉱業は前年と同様2.8%の伸びを示した

が、非資源分野については前年の8.8%から減

速して6.6%の成長に留まった。中でも工業は

2014年の11.4%、2015年の3.1%からさらに鈍化

し、1.2%に留まっている。一方で、綿花や小麦

などの生産が伸びた農業は12.0%成長し、サー

ビス業11.0%、運輸・通信10.4%、建設4.4%も

一定の成長を示したことが成長の維持につな

がった(数字は ADB の Asian Development

Outlook 2017)。

資源依存型経済を脱却して産業多角化や民

間セクターおよび中小企業の発展を目指すト

ルクメニスタンにとって欠かすことのできな

い投資は0.4%と微増に留まり、外国投資につ

いては27.6%も減少した(トルクメニスタン国

家統計委員会)。

天然ガスの生産・輸出に依存する経済構造に

未だ大きな変化のないトルクメニスタンでは、

2016年1月以来、かつて 大のガス輸入国であ

ったロシアがガス輸出を停止、現在 大の輸入

国である中国も需要を縮小しており、2014年ま

で続いた2桁台の経済成長に減速をもたらし

ロシアNIS調査月報2017年6月号 10

特集◆ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

ている。一方で、2016年6月にはイランとの関

係において天然ガスのバーター取引に関する

協定が結ばれた。トルクメニスタンにとって第

2の資源輸出相手国であるイランとの関係強

化には一定の期待が向けられているものの、バ

ーター取引では追加収入は得られず、天然ガス

市場の多角化も、引き続き、同国の喫緊の課題

である。ここ数年注目されているTAPIパイプ

ラインは、2015年末以来、トルクメニスタン部

分の建設が進んでおり、アフガニスタン~パキ

スタン部分についてもトルクメニスタンが一

定額を融資することが決まったと伝えられて

いるが、アフガン情勢を考慮すると実現に向け

た課題は大きい。カスピ海を横断してトルコや

欧州を市場とするトランスカスピ・パイプライ

ン計画についても関係国間の話し合いが進め

られているが、目立った成果は出ていない。

2016年のトルクメニスタンの歳入は10.8%

縮小し、歳出も17.8%減となっているが、未だ

に社会政策のへの支出が80%を超え、給与、年

金、奨学金などの支払いに10%近くがあてられ

ている。一方で公共料金の値上げに踏み切るな

ど、国民の痛みを伴う政策も避けては通れなく

なりつつある。こうした状況の中で2017年2月

には大統領選挙が行われたが、ベルディムハメ

ドフ大統領は圧倒的な支持率で3期目の再選

を果たした。経済成長が鈍化しても、今のとこ

ろ国民の政権に対する支持に大きな影響を与

えることはない点は何ともトルクメニスタン

らしい。 (中馬 瑞貴)

タジキスタン 進む外貨不足と悪化する景況

タジキスタン経済は2016年、銀行危機をはじ

めとする様々な困難に苛まされてきたが、結果

としては6.9%の成長を記録した。世界銀行な

ど国際金融機関の予測値であった6.6%を若干

上回り、底堅さを示した格好となっている。こ

の背景には、2016年の公共投資が前年比62%増

と、不自然なほど大きく伸びたことが影響して

いる。しかし、これは持続可能な状況ではなく、

例えば、6.1%であったインフレ率は2017年に

は8%にまで上昇すると予測されている。また、

2016年の対外債務は前年より1億ドル増加し、

21億9,400万ドルに達した。さらに、2016年は設

備投資が前年比で46%減少しており、財政出動

によりなんとか景況を維持しているとの状況

にある。専門家らはこの状況を指して「脆弱な

安定」と呼称している。

そして、タジキスタンにとっての重要な外貨

収入源である、ロシアでの出稼ぎ収入送金額の

低迷は続いており、前年の約38億ドルから12億

7,800万ドルにまで大きく落ち込んだ2015年に

対し、ロシア中銀によれば、2016年はそこから

僅かに回復を示したものの15億4,000万ドルで

あった。しかも、輸出に関しても芳しくない状

態が継続しており、2016年の輸出総額は、前年

比約8.9%減であった2015年とほぼ同額、89億

8,000万ドルに留まった(なお、輸入額は前年比

で約14%の減少であった)。タジキスタンの

GDPの約3割に相当し、また外貨の7割を稼い

できたとも言われるアルミ地金製造企業

TALCOも国際市場におけるアルミ価格の低迷

に苦しんでおり、2016年秋には資金繰りに行き

詰まったのではとの報道も流れた。

こうした外貨収入源の不安定化は、通貨ソモ

二の継続的な価値下落、またタジキスタン国内

での外貨不足を招いており、2016年には流動性

危機により、18の国内銀行が預金引き出しや送

金について制限を設けざるをえなくなった。ま

た、出稼ぎ送金に頼ってきた家計への影響も甚

大であり、例えば2013年には世帯当たり月間

273ドルの出稼ぎ送金収入が得られたが、 大

の出稼ぎ先であるロシアの通貨ルーブルの対

ドル減価も影響し、2016年には99ドルにまで落

ロシアNIS調査月報2017年6月号 11

■ Research Report 2016年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

ち込んだとされている。なお、2016年には中国

による対タジキスタン累積投資額がロシアの

それを抜き、しかも2016年の中国による直接投

資額は全体の70%を超える約3億ドルであっ

たと報じられているが、景気浮揚効果は全く生

まれていない。本年の先行きも非常に厳しいと

考えられる。 (長谷 直哉)

アゼルバイジャン マイナス成長で資源依存脱却が急務

2016年のアゼルバイジャンの経済成長率は

3.8%減となり、過去20年で初のマイナス成長

となった。同国国家統計委員会のデータによる

と、2017年第1四半期のGDPも0.9%のマイナ

ス成長を示している。ADBは石油生産の縮小

と財政緊縮政策が続く2017年も1.1%減とマイ

ナス成長が続き、シャフデニス・ガス田第2フ

ェーズの生産開始が予定されている2018年に

1.2%と回復に向かうと予想している。一方、同

国政府は2017年のGDP成長率をプラス1.1%と

予想し、世界銀行も2017年はプラス1.2%で回

復傾向に向かうとの見通しを立てている。

2016年のGDPを生産部門別で見ると、マイナ

ス成長となった 大の要因は、減速が続く建設

部門が2016年も対前年比▲27.6%と大幅に縮

小したためと考えられる。また、アゼルバイジ

ャンの主要生産・輸出品である石油の国際価格

下落と国内生産低迷(4,103万5,000t、▲1.7%)

によって鉱工業生産全体の成長率が0.4%減で

あったことも影響している。一方で、情報・通

信は対前年比4.5%、農業生産高も2015年の

6.6%には劣るものの、2016年も2.6%と成長が

続いており、GDPの約30%を占める非石油分野

の成長は全体で5.0%となった。

2018年に予定されるシャフデニス・ガス田第

2フェーズの生産開始によって、回復が期待さ

れるアゼルバイジャン経済であるが、資源依存

脱却を達成しなければ、同国の安定した経済成

長を見込むことが難しい。ここ数年、非石油分

野の発展に注力を続けており、2016年10月には、

外国市場における”Made in Azerbaijan”ブラン

ドのプロモーションに関する大統領令が発行

され、アゼルバイジャンで生産された製品の輸

出・外国市場での販売促進に国家予算があてら

れることになった。蜂蜜、ドライフルーツ、ざ

くろ、ナッツ類や青果、ワインやジュースなど

の食品や衣類、皮革製品や綿製品、絨毯などが

輸出促進の対象品とされている。アゼルバイジ

ャンの非石油分野の成長として注目されてい

る分野の1つが農業である。政府は積極的に農

業を支援するための政策を導入しており、低調

な経済の中でも農産品の生産は拡大を続けて

いる。

その成果は貿易にあらわれている。同国の

2016年の貿易高は総額で216億5,080万ドル、輸

出は対前年比28.2%減(131億1,840万ドル)、輸

入も7.4%減(85億3,240万ドル)と縮小が続い

ているが、農産品の輸出を見ると対前年比

20.7%増(4億2,600万ドル)と大幅な成長を示

した。中でも野菜、胡桃やヘーゼルナッツなど

のナッツ類、綿花、たばこなどが増加した。ま

た、国内生産量の増加に伴い、農産品の輸入は

対前年比で46%縮小し(6億8,200万ドル)、特

に牛、鶏、羊などの畜産品や大麦、とうもろこ

しなど穀物の輸入が縮小している。

非石油分野の発展に向けてさらなる投資誘

致が重要なアゼルバイジャンだが、Doing

Business 2017の世界ランキングは前年の61位

から65位にダウンした。加えて、同国では権威

主義が深刻化する懸念も残る。2016年9月に国

民投票が行われて改正された憲法によって、第

一副大統領および副大統領ポストが新設され、

大統領が任期満了前に辞任もしくは職務不履

行となった場合にはその権限が第一副大統領

に委譲されることになった。事実上、国内ナン

ロシアNIS調査月報2017年6月号 12

特集◆ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

バー2のポストが新設されたわけだが、2017年

2月、アリエフ大統領の妻であるアリエヴァが

その第一副大統領に任命された。旧ソ連諸国で

唯一世襲制を実現させたアゼルバイジャンだ

が、今後はますます政権の家族化が進む可能性

が高い。 (中馬 瑞貴)

アルメニア 農業減速や送金の減少により成長が鈍化

CIS統計委員会によると2016年のGDP成長

率は0.2%であった。前年の経済成長率は3.0%

であったので、大きく減速した。2015年に比べ

鉱工業生産は6.7%増えているが、農業生産が

5.2%、建設が11.6%、小売が2%落ち、経済の

成長率の押し下げ要因となった。

鉱工業生産の内訳では、鉱業は8.3%増、製造

業が7.7%増となっている。鉱工業生産に含ま

れる発電量が横ばいになったため、鉱工業生産

の数値を若干押し下げている。

農業生産では重量ベースで豆類が2.5%減、

ひまわりが9.4%減、じゃがいもが4.2%減、果

野菜が6%減、果物が37.2%減、甜菜のみ87.5%

増となっているが、2015年比で減少した品目が

多く、農業生産額を押し下げたようだ。

CIS統計委員会によるとアルメニアのユー

ラシア経済連合外諸国への輸出は14.1%増と

なり、輸入は0.9%減少した。ユーラシア経済連

合内への輸出は1月から11月までの数字であ

るが、2015年よりも56.1%の大幅増となった。

GDPに占める割合が20%近いとされる個人

送金額は、2016年も前半においては低い水準と

のことで、内需の押し下げ要因となっている。

農業生産そのものは減少しているものの、制裁

によりEU諸国からロシアへの農作物輸出が困

難になっているため、アルメニアからロシアへ

の農作物の輸出は増えており、経済にプラスの

効果をもたらしている。 (渡邊 光太郎)

ジョージア さらなる投資環境改善と経済成長を目指す

ジョージア国家統計局によると、2016年の

GDP成長率は2.7%と、2009年以来、 も低い成

長率を記録した前年よりさらに成長が鈍化し

た。しかし、ADBはインフラ整備、高まる国内

消費と輸出の緩やかな回復、さらには2016年に

導入した法人税改革による投資の拡大によっ

て、2017年には3.8%、2018年には4.5%の経済

成長が見込めると予想しており、今後の経済成

長に期待がかかる。

ジョージアの主要産業である観光が9.9%増

と好調であり、他にも金融9.2%、建設8.0%、

製造業4.8%も成長を示した。一方で、地域のハ

ブとして成長の期待がかかる運輸が▲0.9%、

通信も▲0.2%と停滞しており、成長の鈍化に

影響を与えている。

世銀が毎年発表するDoing Businessで常に好

位置につけ、旧ソ連諸国の中で もビジネス・

投資環境がいい国の1つと考えられているジ

ョージアの2016年の外国直接投資は対前年比

で22%増(16億4,500万ドル)と引き続き好調を

維持している。 大の投資国はアゼルバイジャ

ン(35%)で、トルコ(17%)、英国(7%)

と続く。主に運輸・通信、エネルギー、建設と

いった分野への投資の割合が大きく、アゼルバ

イジャン~ジョージア~トルコを結んでアゼ

ルバイジャン産のガスを欧州まで運ぶ「南ガス

回廊」のインフラ整備に対する投資が好調を後

押ししている。資源の乏しいジョージアだが、

南ガス回廊の完成によってトランジット国と

して重要性が高まる可能性も高い。

さらなる投資環境の改善と投資誘致を目指

すジョージアでは、2016年4月に「エストニア・

モデル」と呼ばれる新しい法人税制が導入され、

法人税は利益の配当に際してのみ課されるこ

とになった。財政赤字がGDPの4.5%と前年よ

ロシアNIS調査月報2017年6月号 13

■ Research Report 2016年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

り膨らんでいるジョージアにとって、税収減は

一定のリスクをはらんでいるものの、2017年1

月から燃料、たばこ、自動車などの税金の値上

げが行われており、税収を補填することが期待

されている。

2014年にEUと連合協定を締結して以来、ジ

ョージアの貿易高に占めるEUの割合が拡大し

ている。2016年の貿易高の約30%(輸出27%、

輸入31%)をEU諸国が占め、対前年比で14%

成長した。一方、CIS諸国との貿易高のシェア

は約23%(輸出35%、輸入20%)で、対前年比

3%減となった。

ジョージアでは2016年10月に議会選挙が行

われ、現職のクヴィリカシヴィリ首相率いる与

党「ジョージアの夢-民主主義ジョージア」が

勝利し、過半数の議席を獲得した。混戦が予想

された選挙であったが、ふたを開けてみれば、

クヴィリカシヴィリを首相とする与党単独の

内閣が再び承認された。安定した政権運営の下、

さらなる投資環境の改善と経済成長が 重要

課題となる。 (中馬 瑞貴)

モンゴル 経済危機に瀕する新政権

モンゴルの2016年の実質GDP成長率は1.0%

と、2015年の2.4%からさらに減速した。GDPは

2012年、2013年、2014年はそれぞれ、12.3%増、

11.6%増、7.9%増であったので、2桁成長から

ゼロ成長近くまで急降下した。政府は2016年の

6月の選挙で野党の人民党が圧勝し、新政権と

なったが、新政権はモンゴルの経済危機を宣言

した。危機は、モンゴルの主要産業である鉱物

資源の世界的な価格下落および輸出入の大部

を占める中国の経済減速によるものであるが、

後述のように国内要因も大きい。

モンゴルの通貨トゥグルクの2017年3月時

点のレートは、モンゴル銀行によると、1ドル

=2,459.55トゥグルクで、ざっと危機前の2011

~2012年頃の水準の半分に下落した。モンゴル

経済の不調に加え、前政権の行った直接投資へ

の厳しい対処などを嫌い、外貨が流出した影響

も大きい。通貨安は、2016年はあまり物価に影

響を与えず、消費者物価は0.5%の低い伸びと

なった。通貨安の影響は2017年になってから物

価に影響がでているが、消費も低迷しているの

で、激しいインフレにはならない見通しである。

経済危機は国内の政治にも原因がある。それ

は放漫な財政運営である。公的債務は2016年で

GDPの111%(アジア開発銀行の数字)で2012

年頃は50%程度であったので、前政権の放漫な

財政運営が急速に債務を増やしたことになる。

モンゴル政府は経済財政危機を乗り越える

ために、2016年10月にIMFをはじめとする国

際機関、周辺の国家に経済財政支援を要請した。

2017年2月19日のIMFの代表団はモンゴル

政府と3年間で4億4,000万ドルのEEF(拡大信

用供与措置)の提供について、実務レベルで合

意に達した。その他、日本、中国、韓国も資金

面でのモンゴルへの支援措置を講じる予定で、

その総額は55億ドルに達する見込みである。

モンゴルは銅、石炭等に依存する資源国で、

資源の国際価格に大きく経済が依存している。

不況のなかで石炭や金の輸出が伸びるなど、今

後の成長への光明はある。2017年4月発表のI

MFの見通しでも2017年はGDP0.2%減で不況

の状態は続くが、2022年は8.5%増とアジア諸

国の中では、かなり高い成長予測となっている。

モンゴルは、資源国によくある不況に備えた国

家ファンドの創設などのリスクを見越した政

策は、これまで実施されてこなかった。好不況

の波を緩和するためにも、このような政策課題

をクリアしていく必要がある。 (高橋 浩)

ロシアNIS調査月報2017年6月号 14

特集◆ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

表1 2016年のロシア・NIS諸国の主要経済指標 (前年比実質増減率、%)

国内

総生産

GDP

鉱工業

生産

農業

生産

固定

資本

投資

商品

小売

販売高

輸出 輸入 インフ

レ率1)

CIS全体

ロシア

ウクライナ

ベラルーシ

モルドバ

カザフスタン

キルギス

ウズベキスタン

トルクメニスタン

タジキスタン

アゼルバイジャン

アルメニア

0

▲0.2

2.3

▲2.6

4.1

1.0

3.8

7.8

6.2

6.9

▲3.8

0.2

0.9

1.1

2.4

▲0.4

0.9

▲1.1

4.9

6.6

16.0

▲0.4

6.7

5.0

4.8

6.1

3.4

18.6

5.5

3.03)

6.6

5.2

2.6

▲5.2

▲2.42)

▲2.32)

18.0

▲17.9

▲13.9

5.1

3.8

11.84)

0.4

20.3

▲26.1

▲10.8

▲2.9

▲5.2

4.0

▲4.1

1.1

0.9

5.3

14.4

16.05)

6.1

1.5

▲2.0

▲16.0

▲17.5

▲4.6

▲12.2

4.0

▲20.0

5.1

▲38.2

0.9

▲28.2

20.0

▲2.7

▲0.7

4.6

▲9.0

0.8

▲17.6

▲3.7

▲6.2

▲13.8

▲7.4

1.6

7.06)

7.1

13.9

11.8

6.4

14.6

0.4

5.76)

6.26)

5.9

12.4

▲1.4

ジョージア7) 2.7 4.88) 0.03) … 1.8 ▲4.1 ▲0.6 2.1

モンゴル7) 3.3 7.4 ▲5.8 … ▲0.3 ▲5.3 ▲11.6 1.16)

(注)1)消費者物価上昇率。年平均の前年比。2)1~9月の対前年同期比。3)農業・林業・漁業の数値。4)上半期

の対前年同期比。5)現行価格。6)12月の対前年比。7)暫定値。8)鉱業を除く。

(出所)CIS統計委員会および各国統計局発表のデータをもとに作成。以下、表2、3、5は同様。

表2 ロシア・NIS諸国のGDP成長率の推移 (前年比実質増減率、%)

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

CIS全体

ロシア

ウクライナ

ベラルーシ

モルドバ

カザフスタン

キルギス

ウズベキスタン

トルクメニスタン

タジキスタン

アゼルバイジャン

アルメニア

8.8

8.5

7.9

8.6

3.0

8.9

8.5

9.5

11.0

7.8

25.0

13.7

5.3

5.2

2.2

10.2

7.8

3.3

8.4

9.0

14.7

7.9

10.8

6.9

▲6.9

▲7.8

▲15.2

0.2

▲6.0

1.2

2.9

8.1

6.1

3.9

9.3

▲14.1

4.9

4.5

4.1

7.7

7.1

7.3

▲0.5

8.5

9.2

6.5

5.0

2.2

4.7

4.3

5.3

5.5

6.8

7.5

6.0

8.3

14.7

7.4

0.1

4.7

3.4

3.4

0.2

1.7

▲0.7

5.0

▲0.1

8.2

11.1

7.5

2.2

7.2

2.0

1.3

0.0

1.0

9.4

6.0

10.9

8.0

10.2

7.4

5.8

3.3

0.9

0.7

▲6.6

1.7

4.8

4.1

4.0

8.0

10.3

6.7

2.8

3.6

▲3.0

▲3.8

▲9.8

▲3.8

▲0.5

1.2

3.9

8.0

6.5

6.0

1.1

3.0

0

▲0.2

2.3

▲2.6

4.1

1.0

3.8

7.8

6.2

6.9

▲3.8

0.2

ジョージア 12.6 2.4 ▲3.7 6.2 7.2 6.4 3.4 4.6 2.9 2.7

モンゴル 10.2 8.9 ▲1.3 6.4 17.5 12.3 14.9 15.9 4.1 3.3

ロシアNIS調査月報2017年6月号 15

■ Research Report 2016年のロシア・NIS諸国の経済トレンド

表3 ロシア・NIS諸国の鉱工業生産伸び率の推移 (前年比実質増減率、%)

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

CIS全体

ロシア

ウクライナ

ベラルーシ

モルドバ

カザフスタン

キルギス

ウズベキスタン

トルクメニスタン

タジキスタン

アゼルバイジャン

アルメニア

7.2

6.8

10.2

8.7

▲1.3

5.0

7.3

12.1

9.9

24.0

2.6

0.8

0.6

▲5.2

11.3

1.5

2.1

14.9

12.7

▲3.5

6.0

1.7

▲9.6

▲9.3

▲21.9

▲3.1

▲21.1

2.7

▲6.4

9.0

▲6.5

8.6

▲7.5

7.9

7.3

12.2

11.7

9.3

9.6

9.8

8.5

9.2

2.6

9.7

4.7

5.0

8.0

9.1

9.5

3.8

11.9

6.3

5.7

▲5.0

13.9

2.7

3.4

▲0.7

5.8

▲1.9

0.7

▲20.2

7.9

10.4

▲2.3

8.8

0.5

0.4

▲4.3

▲4.9

6.8

2.5

28.6

9.6

3.8

1.8

6.9

1.0

1.7

▲10.1

2.0

7.3

0.3

▲1.6

8.3

5.0

▲0.7

2.7

▲3.3

▲3.4

▲13.0

▲6.6

0.6

▲1.6

▲4.4

7.9

11.3

2.4

5.0

0.9

1.1

2.4

▲0.4

0.9

▲1.1

4.9

6.6

16.0

▲0.4

6.7

ジョージア 12.3 2.4 3.7 6.2 7.2 6.4 3.4 … ▲2.4 4.81)

モンゴル1) … … … … … … … 19.7 2.6 7.4

(注)1)鉱業を除く。

表4 ロシア・NIS諸国のインフレ率の推移 (%)

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

CIS全体

ロシア

ウクライナ

ベラルーシ

モルドバ

カザフスタン

キルギス

ウズベキスタン

トルクメニスタン

タジキスタン

アゼルバイジャン

アルメニア

9.7

9.0

12.8

8.4

12.4

10.8

10.2

12.3

6.3

13.2

16.6

4.4

15.4

13.3

25.2

14.8

12.7

17.1

24.5

13.1

14.5

20.4

20.8

9.0

11.1

11.7

15.9

13.0

0.0

7.3

6.8

12.3

▲2.7

6.4

1.6

3.5

7.2

6.9

9.4

7.7

7.4

7.1

7.8

12.3

4.4

6.5

5.7

7.3

9.7

8.4

8.0

53.2

7.6

8.3

16.6

12.4

5.3

12.4

7.9

7.7

6.2

5.1

0.6

59.2

4.6

5.1

2.8

11.9

5.3

5.8

1.0

2.5

6.4

6.8

▲0.3

18.3

4.6

5.8

6.6

11.7

6.8

5.0

2.4

5.8

8.1

7.8

12.1

18.1

5.1

6.7

7.5

9.1

6.0

6.1

1.4

3.0

15.5

15.5

48.7

13.5

9.6

6.5

6.5

8.5

5.5

5.8

4.0

3.7

7.0

7.1

13.9

11.8

6.4

14.6

0.4

5.7

6.2

5.9

12.4

▲1.4

ジョージア 9.2 10.0 1.7 7.1 8.5 ▲0.9 ▲0.5 3.1 4.0 2.1

モンゴル 8.2 26.8 6.3 10.2 7.7 15.0 8.6 12.9 5.9 1.1

(注)消費者物価上昇率。年平均の前年比。

(出所)2007~2015年はIMF『世界経済見通し』(各号)、2016年はCIS統計委員会および各国統計局発表の

データをもとに作成。

ロシアNIS調査月報2017年6月号 16

特集◆ウクライナ危機から3年を経たNIS経済

表5 2016年のロシア・NIS主要国の石油・ガス生産

石油

(ガスコンデン

セート含む、

100万t)

天然ガス

(10億m3)

前年=100 前年=100

ロシア

ウクライナ

カザフスタン

ウズベキスタン

トルクメニスタン

アゼルバイジャン

548.6

2.3

78.0

41.0

102.9

95.8

98.1

107

98.3

639.4

19.6

46.3

18.7

100.9

102.1

101.8

94.9