慶應義塾大学 11 · マクロ経済動分析 11 月 慶應義塾大学 駒形哲哉研究会 3...

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マクロ経済動向分析 11 慶應義塾大学 駒形哲哉研究会 1 マクロ経済動向分析 11 経済指標は引き続き低迷、構造調整の途上にある中国経済 2015 10 月の中国の経済指標は、引き続き軒並み低調であった。しかし、固定資産投資 の増加率の下落幅縮小や社会消費品小売総額の持直しなど、若干の改善に向かいつつもあ る。中央委員会第 5 回全体会議でまとめられた「第 13 5 ヵ年計画」草案では、安定成長 を目標とした「中高速成長」を掲げ、経済構造は着実に変化している。 一方で 11 4 日に行われた広州交易会での商品購入契約金額は、リーマンショック後の 2009 年春の水準に迫る形となった。中国の輸出環境が今後厳しくなることも予想される。 11 30 日には人民元が「SDR」入りを果たし主要通貨となった。IMF が中国政府の人 民元自由化政策を評価した結果だが、人民元の拡大に懸念する声も多い。 内容 1.「第 13 5 ヵ年計画」草案、5 年連続 6.5%以上成長に課題も....................................... 2 210 月工業生産 7 ヵ月ぶりの低水準、生産構造は引続き改善? ...................................... 3 3.投資の下落幅は縮小傾向、効果的な構造調整の表れか .................................................. 5 4.消費増加率は今年最高を更新、自動車販売やオンライン販売が好調 ............................ 7 5.中国国内の消費は中間層へシフト、一方過剰な爆買いが外国に影響も......................... 9 6.人民元「SDR」入り、世界第 3 位の主要通貨に........................................................... 10 7.続く輸出入の前年割れ、貿易は方式転換・高度化の段階突入との見方も ................... 12 811 月の中国株は国内の好材料、海外の悪材料により不安定 ........................................ 18 参考 Web............................................................................................................................... 20 参考新聞・資料 .................................................................................................................... 20

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マクロ経済動向分析 11月 慶應義塾大学

駒形哲哉研究会

1

マクロ経済動向分析 11月

経済指標は引き続き低迷、構造調整の途上にある中国経済

2015年 10月の中国の経済指標は、引き続き軒並み低調であった。しかし、固定資産投資

の増加率の下落幅縮小や社会消費品小売総額の持直しなど、若干の改善に向かいつつもあ

る。中央委員会第 5回全体会議でまとめられた「第 13次 5ヵ年計画」草案では、安定成長

を目標とした「中高速成長」を掲げ、経済構造は着実に変化している。

一方で 11月 4日に行われた広州交易会での商品購入契約金額は、リーマンショック後の

2009年春の水準に迫る形となった。中国の輸出環境が今後厳しくなることも予想される。

11 月 30 日には人民元が「SDR」入りを果たし主要通貨となった。IMF が中国政府の人

民元自由化政策を評価した結果だが、人民元の拡大に懸念する声も多い。

内容

1.「第 13次 5ヵ年計画」草案、5年連続 6.5%以上成長に課題も ....................................... 2

2.10月工業生産 7ヵ月ぶりの低水準、生産構造は引続き改善? ...................................... 3

3.投資の下落幅は縮小傾向、効果的な構造調整の表れか .................................................. 5

4.消費増加率は今年最高を更新、自動車販売やオンライン販売が好調 ............................ 7

5.中国国内の消費は中間層へシフト、一方過剰な爆買いが外国に影響も ......................... 9

6.人民元「SDR」入り、世界第 3位の主要通貨に ........................................................... 10

7.続く輸出入の前年割れ、貿易は方式転換・高度化の段階突入との見方も ................... 12

8.11月の中国株は国内の好材料、海外の悪材料により不安定 ........................................ 18

参考Web............................................................................................................................... 20

参考新聞・資料 .................................................................................................................... 20

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1.「第 13次 5 ヵ年計画」草案、5年連続 6.5%以上成長に課題も

中国共産党の中央委員会第 5回全体会議(5中全会)は 10月 29日に 4日間の日程を終

え、2016-20年の「第 13次 5ヵ年計画」草案を固めた。働き手の減少を防ぐために「一

人っ子政策」を撤廃しすべての夫婦に第 2子の出産を認め、成長の鈍化を容認する一方、

経済の安定を最優先課題に据え、年 6%台後半から 7%程度の「中高速成長を保つ」とし

た。また、計画の最終年である 2020年に 10年比で GDPと所得水準を倍増する目標も示

した(日本経済新聞 2015/10/30)。専門家の試算によると、「第 13次 5ヵ年計画」期の年平

均経済成長率を約 6.6%とすることが必要だが、一人当たりの所得 2倍の目標を考慮し、

経済成長率に一定の余地を残すべきである。また経済発展の方式転換・高度化プロセスへ

の影響を避けるためその余地は大きくはならないとしている(中国通信 2015/11/02)。足元

の成長率が 7%割れするなか、景気減速にいったんは歯止めをかける必要性が高まってお

り今後しばらくは、追加金融緩和や財政政策などの景気下支え策が強化されていく見通し

である(News Week 2015/11/06)。

「第 13次 5ヵ年計画」草案では、産業の高度化による「中所得国のわな」脱却や、環境

対策の強化も掲げている。製造業のレベル向上を柱に据えながらイノベーションに力を入

れ、IT を使った管理システムやロボットの大量導入を進める。環境対策は主に新エネルギ

ーの活用拡大を挙げ、風力や太陽光、バイオ燃料を使った新型発電の比率を増やすほか、原

子力発電所も増設スペースを速める方針だ。同時に肺炎・排水浄化の義務化や工場監視も強

化するため、企業活動にも影響を与えるとみられる(日本経済新聞 2015/11/04)。

ただ、今後 5年にわたり平均で 6.5%以上の成長を遂げるのは並大抵のことではない。成

長率ありきとなれば改革志向の低下も危惧される。コミュニケと習近平総書記の説明のな

かでは、国有企業改革という言葉さえ触れられておらず、改革の優先度は高くないと見る向

きもある(News Week 2015/11/06)。また 10月 29日には、李克強首相による「今後 5年間、

毎年 6.53%の成長がなければ、ゆとりある社会の実現は難しい」との演説が、いったんイン

ターネットに掲載された後に削除された。「下限」を公表し、実現できない可能性を恐れた

措置との見方もある(東京新聞 2015/10/30)。

図表 1 「第 13次 5ヵ年計画」の主な目標

・「中高速」の経済成長を維持 ・行政改革通じ市場の活力発揮

・全ての夫婦に第 2子を認める ・環境保護へ「美しい中国」建設

・質と効率が高い消費主導経済に ・対外開放、FTA戦略の推進

・技術革新、産業高度化に重点 ・新シルクロード構想の推進

・税財政、金融などの改革推進 ・所得上昇、貧困撲滅で格差縮小

(出所)日本経済新聞(2015/10/30)より作成

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2.10月工業生産 7ヵ月ぶりの低水準、生産構造は引続き改善?

2015 年 10 月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は 49.8 と、9 月から横ばいとなっ

た(国家統計局 2015/11/01)。景況拡大と悪化の分かれ目となる 50 を 3 ヵ月連続で下回り、

中国経済が依然として緩やかな減速を続けているとの見方が強まった。企業規模別にみる

と、大型企業の PMIは 51.0であるのに対し、中型企業は 48.7、小型企業は 46.6とそれぞ

れ 50を下回った(中国通信 2015/11/01)。また PMIを構成する雇用動向も全体で 50を大き

く割る 47.8にとどまった。鉄鋼や建材など生産過剰が続く業種で減産や工場閉鎖が相次ぎ、

輸出も振るわないことから、民間企業が従業員を減らしているとみられる(産経新聞

2015/11/02)。製鉄所や工場などの生産設備過剰は深刻であり、特に鉄鋼分野において中国

は世界の生産能力の半分を持つが、国内の生産能力の 3 割強にあたる約 4 億トンが稼働率

の低い過剰設備とされており、その分だけで日本国内の全生産能力の 4 倍に上る(読売新聞

/2015/11/04)。一方、財新が発表した 10月の PMIは 48.3と 2015年 6月以来の高水準とな

り、輸出受注が持ち直し、製造業界の不振が底打ちしたとの期待が高まっている(ロイター

2015/11/2)。

10 月の工業生産の伸びは前年同月比 5.6%増と、9 月の 5.7%増を 0.1 ポイント下回り、

リーマンショック直後の 2008年 11月以来の低い伸びだった今年 3月と同水準となった(国

家統計局 2015/11/11)。工業生産が 2ヵ月連続で鈍化した背景には、政府の過剰生産の解消

や投資の伸び悩みによる需要の減少がある(朝日新聞 2015/11/12)。製品別にみると鋼材が

0.2%減の 9427 万トン、セメントが 3.5%減の 2億 2499 万トン、自動車が 4.9%増の 219.4

万台であった(中国通信 2015/11/13)。中国の経済活動の状況を示す指標の 1 つである鉄道

貨物輸送量も 10月分は前年同月比 16.3%減と、減少幅が 9月の 15.6%、8月の 15.3%に比

べ拡大した(新華社 2015/11/20)。また企業の生産活動を示す電力消費量も 10 月は 3.2%減

と減少幅が前月よりも大きくなり、生産の不振により中国経済の減速が続いている(日本経

済新聞 2015/11/12)。

しかし一方で、生産の構造は改善されているといった見方もある。中国は現在、工業主導

からサービス業主導へ移行していく傾向がより強まり、在来産業を抜本的に調整中で、新産

業は良好な発展の勢いをみせている(新華社 2015/11/13)。国家統計局工業司上級統計師の江

源氏によれば、工業生産は業種によって伸びの違いが出ており、構造の最適化が進む特徴が

みられている。エネルギーを多く消費するような伝統的業種の成長は減速しているが、ハイ

テク製造業は高い伸びを維持しており、10 月の生産額は 10.8%増と 9 月の伸び率を 0.4 ポ

イント、工業全体を 5.2ポイントそれぞれ上回った(中国通信 2015/11/13)。

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図表 2 工業付加価値生産額伸び率(単位:%)

(出所)国家統計局より作成

図表 3 製造業購買担当者景気指数(PMI)

(出所)国家統計局より作成

7.7

7.2

7.9

5.6

5.96.1 6.3

6.0

6.1

5.7

5.6

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

50.8

50.350.1

49.8

49.9

50.1

50.1

50.2 50.2

50.0

49.7

49.8 49.8

49

49.5

50

50.5

51

51.5

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3.投資の下落幅は縮小傾向、効果的な構造調整の表れか

2015年 1-10月の固定資産投資は前年同期比 10.2%増の 44兆 7425億元であり、伸び率

は 1-9月に比べ 0.1ポイント鈍化した。また 1-10月の全国の不動産開発投資は前年同月比

2.0%増の 7 兆 8801 億元と、1-9 月の伸びより 0.6 ポイント低下し、10 月単月の不動産開

発投資は 2.4%減となった(国家統計局 2015/11/11)。地方での建設需要が低迷していること

などから、不動産やインフラ投資は伸び悩んでいる(読売新聞 2015/11/12)。新規建設(着工

面積)は前年同期比 13.9%減少であり、不動産市場の低迷は中国経済全体の重石になってい

る(ロイター2015/11/11)。

しかし、国家統計局投資司上級統計師の王宝滨氏によれば、投資の伸び率の下落幅は縮ま

り、投資構造の改善が進んでいるという。主な改善点として製造業設備投資、ハイテク産業

への投資の伸び率増加、高エネルギー消費産業への投資の減退が挙げられる。また 1-10月

の総投資資金は前年同期比 7.3%増と 1-9 月から 0.5 ポイント増加し、新プロジェクトへの

総投資計画額も 1-10月前年同期比 4.1%増と 1-9月から 1.3ポイント増加した。固定資産投

資の先行指標となる各投資も緩やかに回復している(国家統計局 2015/11/12)。

10 月の中国全国の新築住宅価格は前年同月比 0.1%上昇と、2014 年 8 月以来 1年超ぶり

に上昇に転じた。住宅市場が安定化し、成長が鈍化している同国経済を活性化させる兆しが

出ている(ロイター2015/11/18)。金融緩和の本格化に伴う住宅ローン金利の低下やローン条

件の緩和などの住宅販売テコ入れ策が奏功し、1-10 月の住宅販売金額は前年同期比 18.0%

増と大きく回復した(大和総研 2015/11/24)。全国の不動産開発企業が 1-10 月に実際に投入

した資金は前年同期比 1.3%増であり、1-9 月より 0.4 ポイント上回った(中国通信

2015/11/13)。

中国商務部によると、1-10 月の人民元建ての中国への海外直接投資(FDI)は前年同期比

8.6%増の 1004 億 2000 万ドル、10 月単体の FDI は 4.2%増の 87 億 7000 万ドルとなった

(ロイター2015/11/11)。1-10月の製造業外資利用実績は前年同期比0.2%増の326億ドルと、

外資利用全体の 31.4%を占めた。そのうちハイテク製造業への投資が 11.6%増の 75.8億ド

ルで、製造業の外資利用実績全体の 23.3%を占めた(中国通信 2015/11/13)。ハイテク製造業

分野への外国投資が盛んなことは、中国政府による構造調整が効果を上げていることを示

す(新華社 2015/11/20)。アップルやインテル、デルといったアメリカの大手 IT 企業は中国

を「最重要市場」と位置づけ、大型投資を打ち出すなど中国傾斜が進んでいる。南シナ海問

題で米中政府間の緊張が高まるなかの動きであり、「政冷経熱」の様相を呈してきた(日本経

済新聞 2015/10/29)。

2015年 1-9月の「一帯一路」沿線諸国の実際の中国への直接投資総額は 18.4%増の 61億

2000 万ドルだった。業界別の対中投資状況は、金融サービス業、リース及びビジネスサー

ビス業、製造業への実際の外資導入額の伸び幅が比較的大きく、それぞれ前年同期比 1509%、

231%、9%増加となった(新華社 2015/11/06)。

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図表 4 固定資産投資伸び率(単位:%)

(出所)国家統計局より作成

15.9 15.815.7

13.913.5

12.0

11.4

11.4 11.210.9

10.3 10.2

10

11

12

13

14

15

16

17

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4.消費増加率は今年最高を更新、自動車販売やオンライン販売が好調

2015 年 10 月の社会消費品小売総額は 2 兆 8279 億元に上り、前年同月比 11.0%増と 9

月の 10.9%増の伸びを 0.1ポイント上回った(国家統計局 2015/11/11)。国家統計局貿易外経

統計司の藺濤シニア統計師は、「消費の増加率は 3ヵ月連続で回復上昇し、今年の最高を更

新した。自動車製品の増加率の上昇が 10月の消費の増加率を引き上げた主な要因だ」と説

明した(新華社 2015/11/12)。10 月の自動車販売は 11.8%増の 222 万台であり、うち乗用車

は前年同月比 13.3%増の 194 万台、新エネルギー車が前年同月比 5 倍の 3 万 4316 台であ

った(中国通信 2015/11/13)。調査会社マークラインズがまとめた 9月の世界の自動車生産・

販売実績によれば、ブラジルやロシアなどの新興国の低迷が続くなか、中国は販売台数が 6

ヵ月ぶりのプラスであった(日本経済新聞 2015/11/24)。メーカーによる年間販売目標の引き

下げを受けて在庫調整が一段落したこと、政府の国慶節商戦に合わせた車両購入税の減税

によって購入意欲が刺激されたことが背景としてある(大和総研 2015/11/24)。

1-10 月のオンライン小売額は 2 兆 9484 億元で前年同期比 34.6%増加、実物商品の売上

高は 2 兆 4454 億元で 33.0%増加となり、社会消費品小売総額の 10.0%を占めた(新華社

2015/11/12)。ネット販売が小売売上に占める割合は 2014 年の 10.8%から 2015 年 1-10 月

には 12.1%へと高まっている。店舗アクセスに制約のある農村や都市近郊の消費需要を掘

り起こし、宅配ビジネスの活況や物流網の整備を促進する原動力となっている面も大きい

(大和総研 2015/11/24)。

10 月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比 1.3%の上昇となり、上昇幅は 9 月の

1.6%を下回り 2 ヵ月連続の下落となった(国家統計局 2015/11/10)。物価が持続的に下がり

続けるデフレには至っていないが、中国政府が今年想定した 3%のインフレ率を大きく下回

っている(日本経済新聞 2015/11/12)。経済成長が鈍化する中、過剰気味の供給に比べ投資や

個人消費などの需要は力強さを欠いており、物価が上がりにくい状況が続いている(毎日新

聞 2015/11/11)。また CPI の上昇率が抑制された要因として、第 4 四半期(10-12 月)に入り

天候や需給、輸入の影響による生鮮食品や卵、豚肉などの食品価格の低下が挙げられる(中

国通信 2015/11/12)。上海交通大学安泰経済・管理学院の陳憲教授は、構造調整の大きな背

景のもと経済の段階的下振れ圧力がみられ、国際大口商品価格が低位を維持し、全体的に見

て物価上昇率が低水準で推移する確率が比較的高いとしている。

10月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比 5.9%下落し、44ヵ月連続のマイナスとなった

(国家統計局 2015/11/11)。申銀万国証券のエコノミスト李慧勇氏は「PPI統計は、内需の弱

さと、実体経済の過剰生産能力問題を浮き彫りにした」とし、「経済の先行きが楽観視でき

ないなか、政府は介入して支援する必要がある。数ヵ月以内に利下げと預金準備率引き下げ

があると予想する」と述べた(ロイター2015/11/10)。

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図表 5 社会消費品小売総額伸び率(単位:%)

(出所)国家統計局より作成

図表 6 消費者物価指数(CPI)(単位:%)

(出所)国家統計局より作成

11.511.7

11.9

10.2

10.010.1

10.6

10.5

10.810.9

11.0

9.5

10.0

10.5

11.0

11.5

12.0

12.5

1.6 1.4

1.5

0.8

1.4 1.4 1.5

1.2

1.4 1.6

2.0

1.6

1.3

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

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5.中国国内の消費は中間層へシフト、一方過剰な爆買いが外国に影響も

中国の景気減速が鮮明になるなか個人消費は比較的堅調であり、2 ケタ伸びの背景には、

所得増で購買力を付けた中間層の拡大がある。高額消費の見栄っ張り型からの転換がうか

がえ、健康など実利に合う消費が広がってきた(日本経済新聞 2015/11/03)。中国の消費構造

の変化を見据えて進出や事業転換に踏み切る企業も多い。総合菓子メーカーのシャトレー

ゼは 12月 1日から中国展開を行い、低価格と日本製の高品質を売り物にすることで需要を

取り込む狙いだ(日本経済新聞 2015/10/29)。パナソニックは健康志向の高まりによる鮮度の

高い商品の需要が急増していることから、冷蔵設備事業の本格展開など、業務用商材を一括

して売り込む戦略にシフトしている(日本経済新聞 2015/11/07)。

2015年で 7年目を迎えた中国最大のショッピングセールである「独身の日(11月 11日)」

には、日韓や欧米、オーストラリアなど各国のブランドがこぞって商戦に参加し、中国の電

子商取引がすでに米国と肩を並べるほどの水準に発展したといえる(新華社 2015/11/12)。

「独身の日」はオンライン販売のバーゲンで購入が急増し、国際宅配業務が昨年の 3 倍な

ると予想されている。またオンライン販売の増加で県域宅配業務が地域経済をけん引する

重要な成長ポイントとなるとみられている(中国通信 2015/11/13)中国の電子商取引最大手

アリババ・グループ・ホールディング(BABA.N)は、同日の売上高が前年比約 60%増の 912

億 1700万元に達したと発表し、同社の同日の売り上げとしては過去最高で中国のネット通

販の急拡大ぶりを示した形となった(毎日新聞 2015/11/12)。

交通銀行金融センターの報告では、インターネットと製造業との融合を目指す「インター

ネット+(プラス)」によるネット消費の高い伸びの後押しや、第 1-3四半期の一人当たり可

処分所得の伸びによる個人消費能力の保障などを総合的に判断し、消費は安定した伸びを

維持でき、経済成長を安定させる作用が一層際立つだろうとしている(中国通信 2015/11/13)。

中国の商業施設運営会社「上海豫園旅遊商城」は 11月 11日、北海道のリゾート施設「星

野リゾートトマム」の全株式を、183億円で買収すると発表した。上海豫園は 11日の公表

文で、「星野リゾートトマムは過去 5 年、営業収入が 10%伸び、2014 年の純利益は 7 億円

だった」として成長力を強調した。訪日客が急増している中国でも、自然が豊かな北海道は

特に知名度が高く、施設を訪れる中国人客も増えると期待する(朝日新聞 2015/11/12)。他に

も多くの中国企業が訪日観光の普及拡大で絶えず新たな試みを行っており、日本市場のシ

ェアを獲得することを目的としている(新華社 2015/11/17)。

11 月 23 日には過大な負債を抱え資金繰りが悪化しているマレーシアの国営投資会社

1MDB が、火力発電所などを手掛ける関連会社の全株式を、中国の国有原子力大手の中国

広核集団(CGN)に売却することを発表した(日本経済新聞 2015/11/24)。一方、オーストラリ

アの巨大牧場を経営する S・キッドマンを複数の中国企業が買収を狙っていたが、豪州政府

が国防上の理由から売却を認めないと決定を下した。現在オーストラリアは経済面では中

国との関係を強化している。豪国内の軍事専門家は中国の対豪投資について「南太平洋への

海洋進出や米豪分断が狙い」と分析している(日本経済新聞 2015/11/20)。

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6.人民元「SDR」入り、世界第 3位の主要通貨に

国際通貨基金(IMF)は 11月 30日の理事会で、「特別引き出し権(SDR)」に 2016年 10月

から中国の人民元を加えることを正式に決めた。価値を計算する際の構成比は、ドル

(41.73%)、ユーロ(30.93%)、人民元(10.92%)、円(8.33%)、ポンド(8.09%)となり、人民元は

円とポンドを上回って 3番目の「主要通貨」の仲間入りを果たした(朝日新聞 2015/12/01)。

通貨ユーロの発足で構成を見直した 2001年を除けば、新しい通貨の採用は 1981年 1月か

らの現制度への変更から約 35年振りとなる。採用審査をクリアするうえで「貿易量」と「通

貨取引の自由度」の 2条件を満たす必要があり、課題だった「自由度」を巡っては、中国が

欧州やアジアで元建て商品に投資できるよう自由化を徐々に進めるなどした取り組みが評

価された(日本経済新聞 2015/12/01)。

一方 SDR 入りに対して中国国内では、8 月の人民元の切り下げ以降資金流出が約 2000

億ドルにも達していることから、拙速な人民元改革は投機的な動きを誘発し、さらなる資金

流出を招きかねないと懸念する声も上がっていた(ロイター2015/11/16)。同じく米国も中国

の金融制度改革の不十分さを指摘し人民元の採用に慎重姿勢を取ってきた。しかし理事会

では賛成に回り、米財務省は決定後、「IMFの決定を支持する」とのコメントを発表した(産

経新聞 2015/12/02)。

中国人民銀行は 11 月 19日、金融機関向けの臨時貸出制度(SLF)の金利を 20 日から引き

下げることを発表した。上海短期金融市場では年末に向けて短期金利が上昇しやすくなっ

ており、市場金利の上限となる作用を発揮する SLF 金利を利用し、金利の上昇に歯止めを

かけ市場の混乱を未然に防ぐ狙いがある(日本経済新聞 2015/11/20)。人民銀行が SLF 金利

の引き下げを行うのは 8ヵ月ぶりであり、翌日物と 7日物の貸出金利をそれぞれ 4.5%から

2.75%、5.5%から 3.25%に引き下げる(産経新聞 2015/11/20)。地方金融機関に十分な資金を

供給するとともに、金融機関から企業への融資を増やし実体経済を下支えする目的が大き

い(毎日新聞 2015/11/20)。

10 月の新規人民元建て融資は 5136 億元となり、9 月の 1 兆 500 億元から大幅に減少し

た。経済の流動性を示す指標である社会融資総量の残高は前月比 63%減の 4767 億元と、

2014 年 7 月以来の低水準となった(中国人民銀行 2015/11/12)。中国では予想を下回る経済

指標の発表が相次ぎ、与信の低迷が浮き彫りになっており、追加の金融緩和を求める声が強

まっている(ロイター2015/11/12)。またマネーサプライ(M2)伸び率は前年同月比 13.5%増と

9月から 0.4ポイント増加した(国家統計局 2015/11/11)。相次ぐ利下げなどの金融緩和が奏

功し、中国政府が今年の目標とした「12%前後の伸び」を 7 月から上回っている(日本経済

新聞 2015/11/13)。

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駒形哲哉研究会

11

図表 7 通貨供給量(M2)の伸び率(単位:%)

(出所)国家統計局より作成

12.6

12.3

12.2

10.8

12.5

11.6

10.1

10.8

11.8

13.3 13.3

13.1

13.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

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7.続く輸出入の前年割れ、貿易は方式転換・高度化の段階突入との見方も

2015 年 10 月の貿易統計によると、中国からの輸出は前年同月比 6.9%減の 1924 億ドル

で、リーマンショック直後以来の 4ヵ月連続の前年割れとなった(海関総署 2015/11/08)。日

本向けの輸出が約 8%減、米国や欧州連合(EU)向けの輸出も軒並み前年割り、東南アジア諸

国連合(ASEAN)も約 11%減など、先進国の弱い需要の他に中国の景気減速に端を発した新

興国の景気変調も影響している(朝日新聞 2015/11/10)。中国の生産には歯止めがかからず素

材が大量に輸出されており、中国発の素材デフレは世界の物価の下押し圧力になっている。

粗鋼生産では世界の半分を占め鉄鋼が大きく値下がりし、建材となる熱延コイルの国際価

格は 2009年以来の安値となった(日本経済新聞 2015/11/19)。

輸入は前年同月比 18.8%減の 1308 億ドルで、12ヵ月連続の前年割れとなった(海関総署

2015/09/08)。国内製造業の生産過剰を背景に、鋼材や工作機械のほか、石炭や木材などが

落ち込んだ(読売新聞 2015/11/09)。資源価格の下落が主要因だが、鉄鉱石は輸入量も減少し、

中国の輸入減が世界経済の懸念要因となる状況が続いている(朝日新聞 2015/11/10)。鉄鉱石

需要の減退は不動産投資やインフラ投資の増勢鈍化が背景にあり、資源国らの輸入が減少

した(日本総研 2015/11/02)。

11月 4日に中国の今後の見通しを示す中国最大の貿易見本市、第 118回中国輸出入商品

交易会(広州交易会)が閉幕した。主催者は「国内外のマイナス要因の影響でバイヤー数と成

約額が多少落ち込んだが、全体的状況は安定していた」と説明した(新華社 2015/11/05)。し

かし、中国メーカーと海外の輸入業者の間で結ばれた商品購入契約金額は前年同期比 7.4%

減の 270 億 1000 万ドルと大台の 300 億ドルを割り込み、リーマンショック後に輸出が急

減した 2009年春の契約水準に迫っている。人件費の高騰による生産コストの上昇で、中国

製商品が東南アジアに比べ割高であることや、重要な輸出先である新興国の経済低迷が背

景としてあり、低価格で契約を結ばざるを得ず、中国の輸出環境が今後厳しくなることも予

想される(日本経済新聞 2015/11/05)。

商務部研究院国際市場研究部の白明副主任は、輸出の減少は中国の貿易が方式転換・高度

化の段階に入ったこととも関係があり、新たな国際競争力がまだ完全に形成されていない

と分析している。この点は特に労働集約型製品の輸出の伸び鈍化と欧米市場でのシェア低

迷に表れており、1-10月の 7大労働集約型製品の輸出の合計は前年同期比 2.5%減と輸出全

体の下げ幅を上回った(中国通信 2015/11/11)。

10 月 21 日の中英首脳会談において、イギリス南東部で計画中の原子力発電所に中国製

の原子炉を導入することが合意された、建設は国有大手の中国広核集団(CGN)とフランス

電力公社(EDF)が共同で手掛けるが、原発プロジェクトには CGNが 66.5%を出資し、建設

後の運営も含めて中国勢が完全に事業を主導することになる(日本経済新聞 2015/10/22)。ま

た国有大手の中国核工業集団(CNNC)は、アルゼンチンに中国製原発設備を輸出することを

アルゼンチン政府と合意した。拡大が続く世界のインフラ需要を巡って、中国は国家を挙げ

た輸出戦略を加速している(日本経済新聞 2015/11/18)。

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図表 8 輸出の伸び推移(単位:%)

(出所)海関総署より作成

図表 9 輸入の伸び推移(単位:%)

(出所)海関総署より作成

11.6

4.7 9.7

-3.3

48.3

-15.0

-6.4 -2.5

2.8

-8.3 -5.5 -3.7

-6.9

-20.0

-10.0

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

4.6

-6.7

-2.4

-19.9 -20.5

-12.7

-16.2 -17.6

-6.1

-8.1

-13.8

-20.4

-18.8

-25.0

-20.0

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

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図表 10 輸出品目別統計

商品名称 単位 1-10月累計 前年同期比(%)

数量 金額(億ドル) 数量 金額(億ドル)

機械・電気設備製品 - - 10655.7 - 0.8

ハイテク製品 - - 5237.8 - -0.4

服飾付属品 - - 1439.2 -7.5

自動データ処理設備及び部品 万台 139,115 1238.0 -10.0 -14.4

携帯電話及び部品 - - 1236.4 - 13.1

紡績・織物及び製品 - - 910.6 - -1.9

農産品 - - 559.4 - -2.5

鋼材 万トン 9,213 533.3 24.7 -6.9

IC 100万個 145,609 532.8 17.4 4.6

靴類 万トン 376 445.5 -8.6 -5.1

家具及び部品 - - 428.3 - 3.0

プラスチック製品 万トン 800 307.8 2.2 1.5

電灯・照明装置及び類似品 - - 288.6 - 13.9

液晶掲示板 100万個 1,858 254.2 -7.9 -4.6

鞄類 万トン 238 232.6 -4.8 4.2

船舶 艘 5,504 220.2 -13.4 16.9

(出所)海関総署より作成

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図表 11 輸入品目別統計

商品名称 単位 1-10月累計 前年同期比(%)

数量 金額(億ドル) 数量 金額(億ドル)

機械・電気設備製品 - - 6543.5 - -6.4

ハイテク製品 - - 4418.6 - -1.6

IC 100万個 252,230 1830.7 8.2 3.7

原油 万トン 27,497 1143.1 8.9 -41.3

農産品 - - 959.9 - -5.4

鉄鋼砂及び精鉄 万トン- 77,451 479.8 -0.5 -41.2

プラスチック原料 万トン 2,170 378.6 2.5 -12.5

自動車(セット部品含む) 万台 91 374.7 -23.7 -26.0

液晶パネル 万個 227,863 326.6 -7.3 -10.4

大豆 万トン 6,518 283.1 14.7 -14.1

銅鉱及び銅材 万トン 382 237.8 -4.2 -19.8

自動データ処理設備及び部品 万台 59,805 225.0 -3.5 -9.7

自動車部品 - - 223.4 - -16.5

飛行機及び航空機 台 59,112 204.3 2,667.4 -1.9

廃材・リサイクル原料など 万トン 3,708 185.1 0.5 -19.0

ダイオード及び半導体部品 100万個 397,934 175.4 -3.3 -7.1

(出所)海関総署より作成

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図表 12 主要国別輸出入

(出所)海関総署より作成

輸出最終目的国

単位:億ドル,% 当月 1-10月累計

輸入原産国

単位:億ドル,% 当月 1-10月累計

金額 金額 前年同期比 金額 金額 前年同期比

合計 1924.1 18564.5 -2.5 合計 1307.7 13705.2 -15.7

アメリカ 370.0 3397.6 5.2 韓国 149.4 1418.6 -10.0

香港 270.3 2513.2 -12.2 アメリカ 114.7 1214.3 -6.5

日本 114.5 1119.5 -9.5 日本 114.6 1178.8 -12.7

韓国 97.3 831.0 1.1 台湾 117.9 1158.9 -6.5

ドイツ 57.3 569.4 -4.9 ドイツ 63.8 731.6 -16.3

ベトナム 57.6 527.2 5.5 オーストラリア 55.3 616.3 -26.0

オランダ 53.3 486.4 -8.2 マレーシア 40.3 436.5 -4.1

イギリス 51.7 485.2 3.5 ブラジル 38.0 373.0 -19.3

インド 48.3 481.5 8.4 タイ 29.8 305.4 -3.9

シンガポール 40.5 424.2 9.3 ロシア 26.2 274.5 -20.7

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図表 13 ドル円対人民元 相場推移

(2015/06/10-2015/12/16)

(出所)中国外貨管理局より作成

図表 14 香港ドルユーロ対人民元 相場推移

(2015/06/10-2015/12/16)

(出所)中国外貨管理局より作成

608

614

620

626

632

638

644

650

475

485

495

505

515

525

535

545

2015/6/10 2015/7/10 2015/8/10 2015/9/10 2015/10/10 2015/11/10 2015/12/10

元/10000円(左軸)

元/100ドル(右軸)

77.5

78.5

79.5

80.5

81.5

82.5

83.5

6.3

6.5

6.7

6.9

7.1

7.3

7.5

2015/6/10 2015/7/10 2015/8/10 2015/9/10 2015/10/10 2015/11/10 2015/12/10

元/ユーロ(左軸)元/香港ドル(右軸)

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18

8.11月の中国株は国内の好材料、海外の悪材料により不安定

11月の本土市場では、週明け2日は弱い製造業PMIが重石となり上海総合指数は3300ポ

イント台前半まで後退した。しかし、11月4日になると次期5ヵ年計画の草案全文の発表、

サービス業PMIの上振れ、中台首脳会談などが好感され、140ポイント以上も上昇した。5

日は新規マネー流入の観測を背景に個人の投資マインドが一段と強気に傾き、約2ヵ月半

ぶりに3500ポイントの大台を回復した。6日も連騰し3600ポイント声を視野に入れた(内藤

証券2015/11/6)。第2週は、週明け9日も引き続き上昇し、終値で今年8月20日以来の

3600ポイント台に回復した。A株IPO(新規公開)が年内に再開する見通しが立ったが、

需給悪化に配慮した制度設計となり、先週の騰勢を引き継いだ。そして戻り売り圧力が強

まり12日に小反落すると13日は大きな調整があり、外部環境の悪化をきっかけに利食い売

りが膨らんだ(内藤証券2015/11/13)。第3週の週明け16日は証券当局高官の失脚、IPOなど

の悪材料が重石となったものの、人民元国際化の動きを織り込み反発した。その後証券業

界に対する一連の引き締めが警戒され、調整して3600ポイントを割り込んだ。それでも中

国の成長戦略が評価され、19日に大台を回復し20日は中国の金融緩和から堅調に推移、先

週末の終値を上回った(内藤証券2015/11/20)。第4週は、IPO再開の第一弾として10社の募

集が来週から始まることが明らかになり、23日は下落した。24、25日と中国の成長戦略や

人民元国際化の動きが好感されて持ち直したが、26日は戻り売り圧力が強まり反落した。

週末の27日は工業企業利益の下振れ、証券当局の引き締め策などが嫌気されて急落した(内

藤証券2015/11/27)。

一方、香港市場では中国経済の減速を受け、ハンセン指数は11月2日まで4営業日続落し

た。しかし、4日は「深港通」(深圳・香港ストック・コネクト)の年内スタートの予測が広

がり、2万3000ポイントを回復した。米国の12月利上げの観測が重石になり小幅に下落、6

日は大台を割り込んだ(内藤証券2015/11/6)。第2週は、米国が12月も利上げに踏み切る可

能性が高まったため、ハンセン指数は調整が続き10、11日は低調な中国の統計が悪材料視

された。欧州の追加緩和やMSCIによる中国関連株の積極採用などの観測が手がかりにな

って12日は反発した。ただ、その後に始まった米国株市場で利上げ観測がさらに強まり、

13日は今月の上げ幅をすべて吐き出した(内藤証券2015/11/13)。16日はパリ同時多発テロ

事件を受け外部環境が急激に悪化、17日には原油高を手がかりに反発した。欧米でのテロ

発生リスクを嫌気しもたついたものの、米国の金利動向の不透明感が和らいで19日に再び

上昇した。本土市場の堅調さに支えられて2万2000ポイントを固めた(内藤証券

2015/11/20)。第4週は、世界的なテロのリスクやシリア情勢の泥沼化が嫌気され、23日は

下落した。翌日は銀行の不良債権増加の影響で続落、25日はトルコによるロシア軍機撃墜

のニュースが広がり、地政学的リスクの高まりから指数が下落した。欧州の追加緩和観測

や原油高が支えになり下げ幅は限定的だが、それでも27日はA株急落に引きずられ、2万

2000ポイント前半まで後退した(内藤証券2015/11/27)。

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図表 15 上海総合指数(終値)

(2015/10/30-2015/11/27)

(出所)kabutanより作成

図表 16 ハンセン総合指数(終値)

(2015/10/30-2015/11/27)

(出所)Searchina ファイナンスより作成

3200

3250

3300

3350

3400

3450

3500

3550

3600

3650

3700

21000

21500

22000

22500

23000

23500

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参考 Web

・株探HP

http://kabutan.jp/tansaku/

・Searchina ファイナンス

http://stock.searchina.ne.jp/

・新華社

http://jp.xinhuanet.com/

・大和総研

http://www.dir.co.jp/research/report/overseas/china/

・中国海関総署

http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/

・中国外貨管理局

http://www.safe.gov.cn/

・中国国家統計局

http://www.stats.gov.cn/

・中国国家能源局

http://www.nea.gov.cn/

・中国人民銀行

http://www.pbc.gov.cn/

・内藤証券

http://www.naito-sec.co.jp/

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https://www.jri.co.jp/service/

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http://www.newsweekjapan.jp/

・ロイター通信

http://jp.reuters.com/

参考新聞・資料

・朝日新聞

・産経新聞

・中国通信

・東京新聞

・日本経済新聞

・毎日新聞

・読売新聞