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Journal Club 2013 December 1 要約 背景:臓器移植者の血中に無細胞 DNA が検出される場合は、移植片の損傷および臓器 拒絶の可能性を考慮して治療を進めなくてはならない。今回は、心臓移植後の維持段階 後の患者を対象とした調査を行い、まずマイクロアレイ分析および提供者・移植者 DNA の大規模な並列シークエンシングを使い、無細胞 DNA の「拒絶反応のバイオマー カー」としての有用性を検証した。マイクロアレイやシークエンシングによる分析はか なり費用がかかり、所要時間も長く、提供者 DNA のサンプルを多く必要とするため、 ルーチン検査として行うのは難しい。そこで今回は、比較的コスト効率がよく、所要時 間も短い、デジタル液滴 PCR で同じ分析が出来ないか検証した。 方法:まず移植後、安定した患者の血漿サンプルを採集した。肝移植(LTx)の患者 10 人、腎移植(KTx)の患者 9 人、および心移植(HTx)の患者 8 人のサンプルを採集し た。さらに、肝移植直後の患者 7 人のサンプルも採集した。次に、確認済みの SNP Single Nucleotide Polymorphism、一塩基変異多型)のうち、MAF(マイナー対遺伝子 頻度、Minor Allelic Frequency)が高いものを選び、それぞれの加水分解分析法を計 41 通り準備した。血漿サンプル中の無細胞 DNA はまず前置増幅を施し、次に実時間 PCR Journal Club 2013 December Digital Droplet PCR for Rapid Quantification of Donor DNA in the Circulation of Transplant Recipients as a Potential Universal Biomarker of Graft Injury Julia Beck 1 , Sarah Bierau 1 , Stefan Balzer 1 , Reiner Andag 2 , Philipp Kanzow 2 , Jessica Schmitz 1 , 2 , Jochen Gaedcke 3 , Onnen Moerer 4 , Jan E. Slotta 3 , Philip Walson 2 , Otto Kollmar 3 , Michael Oellerich 2 and Ekkehard Schütz 1 ,* 1 Chronix Biomedical, Göttingen, Germany; Departments of 2 Clinical Chemistry, 3 General, Visceral and Pediatric Surgery, and 4 Anaesthesiology, University Medicine, Göttingen, Germany. * Address correspondence to this author at: Chronix Biomedical, Goetheallee 8, 37073 Göttingen, Germany. Fax +49- 551-39-13968; e-mail [email protected]. ジャーナルクラブ デジタル液滴 PCR 高速定量測定による、移植者血液中の「提供者 DNA」の、移 植片損傷のバイオマーカーとしての有用性について

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Journal Club 2013 December

1

要約

背景:臓器移植者の血中に無細胞 DNA が検出される場合は、移植片の損傷および臓器

拒絶の可能性を考慮して治療を進めなくてはならない。今回は、心臓移植後の維持段階

後の患者を対象とした調査を行い、まずマイクロアレイ分析および提供者・移植者

DNA の大規模な並列シークエンシングを使い、無細胞 DNA の「拒絶反応のバイオマー

カー」としての有用性を検証した。マイクロアレイやシークエンシングによる分析はか

なり費用がかかり、所要時間も長く、提供者 DNA のサンプルを多く必要とするため、

ルーチン検査として行うのは難しい。そこで今回は、比較的コスト効率がよく、所要時

間も短い、デジタル液滴 PCR で同じ分析が出来ないか検証した。

方法:まず移植後、安定した患者の血漿サンプルを採集した。肝移植(LTx)の患者 10人、腎移植(KTx)の患者 9 人、および心移植(HTx)の患者 8 人のサンプルを採集し

た。さらに、肝移植直後の患者 7 人のサンプルも採集した。次に、確認済みの SNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基変異多型)のうち、MAF(マイナー対遺伝子

頻度、Minor Allelic Frequency)が高いものを選び、それぞれの加水分解分析法を計 41通り準備した。血漿サンプル中の無細胞 DNA はまず前置増幅を施し、次に実時間 PCR

Journal Club 2013 December

Digital Droplet PCR for Rapid Quantification of Donor DNA in the Circulation of Transplant Recipients as a Potential Universal Biomarker of Graft Injury

Julia Beck1, Sarah Bierau1, Stefan Balzer1, Reiner Andag2, Philipp Kanzow2, Jessica Schmitz1,2, Jochen Gaedcke3, Onnen Moerer4, Jan E. Slotta3, Philip Walson2, Otto Kollmar3, Michael Oellerich2 and Ekkehard Schütz1,*

1 Chronix Biomedical, Göttingen, Germany; Departments of 2 Clinical Chemistry, 3 General, Visceral and Pediatric Surgery, and 4 Anaesthesiology, University Medicine, Göttingen, Germany.

* Address correspondence to this author at: Chronix Biomedical, Goetheallee 8, 37073 Göttingen, Germany. Fax +49-551-39-13968; e-mail [email protected].

ジャーナルクラブ

デジタル液滴 PCR高速定量測定による、移植者血液中の「提供者 DNA」の、移

植片損傷のバイオマーカーとしての有用性について

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を行い、どの SNP が異種で有益であるかの判断をし、最後にデジタル液滴 PCR を行い、

移植片由来の無細胞 DNA 値を定量化した。

結果:マイナー対遺伝子が 2%の対照群を使用したところ、DNA の平均回収率は 94%(標準偏差 13%)、ばらつきは 4%~14%と出た。安定した移植者の血中提供者 DNAを測定したところ、肝移植の場合 6.8%未満、腎移植の場合 2.5%未満、および心移植の

場合 3.4%と出た。手術直後の肝移植患者の血中無細胞 DNA は提供者 DNA がおよそ

90%だったが、手術後 10 日目には(合併症が見られなかった患者の場合)15%以下ま

でに低下していた。生検で拒絶反応が確認された患者の血中無細胞 DNA の割合は、

60%以上と高く保たれていた。胆汁鬱滞が確認された患者の血中無細胞 DNA は増加し

ていなかった。

結論:今回開発した手法は、コスト効率がよく、所要時間も短いため、移植者の血中

提供者 DNA の定量化にうってつけである。将来的に提供者 DNA をバイオマーカーと

して活用し、拒絶反応を早期段階で検出することができれば、より効果的な治療的介入

を行うことも可能になるだろう。

僅かな量のサンプル中の微量の遺伝変種を検出するには、最新の分子生物学的技法を用

いれば可能であり、これを臨床検査に役立てる方法は幾つか提案されている。その一つ

が、臓器移植の拒絶反応の検出である(1)。心臓の移植者のうち安定している患者の

血中提供者 DNA は 1%未満だったが、拒絶反応が見られた患者の血中提供者 DNA は最

大 5%にまで上昇していたという事例も報告されている(2)。しかし、臨床用検査と

して活用する場合、コスト効率や所要時間を考慮しなくてはならない。残念ながら、現

在汎用されている DNA 測定方法を見てみると、大抵、高価で所要時間も長かったり

(3)、男性から女性への移植の場合しか使用できなかったりするのが現状だ(4)。

そんな中、SNP の性質を利用して提供者 DNA と移植者 DNA を区別する測定方法は、

比較的シンプルであるといえるだろう。SNP で DNA の比率を測定する場合、提供者と

移植者の両者がホモで持っている SNP を探し、それらの SNP を測定するという方法が

考えられるが、このアプローチは提供者の DNA を必要とするため臨床向きではない。

移植手術から数年経って患者の容態が悪化した場合、提供者の DNA を入手するのは容

易ではない場合も多い。そこで、MAF が例えば 0.4 以上であると確認済みの SNP を探

すというアプローチがある。ハーディ・ワインベルグ平衡が保たれていれば、MAF が

0.4~0.5 の SNP は 23%~25%の確率で提供者・移植者の両方がホモで持っていることに

なる。すなわち、提供者と移植者がともに別の対遺伝子を持っている確率は、除外確率

の推定に使用される一般的な推定モデルで計算した場合 11.5%~12.5%である(5)。白

人患者で該当する SNP を選別する場合、SNP の候補は 30~35 個挙げておくことが望ま

しい。報告されているヒトのゲノムの SNP の MAF の中央値が 0.023 であることを考え

ると、SNP の絞り込みを行わなければ、同じ識別力を得るためには測定をおよそ 3000通り行わなくてはならない計算になる(Illumina HumanOmni5M SNP Beadchip 参照)。

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上記の条件を満たす SNP を比較することによって、臓器から血中に流出した提供者

DNA の量を測定し、臓器の損傷がないかどうか調べることができる。さらに、一度提

供者と移植者の DNA で一致しない SNP を識別すれば、以後はもっとも測定感度がよい

SNP のみを測定すればよい。この手法の欠点を挙げるとすれば、測定に使用される

DNA の量だろう。DNA の量は、主に血漿サンプルの量によって決まる。一般的に、血

液 1 mLにはゲノム 1000 個分相当の遺伝物質が含まれているとされている(6、7)。

無細胞 DNA のうち 5%が提供者 DNA だとし、すべての分子が PCR で正常に増幅され

た場合、提供者 DNA の分子の濃度は血液 1 mLあたり 50 となる。すなわち、この手法

でいくつもの SNP を解析するためには、まず 2 mL以上のサンプルを偏りなく増幅する

必要がある。可能な増幅のアプローチはいくつかあるが、アポトーシス性の無細胞

DNA は大抵長くないため(8)アダプターによる直接連結法が最適だろう(9)。増幅

アダプターの連結が完了し次第、10~12 回ほどの増幅サイクルを行い、プライマーやア

ダプターを除きライブラリーを構築して SNP の選別を行う。最後に、今回開発したデ

ジタル滴液 PCR による無細胞 DNA の定量測定を行う。この手法は高速でコスト効率も

よく、高精度で比較的微量な提供者 DNA を検出することができる。今回はこの新しい

手法を用い、固形臓器移植後の患者の血中の提供者 DNA の定量化に成功した。

材料と方法

サンプルの提供者

サンプルは、肝移植手術直後の患者 8 人(1 人からはサンプルが採集できなかったため

最終的には 7 人)、および維持段階にある安定した外来移植者から採集した。後者は肝

移植の患者 10 人、心移植の患者 8 人、および腎移植の患者 8 人といった患者集団であ

り、全員移植手術を受けてから 6 か月以上が経過していた。測定方法の開発および性能

検証には、健康なサンプル提供者 6 人の DNA が使用された。サンプルの採集は施設内

倫理委員会の承認および参加者の同意を得て行われた。

SNP 加水分解分析

まず、幾つかの公共データベース(Hapmap、1000Genomes 等)の中から、白人および

その他の(資料にある)人種において、43%以上の MAF が報告されている SNP を選別

した。反復遺伝子内あるいは反復遺伝子に隣接する SNP は、この段階で除外された。

次に、65℃で標準的な PCR バッファ(一価の陽イオン 0.18 mol/L、DNA・プライマー

0.5 μmol/L等)を使用し PCR を行い際に、2 つの対遺伝子に結合する 2 つのプローブの

結合エネルギー差が最大限になるよう熱力学的シミュレーション(10)を行った。

二重らせん DNA のプローブの融解曲線の傾きは、プローブのエンタルピーに左右され

るため(11)、対遺伝子の結合のギブスの自由エネルギー差を最大化しようとすると、

やはりエンタルピーが重要になってくる。今回は対遺伝子ペア 1 つにつきプローブを 2種類用意し、プローブを計 41 通りセットで設計した。蛍光色素の FAM および HEX は、

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消光分子の BHQ1(MWG-Biotech 社製)と組み合わせ使用した。上記の材料と公表さ

れている計算式(12)を使い、82 種類のプローブと、特製の対遺伝子や二つ目の偽の

対遺伝子との理論上の(熱力学的)結合比率を計算したところ、中央値は 30 と出た

(最小値 4.2、最大値 197)。よって、滴液内の対遺伝子の判別には十分であると判断

した(詳しくはネット版の参考資料を参照。URL:http://www.clinchem.org/content/vol59/issue12)。PCR 用のプライマーは、融解温度が

68℃で、熱力学的結合効率が 60℃の時 95%以上になるように設計された。測定プロト

コルは、まず LightCycler480(Roche Applied Science 社製)でデジタル液滴 PCR 用の

Supermix for Probes(Bio-Rad Laboratories 製)で最適化し、次に液滴発生でデジタル液

滴 PCR 用に最適化するというもの(13、14)。効率および対遺伝子の差別化を最大化

するために、二つの焼鈍温度を確立した。最終的に選択された SNP の測定の特徴等は

ネット版参考資料表 1 に詳述した。

サンプルの採集および調製

測定プロトコルの確立および最適化の段階で使用したゲノム DNA および無細胞 DNAは、健康な成人の参加者から Monovette(Sarstedt 社製)で採集された EDTA(エチレン

ジアミン四酢酸)抗凝固処理済み血液から抽出した。採血から 1 時間以内にまず一度遠

心分離(2500g、4℃、10 分)を行い血漿と細胞を分け、また更に遠心分離(4000g、4℃、20 分)を行い血漿中の細胞残屑を取り除いた。すぐに使用されない血漿および軟

膜は使用されるまで-20℃で保管された。血漿サンプル(1mL以上)中および採取され

た軟膜中の DNA は、High Pure ウイルス性核酸抽出キット(Roche Applied Science 社製)

を使用し抽出した。

安定した患者のサンプルは調査用に採血したわけではなく、外来クリニックのルーチン

検査(血球値測定や抗免疫薬剤検査)用に採取されたサンプルの余ったものを使った。

これらはすべて、採血から 5 時間以内のものを使用するようにした。肝移植直後の患者

のサンプルは、無細胞 DNA の採集用の特殊なチューブ(Cell-Free DNATM BCT、Streck社製)を使って採集した。これらのサンプルの遠心分離は、最適化段階で行った遠心分

離と同じ設定で行った。

無細胞 DNA の前置増幅

通常、血液 1mLにはゲノムのコピーが 1000 個~1500 個ほど含まれている。よって、

EDTA 処理済みの血漿 2mLからは 4000 個~6000 個のコピーが回収できるはずである。

濃度がおよそ 2%のマイナー対遺伝子を定量化するためには、まず前置増幅をして複数

の SNP の測定ができるよう DNA の断片を複製する必要がある。今回の調査で手に入る

サンプル内の DNA の量は、大抵 5 ng 前後であるため、微量の DNA でも十分な効力を

示した NEBNext Ultra DNA Library Prep Kit(New England Biolabs 製)を使用し前置増幅

を行った。連結された無細胞 DNA で PCR を多いところで最大 11 回行い、平均 1100 ngまでに増幅した(標準偏差:325 ng)。ライブラリの増幅の進行具合は LightCycler480

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(Roche Applied Science 社製)を使い、実時間でモニタリングした。PCR の設定は以下

の通りであった。初期の変性段階は 98℃で 30 秒。98℃が 10 秒、65℃が 30 秒、および

72℃が 30 秒のサイクルが 8 回~11 回。最後に、72℃での延長が 5 分。サンプルには 1× EvaGreen を入れ、リアルタイムでモニタリングし、増幅が停滞したら即座に PCR を締

結させた。

デジタル液滴 PCR

デジタル液滴 PCR には、QX100 ddPCR システム(Bio-Rad 社製)を用いた。サンプル

はすべて ddPCR Supermix for Probes(Bio-Rad 社製)を使って調製された。各サンプル

にテンプレートとしての無細胞 DNA のライブラリーを、30 ng あるいは 100 ng、各プ

ライマーを 900 nmol/L ずつ、および各プローブを 250 nmol/Lずつ添加した。液滴の発

生には QX100 液滴発生機(Bio-Rad 社製)が使用された。PCR の設定は以下の通りで

あった。95℃が 10 分。94℃が 30 秒、59℃/61℃が 1 分のサイクルが 50 回。最後に、

98℃が 10 分。液滴の読取には QX100 液滴読取装置が使用され、分析には Quantasoft version 1.3.2.0(Bio-Rad 社製)が使用された。マイナー対遺伝子の定量化にあたっては、

DNA の種類のポワソン分布を考慮して、内蔵されている「Rare Event Detection」(希事

象検出)計算法で二つの対遺伝子の分子濃度を算出した。最後に、これらの値を基に、

さらにマイナー対遺伝子の全体の遺伝子濃度に対する比率を計算した(検出および計算

過程について詳しくはネット版の参考資料の SNP 測定資料を参照)。

統計

特に他に明記されている場合を除き、データの解析は Microsoft Excel™で行った。測定

されたテンプレートの濃度比率の信頼区間の計算式は、Quantasoft SW に内臓されてい

る検証済みのアルゴリズムを使用したものである(15)。前置増幅 DNA とゲノム

DNA・無細胞 DNA の比率の分散・標準偏差は、データに相関性があると仮定した上で

上記の計算式の値の標準偏差と各計算式(16)を使用し算出した。

結果

デジタル液滴 PCR および SNP 加水分解分析の性能特性

まず、移植片から流出したマイナー対遺伝子の定量下限が、臨床検査として十分なもの

か否かを検証することにした。そのためには各 SNP の遺伝子型の種類が判明している

検証用のゲノム DNA を、マイナー対遺伝子の比率が 2%になるように混ぜ、9 回の測

定をセットで何度も行い、変動係数を計算し測定の精度を調べた(SNP 測定 13 通りの

変動係数データは図 1 を参照)。マイナー対遺伝子の比率が 2%であるにも関わらず、

変動係数は 15%以下(4%~14%)と、マイナー対遺伝子を含んでいた液滴の数(151、標準偏差: 54)を考慮すると、変動係数の理論上の下限に近い値が出た。文献にある

値を考慮すると、無細胞 DNA の検出には十分な精度である(2)。13 通り行った SNP

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測定で、2%の濃度で添加されたマイナー対遺伝子の回収率は平均 1.87%(元の量の

94%)であった。回収率の標準偏差は 0.24%(13%)だった。

図 1.13 通りの SNP 測定の変動係数(%)の棒グラフ(マイナー対遺伝子の濃度 2%)

黒い棒は、各測定の対遺伝子 A(2%)と対遺伝子 B(2%)の変動係数を表している。

一つの測定法内のばらつきは、同じ測定を 9 回、同じ QX100 のセッションで検証用

DNA を全部で 100 ng 使用して得られた値だ。灰色の棒は、マイナー対遺伝子が検出さ

れた液滴の数から推定される理論上の変動係数を表している。

無細胞 DNA の前置増幅段階(17)で偏りが生じてないか検証するため、健康なサンプ

ル提供者 5 人の血液サンプルを採集し、およそ 12 mLの血漿から得られた無細胞 DNAのうち半分のみで前置増幅を行った。前置増幅済みのサンプル(100 ng)、前置増幅な

しの血漿中の無細胞 DNA(10 ng)、および前置増幅なしのゲノム DNA(10 ng)で各

提供者がヘテロで持っている遺伝子型のデジタル液滴 PCR を行ったところ、前置増幅

による比率の変化は見られなかった。図 2 にあるように、前置増幅されたサンプル中の

2 つの対遺伝子が占める割合は、ゲノム DNA のそれ(102% ± 4%)や無細胞 DNA のそ

れ(98% ± 5%)に比べても、大した違いは見られなかった。SNP 測定で使用される 2つの単位複製配列の違いは 1 塩基でしかないため、増幅サイクルの数が少なければ対遺

伝子の比率に大きな変化は見られないハズである。

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図 2.前置増幅された無細胞 DNA ライブラリの測定結果(各サンプルの、前置増幅さ

れたサンプルの測定結果とゲノム DNA あるいは無細胞 DNA の測定結果の比率)

図 2 でも見られるように、前置増幅段階による SNP 検出結果の偏りは見られない。図

には、コピー数の比率および標準偏差が記されている。

図 3 はサンプル採血から移植者の血中提供者 DNA の定量化までを辿る、おおよその図

式である。各移植者にとって測定感度が最大となる SNP を選定するため、1 つのサンプ

ルで、軟膜から抽出されたゲノム DNA を使い、全 SNP の測定を一括で(比較的安価な)

LightCycler480 で行った。移植者がヘテロで持っている SNP は、以後のデジタル液滴

PCR サイクルから外された。1 人の患者から採取された複数のサンプルを測定しなくて

はならない場合、この測定感度の最適化用 SNP 選定段階は 1 つのサンプルで行えばよ

い。所要時間も長くなく、1 日の勤務時間で済む。今回測定に使った 33 人のサンプル

でこのアプローチを使ったところ、平均して有用性のある SNP は一人当たり 17 個(標

準偏差: 4 個)であるということがわかった。SNP の選別が済めば、以後のデジタル

液滴 PCR などはサンプルが届いてから 6 時間ぐらいで済む。

図 3.提供者 DNA の測定に使う SNP の決定方法

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スクリーニングは、実時間 PCR で移植者のゲノム DNA をテンプレートとして使って行

う。この段階で、デジタル液滴 PCR 定量測定の段階で使えない、移植者がヘテロで持

っている SNP をすべて除外する。次に、前置増幅された無細胞 DNA をテンプレートと

して使い、デジタル液滴 PCR を介して、サンプルの提供者である患者にとって有用性

のある SNP を選定する。有用性のある SNP とは、移植者がホモで持ち、臓器提供者が

ヘテロで持つ、あるいは提供者はホモで持っているが移植者と提供者の間で型が異なる

SNP のことを指す。SNP の型の組み合わせとしては、後者(移植者・提供者ともに異

なるホモ接合型)が望ましい(平均 5 組は該当するはずである)。前者に比べると、検

出可能な無細胞 DNA の量が倍になるからだ。各段階で挙げたパーセンテージおよび測

定回数は、MAF0.5 の SNP を使った場合であり、実際は患者の遺伝子型等を考慮し調整

する必要がある。

臨床サンプルの無細胞 DNA

肝移植の患者の臨床サンプルのデジタル液滴 PCR は、サンプルトレイの穴 1 つにつき

無細胞 DNA のライブラリを 30 ng 使用し行った(液滴 1 つあたりのコピー数 0.5)。心

移植および腎移植の患者の臨床サンプルのデジタル液滴 PCR は、ライブラリを 100 ng使用し行った(液滴 1 つあたりのコピー数 1.5)。これらの臨床サンプルは、すべて安

定して拒絶反応が見られなかった患者のものである。結果は図 4 を参照。これらのデー

タを採集し、提供者 DNA の割合を測る際に使った SNP 測定の種類は、全部で 16 個。

各患者のデータの採集に使った SNP 測定の数は、各患者のデータの横座標の下に記し

た。安定した肝移植の患者の血中の提供者 DNA の量は、平均 3.5%(最少 1.0%、最大

8.5%)であり、総じて 10%以下であった。腎移植の患者の血中提供者 DNA は平均

1.2%(0.2%~3.5%)であり、心移植の患者のそれは 0.9%(0.1%~3.4%)であった。

図 4.安定した腎移植(9 人)・心移植(8 人)・肝移植(10 人)の患者の血中の提供

者 DNA の測定値(平均および標準偏差を表示)

各患者のデータを採集する際に使用した SNP 測定の数は、横座標の下に記した。

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肝臓移植手術で移植片の再灌流が始まった直後に集めた 3 人の患者のサンプルは、どれ

も比較的高濃度に提供者 DNA を含んでいた(図 5A 参照)。手術後の患者の血中の無

細胞 DNA のおよそ 90%は、提供者の移植片から流出したものであると見られ、この提

供者 DNA の濃度の半減期は、およそ 24~48 時間であった。更に、肝臓移植直後の時

期の患者 7 人を観察したところ(ネット版参考資料表 2 を参照)、重度の合併症および

拒絶反応が見られなかった患者(図 5B 参照)の血中提供者 DNA の比率は、10 日目以

降は常に 15%以下であった。肝臓移植者 1 のサンプルで行ったデジタル液滴 PCR 測定

の数は 12。肝臓移植者 3 のサンプルでは、16。肝臓移植者 4 のサンプルでは 7。肝臓移

植者 6 のサンプルでは 18。肝臓移植者 7 のサンプルでは 5。肝臓移植者 8 のサンプルで

は 8。図 5 には、各時期で行った有用性のある SNP 測定の結果の平均も記してある。

図 5. 肝移植の患者 3 人の血中提供者 DNA の、手術後数日間の低下パターン

1 人の患者の血中提供者 DNA 値は、手術後数日間で急降下した。別の患者の血中提供

者 DNA 値は、しばらく高いまま停滞し、遅れて急降下した。最後の患者(肝臓移植者

8)の血中提供者 DNA 値は、急降下は見せず緩やかに低下し続けた。図 5B には合併症

を患わなかった患者のデータを 4 人分記した。大抵、手術後一週間からは提供者 DNA値は 15%を切るものである。肝臓移植者 3 の血中提供者 DNA が一回だけ高くなってい

る患者データを調べたところ、一時的に AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラ

ーゼ)の値も高くなっていたことがわかった(AST のデータは図には含まなかった)。

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肝臓移植者 2 には、拒絶反応が見られた(手術後 43 日目に生検で確認)。この患者の

サンプルではデジタル液滴 PCR を 5 回行い、平均したものをもとに提供者 DNA 値を計

算した。図 6A は、この患者の標準的な肝臓拒絶のバイオマーカーである AST の値の

時間的経過、および提供者 DNA 値の時間的経過を表したものである。手術後、提供者

DNA 値は一度 7%以下にまで低下したもの、7 日目以降は上昇し続け、31 日目から 38日目までは特に 60%以上にまで上昇した。この期間の AST 値はあまり安定していなか

ったといえるだろう。一度ステロイド療法を行ったところ、提供者 DNA 値が低下した

ものの、この患者の提供者 DNA 値は総じて高く保たれたままであり、60%を超える最

大値は 58 日目に記録されたものである。図 6B は、急性肝臓拒絶が 144 日目に生検で

確認された肝臓移植者 3 のデータを表したものである。同じ時期に、145 日目に 19%に

まで、そして 151 日には 55%にまで提供者 DNA 値が上昇しているのがわかる。図 6Cは、手術後 50 日目に急性胆汁鬱滞を患い始めた肝臓移植者 1 のデータを表したものだ

が、特に提供者 DNA 値は上昇していない。しかし、AST、GGT(γグルタミントラン

スフェラーゼ)、およびビリルビンの値は 50 日目以降上がり続け、160 日目あたりに

ピークに達した。胆汁鬱滞の原因はおそらく表面細胞の血管閉塞によるものであったた

め、内視鏡逆行性胆管造影法で治療を行った。他の拒絶反応が見られたケースとは違い、

この胆汁鬱滞のケースでは患者の提供者 DNA 値は一度も 10%を超えなかった。

図 6. 拒絶反応が確認された肝臓移植者のデータの時間的経過

肝臓移植者 2 のデータを見ると、31 日目以降、提供者 DNA 値は緩やかに上昇し続け、

38 日目には 60%に達していることがわかる。しかし、この期間中の AST 値には割とば

らつきが見られる(注: この図の提供者 DNA の縦座標のスケールは、図 4 のそれの

10 倍)。図 6B は、手術から 144 日が経過してから急性拒絶を患った肝臓移植者 3 のデ

ータを表したもの。145 日目には 19%であった提供者 DNA 値が、151 日目には 55%に

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まで急上昇している。図 6C は、手術から 50 日が経過してから胆汁鬱滞を患い始めた

肝臓移植者 1 のデータの時間的経過を表したもの。特筆すべきは、胆汁鬱滞を患ったこ

の患者の標準的な肝機能検査の値は上昇していたものの、提供者 DNA 値は一定であっ

たという点だ。

考察

今回の調査の結果、移植者の血中にある臓器提供者 DNA が固形臓器移植の拒絶反応の

高感度な特異的バイオマーカーとして、たいへん有望であることが判明した。この報告

で述べた測定プロトコルは、提供者 DNA の測定方法としては比較的安価である上、所

要時間も一日と短い。よって、ルーチン検査として導入するのも比較的難しくないハズ

である。この検査を利用するには、デジタル PCR を自動で行える設備が必要である。

臓器移植の予後を悪化させる要因のうち特に注意しなくていけないのが、不可逆性慢性

拒絶反応、そして免疫抑制剤の副作用(腎毒性、循環器疾患、日和見感染、および悪性

腫瘍等)である。 死亡したドナーから移植される腎臓の半数は、10 年以内に腎不全に

陥る。従来の腎機能検査(クレアチニン等)で移植された腎臓の状態を測ろうとしても、

組織生涯が相当進んでからでないと異常は検出されにくいため介入が遅れる場合も多く、

慢性拒絶に至ることが多い。だからこそ、より精度の高いバイオマーカーが必要なので

ある(18)。免疫抑制剤を患者ごとに調整できるようにと、薬物治療モニタリングを補

うバイオマーカーの開発も進んできたが、薬物治療モニタリングのみでは免疫抑制剤が

免疫細胞にどのような影響を与えているかハッキリは感知できない。即効性の免疫抑制

剤や、長期にわたる免疫抑制剤治療への感度は患者によって大きく異なる上、血漿中の

免疫抑制剤の濃度とリンパ球内の免疫抑制剤の濃度の相関性はあまり強くない。そのた

め、入念に薬物治療モニタリングを行っても、過剰に免疫抑制が過剰であったり、不十

分であったりするケースは珍しくないのである。今回取り上げた血中の提供者 DNA を

測定するアプローチは、非侵襲的である上、従来の検査法では検出されない小さな異常

も検出できるため、臓器拒絶の早期診断に役立つことが期待される。以前行われた心移

植患者の調査では、生検で臓器拒絶が確認される 3 か月前から血中の提供者 DNA 値の

著しい上昇が始まっていたことが報告されている(2)。提供者 DNA の測定を使った

検査を行えば、従来の検査法では感知されない亜臨床的な段階の拒絶反応も感知し、早

期段階で免疫抑制剤治療を調整することも可能になるだろう。現在心臓移植の患者が受

けられる検査は、非特異的で感度も高くない心エコー検査や、非常に侵襲的である心臓

生検などに限られている。従来の心臓拒絶のバイオマーカーはどれも信頼性に欠けるた

め、臨床への応用は難しかった。また、腎臓拒絶のバイオマーカーは、組織障害が進ん

でからしか使えないため、機能が半分異常失われてからでないと検出されないことも多

かった(18)。また、肝臓移植の患者のモニタリングは、通常、肝機能検査で行われる

が、検査対象のバイオマーカー値は肝臓拒絶以外の幾つかの病因の有無の影響も受けて

しまうため、検査法として確実であるとは言い難い。今回紹介した無細胞 DNA を測定

するアプローチを検査ルーチンに上手く導入できれば、臓器拒絶の大半を抑制もしくは

防止することも可能になるだろう。

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提供者 DNA を測定することの主な利点は、移植片の組織の状態を直接測ることが出来

るため、細胞媒介性あるいは抗体媒介性の拒絶反応を早期段階で検出できるという点に

ある。本格的な治験でさらに検証する必要があるが、 このアプローチを使って早期段

階で治療介入を行えば、重度の急性拒絶反応を完全に防ぐことも不可能ではない。今回

の調査では、合併症を患い肝臓移植の 5 週間後に臓器拒絶に至った患者が見られたが、

手術後 10 日目までに提供者 DNA 値が 15%以下にまで低下しない患者や、提供者 DNA値の急上昇が見られる患者は、臓器拒絶が起こっている可能性が高いと想定して検査を

行うべきだろう。肝炎の再発が提供者 DNA 値の上昇につながるかどうかは、もっと大

人数の患者を対象にした調査を行うまで何とも言えない。しかし、一時的とはいえ胆汁

鬱滞を患った患者の提供者 DNA 値が上昇しなかったことを考えると、この手法を使え

ば初期検査の段階で十分、胆汁鬱滞と肝臓拒絶は区別できるハズである。

今回紹介した提供者 DNA 値や他の更に複雑な計算法で得られた値(2、3)は、すべて

測定法の定量下限を大きく上回るものであり、デジタル液滴 PCR 法の感度を考えると

臨床的に重要な値の変化が検出されないということもないだろう。今回の報告の肝臓移

植者データの値が、腎臓や心臓の移植者データの値に比べて高めなのは、肝臓移植は移

植片が大きい上、肝細胞の再生速度は心臓や腎臓の細胞のそれに比べて高めなためであ

ると私たちは考える。更に治験で検証するまでは断定はできないが、この手法はもしか

したら現在使われている移植手術後のモニタリング用検査を補う、あるいは取って代わ

る手法になる可能性を秘めている。更に、提供者 DNA 値のモニタリングは、急性拒絶

反応を早めに検出できるため、免疫抑制のレベルの調整にも使えるだろう。そして最後

に、移植後の再灌流の段階の評価にも、この検査法は使用できるのではないだろうか。

今回調査した患者の血中には、手術後数日間は割合にして 95%以上と、提供者 DNA が

実に多く含まれていることがわかった。こういった初期の値および値の変化が、どれほ

ど局所貧血や再灌流による組織障害の進行を反映しているかはまだ定かではなく調査中

である。局所貧血や再灌流による組織障害は、最終的な患者予後にも影響を及ぼしてい

ると考えられている。

今回自動化デジタル液滴 PCR 法を基に新たに開発した検査法は、一日で結果を得られ

るうえ、コスト効率もよい。この検査を用いて移植者の患者予後を改善させることがで

きるかどうか、更なる治験を行い、確かめるべきである。また、移植者の血中提供者

DNA 値は、免疫抑制剤治療の個別化にも役立てられるハズである。これからは、拒絶

反応が起こってしまってから後手に回って治療するのではなく、拒絶反応が起こる兆し

が検出されたら、すぐに予防・早期介入に移るといった治療が行われていくことになる

だろう。こういった非侵襲的で効果的な、移植片の状態を直接モニタリングできる検査

法が使われるようになれば、免疫抑制剤治療の安全性の向上にもつながるため、臓器移

植の罹患率・脂肪率・治療コストの低下にもつながるだろう。

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謝辞

本論文の校正段階において、Howard B. Urnovitz 氏の多大な助力を受けたことに感謝の

意を述べる。

(訳者 小野富大)

Footnotes 5 Nonstandard abbreviations:

SNP, single-nucleotide polymorphisms; MAF, minor allelic frequency; cfDNA, cell-free DNA; ddPCR, digital droplet PCR; GcfDNA, graft-derived cfDNA; LTx, liver transplantation; KTx, kidney transplantation; HTx, heart transplantation; AST, aspartate aminotransferase; GGT, γ-glutamyltransferase.

(see editorial on page 1691)

Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article.

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Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest:

Employment or Leadership: J. Beck, Chronix Biomedical; S. Bierau, Chronix Biomedical; S. Balzer, Chronix Biomedical; J. Schmitz, Chronix Biomedical; M. Oellerich, Clinical Chemistry, AACC; E. Schütz, Chronix Biomedical.

Consultant or Advisory Role: None declared.

Stock Ownership: J. Beck, Chronix Biomedical; E. Schütz, Chronix Biomedical.

Honoraria: None declared.

Research Funding: Chronix Biomedical and BMBF.

Expert Testimony: None declared.

Patents: J. Beck, US patent application 61/828,553; E. Schütz, US patent application 61/828,553.

Other Remuneration: E. Schütz, Chronix Biomedical.

Role of Sponsor: The funding organizations played a direct role in design of study, review and interpretation of data, and preparation and final approval of manuscript.

Received for publication May 29, 2013.

Accepted for publication August 19, 2013.

© 2013 The American Association for Clinical Chemistry

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