マット式空気ジャッキ補助器具の考案について-44- 1 はじめに...
TRANSCRIPT
- 44 -
1 はじめに
救助活動現場において、重量物の下敷き事故や機械器具での挟まれ事故等の
救出方法の一つとして、マット式空気ジャッキ(以下「マット」という。)を
使用しての救出活動があります。
このマットは、薄い板状でサイズも各種あり、わずか数センチの間隙でも使
用可能です。簡単にいえば、薄い板状の風船を膨らませるといった原理で、大
型油圧救助器具等が使用できない狭隘な箇所に使用でき、取り扱いが非常に容
易です。
2 考案理由
通常マットを使用する場合、マットの上下に当木を設定しますが、マットを
一定以上膨らませると、マットと接地面との安定感がなくなり、最悪マット上
部の当木が外れて(または、荷重ポイントがずれて)要救助者、更に隊員の負
傷(生命)の危険性が増すことになります。(添付図1参照)
更に、開放の高さを確保するため、マットを二枚重ねて使用する場合は、一
枚で使用している時以上にバランスをとることが困難であり危険性も倍増し、
マットを膨らませるときの送気に細心の注意をはらわなければなりません。
以上の点から、高さを確保するため、マットと当木の接地面積の減少から不
安定となる危険性を容易に排除でき、安全・確実・迅速な活動が可能となる補
助器具の考案を目的としました。
3 構造について(添付図2・添付写真1参照)
補助器具は上下用・中間用の2種類です。
大きさは、縦・横30cm、厚さ2.5cmの四角形で中央に直径18cmの穴を開けた
形状です。なお大きさについては、試作品をコンパネにて何種類か作成し、マッ
トに合わせてみて、最も機器とマットが密着するサイズを選定しました。
材質は硬質合成ゴム(硬度65度)を使用します。硬質合成ゴムは、硬度5度
~95度までありますが、ゴムによる利点(ゴムの弾性による吸収力)を考慮し、
マット式空気ジャッキ補助器具の考案について
湖北地域消防本部(滋賀) 中川 雄二森田 茂伸
- 45 -
硬度65度を使用します。尚、硬度65度とは住宅用基礎パッキンと同程度の強度
があります。機器の作成についてはゴム加工業者に製作を依頼し、価格は1枚
約15000円です。
周囲側面には、夜間活動時における視認性向上のため、反射テープを取り付
けます。
表面には、凸凹の加工を施し、滑り止めの効果を得ます。
通常、当木には側面に取っ手を取り付けている場合が多く活動時に障害とな
る場合があるが、本器具はゴムをくりぬいた取っ手を設けており支障なく活動
が可能であり、器具搬送も容易です。
中間用補助器具の中心の穴は、両面から中心に向けてすり鉢状の傾斜をつけ
ます。
上下用補助器具には、表面のみすり鉢状の傾斜をつけ、裏面には、マットと
持ち上げ対象物との直接接触を防ぐため、穴を塞ぐゴム板を取り付けます。
中間用・上下用補助器具の傾斜部によりマットを膨らませたときに、器具と
密着し安定効果を得ます。
4 器具の利点(添付図3・添付写真2.3参照)
・ 本器具とマットを活用することにより、活動時におけるマットのぐらつきが
殆どなくなり、安定した対象物の持ち上げが可能である。
・ ぐらつきがないことからスムーズに送気することが可能で、安全かつ迅速に
救助活動が行える。
・ 通常使用する当木の代用として使用でき、当木とマットでは滑りやすいが、
ゴム製の器具とマットは滑りにくく安定している。
・ 補助器具と当木を併用することで、更に高さを得る事が可能である。
・ 各サイズのマットに使用可能である。
5 最後に
現場活動は、安全かつ迅速な作業の実施が求められます。この安全と迅速は
両立しがたいもので、使命を果たそうと急げば、安全確認が不十分になってし
まうおそれがあります。また、逆に安全確認を十分に行おうとすれば、多少時
間がかかってしまうことになります。この機器を使用することにより、安全か
つ迅速な活動の両立が可能となります。
- 46 -
最後に、今回考案した器具を活用することにより隊員の労力軽減はもとより、
要救助者・隊員の安全性の向上につながるものと確信します。
- 47 -
- 48 -
- 49 -
- 50 -
- 51 -
- 52 -