第25章磁場による力と磁性体 - 北海道大学磁界中のコイルと磁束...
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第25章 磁場による力と磁性体
ローレンツ力
磁界の強さ
磁界と電界の違いは?
電界 単位面積当たりの電気力線の本数に比例
磁界 単位面積当たりの磁力線の本数に比例
力 電荷 電界の強さ= ×
F = qE
力 磁荷? 磁界の強さ= ×
F = qvB (後述)
電界と力の関係から調べてみる・・・
磁界中のコイルと磁束
図a)のように、面積Sの1回巻きコイルを の磁力線が貫くときを考える。このような磁力線の数を磁束(magnetic flux)と呼び、[Wb(ウェーバー)]という単位で表す。また、単位面積あたりの磁束を磁束密度といいBで表すと、= BSとなる。一般的に磁界を表すときは、この磁束密度Bを用いる。
図b)のように、磁界Bに対してコイルが の角度を持つとき、 = BScosとなる。
また、磁界の強さをHとすると、 = 0SHとなる。
B
S
B
S
a) 磁界に対して垂直 b) 傾きの位置
S: コイルの断面積 : コイルを貫く磁
力線(磁束) : コイル面と磁界
のなす角B: 磁束密度
ローレンツ力
磁束密度 B の磁界の中で、図の
ように磁界と垂直な方向に荷電粒子を速度 v で移動させると、これらと垂直な方向に電荷の大きさ q に比
例した力が発生する。この力をローレンツ力(電磁力)という。
F qvB
N
S
力
と を含む面の法線ベクトルを
とすると、
ローレンツ力
負の電荷の場合、力の働く方向は逆になる。
磁界と荷電粒子の速度が垂直でない場合、ローレンツ力は磁束密度と速度の作る平行四辺形の面積に比例した力となる。よって、
負の電荷に働く力 磁界と速度が垂直でない場合
磁束密度 B
速度 v
sinF qvB
cosa b a b sina b a b
力 Fvsin
sinF qv B qv B n
※内積と外積 vB n
磁界中の荷電粒子の動き
一様な磁界 B の中に、磁界に垂直に荷電粒子が速度 v で進入した場合を考える。
荷電粒子は速度と磁界に垂直な方向にローレンツ力 F を受ける。荷電粒子の電荷を q、質量をm とすると、
より、
また、ニュートンの法則より、速度と加速度の方向が垂直なため、進行方向の速度は変えないで、向きだけ変える運動、すなわち等速円運動をする。このとき、円運動の半径を r とすると、
より、
F ma qvB
qvBa m 2 qvBva r m
mvr qB
電流に働く力
電流は電子の流れなので、まわりに磁界があると力を受けることになる。断面積 S の導線の長さ の区
間にのみ一様な磁束密度 B がある。
左から右に電流を流すと、各電子には速度と磁界とに垂直な力が働く。電流に働く力は、この各電子に働く力の和となる。電子の電荷を e とす
ると、各電子に働く力 Fは、
である。磁界がある部分の導線の体積は S であり、電子の密度を n と
すると、電子の総数は nS となる。
よってこの区間に加わる力 Fは、
となる。電流は I = nevSなので、
と表すことができる。
F evB
F envBS
F BI
磁束密度 B
速度 v
電流 I
力 F
フレミングの左手の法則
1) 中指、人差し指、親指の長い方から、電磁力
2) 親指、人差し指、中指がそれぞれ、F(力)B(磁束密度)I(電流)
IからBに右ねじ方向にして、F(親指)を進行方向にする。
ブラウン管
最近、見られなくなってきているが、ブラウン管ディスプレイが電子と磁界と力の関係をよく表している例である。
ブラウン管後部にある電子銃では、フェラメントから放出させた電子を電荷によって加速する。加速された電子を磁界によって上下左右に曲げ
ることで、ブラウン管全面に塗られた赤、緑、青の蛍光物質を発行させる。1秒当たり30フレーム(画像)を525本の走査線で表現し、まずは奇数行目に、次に偶数行目に走査することで残像を使って継ぎ目のない画像にしているが、これはちらつきの原因にもなっている。
アンペールの実験
2本の自由に動く金属棒を2本の金属台に乗せ、電流I1、I2を同じ向き
に流すと、2本の金属棒は互いに引き寄せあう。すなわち、互いの金属棒には引力Fが働いてることとなる。これはなぜだろう?
金属棒1に着目して、ローレンツ力を考えてみると、ちょうど金属棒1のまわりに磁界B2があるのと同じ状態となる。つまり、電流I2によって、金属棒1のまわりに磁界B2ができたことがわかる。
I1
I2
電流I2、金属棒同士の距離r、金属棒の長さlを変化させると、これらの関係とローレンツ力の関係は、
となり、ここから電流Iが距離rのところにつくる磁界Bは、
となることがわかる。
r
FI1
I2
r
F
B221
21
0 22 12
IF B I Ir
02IB r
2つの直流電流に働く力
電流は磁界をつくり、磁界は電流に力を及ぼす。したがって、電流の間には互いに力が働くことになる。
距離 d離れて長さ の2つの直流
電流をおく。電流2が電流1につくる磁束密度は、
である。一方、この磁束密度によって電流が受ける力は、F = BIより、
となる。
0 22 2
IBd
0 1 22 1 2
I IF B Id
右ねじの法則による左手の法則の確認
I
S
N
弱め合う
強め合う
S
N
電流によるトルク
導線が図のように長方形の場合に、この電流に働く力を考える。a の部分に働く力は、
となり、c の部分でも同じため、oo'を中心としたトルクを発生する。
例えば、下図のように角度 だけ回転した状態で考えると、
このトルクは aの部分では、
となる、c の部分も同様に考えると、全体で、
というトルクが発生する。長方形の面積は S = hなので、これは、
と書くことができる。この式は長方形だけでなく、円形など他の一般的な形の電流でも成り立つことが知られている。
この原理を利用したのがモーターである。
a
c b
d
B
h
I
F
F o
o'
F BI
2 sinah BI
sinBIh
sinISB
b、dh B
a
c
F
F
直流モーター
図のようなフレームに直流の電流を流すと、磁界から力を受ける。ブラシによって、回転しても常に同じ方向に電流が流れるようにすると、モーターは同一方向に回転する。
NS
ブラシ
電流
実際のモーター
長方形のモーターではトルクが弱いため、実際にはこれをコイルにして強めている。
また磁界との角度によってトルクが変化してしまうのを防ぐために、図のように磁石となる部分を3つ以上にして、いつでも回転する力が働くようにしている。
地磁気方位センサ
図はフラックスゲート(Flux gate)型の
地磁気方位センサの構造である。高透磁率材料のトロイダルコアとその励磁コイル、およびコアの外側から囲む形で巻線される直交検出コイル X から構成される。コアは数kHzの交流により過飽和励磁され磁心X1、X2部分の検出コイル
には交流磁界によって発生する磁束密度 BA による電圧が誘起する。この誘起電圧 VX1 と VX2 は大きさが等しく、互い
に逆極性であることから検出コイル X全
体では出力電圧はゼロとなる。ここで、地磁気のような外部からの磁界 BSが作用すると、X1、X2部分の磁界はそれぞれ BA + BS、BA BS となり、その差に比例した電圧が検出コイル X から出力さ
れる。出力電圧の大きさは外部からの作用磁界の大きさに比例し、作用磁界が地磁気のみであれば、作用する地磁気の磁心断面に対する角度に応じて出力磁界が変化する。
トロイダルコア
BA
BA励磁コイル磁心部分X1
磁心部分X2
地
磁
気
検出コイル
IA
ホール効果(ホール素子)
左図のような導体に電流 I を流し、これと垂直方向に磁束密度 B の磁界があったとき、導体内の自由電子はローレンツ力 FL によって運動方向が曲
げられる。その結果、導体の下面が負に、上面が正に帯電するので、導体内に上面から下面への電界 Eが発生する。電界 E による力 eEはローレンツ力 FL と釣り合い、電子が直進するようになる。これより、右図のように導体の上下面間に、流した電流 I や加えた磁界に比例した電位差(ホール電圧)V が生じる。なお、導体がp型半導体の場合はキャリアが正孔(ホール)のために、電界 E がn型半導体と逆方向になる。いずれも発生した電位差Vを測定することによって、磁界の大きさや強さを知ることができる。
ローレンツ力による自由電子の変動 ホール電圧の発生
v
FL
Vv
FLI I
eE
B B
磁界に関するクーロンの法則
本来、磁荷は存在しないが、磁気双極子の端だけに注目すると、あたかも単極のみの磁荷が存在するように見なすことができる。仮にこのような磁荷 qm1[Wb] と qm2[Wb] が存
在すると仮定した場合、これらの間に働く力 F[N] は、
と表すことができる。これを磁界に対するクーロンの法則という。
磁界強度 H[N/Wb] を用いると、
と表すことができる。
1 220
14
m mq qFr
mF q H
qm1
qm2
r
F
F