電磁気学で使う数学:第6 - 東京大学nkiyono/kiyono/711-06.pdf · 2011-11-29 ·...
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2011年度全学自由研究ゼミナール
電磁気学で使う数学:第6回11月 17日 清野和彦
1.7 ベクトル場の面積分
1.7.1 ベクトル場の面積分とは何か
スカラー場の面積分では視覚的なイメージを描くことが難しかったのですが、電磁気学で本当に
必要なベクトル場の面積分の方は、以下のような比較的イメージを描きやすい概念を捉えるものと
して定義されます。
例えば、空間に水が充満しているとします。水は流れたり渦を巻いたりいろいろと動いているわ
けですが、その流れがいつも同じで時刻に依存していないとします。すると、各点にその点での水
の速度ベクトルを対応させることでベクトル場 F⃗ ができます。一方、同じ空間内に曲面 S を考え
ます。(と言っても本当に曲面を空間においてしまうと水の流れを妨げてしまうので、想像上で設
定するだけです。)さらに、スカラー場の面積分のときと違って、曲面 S に表裏を決めます。この
設定で、ベクトル場 F⃗ の曲面 S での面積分を、
単位時間に S を裏から表へ通過した水の量
になるように定義したいのです。ただし、表から裏に通過した水の量はマイナスで換算します。
注意. 空間はイメージしにくいという人は、世界を「平面」だとして考えてみて下さい。例えば、ペアガラスのように二枚のガラス板をほんのちょっとだけ隙間をあけて固定し、その間の薄い空間を「平面世界」と考えてみて下さい。そして、二枚のガラスの間に充満した空気や水が時間によらずにいつも同じように流れているとします。また、ガラス板にマジックで曲線を一本引きます。このとき、単位時間にこの曲線を通過した空気や水の量を捉えようというわけです。このように、世界が平面だとすると、ベクトル場の面積分に当たるものは「ベクトル場のもう一つの線積分」とでも呼ぶべきものとして定義されることになります。★
1.7.2 ベクトル場の面積分を定義するには何がわかればよいか
ベクトル場の線積分のときと同じように、ベクトル場の面積分もスカラー場の面積分を通じて定
義します。つまり、
• 曲面 S から S を定義域とするベクトル場 n⃗ を上手く作る。
• ベクトル場 F⃗ と n⃗ とのスカラー積を取ってスカラー場 F⃗ • n⃗ を作る。
• このスカラー場に対し、第 1.6節で定義したスカラー場の面積分∫
SF⃗ • n⃗dS を与える。
このようにしてベクトル場の面積分を定義しようというわけです。だから、それが前小節でイメー
ジした値になるような n⃗ を見つけて、座標を使った式で n⃗ を書き表す、ということが目標になり
ます。
先に記号を決めてしまいましょう。これから定義しようとしている、ベクトル場 F⃗ の(表裏の
指定された)曲面 S での面積分を、このゼミでは∫S
F⃗ • dS⃗
第 6 回 2
と書くことにします。n⃗dS をまとめて dS⃗ と書くことにするという気持ちです。
まず、一番簡単な場合として、
曲面 S は平面(もちろん広さが有限のもの)、F⃗ はどの点でも同じベクトル
で考えてみましょう。
この設定は座標系を使っていませんので、もちろん座標系に依存しません。つまり、都合がよい
ように座標系を勝手にとって計算してよいわけです。そこで、S が xy 平面に含まれてしまい、z
軸が S を裏から表に貫いているように正規直交座標系を取りましょう。この座標系でベクトル場
F⃗ を成分表示したものを F1
F2
F3
とします。今 F⃗ は場所によらないとしているので、F1, F2, F3 は定数です。このとき、∫
S
F⃗ • dS⃗ = F3 × “S の面積”
であることは納得してもらえと思います(図 22)。この値を素直に積分で書けば、xy 平面上の領
域 S での定数関数 F3 の 2重積分 ∫S
F⃗ • dS⃗ =∫
S
F3dxdy
になります。� �
S
F3
F1
F2
水の秒速ベクトル(どこでも一定)
1秒間に S を通過する水
x
z
y
図 22: 流速がいつでもどこでも一定であるような水の流れ。� �
第 6 回 3
この場合を踏まえて、S は同じく平らなままで、F⃗ が場所によって違う一般のベクトル場のとき
を考えてみましょう。上と同じように S が xy 平面に含まれる正規直交座標系を取ったとき、F⃗ が F1(x, y, z)F2(x, y, z)F3(x, y, z)
と成分表示されたとすると、 ∫
S
F⃗ • dS⃗ =∫
S
F3(x, y, 0)dxdy
となります。
注意. このことは重積分の定義そのものから証明できます。大筋を書いておきましょう。S の分割と各小部分Sk の代表点 Pk(その座標を (xk, yk, 0) とします)を一つ選んだとき、Sk 上はどこでもベクトルが F⃗ (Pk)だとして計算した面積分の値は本当に欲しい面積分の値を近似する「リーマン和」になっている、つまり分割を細かくした極限は
∫S
F⃗ • dS⃗ になります。一方、前段落の「F⃗ が場所によらない場合」の考察から、その「リーマン和」を式で書くと、 ∑
k
F3(xk, yk, 0) × “Sk の面積”
となりますが、これはまさに ∫S
F3(x, y, 0)dxdy
のリーマン和そのものです。これで(細かい部分は除いて)証明できました。★
さて、この場合、見つけたい S 上のベクトル場 n⃗ はなんでしょうか。上の計算には z 成分
F3(x, y, z) だけが現れて、x 成分 F1(x, y, z) と y 成分 F2(x, y, z) はありません。それはなぜかと言えば、
S に直交する成分だけが面積分の値に効く
からです。よって、n⃗ はスカラー積を取ることで z 成分だけを取り出すベクトル、すなわち S 上
のすべての点で
n⃗ =
001
とすればよいことがわかります。これは、
S の各点で S に直交する単位法線ベクトルで、S の裏から表に向いている
という性質によって特徴付けられる定ベクトル場です。
この「S が平らな場合の n⃗ の特徴付け」を一般の曲面 S の場合に拡張すれば我々の目標が達成
できるでしょう。
1.7.3 曲面 S についての条件
そのようなベクトル場 n⃗ を考えようとすると、次の二点が問題になります。
• S に表裏は付けられるのか。
• S に「直交する」とはどういう意味か。
第 6 回 4
第 1点については、
表裏の区別の付けられる曲面しか考えないことにする
というのが答です。「表裏の区別が付けられない曲面」の代表格はメビウスの帯というものです(図
23左)。また、S が自分自身で交わってしまう自己交叉のある曲面も考えないことにします(図 23右)。あとで説明する n⃗ の取り方を読んでもらえるとわかるのですが、自己交叉上の点で n⃗ を一
つに決めることができないのです。� �自己交叉
図 23: メビウスの帯(左)と自己交叉のある曲面(右)。� �第 2点の「直交」については、S が曲がっている以上「S 全体と直交する」ということを考える
のは無意味で、
S の各点で「直交」する
ということを考えます。だから、一般には n⃗ は定ベクトルではなく場所によって違うベクトルで
す。S が平面の場合が特別だということになります。とはいえ、ベクトルと「点」は直交しようが
ありません。どう考えればよいかは、既にスカラー場の面積分の定義を考えたときに出てきていま
す。曲面 S を分割したとき、各小部分という曲がったものに対し、
代表点における接平面上の平行四辺形で近似する
ということをしました。この節の目標であるベクトル場の面積分では、
この平行四辺形を底面とし代表点で F⃗ が取るベクトル F⃗ (Pk) をもう一つの辺とする平行六面体の体積を足し合わせたもの
が、近似値である「リーマン和」になるのです。ということは、「高さ」の役割を果たすのは代表
点での F⃗ の値 F⃗ (Pk) そのものではなく、
F⃗ (Pk) の接平面に直交する成分
です。よって、S 上の点で「直交」するベクトルとは、
S 上の点で、その点における接平面に直交するベクトル
のことである、ということになります。だから、S として自己交叉やとがったところのないなめら
かなものを考えれば、「直交」ということを考えることができます。
第 6 回 5
1.7.4 S のパラメタ付けを使って n⃗ を表示するには
以上により、我々の探している S 上のベクトル場 n⃗ は、
S 上の各点でその点の接平面に直交する単位ベクトルで、S を裏から表へ貫く向きを
向いている
というものであることがわかりました。あとは、これを式で書くことができればよいわけです。ス
カラー場の面積分のときと同様に、空間に正規直交座標系 xyz を入れ、S(の一部)がパラメタ
(s, t) ∈ E によって、
x = ξ(s, t), y = η(s, t), z = ζ(s, t)
とパラメタ付けられているとします。(E は st 平面におけるパラメタの範囲です。)また、いちい
ち x = ξ(s, t), y = η(s, t), z = ζ(s, t) と書くのが面倒な場合、写像の記号を使って、
T : E ∋ (s, t) → (ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t)) ∈ S ⊂ R3
と一文字 T で表すのも第 1.6節と同様です。さて、S 上の点 P0 を一つ決め、P0 で S に接する接平面を具体的に考えてみましょう。P0 の
座標を (x0, y0, z0)、パラメタの値を (s0, t0) とします。第 1.6節にも出てきたように、t に定数 t0
を代入してできる s のみをパラメタとする曲線
T (s, t0) = (ξ(s, t0), η(s, t0), ζ(s, t0))
は P0 を通る S 上の曲線なので、その s = s0 での接線 x
y
z
= (s − s0)
ξs(s0, t0)ηs(s0, t0)ζs(s0, t0)
+
x0
y0
z0
は、S の P0 での接平面に含まれます。同様に、s に定数 s0 を代入してできる t のみをパラメタ
とする曲線
T (s0, t) = (ξ(s0, t), η(s0, t), ζ(s0, t))
の t = t0 での接線 x
y
z
= (t − t0)
ξt(s0, t0)ηt(s0, t0)ζt(s0, t0)
+
x0
y0
z0
も、S の P0 での接平面に含まれます。平面は二直線で決まりますので、この二直線に直交するこ
とと接平面に直交することは同じことです。
上の二直線に直交するベクトルとは、二つのベクトル
Ts(s0, t0) =
ξs(s0, t0)ηs(s0, t0)ζs(s0, t0)
と Tt(s0, t0) =
ξt(s0, t0)ηt(s0, t0)ζt(s0, t0)
の両方に直交するベクトルのことです。そこで、与えられた二つのベクトルに直交するベクトル
を、与えられたベクトルの成分で表す一般的な式を考えましょう。
第 6 回 6
1.7.5 ベクトル積
空間に正規直交座標系を一つ固定します。二つのベクトル a⃗ と b⃗ をその正規直交座標系で成分
表示したものを、それぞれ
a =
a1
a2
a3
, b =
b1
b2
b3
とし、この二つに直交するベクトル x⃗ の成分表示
x =
x1
x2
x3
を求めましょう。ただし、「a⃗ にも b⃗ にも直交する」という条件で x⃗ が決まるために、つまり、a⃗
と b⃗ で一つの平面が決まるために、a⃗ と b⃗ は平行ではないとします。
条件はスカラー積を使って
a⃗ • x⃗ = b⃗ • x⃗ = 0
と書くことができます。これを成分で書くと、
a1x1 + a2x2 + a3x3 = 0
b1x1 + b2x2 + b3x3 = 0
という連立 1次方程式になります。解きましょう。例えば、1番目の方程式の b3 倍から 2番目の方程式の a3 倍を引くことにより、
(a1b3 − b1a3)x1 + (a2b3 − b2a3)x2 = 0
が得られ、また、1番目の方程式の b2 倍から 2番目の方程式の a2 倍を引くことにより
(a1b2 − b1a2)x1 + (a3b2 − b3a2)x3 = 0
が得られます。よって、t を任意の実数として、
x1 = t(a2b3 − b2a3), x2 = t(a3b1 − b3a1), x3 = t(a1b2 − a2b1)
がこの連立 1次方程式の解です。今、長さについての条件を課していないので、二つのベクトルに直交するベクトルは 0⃗ も含めてちょうど「1次元分」あることになります。その不定性をパラメタt が担っているわけです。
我々が欲しいベクトルは単位法線ベクトルでした。その条件、すなわち ∥x⃗∥ = 1 を満たすのは
±1√(a2b3 − b2a3)2 + (a3b1 − b3a1)2 + (a1b2 − a2b1)2
a2b3 − a3b2
a3b1 − b3a1
a1b2 − a2b1
と成分表示される二つのベクトルです。ここで、分母の長ったらしい式にどこかでお目に掛かった
ことがある気がしませんか? そう、これは「a⃗ と b⃗ の決める平行四辺形の面積」です。スカラー
第 6 回 7
場の面積分で、積分したスカラー場に掛ける「補正項」がまさにこの形の式でした。だから、スカ
ラー場の面積分の式に入れたときこの分はキャンセルされるだろうと予想して、始めから
±
a2b3 − a3b2
a3b1 − b3a1
a1b2 − a2b1
というベクトルに名前と記号を付けておけば、最終的なベクトル場の面積分の定義式はよりスッキ
リするだろうと予想できるでしょう。
上の計算からわかるように、この二つの数ベクトルを成分表示に持つ空間ベクトルは
a⃗ と b⃗ に直交し、a⃗ と b⃗ の作る平行四辺形の面積を長さとするベクトル
です。あとは、この符号のうちどちらかを選んで特別な名前と記号を付けておけば便利そうです。
が、そのように考えるのは実は危険なのです。なぜかというと、我々は空間に正規直交座標系を勝
手に固定して、それによる成分表示で考えて来たからです。だから、この表示や符号は座標系に依
存するもので、空間ベクトルとしての性質を反映していない可能性があります。そこで、いったん
座標系のことは忘れて図形的に反省してみましょう。
「二つのベクトルに直交し、平行四辺形の面積を長さに持つベクトル」が図形的に考えても二つ
に決まることはよいでしょう。だから、あとはその二つのうちどちらを選んで特別扱いするかを決
めればよいだけです。しかし、二つのベクトルはどう考えても対等な関係にあり、自然にどちらか
のベクトルを選ぶ基準はありません。そこで、次のように定義してしまうことにします。� �定義 9. 二つのベクトル a⃗ と b⃗ に対し、a⃗ と b⃗ のベクトル積 a⃗ × b⃗ を次のように定義する。
a⃗ と b⃗ が平行でないとき、a⃗× b⃗ は a⃗ と b⃗ の作る平行四辺形の面積を長さとし、a⃗, b⃗ の両方と
直交し、a, b, a⃗× b⃗ が右手系となるものである(図 24)。a⃗ と b⃗ が平行なとき(a⃗ = 0⃗ や b⃗ = 0⃗も含む)、a⃗ × b⃗ = 0⃗ と定義する。� �
ここで、(一つの平面上にない)三つのベクトル a⃗, b⃗, c⃗ が右手系であるとは、右手の親指、人差し
指、中指をそれぞれ a⃗, b⃗, c⃗ の向きに向けられることをいいます。これは
a⃗ を b⃗ に回転角の少ない方向にまわして近付けるとき右ネジの進む向きが c⃗ の向きと
一致する
と言い表すこともよくあります。
a⃗ × b⃗ の長さは a⃗ と b⃗ の作る平行四辺形の面積なのですから、a⃗ と b⃗ のなす角を θ(≥ 0) とすると、
∥a⃗ × b⃗∥ = ∥a⃗∥∥⃗b∥ sin θ
です。よって、第 1.6.5小節で計算したように、長さ(すなわち平行四辺形の面積)だけならスカラー積を使って
∥a⃗ × b⃗∥ = ∥a⃗∥∥⃗b∥√
1 − cos2 θ =√∥a⃗∥2∥⃗b∥2 − (⃗a • b⃗)2
と書くことができます。
ベクトル積にもスカラー積と同じような三つの性質があります。
(1) b⃗ × a⃗ = −a⃗ × b⃗
(2) (⃗a1 + a⃗2) × b⃗ = a⃗1 × b⃗ + a⃗2 × b⃗
(3) (ra⃗) × b⃗ = r(⃗a × b⃗)
第 6 回 8
� �
S
長さ S
a
b
a × b
図 24: ベクトル積。� �よって、スカラー積と同様、ベクトル積も二重線形です。(1)と (3)は定義からすぐにわかりますが、(2)の見やすい幾何学的な説明は私には見つけられませんでした。ただし、ベクトル積とスカラー積の関係
a⃗ • (⃗b × c⃗) = b⃗ • (c⃗ × a⃗) = c⃗ • (⃗a × b⃗) (15)
を使うと計算上の証明は簡単です。実際、
c⃗ = (⃗a1 + a⃗2) × b⃗ − a⃗1 × b⃗ − a⃗2 × b⃗
とおくと、
c⃗ • c⃗ = c⃗ • ((⃗a1 + a⃗2) × b⃗) − c⃗ • (⃗a1 × b⃗) − c⃗ • (⃗a2 × b⃗)
= (⃗a1 + a⃗2) • (⃗b × c⃗) − a⃗1 • (⃗b × c⃗) − a⃗2 • (⃗b × c⃗) = 0
となるからです。
注意. 「ベクトル積とスカラー積の関係」(15)は、a⃗ • (⃗b × c⃗) の幾何学的意味を考えるとすぐにわかります。a⃗, b⃗, c⃗ が右手系のとき、これは a⃗, b⃗, c⃗ の決める平行六面体の体積になっており、左手系のときはそれに −1 を掛けたものになっているからです。a⃗, b⃗, c⃗ が右手系なら b⃗, c⃗, a⃗ や c⃗, a⃗, b⃗ も右手系であることに注意してください。★
さて、以上の図形的な考察を使って、今問題になっている「成分表示の符号」を決めましょう。
三つの空間ベクトル e⃗1, e⃗2, e⃗3 を、成分表示がそれぞれ
e1 =
100
, e2 =
010
, e3 =
001
であるようなものとします。予想できると思いますが、ベクトル積の成分表示の符号は座標系が右
手系か左手系か(すなわち e⃗1, e⃗2, e⃗3 が右手系か左手系か)で違ってきます。以下、座標系は右手
系の正規直交座標系であるとして計算します。
ベクトル積が二重線形であることと、
e⃗i × e⃗i = 0⃗, e⃗1 × e⃗2 = −e⃗2 × e⃗1 = e⃗3,
e⃗2 × e⃗3 = −e⃗3 × e⃗2 = e⃗1, e⃗3 × e⃗1 = −e⃗1 × e⃗3 = e⃗2
第 6 回 9
を使います。すると、
a⃗ × b⃗ = (a1e⃗1 + a2e⃗2 + a3e⃗3) × (b1e⃗1 + b2e⃗2 + b3e⃗3)
= a1b1e⃗1 × e⃗1 + a1b2e⃗1 × e⃗2 + a1b3e⃗1 × e⃗3
+ a2b1e⃗2 × e⃗1 + a2b2e⃗2 × e⃗2 + a2b3e⃗2 × e⃗3
+ a3b1e⃗3 × e⃗1 + a3b2e⃗3 × e⃗2 + a3b3e⃗3 × e⃗3
= a1b2e⃗3 − a1b3e⃗2 − a2b1e⃗3 + a2b3e⃗1 + a3b1e⃗2 − a3b2e⃗1
= (a2b3 − a3b2)e⃗1 + (a3b1 − a1b3)e⃗2 + (a1b2 − a2b1)e⃗3
となります。よって、右手系の正規直交座標系を使った成分表示では、問題の符号は + であることがわかりました。
以下、3次の数ベクトルに対して、同じ記号 × を a1
a2
a3
×
b1
b2
b3
=
a2b3 − a3b2
a3b1 − a1b3
a1b2 − a2b1
で定義し、数ベクトルのベクトル積と呼んでしまうことにします。これを使うと、上の計算結果
は、空間に固定された座標系が右手系の正規直交座標系の場合に空間ベクトルの外積と数ベクトル
の外積が一致する、と言い表すことができます。
注意. この計算だけ見せられるとなんだかわからないかも知れませんが、「ベクトル積とスカラー積の関係」(15)をこの結果を使って表してみるとお馴染みのものがでてきます。 a1
a2
a3
•
b1
b2
b3
×
c1
c2
c3
=
a1
a2
a3
•
b2c3 − b3c2
b3c1 − b1c3
b1c2 − b2c1
= a1(b2c3 − b3c2) + a2(b3c1 − b1c3) + a3(b1c2 − b2c1)
= a1b2c3 + a2b3c1 + a3b1c2 − a1b3c2 − a2b1c3 − a3b2c1 =
∣∣∣∣∣∣a1 b1 c1
a2 b2 c2
a3 b3 c3
∣∣∣∣∣∣となります。a • (b× c) は det(a, b, c) の第 1列に関する展開だったわけです。★
注意. 物理では、この「第 1列に関する」展開の第 1列に単位ベクトルたち e1, e2, e3 を形式的に入れてしまうことで、ベクトル積の成分表示を書き表すことがあります。どういうことかというと、ei たちをただの数だと思って ∣∣∣∣∣∣
e1 b1 c1
e2 b2 c2
e3 b3 c3
∣∣∣∣∣∣ = e1(b2c3 − b3c2) + e2(b3c1 − b1c3) + e3(b1c2 − b2c1)
と計算し、その後、ei たちがベクトルであることを思い出して、
=(b2c3 − b3c2)
100
+ (b3c1 − b1c3)
010
+ (b1c2 − b2c1)
001
=
b2c3 − b3c2
b3c1 − b1c3
b1c2 − b2c1
= b× c
とするわけです。★
1.7.6 曲面 S の向きとパラメタ付けの関係
話を元に戻しましょう。
第 6 回 10
二つの(成分表示された)ベクトル
Ts(s0, t0) =
ξs(s0, t0)ηs(s0, t0)ζs(s0, t0)
と Tt(s0, t0) =
ξt(s0, t0)ηt(s0, t0)ζt(s0, t0)
の両方に直交する単位ベクトルを、今用意したベクトル積を利用して表すと、ベクトル積は左右を
取り替えると符号が変わることに注意して、
Ts(s0, t0) × Tt(s0, t0)|Ts(s0, t0) × Tt(s0, t0)|
またはTt(s0, t0) × Ts(s0, t0)|Tt(s0, t0) × Ts(s0, t0)|
(16)
の二つとなります。これのどちらが S を裏から表に向かって貫いているのでしょうか?それはこれだけからでは絶対に決められません。なぜなら、同じパラメタ付けで s と t の役割
だけ反対のものもあるからです。つまり、A さんのパラメタ付け TA(s, t) と B さんのパラメタ付
け TB(s, t) の間にTA(t, s) = TB(s, t)
という関係があった場合、
TBs (s, t) × TB
t (s, t) = −TAs (s, t) × TA
t (s, t)
というように符号が反対向きになってしまうのです。だから、今使っている T (s, t) が「どういうパラメタ付けか」ということを知らずに二つの式 (16)のどちらが n⃗ なのか(つまり、どちらが S
を裏から表に貫いているか)を決めることは絶対にできません。
それでは、パラメタ付け T (s, t) の何を見れば二つの単位ベクトルのうちのどちらが n⃗ かを決定
できるのでしょうか? それは、
a⃗, b⃗, a⃗ × b⃗ が右手系をなす
という a⃗ × b⃗ の向きの決め方を思い出せばわかります。
Ts(s0, t0), Tt(s0, t0), Ts(s0, t0) × Tt(s0, t0)
が右手系をなしているのですから、Ts(s0, t0) × Ts(s0, t0) が S を裏から表に貫いていることは、
P0 における S の接平面を表から見たとき Ts(s0, t0) を Tt(s0, t0) に重ねるための回転が反時計回り
ということです(図 25)。そして、Ts(s0, t0) および Tt(s0, t0) というベクトルがそれぞれ T (s, t0)および T (s0, t) という曲線の接ベクトルであることから、S 上で T (s, t0) の s > s0 の部分を
T (s0, t) の t > t0 の部分に近づけるように回す回し方が S を表から見て反時計回りだと、いうこ
とと同じです。パラメタ平面において (s, t0) を「s 軸」、(s0, t) を「t 軸」と呼ぶことにすれば、
T で s 軸と t 軸を S 上に写したものが、s 軸を t 軸に近づけるとき S を表から見て
反時計回りに回る
と言い換えられます(図 26)。以上は 1点 P0 だけでの議論になっていますが、Ts(s, t) と Tt(s, t) は (s, t) について連続ですので、1点で上のことが成り立っていればどこでも同じことが成り立っています21。
上のことを考慮して、21「Ts(s, t) と Tt(s, t) はどこでも平行にならない」という条件も要りますが、よほど変なパラメタ付けをしない限り大丈夫ですので、気にしないで進めましょう。
第 6 回 11
� �
x
y
z
S
表側
P0
Ts(s0, t0)
Tt(s0, t0)
図 25: Ts × Tt が S を裏から表へ貫く場合の接ベクトルの位置関係。� �第 1パラメタ軸を第 2パラメタ軸に近づけたとき、S を表から見ると反時計回りに回る
という条件を満たすパラメタ付のことを「S の向きに適合したパラメタ付け」と呼ぶことにし、以
降では常に s, t というパラメタ付けはこの順で S の向きに適合したパラメタ付けであるとします。
(S の向きに適合していないときはパラメタの順序をひっくり返せばよいだけです。)
以上、S の向きに適合したパラメタ付けを選ぶことによって、我々の欲しかったベクトル場 n⃗
は、その成分表示 n が
n(ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t)) =Ts(s, t) × Tt(s, t)|Ts(s, t) × Tt(s, t)|
という式によって表されるベクトル場であることがわかりました。
1.7.7 ベクトル場の面積分の定義式
ベクトル場 F⃗ の S での面積分は、スカラー積 F⃗ • n⃗ というスカラー場の面積分でしたので、第
1.6節で得たスカラー場の面積分の定義式にこれを代入すればベクトル場の面積分の定義式が得られます。
F⃗ を正規直交座標系 xyz で成分表示したものを
F (x, y, z) =
F1(x, y, z)F2(x, y, z)F3(x, y, z)
と書くことにしましょう。第 1.6節で得たスカラー場の面積分の定義式は、ベクトル積の大きさを使って ∫
S
φdS =∫
E
f(T (s, t)) |Ts(s, t) × Tt(s, t)| dsdt
第 6 回 12
� �
x
y
z
S
表側
P0
s 軸の像
t 軸の像
図 26: Ts × Tt が S を裏から表へ貫く場合の「s 軸の像」と「t 軸の像」の位置関係。� �と書けるので、ベクトル場の面積分は∫
S
F⃗ • dS⃗ =∫
S
F⃗ • n⃗dS =∫
E
F (T (s, t)) • Ts(s, t) × Tt(s, t)|Ts(s, t) × Tt(s, t)|
|Ts(s, t) × Tt(s, t)| dsdt
=∫
E
F (T (s, t)) • Ts(s, t) × Tt(s, t)dsdt
で表されることになります。F や T を成分で書けば、
∫S
F⃗ • dS⃗ =∫
E
F1(ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t))F2(ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t))F3(ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t))
•
ξs(s, t)ηs(s, t)ζs(s, t)
×
ξt(s, t)ηt(s, t)ζt(s, t)
dsdt
です。見づらいので (s, t) などを省いて書くと、� �∫
S
F⃗ • dS⃗ =∫
E
F1
F2
F3
•
ξs
ηs
ζs
×
ξt
ηt
ζt
dsdt
� �となります。これがベクトル場の面積分の定義式です22。
ベクトル積の成分は ξs
ηs
ζs
×
ξt
ηt
ζt
=
ηsζt − ζsηt
ζsξt − ξsζt
ξsηt − ηsξt
であり、
ηsζt − ζsηt = det
(ηs ηt
ζs ζt
)22a • b× c は a • (b× c) を意味します。なぜなら、先にスカラー積をしてしまうとベクトル積が意味をなさないからです。
第 6 回 13
などに注意すると、
∫S
F⃗ • dS⃗ =∫
E
F1
F2
F3
•
ηsζt − ζsηt
ζsξt − ξsηt
ξsηt − ηsξt
dsdt
=∫
E
F1 det
(ηs ηt
ζs ζt
)dsdt +
∫E
F2 det
(ζs ζt
ξs ξt
)dsdt +
∫E
F1 det
(ξs ξt
ηs ηt
)dsdt
となります。
注意. 最後の式は、もし行列式に絶対値がついていれば第 1.6.6小節の最後の注意で紹介した「二重積分の変数変換公式」になっています。ベクトル場の面積分の場合、S の表裏を問題にしていることが行列式に絶対値のつかないことと関係しています。物理の本などでは、そのあたりのことはあまり気にせずに上の式を重積分の変数変換公式だと思ってしまって、∫
S
F⃗ • dS⃗ =
∫S
F1(x, y, z)dydz +
∫S
F2(x, y, z)dzdx +
∫S
F3(x, y, z)dxdy
と書いてあるものがあります。ベクトル場の線積分のときにも同じようなことがありましたが、この場合も微分形式という概念を使うと、この最後の式にそのまま直接意味を持たせることができるようになります。★
注意. 微分形式についてもう一言。物理の本などでは、dx や dy を「x や y の(無限に小さい)微小変化」というように説明することがよく
あります。ここで、変数変換 x = ξ(s, t), η(s, t) を考えてみましょう。テイラー展開によって、
ξ(s, t) = ξ(s0, t0) + ξs(s0, t0)(s − s0) + ξt(s0, t0)(t − t0) + · · ·η(s, t) = η(s0, t0) + ηs(s0, t0)(s − s0) + ηt(s0, t0)(t − t0) + · · ·
という関係がありますので、s と t を「微小変化」させたときの x と y の微小変化の間には、
dx = ξsds + ξtdt, dy = ηsds + ηtdt
という関係があります。(見づらくなるので「どこでの微小変化か」を表す (s0, t0) は省きました。)ds や dtは「とても小さい」ので、(ξs たちが 0でなければ)(ds)2 や dsdt は無視できるというわけです。(正確には「1次近似を考える」ということです。)さて、このまま素直(安直?)に考えると、dxdy は dx と dy の積ですから
dxdy = (ξsds + ξtdt)(ηsds + ηtdt) = (ξsηt + ηsξt)dsdt + ξsηs(ds)2 + ηsηt(dt)2
となります。一方、変数変換の公式からすると、(積分範囲の裏表まで考慮して)
dxdy = (ξsηt − ηsξt)dsdt (17)
となるはずです。なぜ、同じ値にならないのでしょうか?実は、「dx や dy は(無限に小さい)微小変化である」というのがそもそも間違っているのです。dx と dy
の積は数の積ではないのです。では何なのか。その答えが微分形式なのです。微分形式というものは「微小変化」ではなく、「微小変化に数を与える関数」のようなものです。そして、二つの微分形式の掛け算は自然にベクトル積と同じ性質を持ちます。だから、式 (17)が成り立つことになります。★
問題 14. 空間に右手系の正規直交座標系 xyz を入れておく。曲面 S をこの座標系で表すと
S = {(x, y, z) | x2 + y2 + z2 = 1, x ≥ 0, y ≥ 0, z ≥ 0}
であるとし、原点から見える側を裏とする(図 27)。また、ベクトル場 F⃗ をこの座標系で成分表
示したもの F (x, y, z) を、
F (x, y, z) =
yz
zx
xy
とする。F⃗ の S での面積分
∫S
F⃗ • dS⃗ を計算せよ。 ♪
第 6 回 14
� �
x y
z
S(表側)
図 27: 問題 14の曲面。� �問題 15. 空間に右手系の正規直交座標系 xyz を入れておく。曲面 S をこの座標系で表すと
2x + 2y + z = 4, x ≥ 0, y ≥ 0, z ≥ 0
となるとし、原点側を裏とする。また、ベクトル場 F⃗ を同じ座標系で成分表示すると
F (x, y, z) =
z
x
y
となるとする。F⃗ の S 上での面積分
∫S
F⃗ • dS⃗ を計算せよ。 ♪
問題 16. 空間に右手系の正規直交座標系 xyz を入れておく。三つの曲面 S1, S2, S3 をこの座標
系で表すと、それぞれ
S1 = {(x, y, z) | x2 + y2 + (z − 2)2 − 1 = 0, z ≤ 2}
S2 = {(x, y, z) | x2 + y2 − z + 1 = 0, z ≤ 2}
S3 = {(x, y, z) | x2 + y2 ≤ 1, z = 2}
となるとする。ただし、すべて z 軸が裏から表へ貫くような向きがついているものとする。また、
ベクトル場 F⃗ を同じ座標系で表すと
F (x, y, z) =
x
y
z
となるとする。
∫S1
F⃗ • dS⃗,∫
S2F⃗ • dS⃗,
∫S3
F⃗ • dS⃗ を計算せよ。 ♪
問題 17. 空間に右手系の正規直交座標系 xyz を入れておく。(2, 0, 1) を中心とする半径 1の円をzx 平面内に取り、それを z 軸を中心軸として回転してできる曲面を S とする。(浮き輪を思い浮
第 6 回 15
かべてください。)ただし、外側を表とする。ベクトル場 F⃗ として、成分表示が
F =
x
y
z
であるものを考える。
∫S
F⃗ • dS⃗ を計算せよ。 ♪
1.8 場の積分のまとめ:積分形のマックスウェル方程式
場の積分には三種類あることを学びました。
• ベクトル場の線積分
• ベクトル場の面積分
• スカラー場の体積分
です。「スカラー場の線積分や面積分もあったじゃないか」と思うかも知れません。しかし、スカ
ラー場の線積分や面積分の定義式が、曲線 C や曲面 S のパラメタ付けに由来するベクトル場の
大きさ(|x′(t)| や |Ts(s, t) × Tt(s, t)|)しか使わなかったのに対して、ベクトル場の線積分や面積分の定義式では大きさのみならずそれらの向き(つまり x′(t) や Ts(s, t) × Tt(s, t) そのもの)まで使って定義されていることを見ても、線積分や面積分されるべきものはベクトル場であってスカ
ラー場ではないということを感じてもらえるのではないかと思います。
電磁気学で使うこれら三つの積分のイメージと定義式をまとめ、そのイメージで積分形のマック
スウェル方程式を解釈してみましょう。とは言っても、マックスウェル方程式の物理的な面には踏
み込みません。単に、マックスウェル方程式の四つの式に各積分のイメージを当てはめて日本語に
してみるだけです。
1.8.1 ベクトル場の線積分
ベクトル場 F⃗ と向き付けられた曲線 C が与えられたとき、正規直交座標系 xyz によって、F⃗
が
F (x, y, z) =
F1(x, y, z)F2(x, y, z)F3(x, y, z)
と表され、また、
x(t) = (ξ(t), η(t), ζ(t)) t0 ≤ t ≤ t1
が向きに適合した C のパラメタ付けのとき、ベクトル場 F⃗ の C における線積分を∫C
F⃗ • d⃗l =∫ t1
t0
F (x(t)) • x′(t)dt
=∫ t1
t0
F1(ξ(t), η(t), ζ(t))ξ′(t)dt
+∫ t1
t0
F2(ξ(t), η(t), ζ(t))η′(t)dt
+∫ t1
t0
F3(ξ(t), η(t), ζ(t))ζ ′(t)dt
第 6 回 16
で定義しました。これは
C 上の各点における F⃗ の「C に沿った成分」を足し上げる
というようなイメージを持つ操作になっていました。例えば、F⃗ が力の場で、C がその力に作用
されながら質点の動いた経路としたとき、線積分の値は F⃗ がその質点に対してした仕事です。
1.8.2 ベクトル場の面積分
ベクトル場 F⃗ と向き付けられた曲面 S が与えられたとき、右手系の正規直交座標系 xyz によっ
て、F⃗ が
F (x, y, z) =
F1(x, y, z)F2(x, y, z)F3(x, y, z)
と表され、また、
T (s, t) = (ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t)) (s, t) ∈ E
が向きに適合した S のパラメタ付けのとき、ベクトル場 F⃗ の S における面積分を∫S
F⃗ • dS⃗ :=∫
E
F (T (s, t)) • Ts(s, t) × Tt(s, t)dsdt
=∫
E
F1(ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t))(ηs(s, t)ζt(s, t) − ζs(s, t)ηt(s, t))dsdt
+∫
E
F2(ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t))(ζs(s, t)ξt(s, t) − ξs(s, t)ζt(s, t))dsdt
+∫
E
F3(ξ(s, t), η(s, t), ζ(s, t))(ξs(s, t)ηt(s, t) − ηs(s, t)ξt(s, t))dsdt
で定義しました。これは
F⃗ に沿って流れているものが単位時間に S を裏から表に通過する量
というようなイメージを持つ値でした。
1.8.3 スカラー場の体積分
スカラー場 φ と空間内の領域 D が与えられたとき、正規直交座標系 xyz によって φ を表す 3変数関数を f(x, y, z) とすると、領域 D におけるスカラー場 φ の体積分とは、∫
D
φdV :=∫
D
f(x, y, z)dxdydz
と定義される値でした。ただし、右辺の積分はリーマン和の極限として定義される 3変数関数の重積分です。これは、まさに
D 内の点における φ の値の総和
といえる値でした。例えば、φ が密度を表しているとき、体積分の値は D の質量です。
第 6 回 17
1.8.4 マックスウェル方程式(積分形)の「意味」
以上のイメージを積分形のマックスウェル方程式に当てはめて解釈してみましょう。ただし、全
く形式的にイメージを適用するだけであって、物理としての意味や内容は説明も追求も一切しませ
ん。それらについては電磁気学の講義で学んで下さい。
積分形のマックスウェル方程式23とは
ε0
∫∂D
E⃗ • dS⃗ =∫
D
ρdV (18)∫∂D
B⃗ • dS⃗ = 0 (19)∫∂S
E⃗ • d⃗l = −∫
S
∂B⃗
∂t• dS⃗ (20)
1µ0
∫∂S
B⃗ • d⃗l =∫
S
(ε0
∂E⃗
∂t+ J⃗
)• dS⃗ (21)
という四つの等式のことです。登場している場は「電場」E⃗、「磁束密度」B⃗、「電流密度」J⃗ とい
う三つのベクトル場と、「電荷密度」ρ という一つのスカラー場です。これらの場はすべて位置の
他に時刻にも依存していることに気を付けて下さい。(20)と (21)に現れている t が時刻を意味し
ます。だから、時刻は微分する変数としてしか使われず、積分はすべて
時刻を定数と見なして、このゼミで定義したように積分する
という操作を意味します。なお、ε0 と µ0 は定数です。ε0 には「真空の誘電率」、µ0 には「真空
の透磁率」という名前が付いています。
登場している「積分範囲」についても説明が必要です。まず、式 (18)と式 (19)の ∂D は空間内
の領域 D の表面で、D に触れている側を裏に指定した向き付き曲面です。特に ∂D は必ず縁の
ない曲面になります。そのような曲面を閉曲面と言います。式 (19)には D での体積分が現れてい
ないように見えます。しかし、実は式 (19)の右辺の 0は「あらゆる場所で 0」というスカラー場の体積分
∫D
0dV を意味する 0なのです。このように、式 (18)と式 (19)の右辺と左辺の積分領域は同じように「中身と表面」という関係になっています。また、二つの式 (20)、(21)の左辺の ∂S
は右辺の曲面 S の縁です。だから ∂S は「何本かの交わらない閉曲線」しかあり得ません。なお、
∂S にも向きが決まっていなければ、ベクトル場の線積分が意味をなしません。それは S の向き
から決まるのですが、決める方法については面倒なのでここでは説明しません。「ストークスの定
理」の節までお待ち下さい。
以上の設定に前小節まででまとめた三つの積分のイメージを当てはめて言葉で解釈してみましょう。
まず、式 (18)のガウスの法則です。任意の時刻 t0 をひとつ決めます。すると、左辺の積分は「時
刻 t0 における E⃗ が単位時間続いた」と仮定したとき E⃗ に沿って単位時間に D から出て行く「何
か」の総量です。∂D の裏表を「D に触れている側が裏」と決めているので、「∂D を裏から表に
通り抜ける量」は「D から出ていく量」と言い表すことができるからです。もちろん、D に入っ
て来るものはマイナスで換算します。一方、右辺は「時刻 t0 において D 内にある電荷の総量」で
す。というわけで、式 (18)は、
各時刻において、E⃗ に乗って D から出て行く「何か」の量の ε0 倍は D 内の電荷の
総量に等しい。
23ただし、真空中でのものです。
第 6 回 18
という意味を持つ式であることになります。
式 (19)は形の上では式 (18)の右辺を常に 0に置き換えたものですので、その意味は
どのような領域 D をとっても、そこから B⃗ に乗って出て行く「何か」の量はいつで
も 0である。
となります。
次に、式 (20)のファラデーの法則です。左辺は「時刻 t0 における E⃗ の ∂S に沿った成分の総
和」といえる量で、E⃗ に沿って「何か」が流されていると考えると「時刻 t0 において E⃗ が ∂S に
沿って「何か」を流そうとする働き」というようなものです。一方、右辺は面積分と時刻による微
分を入れ替えて、 ∫S
∂B⃗
∂t• dS⃗ =
∂
∂t
∫S
B⃗ • dS⃗
として考えた方が分かりやすいでしょう。積分も微分もある種の極限ですので、この等式は「二種
類の極限の入れ換え」をしていることにあたり、無条件では成り立ちません。しかし、ここでは都
合の良さそうなことはすべて仮定しているので大丈夫です。信じることにしてください。すると、
式 (20)の右辺(の符号を変えたもの)は、「S を貫いて B⃗ に沿って流れて行く「何か」の量の時
刻 t0 における変化率」となります。というわけで、式 (20)の意味は、(S と ∂S に然るべく向き
を付けると)
各時刻において、E⃗ が ∂S に沿って「何か」を流そうとする働きと、B⃗ に沿って流れ
て行く別の「何か」が S を通過する量の変化は打ち消し合う
ということだと言えるでしょう。
最後は (21)のアンペール・マックスウェルの法則です。式 (20)のときと同様に、右辺を∫S
(ε0
∂E⃗
∂t+ J⃗
)• dS⃗ = ε0
∂
∂t
∫S
E⃗ • dS⃗ +∫
S
J⃗ • dS⃗
と変形して考えた方がよいでしょう。すると、
B⃗ が ∂S に沿って「何か」を流そうとする働きを µ0 で割った値は、E⃗ に沿って流れ
て行く別の「何か」が S を通過する量の変化の ε0 倍と、J⃗ に沿って流れて行くさら
に別の「何か」が S を通過する量の和に等しい。
という意味であることがわかります。
以上、全く形式的に積分のイメージを積分形のマックスウェル方程式に当てはめてみました。繰
り返し注意しますが、これらの等式がなぜ成り立つか、とか、E⃗ とか B⃗ とか「何か」とかは一体
何なのか、とか「「何か」を流そうとする働き」とは何か、とかについては電磁気学の講義で学ん
で下さい。このゼミでは一切触れません。
第 6 回 19
解答
問題 14の解答
問題 12にならって S = {(x, y, z) | x2 + y2 + z2 = 1, x ≥ 0, y ≥ 0, z ≥ 0} のパラメタ付けとして三種類考えてみましょう。
その 1. S が z =√
1 − x2 − y2 のグラフであることをそのまま使ってみましょう。つまり、x と
y をパラメタとし、
ξ(x, y) = x, η(x, y) = y, ζ(x, y) =√
1 − x2 − y2, x2 + y2 ≤ 1, x ≥ 0, y ≥ 0
とするわけです。S を「上」、つまり z 軸正の方から見るとわかるように、このパラメタ付けは S
の表裏と合っています。
Tx(x, y) =
ξx(x, y)ηx(x, y)ζx(x, y)
=
10
− x√1−x2−y2
および、
Ty(x, y) =
ξy(x, y)ηy(x, y)ζy(x, y)
=
01
− y√1−x2−y2
ですので、
Tx(x, y) × Ty(x, y) =
ηxζy − ζxηy
ζxξy − ξxζy
ξxηy − ηxξy
=
x√
1−x2−y2
y√1−x2−y2
1
です。よって、
∫S
F⃗ • dS⃗ =∫
x2+y2≤1,x≥0,y≥0
η(x, y)ζ(x, y)ζ(x, y)ξ(x, y)ξ(x, y)η(x, y)
• Tx(x, y) × Ty(x, y)dxdy
=∫
x2+y2≤1,x≥0,y≥0
y√
1 − x2 − y2
x√
1 − x2 − y2
xy
•
x√
1−x2−y2
y√1−x2−y2
1
dxdy
=∫
x2+y2≤1,x≥0,y≥0
3xydxdy = 3∫ 1
0
y
(∫ √1−y2
0
xdx
)dy
= 3∫ 1
0
y12(1 − y2)dy = 3
(14− 1
8
)=
38
となります。 □
その 2. その 1でパラメタ x, y の範囲が円板の 1/4だったことを考慮して、
ξ(r, φ) = r cos φ, η(r, φ) = r sin φ, ζ(r, φ) =√
1 − r2, 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ φ ≤ π
2
第 6 回 20
としてみましょう。(普通は φ ではなく θ を使うでしょうが、「その 3」の空間極座標と合わせるために φ を使いました。また、ξ, η, ζ は「その 1」とは別の関数なので別な記号を使った方が混乱が少ないでしょうが、文字が足りないので同じ記号を使います。)S を「上」(z 軸正の方)から見
るとわかるように、このパラメタ付けは r, φ という順番にすると S の表裏に合います。
Tr(r, φ) =
ξr(r, φ)ηr(r, φ)ζr(r, φ)
=
cos φ
sinφ
− r√1−r2
および、
Tφ(r, φ) =
ξφ(r, φ)ηφ(r, φ)ζφ(r, φ)
=
−r sinφ
r cos φ
0
なので、
Tr(r, φ) × Tφ(r, φ) =
ηrζφ − ζrηφ
ζrξφ − ξrζφ
ξrηφ − ηrξφ
=
r2 cos φ√
1−r2
r2 sin φ√1−r2
r
となます。よって、
∫S
F⃗ • dS⃗ =∫
[0,1]×[0,π/2]
η(r, φ)ζ(r, φ)ζ(r, φ)ξ(r, φ)ξ(r, φ)η(r, φ)
• Tr(r, φ) × Tφ(r, φ)drdφ
=∫
[0,1]×[0,π/2]
r√
1 − r2 sin φ
r√
1 − r2 cos φ
r2 cos φ sinφ
•
r2 cos φ√
1−r2
r2 sin φ√1−r2
r
drdφ
= 3(∫ 1
0
r3dr
)(∫ π2
0
cos φ sin φdφ
)
= 3[14r4
]10
[12
sin2 φ
]π2
0
=38
となります。 □
その 3. x, y 座標だけ極座標にするのでなく、三つの座標をすべて極座標で表してみましょう。い
わゆる「空間極座標」です(図 28)。
ξ(θ, φ) = sin θ cos φ, η(θ, φ) = sin θ sinφ, ζ(θ, φ) = cos θ, 0 ≤ θ ≤ π
2, 0 ≤ φ ≤ π
2となります。(「その 2」の r を sin θ で置き換えたものです。)図からわかるとおり、θ, φ の順序
にすると S の表裏と合います。
Tθ(θ, φ) =
ξθ(θ, φ)ηθ(θ, φ)ζθ(θ, φ)
=
cos θ cos φ
cos θ sinφ
− sin θ
Tφ(θ, φ) =
ξφ(θ, φ)ηφ(θ, φ)ζφ(θ, φ)
=
− sin θ sinφ
sin θ cos φ
0
第 6 回 21
� �z
xy
θ
φ
φ 軸
θ 軸
図 28: 空間極座標における角度の取り方。� �ですので、
Tθ(θ, φ) × Tφ(θ, φ) =
ηθζφ − ζθηφ
ζθξφ − ξθζφ
ξθηφ − ηθξφ
=
sin2 θ cos φ
sin2 θ sinφ
sin θ cos θ
となります。よって、
∫S
F⃗ • dS⃗ =∫
[0,π/2]×[0,π/2]
η(θ, φ)ζ(θ, φ)ζ(θ, φ)ξ(θ, φ)ξ(θ, φ)η(θ, φ)
• Tθ(θ, φ) × Tφ(θ, φ)dθdφ
=∫
[0,π/2]×[0,π/2]
cos θ sin θ sinφ
cos θ sin θ cos φ
sin2 θ cos φ sinφ
•
sin2 θ cos φ
sin2 θ sinφ
sin θ cos θ
dθdφ
= 3
(∫ π2
0
cos θ sin3 θdθ
)(∫ π2
0
cos φ sin φdφ
)
= 3[14
sin4 θ
]π2
0
[12
sin2 φ
]π2
0
=38
となります。 □
問題 15の解答
S は z = 4 − 2x − 2y というグラフの一部分なので、x と y をパラメタとして使ってみましょ
う。ただし、「パラメタづけているのだ」ということがはっきり分かるようにするために、やはり
パラメタには s, t を使うことにします。x ≥ 0, y ≥ 0, z ≥ 0 を考慮して、S のパラメタ付けは
ξ(s, t) = s, η(s, t) = t, ζ(s, t) = 4 − 2s − 2t, s ≥ 0, t ≥ 0, s + t ≤ 2
となります。(このパラメタの範囲を E と名付けることにします。)S を z 軸正の方から見ると、
s 軸は x 軸に平行、t 軸は y 軸に平行に見えます。z 軸正の方から見たときに見えているのは S
第 6 回 22
の表側ですので、このパラメタ付けは S の向きと合っています。以上より、
∫S
F⃗ • dS⃗ =∫
E
ζ(s, t)ξ(s, t)η(s, t)
•
ξs(s, t)ηs(s, t)ζs(s, t)
×
ξt(s, t)ηt(s, t)ζt(s, t)
dsdt
=∫
E
4 − 2s − 2t
s
t
•
10−2
×
01−2
dsdt
=∫
E
4 − 2s − 2t
s
t
•
221
dsdt
=∫
E
(2(4 − 2s − 2t) + 2s + 1t) dsdt
=∫ 2
0
(∫ 2−t
0
(8 − 2s − 3t)ds
)dt =
∫ 2
0
[8s − s2 − 3st
]2−t
0dt
=∫ 2
0
(12 − 10t + 2t2
)dt =
[12t − 5t2 +
23t3]20
=283
となります。 □
問題 16の解答
S1 のパラメタ付けとして、例えば、
ξ(θ, φ) = sin θ cos φ, η(θ, φ) = sin θ sinφ, ζ(θ, φ) = 2 − cos θ, 0 ≤ θ ≤ π
2, 0 ≤ φ ≤ 2π
を取ってみましょう。(このパラメタの範囲を E1 と書くことにします。)例えば、(θ, φ) = (0, π/4)を通る θ 軸と φ 軸の像を考えると、z 軸正の方から見たとき θ 軸は x 軸と平行、φ 軸は反時計回
りなので、このパラメタの順番は S1 の向きと合っています。よって、
∫S1
F⃗ • dS⃗ =∫
E1
ξ(θ, φ)η(θ, φ)ζ(θ, φ)
•
ξθ(θ, φ)ηθ(θ, φ)ζθ(θ, φ)
×
ξφ(θ, φ)ηφ(θ, φ)ζφ(θ, φ)
dθdφ
=∫
E1
sin θ cos φ
sin θ sinφ
2 − cos θ
•
cos θ cos φ
cos θ sinφ
sin θ
×
− sin θ sinφ
sin θ cos φ
0
dθdφ
=∫
E1
sin θ cos φ
sin θ sinφ
2 − cos θ
•
− sin2 θ cos φ
− sin2 θ sinφ
cos θ sin θ
dθdφ
=∫
E1
(− sin3 θ cos2 φ − sin3 θ sin2 φ + 2 cos θ sin θ − cos2 θ sin θ
)dθdφ
=∫ 2π
0
(∫ π2
0
(− sin θ + 2 cos θ sin θ) dθ
)δφ
=∫ 2π
0
[cos θ − cos2 θ
]π2
0dφ =
∫ 2π
0
0dφ = 0
第 6 回 23
となります。
S2 は
z = x2 + y2 + 1, x2 + y2 ≤ 1
と書き換えられます。そこで、
ξ(r, φ) = r cos φ, η(r, φ) = r sinφ, ζ(r, φ) = r2 + 1, 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ φ ≤ 2π
とパラメタ付けしてみましょう。(パラメタの範囲を E2 とします。)S1 のときと同様にこのパラ
メタ付けは S2 の向きに合っています。よって、
∫S2
F⃗ • dS⃗ =∫
E2
ξ(r, φ)η(r, φ)ζ(r, φ)
•
ξr(r, φ)ηr(r, φ)ζr(r, φ)
×
ξφ(r, φ)ηφ(r, φ)ζφ(r, φ)
drdφ
=∫
E2
r cos φ
r sin φ
r2 + 1
•
cos φ
sinφ
2r
×
−r sin φ
r cos φ
0
drdφ
=∫
E2
r cos φ
r sin φ
r2 + 1
•
−2r2 cos φ
−2r2 sinφ
r
drdφ
=∫
E2
(−2r3 cos2 φ − 2r3 sin2 φ + r3 + r
)drdφ
=∫ 2π
0
(∫ 1
0
(−r3 + r)dr
)dφ =
∫ 2π
0
[−r4
4+
r2
2
]10
dφ =∫ 2π
0
14dφ =
π
2
となります。
S3 は z = 2 という平面に入ってしまっているので、x と y でパラメタづけることができます。
しかし、形が円板ですので、やはり極座標を使って、
ξ(r, φ) = r cos φ, η(r, φ) = r sinφ, ζ(r, φ) = 2, 0 ≤ r ≤ 1, 0 ≤ φ ≤ 2π
とパラメタ付けしてみます。(パラメタの範囲を E3 とします。)S2 のときと同様にこのパラメタ
付けは S3 の向きに合っています。よって、
∫S3
F⃗ • dS⃗ =∫
E3
ξ(r, φ)η(r, φ)ζ(r, φ)
•
ξr(r, φ)ηr(r, φ)ζr(r, φ)
×
ξφ(r, φ)ηφ(r, φ)ζφ(r, φ)
drdφ
=∫
E2
r cos φ
r sinφ
2
•
cos φ
sinφ
0
×
−r sinφ
r cos φ
0
drdφ
=∫
E2
r cos φ
r sinφ
2
•
00r
drdθ
=∫ 2π
0
(∫ 1
0
2rdr
)dθ =
∫ 2π
0
[r2]10dθ =
∫ 2π
0
1dθ = 2π
となります。 □
第 6 回 24
問題 17の解答
S のパラメタ付けとして、例えば、
ξ(θ, φ) = (2 + cos φ) cos θ, η(θ, φ) = (2 + cos φ) sin θ, ζ(θ, φ) = 1 + sin φ,
0 ≤ θ ≤ 2π, 0 ≤ φ ≤ 2π
を取ることができます。(パラメタの範囲を E と書くことにします。)第 1パラメタを θ、第 2パラメタを φ とすると外側が表の向きに合います。よって、
∫S
F⃗ • dS⃗ =∫
E
ξ(θ, φ)η(θ, φ)ζ(θ, φ)
•
ξθ(θ, φ)ηθ(θ, φ)ζθ(θ, φ)
×
ξφ(θ, φ)ηφ(θ, φ)ζφ(θ, φ)
dθdφ
=∫
E
(2 + cos φ) cos θ
(2 + cos φ) sin θ
1 + sin φ
•
−(2 + cos φ) sin θ
(2 + cos φ) cos θ
0
×
− sinφ cos θ
− sinφ sin θ
cos φ
dθdφ
=∫
E
(2 + cos φ) cos θ
(2 + cos φ) sin θ
1 + sin φ
•
(2 + cos φ) cos φ cos θ
(2 + cos φ) cos φ sin θ
(2 + cos φ) sinφ
dθdφ
=∫
E
((2 + cos φ)2 cos φ + (2 + cos φ)(1 + sinφ) sin φ
)dθdφ
=∫ 2π
0
(∫ 2π
0
(2 + 5 cos φ + 2 sinφ + 2 cos2 φ + cos φ sin φ
)dφ
)dθ
=∫ 2π
0
[2φ + 5 sin φ − 2 cos φ +
12
sin 2φ + φ +12
sin2 φ
]2π
0
dθ
=∫ 2π
0
6πdθ
= 12π2
となります。