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相談援助実習オリエンテーション 11 ここでは、相談援助実習の内容と、実習先選択をするうえでポイントとなる情報についてお伝えします。

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Page 1: 相談援助実習オリエンテーション相談援助実習オリエンテーション1章 3 相談援助実習を行う目的には主に4つのことがあります。1つ目に、利用者を理解することです。目の前の利用者がどのような背景で施設や機関とかかわること

相談援助実習オリエンテーション 1章

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ここでは、相談援助実習の内容と、実習先選択をするうえでポイントとなる情報についてお伝えします。

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まず、「相談援助実習」とは何かについてお話します。あらゆる対人援助の専門職には現場での「実習」

が必修となっています。例えば医師、看護師、介護福祉士、教員などがそれにあたります。対人援助に

携わる専門職は人の人生に大きな影響を与えます。その人の人生への責任が大きいからこそ、資格を

習得する前に、現場での実践が必要なのです。資格をもった専門職が「初めて利用者とかかわる」「初め

て現場にでた」という状況にならないよう、実習が必修となっているのです。

「実習とは『現場』でしか『経験』できない」ことを経験する時間です。実習の時間を通して、今まで学習し

てきた理論や知識を実際の現場で実践してみること、また、ソーシャルワークの価値や倫理を現場の実

践に結び付けて理解し、専門職としての「実践力」を身につけていきましょう。相談援助実習では社会福

祉士の資格をもつ指導者のもとで24日間の実習を行います。資格取得後の自分自身の姿をイメージす

る上でも実際に働く社会福祉士の姿を身近に感じる時間にしていきましょう。

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相談援助実習を行う目的には主に4つのことがあります。

1つ目に、利用者を理解することです。目の前の利用者がどのような背景で施設や機関とかかわること

になったのか、どのようなニーズをもって生活されているのか、将来に対してどのような期待や不安を

持っているのか、などを、直接かかわって理解していきましょう。

2つ目に、利用者に対してどのようなサービスが行われているかを理解することです。施設ではさまざま

な職種の人が働き、利用者にサービスを提供しています。それぞれの職種の方がどのようなサービスを

提供しているのか、また、社会福祉士とどのように連携しているのかなどを理解していきましょう。同時に、

社会福祉士の役割と施設での位置付けについて学ぶことも大切です。社会福祉士がどのような問題や

課題に直面しているのかを理解していきましょう。

3つ目に、社会福祉士に固有の援助の方法技術に接することです。社会福祉士が、個人・集団・地域の

それぞれにどのような技術を用いてソーシャルワークを展開していくのかを学びましょう。面接場面や利

用者とかかわっている場面を見て、どのような援助技術を用いているか接することが大切です。

4つ目に、実習に参加している自分の態度や気持ちを振り返ることです。実習中は体験したこと、感じた

こと、考察したことなどを1日1枚の「実習日誌」にまとめます。この実習日誌をまとめることをとおして自分

自身の体験を振り返り、指導者からアドバイスをいただきます。

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それでは、社会福祉士が活躍している場所について理解していきましょう。社会福祉士は特に相談援

助・ソーシャルワークを行う資格です。高齢者、障害者、児童、地域分野の施設や社会福祉機関、病院

で福祉に関する相談業務を行うことが期待されており、その活躍の場はさまざまです。ここからは、多く

の学生が実習先として選択する主な分野の施設種別をご紹介します。

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高齢者分野の実習先には主に、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、

地域包括支援センターがあります。

特別養護老人ホーム、養護老人ホームで相談援助を担う職員は「生活相談員」と呼ばれており、入所の

相談、援助計画の立案などを行っています。また、介護職員と同じように利用者とかかわる時間も大切

にしており、施設で働くさまざまな職種と連携し利用者の生活を支援していきます。

特別養護老人ホームのような入所施設とは異なり、地域包括支援センターや老人デイサービスセンター

のような施設では、地域で生活している高齢者が自宅で安心して生活を継続できるように、支援していき

ます。

地域包括支援センターには社会福祉士が配置され、他の職種と連携して、地域住民の介護・福祉・医療

などを総合的に支援しています。自宅を訪問して高齢者のお話を伺ったり、地域の住民の健康や福祉の

増進にかかわるさまざまな事業を運営しています。

実習内容には介護業務を含む日常生活の支援を通して利用者のニーズをくみ取り実践していくことがあ

ります。人生の先輩である高齢者が経験してきたことは大変貴重です。その人生の一端にかかわること、

加齢に伴う心理の変化に寄り添うこと、人生の最期を迎える「看取り」について学んでいきましょう。

実習日程としては、高齢者施設など入所施設の多くは、夜勤や宿直などの実習も含まれます。また高齢

者・障害者・児童などの入所施設の社会福祉士の方は主に、平日に勤務をされていることが多いです。

実習日程は社会福祉士の方の勤務に沿って組まれることが多いため、土日中心の実習が可能であると

考えるのではなく、平日の実習も含めた実習になることを理解しておきましょう。

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障害者施設には主に、障害者自立支援法に規定される施設と、旧法に規定されている施設があります。

その中でも、実習先として多いのが、生活介護、就労移行支援、障害者支援施設、知的障害者授産施

設などです。障害者福祉サービス事業を行う施設では、主に生活支援員やサービス管理責任者が相談

援助やソーシャルワークを担っており、現場で利用者とかかわりながら、個別支援計画の作成や他の

サービス機関との連携・調整などを行っています。実習内容は主に、利用者と一緒に授産作業を行うこ

とを通してのかかわりが中心となり、それらを踏まえて、利用者のニーズを把握したり、実際に個別支援

計画を作成することなどが挙げられます。

実習先として選択する際の留意点としては、事前に障害特性や心理について学習しておくことはもちろ

ん、先入観をもつことなく積極的に利用者とかかわる姿勢が求められます。実習先として選択する施設

は、主にどのような利用者を対象としているか、どのような事業が行われているかを知ることによって、そ

の施設での実習をイメージしやすくなるでしょう。また、自立や自己決定、障害者の就労などの用語につ

いては、さまざまな捉え方があるため、障害者福祉論などの学習を通して理解を深めておくことが必要に

なります。

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児童分野では主に、児童養護施設、母子生活支援施設、重度心身障害児施設が実習先となります。

児童分野の施設では、児童と一緒に生活をしながら毎日のサポートをするとともに、将来を見据えた支

援が求められます。児童分野での実習は毎日を児童とのかかわりで終始してしまいがちですが、目の前

の児童が将来、家族や社会との関係を築き直すことができるよう援助する必要があります。この家族再

統合に向けての援助をソーシャルワークが担っていることを念頭に置きながら実習を行いましょう。

そのようなことを学ぶためには子どもたちの生活に合わせて、夜勤、当直など不規則な勤務が必要にな

ります。実習形態として宿泊型を取り入れる施設が少なくないため、実習を希望する際は、施設に宿泊

すること、それに伴う費用が発生することなどを念頭に置きましょう。事前学習としては、児童の心理や

虐待を受けた子どもに関する学習、障害児の理解などが必要になります。また家族や母親の背景など

にも考えが向けられるような学習が必要でしょう。

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医療機関とは治療や看護を行う場であるため、医師や看護師などの医療専門職が中心となって医療

サービスが提供されています。一方、病気やけがによって、日常生活上の困難を抱える患者や家族に対

して、社会福祉士などの福祉専門職が療養生活上のさまざまな相談に応じます。病院で働く社会福祉士

は、一般的には「医療ソーシャルワーカー」や「MSW」「相談員」という職名で勤務しており、「医療相談室」

や「地域医療連携室」などの部門で多く相談に応じています。

実習では、医療ソーシャルワーカーの業務を学ぶことになります。ただし、病院の機能によって、医療

ソーシャルワーカーの業務も大きく変わるため、それぞれの病院の機能をよく知っておくことが必要にな

ります。また、医療機関での実習は実習生に対して、相当の事前学習と高いレベルが求められているこ

とが特徴です。それぞれの専門職がどのような役割を担っているかという基本的なことを学習しておくこ

と、医療用語に関する基礎知識、「医療ソーシャルワーカー業務指針」を熟読しておくなど、医療機関実

習に特化した学習が必要です。併せて、医療機関での実習受入の門は大変狭いです。医療機関での実

習を希望する場合には事前に施設から実習を希望する理由、将来、医療機関での相談員として働く意

思などを確認するためのレポート提出や事前面談が求められることが多いため、実習を希望する学生は

そういった心構えも必要になってきます。

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社会福祉協議会とは、地域福祉の推進を担う機関です。その中で相談援助やソーシャルワークを担う職

種は「福祉活動専門員」と呼ばれており、障害者、高齢者だけでなく、地域に住む住民が住み慣れた町

で安心・安全に生活できるような仕組みやサービスを考え、実践しています。実習内容は主に、社会福

祉協議会が企画運営しているサービスや事業に参加し、参加者や住民のニーズを把握することや、そ

れを踏まえて地域に必要な資源について考えることなどがあります。実習先として選択する際の留意点

として、社会福祉協議会の主催するイベントなどに参加するために、不規則な分散型実習になる可能性

があることを留意しておきましょう。また、社会福祉協議会の実習受入は原則、その市町村の出身、また

は在住者に限られることが多くあります。地域福祉の推進、地域住民に求められるサービスの企画運営、

ボランティアの育成などに興味がある方は実習先として検討してみるとよいでしょう。

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実習先選択のポイントについてお話します。 実習先を選ぶうえでは、まず「何を優先するか」を考えるこ

とが大切です。ここでは、主要な方法を紹介したいと思います。

まず1つ目に、施設種別や分野を優先して考える方法があります。 将来の活動場所をイメージできてい

る方、また現在関心を持っている分野がある方はその分野を重視して実習先を選ぶ方法があります。し

かし、あまり分野にこだわってしまうと、なかなか実習先が決まらなかったり、自宅から遠い施設になって

しまったりと 負担やリスクが大きくなってしまいます。 特定の分野に関心をもつことは決して悪いことで

はありません。しかし、24日間の実習では どの分野で働く社会福祉士にも求められる知識や技術や価

値を学ぶことが重要です。そういういったことを念頭に置きながら、今後の学習や実習先選択を行いま

しょう。

2つ目は、施設と自宅の距離を優先に考える方法です。 実習先へは基本的に公共交通機関で通勤しま

す。施設の了承をいただける場合は自家用車での通勤方法もありますが、1ヶ月近く通う負担は考えな

ければなりません。また、実習先へは事前訪問、施設が設定するオリエンテーションなど、実習前に何度

か足を運ばなければなりません。このように施設へ通う交通費は自己負担になるため、その費用も考え

ながら実習先を選択していきましょう。通勤における心身の負担を軽減することも大切です。24日間の実

習中は、非日常的な場所に身をおくため、緊張から心身の疲れも少なからずでてきます。加えて、毎日1

枚の実習日誌を書くことなどを考えると、通勤時間の負担について考えることは、実習継続においても、

重要なポイントになります。 その他に、実習先によっては「宿泊型」で実習を行う施設もあります。「宿泊

型」では宿泊施設をお借りする時にかかる費用なども自己負担します。

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3つ目は、実習期間を優先して考える方法です。本学の実習期間は8月1日~11月30日までの間に24日

間の実習を行うこと、と決められています。 その期間中に24日間の実習ができるよう、施設と調整して実

習期間を決定します。 しかし、施設では他大学の実習受入、社会福祉士以外の資格の実習受入、ボラ

ンティアの受入など、さまざまなこととの調整が行われます。 そのため、実習期間は基本的に施設が提

示するものに従うことになっていますので注意しておきましょう。 実習期間と併せて、実習の形態につい

ても考える必要があります。実習の形態には集中型と分散型があります。 集中型とは、おおむね1ヶ月

程度で24日間の実習が終了する形態をいいます。反対に分散型とは、実習開始から終了までが1ヶ月

以上かかる実習をいいます。 この「分散型」にはいろいろな方法があります。例えば、1週間に数回の実

習を数週間継続して行う方法や、24日間を半分に分けて12日間ずつの実習を行う方法などがあります。

集中型・分散型のどちらの形態も、あくまでも施設から示される範囲内で実習を行わなければならないこ

とは念頭に置きましょう。

お仕事やご家庭で役割を持たれている方が多い社会人学生にとって、実習日程はとても関心のある部

分だと思います。 ただ、実習先施設選択の段階では施設から提示される実習日程は大まかな期間でし

かありません。詳細な実習日程については実習先が決定した後に行われる事前訪問を通して、この大

まかな期間の中で施設の方と学生が調整していくことになりますので、そのように理解して実習先を選択

してください。

なお、実習施設の選択は9月に行われます。 「実習の手引」などをよく確認し、実習先を選択しましょう。