血液診療と包括評価(dpcによる入院医療の包括評価)につ …総 説...

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血液診療と包括評価(DPC による入院医療の包括評価)について 1 、北 2 1 大阪市立大学大学院医学研究科医療安全管理学医療情報部 2 東京大学医学教育国際協力研究センター Key Words:診断群分類(diagnosis related group)、血液診療(clinical hematology)、包括評価制 度(DPC: diagnosis procedure combinationはじめに 昨年度より特定機能病院において包括評価制度が導 入された。筆者は本学附属病院における包括制度導入 の準備段階から関わり病院の事務部門と連携を取りな がら実施に向けての作業を行った。約 1 年間の準備段 階を経て、昨年 4 月、多くの病院は 7 月からであった が完全実施されたこの包括医療制度とはどのようなも のであるか。血液診療の側面から制度の概要を解説し、 本制度の問題点と課題について私見を述べる。 DPC とは 「特定機能病院における入院医療の包括評価による 診療報酬請求」というのが今回の告示(平成 14 年厚 生労働省告示第 81 号)による診療報酬制度の変更を 表している。すなわち従来の出来高制度を廃止し、診 断群分類による包括評価部分(いわゆる定額部分)と 一部出来高部分の和をもって診療報酬の額とするもの である。 今回の包括評価制度を代表する用語である DPC diagnosis procedure combination )は診断群分類 diagnosis related group)と呼ばれる疾病分類のひと つの方法である。日本独自の分類法であるが、診断群 分類では国際的に米国の DRG が有名である。診療報 酬制度とは用語からみて全く別物であるが、この DPC が決まらなければ包括評価による診療報酬が決定でき ないので制度全体を表すのに DPC とか包括評価など と呼ばれている。 米国の DRG と日本の DPC の違いは、分類作成の 手法概念にある。DRG は最初に手術の有無で分け、 次に手術の種類で分け、手術がなかったものは主病名 で分ける。DPC は、まず diagnosis があって、次に合 併症とか併存症とか病態に応じて手技を選んで行く結 果手術があるというように、diagnosis procedure combination から分類が行われている。しかしながら、 両者とも投入された医療資源の上で同質的な疾病をグ ループ化することにより分類する方法である。 実際に悪性リンパ腫を例に DPC の分類の基本構造 を見てみよう。 16 の「主要診断群(MDCmajor diagnostic category(表 1)と呼ばれる疾病分野ごとに大別し、それぞれ の傷病により ICD10 を用いて分類する。参考に造血 器悪性疾患の ICD10 コードの一部を表 2 に示す。次 1 MDCmajor diagnostic category) MDC1 【神経系疾患】 MDC2 【眼科疾患】 MDC3 【耳鼻咽喉科疾患】 MDC4 【呼吸器系疾患】 MDC5 【循環器系疾患】 MDC6 【消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患】 MDC7 【筋骨格系疾患】 MDC8 【皮膚・皮下組織の疾患】 MDC9 【乳房の疾患】 MDC10 【内分泌・栄養・代謝に関する疾患】 MDC11 【腎・尿路系疾患および男性生殖器系疾 患】 MDC12 【女性生殖器系疾患および産褥期疾患、 異常妊娠分娩】 MDC13 【血液・造血器・免疫臓器の疾患】 MDC14 【新生児疾患】 MDC15 【小児疾患】 MDC16 【外傷・熱傷・中毒、異物、その他の疾患】 症度などにより細分化される。この構造をツリー図で 表示したのが図 1 で、例として非ホジキンリンパ腫の 分類構造と対応する DPC コード(診断群分類番号と も呼ばれる:1300303x99x10x)が右端の 14 桁で示さ れている(図 2)。最初の 2 桁は主要診断群、次の 4 桁は傷病名で、ICD10 に基づく「分類コード」に対応 している。以下、検査入院と一般の入院では手間が違 うため「入院種別」、小児を含む疾患では同じ病名で あっても成人と治療方法が異なるため「年齢・体重・ JCS 条件」、病態が異なれば手術術式も異なるために 「手術等サブ分類」、処置についても「処置 1」と「処 2」を設定し、化学療法、人工呼吸、再建術などの 有無で分類を行う形式となっている。さらに、合併症・ 併存症の有無で医療資源の消費量が異なるために「副 傷病名」、最後に上記項目でも吸収しきれない要素を 「重症度等」のコードで設定されている(図 3)。 診断群分類ツリー図(図 2)には、包括評価の対象 外となった分類も含めて体系的に図示されている、こ の図では、Kコードの 9221 等(同種骨髄移植)で診 断群分類番号は点線で囲われている。ツリー図の分岐 の基準は、別途「定義テーブル」と呼ばれる表があり、

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Page 1: 血液診療と包括評価(DPCによる入院医療の包括評価)につ …総 説 血液診療と包括評価(DPCによる入院医療の包括評価)について 朴 勤植1、北村

総  説

血液診療と包括評価(DPC による入院医療の包括評価)について

朴   勤 植 1、北 村   聖 2

1大阪市立大学大学院医学研究科医療安全管理学医療情報部2東京大学医学教育国際協力研究センター

Key Words:診断群分類(diagnosis related group)、血液診療(clinical hematology)、包括評価制度(DPC: diagnosis procedure combination)

はじめに 昨年度より特定機能病院において包括評価制度が導

入された。筆者は本学附属病院における包括制度導入

の準備段階から関わり病院の事務部門と連携を取りな

がら実施に向けての作業を行った。約 1 年間の準備段階を経て、昨年 4 月、多くの病院は 7 月からであったが完全実施されたこの包括医療制度とはどのようなも

のであるか。血液診療の側面から制度の概要を解説し、

本制度の問題点と課題について私見を述べる。

DPCとは 「特定機能病院における入院医療の包括評価による

診療報酬請求」というのが今回の告示(平成 14 年厚生労働省告示第 81 号)による診療報酬制度の変更を表している。すなわち従来の出来高制度を廃止し、診

断群分類による包括評価部分(いわゆる定額部分)と

一部出来高部分の和をもって診療報酬の額とするもの

である。

 今回の包括評価制度を代表する用語である DPC( diagnosis procedure combination)は診断群分類(diagnosis related group)と呼ばれる疾病分類のひとつの方法である。日本独自の分類法であるが、診断群

分類では国際的に米国の DRG が有名である。診療報酬制度とは用語からみて全く別物であるが、この DPCが決まらなければ包括評価による診療報酬が決定でき

ないので制度全体を表すのに DPC とか包括評価などと呼ばれている。

 米国の DRG と日本の DPC の違いは、分類作成の手法概念にある。DRG は最初に手術の有無で分け、次に手術の種類で分け、手術がなかったものは主病名

で分ける。DPC は、まず diagnosis があって、次に合併症とか併存症とか病態に応じて手技を選んで行く結

果手術があるというように、diagnosis と procedure のcombinationから分類が行われている。しかしながら、両者とも投入された医療資源の上で同質的な疾病をグ

ループ化することにより分類する方法である。

 実際に悪性リンパ腫を例に DPC の分類の基本構造を見てみよう。

 16の「主要診断群(MDC:major diagnostic category)(表 1)と呼ばれる疾病分野ごとに大別し、それぞれの傷病により ICD10 を用いて分類する。参考に造血器悪性疾患の ICD10コードの一部を表 2に示す。次

表 1 MDC(major diagnostic category)MDC1 【神経系疾患】

MDC2 【眼科疾患】

MDC3 【耳鼻咽喉科疾患】

MDC4 【呼吸器系疾患】

MDC5 【循環器系疾患】

MDC6 【消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患】

MDC7 【筋骨格系疾患】

MDC8 【皮膚・皮下組織の疾患】

MDC9 【乳房の疾患】

MDC10 【内分泌・栄養・代謝に関する疾患】MDC11 【腎・尿路系疾患および男性生殖器系疾

患】MDC12 【女性生殖器系疾患および産褥期疾患、

異常妊娠分娩】

MDC13 【血液・造血器・免疫臓器の疾患】

MDC14 【新生児疾患】

MDC15 【小児疾患】

MDC16 【外傷・熱傷・中毒、異物、その他の疾患】

症度などにより細分化される。この構造をツリー図で

表示したのが図 1 で、例として非ホジキンリンパ腫の分類構造と対応する DPC コード(診断群分類番号とも呼ばれる:1300303x99x10x)が右端の 14 桁で示されている(図 2)。最初の 2 桁は主要診断群、次の 4桁は傷病名で、ICD10 に基づく「分類コード」に対応している。以下、検査入院と一般の入院では手間が違

うため「入院種別」、小児を含む疾患では同じ病名で

あっても成人と治療方法が異なるため「年齢・体重・

JCS 条件」、病態が異なれば手術術式も異なるために「手術等サブ分類」、処置についても「処置 1」と「処置 2」を設定し、化学療法、人工呼吸、再建術などの有無で分類を行う形式となっている。さらに、合併症・

併存症の有無で医療資源の消費量が異なるために「副

傷病名」、最後に上記項目でも吸収しきれない要素を

「重症度等」のコードで設定されている(図 3)。 診断群分類ツリー図(図 2)には、包括評価の対象外となった分類も含めて体系的に図示されている、こ

の図では、Kコードの 9221 等(同種骨髄移植)で診断群分類番号は点線で囲われている。ツリー図の分岐

の基準は、別途「定義テーブル」と呼ばれる表があり、

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表2 悪性リンパ腫の ICD10コードC81-C96 原発と記載されたまたは推定されたリンパ組織,造血組織および関連組織の悪性新生物

C81ホジキン<Hodgkin>病C810 リンパ球優勢型ホジキン<Hodgkin>病C811 結節硬化型ホジキン<Hodgkin>病C812 混合細胞型ホジキン<Hodgkin>病C813 リンパ球減少型ホジキン<Hodgkin>病C817 その他のホジキン<Hodgkin>病C819 ホジキン<Hodgkin>病、詳細不明

C82ろ<濾>胞性[結節性]非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫C820 中細胞型、ろ<濾>胞性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫C821 中細胞および大細胞混合型、ろ<濾>胞性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫C822 大細胞型、ろ<濾>胞性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫C827 ろ<濾>胞性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫のその他の型C829 ろ<濾>胞性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫、詳細不明

C83びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫C830 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫 小細胞型(びまん性)C831 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫 小切れ込み核細胞型(びまん性)C832 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫 小細胞および大細胞混合型(びまん性)C833 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫 大細胞型(びまん性)C834 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫 免疫芽球型(びまん性)C835 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫 リンパ芽球型(びまん性)C836 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫 未分化型(びまん性)C837 バーキット<Burkitt>リンパ腫C838 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫のその他の型C839 びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫、詳細不明

図 1 DPCのツリー構造

ICD10コード

無 有

Kコード、

Jコード等

ICD10コード等

補助コードを用いた階層的分類により多角的分析を可能とする

ICD10コード等

無 有

MDC10

病名1 病名2

手術1 手術2 手術3

合併症・補助治療等

10001.01.1.1

合併症・補助治療等

10001.00.0.0 10001.00.1.0

10001.01.0.1

10001.01.1.0

10001.02.0.1

10001.02.1.1

10001.02.1.0

手術

合併症

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図 2 非ホジキンリンパ腫のツリー図

1300303x01x0xx

手術・処置等2

01:放射線療法など

02:化学療法など

130030 非ホジキンリンパ腫

検査入院

その他の入院 手術

なし 手術・処置等2

01

その他の手術

K626$

K9222等

K9221等

あり

なし

あり

あり

あり

なし

副傷病

あり

なし

あり

なし

手術・処置等2

あり

なし

手術・処置等2

あり

なし

手術・処置等2

1300301xxxxxxx

1300303x99x00x

1300303x99x01x

1300303x99x10x

1300303x99x11x

1300303x99x20x

1300303x99x21x

1300303x97x0xx

1300303x97x1xx

1300303x05x0xx

1300303x05x1xx

1300303x01x1xx

副傷病なし

02 副傷病

1300303x00xxxx

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図 3 診断群分類番号(コード 14桁)の構成

表 3 の例では、非ホジキンリンパ腫(診断群分類番号130030)に含まれる「医療資源を最も投入した傷病名」の ICD 名称の病名グループ、手術の分岐の基準、処置などの分岐基準(インターフェロン療法の有無な

ど)、副傷病として認められる ICD 名称が定義されている。ここで注意したいことは、定義テーブルにない

治療処置、副傷病は分岐の条件にならず医療資源が特

別なグループとしては区別されないことになる。

 この診断群分類に診療報酬額を設定したのが、包括

評価制度である。(表 4)

診断群分類と包括評価制度導入の経緯 日本における診断群分類の検討は 90 年代後半からのことで、医療経済研究機構(欧州主要各国の DRG導入実態に関する調査研究: http://www.ihep.jp/research/h10-6.htm1998 年)に始まり、日本医師会、健康保険組合連合会、厚生労働省などにより調査研究が

行われてきた。特に厚生省は平成 8 年より国立病院 8病院、社会保険病院 2 病院において、急性期医療の定額支払の試行調査を行い、DRG による 1 入院当たりの定額支払い(包括支払い)による入院医療の変化を

把握し、その後の医療制度および医療保険制度改革の

基礎資料を得た。この時の DRG は 183 分類で、入院料、薬剤・材料、検査・画像診断などを包括し、手術

料および高額処置などを出来高とするシステムが採用

された。この試行の成果を踏まえて、2001年には「急性期試行診断群分類を活用した調査研究」が前出の国

立病院など 10 病院とは別に支払いを伴わない形で民間を含む 66 病院(国立 5 病院を含む)を対象に行われた。

 以上の試行と調査の結果、厚生労働省は、2002 年(平成 14 年)4 月に公示を行い、特定機能病院の機能を適切に評価し、その機能にふさわしい良質で効率

的な医療を提供する観点から、「診断群分類」を活用

した包括評価の導入を決定し、全国 82 の特定機能病

院から制度導入を前提として 2002 年にデータの収集を行った。データの収集には、DPC に分類するための必要な情報を主治医から様式 1 という形で集め、それぞれの症例の診療報酬額についてはレセプト情報を

電子化したE、Fファイルとして収集された。2002年 7 月から 10 月に 82 特定機能病院から収集した 26万 7000 件のデータをあてはめて分析した結果として作成されたものが、575傷病、2552分類からなる DPCベータ版である。ただし、実際の包括評価に利用され

たのは、2002 年度のデータで 20 症例存在し、かつ変動係数が1未満という基準を満たした1860分類となった。そして 2003年 4 月から全国 82の特定機能病院などを対象に上記の日本独自の診断群分類である DPCに基づく包括評価による支払いが開始された。2003年 7 月から 10 月までの退院患者に係わる調査(29.3万人分のデータ)と臨床専門家により構成された診断

群分類調査研究班における見直し案の報告に基づいて

2004年の包括評価対象は 1727分類となった。

包括評価制度による診療報酬額 包括評価の対象患者は、一般病棟の入院患者で包括

評価の対象となった「診断群分類」に該当した者、た

だし、当初は以下の患者は対象外とされた。入院後 24時間以内に死亡した患者、治験の対象患者、臓器移植

患者の一部、皮膚移植術、生体部分肝移植、同種腎移

植術、同種骨髄移植、同種末梢血幹細胞移植、高度先

進医療の対象患者、回復期リハビリテーション病棟入

院料等の急性期以外の特定入院料の算定対象患者、そ

の他厚生労働大臣が定める者。

 報酬の設定は包括評価部分と出来高部分から構成さ

れており、包括評価部分の点数は診断群分類毎に定め

られた 1 日当り点数と医療機関毎に設定された医療機関別係数と入院日数を掛け合わせた点数の合計となる。

包括評価の範囲は、主にホスピタルフィー的要素であ

る、入院基本料、検査(内視鏡、心カテ検査、検体採

0. なし1. あり

10 0010 3 1 01 1 1 1 1

主要診断群

(MDC)

手術サブ分類 処置等2 副傷病名

傷病名

(分類コード)

入院目的年齢・出生時体重など

処置等1

重症度等

0. なし1. 中心静脈

0. なし1. 化学療法

手術 1(●×術)手術 2(△×術)

0. なし1. あり

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取・診断穿刺を除く)、画像診断、投薬、注射、1000点未満の処置等となっている。(図 4) ここで、問題となるのは算定の範囲であるが、現在

のところ次のような基本的な考え方がされている。す

なわち薬剤・医療材料のうち、慢性肝炎に対するイン

ターフェロン療法など使用有無で点数のばらつきが大

きい場合は、診断群分類を分ける形で対応する。

• 手術・麻酔に使用した薬剤・特定保険医療材料は、手術日に点数が集中し、1 日当たりの包括評価では適正な診療報酬の支払いが困難であることから、

包括評価の対象外とする。

• 入院基本料等加算のうち、患者や病棟、地域差に着目した加算は出来高で算定するが、入院時医学

管理加算・紹介外来加算・紹介外来特別加算・急

性期入院加算・急性期特定入院加算・診療録管理

体制加算のように、機能に着目して医療機関単位

で算定する点数は医療機関別係数の形で評価する。

• 緩和ケア病棟入院料、回復期リハ病棟入院料など急性期以外の特定入院料算定対象患者は、診断群

分類に基づく包括評価の対象としない。

• 急性期患者に係る特定入院料の算定対象患者は診断群分類に基づく包括評価の対象とし、加算点数

の形で評価する。

包括評価算定の骨組み

 包括評価算定部分の疾病別点数は図 4 のように「基礎償還点数」「診断群分類別係数」「医療機関別係数」

「入院日数」の掛け算からなる。そして、この包括評

価に出来高評価が加算される。

 基礎償還点数とは、平成 14年度の 7 月から 10月まで当該 82病院より収集したデータ(上述の 26万 7 千件)から導かれた全診断群分類に係る 1 日当たり包括対象項目に関する、平均点数で、診断群分類別係数が

1 の場合の診療報酬の点数をいう。基礎償還点数は導入初年の平成 15 年度で 2759 点であった(2 年目の平成 16 年度は 2718 点に変更された)。つまり、ある傷病の診断群分類別係数が 1 であるときに、他の係数を無視すると 1日 2万 7590円の報酬額となる。

表 3-1 定義テーブル医療資源を最も投入した傷病名 手術

ICD名称 ICDコード

手術分岐対応

コードフラグ 点数表名称

Kコード

ろ胞性非ホジキンリンパ腫、詳細不明 C829 手術なし 99 99小細胞型(びまん性) C830 その他の手術あり 97 97 その他の

Kコード小切れ込み核細胞型(びまん性) C831 リンパ節摘出術 05 05 リンパ節摘出術 K626$小細胞および大細胞混合型、(びまん性) C832 骨髄移植、自家末

梢血幹細胞移植

01 01 骨髄移植 自家末梢血幹細胞移植

K9222

大細胞型(びまん性) C833 01 01 骨髄移植 自家造血幹細胞移植

K9224

免疫芽球型(びまん性) C834 01 02 臍帯血移植 K922-2リンパ芽球型(びまん性) C835 01 03 胃切除術(腹腔鏡(補助)下

によるものを含む)

K655$

未分化型(びまん性) C836 01 04 脾摘出術 K711バーキットリンパ腫 C837 00 00 骨髄移植、同種移植 K9221びまん性非ホジキンリンパ腫、詳細不明 C839 00 00 骨髄移植、同種末梢血幹細胞

移植

K9223

菌状息肉症 C840セザリー病 C841Tゾーンリンパ腫 C842リンパ顆上皮性リンパ腫 C843末梢性T細胞リンパ腫 C844B細胞リンパ腫、詳細不明 C851中細胞、ろ胞性 C820中細胞型および大細胞混合型、ろ胞性 C821大細胞型、ろ胞性 C822ろ胞性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫のその他の型

C827

びまん性非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫のその他の型

C838

その他および詳細不明のT細胞リンパ腫 C845リンパ肉腫 C850非ホジキン<non-Hodgkin>リンパ腫のその他の明示された型

C857

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表 3-2 定義テーブル手術・処置 副傷病

対応

コードフラグ 処置等名称

K・Jコード

対応

コードフラグ ICD名称 ICD

コード

2 6 リツキシマブ(リツキ

サン)

1 1 レンサ球菌敗血症 A40$

2 5 化学療法 1 1 その他の敗血症 A41$2 4 インターフェロン 1 1 アスペルギルス症 B44$2 3 血漿交換療法 J039 1 1 クリプトコッカス症 B45$1 2 放射線治療 1 1 接合菌症 B46$1 1 中心静脈注射 G005 1 1 サイトメガロウイルス感染症 B25$1 1 人工呼吸 J045$ 1 1 ヘルペスウイルス感染症 B00$

1 1 播種性血管内凝固症候群 D651 1 血栓性微細血管障害 M3111 1 肝静脈閉鎖性疾患 K7651 1 消化管出血 K92$1 1 頭蓋内出血 I62$1 1 他に分類される疾患における糸球体障害 N08$1 1 他に分類される疾患における腎尿細管間質性障害 N16$1 1 骨髄移植の拒絶反応 T8601 1 その他の移植臓器および組織の不全および拒絶 T8681 1 詳細不明の移植臓器および組織の不全および拒絶 T8691 1 肺炎 J11$1 1 肺炎 J12$1 1 肺炎 J13$1 1 肺炎 J14$1 1 肺炎 J15$1 1 肺炎 J16$1 1 肺炎 J17$1 1 肺炎 J18$1 1 深在性真菌症 B358

表 4 非ホジキンリンパ腫の診断群分類番号による包括評価診療報酬額

診断群分類番号 傷病名 手術名手術・

処置等2副傷病 I II

入院期

間 I日未満

入院期

間 II日以上

特定入院

期間(日)

1300301xxxxxxx 非ホジキンリンパ腫(検査入院)

5 12 2880 2448 24

1300303x99x00x 非ホジキンリンパ腫 なし なし なし 6 17 2746 2334 42

1300303x99x01x 非ホジキンリンパ腫 なし なし あり 8 22 3046 2589 55

1300303x99x10x 非ホジキンリンパ腫 なし 1あり なし 17 33 2029 1725 64

1300303x99x11x 非ホジキンリンパ腫 なし 1あり あり 20 42 3158 2684 93

1300303x99x20x 非ホジキンリンパ腫 なし 2あり なし 3 27 4474 3803 69

1300303x99x21x 非ホジキンリンパ腫 なし 2あり あり 5 35 4314 3667 83

1300303x97x0xx 非ホジキンリンパ腫 その他の手術あり なし 10 22 2445 2078 51

1300303x97x1xx 非ホジキンリンパ腫 その他の手術あり あり 30 60 3221 2738 119

1300303x05x0xx 非ホジキンリンパ腫 リンパ節摘出術 なし 6 13 2614 2222 29

1300303x05x1xx 非ホジキンリンパ腫 リンパ節摘出術 あり 29 57 2832 2407 110

1300303x01x1xx 非ホジキンリンパ腫 骨髄移植自家末梢血幹細胞移植

あり 28 56 4899 4164 114

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図 4 包括評価制度による診療報酬額

 診断群分類別係数とは、基礎償還点数に対する診断

群分類ごとの 1 日当たり平均点数の比率であり、全診断群分類の平均点数に対する当該診断群分類平均点数

の割合である。したがって、診断群分類Aの係数は「診

断群分類Aに係る 1 日当り包括対象項目の 82 病院における平均点数/基礎償還点数」で表される(平均点数の算出に当たってはアウトライヤー=異常値の影響

を受けにくい幾何平均が使用さている、算術平均より

平均値は小さくなる傾向になる)。

 医療機関別係数は、「医療機関ごとの機能に基づい

て算定する係数」と「前年度の医療費の実績に基づい

て設定する係数」からなる。

 「前年度の医療費の実績に基づいて設定する係数」

は、各医療機関の診断群分類別延患者数にもとづいて、

診断群分類別係数などから当該医療機関の「診断群分

類による診療報酬額」を計算。医療機関ごとに「前年

度の医療費の実績」(包括評価の対象範囲)を「診断

群分類による診療報酬額」で除することによって、当

該医療機関の「前年度の医療費の実績に基づく医療機

関別係数」を算出している。 (平たく言い換えると、包括評価制度導入により病院の収入が減少しないよう

に前年度の 4 ヶ月間のデータから出来高制度での病院収入と新制度によるそれとの比率を求め前年度収入を

下回らないように配慮した係数である。)

 なお、基礎償還点数と診断群分類別係数の算定は特

定機能病院入院基本料(2 対 1 看護)などを基準としており、これを満たしていない医療機関は、医療機関

別係数から一定値が控除される。

 出来高算定となる範囲は主にドクターフィー的要素

である、手術料、麻酔料、1000 点以上の処置、心臓カテーテル法による検査、内視鏡検査、検体採取・診

断穿刺、指導管理料、リハビリテーション、精神科専

門療法、手術・麻酔の部で算定する薬剤・特定保険医

療材料等となっている。

在院日数に応じた評価

 米国の DRG/PPS や日本における国立病院での DRGによる定額支払いの試行調査などでは、定額部分は 1入院当りとされた。しかしながら、今回の包括評価制

度では、1 日当りでの定額支払いとなっている。これは新制度導入に伴う混乱を避けるために(とくに経済

的な側面)決定されたと考えられる。しかしながら、

1 日当りでは長期入院による医療費の増加が目論まれる可能性もあり、厚生労働省は在院日数に応じた逓減

システムを考案し在院日数の短縮へのインセンティブ

を設けた。すなわち、診断群分類毎の 1日当り点数は、在院日数に応じた医療資源の投入量を適切に評価する

観点から在院日数に応じて 3 段階に設定されている(図 5)。入院日数の 25 パーセンタイル値(入院期間Ⅰ)までは平均点数に 15%加算、25 パーセンタイル値から平均在院日数(入院期間Ⅱ)までの点数は、平

均在院日数まで入院した場合の 1 日当り点数の平均点が、1 日当り平均点を段階を設けずに設定した場合と等しくなるように設定、平均在院日数を超えた日から

前日の点数の 85%で算定、平均在院日数から標準偏差の 2 倍(特定入院期間)を超えた場合は、その超えた日以降は、出来高により算定する仕組みとなってい

る。

 この考え方は、平成 16 年度の「悪性腫瘍に対する化学療法などの短期入院のある分類」の新しい設定に

も利用され、25 パーセンタイル値までの 15%加算を5パーセンタイル値までに繰り上げて設定された。 胃がんの場合の包括評価制度による算定のイメージ

を図 6に示す。

診療報酬 = 包括評価部分+出来高部分

包括範囲点数 = 診断群分類毎の1日当たり点数×医療機関別係数×在院日数

(疾患別点数)

基礎償還点数×診断群分類別係数 機能評価係数+調整係数

医療機関の前年度実績を担保するための調整係数

医療機関の機能を評価するための係数

 入院基本料等加算を係数にしたもの

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図 5 在院日数に応じた評価イメージ

胃がんの場合(30日間入院)  155,230 点

◇診断群分類:胃の悪性腫瘍、回復胃全摘術(処置等、副傷病なし)

  ※1日あたり点数 14日まで 2,939点

15 日~28日 2,172 点

29 日以上 1,846点

◇入院医療機関:A大学附属病院

  ※医療機関別係数:1.0507 調整係数:1.0245

紹介外来加算:0.0257

診療録管理体制加算:0.0005

(算定内訳)

○包括評価 = 2939 点×1.0507×14 日+2172点×1.0507×14 日

         +1846 点×1.507×2日 = 79,061点

○出来高評価 = 76,169点(胃全摘術等)

図 6 包括評価の算定のイメージ

7日 23日

2+15%

2576点

3171点

2757

2190点

一日あたりの平均点数

出来高

特定入院期間在院日数の24パーセンタイル値

入院期間I

平均在院日数

入院期間II

(1+2)の平均が2757点となる点数-15%

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平成 15年度のデータからみた血液疾患の包括評価に関する検討

 平成 15 年度の包括評価によるデータから、血液疾患に関わる特定機能病院の DPC データを解析した。血液疾患としての登録された包括評価対象患者は、骨

髄移植患者などの対象外患者を除き総数 8004 名であった(平成 15年度 7 月から 10月までの退院患者を対象)。

 血液疾患に関する診断群分類グループは、表 5 のごとく 16 に分類される。登録患者数で最も少なかったのは国立循環器病センターの 7 名、もっとも多かったのは東京医科大学の 243名、大阪市立大学は平均(97.6名)よりやや低く 86名であった。

表 5 血液疾患の診断群分類13 0010 急性白血病13 0020 ホジキン病13 0030 非ホジキンリンパ13 0040 多発性骨髄腫、免疫系悪性新生13 0050 慢性白血病、骨髄増殖性疾13 0060 骨髄異形成症候13 0070 白血球疾患(その他)13 0080 再生不良性貧血13 0090 貧血(その他)13 0100 播種性血管内凝固症候群13 0110 出血性疾患(その他)13 0111 アレルギ̶性紫斑病13 0120 血液疾患(その他)13 0130 凝固異常(その他)13 0140 造血器疾患(その他)13 0150 原発性免疫不全症候群

 図 7 は、最多登録の病院 2 箇所と平均的な病院を抽出して登録疾患の内容を見たものである。どの病院も

非ホジキンリンパ腫患者が最も多く、2 番目に急性白血病が多い傾向にあった。

 次に代表的な血液疾患での種々のインジケータの比

較を行った。

 図 8 は急性白血病での病院別の在院日数に関する箱ひげ図である。箱ひげ図とは、図 9 に示すごとく箱の部分が 25 パーセンタイルから 75 パーセンタイルを表し、全体の 50%が含まれ、箱の線は中央値(50 パーセンタイル)である。上下のひげは 90 パーセンタイルと 10 パーセンタイルを表し、それ以外のはずれ値が点で表示されている。データが正規分布していない

場合に分布形態が把握しやすいために傾向をつかむの

に多用されている。急性白血病の在院日数に関しては

当然であるが平均のばらつき(10 日以下から 100 日前後)や、病院ごとの在院日数のばらつき(箱ひげ図

の箱の部分)は大きい。(対照となる疾患を示してい

ないが、白内障手術などではこれらのインジケータの

ばらつきは少ない)

 同様に包括評価制度でみた診療報酬額の箱ひげ図が

図 10 である。分布パターンは在院日数のパターンとほぼ同じである。これを従来の出来高診療報酬額で見

た図が図 11 である。ここで注意していただきたいのは縦軸の点数単位が包括評価では 10 万点単位で出来

高制度では 50 万点である。黒丸で表示されているアウトライヤー(はずれ値)が出来高制度で非常に多く

なっている。この両者の関係を散布図でみたのは図 12で、明らかに出来高制度による点数が高いケースが多

いが包括制度で出来高請求より点数が高いケースも存

在する。そこで、両者の総点数を入院日数で除した一

日当りの点数の散布図が図 13 である。この散布図からみると 1 日当りでの出来高が 5000 点以下では包括評価による点数のほうが高い傾向にあるが、それでも

出来高点数が高いケースもあり、極端に高点数のケー

スも存在する。当然のことながら包括評価では上限が

存在する。同様の傾向は非ホジキンリンパ腫でも認め

られる。(図 14) すなわち包括評価による診療報酬制度は、個々の

ケースの請求額のばらつきを収束させている。図 15は、病院別の非ホジキンリンパ腫における出来高総額

と包括評価制度での総額を比較したものであるが明ら

かに診療報酬額の減少が生じている。

 そこで、非ホジキンリンパ腫の診断群分類別に一日

当りでの出来高と包括評価による診療報酬額を比較し

たのが図 16 である。出来高でのアウトライヤーの多いのが明らかであり、特に化学療法群 1300303x99x20x、1300303x99x21x(前者は副傷病なし、後者はあり)でアウトライヤーの数も点数も高い傾向が認められる。

血液疾患における DPCの問題点と課題 包括評価制度導入初年であった平成 15 年度は、入院患者の総診療報酬額がほとんどの病院で前年度より

増加した。これは上述のごとく医療機関別調整係数で

前年度の実績を確保した結果にすぎない。総額で見た

場合はそうであるが、個々の診療分野別に検討すれば、

とくに血液診療分野での診療報酬請求額の減額が明ら

かであった。この理由は血液診療分野では包括評価対

象疾患として急性白血病および非ホジキンリンパ腫が

半数以上を占め、これらの疾患はアウトライヤーケー

スが多いのが特徴である。この問題は、血液診療に限

らず他の診療分野でも存在し、包括評価制度導入の直

前の中央社会保険医療協議会でも議論された(平成 15年 2 月 5 日、中央社会保険医療協議会、診療報酬基本問題小委員会議、議題:特定機能病院等における包括

評価について、http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/ 02/s0205-6.html)。 しかしながら現実は、施行までの時間が迫っており

対応策なく実施されたと思われる。

 このアウトライヤーの問題の解決には、分類の精緻

化でもって対応する方法と高額な薬剤、処置を包括評

価対象外として出来高請求として見直す方法がある。

前者の方法としては、平成 16 年度の包括評価の定義テーブルでは手術・処置 2 でリツキシマブが追加された。しかし、これらの精緻化は診断群分類番号で同じ

グループに分類され薬剤の個別評価にはなっていない。

16 年度のデータが集積され、20 症例以上として医療資源的に意味あるグループとして統計的、コスト的に

分類されはじめて新しい診療報酬額が設定されると予

想される。このような問題に対して前述の中央社会保

険医療協議会の答申に基づいて厚生労働省保険局医療

課では、今年 5 月に「DPC 導入の影響評価に関わる調査に関する説明会」を開催し、DPCの評価の視点

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図 7 代表的な病院における血液疾患の比較

図 8 医療機関別急性白血病に関する在院日数の箱ひげ図

0

50

100

150

200

250

300

東京医科大学病院

埼玉医科大学附属病院

近畿大学医学部附属病院

東京慈恵会医科大学附属病院

大阪市立大学医学部附属病院

筑波大学附属病院

名古屋市立大学病院

慢性白血病、骨髄増殖性疾患

貧血(その他)(検査入院)

貧血(その他)

非ホジキンリンパ腫(検査入院)

非ホジキンリンパ腫

白血球疾患(その他)

播種性血管内凝固症候群

多発性骨髄腫、免疫系悪性新生物

出血性疾患(その他)

再生不良性貧血

骨髄異形成症候群

血液疾患(その他)

急性白血病(検査入院)

急性白血病

ホジキン病

アレルギー性紫斑病

A B C D E F大

0005

0051

0068

0189

02410247

0256

0288

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0896

09651110

13301403

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1667

1723

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2210

22612268

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2289

2422

2621

28913354

34873699

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3791

3934

4062

4171

43214519

4737

4766

4786

4788

5187

5386

53975449

5531

5626

5695

58005843

59956241

6443

6471

6496

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6797

68116957

7082

7091

7205

7569

79327988

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8190

8322

8372

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8476

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9430

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9837

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(日)

医療機関

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図 9 箱ひげ図

図 10 医療機関別急性白血病に関する包括範囲包括点数の箱ひげ図

× アウトライヤー(はずれ値)

75パーセンタイル以上、

25パーセンタイル未満の

分布における患者特性の分析

年齢

Kコード

(手術・処置)

その他の処置

手術日までの日数

依存症・合併症の内容

75パーセンタイル

50パーセンタイル

25パーセンタイル

平均

00

05

00

51

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16

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22

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22

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22

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22

89

24

22

26

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37

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39

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21

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37

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47

86

47

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86

53

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55

31

56

26

56

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43

64

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64

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68

11

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82

70

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75

69

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79

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81

90

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22

83

72

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84

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85

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医療機関

200000

400000

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300000

500000

0

(点)

Page 12: 血液診療と包括評価(DPCによる入院医療の包括評価)につ …総 説 血液診療と包括評価(DPCによる入院医療の包括評価)について 朴 勤植1、北村

図 11 医療機関別急性白血病に関する包括範囲出来高総点数

図 12 急性白血病の出来高点数と包括点数による総点数

新6桁分類: 130010(点)

(点)

R2 乗線形 = 0.801

0

200000

400000

400000

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200000

包括点数

(点)

(点)

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68

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22

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22

26

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28

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81

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(点)

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図 13 急性白血病での一日当たりの包括評価と出来高報酬額

図 14 非ホジキンリンパ腫での一日当たりの包括評価と出来高報酬額

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 22000 24000

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包括点数/日

(点)

(点)

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図 15 医療機関別の非ホジキンリンパ腫の出来高点数と包括点数の比較

図 16 診断群分類別の一日当たりの点数(非ホジキンリンパ腫)

として次のような3項目をあげ調査検討を始めている。1. 診断群分類の妥当性を評価するための調査項目 診断群分類の妥当率、構成割合、アウトライヤーの

状況、包括範囲点数および在院日数のばらつき、DPC変更率・変更理由

2. 診療内容の変化などを評価するための調査項目

 平均在院日数、病床利用率、入院・外来比率、入院

経路・退院先、退院時転帰、再入院率、薬剤、医療材

料の使用状況、検査・画像診断などの実施状況、医療

の達成度・患者満足度、アウトカム評価・臨床指標、

看護の必要度

3. 医療機関の機能の変化を評価するための調査項目

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Page 15: 血液診療と包括評価(DPCによる入院医療の包括評価)につ …総 説 血液診療と包括評価(DPCによる入院医療の包括評価)について 朴 勤植1、北村

 高度医療の提供実績、教育研修機能、地域医療との

連携状況、医療の質に関する取り組み、医療の提供体

 これらの調査項目は DPC 対象病院(特定機能病院82 病院、調査協力病院約 30 病院など)で調査が実施され、診療報酬調査専門組織 DPC 評価分科会(血液診療に関する分科会も含まれる)で評価が行われ、そ

の結果が診療報酬基本問題小委員会議に報告される予

定である。この結果が来年度の包括評価制度にどのよ

うに反映されるか不明であるが、分類の精緻化や診療

報酬請求が改善されることが望まれる。

おわりに 調査協力医療機関として、今年度からも「急性期医

療に係わる診断群分類別包括評価の試行的適用」に民

間医療機関が参加する傾向にある。昨年度参加した民

間医療機関の一部では、包括評価制度導入による入院

診療費の増収を報告している病院もある。クリニカル

パスの導入や医薬品購入の工夫など、診療の効率化が

求められている。しかしながら、血液診療においては

その特異性など、とくに個々のアウトライヤーケース

の詳細な分析が必要と考えられる。上述したように特

定機能病院での非ホジキンリンパ腫診療の場合、アウ

トライヤーのばらつきとケース数が最も多かったのが、

化学療法を施行したケースであった。この理由は治療

水準の問題より疾患サイドの問題が内在しており、診

療現場では結果的にこのグループで一番高点数の

DPC 選択になった可能性も否定できない。現実の診療内容に応じた診療報酬請求ができない制度の存続は、

とくに民間医療機関での血液診療の継続に悪影響をも

たらすと考えられる。公的および民間医療機関での試

行調査の段階で分類の精緻化や個別ケースの早急な分

析、検討が必要である

参考資料1) 社会保険研究所: 特定機能病院における入院医療の包括評価の概要. 社会保険研究所, 東京, 2003

2) 社会保険研究所: DPC 電子点数表 診断群分類点数表のてびき. 第 2版, 社会保険研究所, 東京, 2004

3) 厚生労働省包括評価説明会資料, 2003年 3月4) 松田晋哉: 包括評価制度 医療情報 医療情報システム編, pp25~29, 日本医療情報学会編集, 篠原出版新社, 東京, 2004

受付:2004年 11月 1日受理:2004年 11月 21日