2 e e phys2,11.21...10...
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2次の非線形分極は、
2)2()2( )(~)(~tEtP χ= となり、(80)式を代入し、
[ ] [ ]∗∗−−∗+−−− ++++++= )2()()(2222)2()2( 2..22)(~212121 EEEEcceEEeEEeEeEtP tttiti χχ ωωωωωω
2211212121
22
2121
2211
となる。非線形分極から以下に示す新たな光が発生する。
21
)2(1 )2( EP χω = (周波数ω1の 2倍高調波が発生する。)
2)2()2( EP χω = (周波数ω2の 2倍高調波が発生する。)
21)2(
21 2)( EEP χωω =+ (和周波数ω1+ω2が発生する。)
∗=− )2(2)( EEP χωω (和周波数ω1−ω2が発生する。)
)(2)0( )2( ∗∗ += EEEEP χ {静電界が結晶中に発生する。光整流(optical
rectification)} となる。
問題9.5 光パラメトリック増幅について、 上式の和周波数 ω3=ω1+ω2のように、高い周波数ω3のポンプ光から低周波数ω1
(信号光)とω2(アイドラー光)へとパワーが流れる。この信号光を増幅するレーザー装置をパラメトリック増幅器(optical parametric amplifier、 OPA)という。このパラメトリック増幅の複屈折を利用した位相整合条件(角度位相整合)に付き記述しなさい。 §10 屈折の法則、反射率と透過率を表すフレネル(Fresnel)の公式
とブリュスタ(Brewster)の法則 マックウェルの電磁方程式を用いて、屈折率n1の媒質からn2の媒質に光が入射
する際の振幅反射率、振幅透過率を求める。反射率、透過率は光の偏光に依存す
るので、図 34は、紙面内に振動している光電界をp (parallel)で、紙面に垂直に振
1
動している光電界をs (Senkrecht) と表す。また、電界の添え字は、入射の光電界は1、屈折光は2、反射光は 3と表す。入射角はθ1、屈折角はθ2、反射角はθ3である。媒質の境界の入射側、反射側の電界は等しいので、p偏光の電界は(83)式が成立する。
図 34 境界面における入射,反射と屈折
xxikp
xxikp
xxikp eaeaea 2
223
331
11 coscoscos −−− θ=θ−θ (83)
(83)式の波動成分が等しいことにより、電界振幅の境界成分が等しくなる。よって、
xxikxxikxxik eee 231 −−− == (84) が成立し、位相成分が等しいことから位相整合条件(phase-matching condition)と呼ばれている。(84)式の第一の式と第三の式が等しいことから、k1xx=k2xxすなわち(2πn1sinθ1/λ)x=(2πn2sinθ2/λ)xが成立し、屈折の法則の関係式
2
n1sinθ1=n2sinθ2 (85)
が成り立つ。この屈折の法則は、スネル(Snell)の法則とも呼ばれる。同様に、(84)式の第一と第二の式から反射の法則
θ1=θ3 (86)
が成立する。 電界振幅a3p,a2pの 2変数を解くため、もう一つの方程式が必要となる。光は横波で、電界と対となる磁界の方程式を導出する。(83)式から波動インピーダンスZを用いて、(84)式のEx成分からz成分のHz成分へ変換する。マックスウェル
(Maxwell)の電磁方程式のうち、磁界の時間的変動が電界の空間的変化を表す方程式は、
)rotE(tH
−=∂∂µ (87)
となる。これより,平面波の場合,E=|E|exp{j(k⋅r - ωt)}, H=|H|exp{j(k⋅r - ωt)}を(87)式に代入し,∇×→jk×, ∂/∂t→-jω の関係式が得られ
EkH ×=µω1
(88) が成立する。ここで,k=ω√µεを用いると、(83)式に相当する磁界の方程式は、
zzikpzzikpzzikp eZ
ae
Z
ae
Z
a2
02
2301
3101
1 )( −−− =−− (89)
なる。ここで空気中の波動インピーダンスは、010111
101
111ε
=εε
=ε
=εµ
=n
Zr
とな
り、ε0は真空の誘電率でn1は空気の屈折率である。波動インピーダンスZ02は、
0202
1ε
=n
Z となる。磁性物質がないのでµ1=µ2≅1としている。
纏めとして、あらゆる x, zについて、電界についての(83)式と磁界についての(89)式が成り立つための位相整合条件が成立する。よって、反射の法則が導出される。
3
以下の境界条件(i),(ii)は、(83)、(89)式の境界の接線成分の連続性から成立されている。改めて、金属面と誘電体境界面で記述する。界面(interface)における境界条件(boundary condition)は、 i)金属の境界面では、電気伝導率をσ=∞であるので、抵抗が R=0 と見なして良く、電位差は 0となり結果として電界は 0である。式で書くと図 34を参考に
Ex(y)y=0=0 (90)
と記述できる。ただ金属の内部には光は入らないので、金属面の光の反射に適用
するときに使用する。本章で扱う Fresnel の公式の導出には、透明物体の反射や透過を扱うので、 ii)誘電体(dielectric material)境界面での境界条件は、誘電体すなわち絶縁体表面では、電流は流れなく i=0 であり結果として電位差 V は 0 となる。このことを線積分で書くと、 ( ) 0dlyEx =∫ であり、図 34の境界を拡大した図 35に従い、
( ) 0yayaadlyE p2p3p1x =∆+−∆−−=∫ が成立する。
図 35 電界の境界条件(線積分のループ図)
(86)式のθ1=θ3 を(83)式に代入すると (a1p-a3p)cosθ1=a2pcosθ2が導出され
p21
2p3p1 a
coscosaa
θθ
=− (91)
となる。Hz成分について、(89)式から
4
( ) p21
2p2
2
2
1
1
p202
01p3p1 aaa
ZZ
aaεε
=
εµ
εµ
==+ (92)
となる。 (92)式は(85)式のスネルの法則を用いて、
( ) ppppp aannaaa 2
2
12
1
22
1
231 sin
sinθθ
εε
===+ (93)
となる。(91)式と(93)式から
( ) ( )
1
2
1
3
2
1
1
3
21
231
2
131
sinsin1
coscos1
sinsin
coscos
θθ
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+=
θθ
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛−
=θθ
+=θθ
−
p
p
p
p
ppppp
a
a
a
a
aaaaa
(94)
となる。α=a3p /a1p, C= cosθ1/cosθ2, S= sinθ2/sinθ1とおくと、 (94)式は、 (1-α)C=(1+α)Sからα(S+C)=C-Sとなる。この関係式からp偏光の振幅反射率rp、
rp=a3p/a1pは、(95)式になる。最後の結果は小角度近似(small-angle approximation)である、cosθ≅1, sinθ≅θ. tan θ ≅θを用いている。10º以内の角度でsinθ, tan θ, θが小数点二桁目で一致している。因みに、θ=9ºで、sinθ=0.1564, tanθ=0.1583, θ=0.1570である。
( ) ( )
( ) ( )
( ) ([ ]( ) ( )
)
( ) ([ ]( ) ( )
)
( )( ) 21
21
21
21
2121
2121
2121
2121
2121
2211
2121
2211
1
3p
1
2
2
1
2
1
1
2
1
3
tantan
coscos
cossin221
coscos
cossin221
coscossincossincos
coscossincossincos
r
sinsin
coscos
coscos
sinsin
θθθθ
θθθθ
θθθθ
θθθθ
θθθθ
θθθθ
θθθθθθθθ
θθθθθθθθ
θθ
θθ
θθ
θθ
+−
≅+−
=
−+
−+
−+
+−
=
−++
−+−
==
−=⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+
p
p
p
p
aa
aa
(95)
(91), (92)式から、
5
p21
2p3p1 a
coscosaa
θθ
=−
p22
1p3p1 a
sinsinaa
θθ
=+ の両辺の和を取り、
p22
1
1
2p1 a
sinsin
coscosa2 ⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛θθ
+θθ
= が成立する。これからp偏光の振幅透過率tpは、
( ) ( ) 21
2
2121
21
12
21
1
2 22
2212
21
2θθ
θθθθθ
θθ
θθ
θθ+
≅−+
=+
==cossinsincos
sinsin
sincos
p
pp a
at (96)
となる。(92)式からp1
p2
1
2
p1
p3
aa
nn
aa
1 =+ が成り立ち、p偏光の振幅反射率と透過率の
関係式が p1
2p t
nnr1 =+ が導かれる。
スネルの法則の小角度近似を用い、n1θ1=n2θ2となり、反射率rp, 透過率tpはそれ
ぞれ、(95)、(96)式は(97),(98)式となり、入射側と屈折側の屈折率のみで表すことができる。
( )( )
( )21
21
12
11
12
11
21
21
21
21
1
3
nnnn
nnnn
a
ar
p
pp
+−−
=+
−=
+−
≅
+−
==
θθ
θθ
θθθθ
θθθθ
tantan
(97)
21
1
12
1
12
1
21
2
1
2 2
1
22
nn
n
n
n
n
n
a
at
p
pp +
=
θ⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+
θ=
θ+θθ
≅= (98)
s偏光については、図 34の入射面と屈折面での境界のz方向の光電界が等し
いことから、 が成立する。ここで、位相整合条件より波数の関係はk
zziks
zziks
zziks eaeaea 223311
−−− =+
1z=k3z=k2zである。z方向の光電界に対して、(89)式の導出と同様にx成分の磁界成分に変換し、
6
xxiksxxiksxxiks eZ
ae
Z
ae
Z
a 202
22301
13101
11 cos)cos(cos −−− θ=
θ−+
θとなる。
上式の2式を用いて、 (99) 2221311231 θθ coscos)(, ssssss anaanaaa =−=+
となる。s偏光の振幅反射率rs, 振幅透過率tsの関係 1+rs=tsが成立する。 s偏光の振幅反射率rsと振幅透過率tsは、(97),(98)式から
( )( ) p
s
ss r
nn
nn
n
nn
n
nn
a
ar −=
+−
=
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ +
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ −
−=+−
−≅+−
−==21
21
2
211
2
121
21
21
21
21
1
3sinsin
θ
θ
θθθθ
θθθθ
(100)
( ) ps
ss t
nn
n
n
nn
n
n
a
at =
+=
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ +=
+≅
+==
11
1
2
211
12
1
21
2
21
12
1
2 22
22
θ
θ
θθθ
θθθθ
sin
cossin (101)
小角度近似の基で成立する。 これまでは、光波が媒質1から媒質2へ入射している。以下は、媒質2から媒
質1へ入射したとする。媒質1から媒質2のp偏光の振幅反射率は(95)式で与えられ,媒質2から媒質1への境界で反射した
( )ときの振幅反射率rp’は,
( ) p21
12' tanr −=
θθとなり,p r
tan−=
+θθ rs′=−rsが成
立する。よって,疎から密の反射は, の位相
偏光の上記の等式が s偏光についても ts×
(102) 理と呼ぶ。(102)式のストークスの定理
πを伴うことを表すr′ = - rが成り立つ。 p,s偏光に依らず成立する。(96)式の振幅反射率tpと媒
質 2 から媒質 1 への入射したときの振幅透過率tp′を用いると, tp×tp′+rp
2=1となる。 問題 10.1 tp×tp′+rp
2=1を導出しなさい。
p
(n1=1.0, n2=1.5) θB=56.3°
図 36 振幅反射率 rと透過率 tの変化 ts′+rs2=1として成立する。p,s偏光に共通な
エネルギー保存則である tt’ + r2 = 1 が成立し,これをストークス(Stokes)の定は,§5.1で記述した繰り返し反射干渉計の干渉強度の計算に利用されている。
7
ブリュスタ(Brewster)の法則は、
入射角と屈折角の関係が、221π
=θ+θ であるとすると、(97)式から
(103)
となり、p偏光の反射率rpが0となる。 角
この入射角θ1をブリュスタ(Brewster)の度θBと呼ぶ。(100)式の振幅反射率rsから図
36のθB=56.3°のとき、rs=-cos2θB=0.38 となる。(85)式のスネルの法則から
BBB nnnn θπθθ sinsinsin =⎟⎞
⎜⎛ −== θcos
2 22221⎠⎝
が成立し、この関係式から nθB=(n2/n1) (104)
ブリュスタ
反射率rp,rs
透
n2
反
は、 n1
taとなる。n1=1, n2=1.5とすると角は、θB=56.3°である。 図 36~38は,媒質 1から媒質 2へ入射した際の入射角θに対する
過率tp,ts の計算結果を示す。各図は、 媒質 1は空気であり、媒質 2の屈折率が異なる。 いま(97)(98)式を用いて垂直入射の射率、透過率
=1 n2=1.5として、 ( )
2.05.10.121 ++ nnSp
5.0== 21 −−
=−=nn
rr
( ) 8.02.015.1
1=+== Sp tt とな
問題 10.2 )ガラス板をn枚重ねた積層偏光子のs偏光の
rS2とし、くり返し反射がないとす
図 37 振幅反 θB=5
図 38 振幅 θ
( ){ } 0)(tan
2tan
21
11
=∞=+
⎭⎬⎫
⎩⎨⎧
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ −−
=θθ
θπθ
pr
る
1 強度透過率
れば、(1− 度反射率を
さい。ここで、一枚目のガラス板への入射角は、ブリュ
8
射率 rと透過率 tの変化 (n1=1.0, n2=1.3) 2.4°
。
反射率 rと透過率 (n1=1.0,B=63.4°
は、一枚のガラス板
ることを導rS2)nであ
スタ角θB=56.3°で
tの変化 n2=2.0)
の強
きな
ある。
22
21
22
nns
+
るか計算
し
タ角θBでガラス板へ入射しているので、rp=0 である。一枚のガラスrS2であり、単位強度 1の光が入射しておりs偏光の透過強度は
る。p偏光のレーザー光は反射
透過率は、tp×tp′=1- rp2 =0.96 (rp
2=0.04、図 36 参照)で
反射
るか計算
し
タ角θBでガラス板へ入射しているので、rp=0 である。一枚のガラスrS2であり、単位強度 1の光が入射しておりs偏光の透過強度は
る。p偏光のレーザー光は反射
透過率は、tp×tp′=1- rp2 =0.96 (rp
2=0.04、図 36 参照)で
反射
ブリュスタ窓を使用しているので、p偏光の射出光となっている。 この積層偏光子を図 22で示すレーザー共振器のブリュスタ窓(Brewster’s
window)に適用すると垂直入射に比べ反射ロスがどのくらい抑えられ
ブリュスタ窓を使用しているので、p偏光の射出光となっている。 この積層偏光子を図 22で示すレーザー共振器のブリュスタ窓(Brewster’s
window)に適用すると垂直入射に比べ反射ロスがどのくらい抑えられなさい。
問題10.2の解答 1) ブリュス
なさい。 問題10.2の解答 1) ブリュス
板の強度反射率を板の強度反射率を
1- rS2、2 枚目のガラスの透過強度は、(1- rS2)- (1- rS2) rS2=(1- rS2)2となる。よってn枚のガラスの透過強度は、(1- rS
2)nとなる。ブリュスタ窓つきガラスレー
ザー管の多数回の反射、透過によりs偏光の強度透過率(1- rS2)nはほぼ 0となりp
偏光成分が取り出せることになる。s偏光の強度反射率は、一回の反射でrS2、2
回の反射で(1- rS2) rS
2、n回の反射で(1- rS2)n-1 rS
2となる。たとえば、n=5で強度反射率は 0.078(rS
2=0.15、図 36 参照)である。
ブリュスタ窓の採用は、 (102)式からn回ブリュスタ窓を透過したp偏光の強度透過率は(tp×tp′)n=(1- rp
2)n =1 (rp2=0)であり 1とな
1- rS2、2 枚目のガラスの透過強度は、(1- rS2)- (1- rS2) rS2=(1- rS2)2となる。よってn枚のガラスの透過強度は、(1- rS
2)nとなる。ブリュスタ窓つきガラスレー
ザー管の多数回の反射、透過によりs偏光の強度透過率(1- rS2)nはほぼ 0となりp
偏光成分が取り出せることになる。s偏光の強度反射率は、一回の反射でrS2、2
回の反射で(1- rS2) rS
2、n回の反射で(1- rS2)n-1 rS
2となる。たとえば、n=5で強度反射率は 0.078(rS
2=0.15、図 36 参照)である。
ブリュスタ窓の採用は、 (102)式からn回ブリュスタ窓を透過したp偏光の強度透過率は(tp×tp′)n=(1- rp
2)n =1 (rp2=0)であり 1とな
ロスが 0で効率よく励振される。上述のようにs偏光の強度透過率は(1- rS2)nは、
ほぼ 0となっている。 p偏光のガラスへの垂直入射の強度反射率をrp
2とすると、単位強度 1がガラ
スに垂直入射すると強度
ロスが 0で効率よく励振される。上述のようにs偏光の強度透過率は(1- rS2)nは、
ほぼ 0となっている。 p偏光のガラスへの垂直入射の強度反射率をrp
2とすると、単位強度 1がガラ
スに垂直入射すると強度
ロスが 4%生じている。n回の強度透過率は、(tp×tp′)n=(1- rp2)nとなり、例えば
n=5でp偏光の強度透過率は 0.82となり、反射ロスは 1-(tp×tp′)nとなり 18%となる。レーザー光の励起が効率よく行えない。
ブリュスタの法則、
ロスが 4%生じている。n回の強度透過率は、(t
21 nn
r−
=
2)2)
p×tp′)n=(1- rp2)nとなり、例えば
n=5でp偏光の強度透過率は 0.82となり、反射ロスは 1-(tp×tp′)nとなり 18%となる。レーザー光の励起が効率よく行えない。
ブリュスタの法則、221π
=θ+θ を、
成立することを示しなさい。
(x,z)座標系で、スネルの法則から
使用して、 が
§11 全反射
図 39に示す 12
12 sinsin θ=θ
n
n が成立し、屈
折率 θ2)になる入射角θn1>n2の媒質から入射すると,屈折角が 90°(= cが存在する。
9
よって、 cn
nθ==θ sin1sin 1 が成立し入射角θ
22
えば、ガラスから空気中の入射の際 θc=41.8°となる。この角度が、全反射角で、
図 39は、n1›n2のとき、ガラス(n1=1.5)か
こす臨界角以上の入射
角
cを臨界角(critical angle)という。たと
θc以上の角度で入射すると反射ロスがなく 100 パーセントの反射率で反射される。この現象を全反射(total internal reflection, TIR)という。光ファイバー中の伝播において、コアのガラスとクラッドのガラスとの反射に使われている。また,光
導波路(Optical Wave Guide)内の誘電体境界の反射に利用されている。 11.1 エバネッセント(Evanescent) 波
z
ら空気(n2=1.0)へ入射した場合を示している。 全反射を起
θ1は、θ1≥θcであり、sinθ1≥sinθc よ
り 1sinsin 11 =θ≥θnn
が成立する。媒2
12
cnn
質n2側のcosθ2 は、
)(1sin
sin1sin1cos
112
2
2
1
12
2
2
12
22
θ=−θ⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛=
θ⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛−=θ−=θ
iQn
ni
n
n
(105) 105)式から、n2の媒質側のcosθ2は純虚数の値を有する。
ブリュスタ
角
て光エネルギーは空気側のn2側に入っていない。n2側のz方
)]
=a
となる。 (臨界角やブリュスタ角は、n1=1.5, n2=1.0で、臨界角θc=41.8°であり、 θB=33.7°である。 そこで、全反射におい
向の電界E2は、振幅をa2として、 E2(r,t)=a2exp[i(xk2sinθ2+zk2cosθ2-ωt+φ2
2 ( ){ }⎭⎬⎫
⎩⎨⎧ ⎛ n
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
φ+ω−θθ− 212
1212 tsin
nxkiexpQzkexp (106)
である。ビーム幅のx方向の界面に進む平面波は、|exp(ixk2sinθ2)|=1 であり、減
面に進む進行波が存在し、振幅は境界面から
図 39 全反射における臨界角θc
衰しない波であり進行波となる。 n2側には、境界面に沿ったz軸方
10
離れるにつれて指数関数的に急激に減少する。これを、エバネッセント波
(evanescent wave)という。
臨界角 θCについて、 c1
2 sinnn
θ= が成立し、臨界角 θc以上の入射角θ1は
1sin cθ
に
sin 1 >θ
である。z方向の振幅である
exp(-1)=0.37設定すると z の距離は、(106)式から
( )221 θ1λπ Qnz= となり、
( )122 θπλQn
(107) z =
となる。ここで、入射 0°でQ=0.57, θ1=70°とするとQ=0.99となる。
角θ1が 5
θ1=70°の入射では n2側にz≅λ/6浸入している。
ππ 22 21 n
θ 11)( =≅Q を満足する入射角θ1は
θ1=42.5°であり、z≅λ
エバネッセント波は、波長λ程度の伝播 り、回
折 、回折限界で決まる大きさのスポッ
迂回し
て
ト波を応用する光学素子
41は、ブリュスタ入射角とエバネッセント波を用いる偏光ビームスプリッ界の誘電体多層膜は、半波長の厚
1ミ ロン程度の伝
程度浸入している。
図 40 z~λの場所で、n 側の空2
気側に滲みだしているエバネ
ッセント波の振幅は、n1側の振
幅の 37 %である。
距離で消滅するので、非伝播光と呼ばれる。 ク 播であ
の影響が少ない。光のビームスポットは
ト以下には絞り込めない。ところがエバネッセント波は、わずかな伝播距離に
より回折の影響が少なく、数 nmのスポットの光を取り出すことが出来る。エバネッセント波の光である近接場の光を扱う光学を、近接場光学(Near-field optics)と言う。これを利用し滲みだした光の強度を一定にトレースすることにより、透明位相
物体の表面形状の測定ができる。この光学装置のことを近接場顕微鏡と言う。 光ファイバーでは、コア(core)とクラッド(clad)との境界を全反射により光が伝
播する。図 40に示すようにn2側をクラッド部と見立てればクラッド部を
反射しており、入射角θ1に依存して反射光の位相が変化する。この迂回し境界
に沿って推移した後反射される現象をグース・ヘンシェン(Goos-Haenchen)シフトと呼ばれる。
11.2 エバネッセン図
タ、(Polarization beam splitter, PBS}を示す。境
11
みを何層も重ねて蒸着したもので、問題 10.2 に記述した積層偏光子となる。ブリュスタ角で入射する s 偏光は積層偏光子の個々の境界面で少しずつ反射を受けて減衰し、p偏光は反射ロス無しで透過する。p偏光の直線偏光の光を透過することができ、空気層はエバネッセント波が生じている。空気層におけるエバ
ネッセント波のパワーが半分になる距離に誘電体多層膜を置き、ビームスプリ
ッタとしての透過パワーとなる。反射は、s偏光となり入射パワーの半分が反射
される。
図 4 ムス
リッタ(Prism beam splitter)を表す。キューブ・ビームスプリッタ (Cube beam sp
図 41 偏光ビームスプリッタ、 は p偏光、○・は、s偏光を表す。
2は、誘電体多層膜を蒸着していない偏光依存のないプリズム・ビープ
litter)とも呼ぶ。ビーム・スプリッタ間隔は、半波長程度の厚みであり、屈折率が入射側のガラスと同じであるガラスと接すると波のエネルギーのおおよそ
半分が透過し、半分は反射される。
12
図 42 無偏光キューブ・ビームスプリッタ
近接場光を容易に説明できるものに全反射現象がある。この時に境界面への入射角を深くすると、光は透過せず、すべて反射される。まず、図 43に示す光学系によりプリズムへの入射角を全反射角に設定する。 次に図 44 に示す光学系を組む。このとき、プリズムと計算機ホログラム(Computer-generated hologram, CGH)間の距離を光源の波長程度にしなくてはならないため、プリズムと CGH間は屈折率マッチングオイルであるキシレンにより圧着させてある。これによ
り滲み出したエバネッセント光が再生光となり CGH へ入射し、CGH の再生像をカメラにより撮影した。図 45に再生像を示す。
図 43 直角プリズムを用いる全反射光学系
図 44 直角プリズムのエバネッセント波が計算機ホログラム(CGH)の再生光
13
図 45 図 44 の光学系を用いるエバネッセント波による CGHの再生像
エバネッセント波を用いる指紋センサーは、図 46で示すように、指紋を 45度プリズムに押し付けて表面に沁み出しているエバネッセント波は散乱を起こし、
反射センサー上に弱い光が届く。よって、2次元 CCD(charge-coupled device)センサー上に指紋のパターンが生ずる。 それ以外に、45 度プリズムの表面に微小な細菌等を拡大結像するための全反射顕微鏡への応用がある。
エバネッセント波
図 46 エ
問題 11.1 全反射の際のエバネッセ
(95)式のrpと(100)式のrsに代入
それぞれの位相が
=δ 1
1
costan2
θ=δ − NQ
p 2s
指紋(finger print)
2次元 CCD センサー
弱い
強い
バネッセント波を用いた指紋センサー
ント波のcosθ2は(105)式で記述できcosθ2 =iQ(θ1)をし、rp≡exp(-iδp), rs≡exp(iδs) とおけば、
1
1
costan
θ−
NQ
14
になることを示しなさい。ここで、N=n1/n2である。 この位相差δ=δp-δsとすれば、
問題 11.2
となることを示しなさい。 )(
sincos
2tan 1
12
1 θθ
θ=
δ QN
この結果から全反射によりp偏光とs偏光との位相差が生じる。屈折率Nと全
反射入射角θ1を選ぶことにより、δ=π/2の位相変化を与えることが出来る。この偏光素子は、反射を使用しているので波長に依存せず色消しの位相シフター
(achromatic phase shifter)を構成している。図 47に示す菱形(rhomb)プリズム内の2回の反射によりπ/2位相板を実現したプリズムをフレネルロム(Fresnel rhomb)という。
図 47 フレネルロム。垂直入射でi1=47°52´ (n=1.516, BK7)の2回の反射で,p,s偏光の位相差がπ/4+π/4=π/2 となる。色消し(achromatic)の四分の一波長板である。
§12 偏光 (Polarization)
15
x
Ex
z
Ey
y
図 48 二つの電界振動面 Ex,Eyを表す。 光波は、マックスウェルの2階の微分方程式に従われ、2根の解を有し、こ
れらが電界ExとEyを示していることになる。この二つの光電界が
[ )(exp)exp(
),( xy
x
y
x tkziiA
AEE
tzE φωδ
+−⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡=⎥
⎦
⎤⎢⎣
⎡= ] (108)
となり、Ex,Eyについて解き、光電界の軌跡を表す式は、
δδ 222
sincos2
=−⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛
yx
yx
y
y
x
x
AA
EE
A
E
A
E , (109)
である.位相差δは、 xy φφδ −= であり各々の電界の初期位相の差で表される。
(109)式の電界の軌跡は、楕円を表し楕円偏光(elliptically polarized light)という。偏光状態は、複素振幅のAx、Ayの大きさと位相 δの関係で決まる。
光波は、z方向に進む横波で、図 48で示す振動方向が互いに独立な光電界Eの位相差により、位相差がδ=mπ (m=0,1,...)のとき、Ex/Ax=(-1)mEy/Ayとなり直線偏
光(linearly polarized light)という。位相差がδ=2mπ±(π/2)、そして振幅がAx=Ay=Aのとき、Ex
2+Ey2=A2となり、円偏光(circularly polarized light)という。
12.1 ジョーンズ(Jones) ベクトル
16
偏光状態を表すベクトルで、時間(ωt)と空間(kz)に依存する項を省略し、直線、円、楕円偏光を表すベクトルをジョーンズベクトル(Jones vector)と言う。Jones
ベクトル J(δ)は、(108)式を電界振幅 22yx AA + で規格化して、
J(δ)= ⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡δ+ )exp(
122 iA
A
AA y
x
yx
(110)
となる。よって Jonesベクトル(110)式を用い電界 E(z,t)を記述すると
[ )(exp)(),( 22xyx
y
xtkziJAA
E
EtzE φωδ +−+=⎥
⎦
⎤⎢⎣
⎡= ] (111)
となる。電界振幅Ax、Ayの方位角をαとするとtanα = Ay/Axである。δ=0である直線偏光のJonesベクトル J(0)は、方位角αを用いて(110)式から
=)0(J ⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡αα
=⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡
+ sincos1
22 y
x
yxA
A
AAとなる。円偏光は、(110) 式にAx=Ay=0, 2πδ m= を
代 入 し て 、 右 回 り 円 偏 光 (right-handed circularly-polarized light) は 、
⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡−
=π
−=δi
J1
21)
2( 、左回り円偏光は、 ⎥
⎦
⎤⎢⎣
⎡=
π=δ
iJ
1
21)
2( となる。図 50は、δ=0から
δ=π/2まで変化した際の偏光ベクトルの軌跡を表す。
δ=0 δ=π/2 δ=π
図 50 Ax=Ayとするとき、位相差δの変化による偏光ベクトルの変化
問題 12.1 δ=0、Ay=0の直線偏光J=0は、右回り円偏光と左回り円偏光に分解できることを、Jonesベクトルを用いて示しなさい。
12.2 ジョーンズ(Jones)マトリックス
17
受動的(passive)な偏光素子は、2×2の行列で表すことができる。この行列をジョーンズマトリックス(Jones matrix)と呼ぶ。入射のジョーンズベクトルから偏光変換作用を表すジョーンズマトリックスを介して出力のジョーンズベクトル
が求まる。これらの入出力関係は、線形である。 移相子(retarder)は、良く使用する偏光素子である。そのジョーンズマトリックス R(∆)は、
⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡
=⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡=∆ ∆
−
∆∆−
∆−2
22
0
00
01)(
i
ii
i
e
eee
R (112)
である。 水晶のような複屈折結晶は、2つの軸である位相が進む進相軸(fast axis)と位相が遅れる遅相軸(slow axis)がある。x、y軸が、f、s軸にそれぞれ一致
している。ここで、x、y方向の屈折率 、 がxn yn yx nn < であり、位相速度vx, vy
がvx>vyである。いま半波長板(λ/2板、∆=π)を使用し、反時計方向に方位角αの入射直線偏光が半波長板に入射し、出射偏光面は
⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡−
=⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡− α
ααα
sincos
sincos
1001
となり、x軸に対して時計方向に回る方位角αの直線偏光に変換される。複屈折の二つの屈折率を表す屈折率楕円体は、12.5 章に示す。
12.3 偏光子(polarizer)-位相板(phase plate)-検光子(analyzer)の組み合わせ
図 51の 入射直線偏光は、方位角αを有する。直線偏光が入射し設定角θの偏
光板を透過後の電界を求める。(112) 式で表す R(∆) の位相板の座標系 x’,y’は、設定角θに設定されている。今、入射光と偏光板を−θ回転して、偏光板の座標 x’を実験室座標系 x 軸に一致させる。直線偏光の Jones ベクトル J(0)が−θ回転を行い、この回転の操作を旋光子(rotator)の作用 T(−θ)で表し、Jones ベクトルはT(−θ) J(0)となる。 この T(−θ) J(0)の光が、偏光板である位相板 R(∆)に入射する。 位相板通過後の電界は、R(∆)T(−θ)J(0)となる。 偏光板の座標 x’を x に戻すため、旋光子 T(θ)を乗じる。偏光板通過後の光電界 Eは, E= T(θ)R(∆)T(−θ)J(0)となり、ここで旋光子の行列 T(θ)は、
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ −=
θθθθ
θcossin
sincos)(T
18
(113)
であり、ユニタリー行列で表される素子である。 ユニタリー行列とは、TT+=I (単位行列)の関係で、+はダガー(dagger)と発音し
短剣印を意味する。T+は、T行列の転置に複素共役をとった行列である。 旋光子は、複屈折結晶から作ることができる。旋光子は、λ/2 波長板のこと
である。纏めとして、固有軸 x’,y’ → −θ回転 → T(−θ) → 実験室座標系 x,y軸に合わせる。 図 51の位相板の代わりに直線偏光子がある場合、偏光子通過後JonesベクトルはP(0)T(−θ)J(0)となる。よって直線偏光子の座標x’をxに戻し偏光子通過後の電界はT(θ)P(0)T(−θ)J(0)となる。ここで、入射直線偏光は、方位角α=0, Ax=1, Ay=0としているので、Jones ベクトルは、J(0)となる。また、直線偏光子の作用行列P(0)は、
⎟⎟⎞
⎜⎛ θ直線偏光子の Jones マトリックス、 として、θ=0より、
⎠⎜⎝ θsin
cos
⎝ 0001
01
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛→⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎛
となる。よって、直線偏光子の作用行列 P(0)は
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛=
0001
)0(P である。
y
J(0)
yx x
x´y´-θ y
α x θ
z
図 51 設定角θで配置された位相板の座標系
19
問題 12.2 入射光の方位角α=0である直線偏光 J(0)が、 設定角θ=π/4、位相量∆=π/2の1/4波長板を通過した Jonesベクトルを求めなさい。
12.4 ストークスパラメータ 四つのパラメーターで偏光状態を表すストークス・パラメータ(Stokes
parameter)がある。偏光状態を表現するには 12.1 章で記述したジョーンズ行列とストークスパラメータの 2 種類がある。ジョーンズ行列は振幅と位相を扱うがストークスパラメータは電界の 2 乗である強度で記述しておりインコヒーレ
ント光でも成り立つ。(108)式の電界 振幅 位相差δを用いて yx EE , yx AA ,
δ=+=
δ=+=
−=−=−=
+=+=+=
∗∗
∗∗
∗∗
∗∗
sin2
cos2
3
2
221
220
yxyyxx
yxyyxx
yxyxyyxx
yxyxyyxx
AAEEEES
AAEEEES
IIAAEEEES
IIAAEEEES
として表すことができる。 ⟨…⟩は 2.2章で記述したポインティングベクトルを測定する際の時間平均を表し、Iはx, y方向のポインティングベクトルであり強度を表す。ストークス・パラメータの各成分の意味を考えるとS0成分は入射光自体の
強度、 成分は水平偏光成分、S1S 2成分は 45°直線、 成分は右まわり円偏光成分
を表す。これらのストークスパラメータは実測することができる。
3S
20
図 52 すべての偏光状態をポンアカレ球の球面上で表す。 図 52 のような球面上で、偏光状態を表すポアンカレ球がある。赤道上に直線偏光、北半球に左回り楕円偏光、南半球に右回り楕円偏光が示され、北極、南
極はそれぞれ左回り、右回りの円偏光に対応する。その測定は一枚の偏光板と
一枚の1/4 波長板があればできる。その測定は、偏光板の透過軸を 45°きざみ
に回しながら光を通し、それぞれ都合 4 通りの透過光強度を測定する、 次に、
偏光板の前に透過軸に対して異方軸を 45°傾けた 1/4 波長板を入れて透過光強
度を測定する。最後に、その状態で偏光板の透過軸を 90°回転させて透過光強
度を測定する。これで合計 6つの光強度が得られたことになる。これら値から 4
つの値で構成されるストークスパラメータが導出できる。
12.5 屈折率楕円体
図53 屈折率楕円体
複屈折は図53の屈折率を値とする屈折率楕円体で表すことができる。n0を常
屈折率を、neを異常屈折率とする。 屈折率楕円体の式は、
12
2
20
2
20
2=++
en
z
n
y
n
x
となる。異常光線の屈折率neは、屈折率楕円体を用いて
21
ne2(θ)=y2+z2 となる。ここで、光線sは、光学軸に対してθ傾いている。 常光線は、θに無関係に一定の屈折率noである。よって複屈折の大きさは、 ne(θ)-noとなる。 neとn0の関係式は、以下の通りである。
である。ここで、
である。楕円の式は、
eeoe nnnn
nenne
nez
ny
ney
nezne
z
==
+=
=+
=
=
=
)90(,)90(
sincos)(
1
1
cos)(
sin)(
sin)(
2
2
20
2
2
2
2
20
2
oo
θθθ
θθ
θθ
θθ
z
0 y
s
ne
n0
-ne
n0(θ)=n0
y方向に位置する
屈折率はneとなる。
屈折率の座標で
書く。
図 54 複屈折材料の法線面
図53の網掛けの部分で示す屈折率楕円体の子午面を描いたのが、図54である。これを法線面(normal surface)と言う。常屈折率noの法線面は球面であり、異常屈
折率neの法線面は、楕円である。よって、光線と波面は直交することから(Fermatと原理)、光線ベクトルsと直交するのは常光線であり、図 54 に示すように異常光線は直交していない。 §13 幾何光学
13.1 アイコナールの式
22
光の現象を解析するには、Maxwellの方程式を解くことが必要である。回折現象を無視し、光の経路のみを考慮する光学を幾何光学と言う。幾何光学は、レ
ンズの設計に威力を発揮する。 (21)式のヘルムホルツの波動方程式、において、波長λを 0 に近づけると, 波数 kは∞になる。近似した式が光学距離を意味するアイコナール(Eikonal)からアイコナールの式 (Eikonal equation) と言う。 この導出は、計算量を要するが以下に記述する。
(21)式のヘルムホルツの波動方程式は、 022 =+∇ EkE
位相ϕの光が x方向に伝播するとして )()()( xikexAxE ϕ−= を(21)式に代入する。
ここで、nは屈折率、kは波数で k=cω
λπεµω ==
2であり, k0は真空における波
数であるとすると
{ } { } { }
{ } { }
{ } ⎥⎦⎤
⎢⎣⎡
∂ϕ∂
ϕ−⋅−∂∂
⎥⎦⎤
⎢⎣⎡
∂ϕ∂
ϕ−⋅−∂∂
ϕ−∂∂
=⎟⎠⎞
⎜⎝⎛
∂∂
∂∂
=∂
∂
∂ϕ∂
ϕ−⋅−∂∂
ϕ−=∂∂
=∂∂ ϕ−
xikikA
x
xikikA
xA
ikxx
Exx
E
xikikA
xu
ikAexx
E ik
exp
expexp
expexp
2
2
次に
を考える。 { } BikikA =ϕ−⋅− exp とおくと
{ }[ ] { }
{ } 2
2
2
2
exp
expexp
xikikA
xikikA
xikikA
x
xB
xB
xxB
x
∂
ϕ∂ϕ−⋅−=
∂ϕ∂
ϕ−⋅−∂ϕ∂
ϕ−⋅−∂∂
=
∂
ϕ∂+
∂ϕ∂
⋅∂∂
=⎥⎦⎤
⎢⎣⎡
∂ϕ∂
∂∂
となる。 よって、
23
{ }
{ } { } { }
{ } { }
となる。
で割るととなり、さらに
よりここで
となる。
)114(exp21exp
exp2expexp
exp
02
2
02
2
20
222
2
2
20
20
02
2
0
222
02
2
2
220
2
02
2
22
2
2
ϕ−⎥⎥⎦
⎤
⎢⎢⎣
⎡
∂ϕ∂
∂∂
−∂
ϕ∂−
∂
∂+ϕ−
⎥⎥⎦
⎤
⎢⎢⎣
⎡⎟⎠⎞
⎜⎝⎛
∂ϕ∂
−=+∂
∂
ϕ−⎥⎥⎦
⎤
⎢⎢⎣
⎡
∂ϕ∂
∂∂
−∂
ϕ∂−ϕ−+ϕ−
⎥⎥⎦
⎤
⎢⎢⎣
⎡⎟⎠⎞
⎜⎝⎛
∂ϕ∂
−=+∂
∂
=
⎥⎦⎤
⎢⎣⎡
∂ϕ∂
−∂∂
∂ϕ∂
−ϕ−⎪⎭
⎪⎬⎫
⎪⎩
⎪⎨⎧
∂
ϕ∂−
∂∂
∂ϕ∂
=+∂
∂
ikxx
Ak
i
xA
ki
x
A
kik
xnAEn
x
E
k
k
ikxx
Aik
xAikikik
xnAkEk
x
E
nkk
xikA
xA
xikik
xAik
xA
xEk
x
E
1
回折を無視するため、 λ→0、k0→∞ を(114)式に代入する。
{ }
{ }
( )
となる。
を用いて変形するとである光線ベクトルこの式を単位ベクトルとなる。
となり、
より
)115(
0exp
0exp
22
22
2
222
Lrsngrad
sngrad
nx
ikA
ikx
nAEn
=ϕ=ϕ
=⎟⎠⎞
⎜⎝⎛
∂ϕ∂
≠ϕ−
=ϕ−⎥⎥⎦
⎤
⎢⎢⎣
⎡
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛
∂
ϕ∂−=
(115)式をアイコナール (eikonal) の式と言う。n=1の空気中の伝播において、光線ベクトル sは、波面ϕのグラディエントである。ここで、位相と波面は等しい。波面の傾きが光線ベクトル s=k/⏐k⏐に等しいとのことを意味しており、波面と光線は直交することを表す。 また、光が不均一の屈折率の媒質中を通過するさいに、その光路が曲がる。
それは、アイコナールの式より導出され、(116)式のフレネー・セレ(Frenet-Serret)の定理となる。光路の曲がり方を光線の経路の曲率半径ρで表すと、
ρ
=N
dsds
)116()0(1n
dsds
nNn ∇⋅ρ=∇⋅=>ρ
ここで、N は法線単位ベクトルである。この(116)式の左辺は、屈折率 n が正、曲率半径ρが正より、従って右辺は正なので光路は屈折率 n の値が増加する方向に光線が曲がることを表している。 屈折率分布が 2乗分布している平板マイクロレンズは、球面レンズと同様に焦点に集光作用に応用されている。フォトリフラクティブ結晶に於いて、電気電
界の方向にポッケルス効果により屈折率勾配が生じ、電気電界の方向に、すな
24
わち屈折率が増える方向にレーザービームが曲がっていく現象も、フレネー・
セレの定理から説明できる。また、太陽が地平線に沈むとき、地平線以下に沈
んだ太陽も、大気の密度の濃く屈折率勾配の大きな方向に曲がり見ることが出
来る。これも(116)式により説明できる。
13.2 フェルマー (Fermat) の原理 図 55に示すように、sが光線ベクトルを表す屈折率分布n(s)を持つ媒質中の2
点P1からP2への光の伝播の、光学的距離Lが
.min)(
)117(.min)(
2
1
21
→==
→=
∫
∫
dscsn
cL
t
dssnL
P
P
PP
最小となる光路を選択し伝わることになる。ここで、光学的距離のことをアイ
コナール(Eikonal)と言う。(117)式は、変分量δL=0と書いても同等である。(119)式の別の解釈は、光学的距離を光速度で除した時間は、最小をとり最短時間の
原理(principle of least time)ともいわれ、フェルマー(Fermat)の原理と呼ばれる。また、問題 13.1のように、経路差は位相速度の比に等しいことになる。 問題 13.1 スネルの法則をフェルマーの原理を用いて説明せよ。また、屈折前と屈折後の
経路差は、位相速度の比に等しいことを示しなさい。
図 55 フェルマーの原理を示す光路図
25
問題 13.2 屈折率が増える方向に光が曲がっていく現象を説明する(116)式のフレネー・セレの定理は、(117)式のフェルマーの原理を用いて説明できることを示しなさい。 問題 13.3
0
.min)(2
1
=
→= ∫
dxdL
dssnLP
P
フェルマーの原理は、光線が光学的距離Lを最小となる光路を選択し伝わることを示している。図 13.3 の屈折率n1の媒質中SからBへ光路を形成し、屈折率n2の
媒質へ屈折し、経路BPを形成する。光学的距離L= n1×SB+ n2×BPを図 13.3のh, x, b, a-xを用いて記述し、 より、θ1,θ2を用いて屈折の法則(スネルの法則)を導きなさい。
13.3 無収差レンズの設計 差を表す収差なく結像するため、フェルマーの原理を
用
点物体の点像を結像の誤
いて、レンズの形状を球面ではなく、非球面にすると無収差の結像関係にな
ることを導出する。
図 13.3
図 56 平凸レンズの焦点 Fへの集光
26
図 の屈折率 nの平凸レンズの結像は、左側から平行光が入射し焦点 Fに光が
θ―f) (120)
の平凸レンズの左がwから平行光が入射しており、フェルマーの
56収束するとする。FP、FHは
FP=ρ
FH=f+n(ρcos である。図 56原理により入射光は PFと HFまでの伝搬は、同時刻であるので、無収差にするには FH=FP=ρにならなければならない。 さらに
22
22
coszx
zzzx
+==
+=
ρθ
ρ (121)
である。 (120 ) 式は(122)式のように表わされる。
よって ( )fnf −+= θρρ cos (122)
(121)式を代入すると
(122)式に
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛−
+⋅++=+ f
zxzzxnfzx
22
2222
= f + n ( z - f )
で割ると
となり、 両辺を(n2-1)
( )( ) ( )
( )( )
)124(1
11
1
1
)123(1
1
11
122 −−
−n
nf
2
2
2
2
22
2
2
2
2
=
⎪⎭
⎪⎬⎫
⎪⎩
⎪⎨⎧
⋅+−
−
⎭⎬⎫
⎩⎨⎧
+
⎭⎬⎫
⎩⎨⎧
+−
−
−−=
−−
fn
n
x
n
f
n
nfz
fn
n
n
xz
nz
となる。ここで (124)式を a, b, cの定数を用いて表わすと
( ) 1
22− xcz の双曲線である。 22 =−
baただし各定数
fn
ncfnnb
nfa
1,
11,
1 +=
+−
=+
=
よってレンズの形状が双曲線のとき、結像点が点像となる無収差レンズとなっ
27
ている。
)125(111
fba=+
3.4 凸レンズの結像関係 焦点距離を fとして、薄いレンズの結像関係式は、
なる。幾何光学では、光軸を縦方向、光軸に垂直方向を横方向と言う。
図 58 ビーム・エキスパンダの光学系
図 57 凸レンズの結像関係
1 物距離を a, 像距離を b、
と
28
)126())(1(21 rr
nf
−−=111
)127(1
1 ffD
25)式と対になるレンズ結像関係のレンズ製作者の公式(lensmaker’s formula)は
なる。ここで、nは凸レンズの屈折率であり、r1,r2はそれぞれ凸レンズ前面、
題 13.3 方向の物体の大きさと像の大きさをda、dbとする。(125)式の微分を用
図 58 は、ビームエキスパンダの光学系を示す。焦点距離f1の対物レンズを用
い
58の二つのレンズの間隔を Dとすると、二つのレンズの合成レンズの焦点距
なる。図 58は、 であり、(127)式より
(1、
と
後面の曲率半径を表す。図 57の凸レンズの横倍率は、図の相似性を用い、m=b/aとなる。 問
図 57の縦いて、縦倍率mlongを計算し、mlong= - m2であることを示しなさい。
焦点距離f2のコリメータ・レンズを設置し、無収差の拡大平行光を実現するの
使用される。 光軸の無限方向である図 57 の右側に星がある場合、星の像がコリメータレンズの焦点面に小さくが形成される。対物レンズは無収差であるこ
とが必要である。分解された星の像を接眼レンズで拡大して見ることになる。
図 58のビーム・エキスパンダの光学系は、望遠鏡の光軸方向と逆方向に使用しているので、光軸方向と逆になり、逆望遠鏡(Inverse-telescope system)と呼ばれる。 図
11離 fは、
212 fff=−+
と 21 ffD += 01 =f となり、平方光が拡大
。されて平行光になる f1 は焦
あ
3.4.1 シュミット(Schmidt) カメラ
面鏡の曲率中心に絞りを置き、コマ収差、非点収差を除去し、残存の球面
収
点能 (focal power) と言い、図 58のビーム・エキスパンダのパワーは 0で る。 1
球
差を補正板で除いた凹面鏡である。」凹面鏡の像面は、凹面の曲率半径の半分
を半径とする球面であり、像を記録する感光フィルムをこの球面に合わせて曲
げて像面湾曲を除去している。よって、シュミットカメラは、すべての収差を
29
除去した反射凹面鏡である。
13.5 顕微鏡対物レンズ
59 に示す顕微鏡は、対物レンズLoと接眼レンズ(eyepiece)Leで構成される。
生
いる。分解能は、レン
ズ
に照明されているとき、対物レンズの分解能は、
図
体試料や切削面を収差なく拡大結像する役目のレンズは、対物レンズである。
対物レンズによる結像点は、レンズの後ろ側焦点距離fo’と機械的筒長Doのとこ
ろに結像し、Do=160 mmまたは 170 mmに設定している。
対物レンズの倍率が高いものほど焦点距離は短くなって
の開口数(Numerical Aperture; N.A.)=nsinαで決まり、分解能を高くするためには、ΝΑを大きくしなければならない。そこで、高倍率と分解能を要求する場合は、対物レンズと物体の間に高屈折率の油を挿入しΝΑを大きくする。これを油浸対物レンズという。 物体がインコヒーレント光
NAs
f
skD
λ=
π=
61.0.Re
22.12
)2/.(Reより
与えられる。分解能は、114ページの(28)式で与えられる回折の広がりの直径で
である。
図 59 顕微鏡の光学系
30
§14 干渉
4.1 二光波干渉
動は、二つまたはいくつかを重ね合わせると、これらの波の位相差が 2πの整
平面波の電界は、(1)式より
E(z,t)=Re{Aei(kz-ωt+φ)}=Acos(kz-ωt+φ)
である。ここで Aは振幅,ωは角周波数,kは波数でλを波長とすると
1
波
数倍のとき強め合ったり、πの奇数倍の時打ち消し合ったりする干渉現象を示す。 単色
λπ= /2k
で表される。φは 00 == tz , におけるこの光波の位相である。
図 の =t のとき、60 半透鏡により二つに分かれて位置ベクトル ( ) の
点 において二つの光波が位置ベクトル
0 ir 2,1=i
iP rの観測点 まで伝播したとし、(21)
式の真空の波数 を用い、 より
Q
0k 0kk =
{ }iiii rrktAtrE φ+−−ω= cos),( (3.2)
となる。ここで、 irr − は、 からir rまで伝播距離である。ここで lrrn i ≡− は、
光学的距離(または光路長)である。また、光源から光路長が一定の面は、等
位相面を表す。いま屈折率 nを n=1とし、図 60に示すように半透鏡から分か
れた2光束が観測点 )(rQ に達する二つの光波の光路長を 11 rrl −= , 22 rrl −=
31
記述される。実際は、l1,l2の光路上での偏光状態により干渉強度が異なる。と
例えば、l1,l2の光路上での直線偏光の単位ベクトルの偏光ベクトルをp1,p2とす
ると、
)cos().(2)( 1221212
22
12 θ−θ++== ppAAAAErI (3.12-2)
である。ここで 22
22
21
21 , EAEA ==
光波がそれぞれ単独に観測点に到達したと考えたときの強度の和
であるから、二光波の干渉波の強度は、二
の2
22
1 aa +
ほかに、両光波の観測点における位相の差 12 θθ − によって正弦波的に変動する
干渉効果が加わることがわかる。この位相差δ は、二光波の初相 21,φφ の差と、
光路長 21 , ll の差により決まるものである。 ()( 21212 φθθδ −+−−=−= llk )1φ (3.13)
(3.12)で与えられる干渉波の強度 δ に対し示すと図 61のごI を位相差 とき正
は であり、交流成分の最大振幅は に等しい。(129)式の cos関数の
偏角 (coherent) が位相差
弦波的波形となる。強度分布を干渉縞と呼び、その直流成分
22
21 EE + 212 EE
δ であり、πの偶数倍のとき、干渉縞の強度は最大値
(3.14)
をとり、位相差
となり
212
22
1max 2 aaaaI ++=
δ がπの奇数倍のとき、干渉縞の明るさは最小値となる。
図60 二光束干渉
図 61 干渉縞の強度分布
- 2
- 1
0
1
2
4
4 0 0 9 0 0 1 4 0 0 1 9 0 0 2 4 0 0
3
- 1 0 0
I
位相差 -6π -4π -2π 0 2π 4π 6π
E 2
2a1a2
12+E2
32
2121min (3.15)
図 61 は位相差の変化による干渉強度の変化を表す。この干渉縞の直流成分
22 2 aaaaI −+=
2/)( + に対する交流分 2/)(minmax II minmax II − の比Cを、干渉縞のコントラスト,
または可視度 (visibility) とよび(3.14)(3.15)から
22
21
21minmax 2 EEIIC =minmax EEII ++
−= (130)
の関係を得る。この の値は0から1までの範囲にある。もし、両光波の振幅Cが等しいときは、 21 EE =
2cos4)cos1(2cos22 22
12
12
12
1δδ aaaaI =+=+= (131)
となり、コントラスト C は(130)式より最大値
δ
1=C となる。すなわち両光
波の振幅が等しいときは干渉縞の直流分と交流分の大きさが等しくなり、その
コントラストは最大値の1を示す。逆に、もし重ね合わせる一方の光波の振幅
が他方の光波の振幅に対して非常に小さい場合は、干渉縞はその直流分に対し
て交流分が小さく、コントラストは0にくなる。 4.2 振幅分割による干渉
せると,透過光と反射光に分かれる.
割干渉
折率nの材質の板があり,上
1 光源からの光を一つの境界面に入射さ
このとき入射光の振幅は,透過光の振幅と反射光の振幅に分割される。振幅分
割された光波をふたたび重ね合わせれば,干渉が生ずる。本章では,振幅分割
による二光波の干渉について考えよう. 14.3 透明な板または空気層による振幅分
いま図 3.12 のごとく空気中に透明で,厚みh,屈方からθの入射角で,波長λ,単位振幅の平面波が入射する場合を考える.空気から板への透過率,反射率をt,r,板から空気への透過率,反射率を 't , 'r とすると,透過光L1の振幅は 'att ,2 回の内面反射をともなう透過光L2の振幅は
)'(' rtt となり,また両透過光の位相差はδは
33
図 3.12 透明な板の両面による振幅分割干渉
)( 12 llk −−=δ
}){(2 BEnCDBC −+−=λπ
}sin'tan2'cos
2{2 θθθλ
π dnd−−=
λθπ 'cos4 nd
−= (3.52)
となる.したがってL1とL2の干渉波の複素振幅は
)}'cos4exp(1{' 2
λθπndirttAt
−+= (3.53)
で与えられる.ここで rr −=' の関係(2.15-1.参照)を用いた.干渉縞の強度は
)}'cos4cos(21{)'( 2422
λθπndrrttAI tt ++== (3.54)
となる.空気中に のガラスの板がおかれているような場合には,振幅反
射率は小さく , であり, , と近似できる
ので,(3.54)は
5.1=n04.02 =r 96.01' 2 =−= rtt 04 ≈r 1)'( 2 ≈tt
)}'cos4cos(21{ 2
λθπndrI t +≈ (3.55)
と近似できる.(3.55)で与えられる干渉縞は直流分が 1,交流分が 22r で,1 22r>>
34
であるから図 3.13(a)の示すように低コントラストの干渉縞となる。つぎに図3.12 における第1面からの反射光 と第2面からの反射光 の干渉を考える.
これらの振幅は
'1L '2Lr, で両者の位相差''rtt δ は
λθπ
λπ 'cos4}){(2)( 12
ndAFnBCABllk −=−+−=−−= (3.56) δ
で与えられる.したがって 'と の干渉波の複素振幅は 1L '2L
)}'cos4exp('1{λ
θπndittrAr −−= (3.57)
であらわされ,その強度は
)}'cos4cos('2)'(1{)( 222
λθπndttttrAI rr −+== (3.58)
空気中のガラス板の場合は , と近似して 1'≈tt 1)'( 2 ≈tt
)}'cos4cos(1{2 2
λθπndrI r −≈ (3.59)
1=+ rt IIとなる.すなわち,図 3.13(b)に示す反射光 ', による干渉縞の直流分1L '2L 22r は小さいが,その交流分も同量であるので,コントラストは高い.また πδ m2= の
とき暗い縞となり,透過光 , による干渉縞の強度(3.55)とは明暗の縞が反転していることがわかる.
1L 2L
I t
O
I r
(b) δ
2γ2
O
(a)
δ
2γ2 1
2γ2
35
図3.13 振幅分割による干渉縞の強度分布 (a)透過光 (b)反射光
以上は,空気中に屈折率 の2枚の板がおかれた場合であるが,図 3.14のごとく,屈折率 の2枚の板の間に空気層を形成する二つの面についても同様に振幅
分割干渉を考えることもできる.このときは上記の各式において とすれば
よい.また屈折角θ’は,上方の空気よりこの板への入射角に等しい.これらのことを注意すれば(3.55),(3.59)で与えた透過光,反射光の干渉縞の強度分布は
nn
1=n
)}'cos4cos(21{ 2
λθπndrI t += (3.60)
)}'cos4cos(1{2 2
λθπndrI r −= (3.61)
と書き換えられる.この場合も,透過光による干渉縞はコントラストが低く,
反射光による干渉縞はコントラストが高い. 以上によりわかるように,1枚の板または空気層による干渉縞の位置は λπn4は定数であるから, 'cosθd すなわち,厚さ dと屈折角θ’に依存して変化する. 14.4 等傾角干渉
板または空気の層の厚さ d が一定のとき,すなわち干渉に関与する両面が正しい平面でしかも互いに平行である場合,干渉縞の強度は 'cosθ に依存して変化する.この干渉縞は屈折角 'θ の等しい光の軌跡と考えられるから,等傾角干渉縞(または Haidingerの干渉縞)とよんでいる.等傾角干渉をおこさせるには平
d
t , r n=1 t' , r'
L0
L1
L2
L2'
L1'
1 θ’
θ
θ’θ
'
図 3.14 空気層をはさむ両面による振幅分割干渉
36
行平面をもつ板または空気層にいろいろの方向から単色光平面波を入射させな
ければならない.また干渉する二光波,すなわち前図 3.12または 3.14の と
または 'と は平行であるので,干渉縞はそれぞれ無限遠に形成され,その方
向すなわち傾角の関数である.等傾角干渉縞を直接眼で観測するには,眼の焦
点を無限遠に合わさねばならないので熟練を要するが,望遠鏡を用いれば容易
となる.等傾角干渉として実際によく使われている方法は,透過干渉について
は図 3.15 のように示す干渉である.単色光源からの光で拡散面を照射すると,この面が面光源となる,この面はレンズ 1 の焦点面におかれているので面光源の各点からの光はこのレンズによりいろいろの傾きの平行光となり,平行平面
板に入射する.平行平面板を透過して無限遠に形成される等傾角干渉縞はレン
ズ 2により,その焦点面上に同心円状となって結像する.
1L 2L
1L '2L
この場合の干渉縞の形状を調べてみよう.二つの干渉波の位相差δ が πm2 の
ときm次の明るい縞を形成するので,次数 と屈折角m 'mθ の関係は
λθ 'cos2 mnd
m = (3.62)
となる.したがって,傾角の小さいほど次数は高く,垂直入射光 )0'( =ϕ に対し
て最高の次数を示す.
図3.15 等傾角干渉縞の観測
37
ym
図 3.16 ファブリー・ペロー干渉縞(単一縦モード発振のレーザーを用いる等傾角干渉縞)
λndm 2
max = (3.63)
この最高次数 は,光の波長maxm λ,板の厚さ dおよびその屈折率 により決まる.
傾角
n
'mθ は小さいとして 2'1'cos 2mm θθ −≈ と近似し,さらにこの板への入射角 mθ
とは屈折法則 '0 mm nn θθ = の関係があるから(3.62)は
})(211{ 20
max nn
mm mθ−= (3.64)
となる.m次の縞の半径を ',レンズ2の焦点距離を とするとmy f fymm =θ で
あるから,次数mは
})(211{ 20
maxmax nf
ynm
mm m−= (3.65)
と書ける.これを について解くと, my
21
max
max
0
})(2
{m
mmnnfym
−= (3.66)
を得る. は中心 から までの干渉縞の本数であるから,これをmm −max )0( =y my
38
mp とすると,(3.66)は(3.63)を用いて
21
0
)(d
npnfy m
mλ
= (3.67)
となる.この式から,中心から 番目の干渉縞の半径 はmp my mp に比例するこ
とがわかる.この干渉縞のもう一つの外側の 1+mp 番目の干渉縞は 次の干
渉によるものであるからこれの半径を とすると,両縞の間の面積は(3.67)
を用いて
1−m
1−my
2
012
0
222
12 )()()(
nf
dnpp
dnnfyyy mmmm
λπλππππ =−=−=∆ −− (3.68)
とあらわされ,次数 に関係なく,いずれの二つの干渉縞の間の面積も一定で
ある.また,光の波長や板の屈折率が大きいほどこの面積が大きく縞は粗にな
り,板の厚み dが大きいほどこの面積は小さく縞は密になる.
m
以上の議論は空気中(屈折率 )にある厚み dの平行平面板(屈折率 )によ
る等傾角干渉縞について行ったが,図 3.14 のごとく空気中(屈折率 )にある
2枚の平行平面板(屈折率 )の間に厚さ dの空気層について議論しても同様の
結果が導かれる.ただこの場合
0n n
0n
n
'mθ はこの上方から板への入射角θに等しいこと
に注意すればよく,計算結果のうちたとえば(3.67)に相当するものは
21
0
)(dn
pfy m
mλ
= (3.69)
となる.さらに板または空気層からの反射光による等傾角干渉縞についても,
同様の性質を導くことができる.ただし反射光による干渉縞は透過光によるそ
れに比べて,縞のコントラストがよく,また縞の明暗が逆になっていることは,
前述のとおりである. 図 3.16 は、単一縦モード(1 波長)で発振しているレーザーを用い、発散球面波(実際は、レーザー光を拡散板に照射する。)平行平面板に入射し観察され
た等傾角干渉縞である。 縞の間隔がymで、中心に行くに従い縞の次数mが大きくなる。
39
干渉計
40
顕微鏡