media literacy part 15

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メディアリテラシー 15

Upload: masaru-kitajima

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Education


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メディアリテラシー15

• 公共放送であり、系列とは無関係のNHKでも組織的な影響と無縁ではいられない• NHKは良く言えば「公正中立」だが、それはジャーナリズムの存在意義を捨て去る事とと同じ• 権力批判をしない

• 役人や政府の下部組織に鋭いメスを入れる報道をNHKは行う• しかし政権政党や政府の中枢に対して政治的な立場を鮮明にした批判は殆ど行われない

• NHKの予算は国会が承認して決まる• NHKを取り仕切る会長はNHKの経営委員会が決定するが、その委員会も衆参両院の同意を得て、総理大臣が任命する• 現在のNHKは国営放送ではないが、元々は国営放送であり、国との系列が今も残る

• 外的な影響• 報道メディアが提供する情報は、他の誰かの情報が元にある→情報を他から入手する事が報道のスタート点

• ニュースソースによるコンテント形成• 情報提供者・ニュースソースがメディアのコンテントを形成している大きな要因である• ニュースソースは官公庁・政財界・業界団体等の利益団体、市民団体、PR業務を行う広告代理店、メディア業界が主なものである

• ニュースソースがマスメディアのコンテントに絶大な影響力を持っている理由は、ジャーナリストは自分の知らない事を記事やリポートで報じる事ができないから• ニュースソースの影響力が最も発揮されるのは「嘘」の情報提供

• 記者に対して「嘘」の情報が提供される事は意外に多い。• ニュースソース側は「嘘」だと認める事はなく「あの時点ではそうだった」「私の知る限りでは」と言い逃れをする• メディア側も情報源の秘匿を主張し「そう聞いている。誰から聞いたかは言えない」と正当化する事ができる

• しかし、力関係はいつもニュースソース側に有利な訳ではない• 情報を料理して最終的に商品化するのは記者であり、メディアである• ニュースソースが情報操作をするように、記者側も情報の選別から加工をする

• ニュースソースは様々な思惑から都合の良い情報ばかり提供しようとするが、メディア側も受け売りをしているばかりではない• 言いたくない事を引き出し、認めてない事に対しても他の情報源からの補足によって解釈するのもメディアの務めであり、強みでもある

• 体制側に偏る情報源• ニュースソースは官公庁・政財界等政治力と経済力を持つものに集中する• 記事の多くは記者クラブを経由してもたらされる• 情報の流れは自然と体制側に偏向したものだと言える

• ほとんどの新聞社では株式を内部で所有する関連会社に限定する事で、編集への介入を防いでいる• テレビ局は外部の株主比率が大きく、ローカルテレビ局になると電力会社等の地場大手企業や道・府・県等が大株主である事が多い• 資本関係により、ニュースが偏向される事は多くある

• 直接の資本関係がなくても、地元政財界を配慮した報道がなされる• 地元経済の発展は歓迎される事である→ローカルテレビや地方紙の場合、経済的繁栄は広告費や発行部数増につながる

• 広告主への配慮• 新聞・テレビ共に広告とは切っても切れない関係がある• 公共性の高い報道メディアであっても広告がなければ企業として成り立たない• 民放テレビは全面的にコマーシャルに収入を頼っている• メディアのコンテントに広告主側の意向が影響となって現れないはずがない

• 特定の業種・企業からの広告比率が高くなる雑誌では、広告主からの圧力を受けやすい• テレビの場合、放送できるコマーシャル数に制限があり、広告効果の評価も高い事から、ある会社がコマーシャルを引き揚げても別の会社のコマーシャルで埋める事ができる

• 新聞も広告主の業種は多様であり、一企業が出稿停止を決めても大打撃にはならない• 広告主側としてもテレビや新聞から露骨な広告の引き揚げをしてしまうと報道メディアを敵に回す事になり、市民の反発を招きかねない

• しかし、報道メディアが大広告主や大企業に対して平等に対処しているかと言えばそうでもない。• 一流企業でなく胡散臭い広告主であっても、公的機関が捜査に乗り出すまで、反社会的な行為や企業犯罪等を報道する事は難しい

• 好例が消費者金融に対する報道メディアの配慮である• 従前は市民もメディアも「サラ金」と呼んでいたのに、現在ではメディアは「消費者金融」という呼称を用いるようになったのも、業界団体の働きかけの成果である

• 一般にサラ金の金利は利息制限法の上限以上で、解釈によっては法律違反の商売を堂々としている• 破産者の劇的増加や悪質な取り立ての問題等、反社会的な問題にまみれている• しかし、これらの問題が報道メディアによって糾弾される事は少ない

• コマーシャルでは可愛い動物や純粋そうな女性が登場して視聴者に親近感を植え付けている• 加えて、通常のコマーシャル料金の2~10倍をサラ金が支払う事で、広告代理店がメディア対策を引き受けている

• イデオロギー• イデオロギーと言う言葉を使うと、世俗を超越した形而上哲学の世界、排他的な思想主義、くどくどと空論を並べるだけの社会学と言うイメージがわくかもしれない• 確かにイデオロギーの定義は多様で、学派によって全く相容れない議論がされている

• メディアのコンテントを形作る要因として最も重要なものがイデオロギーである• 個人・ルーティン・組織内・組織外のコンテント形成要因を超越するのがイデオロギー• メディアのコンテントに影響を与えると言うメディア学の視点に限定し、イデオロギーとは「ある社会で最大公約数の価値観・世界観・行動規範であり、これによって、何が許され容認されるかを決めるものと」と定義する

• 逸脱(異常)理論• 「逸脱・異常」とは社会的規範からかけ離れている事• メディア学で言う逸脱・異常理論とは、あるニュースの事象が社会規範からかけ離れていればいるほど• メディアがニュースとして取り上げる可能性が高まる• 異常さはより強調される• 異常性を嘲る偏向報道に繋がる

• と言うもの

• この理論で新興宗教に対する報道が説明できる• 白装束の宗教団体の活動に対しては、風変わりな姿と奇行によるニュース価値の高さから報道量が多かっただけでなく、その異常性が誇張されると共に反社会的な存在として報道された

• 元オウム真理教(現アーレフ)が筆頭である• しかし、だからと言って全ての新興宗教を「悪」であるとは言い切れない• 2000年前にはキリスト教も仏教も得体の知れない新興宗教であった

• こうした傾向は得体の知れない新興宗教に対するものに限定されず「逸脱している」とメディアが見なす政治団体や民間団体に対しても同様• 異常性ばかりが報道され、政治的な主張等は殆ど取り上げられる事が無く「危険な思想集団」という印象を与える様な報道に終始する

• 国内ニュースのみならず国際ニュースにもこの理論は当てはまる• 北朝鮮問題の報道が好例である• 北朝鮮による日本人の拉致被害者問題が事の発端であるが、その後の報道は北朝鮮がどれだけ異常であるかを伝え、異常性を誇張して嘲笑する報道が主流となった

• 韓国についても似た様な事が言える• 一時は韓流ブームと言うものがあり、韓国のドラマやK-POPがもてはやされた• しかし竹島問題が持ち上がると、韓国と言う国の特異な国民性を誇張する報道が目立つようになった

• 社会の「逸脱・異常」を排除しようとするイデオロギーがジャーナリストの価値観や行動様式に作用する結果だと言える

• イデオロギーを擁護する解釈も存在する• 公共の利益に奉仕するというメディアの使命感から、社会体制への脅威となるものに対して警鐘を鳴らし国民に知らしめる役割があるから• メディアは規範からの逸脱・異常を決定する社会的な役割を担っている

• しかし先に宗教の例で述べた様に「逸脱・異常」は普遍的なものではない• ある時代には異常だった事が時を経るうちに許容範囲内となっていく事も珍しくない• メディアは常に境界線の位置を確かめ「逸脱・異常」を再定義しているが、時の体制や潮流に追随している面は否定できない