アルク英語教育実態レポート...2 本レポートの概要...

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アルク英語教育実態レポート Vol.12 [2019 年3月] 小学校で英語を教える「外部人材」の指導実態 J-SHINE 資格取得者を取り巻く現状と課題-

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Page 1: アルク英語教育実態レポート...2 本レポートの概要 1.J-SHINE資格取得のうち77.7%は(自分の子ども以外の)子どもへの英語指導経験あり

アルク英語教育実態レポート Vol.12

[2019年3月]

■■

■■

小学校で英語を教える「外部人材」の指導実態

-J-SHINE 資格取得者を取り巻く現状と課題-

Page 2: アルク英語教育実態レポート...2 本レポートの概要 1.J-SHINE資格取得のうち77.7%は(自分の子ども以外の)子どもへの英語指導経験あり

1

はじめに

株式会社アルクは 1969 年の創業以来、月刊誌『ENGLISH JOURNAL』、通信講座「1000 時間ヒ

アリングマラソン」、書籍「キクタン」シリーズなど、さまざまな英語学習教材を開発してきました。

近年は、「英語スピーキング能力測定試験 TSST(Telephone Standard Speaking Test)」「英語学習ア

ドバイザー資格認定制度 ESAC(English Study Advisors’ Certificate)」を独自に開発し、学習成果の

検証や継続的学習支援のサービスも提供するようになりました。

私たちは、語学学習者に成果をもたらす有益な方法を常に追求したいと考えています。そのために

アルク教育総合研究所を設立しました。「アルク教育総研」は、学習行動が成果に結びつきやすくなる

ことを目指し、教材・学習法の研究、学習者個人・企業・教育機関のニーズ調査等を随時行い、その

結果を公表しています。

アルク教育総研はまた、語学を学んだ「その先」にも着目し、必要に応じて調査を実施しています。

「学んだ英語を活用して社会に貢献したい」と考える方の活躍の場として、近年注目を浴びているの

が「児童英語教師」です。なかでも小学校で英語を教える「小学校英語指導者」は、2011 年度、学習

指導要領に沿って小学 5、6 年生で週 1 コマ、年間 35 単位時間の「外国語活動」が必修化されたこと

もあって、人気だけでなく需要も高まっています。

こうした背景から、2003 年には、小学校における英語教育指導者の資格認定を行う NPO、小学校

英語指導者認定協議会(略称:J-SHINE)が民間主導で設立されました。J-SHINE は、2019 年 2 月

現在 40,000 人以上の資格認定者を輩出し、その資格認定者は「外部人材(地域人材)」として全国の

小学校で指導を行うことで小学英語教育を支えています。

「J-SHINE」並びに「J-SHINE 資格」認定制度が発足してから 16 年が経過しますが、その間、

J-SHINE やその他団体などによる、J-SHINE 資格取得者の活用側である小学校や教育委員会を対象

にした調査は複数実施されており、小学校などでの資格取得者の活用状況の概要を掴むことができる

ようになってきました。しかし、J-SHINE 資格取得者本人にその状況を問うた調査はまだ少なく、「資

格取得者が実際にどのように教えているのか」「教える上で感じている課題は何か」など、資格取得者

の視点からは、現状を把握しづらいのが実情だと思われます。

このような現状を踏まえ、アルク教育総研では、J-SHINE 資格認定の登録団体であるアルクが推薦

し、J-SHINE 資格が付与された資格取得者に対してアンケート調査を実施し、資格取得者の置かれて

いる現状を可能な限り浮き彫りにしようと試みました。本レポートはその結果をまとめています。2020

年度に小学校 5、6 年生での外国語が「教科化」されるに伴い、J-SHINE 資格取得者のような外部人

材の需要もさらに高まる可能性がある一方、外部人材を取り巻く環境にはまだ課題があるのも事実で

す。本レポートでは、そうした課題も、資格取得者の視点から率直に提示しました。また今回の調査

は、J-SHINE 登録の 1 企業がその推薦者に対して実施した調査のため、J-SHINE 資格取得者全体の

状況を反映しきれていない可能性も鑑みて、J-SHINE 事務局長 鈴木菜津美氏に本調査データについ

て監修をいただき、そのコメントを併記いたしました。このことにより、資格取得者を取り巻く状況

をより鮮明に描写できたと思われます。教育関係各位には、本レポートを参考にしていただき、

「J-SHINE 資格取得者が小学校などの現場でより活躍できる体制づくり」にご尽力いただけましたら

幸いです。

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◆本レポートの概要◆

1.J-SHINE 資格取得のうち 77.7%は(自分の子ども以外の)子どもへの英語指導経験あり

J-SHINE 資格を取得後、自分の子ども以外の子どもに英語を教えている(またはこれまでに教え

た)人は 77.7%。資格取得前から教えていた人もいる可能性もあるが、8 割近くが実際に教えて

いるところを見ると、J-SHINE資格が児童英語教師としての職を得ることの役に立っている可能性

も高い。

2.J-SHINE 資格取得者は外部人材として小学校の英語教育現場でも活躍

本調査において、J-SHINE 資格取得後に小学校で働いている人は、小学校で「週 5 時間以上」「3

年以上」「有償」で働いている人が多かった(「週 5 時間以上」は 40.1%、「3 年以上」は 66.7%、

「有償で」は 78.2%)。J-SHINE 資格取得者が、小学校の英語教育において、継続的に一定の戦

力となっている様子が伺える。

3.小学校英語指導者の職を得るには人的ネットワークが重要

小学校での職を得るにあたっては、「自治体からの情報」から情報を得た人が 28.6%で最多だが、

「知り合いの紹介」(20.4%)や「自分から小学校や自治体に問い合わせた」(16.3%)人も多か

った。また、「今後、資格取得される方へのアドバイス」でも「情報収集」「人脈形成」がキーワ

ードとなっていることから、小学校で教える機会を得るためには、「待ち」の姿勢ではなく、「日

ごろから情報収集したり、人脈を広げたりしておく」ことが重要、と言えそうである。

4.外部人材としての小学校英語指導者の待遇改善などが課題

小学校で教える中での悩みや不満(複数回答)としては、「雇用の不安定さや賃金の低さ」(21.1%)

「授業準備の負担が大きいこと、またその割に無償なこと」(17.0%)などが多かった。また、「学

級担任との関係」(「打ち合わせの時間が取れない」「役割分担/連携が難しい」を合計して 24.5%)、

「学級担任・学校・自治体によって差がある」(13.6%)ことも悩みの種になっている。J-SHINE

資格取得者が戦力となっている一方で、待遇や環境は必ずしも満足のいくものとなっていないこ

とが伺える。こうした点が改善され、J-SHINE 資格取得者が安心して指導に打ち込める体制が整

えば、小学校英語教育の質がさらに高まる可能性がある。また、小学校での英語教育に積極的に

関わろうとする人が増え、小学校 5、6 年生での英語が「教科化」されて指導者に対するニーズが

高まったとしても、J-SHINE 資格取得者のような外部人材を確保しやすくなると思われる。

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◆目次◆

はじめに p. 1

本レポートの概要 p. 2

1 調査概要

1.1 調査目的 p. 4

1.2 調査対象・方法・期間・回答件数 p. 4

1.3 調査項目 p. 4

2 調査結果

2.1 回答者属性(回答者全体) p. 6

2.2 回答者属性(小学校で教えている人) p. 7

2.3 子どもに英語を教えている場所 p. 9

2.4 小学校で教えている人が、ほかに教えている場所 p. 9

2.5 小学校での職をどのように得たか p. 10

2.6 小学校での英語の指導状況 p. 12

2.7 小学校で教える中での悩みや不満 p. 14

2.8 これから J-SHINE 資格を取得される方へのアドバイス p. 16

2.9 まとめ p. 20

おわりに p. 21

<< 謝辞 >>

今回の調査は、「主に自社商品やサービスの開発・改善に生かすために、J-SHINE 資格取得者の現状

を把握したい」との考えからスタートしたもので、もともとこのようなレポートとして公にする予定

のものではありませんでした。しかしながら、思いがけず多くの J-SHINE資格取得者の皆様に、記述

式設問も含めて丁寧かつ詳細な回答をいただき、現場で指導される方々の英語教育にかける熱い思い、

課題に直面してもそれを乗り越えようとする意志などに触れることとなりました。そして、この結果

をぜひ社会に広く知っていただき、指導環境改善の一つのきっかけとしたい、と思うようになりまし

た。アンケートに回答くださった皆様に感謝申し上げるとともに、ご活躍に敬意を表します。

また、ご多忙の中、調査データをご監修くださり、アンケートで捉えることの難しかった多角的な

視点や具体的事例を補足することでレポートに深みを与えてくださった、J-SHINE 事務局長 鈴木菜

津美氏に感謝申し上げます。

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1 調査概要

1.1 調査目的

「小学校英語指導者資格」(以下、J-SHINE 資格)の認定を受けた人(以下、J-SHINE 資格取得者)

が、その後どのように活動しているのか、その実態は必ずしも明らかになっていない。本調査を通じ

て、J-SHINE 資格取得者の実態、特に小学校における指導状況や課題を把握する。また、その結果を

レポートとして公表することで、J-SHINE 資格取得者が小学校英語教育において重要な役割を担って

いることを広く社会に理解いただくとともに、直面する課題についても認識してもらい、解決の糸口

を探る。

1.2 調査対象・方法・期間・回答件数

1. 調査対象

株式会社アルクで提供する、小学校英語指導者資格取得講座 (「アルク児童英語教師養成コース」

及び「小学校英語指導者資格取得研修講座」)を修了し、アルクの推薦を受けて J-SHINE 資格の

認定を受けた人のうち、J-SHINE 資格取得者対象のメールマガジン(J-SHINE NEWS)を購読

している人。

2. 調査方法

アンケートはインターネット上にて実施。J-SHINE NEWS No.156(2018 年 8 月 8 日(水)配

信)に URL を示して回答を依頼した。アンケート回答特典として、回答者全員がアンケート後に

ダウンロードできる「指導用ワークシートデータ」を提供。また、ダブルチャンスとして、イン

ターネット上の特定店舗で使用できるギフト券 1000 円分を抽選で 10 人に提供した。

3. 調査期間・回答件数

回答受付期間は 2018 年 8 月 8 日(水)~8 月 20 日(月)で、499 人から回答を得た。うち、「小

学校で教えている/教えたことのある人」は 147 人であった。

※メールマガジン配信件数・回収率は社外秘情報のため非公表

※氏名・メールアドレスから、同一人物が重複して回答していると判別できたものについては、

重複を削除して分析した

1.3 調査項目

以下に主な調査項目を挙げる。実際の調査には、「J-SHINE 資格を取得するために受講した通信講

座の満足度」など他の設問も含まれていたが、本レポートの趣旨から外れるため、ここでは提示して

いない。また、設問の番号は実際の調査と一部異なることを付記しておく。

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■属性

年代/居住地の都道府県/性別

■J-SHINE 資格取得後の状況について

Q1 どのような場所で子どもに英語を教えているか(複数回答。過去に教えていた場所も含む)

Q2 小学校での職をどのように得たか(単一回答)

Q3 小学校で誰と英語を指導しているか(単一回答)

Q4 小学校での週あたりの英語の指導時間(単一回答)

Q5 小学校で継続して教えている期間(単一回答)

Q6 小学校での指導は有償か、無償か(単一回答)

Q7 小学校で教える中での悩みや不満(自由記述)

Q8 これから資格を取得される方へのアドバイス(自由記述)

※Q2~Q6 は、現在教えていない場合は過去の経験について回答

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2 調査結果

2.1 回答者属性(回答者全体)

調査の回答者 499 人の属性は以下の通り。性別では「女性」が 97.8%と圧倒的多数を占め、年代は

「40~49 歳」が 42.9%で最多、「50~59 歳」が 34.3%でそれに続いた。「20~29 歳」は 2.8%、「30

~39 歳」は 14.6%、「60 歳以上」は 5.4%であった。本調査では子どもの有無は問うていないが、弊

社で J-SHINE 資格取得希望者からの問い合わせ時などに見聞きするケースでは子どものいる女性が

J-SHINE 資格取得を希望するケースも多いことから、子どもを育てるのと並行して、もしくは子ども

がある程度大きくなり手が離れた後に J-SHINE 資格を取得した人も一定数いると推察される。居住地

の都道府県は「東京都」(15.8%)「神奈川県」(9.0%)「大阪府」(7.0%)の順で、大都市圏が多い。

2.3 TSST の

男性

2.2%

女性

97.8%

性別(n=499) 20~29歳

2.8%

30~39歳

14.6%

40~49歳

42.9%

50~59歳

34.3%

60~69歳

4.6%

70歳~

0.8% 年代(n=499)

15.8

9.0

7.0 6.0 6.0 6.0

5.2 4.0 3.8 3.2 3.2 2.6 2.4 2.0 2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0

0.0 %

2.0 %

4.0 %

6.0 %

8.0 %

10.0 %

12.0 %

14.0 %

16.0 %

18.0 %

東京都

神奈川県

大阪府

埼玉県

千葉県

兵庫県

愛知県

北海道

静岡県

京都府

福岡県

茨城県

岐阜県

群馬県

海外

広島県

青森県

滋賀県

福井県

新潟県

居住地の都道府県(上位20位まで)(n=499)

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2.1 回答者属性(小学校で教えている人)

アンケート回答者のうち、「小学校で教えている(または過去に教えていた)人」147 人の属性は以

下の通り。回答者全体と比べると、年代で「40~49 歳」の割合が 4.1 ポイント少なく、「50~59 歳」

が 9.9 ポイント多い。J-SHINE 資格取得者の中でも小学校で教えている人はやや年齢が高め、といっ

た傾向があるようだ。居住地の都道府県は、「大阪府」居住者がやや少なかった以外は、回答者全体の

傾向とほぼ同様であった。

<J-SHINE事務局より>

小学校で教えている人の居住地に大都市圏が多いのは人口規模から考えて自然だが、それ以外にも、

小学校英語教育において先進的な取り組みをしてきた都道府県で、人口の割に「小学校で教えている

人」の割合が高めのようである。例えば、広島県(4.8%)は、広島市において 2006 年に「ひろしま

型義務教育創造特区」として国の認定を受け、2010 年度 4 月から、全小・中学校で「ひろしま型カリ

キュラム」を実施しており、国に先駆けて小学校 5、6 年における英語教育を実施してきた実績がある。

独自カリキュラムに沿って、地域の実情に合わせたパワーポイントなどを作成して指導を行っている

男性

0.7%

女性

99.3%

性別(n=147)

20~29

1.4%

30~39

8.8%

40~49

38.8%

50~59

44.2%

60~69

5.4%

70歳~

1.4%

年代(n=147)

21.1

8.8 6.8 6.1

4.8 4.8 4.8 4.8 4.1 3.4 2.7 2.7 2.0 2.0 2.0 2.0 1.4 1.4 1.4 1.4

0.0 %

5.0 %

10.0 %

15.0 %

20.0 %

25.0 %

東京都

神奈川県

埼玉県

千葉県

北海道

大阪府

兵庫県

広島県

愛知県

岐阜県

福井県

福岡県

青森県

静岡県

京都府

鹿児島県

栃木県

群馬県

新潟県

長野県

居住地の都道府県(上位20位まで)

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ようだ。福井県(2.7%)は、国が 2020 年度から 3、4 年生に外国語「活動」を、5、6 年生に「教科」

を導入するところ、2 年前倒しして 2018 年度から先行実施している。ALT も早くから導入していたよ

うだ。こうした地域で、小学校英語指導者のニーズが以前から高く、それが地域分布に反映されてい

るのかもしれない。また、上位 20位には入っていないが、石川県の金沢市は、1996年度より小学校で

の英語活動に取り組み、現在は独自教材の『Sounds Good』も使いながら小学校 1年生から週 1回以上、

1 回 15分程度、3 年生からは標準指導時数 35 時間以上の英語科授業を実施している。しかしこうした

地域でも問題がないわけでなく、例えばオリジナル教材を使っている地域へ使っていない地域から転

入してきた子どもがいた場合、「地域の取り組みのレベルが高すぎてついていけない」といった問題も

出てきていると聞く。地域の独自性を生かした英語教育は子どもたちの学習意欲を喚起したり、実際

に英語を使う場の創出につなげたりする上で重要だが、地域格差の問題にどのように対処していくか

も併せて考える必要があるだろう。

<参考資料>

●ひろしま型カリキュラム

広島市「ひろしま型カリキュラム」

http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/1245286101944/index.html

●福井県での小学校英語教育に関する取り組み

福井県における小学校外国語教育(3年~6年)の取組について

http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kyousei/sogokaigi_d/fil/180219-7.pdf

●金沢市での小学校英語教育に関する取り組み

金沢市公式ホームページ 小中一貫英語教育

https://www4.city.kanazawa.lg.jp/39019/shoutyuuikkanneigo/shoutyuuikkaneigo.html

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2.3 子どもに英語を教えている場所

J-SHINE 資格を取得後、子どもに英語を教えている(または過去に教えていた)場所は、「自宅

での英語教室」が最多で 36.5%。「小学校」は 2 番目に多く 29.5%、3 番目に「民間の英語教室やプリ

スクール」が 26.5%で続く。「自分の子どもに対して」「その他」「教えていない」への回答を除くと、

77.7%が「自宅での英語教室」から「放課後児童クラブ」までのいずれかで、自分の子ども以外に英

語を教えていた。もともと英語を教えていた人が J-SHINE 資格を取得した、というケースも考えられ

るが、8 割近くが実際に教えているところを見ると、J-SHINE 資格が児童英語教師としての職を得るこ

との役に立っている可能性も高いと思われる。

2.4 小学校で教えている人が、ほかに教えている場所

ここから先は「小学校で英語を教えている(いた)人」147 人の回答結果に絞って見ていく。147

人のうち、小学校のみで教えたことのある人は 40.1%にとどまり、2 つ以上の形態で教えている(い

た)人は 59.8%に上った。

その内訳を見ると、「自宅での英語教室」が最多の 37.4%、「民間の英語教室やプリスクール」が 19.0%

で続く。調査対象者となったアルクからの推薦で J-SHINE 資格を取得した人は、もともとアルクの子

ども英語教室(KiddyCAT 英語教室)の講師をしていた人も多いことが影響していると思われる。し

36.5

29.5 26.5

13.2

9.4

6.6

5.0

19.2

12.2

13.4

0.0 % 10.0 % 20.0 % 30.0 % 40.0 %

自宅での英語教室

小学校

民間の英語教室やプリスクール

幼稚園や保育園

英会話サークル

放課後児童クラブ(学童保育、学童クラブ)

自宅で自分の子どもに対して

その他

教えていない

J-SHINE資格を取得後、子どもに英語を教えている(いた)場所

(n=499 ※複数回答)

<「その他」の記述(中高生~大人対象、家庭教師除く。類似の回答はまとめて( )内に件数を示した)>

公共施設・公民館・カルチャースクール等での講座(10)/単発のイベント・英語絵本のお話会など(5)/小

学校の放課後教室(3)/サタデースクール(3)/生徒宅での指導(3)/小学校 英語サポーター(指導補助)

/派遣業にて ALT のお世話業務/自宅で近所の子どもだちに/自分で運営している教室で指導/自営の英語教

室(自宅外) /知人などに頼まれた時にボランティアとして/お友達が教える英会話サークルの代行講師とし

て時折/アルク KiddyCAT 英語教室/学校管轄の適応指導教室特別支援学校勤務/途上国での青空教室/

ELL/ESL students

「自分の子どもに対して」以

下を除くと 77.7%がいずれか

の形態で教えている

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かし、後で紹介するが、「小学校で教える中での悩みや不満」としては「給与や待遇面」が多く挙げら

れていたことと考え合わせると、「小学校で教えるだけでは生計が成り立たないので、他の形態でも教

えている人が多い」可能性もありそうである。

2.5 小学校での職をどのように得たか

「小学校での職をどのように得たか」という設問の回答割合を次ページの図に示す。最も多かった

回答は、「自治体からの情報(広報誌・インターネット等)」の 28.6%。「インターネットの求人情報」

(3.4%)、「新聞や雑誌の求人情報」(1.4%)と合算すると、33.4%が公開されている求人情報を見て

の応募ということになる。一方、「知り合いの紹介」20.4%、「自分から小学校や自治体に問い合わせ

た」16.3%、「小学校以外で英語を教えていて声がかかった」5.4%を合算すると 42.1%で、求人情報

37.4

19.0

13.6

8.8

6.8

6.1

19.0

8.2

0.0 % 10.0 % 20.0 % 30.0 % 40.0 %

自宅での英語教室

民間の英語教室やプリスクール

幼稚園や保育園

英会話サークル

放課後児童クラブ(学童保育、学童クラブ)

自宅で自分の子どもに対して

その他

小学校で教えている(いた)人が、そのほかに子どもに英語を教

えている(いた)場所(n=147 ※複数回答)

40.1%

40.1%

10.9%

6.1% 2.7%

小学校で教えている(いた)人の

子どもに英語を教えている形態の数(n=147)

1つ(小学校のみ)

2つ(小学校+別の形態1つ)

3つ(小学校+別の形態2つ)

4つ(小学校+別の形態3つ)

5つ(小学校+別の形態4つ)以上

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を見ての応募を上回る。小学校で英語を教えるには、公開されている情報を確認するだけでなく、小

学校や自治体などに募集状況を問い合わせたり、普段から人的ネットワークを広げたりしておくなど、

自ら動くことが大切、と言えそうである。なお、「その他」の記述回答から、147 人のうち 10 人(6.8%)

は「小学校教員として勤務」していることが分かっている。小学校の教員であっても J-SHINE 資格を

取得している人がいる、ということから、J-SHINE 資格を取得することにより英語指導力のブラッシ

ュアップを図る、J-SHINE 資格を保持することで英語指導力を証明できるなど、小学校の教員にとっ

ても、J-SHINE 資格取得・保持は一定のメリットがあると言えそうだ。

<J-SHINE事務局より>

「資格を取得した後、待っていれば仕事が転がり込んでくる」といったものではなく、仕事を求め

て自分からアクティブに動くことが大切、というのはその通りだと思う。なお、地方に住んでいると

雇用されるチャンスが少ないと思われがちだが、実は地方では J-SHINE 資格取得者のような地域人材

を積極的に活用している地域もある。それには外国人の ALT(Assistant Language Teacher)を雇用す

ることが難しい、という現状も影響している。特に JET プログラムにおいて、外国人を雇用するには、

住まいの確保から病院にかかるときのお世話まで自治体の職員がケアしなければならず大変手間がか

かる上、一定期間後には帰国してしまったりして定着しづらいことも多い。それに比べると、地域在

住の日本人指導者は雇用にまつわる自治体側の負担が少ないというメリットがある。また、「英語教師

はネイティブ・スピーカーでないと」といった「ネイティブ・スピーカー至上主義」が少なくなって

きていることも影響しているかもしれない。事務局として活動していると、J-SHINE資格取得者のニー

ズが高まってきていると感じる地域もあるので、諦めずに、小学校や自治体など多方面に働きかけて

みてほしい。

28.6%

20.4% 16.3%

5.4%

3.4%

1.4%

24.5%

小学校での職をどのように得たか(n=147)

自治体からの情報(広報誌・インターネット等)

知り合いの紹介

自分から小学校や自治体に問い合わせた

小学校以外で英語を教えていて声がかかった

インターネットの求人情報

新聞や雑誌の求人情報

その他

<「その他」の記述(類似の回答はまとめて( )内に件数を示した)>

小学校教員として勤務(10)/子どもの学級担任・学校・自治体から頼まれた(7)/子どもの学校からの募集(5)/ハ

ローワーク(3)/子どもの学校でのお手伝い・ボランティアがきっかけで(2)/小学校の英語絵本の読み聞かせを

していたことから/親族が小学校の教師であるので、声がかかった/子どもの学級担任の先生にお話ししていた

ところ、その先生が他校に転勤された際、その学校での英語指導のお話をいただいた/市の国際交流センターか

らの案内/所属している市で依頼された/J-SHINE からの募集のメール/日本語講師として入っていた学校/

PTA/市の広報誌を見てのボランティア

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2.6 小学校での英語の指導状況

「誰と英語を指導しているか」という設問については、「1 人で」は少なく 8.2%にとどまり、残り

の 91.8%は他の教員などと一緒に指導していた。その相手は「学級担任」が 58.5%で圧倒的多数を占

め、「学級担任・ALT」15.6%、「ALT」10.2%が続く。後の設問でも紹介するが、J-SHINE 資格取得者

が小学校で教えるときには、学級担任や ALTと役割を分担したり、コミュニケーションを密に取った

りすることが欠かせない要素であると言えそうである。

「小学校での週あたりの英語の指導時間」は、「5 時間以上」が 40.1%と最多。「継続して教えてい

る期間」も「3 年以上」の割合が 66.7%と最も高い。給与については「有償」が 78.2%と多数を占め

る。J-SHINE 資格取得者が、小学校において継続的に戦力となっており、報酬を得ての仕事につなが

っている様子が伺える。

58.5% 15.6%

10.2%

8.2%

7.5%

小学校で誰と英語を指導しているか(n=147)

学級担任と一緒に

学級担任・ALTと一緒に

ALTと一緒に

1人で

その他

20.4%

20.4%

19.0%

40.1%

小学校での週あたりの英語の指導時間(n=147)

1時間未満

1~3時間未満

3~5時間未満

5時間以上

<「その他」の記述>

ALT と学級担任ではない JTE/他の指導者・学級担任と一緒に/他の指導者と共に/同僚(日本人)と一緒に

/学級担任単独か日本人 ALT と(回答者は小学校教師との記載あり)/英語専任教師(小学校教師)と一緒に

/保護者2人で/サタデースクールというボランティア活動を一緒に実施している方と/地域ボランティアと/

サポーターと/小学校の放課後英語で、1 人で

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<J-SHINE事務局より>

「誰と指導しているか」の設問で、「1人で」と回答した 8.2%について、学級担任が教室にいても、

採点など別の業務を実施していたりして実質的に指導に参加していないこともあるようなので、そう

したケースを「1 人で」教えている、と回答している可能性もあるかもしれない。また、最近では、学

級担任、ALTに次ぐ「T3(3 人目の教師役。通常、T1 を学級担任、T2 を ALTや地域人材が務めること

が多い)」としての役割を求められて採用されるケースも出てきている。学級担任と ALT はお互いに忙

しい中、短時間で授業の打ち合わせをする必要があるが、学級担任が英語が話せないと翻訳サイトな

どに頼らざるをえなかったり、英語授業についてあまり知識がないと ALT と話がかみ合わなかったり

して、非常に時間がかかってしまう場合があると聞く。そうした際に地域人材が通訳も兼ねて学級担

任と ALT との橋渡し役として雇用されることが出てきている。J-SHINE 資格取得者の役割は、必ずしも

「子どもに英語を教える」ことに限定されるものではない。「小学校英語の定着化を支援するためにで

きることはやっていく」という姿勢が必要だろう。

「小学校で継続して教えている期間」の設問に関して、「長く教えている人が予想より多い」という

印象である。なぜなら、1つの市区町村では最長 3年までしか同一の非常勤の教師を雇用できない、と

いう制限があるケースが多いからだ。今回のアンケートでは 3 年以上教えている人が多い(66.7%)

が、これが正しいとすれば、いくつかの自治体をまたいで教えていて、合算した指導期間が 3年以上

である可能性が高い。なお、3年までしか継続雇用されないことにまつわる難しさもある。例えば、自

治体側から見れば、雇用期間の制限があることで、せっかくその地域で関係を構築した地域人材が流

12.9% 4.8%

15.6%

66.7%

小学校で継続して教えている期間(n=147)

6カ月未満

6カ月以上1年未満

1年以上3年未満

3年以上

78.2%

5.4%

16.3%

小学校での活動は有償か、無償か(n=147)

有償

交通費等の実費のみ支給

無償

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出してしまうことが地域の小学校英語教育を継続的・効果的に推進していく上での課題となる。地域

人材側から見れば、地元の自治体での雇用期間が終了して別の自治体に働きに出ると、交通費が支給

されない場合や(通勤時間が労働時間に含まれない)時給での雇用の場合、通勤時間が長くなる割に

手取りが減ってしまうといった問題がある。特に降雪が多い地域では、冬季の車での長距離移動は負

担が大きいため、勤務先の自治体の変更は影響が大きい。地域人材が経年で指導を続けるための物理

的なハードルが高いと、小学校で教え続けることへのモチベーションを維持することが難しくなり、

指導の継続を断念する人も出てくるかもしれない。雇用期間や雇用形態にまつわる問題を解消してい

くことは、英語教育の質と量を確保する上で避けて通れない課題だろう。

2.7 小学校で教える中での悩みや不満

次に、記述式で「小学校で教える中での悩みや不満」を問うた設問の回答を以下の図で見てみたい。

■雇用が不安定/低賃金だが授業準備の負担が大きい

自由記述の回答を、共通の要素で分類したところ(複数回答あり)、「雇用が不安定/無償または低

賃金」が 21.1%で最多、「準備の負担が大きい/準備が無償である」が 17.0%でそれに続いた。具体

的なコメントを見ると、「低学年を教え始めたが、教材用のカードなど何もなく自分で用意しなければ

ならないので、準備に時間がかかる。学校にいられる時間が限られているので指導案作りなどの授業

準備や振り返りのチェックなど持ち帰りの仕事が多く時間がとられるが、無償である」といったよう

に、雇用が不安定/低賃金の割に準備の負担が大きい、というものも多く、この 2 つは表裏一体と見

られる。「スタートから無償ボランティアで入ったので、世の中が英語教科化になるのに、全く変わら

ず無償ボランティアで継続する様子。さらには、最近になって次年度はボランティアが不必要になる

ことも聞いている」「受け持つ授業の回数がとても少ない」「この職を継続したいけれど生活ができな

い」といった切実な声も多く寄せられた。本調査によれば、J-SHINE 資格取得者、並びに小学校で指

導している人は女性が大半であるが、生計が立てにくいため、一家の家計を担うことの多い男性は参

入しづらい、という理由があるのかもしれない。

21.1% 17.0%

14.3%

13.6%

10.9%

10.2%

5.4%

2.7%

2.7%

18.4%

0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0%

雇用が不安定/無償または低賃金

準備の負担が大きい/準備が無償である

学級担任等と打ち合わせの時間が取れない

学級担任・学校・地域によって差がある

英語(教員)の優先順位が低い

学級担任等との役割分担/連携が難しい

T1としての役割を求められる/役割が大きすぎる

クラス運営が難しい/クラスの人数が多い

生徒の意欲/英語レベルにばらつきがある

その他

小学校で教える中での悩みや不満(n=147)

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また、授業準備に関連して、「TT(Team Teaching)に加えて学級担任の先生が単独で授業できるよ

う支援していくのが仕事ととらえているが、学級担任の先生の自立=自分の失業になるかもしれない

と思うと気持ちは複雑です」「JTE(Japanese Teacher of English)がいろいろ引き受けると、学級担

任の先生があまり動かなくなるため、悩みどころです。振り返りシートまで作っています」「学級担任

だけで教える時間のための指導案まで書いています」といった、学級担任の先生を支援することで小

学校の英語教育に貢献したいが、そうすると自身の役割や居場所がなくなったり、低賃金(無償)に

も関わらず都合の良いように利用されたりするので思い切ってできないなど、J-SHINE 資格取得者が、

英語教育に貢献したい気持ちがあっても、立場が不安定なため思い切ってできないという、理想と現

実の狭間で思い悩んでいる姿が浮かび上がってきた。それでも学校や教員、保護者にその努力が認知

されればまだよいが、「学級担任は忙しいため、英語にはノータッチの方が多く、結局、私たち(外部

人材)が授業準備から授業まですべて行うのですが、それでも学級担任が授業していることになって

いることが不満でした。公開授業の時だけは学級担任が前に出られ、いつも授業しているようなふう

になっていました」というように、中には J-SHINE 資格取得者が努力と工夫で(時には無償で)行っ

ていることが必ずしも正しく認知されていない、というケースもあるようである。

■学級担任の教員、学校、自治体などとの関係性

ほかに多かった種類の悩みや不満としては、「学級担任等と打合せの時間が取れない」(14.3%)、「学

級担任・学校・地域によって差がある」(13.6%)、「学級担任との役割分担/連携が難しい」(10.2%)

といった、指導を担当するパートナーである学級担任や、学校などとのやり取りの難しさが挙げられ

た。具体的には、「学級担任と英語指導助手(自分)の打ち合わせ時間がほとんどないため、より良い

ティームティーチングにしていくことに苦労している。学校に常駐しているわけではないので、不便

なことも多い」「学級担任との十分な打ち合わせ時間が取れない。学級担任が多忙すぎること、英語の

優先度が非常に低いことが原因。無理に打ち合わせようとすると学級担任が英語授業に対して気持ち

よく協力してくれなくなるケースを周りで見ているので、積極的には出られない」といった声が寄せ

られた。忙しい学級担任の教員と、小学校に常駐していない J-SHINE 資格取得者が円滑にコミュニケ

ーションを取るには、気配りや気遣いが必要になるようである。学級担任の英語授業に対する技量や

熱意にも差があるので、「機器操作にうとい、又はやりたがらない学級担任がいる。外国語の時間を忘

れられていることがある」「学級経営がきちんとできていないクラスの授業はとても体力を使います」

といった、英語を教える以前の苦労もあるようである。

そのほか、「学級担任主導で授業をするよう、市教委、校長からは言われるが、学級担任はできない

と言う。市教委、校長と学級担任との間で板挟みのような状態」「自治体は指導スケジュール表(案)

を提示しているだけで、各校の英語担当教諭への指導内容へのフォローはなく、どのような内容で活

動させたいのかわからない」「短いスパンで文科省から副教材(『Hi, friends!』『We can!』など)が発

行されるため、指導計画の見直しや、教材作成に時間がかかってしまう」といった、小学校英語教育

がまだ定着しておらず過渡期であるがゆえに、文部科学省、教育委員会、学校、学級担任などの思惑

が必ずしも合致していなかったり、それを実現する体制が整っていなかったりして、外部人材に過度

な負担がかかっている状況もあるようだ。

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■その他の不安、悩み

「その他」に分類した記述は、「年間総時間数のうち 10 時間だけ入るので、他の時間との流れを考

えて授業するのが難しい」「2020 年の小学校外国語教科化になった時、子どもたちに楽しみながら英

語を指導できるか不安」といった指導内容にまつわるものから、「使用する教材に失礼な言い回しや本

来使わない文があり、教えることに躊躇してしまう」「評価が入ってきている」といった教材や評価に

関するもの、「もう一人の先生が私の指導法に納得がいかないようで、細かい点を指摘したり、私が受

け持った学年の翌年に生徒たちに私の指導方法を否定するような事を言ったりする」「ALT が、外部人

材の JTE が授業を見学することや、サポートに入ることを拒否することがあった」「自治体内の英語

ボランティアが慢性的に不足している」といった人間関係に関するもの、「テキストに付属する DVD

を使うための機器が各教室に揃っていない」「授業内容についてメールで連絡を欲しいが FAX しかな

く不便」といった環境に関するものまでさまざまであった。

<J-SHINE事務局より>

回答者の 21.1%が挙げた、雇用に関する課題は J-SHINE 事務局でも認識している。まず、前の設問

でも指摘した通り、3 年という期間の縛りがあることが問題を生んでいると考えられる(p.13 参照)。

特別免許状を出してもらい 3 年以上継続雇用可能な専科教員として採用される、というケースもなく

はないが、それはまた J-SHINE 資格取得者のような地域人材のニーズと必ずしも合致しない、という

問題もある。地域人材は「英語を教えたい」人が多いが、専科教員になると、給食指導や学級担任業

務など他の指導、評価など、小学校の教員としての他の業務も必須になるため、そうした業務はやり

たくない、という人も多い。雇用側も雇用される側も、地域人材に何を求めるのかを明確にして、そ

れに見合った人材が雇用できるような仕組みを作ることが必要だろう。

「準備が無償」と言うのもその通りだ。時給で雇用されている人が多いが、その場合授業の時間分

しか給与が支払われず、打ち合わせや授業準備の時間は無償になってしまうケースは多い。そうかと

思えば、一部ではあるが、求める人材を募集する難しさを反映して月給制で給与がどんどん上がって

いる東京(の 23区の一部)のような地域もあり、地域差はどんどん大きくなっているようだ。今後は

どの地域でも、日給や月給制にする、もしくは授業の時間給にそうした他の業務分の給与も上乗せす

る、といった雇用にすることで、地域人材の需要が増加した場合でも、十分な人材を確保することが

可能になると考えられる。

「学級担任によって差がある」「(J-SHINE資格取得者が)管理職と学級担任、学級担任と ALT などと

の板挟みになっている」といったコメントがあったが、これはむしろ J-SHINE 資格取得者などの地域

人材側が活躍できる機会と捉えてもらえたらと考えている。学級担任や ALT など、一緒に指導する相

手は毎時間違うのだから、「地域人材がその都度求められる役割を察知して立ち回る」といった工夫を

することで授業の中身がより良いものとなる。また、第三者としての地域人材が入ることで、ものご

とが円滑に進むこともあるので、そうした役割を認識して可能な範囲で担っていくことも大切だと思

う。雇用の問題を解決していくことと両輪での議論ではあるが、J-SHINE資格取得者には、さまざまな

役割を自ら買って出て、小学校英語に貢献していくような意欲の高い人材になってほしい。

2.8 これから J-SHINE 資格を取得される方へのアドバイス

本調査では、最後の設問(属性情報などを除く)として、これから資格を取得される方へのアドバ

イスを記述してもらった。その回答を、「悩みや不満」と同様、共通の要素で分類したものを次ページ

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に示す(複数回答あり)。

■情報収集・人脈作りが大切

最も多かった回答は、「情報収集・人脈づくりが大切」(21.2%)であった。具体的には、「資格の勉

強をしながら、近くの小学校で需要があるかどうかなども、調べておいた方がいいと思います。外部

からの先生をあまり募集していない地域もあるようです」「今指導されている方に話を聞いておくこと

をおすすめします。そうすると早めに指導員の募集のことなどを知ることができます」「見学の際、休

み時間に、学校の教員ではなく、JTE などの指導者に声をかけて話を聞く」などのアドバイスが寄せ

られた。資格取得の準備中から、資格取得後も見据えて情報収集することが大切なようである。また、

「お子さんがいるならお子さんの学校、知り合いに小学校の先生がいるならその方など繋がりそうな

人脈は、役を買って出るなど打算的にならず自然に広げていくと学校現場で教える機会にも繋がる可

能性があります」「地域の小学校や幼稚園などの人脈作りは大変助かりました。PTA 本部役員を務めて

前にも増して小学校内での活動の参考になりました。ぜひ、地域ボランティアなど児童と共に行える

機会があれば参加してください」といったように、必ずしも小学校で英語を教える職を得るためだけ

でなく、指導するようになった後にも役立つため、普段から可能な範囲で人脈を広げておくことが大

切と指摘したコメントも複数あった。

■現場を知ることが大切

次に多かったアドバイスは「授業見学・実践等、現場で学ぶとよい」(19.2%)で、具体的な例とし

ては、「講座受講中から、ボランティア等で学校に入っていくと雰囲気がわかり実際に働くときに戸惑

いが少なくて済みます」「小学校で教えたい場合は、授業に入ってレッスンをされる前に実際の授業を

小学校で見学され、学級担任との役割分担や授業のどの部分を担えるかを把握されるとよいと思いま

す」「ボランティアの読み聞かせがある小学校も多いので、そこで英語の絵本の読み聞かせをするなど

してもよいと思います」といったものがあった。J-SHINE 資格取得前に子どもへの指導経験があまり

21.2% 19.2%

6.6%

6.6%

5.3%

5.3%

4.6%

3.3%

3.3%

20.5%

0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0%

情報収集・人脈づくりが大切

授業見学・実践等、現場で学ぶとよい

子どもや教師とのコミュニケーション力が大切

J-SHINE資格・待遇に期待し過ぎない方がよい

まずは資格を取得してみることから

英語力向上や自己研鑽が大切

小学校以外で経験を積むとよい

教え方のレパートリーを増やすとよい

J-SHINE資格をアピールすべき

その他

これから「小学校英語指導者資格(J-SHINE資格)」を取得される方へ

のアドバイス(n=147)

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ない場合などは特に、資格取得前に少しでも小学校の実情を掴むことで、いざ教えるとなったときに

もよりスムーズに実施できる、といったメリットがありそうである。また、コメントにはなかったが、

ボランティアや授業見学を実施しておくことは、現場を想定したレッスンプラン作成などにもつなが

り、J-SHINE 資格取得のための学習にも役立つ可能性が高いと思われる。関連するアドバイスとして、

「小学校以外で経験を積むとよい」も 4.6%あり、具体的には「小学校で英語指導するために、他の場

所(自宅教室や、サークルなど)で経験・実績を積んでおくのも重要と思います」「中学高校の教員経

験や民間の英語学校での指導経験があれば、小学校での採用の際、有利であると思います」といった

ものが見られた。

■J-SHINE 資格の有効性

そのほかに目立ったものは、「J-SHINE 資格・待遇に期待し過ぎない方がよい」(6.6%)や「まず

は資格を取得してみることから(始まる)」(5.3%)という、一見して相反するアドバイスである。

前項で紹介した「悩みや不満」でも給与・待遇面が最多であったが、ここでも「J-SHINE 資格を取得

したからと言って仕事や給与・待遇が保証されるわけではない」というコメントが複数見られた。具

体的には、「職業としては成り立つのは難しいです。この資格以外に、教員免許がないと教えられなく

なってきています」「ほとんどボランティアで行う覚悟がなければ、公立の小学校で英語を教えるのは

難しいです」といったものが挙げられる。本調査では「有償で(教えている)」が 78.2%を占め、J-SHINE

ホームページ( http://www.j-shine.org/ )の「お知らせ」を見ると、一定の給与が保証されている求

人も掲載されてはいるものの、J-SHINE 資格に見合った給与・待遇を受けるのは難しいと考えている

資格取得者がいるのもまた、事実なのだろう。しかしその一方で、「まずは資格を取得してみることか

ら(始まる)」の声も多く、「まずは、講座を受けてみるべきである。そこから人脈づくりもできるし、

自信もつくと思う」「取得はスタートラインに初めて立つための必需品です。そのあとは、雇用する側

がどのような意識でどのようなことを求めているか瞬時に把握することが大事です」「小学校英語指導

者資格(J-SHINE 資格)の認知度がますます上がってきているように感じます。現に求人の資格欄に

J-SHINE 資格という記載を目にします」「履歴書の資格欄に英検や TOEIC スコアに加え、J-SHINE

も記すと自己アピールになります」といった、J-SHINE 資格がなければ始まらない、資格をアピール

すべき、という趣旨のコメントも多く見られた。

なお、印象的だったのは、「J-SHINE 資格を取得したからと言って仕事や給与・待遇が保証される

わけではない」という趣旨のコメントを寄せた複数人(前に紹介したものも含む)が、「それでも子ど

もに英語を教えることにはやりがいがある」「それでも小学校で教えたかったのでアピールした」とい

った前向きなコメントを寄せていたことである。以下に抜粋して紹介したい。

・ほとんどボランティアで行う覚悟がなければ、公立の小学校で英語を教えるのは難しいです。風変

わりな学級担任の先生と上手くやっていく忍耐も必要です。でも、子どもたちの笑顔が見られた時

は、無償でもやりがいや生きがいを感じられるのは保証できます。

・まだまだこの資格の小学校側の認知度は低く、有償で来てもらうならネイティブ・スピーカーの先

生と考えている所があるので、がっかりするかもしれません。その考えを覆すには、ボランティア

でもユニークで魅力的な授業を続けていくしかないのかなと思います。

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・学校あるいは教育委員会などでの、この資格の知名度は低いです。持っていたから仕事に就けると

いうことはありません。でも、私の場合、小学校教師の教員免許を持っていないので、この資格を

取得するために努力したというところを、一生懸命アピールしました。

上記以外には、「子どもや教師とのコミュニケーション力が大切」(6.6%)、「英語力や自己研鑽が大

切」(5.3%)、「教え方のレパートリーを増やすとよい」(3.3%)などをはじめ、現場で教えているから

こその具体的なアドバイスが多く見られた。こちらも、特にこれから小学校英語指導者を目指す人の

参考になると思われるため、いくつか紹介したい。

【子どもや教師とのコミュニケーション力が大切】

・地域差もあるでしょうが、先生方はいつもとても忙しく、配慮の必要な児童や家庭も多く、学校

内はいつもバタバタしています。学校で教えるということは、実際の授業だけではなく、そうし

たことにも配慮していくことになるということを理解しておいたほうがよいと思います。

・先生方との信頼関係がしっかりしていると、教材作成など色々な場面で助けていただけるなど、

児童にも良い影響があると思います。

・小学生に今流行っているもの、ゲームやまんが、キャラクターなどの情報もたくさん知っておき、

実際に見たり試してみたりすることをお勧めします。子どもたちと同じ目線で物事を見ることが

でき、彼らに共感することで信頼が生まれます。これができるとこちらの話をよく聞いてくれる

ようになります。

【英語力や自己研鑽が大切】

・子ども達のために自分がいることを意識して、学校教育の一端を担う存在になる様に、自分も

研鑽を続けていかれることが大切です。

・英語の何を教えたいのか? など自分の中で思いを構築し、心に響く授業をする努力をし続け

てください。

【教え方のレパートリーを増やすとよい】

・ティームティーチングでは、学級担任が T1、私は T2 の立場で指導していますが、不慣れな学

級担任の先生は、私達サポーターの存在をとても頼りに思っていらっしゃいます。指導案は学

校側が用意していますが、そこに助言や、アドバイスをしています。その為、たくさんの知識

やアクティビティなどの引き出しが求められます。常に情報に敏感である必要があります。

・小学校の場合、児童は飽きやすいので、多種の活動を組み合わせ飽きさせないように工夫が大

事です。

<J-SHINE事務局より>

「英語力向上や自己研鑽が大切」というアドバイスが意外に少ない(5.3%)と感じた。これは調査

対象者がアルクの推薦を受けた J-SHINE資格取得者であることが影響しているかもしれない(アルク

の顧客は英語力が高い人が多いと思われるため、英語力の向上を必須と考えていないのかもしれない)。

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実際は、まず英語力がないと英語を教えられないので、英語のスキルアップは必須。それ以外は、こ

こでの指摘の通りだと思われる。

2.9 まとめ

今回の調査を通じて、調査対象者である J-SHINE 資格取得者の多くが、小学校をはじめとした各種

教育現場で子どもに英語を教えており、とりわけ小学校においては、「週 5 時間以上」「3 年以上」「有

償で」教えている割合が高く、小学校英語指導者として J-SHINE 資格取得者が一定の戦力になってい

る様子が浮かび上がってきた。資格認定制度が発足して 16 年、J-SHINE 事務局の継続的な活動や、

J-SHINE 資格取得者の日々の努力があったからこそ、こうした状況に至っていると考えられる。しか

しその一方で、J-SHINE 資格取得者は、給与・待遇面をはじめとする課題も依然として多く感じてい

ることが分かった。J-SHINE 事務局及び登録団体は、これからも資格取得者のサポーターとして、資

格取得者を励まし、支援し、時には状況改善に必要な苦言も呈すると同時に社会へも働きかけ、教育

関係者と協同で、資格取得者がより活躍しやすい状況を作っていくことが肝要と思われる。

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おわりに

先に記した通り、今回の調査はもともと、アルクの商品開発・改善等を目的とした実態調査であり、

いわば、「自分たちのための調査」でした。しかし、回答くださった方々の、特に記述式設問に対する

丁寧かつ詳細な回答を拝見したことで、この結果をぜひ公表し、「J-SHINE 資格取得者が教育現場で

日々課題に直面しながらも奮闘していることを多くの方に知っていただきたい」という思いが芽生え

ました。

本調査は、もともとの成り立ちから、サンプルが特定層に集中していたり(アルクで推薦を受けた

J-SHINE 資格取得者のみが対象)、回答者に特典を提供しての調査であったりという条件付けもあり、

この結果が J-SHINE 資格取得者全体を表しているとは言えないかもしれません。そうした偏りを少し

でも補正して可能な限り実際に即した情報を提供するため、J-SHINE 事務局に協力を仰ぎました。調

査にご協力くださった回答者の皆様と、J-SHINE 事務局長の鈴木菜津美氏に、改めて感謝申し上げま

す。

本レポートの作成を通じて感じたのは、J-SHINE 資格を取得した方々の多くが小学校をはじめとし

た英語教育の現場で活躍されている事実がありながらも、小学校での指導においては課題も残されて

いるということです。しかし一方で、J-SHINE 資格取得者の方々が、J-SHINE や他の関係者のサポ

ートを受けながら、子どもに英語を教える仕事を楽しみ、日々それぞれの工夫と努力で課題をたくま

しく乗り切ろうとしている姿も、調査から透けて見えました。そうした資格取得者からの声をご紹介

し、本レポートを締めくくりたいと思います。

・この仕事に就いて、英語が話せる=教えられることではないとよくわかりました。教材や指導案

の準備は大変ですが、将来ある子どもたちの一助となる仕事にやりがいと誇りを持っています。

・個性が異なる子供たちが、お互いに助け合ったり、切磋琢磨したりしてみんなが少しずつ上達し

ていく姿を見るのは、先生の醍醐味です。この快感を経験してほしいと思います。

・特に英語に初めて触れるこどもにとって、『最初の忘れられない英語の先生』になって欲しいです。

その後、中学、高校とずっと英語の学習者になる小学生にとって「あの時の英語は楽しかった」

と思わせるような先生になって欲しいです。

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