media literacy part 9
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メディア・リテラシー9
主題における形式性
• 主題の効果は、物語の形式と深く結びつくことで強固になる
• 主題は、それを提示するのに相応しい物語の形式をメディアテクストの中に持ち込む
• 物語の展開は特定の主題の登場を必然化させる
• 主題の選択には、メディアテクストに付加されるメタ情報の内容が関与する
• 例)メタ情報としてのジャンルは、メディアテクストが選択し得る主題群の幅を制限する
• メディアテクストがあるジャンルの中に位置づけられる事で、選択される可能性のある主題と、そうでないものの分化が発生する
• メディアテクストがある特定の主題を選択する事は、それが特定のジャンルに属する事を結果として主張する
• ジャンルのみならず、主題の選択とメタ情報の内容の間には、様々な点における相互作用が見られるが、その結果として現れる効果とは、ほとんどの場合、メディアテクストにおける統一性や一貫性の有無に向けられる
• メディアテクストの読解において主題の問題を取り上げる場合、他の形式との結びつきを明らかにしていく方向性が考えられる
• 主題と、導入される物語の種類・展開やメタ情報の内容との間に見られる結合の秩序を明らかにする
• 特に重要となるのは、それぞれの形式性が互いに必然性を与え合う構図を明らかにする事
• あるメディアテクストが読み手に何の違和感も感じさせず、自然なものとしての印象のみを与えるのであれば、それは主題・物語・メタ情報といったそれぞれの形式間での結合と連携が効果的に行われている事を意味する
• それらの結合や連携の仕方を観察し、その中に働く秩序を読み解く事によって、メディアテクストの構成原理としての記号化コードにアプローチできる
メディアの読解とコンテクストとしての社会
• メディアと我々との関係に「社会」という事項が如何に関わって来るのかを、日常的なメディアテクストの読解を例に考察する
• 読解のコンテクストとしての社会
• メディアが我々対して提示する様々な表現は、その時々の社会や文化のあり方との影響関係の中で生産される
• 我々がその表現を読み取る際にも、そこから読み取られるメッセージには、我々自身がおかれている社会や文化のあり方の大きな影響がある
• 具体的なメディアテクストを例に取り、そこから読み取られるであろうメッセージと社会や文化のあり方との結びつきを考察する
• 特に、メディアテクストから視聴者が読み取るメッセージに対して、社会や文化のあり方がどのように影響してくるかに焦点を当てる
• 例えば、ある洋酒の広告を考える• その広告には以下に列挙される内容が表現されている
• 「アーリータイムズ」と言う洋酒の広告である事
• 現在「アーリータイムズ クラシックレザージャケットキャンペーン」を実施中である事
• キャンペーンにおいては合計2,000名に対して「アーリータイムズオリジナルグッズ」のプレゼントを行う事
• この商品に関するWEBページが存在する事
• 「飲酒は20歳を過ぎてから」と言う法律に基づく警告が掲載されている事
• この商品の輸入・販売元が「サントリー株式会社」である事
• この商品が「バーボンウイスキー」である事
• 広告の面積の半分以上は、今まで述べた事柄とは直接的には関係しない写真とキャッチコピーによって構成されている
• アメリカ西部開拓時代を思い起こさせる街並みを背景に、ガンマンを思い起こさせる黒ずくめの5人の男性がバーボンが入っていると思われるグラスを手にしながら、正面を向いている
• 「その生き方のままでいい。アーリータイムズ」と言うキャッチコピーが入っている
• これらの事柄は、この広告を注意深く観察すれば、多くの人が読み取ることのできるもの
• 「この広告が伝達する情報は何か」と言う問いに対しては、これらの事柄がその答えとして挙げられる
• 我々が普段、この様な広告を目にする時に、今見た様に全体を一つ一つ切り分けながら、それぞれの部分が表す事項を読み取る事はあるか?
• 我々が読み取るのは、列挙した様に表現が直接的に表す事柄、即ち表示義だけか?
• 多くの場合、特に強く目を引く事柄を中心に、無意識の内に取捨選択を行いながら、内容を読み取っている
• 表示義のみならず、その表現に付随する多数の共示義を含めて読み取っている
• 広告の読み手が、見出した表現からどのような示唆を受け取るのか、即ち如何なる共示義を読み取るのかは、読み手の価値観によって大きく左右される
• 価値観とは、読み手が物事に意味を与える際の基準となる体系で、読み取りの際の解釈コードと同義
• この広告から読み取られる共示義は個々人の価値観、即ち解釈コードによって異なる
• よって、一般化する事は原理的に不可能
• 写真のガンマン風の男達の姿や宣伝の対象であるバーボンウイスキーそのものから
• 「タフな」「ハードな」「男性的な」
• を連想する
• 写真や商品の内容と「その生き方のままでいい」と言うキャッチコピーから
• 「頑固な」「こだわりのある」「伝統的な」
• を連想する
• この様な形容詞を仮に二人の価値観の異なる人物が同時に読み取ったとして
• その形容詞に対してどの様な意味合いを感じるのかは人によって異なる
• 個人差の中には、個人の学習の結果である解釈コードと、その背景を為す社会や文化のあり方が干渉する
• 端的に考えれば、先述の形容詞群に対して、それぞれ「肯定的」に感じる人と「否定的」に感じる人がいる
• それらの違いは、個人の価値観、即ち解釈コードの相違の問題に属すると考えられる
• 解釈コードは、その時々の社会や文化の制約を背景に個人が身に付けるもの
• 相違は単に個人の資質や能力や個性の問題だけでなく、個人がおかれる社会、文化のコンテクストの相違の問題