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給食施設栄養管理マニュアル 平成27年12月 鹿児島県健康増進課

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給食施設栄養管理マニュアル

平成27年12月

鹿児島県健康増進課

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この「給食施設栄養管理マニュアル」は,施設者向け「給食管理マニュア

ル」(平成 11 年 3 月発行)と指導者向け「給食施設等指導マニュアル」(平

成 11年 3月発行)を改定して1冊にしました。給食施設で栄養管理に携わ

る者とそれを支援する側が,同じ方向を向いて,給食施設を利用する人やそ

れを取り巻く地域全体の健康の維持・増進をめざして,給食施設が適切な栄

養管理を行う際の留意事項をまとめたものです。

また,内容につきましては,保健所担当者が中心となって,年に 1 回検

討会を実施し,修正や追加等を行い,より一層充実したものにしていく予定

です。

給食施設の種類や規模によって,栄養管理や衛生管理などの方針は異なる

部分もありますが,その施設に応じた内容を読み取って御活用いただきたい

と思います。

目 次

Ⅰ 特定給食施設 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

Ⅱ 特定給食施設の届出及び報告 ・・・・・ 4

Ⅲ 管理栄養士・栄養士の配置 ・・・・・ 7

Ⅳ 栄養指導員による指導・支援 ・・・・ 8

Ⅴ 健康増進法に係る義務違反 ・・・・・ 10

Ⅵ 栄養管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

Ⅶ 栄養教育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

Ⅷ 事務管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

Ⅸ 衛生管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

Ⅹ 危機管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

※ 参考資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

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Ⅰ 特定給食施設

1 特定給食施設の定義

「給食」とは,病院,学校,事業所,福祉施設などにおいて,それぞれの施設を利

用する特定の対象者に継続的に提供する食事のことで,「給食」を提供する施設を「給

食施設」と言います。

提供する食数によって以下のように区分します。

また,食数について,定員が設けられている場合は,定員を食数とみなします。

① 特定給食施設

健康増進法では,「特定かつ多数の者に対して継続的に1回 100 食以上又は1日

250 食以上の食事を供給する施設のうち栄養管理が必要な施設」を「特定給食施

設」と定めています。(健康増進法第20条第1項 健康増進法施行規則第5条)

② その他の給食施設

鹿児島県では,特定給食施設よりも小規模ですが,特定多数人に対して継続的に,

概ね1回 50 食以上又は1日 100 食以上の食事を供給する施設を「その他の給食施

設」とし,特定給食施設に準じて取り扱うこととしています。

◎特定多数人に対して食事を供給する施設

給食対象者の大部分が特定される集団であり,社会性を有するものであって,1回

50 食以上又は1日 100 食以上の食事を供給する施設。

◎継続的に食事を供給する施設

給食の提供が週3日以上であり,かつ,それが継続して1か月以上実施されている施設。

◎給食施設

調理室の有無にかかわらず,上記の要件を満たす施設をいう。

従って,幼稚園など施設内に調理施設がなく,給食センター等に調理業務を委託し

ている場合においても,上記要件を満たせば給食施設とみなす。

2 目的と役割

特定給食施設には,単に食事を提供する,利用者の味覚・嗜好を満足させるという

ことだけではなく,利用者の健康管理という視点を持って運営していくことが求めら

れています(健康増進法第21条)。

特定の個人に対して繰り返し継続的に提供される食事は,利用者にとって日常生活

の環境であるため,栄養管理の質の向上を図り,健康な食環境を整えていくことは,

直接利用者の栄養・健康状態につながります。

疾病や要介護状態の重症化を予防するためには,地域の医療や介護の質として,栄

養管理の質を高めることが求められます。

また,提供される食事を選択し食べること,栄養・健康に関する情報を得ることを

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繰り返すことで,自ら主体的に健康の維持・増進につなげていくことができます。

そこで,健康日本21(第2次)の中でも,健康寿命の延伸・健康格差の縮小のた

めに,社会環境の質の向上の一つとして「利用者に応じた栄養管理を実施している給

食施設の増加」が目標に定められています。

これらのことから,給食施設は,県民の健康づくりや栄養・食生活の改善のみなら

ず,あらゆる世代のすこやかな暮らしを支える社会環境の整備・促進に果たす役割も

大きいといえます。

また県では,これらの役割を給食施設に求めるとともに,適切な栄養管理の一助と

なるよう,指導・支援を行っています。

図 1

住民組織

活動の強化

特定給食施設等における栄養情報の提供

個人知識や技術の提供

【教育的なアプローチ】

めざすのは

豊かな人生

【QOLの向上】

健康を支援する

環境づくり

【環境多岐なアプローチ】

特定給食施設等における適切な食事供給

〈特定給食施設等栄養管理の手引き(浜松市保健所)引用〉

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図 2

利用者の栄養管理マネジメントから地域の栄養管理マネジメントへ

特定給食施設

地 域

熊本県 健康増進法に基づく特定給食施設等のための栄養管理の手引きを一部改編

食事の環境づくり,調理施設の整備,関係

者の健康管理,労務管理を十分に配慮し,

円滑な給食,栄養管理の実施に努める。

管理者

(施設長,施設管理者)

関係機関

(医療機関,福祉施設等)

行政

(市町村)

職場,学校等

家庭

正しい知識をもち,自己の

健康づくりを行う。給食や栄養情報等の提

供について意見し,よりよい栄養管理への

反映に努める。

利用者の健康・栄養に直接影響を与える。利用

者とコミュニケーションをとりながら,専門的

な知識と技術の向上に努める。

利用者の適切な栄養管理や健康・栄養教

育の実施に向けて,施設側が主体的に問題解決でき

るよう支援する。また,施設内外の関係者の連携や

栄養管理従事者の資質向上を支援する。

食品関連業者

(生産・加工・流通)

利用者の健康状態や食事摂取状況等の情報を共

有し,栄養管理従事者と連携のもと,円滑な栄

養管理の実施に努める。

利用者

その他関係者

(医師,看護師,介護職員等)

栄養管理従事者

(管理栄養士,栄養士,調理師)

保健所栄養指導員

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Ⅱ 特定給食施設の届出及び報告

1 特定給食施設の届出

特定給食施設を設置したときは,健康増進法第20条第1項の規定により,「特定

給食施設設置届」の提出が必要です。

また,届出事項の変更が生じた場合は「特定給食施設届出事項変更届」を,給食を

休止又は廃止する場合は「特定給食施設事業休止(廃止)届」を,給食施設の事業を

再開する場合は「特定給食施設事業再開届」を提出する必要があります。

届出は当該特定給食施設の所在地を管轄する地域振興局長又は支庁長に事業の開

始(再開)の日,変更の日及び休止(廃止)の日から一月以内に提出します。

これらの届出は,特定給食施設(法第20条第1項の厚生労働省令で定める施設)

のみではなく,その他の給食施設(特定多数人に対して継続的に,概ね1回 50 食以

上又は1日 100 食以上の食事を供給する施設)においても特定給食施設に準じ,提出

します。

様式については,p35~p38 を参照してください。

鹿児島県ホームページからも入手できます。

ホーム> 健康・福祉> 健康・医療> 健康づくり> 栄養・食生活> 特定給食施設各種届出

2 特定給食施設の報告

特定給食施設における給食運営及び栄養管理等の状況を把握するため,健康増進法

第24条第1項及び鹿児島県健康増進法施行細則第4条の規定により報告を求める

ものです。

この報告書は,特定給食施設(法第20条第1項の厚生労働省令で定める施設)の

みではなく,その他の給食施設(特定多数人に対して継続的に,概ね1回 50 食以上

又は1日 100 食以上の食事を供給する施設)においても特定給食施設に準じ,提出し

ます。

毎年10月に実施した給食について栄養報告書(様式名:栄養管理報告書)を作成し,

翌月の15日までに当該特定給食施設の所在地を管轄する保健所長に提出します。

(管轄保健所は裏表紙に記載のお問合せ先を参照ください。)

(1) 栄養報告書(様式名:栄養管理報告書)の目的

給食施設における栄養管理された食事の提供や栄養教育は,利用者の生活習慣病

予防及び疾病の重症化予防に貢献するものであり,給食施設は「食」を中心とした

健康づくりの重要な社会環境となっています。

栄養管理報告書は,保健所が施設の状況を把握することと併せて,施設側が自己

チェックを実施することに利用できます。

・ 健康増進法に基づく栄養管理の基準について,具体的な項目(何をすることが

望ましいか)を設定し,その実施状況を把握します。

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・ 栄養管理の実施状況の把握は,Plan(計画) - Do(実施)- Check (検証)-

Action(改善)の栄養管理マネジメントサイクル(PDCAサイクル)が実施され

ているかを把握します。

・ 保健所と施設側のコミュニケーションのツールとして活用します。

・ 施設の状況から各施設のニーズや課題を把握し,個別の対応につなげます。

・ 保健所単位で,各項目の実施状況等を集計することで,地域別や施設種類別等

の課題を把握し,県における事業計画に反映します。

(2) 栄養報告書(様式名:栄養管理報告書)の提出

県では,特定給食施設の役割やこれからの特定給食施設支援・指導がめざす方向

性を踏まえ,保健所が給食施設における栄養管理の状況をより的確に把握するとと

もに, 個々の給食施設が自らの栄養管理の質を向上していくことができるようにす

るために,栄養管理報告書の提出を求めています。

様式(栄養管理報告書)については,p39~p52を参照してください。

鹿児島県ホームページからも入手できます。

ホーム> 健康・福祉> 健康・医療> 健康づくり> 栄養・食生活> 特定給食施設各種届出

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3 給食施設の種類(分類例) 表1

種類 該当施設 根拠法令等

学校

(公立・私立)

公立学校,私立学校,公立幼稚園,

私立幼稚園,専修学校,各種学校,

学校給食センター

学校教育法第1条に規定する学校,第124

条に規定する専修学校及び第134条第1

項に規定する各種学校,学校給食法第6条

に規定する学校給食共同調理場

病院 病院 医療法第1条の5第1項に規定する病院

介護老人

保健施設

介護老人保健施設 介護保険法第8条第27項に規定する介

護老人保健施設

老人福祉施設 特別養護老人ホーム,老人ディサー

ビスセンター,老人短期入所施設,

老人介護支援センター,老人福祉セ

ンター,軽費老人ホーム(ケアハウ

スなど),養護老人ホーム

老人福祉法第5条の3に規定する施設

児童福祉施設 認可保育所,幼保連携型認定こども

園,乳児院,母子生活支援施設,児

童養護施設,障害児入所施設,児童

発達支援センター,児童自立支援施

設,児童家庭支援センター

児童福祉法第7条に規定する施設及び社

会福祉法第2条に規定する事業に係る施

設で児童福祉に関するもの

社会福祉施設 救護施設,障害者支援施設,障害福

祉サービス事業,婦人保護施設等

生活保護法第38条,売春防止法第36

条に規定する施設並びに社会福祉法第2

条に規定する事業に係る施設で社会福祉

に関するもの

事業所 事業所 労働基準法別表1に規定する事業所

寄宿舎 学生又は労働者の寄宿施設 学生又は労働者を寄宿させる施設

矯正施設 刑務所,少年刑務所,拘置所,少年

院,少年鑑別所

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関

する法律第3条に規定する刑事施設並び

に少年院法第2条に規定する少年院及び

少年院法第16条に規定する少年鑑別所

自衛隊 自衛隊 自衛隊法第2条に規定する施設

一般給食

センター

特定した施設(複数の場合も含む)

に対して継続的に食事を供給して

いる施設

特定した施設(複数の場合も含む)に対

して継続的に食事を供給している施設

その他 上記に含まれない施設

警察学校,消防学校,認可外保育施

設,有料老人ホーム等

上記に含まれない施設

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Ⅲ 管理栄養士・栄養士の配置

1 管理栄養士・栄養士の配置の意義

給食利用者が安心しておいしく食べられる食事を提供するには,栄養管理及び給食

管理の専門職である管理栄養士・栄養士が,利用者の健康・栄養状態の改善を目的と

し,その特性に合わせた栄養計画,食事計画に基づき食事の品質管理を行い,提供し

た食事内容が利用者にとって適切な内容であったかどうかを他職種と連携しながら

評価し,次の栄養計画,食事計画の改善につなげていくことが大切です。

2 管理栄養士・栄養士の配置について

給食施設の中には,健康増進法や関連法令,規則等により管理栄養士・栄養士の配

置義務,努力義務が規定されている施設があります。また,管理栄養士の配置義務の

ある施設で,管理栄養士の配置がない場合は,健康増進法により義務違反として罰則

の対象となります。

特定給食施設で特別な栄養管理が必要なものとして厚生労働省令で定め,鹿児島県

知事が指定する施設の設置者は,当該特定給食施設に常勤の管理栄養士を配置しなけ

ればなりません。(健康増進法第 21 条第 1 項,健康増進法施行規則第 7条)

また,本県は給食施設における管理栄養士・栄養士の配置率は,全国平均より高い

状況にありますが,更にこの配置率を高くすることを目指しています。

3 健康増進法による配置の基準等 表2

管理栄養士を置か

なければならない

施設

① 医学的な栄養管理を必要とす

る施設

及び

給食数が 1 回 300 食以上又

は 1 日 750 食以上の施設

② ①以外の施設で特別な栄養管

理を必要とする施設

及び

給食数が 1 回 500 食以上又

は 1 日 1,500 食以上の施設

管理栄養士を置く

ように努めなけれ

ばならない施設

③ ①,②以外の特定給食施設

及び

給食数が 1 回 300 食以上又は 1 日 750 食以上の施設

管理栄養士又は栄

養士を置くように

努めなければなら

ない施設

④ ①~③以外の特定給食施設

(給食数が 1 回 100 食以上又は 1 日 250 食以上の施設)

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Ⅳ 栄養指導員による指導・支援

個人のQOL(生活の質)や健康状態の向上のためには,個人に対しての教育的アプ

ローチだけでなく,地域における資源を有効に活用するような環境的なアプローチが

必要とされています。給食施設において,継続的に供給される食事は利用者にとって

日常生活の環境であるため,この環境を良くするよう整備していくことは,利用者の

健康の維持・増進,QOLの向上につながると考えられます。そのため健康増進法で

は,特定給食施設の設置者に対し,利用者に応じた適切な栄養管理の実施によって,

利用者への生活習慣病予防や健康増進を担う役割を求めています。

また鹿児島県では,これらの役割を特定給食施設等に求めるとともに,適切な栄養

管理の一助となるよう,指導・支援を行っています。

栄養指導員は,健康増進法第19条の規定により医師または管理栄養士の資格を有

する保健所の職員が任命されます。栄養指導員は,同法第18条第1項に基づき,専

門的栄養指導及び給食施設に対する栄養管理指導等を行います。

1 給食施設等の把握

各地域振興局,支庁管内の給食施設について,給食施設の定義と分類をもとに把握

します。

また,鹿児島県健康増進法施行細則に基づき,各種届出を円滑に行ってもらうよう,

関係課と連携して,支援します。

なお,給食施設の把握において新規や変更等が生じた場合は,給食施設管理システ

ムへの修正入力を行います。

2 給食施設の栄養管理の実態把握と指導・支援の方向性

特定給食施設の栄養管理の実施状況の把握は,栄養管理報告書を基に,栄養管理

マネジメントのプロセス(PDCAサイクル)が実施されているかを確認します。そ

れによって,地域の給食施設の栄養管理の評価を行い,指導計画を立てます。

具体的には次のような項目となります。

(厚生労働省健康局がん対策・健康増進課長通知:健が発0329第3号平成25年

3月29日 特定給食施設における栄養管理に関する指導及び支援について)

(1) 管理栄養士又は栄養士の配置状況,利用者の身体状況の変化など栄養管理の状況

について,評価を行います。

(2) 施設の種類によって管理栄養士等の配置率が異なることから,施設の種類別に評

価を行うなど,課題が明確となるような分析を行います。

(3) 評価結果に基づき,課題解決が効率的・効果的に行われるよう,指導計画の改善

を図ります。

(4) 結果を改善に生かすために,栄養管理上の課題が見られる場合には,施設長に対

し,課題解決への取組みを促します。また,栄養管理を担う職員について,専門職

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としての基本的な技能の確保を図る必要がある場合には,職能団体の協力が得られ

るよう調整を行います。

(5) 健康危機管理対策の一環として,災害等に備え,特定給食施設が担う役割を整理

し,施設内及び施設間の協力体制の整備に努めます。

(6) 特定給食施設以外の給食施設に対する指導及び支援に関しては,地域全体の健康

増進への効果の程度を勘案し,より効率的・効果的な指導・支援を計画します。

3 巡回指導・助言

栄養指導員が施設に出向き,栄養管理報告書の内容や帳票類,給食実施状況を確認

します。

これは,健康増進法第18条第 1項第2号に基づくもので,施設において適切な栄

養管理が実施されているか確認し,必要に応じて指導を行います。

なお,改善が見られない場合は,同法第22条,第23条,第24条に基づき指導

及び助言,勧告及び命令,立入検査を行うことがあります。

4 集団指導

給食施設関係者(管理者,管理栄養士・栄養士,調理従事者等)を対象に,最新の

栄養情報の習得及び情報交換を目的とした研修会を実施します。給食施設から提出さ

れる栄養管理報告書の分析結果や,巡回指導結果,地域の健康・栄養課題等を基にテ

ーマを設定した全体研修会の他に,職種別や施設種別など,目的や対象に応じた研修

会も実施します。

地域にある集団給食施設連絡協議会等の研修会を利用したり,栄養士会等の職能団

体の協力を得て実施することもあります。

5 個別指導・相談受付

栄養士未配置施設で栄養管理が十分実施できていない施設に対して,栄養管理の具

体的な方法等について個別指導を行います。また,管理栄養士・栄養士配置施設にお

いても必要に応じて個別指導を行います。

その他,給食に関する相談や問合せは,随時受け付けています。

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Ⅴ 健康増進法に係る義務違反

健康増進法では特定給食施設の栄養管理や管理栄養士の配置義務への違反に対し,

その施設の設置者へ罰則が適用されることがあります。(健康増進法第37条,第3

8条)

1 給食施設の届け出義務に違反した場合

特定給食施設の設置者が健康増進法に基づく届け出,報告を怠った場合は,義

務違反が生じます。

2 栄養管理の基準に違反した場合

鹿児島県知事は,適切な栄養管理を行わない等の特定給食施設に対して,勧告

を行うことができます。

さらに,正当な理由がなく勧告に係る措置をとらない施設に対して,措置命令

を行うことができます。命令に違反した場合は,給食施設設置者に対する罰則(5

0万円以下の罰金)が適用されることがあります。

また,栄養管理の実施を確保するために必要が認められる場合,報告を求める

ことや栄養指導員による立入検査を実施することができます。報告や立入検査の

拒否・妨害,虚偽の報告・答弁をした場合は,給食施設設置者に対する罰則(3

0万円以下の罰金)が適用されることがあります。

3 管理栄養士の配置義務に違反した場合

鹿児島県知事は,管理栄養士の配置義務があるにもかかわらず配置しない等の

特定給食施設に対して,勧告を行うことができます。

さらに,正当な理由がなく勧告に係る措置をとらない施設に対して,措置命令

を行うことができます。命令に違反した場合は,給食施設設置者に対する罰則(5

0万円以下の罰金)が適用されることがあります。

また,栄養管理の実施を確保するために必要が認められる場合,報告を求める

ことや栄養指導員による立入検査を実施することができます。報告や立入検査の

拒否・妨害,虚偽の報告・答弁をした場合は,給食施設設置者に対する罰則(3

0万円以下の罰金)が適用されることがあります。

(参考) 給食施設の設置者について

健康増進法における給食施設の栄養管理に関する義務は,当該施設の設置

者に義務付けられており,設置者とは,当該施設を設置した最高責任者とし

ます。

(例:病院の理事長,事業所の代表取締役社長等)

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Ⅵ 栄養管理

1 給食施設における栄養管理

給食施設における栄養管理は,利用者を1つの集団として捉えるのではなく,多数

の「個人」が集まったものとして捉えることが重要であり,集団を構成するすべての

利用者ひとりひとりに対して適切な食事を提供することが求められます。

個々の利用者ごとに対応した食事を提供することが理想的ではありますが,望まし

い摂取栄養量には許容される範囲があることから,実際には,利用者の身体状況や栄

養状態,又は日本人の食事摂取基準に基づき,利用者をその特性ごとに集約し,それ

に見合った食事を提供することで,すべての利用者に望ましい摂取栄養量の許容範囲

内での食事を提供することができます。

2 栄養管理の考え方

(1) 健康増進法

健康増進法では,特定給食施設の設置者の責務において栄養管理を行うことと

規定されており,健康増進法施行規則第9条にはその基準(栄養管理の基準)が

示されています。また,施設の種別によって,他の法律等でも栄養管理に関する

規定があります。

(2) 特定給食施設における栄養管理に関する指導及び支援について

厚生労働省通知(平成 25 年 3 月 29 日「特定給食施設における栄養管理に関す

る指導及び支援について」)に,健康日本21(第二次)の推進に当たって,特

定給食施設が実施すべき栄養管理に関する具体的な事項が明記されています。

(表3)

(3) 日本人の食事摂取基準

「日本人の食事摂取基準」では,給食管理の目的を「給食利用者の健康の維持・

増進」(小児の場合は健全な発育含む)「生活習慣病の一次予防」と明記している

ので,これらに配慮し,利用者に合致した目標設定の後,献立を作成し,実施し

ていくことが大切です。

ただし、疾患を有していたり、疾患に関する高いリスクを有していたりする個

人並びに集団に対して、治療を目的とする場合は、食事摂取基準におけるエネル

ギー及び栄養素の摂取に関する基本的な考え方を理解した上で、医師の治療方針

を適切に把握するとともに,その疾患に関連する治療ガイドライン等の栄養管理

指針を用いることになります。

給食部門だけでなく,関係部門や受託事業者等と連携し,施設全体として栄養管

理や給食運営の評価・改善を行い,より質の高い栄養管理及び給食運営へつなげて

いくことも重要です。

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健康増進法

第二十一条 第三項 (特定給食施設における栄養管理)

特定給食施設の設置者は,前二項に定めるもののほか,厚生労働省令で定める基

準に従って,適切な栄養管理を行わなければならない。

図3 健康日本21(第2次)の推進と特定給食施設の栄養管理

厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会資料

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○健康増進法で定められた栄養管理の基準 表3

健康増進法(健康増進法施行規則

第9条)で定められた栄養管理の

基準

厚生労働省通知「特定給食施設における栄養管理に関する指導及び支

援について」(健が発第0329第3号,平成25年3月29日)で示

された内容

1 当該特定給食施設を利用して

食事の供給を受ける者(以下「利

用者」という。)の身体の状況,

栄養状態,生活習慣等(以下「身

体の状況等」という。)を定期的

に把握し,これらに基づき,適当

な熱量及び栄養素の量を満たす

食事の提供及びその品質管理を

行うとともに,これらの評価を行

うよう努めること。

1 身体の状況,栄養状態等の把握,食事の提供,品質管理及び評価

について

(1) 利用者の性,年齢,身体の状況,食事の摂取状況及び生活状況

等を定期的に把握すること。

(2) (1)で把握した情報に基づき給与栄養量の目標を設定し,食事

の堤供に関する計画を作成すること。

(3) (2)で作成した計画に基づき,食材料の調達,調理及び提供を

行うこと。

(4) (3)で提供した食事の摂取状況を定期的に把握するとともに,

身体状況の変化を把握するなどし,これらの総合的な評価を

行い,その結果に基づき,食事計画の改善を図ること。

2 食事の献立は,身体の状況等の

ほか,利用者の日常の食事の摂取

量,嗜好等に配慮して作成するよ

う努めること。

2 提供する食事(給食)の献立について

(1) 給食の献立は,利用者の身体の状況,日常の食事の摂取量に占

める給食の割合,嗜好等に配慮するとともに,料理の組合せや

食品の組合せにも配慮して作成するよう努めること。

(2) 複数献立や選択食(カフェテリア方式)のように,利用者の自

主性により料理の選択が行われる場合には,モデル的な料理の

組合せを提示するよう努めること。

3 献立表の掲示並びに熱量及び

たんぱく質,脂質,食塩等の主な

栄養成分の表示等により利用者

に対して,栄養に関する情報の提

供を行うこと。

3 栄養に関する情報の提供について

(1) 利用者に対し献立表の掲示や熱量,たんぱく質,脂質及び食塩

等の主要栄養成分の表示を行うなど,健康や栄養に関する情報

の提供を行うこと。

(2) 給食は,利用者が正しい食習慣を身に付け,より健康的な生活

を送るために必要な知識を習得する良い機会であり,各々の施

設に応じ利用者等に各種の媒体を活用するなどにより,知識の

普及に努めること。

4 献立表その他必要な帳簿等を

適正に作成し,当該施設に備え付

けること。

4 書類の整備について

(1) 献立表など食事計画に関する書類とともに,利用者の身体状況

など栄養管理の評価に必要な情報について適正に管理するこ

と。

(2) 委託契約を交わしている場合は,委託契約の内容が確認できる

よう委託契約書等を備えること。

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5 衛生の管理については,食品衛

生法その他関係法令の定めると

ころによること。

5 衛生管理について

給食の運営は,衛生的かつ安全に行われること。具体的には,食

品衛生法(昭和 22 年法律第 233 号),「大規模食中毒対策等につい

て」(平成 9 年 3 月 24 日衛食第 85 号生活衛生局長通知)の別添「大

量調理施設衛生管理マニュアル」その他関係法令等の定めるところ

によること。

6 災害等の備えについて

災害等に備え,食糧の備蓄や対応方法の整備など,体制の整備に

努めること。

3 栄養管理のすすめ方

(1) 食事摂取基準の活用とPDCAサイクル

栄養管理は,マネジメントサイクル(PDCAサイクル),Plan(計画) - Do

(実施)- Check (検証)- Action(改善)に基づき,食事摂取基準を適用します。

特定の集団に対する食事計画とそれに基づく適切な品質管理による継続的な食事

提供及び摂取状況等の評価において,食事摂取基準の活用の基本的概念は図4の

とおりです。

図4 食事摂取基準の活用とPDCAサイクル

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書より改編

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また,集団の食事改善を目的として食事摂取基準を適用した食事摂取状況のアセス

メントの概要は図5のとおりです。

図5 食事改善(集団)を目的とした食事摂取基準の活用による食事摂取状況の

アセスメント

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書より

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栄養スクリーニング・アセスメント

栄 養 基 準 ・ 給 与 目 標 量 の 設 定

給 食 管 理

給 食 の 実 施

食 事 の 提 供 ・ 栄 養 指 導

検 証 ・ 評 価

(2) 栄養管理業務の流れと栄養管理の具体的な内容

栄養管理業務の流れと栄養管理の具体的な内容を示します。(図6、表4)

図6 栄養管理業務の流れ

改 善

・対象集団の特性把握

・食事摂取量の評価

・予定献立作成

・品質管理

・衛生管理・健健康

・ 健康・栄養情報の提供

・食事摂取量の把握

・エネルギー摂取量の評価

・栄養素摂取量の評価

・身体状況等の評価

・利用者による評価

体制整備 (組織,方針等)

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○栄養管理の具体的内容 表4

具体的実施事項 栄養管理基準

帳票類等

施設における給食運営及び栄養管理の方針を明確にし,必要な条

件整備・組織化を行います。

① 給食運営の方針・目標の設定

・施設として,給食運営及び栄養管理の方針・目標を明確にします。

(例:利用者の健康管理,食を通じた利用者のQOL向上,疾病の

治癒・改善など)

・効果的な給食運営や栄養管理の実施のために,関係部門や受託事

業者と方針・目的を共有します。

② 役割分担の明確化

・業務を委託方式で実施する場合は,施設側と受託側の役割分担を

明確にし,委託契約書等を整備します。

③ 給食運営体制の確認

・給食運営に必要な設備や人員等が配置されているか確認します。

④ 評価体制の整備

・給食運営及び栄養管理が適切に実施されているか,施設全体で評

価し,改善に向けての検討ができる体制を整備します。

・健康増進法施行規

則第9条第4号

組織図

給食運営計画

栄養管理計画

給食関係会議録

委託契約書

具体的実施事項 栄養管理基準

帳票類等

栄養計画(アセスメント)は,給食関係部門だけでは実施できな

いため,健康管理部門等と連携を図り必要な情報を得て実施しま

す。

① 利用者の把握(個人の栄養アセスメント)

・利用者の栄養及び健康状態,活動レベル等の特性を把握すること

により,利用者の状態に合わせた食事を効率よく提供することがで

きます。

・利用者個々の給与栄養目標量を定めるために,アセスメント項

目を参考に利用者の把握を行います。

・健康増進法施行規

則第9条第1号

・健康増進法施行規

則第9条第2号

性・年齢別調査票

栄養アセスメント

給与栄養目標量

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○アセスメントの一例

・性別,年齢

・身体活動レベル

・身体状況(身長・体重・体格指数・健診結果等)

・栄養状態,嗜好,食事の摂取状況等,

・生活状況(家族構成,就業状況,生活習慣等)

② 給与栄養目標量(個人・集団)の設定・見直し

【個人】

・把握した利用者の状況から,望ましい給与栄養目標量を設定しま

す。

【集団】

・個人の給与栄養目標量に基づき,対象集団の特性や栄養状態等を

考慮した全体の給与栄養目標量を設定します。その際,設定根拠

を明確にしておくことが重要です。

・給与栄養目標量の設定における3食の配分は,利用者の食事状況

や食事以外の摂取栄養量等を勘案して設定します。

※給与栄養目標量は,利用者の状況に大きな変動がみられる場合な

どには,見直しを行うことが必要です。

③ 献立作成基準の作成

・献立の作成にあたり,設定された給与栄養目標量が確保できるよ

う,食品構成表,提供料理の種類,選択食の実施などの基準を作

成します。

食品構成表

献立作成基準

具体的実施事項 栄養管理基準

帳票類等

設定した給与栄養目標量及び献立作成基準に基づき献立を作成

します。献立作成に当たっては,調理工程に無理が生じないよう,

食数・発注・検収・調理作業等の内容に考慮します。

① 献立作成

・利用者の嗜好等を考慮した予定献立を作成します。

・食事を楽しいものとするために,地域性を生かす,季節感や行事

食を取り入れる等,変化を持たせた献立とします。

・健康増進法施行規

則第9条第第2号

・健康増進法施行規

則第9条第3号

予定献立表

予定給与栄養量

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② 献立表の事前掲示

・事前に献立の紹介や栄養成分表示を行う等,利用者への栄養情報

の提供を行うことで食事選択の幅が広がります。また,利用者自ら

が健康管理を行える食環境の整備へつなげることができます。

③ 予定給与栄養量の算出・目標量との確認

・予定献立の栄養量を算出し,給与栄養目標量に見合っているか確

認します。目標量に対し著しい変動がないことが重要です。

具体的実施事項 栄養管理基準

帳票類等

食事計画に基づき,適正に食事提供を行います。併せて,利用者

の特性に応じた栄養情報等の提供も行います。また,品質管理,衛

生管理上で必要な書類の記録を行い整備します。

① 予定献立どおりの食事提供及び品質管理

・一定の品質の食事を提供するため,量・味・温度等について数量

化した基準を設定した品質管理を行います。

② 栄養成分表示の実施

・利用者の食事選択の幅を広げ,自らの健康管理につなげるために,

栄養成分表示を行います。

③ 健康や栄養に関する情報の提供

・給食は,利用者が正しい知識を身に付け,より健康的な生活を送

るために必要な知識を得る良い機会ですので,各種媒体(献立表,

給食だより,卓上メモなど)を活用し知識の普及に努めます。

・複数献立や選択食(カフェテリア方式)などの場合には,適切な

料理の組合せ例を示すなど,利用者が自分にあった食事選択ができ

るように情報を提供します。

・健康増進法施行規

則第9条第1号

・健康増進法施行規

則第9条第2号

・健康増進法施行規

則第9条第3号

作業指示書

実施献立表

栄養指導媒体

情報提供用資料等

検収記録簿

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具体的実施事項栄養管理基準

帳票類等

給食関係会議などを活用し,関係各部門と連携を図りながら,給

食業務,提供された食事内容,利用者への影響等について多角的に

評価を行い,必要に応じて改善を図ります。また,施設における給

食管理・栄養管理の流れが確認できるよう,関係書類を整備します。

① 提供した食事の評価

・提供した食事量や形態・形状,温度,嗜好などが利用者に適して

いたか又は,利用者の状況から給与栄養目標量が妥当だったか否か

について評価を行います。(個別・集団)

・残食調査や嗜好調査等から,食事内容の評価を行います。

② 帳票の整備

・栄養管理の手順に従った帳票を整備することにより,効率的で質

の高い給食提供へつながります。献立表,利用者の性別・年齢別給

与栄養目標量の構成等の帳票を適時作成し,施設に整備します。

・衛生管理については「大量調理施設衛生管理マニュアル」その他

関係法規等を参考に実施します。

③ 給食運営全体の評価・改善

・給食関係会議を定期的に実施し,施設全体で給食運営及び栄養管

理の評価・改善を行い,より質の高い給食提供につなげます。

・健康増進法施行規

則第9条第1号

・健康増進法施行規

則第9条第4号

食事摂食(残食)

調査票

検食簿

嗜好調査等の結果

個別食事カルテ

衛生管理関係帳簿

4 組織体制

給食施設の栄養管理を円滑に進め,給食業務を適正に実施するためには,施設管

理部門・健康管理部門・給食関係部門等の各部門で連携を図り,業務内容を明確に

し,役割分担を行うとともに,施設全体として給食が利用者の健康管理につながる

ように目標を共有することが求められます。

図6のように,栄養管理業務を組織的に実施し,利用者の健康増進に資する給食

運営の体制整備を図ることが求められます。他部門との関連,担当職員の適正配置

や情報の入手などが円滑に行えるよう,給食運営管理体制を確立しておくことが必

要です。

給食を外部委託している場合においても,給食施設設置者と受託事業者で,栄養

管理・給食運営をどのように実施するか検討を行い,その上で役割分担を明確にし,

委託契約書等に明記しておくことが重要です。

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Ⅶ 栄養教育

1 栄養教育の意義

特定給食施設においては,栄養管理のされた食事そのものが教材になり,それを提

供することが栄養教育の場となります。したがって,毎日の給食を通して利用者が正

しい食習慣を身に付け,より健康的な生活を送るために必要な知識を習得するよい機

会となるのです。

また,各々の施設に応じ,利用者等に各種栄養指導用の教材を活用するなどして,

知識の普及に努めることは,さらに健全な食環境を整備することにつながります。

2 栄養教育の方法

(1) 個別教育

① 栄養相談

栄養相談は健康管理部門と連携して(場合によっては主治医又は産業医等の

指示を受ける)定期的に行い,その指導内容について記録をとり保管します。

栄養相談の記録は,SOAP式等で記載すると,情報の共有がしやすくなりま

す。

・S(Subjective Data:主観的データ)

利用者の訴え,管理栄養士・栄養士が面接で得た情報,食習慣,嗜好等

・O(Objective Data:客観的データ)

職業,身長,体重,BMI 等の個人データ

血圧や血糖等の臨床検査データ

既往症,家族歴,服薬内容,栄養摂取量,運動量等の聞き取り情報等

・A(Assessment:評価・考察)

Sの主訴に対する解決策,Oのデータによる栄養評価

その他栄養ケアの問題点,利用者の受け入れ状況,管理栄養士・栄養士の考

え等を記入

・P(Plan:指導の計画)

SOAより具体的な栄養計画を立案

(2) 集団教育

① 栄養講話・講演会

食や健康に関する普及月間や施設での計画に従って実施するなど,効果的な

方法を企画しましょう。内容や対象によっては,より少人数で実施すると効果

的です。

② 料理講習会

事業所や施設では,クラブ活動やリハビリテーションとして行ったり,疾病

対象別やテーマを設定して行うと効率的でかつ効果的な教育が実施できます。

その際は,衛生面には十分注意することが必要です。

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3 栄養知識の普及

献立表の配布や掲示,栄養成分の表示,食堂内でのポスターの掲示,テーブルの

卓上一口メモの設置,給食時間における放送(その日の食事と関連ある情報,その他

栄養知識),施設内給食だよりの発行,施設内新聞への栄養ニュース・栄養メモの掲

載や生活習慣病予防食に関する解説事項の掲載などを行います。

また,複数献立やカフェテリア方式のように,利用者自身が献立を選択する場合,

選択した献立によっては食品の種類や栄養素が偏り健康状態に悪い影響を及ぼすこ

ともあるため,モデル的な組み合わせを提示することで,利用者の自己の健康管理に

役立てることができます。

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Ⅷ 事務管理

給食利用者が安心しておいしく食べられる食事を提供するには,栄養管理及び給食管

理の専門職である管理栄養士・栄養士が,利用者の健康・栄養状態の改善を目的とし,

その特性に合わせた栄養計画,食事計画に基づき食事の品質管理を行い,提供した食事

内容が利用者にとって適切な内容であったかどうかを他職種と連携しながら評価し,次

の栄養計画,食事計画の改善につなげていくことが大切です。

1 関係帳票類と記録

栄養事務を大別すると以下の3つに区分されます。

① 栄養管理に伴う事務

② 給食管理に伴う事務

③ 衛生管理に伴う事務

帳票類の保存は関係法令を参考に期間を決めて,当該施設に保管することが必要で

す。電子媒体での保管も同様の考え方とします。

必要帳簿の種類及び様式については,その目的に沿って独自に設定すべきものです

が,参考までに例示します。

表5

作成の主旨 帳簿・書類の種類(名称)

栄養基準量の設定 年齢構成表

給与栄養目標量(栄養管理基準)

食品構成表

目標に沿った献立の作成及び実施 予定(実施)献立表

発注伝票

納品伝票及び給食物資受け払い簿

検討・反省 検食簿

食事摂取量記録簿

嗜好調査結果

残食調査結果

業務日誌

運営・管理 栄養管理委員会記録簿

委託契約書(委託契約を交わしている場合)

栄養教育 栄養相談記録簿

栄養教育報告書(栄養指導依頼箋及び報告書)

栄養教育ポスター,チラシ等

栄養報告 栄養管理報告書

衛生管理 健康診断記録簿

検便記録簿

衛生管理記録簿

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2 栄養報告書(様式名:栄養管理報告書)

鹿児島県では,特定給食施設における給食運営及び栄養管理等の状況を把握する

ために,健康増進法第24条第1項及び鹿児島県健康増進法施行細則第4条の規定によ

り,10月に実施した給食の状況について栄養報告書(様式名:栄養管理報告書)を1

通作成し,翌月の15日までに,管轄する保健所長への提出を求めています。(管轄

保健所は裏表紙に記載のお問合せ先を参照ください。)

報告書様式は施設種別ごとに異なります。

3 コンピュータによる栄養管理

コンピュータによる管理システムの導入は,単に事務レベルの省力化にとどまらず

多くの役割・効果が期待できます。

特に,利用者個々人の栄養管理を行うにあたっては,エネルギー及び微量栄養素を

含む栄養素の管理が必要でありコンピュータによる管理が不可欠です。

また,利用者への栄養教育等の教材として,基本情報と豊富なデータから抽出や加

工が容易になり,より充実した情報の還元が可能となります。

様式(栄養管理報告書)については,p39~p52を参照してください。

鹿児島県ホームページからも入手できます。

ホーム> 健康・福祉> 健康・医療> 健康づくり> 栄養・食生活> 特定給食施設各種届出

管轄保健所は裏表紙に記載のお問合せ先を参照ください。

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Ⅸ 衛生管理

1 衛生管理体制

給食施設の運営は,衛生的かつ安全に行われていることが大前提となります。給食

施設等における食中毒を予防するために,HACCPの概念に基づき,調理過程における

重要管理事項を示した大量調理施設管理マニュアル(以下,「大量調理マニュアル」

とする)が作成されています。

大量調理マニュアルは,同一食材を使用し1回300食以上又は1日750食以上を提供す

る調理施設に適用されるものですが,食中毒を予防するため,この要件に該当しない

施設においても可能な限りマニュアルに基づく衛生管理に努めることが求められま

す。

また,食品を取り扱う関係者が健康に留意し,衛生に関する知識を持ち,食品を衛

生的に取り扱うことが大切です。

そのためにも,給食施設独自の「食中毒・感染症発生時のマニュアル」を作成し,

研修会や実地訓練によるマニュアルの検証を実施し,平常時から職員全員で共有して

おくことが大切です。

2 衛生管理チェック

(1) 調理従事者の健康管理

① 定期的な健康診断及び月1回以上の検便を受ける。

・ 検便で食中毒菌等が検出された場合は医師に相談し対応する。

② 毎日の作業前に健康調査を行い,異常がある場合は対策を講じる。

③ 家族に,下痢・嘔吐や風邪様症状の者がいた場合は,責任者に申し出て,指

示を仰ぐ。

(2) 調理従事者の衛生管理

① 調理作業中は,清潔な外衣・帽子を着用し,調理施設内専用の履物を使用す

る。

また,調理室内での喫煙や飲食,その他食品衛生上不衛生な行為はしない。

② 調理作業の前後,作業中,用便後は,十分な手洗い及び殺菌を行う。

③ トイレに入る時は,作業着を脱ぎ,長袖は手首までまくる。トイレには,専

用の履物を用意する。また,トイレは調理従事者等専用のものが設けられてい

ることが望ましい。

④ 食品に直接触れる作業の従事者は,次のことを守る。

・ 爪は常に短くしておく。

・ 指輪やマニキュア,腕時計などはしない。

・ 手袋を使用する場合であっても,着用前に十分な手洗いを行う。

・ 作業中は定期的に手袋の交換を行う等,手袋を過信しない。

3 食品の衛生管理

(1) 食品取扱の原則

【細菌性食中毒予防の3原則】

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・ 食中毒菌等や有害物質を食品につけない(清潔・洗浄)

・ 食品に付着した食中毒菌等を増やさない(迅速)

・ 食品に付着した食中毒菌等をやっつける(加熱・冷却)

【ノロウイルス食中毒予防の4原則】

・ 調理施設内に持ち込まない。

・ 施設内で拡げない。

・ 加熱する(中心温度85℃から90℃で90秒間以上)。

・ 食品につけない。

(2) 食品取り扱いのポイント

① 体調等に異常がある従事者は食品を取り扱わない。

② 手洗い設備には,手洗いに適当な石けん,爪ブラシ,ペーパータオル,殺

菌液等を定期的に補充し,常に使用できる状態にしておき,手洗いは流水・

石けんによる2度洗いを原則とし,作業途中でもこまめに行う。

③ 原材料の仕入れは計画的に行い,納品時や使用前に点検(品質・期限表示

等)し,先入れ,先出しを行う。

④ 食品は適切な場所,温度で保存する。

⑤ 食品及び器具や容器の取り扱いは,床面から60㎝以上の場所で行う。

⑥ 調理施設を清潔に保つ。

⑦ 機器,器具類は洗浄,殺菌を十分に行う。

【食品の保存温度】

10℃前後 :生鮮野菜・果物

10℃以下 :食肉,卵,乳,乳製品,豆腐,ハム

5℃以下 :生鮮魚介類

-15℃以下 :冷凍食品

4 調理時の衛生管理

(1) 加熱は,中心部が75℃,1分間以上で行う(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれ

がある場合は85~90℃,90秒間以上)。

(2) 調理済食品は,喫食まで適切に温度管理する(10℃以下又は65℃以上)。

(3) 原材料から調理済食品への二次汚染を防ぐ(調理器具の使い分け等)

(4) 前日調理をしない。当日調理であっても,調理後2時間以内の喫食とする。

(5) 保存食(検食)は原材料(洗浄・殺菌は行わない)と調理済食品(配膳後の状

態)ごとに,50g程度を清潔な容器に保存する(-20℃以下,2週間以上保存)。

【ノロウイルスによる食中毒・感染症の予防対策】

・ 二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品は,85~90℃で90秒以上加

熱する。

・ 調理前,用便後,汚れたものを触った後の手指は,流水・石けんによる2

度洗いを行う。

・ 調理器具やふきんなどは,煮沸又は塩素系消毒剤(200ppm)を使用し消毒

する。

・ 下痢や嘔吐などの症状がある場合は,食品を取り扱う業務には従事しない。

・ 有症者の使用した食器などは,調理室へ持ち込まない(調理室外で消毒)。

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・ 調理従事者は吐物の処理を行わないことが望ましい。

【食物アレルギー対応食の調理・提供における注意事項】

・ 対象者について正確な情報を把握する(症状,除去食品,除去レベル,発症

時の対応など)。

・ 使用する材料や調味料等は,アレルゲンのない食品であるか複数人で確認す

る。

・ 一般献立とは分けて調理する(調理時間をずらす,専用器具の使用,専用調

理場所の確保,専従調理者の配置など)。

・ 調理中の飛び散りや,調理従事者の衣服や手袋を介した混入に注意する。

・ 誤配や誤食を防止する(専用食器,複数人での確認など)。

5 保存食(検食)

保存食(検食)は万一,食中毒等の事故が発生した場合,その原因調査と再発防止

等を確実に行うために重要です。適正な保存と管理をし献立表も保存しておきます。

保存方法は,専用の冷凍庫に原材料及び調理済み食品を食品ごとに清潔な容器(ビ

ニール袋等)に入れ密封し日付等の記入を行い,マイナス20度以下で14日間以上保存

します。

(1) 原材料の保存

・ 納品又は購入時に全品50g程度採取し,マイナス20度以下の専用冷凍庫で保

管する。14日間以上保管し,期間を過ぎたものはその都度廃棄する。

・ 納品日に検品後の状態で洗浄せずに採取,又は下処理時に未洗浄のものを採

取する。

・ 保存食(検食)専用の清潔な容器(ビニール袋等)に1品ずつ入れ密封し,大

袋などにまとめて入れ日付を記入する。

・ 原材料の採取時は,専用の包丁,まな板を使い,包丁・まな板・手指からの

二次汚染を受けないようにする。

(2) 調理済み食品(生で喫食する食品含む)の保存

・ 配膳後の状態で,検食専用の清潔な容器(ビニール袋等)に一品50g程度採

取する。

・ 朝・昼・夕食等,その都度採取し保管する。

・ マイナス20度以下の専用冷凍庫で14日間以上保管する。

6 調理設備・調理器具等の衛生管理

・ 設備・器具類は食数に応じたものを備え,目的に応じた使い方をする。

・ 機器・器具類に破損等がないか使用前後に点検を行う。

・ 加熱しないでそのまま提供する食品を取り扱う設備・器具類は,作業前に洗浄・

殺菌する。

・ 機器・器具類及び食器は,調理作業終了後に洗浄・殺菌を行う。

・ 食器・器具類等は,戸棚や保管庫で衛生的に保管する。戸棚の材質はステンレ

ス等の金属が望ましい。木製戸棚は避ける。

・ 包丁・まな板などの器具,容器等は食品別・用途別に専用のものを用意し,混

同しないようにして使用する。使用後は洗浄し,殺菌後十分に乾燥させる。

・ 水道水は,毎日の始業前及び調理作業終了後に,色・濁り・におい・異物の確

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認を行い記録する。貯水槽を設置している場合は,加えて,遊離残留塩素が0.1mg/L

以上であることを確認し記録する。

7 調理室の衛生管理

(1) 施設設備の整備

施設とは,食品を製造,加工,調理,貯蔵する等食品の取り扱いに関係のある

すべての施設をいう。

① 施設の周辺

施設周辺の地面の土やほこりが舞うことのないように,たとえばコンクリー

トなどで覆い,耐水性に優れ排水がよく,清掃しやすい状態が望ましい。

② 施設

隔壁等により,汚水溜,動物飼育場,廃棄物集積場等不潔な場所から完全に

区別する。湿度 80%以下,温度 25℃以下が望ましい。

衛生的な管理に努め,みだりに部外者が立ち入ることや不必要な物品等を置

くことはやめる。

③ 床,内壁,天井

床の構造には,ドライシステム(乾燥した床面)とウエットシステム(絶え

ず水を流す床面)があるが,衛生管理ではドライシステム化を積極的に図るこ

とが望ましい。

④ 区画

食品の調理過程ごとに,汚染作業区域(検収場,原材料の保管場,下処理場),

非汚染作業区域(さらに準清潔作業区域(調理場)と清潔作業区域(放冷・調

整場,製品の保管場)に区分される。)を明確に区別すること。

※ 各区域を固定し,それぞれを壁で区画する,床面を色別する,境界にテー

プをはる等により明確に区画することが望ましい。

⑤ 採光

食品や調理済の製品に万一,虫や異物が付着していた場合に見分けられるよ

うに,また,調理器具や機械の摩耗や剥離などを発見できるよう,照明の明る

さや色,位置に工夫する。

⑥ 作業場

作業場は適切な広さの確保が必要である。調理従事者が互いに体が触れたり

するような狭い作業場では,調理作業がやりにくいばかりでなく,施設内の洗

浄がおろそかになる。また,人が細菌の汚染源となることが多く,重大な事故

発生の原因となりかねない。

⑦ 施設の管理

施設の出入り口及び窓は極力閉めておくとともに,外部に解放される部分に

は網戸,エアカーテン,自動ドア等を設置し,ねずみ・昆虫等の侵入を防止す

る。

⑧ 作業場の区画ごと,また使用しやすい位置での手洗い・消毒設備の設置

食中毒防止の基本は手洗いであり,区画ごとに手洗い設備を設置することが望

ましい。

・ 各区分の入口の近くや作業中に頻繁に手を洗える場所に設置する。

・ 手洗い専用とし,食器具の洗浄設備と混用しないようにする。

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・ 調理台や食器用シンクの近くに設置する場合は,それらより一段低い場所

に設置し,飛沫が飛ばないように配慮する。

・ 手洗い設備は,足踏み式や自動センサー方式のものなどにし,蛇口やハン

ドル等を直接手で操作しない構造のものが望ましい。

・ 石けん,爪ブラシ,ペーパータオル,殺菌液等を定期的に補充し,常時使

用可能にしておく。

⑨ 専用の更衣室,便所

便所,休憩室及び更衣室は,隔壁により食品を取り扱う場所と区分する。調

理場等から 3m以上離れた場所に設置することが望ましい。

・ 施設には,調理従事者の数に応じた清潔な更衣室を設け,専用の衣服,履

物,帽子,マスクを着用してから作業にとりかかるようにする。履物の交換

が困難な場合は,各作業区域の入口手前に履物の消毒設備を設ける。

・ 便所は,非汚染作業区域である調理・加工室や放冷・盛付け室を通過する

ことのないよう配置する。また,専用の手洗い設備,専用の履物を備える。

(2) 施設設備の衛生管理

① 床の衛生管理

施設の床面(排水溝を含む)及び内壁のうち床面から1mまでの部分は1日に1

回以上,施設の天井及び内壁のうち床面から1m以上の部分は1月に1回以上清掃

し,必要に応じ洗浄・消毒を行う。

なお,洗浄・消毒は全ての食品が調理場内から完全に搬出された後に行う。

② 床の消毒

・ 消毒は,月1~2回程度の頻度で行う必要があるが,肉,魚,卵など,汚染

度が高い食品が落ちたとき,細菌検査によって大腸菌が検出されたとき,又

は見た目に汚れていると思われる際には,十分な洗浄後に消毒が必要である。

・ 広範囲の場合は,次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用するが,部分的な消毒

の際は,アルコール消毒も有効である。

・ 床の熱湯消毒は,消毒に必要な温度が保てないため効果がない。

③ 害虫駆除

施設におけるねずみ・昆虫等の発生状況を1月に1回以上点検するとともに,

駆除を半年に1回以上(発生を確認した時にはその都度)実施し,その実施記録

を1年間保管する。

【衛生に関する情報・参考資料】

○大量調理施設衛生管理マニュアル:厚生労働省

URL:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0

000168026.pdf(H29.6.16最終改正)

○調理場における衛生管理&調理技術マニュアル:文部科学省

URL: http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1306690.htm

○学校給食衛生管理基準:文部科学省

URL: www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1283821.htm

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Ⅹ Ⅰ 危機管理(食中毒・感染症)

Ⅹ Ⅱ 危機管理(災害時に対する備え)

1 食中毒・感染症発生時の対応

食中毒(疑いを含む)や感染症が発生した場合は,事故の拡大と再発防止及び原因

究明のため,迅速な対応が必要です。また,普段から保存食(検食)の保管や調理記

録の整備,非常用献立の作成及び備蓄品の整備をしておく必要があります。

【食中毒(疑い)・感染症が発生したら】(例として)

(1) 発症者の受診と関係者への連絡

施設の責任者は,患者の発生を確認したら医療機関に受診させるとともに関係

機関への連絡を行う。

(2) 給食提供の中止と調理施設の現状保持

給食の提供をただちに中止し,調理施設の現状を保持する。施設の消毒は保健

所の調査の終了を待って行うので,保健所からの指示により行動する。

(3) 患者の発生状況の把握

利用者や職員などの健康状態(特に嘔吐・腹痛・便の状態・発熱等)を確認し,

患者数や発生状況を把握する。

(4) 検体の確保

患者の吐物,便等原因調査に役立つ検体を保管する。

(5) 喫食物やメニューの調査

2週間分の献立,保存食(検食),原材料の購入先リストや衛生管理の関係帳簿

類を確認する。また,調理及び配膳までの時間的経緯,温度を確認する。

(6) 調理従事者の健康状態の把握

調理従事者の健康状態・体調・切り傷の有無を把握し,検便検査を行う。

【普段から整備しておくこと】

・保存食(検食)の保管

・原材料,食品等購入状況,調理加工状況,献立表等の書類の整理及び保管

給食施設においては「災害時対応マニュアル」を作成し,備蓄品の整備や災害時の連

携体制を明確化する等の備えが必要です。また,研修会や実地訓練によるマニュアルの

検証を実施し,平常時から職員全員で共有することが大切です。

災害時には,ライフラインの寸断や施設の損壊などの状況下でも,継続的な食事提供

と早期の給食業務の平常化が求められます。また,場合によっては,周辺地域の住民へ

の支援・協力を行う施設としての役割を担うこととなります。

各施設においては,施設の特性に考慮した体制整備を図り,災害訓練等によりその対

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応の周知徹底を行い,災害の発生に備えることが重要です。

また,災害時は食品流通が正常に機能しない状況も予測されるため,食品確保につい

て食材業者と契約を締結しておく等の対応策を図ることも望まれます。

1 自然災害発生に備えた取組と発生時の対応

(1) 非常用献立の作成及び備蓄品の整備

ライフラインの寸断や,通常の食品流通ルートが機能しない状況を想定した非常

用献立を作成し,これに基づいた食品及び物品の備蓄が必要です。

① 非常用献立の作成

各施設の特性に合わせた非常用献立を作成します。献立の作成にあたっては,

通常の流通経路が確保出来なくなることを想定し,応急対応が整うまでの 3日分

程度を目安にします。

【備蓄食品の望ましい条件】

・常温保存,長期保存が可能で個別包装されている。

・調理済みで,開封するだけで食べられる。(水や火が不要)

・持ち運びに便利である。(かさばらない,重すぎない)

・対象者の特性に見合っている。(栄養素が確保出来ておいしく食べやすい)

② 水の確保

飲料水として1人1日2~3リットルを確保できるように数カ所に分散して保管

します。平常時から,水源を確保するための調査を実施するとともに,耐震性貯

水槽,給水ポンプ,ポリ容器,浄水器等の確保・整備を図る必要があります。

③ 熱源の確保

非常用献立に基づき,代替熱源として複数を確保しておきます。

・ガス:プロパンガスボンベ,卓上カセットボンベ等

・電気:自家用発電機等

・簡易かまど:固形燃料,薪,炭,灯油等

④ 調理器具の確保

非常用献立に基づき,必要な調理器具を確保します。

・ガス:プロパンガスコンロ,卓上カセットコンロ等

・電気:電磁用調理器,電熱器,電磁用調理なべ等

・簡易かまど:ブロック,ドラム缶,薪炭直火釜,大鍋,野外炊飯器等

・その他:アルミホイル,ラップ,ポリ袋,輪ゴム,缶切り等

⑤ 食器の確保

食器洗浄用の水が確保出来ないことを想定し,ディスポ食器,割り箸,ストロ

ー,使いすてスプーン・フォーク等を非常食献立に見合った種類,量を準備しま

す。

⑥ 調理施設内の器具の安全確保

戸棚や機器類の転倒防止のため,壁面や床面にそれぞれ固定しておきます。ま

た,戸棚内の食器や器具等もストッパーを利用する等し,落下防止対策を図りま

す。

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⑦ 給食施設種別ごとの備蓄品

(病院)

・ 患者の病態に対応できる非常食の備えが必要になります。(たんぱく質制限

食,アレルギー除去食,嚥下対応食,経管栄養食等)

・ 災害によって負傷した人たちや,在宅困難になった人たちを受け入れられる

ような体制整備が必要です。

(高齢者・障害者施設等)

・ 病弱者や咀しゃくや嚥下等の摂食障害に対応するため,流動食,ソフト食,

かゆ類を備蓄しておきます。

・ 高齢の災害弱者等を受け入れられるような体制整備が必要です。

(児童福祉施設)

・ 粉ミルク,離乳食のベビーフード,幼児食の主食やレトルト食品,おやつ,

アレルギー対応食等を備蓄します。

・ 調乳セット一式,離乳食用の食器も確保する必要があります。

(2) 備蓄品保管の留意点

① 購入

非常食は,通常の食費とは別に予算を組み,購入することが望まれます。また,

通常使用している食材の中で,保存が可能な缶詰や米等を多めにストックしてお

き,非常時に活用するなど,無駄や無理のない購入を工夫してください。

経費については,備蓄としての予算化,ランニングコスト(給食費から支出)

等の方法がありますが,各施設の状況に応じた方法で確保します。

② 管理

備蓄品のリスト,非常用献立,保管場所等については明記し周知徹底を図ると

ともに,職員全体で共通認識を図ることが必要です。備蓄品は,落下の危険がな

く,非常時でも取り出しやすい場所に分散して保管します。

③ 更新

非常食の品質を確保し,無駄なく活用するために,賞味期限の範囲内で計画的

に入れ替えを行います。防災の日や防災訓練等において,訓練の一環として非常

食の試食や,通常の献立に計画的に組み入れる方法もあります。

(3) 外部との連携体制

① 関係機関との連携

災害の規模にもよりますが,施設内だけでは対応困難な場合もあります。そこ

で,平常時より地域の災害対策や体制を確認し,外部との連絡先を明確にしてお

き,必要な場合は迅速に支援を要請できるように準備しておくことが必要です。

② 給食施設の相互支援体制の確立

給食施設は,生命をつなぐ食事を提供するという非常に重要な役割を担ってい

ます。災害時に給食の機能を発揮するためには,平常時からの備えと給食施設間

のネットワーク(物資や人材育成に関する)の構築が必要です。近隣や同系列の

給食施設間の相互支援体制により,緊急時あるいは長期にわたる食や人材(栄養

士,調理師等)の確保を図り,災害時でも通常の食事提供に近づけられる体制づ

くりが望まれます。

(4) 災害発生時の対応

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① 被災状況把握と対応策の決定

施設や厨房の被害状況,ライフラインの状況,配膳ルートの状況,通信手段等

を確認し,食事対応方針を検討・決定します。

② 備蓄食品を活用した食事提供

被災状況に応じて,非常用献立を活用するなどして食事の提供に努めます。冷

蔵庫や冷凍庫内の在庫食品が使用可能であれば,優先的に活用します。また,食

材納入業者と連絡をとり,納入の可否について状況把握を行います。

③ 衛生管理

災害時は衛生環境が悪化しているため,食中毒や感染症などの発生防止につい

ては特に配慮が必要です。平常時から,手洗いの代替方法,消毒方法,ゴミの分

別等については施設内で検討し,マニュアル化しておくことが必要です。

【危機管理に関する情報・参考資料】

○保育所における災害時対応マニュアル-給食編-:(公社)日本栄養士会

URL: https://www.dietitian.or.jp/data/guide/h25-1.pdf(H29.7 修正)

○特定給食施設における非常・災害時対策チェックリスト:宮城県

URL:http://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/269098.pdf

○新潟県災害時栄養・食生活支援活動ガイドライン:新潟県

URL:http://www.kenko-niigata.com/21/shishin/sonotakeikaku/

saiigaijieiyou.html

○新潟県災害時栄養・食生活支援活動ガイドライン―実践編―:新潟県

URL:http://www.kenko-niigata.com/21/shishin/sonotakeikaku/

jissennhenn.html