図説 食料・農業・農村の動向図説 食料・農業・農村の動向 も く じ...

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  • 図説 食料・農業・農村の動向

    も く じ

    食品安全行政の新たな展開/ 6BSE、高病原性鳥インフルエンザ、コイヘルペス/ 7食の安全と安心の確保に向けて/ 8自給率の向上には消費・生産両面での取組が重要/ 9世帯主の年齢別にみた食料消費構造/ 10国民的運動で食育の推進を/ 11重要な地位を占める食料産業/ 12世界の農産物貿易構造に変化/ 13加工度の高い輸入が増加/ 14WTO農業交渉の進捗とFTAへの取組/ 15

    低温等で3.9千億円の被害/ 16総農家戸数300万戸を下回る/ 17求められる認定農業者へのフォロー/ 18望ましい農業構造の実現に向けて/ 19重要な役割を担う北海道畑作農業/ 20構造改革特区で耕作放棄解消に期待/ 21地域水田農業ビジョンで米政策改革/ 22需要に応じた麦生産への取組が課題/ 23需要拡大を図る国産大豆/ 24生産努力目標を下回る野菜・果実/ 25BSE、鳥インフルエンザへの対応/ 26

    環境保全を重視した農業への移行/ 27バイオマス利活用推進への取組/ 289割以上の市町村が直接支払制度利用/ 29地域全体で保全する農村資源/ 30農村資源の活用で地域再生/ 31

    「平成15年度食料・農業・農村の動向」で取り上げられた、主な地域の事例/ 32

    5

  • 食品安全行政の新たな展開

    近年、国民の食に対する不安を著しく増大させる事態が相次いで発生しています。このように、国民の食の安全に対する関心が高まるなか、食品の安全性に関する国民の不安・不信を解消し、安全な食品を消費者に届けるために、平成15年5月、食品安全基本法が成立しました。同法の施行に伴い、同年7月、食品に含まれる化学物質や微生物等の個別の危害要因を対象にリスク評価を行う食品安全委員会を内閣府に設置しました。農林水産省では、産業振興部門から独立して食品分野における消費者行政とリスク管理を一元的に担う「消費・安全局」を本省に設置しました。また、地方においても現場における食品のリスク管理業務を担う「地方農政事務所」を設置するなど、本省、地方を通じたリスク管理体制を整備しています。また、農林水産省は、新しい食品安全行政に的確に対応するための指針として、「食の安全・安心のための政策大綱」を15年6月に決定しました。さらに、具体的な施策、実施時期等を明記した工程表を策定し、その後も定期的に工程表を改訂するとともに、工程表に基づいて具体的な取組を展開しています。

    6

    注:この他、北海道農政事務所消費・安全部、沖縄総合事務局農林水産部消費・安全課がある。�

    農林水産省における食品行政組織の改革�― 産業振興とリスク管理の分離と地方組織の体制整備 ―�

    食品安全委員会�

    厚生労働省�

    (リスク評価)�

    (リスク管理)�

    (リスク管理)�連携の強化�

    消費・安全局�

    �消費・安全政策課��農産安全管理課��植物防疫課�

    �表示・規格課��衛生管理課��消費者情報官�

    消費者行政と食品のリスク管理を�一 元 的 に 実 施 �

    総合食料局�農業・食品産業の振興�

    〔地方組織〕�

    林 野 庁 �

    生 産 局 � 水 産 庁 �

    従来の食糧事務所を廃止し、主要食糧に関する業務とともに、食品のリスク管理業務を行う「地方農政事務所」として再編�

    仙台、さいたま、金沢、名古屋、京都、岡山、熊本の7か所�

    左記以外の38の都府県(沖縄県を除く)の県庁所在地�

    農 林 水 産 省 �

    地方農政局�消費・安全部�

    地方農政事務所�消費・安全部�

  • BSE、高病原性鳥インフルエンザ、コイヘルペス

    平成15年12月、米国においてBSEの発生が確認され、直ちに米国からの牛肉等の輸入を停止しました。消費者の安全・安心の確保を前提として、日米間で協議が行われています。つづいて、16年1月、国内で79年ぶりとなる高病原性鳥インフルエンザが発生しました。このため、家畜伝染病予防法及び防疫マニュアルに基づき、関係機関が連携し必要な措置を講じています。高病原性鳥インフルエンザはアジアを中心に感染地域が拡大し、発生国・地域から鶏肉等の輸入を停止しました。また、15年10月には、国内で初めてコイヘルペスウイルス病が確認され、16年3月末までに23都府県で発生を確認しました。本病のまん延防止のため、養殖魚の処分、消毒等の措置を講じるとともに、防疫対策に係る調査研究を推進しています。

    7

    イタリア�平成14年10月23日~�

    オランダ�平成16年3月17日~�

    パキスタン�平成16年1月27日~�

    ラオス�平成16年1月27日~�

    タイ�平成16年1月22日~�

    カンボジア�平成16年1月25日~�

    インドネシア�平成16年1月25日~�

    ベトナム�平成16年1月9日~�

    マカオ�平成13年5月24日~�

    台湾�平成16年1月15日~�

    香港�平成13年5月18日~�

    中国�平成16年1月27日~�

    韓国�平成15年12月12日~�

    米国�平成16年2月7日~�

    カナダ�平成16年3月10日~�

    5月:香港、マカオで発生、同地域からの鶏肉等輸入停止�

    ���3~5月:オランダ、ベルギー、ドイツで発生、

    これらの国からの鶏肉等輸入停止����12月:韓国で発生、同国からの鶏肉等輸入停止��1月:国内(山口県)で79年ぶりの発生�

    ベトナム、タイ、中国等で発生、これらの国からの鶏肉等輸入停止�

    2月:米国で発生、同国からの鶏肉等輸入停止�   大分県、京都府で発生�3月:京都府で発生�

    カナダで発生、同国からの鶏肉等輸入停止�「国民の皆様へ(鳥インフルエンザについて)」発表�鳥インフルエンザ対策に関する関係閣僚会議の開催�オランダで発生、同国からの鶏肉等輸入停止�

    9月:国内で初の発生�10月:全頭検査開始�11月:国内で2、3例目の発生�5月:国内で4例目の発生�8月:国内で5例目の発生�1月:国内で6、7例目の発生�5月:カナダで初の発生、カナダからの牛肉等輸

    入停止�10月:国内で8例目の発生(非定型)�11月:国内で9例目の発生(21か月齢)�12月:米国で初の発生、米国からの牛肉等輸入

    停止�1月:米国との輸入再開に向けた協議、米国、カ

    ナダへの現地調査団派遣、オーストラリア、ニュージーランドへの牛肉需給事情調査団派遣�

    2月:国内で10例目の発生�3月:国内で11例目の発生(死亡牛)�

    資料:農林水産省作成(16年3月末現在)。

    高病原性鳥インフルエンザの主な発生状況等�

    平成�13年�

    14 �

    15 �

    16 �

    BSE� 高病原性鳥インフルエンザ�

  • 食の安全と安心の確保に向けて

    食品の安全性に関し、多くの消費者が生産過程等に不安を感じています。農林水産省は、農産物の安全性を確保するため、農薬や飼料等の生産資材の適正使用を徹底させることとしてきました。しかし、平成15年7月、国内で製造・販売されている一部の農薬の容器または包装に誤表示があることが判明し、製造者の責任で流通段階にある当該農薬の回収等を指導しました。BSEまん延防止措置の的確な実施や牛肉の安全性に対する信頼を確保するため、15年12月から生産段階における「牛の個体識別のための情報管理及び伝達に関する特別措置法」(牛トレーサビリティ法)が施行されました。また、流通段階では16年12月から販売事業者等を対象に、表示や帳簿等の備え付けが義務化されました。青果物等の食品についても、生産流通履歴情報を添付して消費者に提供するためのトレーサビリティシステムの導入が、生産者や流通業者の自主的な取組として行われており、国もシステムの構築等への支援を実施しています。こうしたシステムの導入は、顔の見える関係の構築による信頼性の確保や国産農産物のブランド化の契機等となるとともに、食品関連事業者や生産者の意識改革を促す観点からも重要です。信頼される食品表示を実現するためには、生産者・事業者の正確かつ適切な情報提供等が重要です。わかりやすい食品表示の実現に向け、「食品の表示に関する共同会議」(農水省・厚労省の共催)において表示基準のあり方について検討を行っており、15年7月にJAS法に基づく「賞味期限」と食品衛生法に基づく「品質保持期限」を賞味期限に統一しました。なお、従来の行政によるリスクコミュニケーションに対しては、多くの消費者が、ほとんど行われていなかったと評価しています。農林水産省では、消費者等との定例懇談会の開催、ホームページ等を活用した情報提供、農政事務所等における消費者相談窓口「消費者の部屋」の設置、消費者等の関心の高い個別施策ごとの「食品に関するリスクコミュニケーション」(意見交換会)等を実施しています。

    8

    食品供給の各段階における消費者の不安感�

    農畜水産物の生産過程�

    輸入農産物・輸入原材料等�

    製造・加工工程�

    流通過程�

    小売店�

    外食店舗�

    家庭での取扱い方�

    その他�

    0 20 40 60 80 100%�

    無回答�

    ない�ある�

  • 自給率の向上には消費・生産両面での取組が重要

    我が国の食料自給率は、長期的には低下傾向で推移しており、昭和40年度の73%から平成14年度には40%まで低下し、主要先進国の中で最低の水準となっています。我が国の食料自給率の低下は、長期的には自給品目である米の消費量の減少と生産に必要な原料等を海外に依存せざるを得ない畜産物や油脂類の消費量の増加等、食生活の変化が主な要因となっているのです。食料は、人間の生命と健康の維持に欠くことのできない最も基礎的な物資であり、食料の安定供給を確保していくことは国の重要な責務です。食料自給率の目標を掲げることは、食料消費と農業生産の両面にわたる国民参加型の取組の指針として重要です。食料自給率目標は、食料消費及び農業生産における課題が解決された場合に実現可能な水準として、カロリーベースで45%を設定しています。

    また、平成10年度以降、自給率の高い米の消費減、自給率の低い肉類や油脂類の消費増がつづくものの、麦、大豆の生産拡大等により、カロリーベースの食料自給率は5年連続40%で推移しています。食料自給率目標の達成のためには、消費・生産両面の取組が重要です。このため、食生活指針の理解と実践、国民運動としての食育の推進、食料・農業・農村基本計画で示された品目ごとの生産性や品質の向上等の課題の解決に向け、積極的な取組が必要です。食料の安定確保のためには、平素から、重要な生産要素である農地、農業用水の確保・有効利用、担い手の育成・確保等による国内での基本的な農業生産と食料供給力の維持・拡大が重要です。

    9

    供給熱量と国産熱量の増減率(平成9~14年)�

    90

    0

    -30

    %�

    %�-8 6

    供給熱量�

    大豆�

    小麦�

    砂糖類�

    米�野菜� 鶏卵�

    合計�

    油脂類�肉類�

    果実�

    牛乳・乳製品�

    魚介類�

    国産熱量�

    (増加)�

    (減少)�

    (増加)�(減少)�

    食料農水産物の食料自給率�

           米 96�    (米のうち主食用) (100)�   小         麦 13�   大         豆 5�   野         菜 83�   果         実 44�   鶏         卵 96�   牛 乳 及 び 乳 製 品 69�   肉 類 (鯨 肉 を 除 く) 53�   砂 糖 類 34�   油 脂 類 13�   魚 介 類 46�

    穀物(食用+飼料用)自給率 28�

    主 食 用 穀 物 自 給 率 61�

    供給熱量総合食料自給率 40�

    金額ベースの総合食料自給率 69

    品   目�平成14年度�(概算)�

    (単位:%)�

    主要農水産物の品目別自給率�

  • 世帯主の年齢別にみた食料消費構造

    非農家世帯における1人当たり実質食料消費支出(食料費)は、平成9年度以降ほぼ一貫して減少しています。15年度(4~12月)は調理食品等一部の品目での増加を除き、食料費全体で前年度比2.2%減少しました。世帯主の年齢別に1人当たり食料費をみると、年齢が高いほど魚介類、野菜・海藻、果物が、年齢が若いほど外食や肉類の割合が高くなる傾向にありますが、穀類や調理食品の割合は年齢にかかわらずほぼ一定です。他方、単身世帯では食料支出に占める外食の割合が4割に達しています。食料消費支出が減少傾向にあるなかで、外食及び調理食品の支出割合は増加しており、食料消費支出の3割が家庭外で調理された食品への支出となっています。調理食品は2人以上の世帯で購入頻度が高い一方、外食は単身世帯で購入頻度・購入単価とも高くなっています。近年の食の外部化は、調理食品の伸びに支えられる形で進行しています。食の外部化の進行には、世帯構成の変化、生活水準の向上、女性の社会進出等が影響しているとみられます。

    10

    世帯主の年齢別にみた飲食費構成(平成15年)�

    29歳以下�

    30~39�

    40~49�

    50~59�

    60~69�

    70歳以上�

    0 20 40 60 80 100%�

    穀類�

    魚介類�

    肉類� 菓子類� 酒類� 外食�

    乳卵類�油脂・調味料� 調理食品�

    果物�

    野菜・海藻� 飲料�

  • 国民的運動で食育の推進を

    我が国の食生活は、穀類を多く摂取するアジア諸国と、油脂類を多く摂取する欧米諸国のほぼ中間に位置する日本型食生活を実現していましたが、近年、脂質の摂取過多や若い世代での欠食習慣等の問題が発生しています。若い女性の間では理想的な体重とは異なる細身の体型が望ましいという考え方が広がっており、低体重(やせ)の人が多く、鉄やカルシウム等の必要な栄養素がかなり不足する傾向にあります。中学や高校では拒食症や過食症といった摂食障害が増加しています。食に関する関心の高まりを背景に、各地で地産地消やスローフードの取組が進展しており、最近では学校給食における地場農産物の利用が活発化しています。このような取組は、食料自給率の向上につながるとともに、輸送に伴う二酸化炭素の排出の削減等環境負荷の低減にも資することから、引き続き地域の関係者が一体となった取組が期待されています。平成12年3月に策定された「食生活指針」の認知度は25.1%と依然として低い水準にあります。我が国の食生活の現状をふまえれば、食に関する適切な判断力を養い、生涯にわたって健全な食生活を実現することにより、国民の心身の健康の増進等を図る「食育」の推進が重要です。今後とも、関係機関が一体となって国民的な運動として取り組んでいくことが必要となっています。

    11

    欠食習慣がある者の割合�

    50�

    40�

    30�

    20�

    10�

    0

    %�47.9 46.3

    33.538.8

    23.1 24.6

    平成3年� 13年�

    13.919.2

    37.634.7

    25.018.8

    15.412.6 13.0

    18.2

    (男)�

    20~29歳� 30~39 40~49 50~59

    50�

    40�

    30�

    20�

    10�

    0

    %�

    (女)�

    20~29歳� 30~39 40~49 50~59

  • 重要な地位を占める食料産業

    「食」を提供する農業、食品産業等の食料産業は、我が国の国内総生産の1割を占める重要な地位を占めています。我が国の食料消費額は、食用農水産物15兆3千億円(国内生産12兆1千億円、輸入3兆2千億円)が、食品製造業、食品流通業、外食産業を経て、最終的に80兆3千億円となります。農産物の安定的、効率的な供給を図るためには、農業の構造改革の推進とあわせ、農業関連製造業や食品流通のコスト削減を図ることが重要な課題です。卸売市場については、取引規制の緩和、適正な品質管理の推進及び再編の円滑化等を推進し、生産者・消費者双方の期待にこたえる安全・安心で効率的な流通システムへの転換が必要となっています。外食の市場規模は、厳しい経済情勢を背景に平成10年以降縮小傾向にあります。一方、弁当、おにぎり、そう菜等といった中食の市場規模は増加傾向にあるものの、その伸びは鈍化しています。消費者の安全・安心等に関するニーズに的確に対応できれば、国産農産物の販路も拡大できるので、引き続き、食品産業と農業の連携を積極的に推進していくことが重要です。

    12

    資料:総務省他9府省庁「産業連関表」を基に農林水産省で試算。注:1) 飲食費の最終消費額80兆3千億円に至る流れを表している。

    2)   内は、付随する流通経費(商業経費と運賃)である。3) 食用農水産物には特用林産物(きのこ類等)を含む。�また、精穀(精米、精麦等)、と畜(各種肉類)、冷凍魚介類は食品加工から除外し、食用農水

    産物に含めている。4) 飲食費の最終消費額は、旅館・ホテル等で消費された食材費(材料として購入)を含む。

    最終消費額からみた飲食費の流れ(平成12年)�

    3,483

    345

    24,591

    1,517

    22,904

    808

    7,783

    1,370

    1,426

    660

    食  用�農水産物�

    食品加工�

    飲食費の最終消費額�

    (単位:10億円)�

    12,129

    3,210

    国内生産�

    28,075

    1,862

    国内生産�

    生鮮品等�

    5112,593

    1,028

    1,539

    15,357

    5,926

    894 二次加工向け�

    直接消費向け�

    加工向け�

    外食向け�

    一次加工品の輸入�

    最終消費向け�

    生鮮品の輸入�

    最終製品の�輸入�

    海外での飲食等�

    外食向け�

    15,079�(18.8%)�

    80,257(100%)�

    外 食�

    23,712�(29.5%)�

    41,466�(51.7%)�

    2,919

    1,180

    1,227

  • 世界の農産物貿易構造に変化

    世界の穀物需給は過剰とひっ迫を繰り返しており、1990年代後半は緩和基調でしたが、2002、2003年の主要生産国での干ばつ等により引き締まり傾向にあります。水資源の枯渇、砂漠化、異常気象等の不安定要素から、穀物等の国際需給は中長期的にはひっ迫する可能性があります。世界の農産物貿易構造は、ウルグアイ・ラウンド農業合意以降大きく変化しています。日本、中国、韓国は輸入依存傾向を強め、米国、カナダ、ブラジル、オーストラリアは輸出を拡大しています。世界人口の5割を占めるアジアでは、人口増加や経済の回復・成長により農産物輸入が増加しています。また、経済発展や食生活の変化に伴い、輸入品目が多様化しています。

    中国では、著しい経済成長を背景に食料消費の増大と多様化が進展しており、今後、農村部の経済発展等により、さらに進展する可能性があります。一方、農地や水資源の確保に対する制約が高まるなか、世界人口の2割を占める国民への食料の安定供給の確保が重要な課題となっています。中国は世界最大の穀物生産国であり、2001年には世界の穀物の2割を生産しています。しかし、農業生産の構造調整政策や干ばつの影響等により、穀物生産量は2000年以降大幅に減少しています。このため、とうもろこしをはじめとする穀物の国内在庫量が大きく減少しています。また、搾油用大豆や大豆かすの国内需要の拡大により、大豆輸入が急増しています。2001年には世界の大豆輸入量の3割を占める世界最大の輸入国となるなど、世界の穀物等の需給や価格形成に対する中国の影響が増大しているのです。

    13

    国・地域別の農産物貿易収支額の変化�

    300�

    200�

    100�

    0�

    -100�

    -200�

    -300�

    -400

    2000~02

    先進国�

    開発途上国�

    アジア�

    アフリカ�

    近東�

    北米�

    南米�

    オセアニア�

    EU�

    日本�

    中国�

    韓国�

    米国�

    カナダ�

    ブラジル�

    オーストラリア�

    億ドル�

    輸出依存�

    (黒字額)�

    輸入依存�

    (赤字額)� 1986~88年�

  • 加工度の高い輸入が増加

    我が国は世界最大の農産物純輸入国ですが、輸入先は特定の国に偏っており、それらの国における作柄や作付けの変動等の影響を受けやすい食料需給構造となっています。我が国の農産物輸入は、食生活の多様化・高度化を背景に、付加価値の高い加工品や生鮮品の割合が増加しています。

    経済発展に伴う購買力の向上等を背景に、アジア諸国における我が国の高品質な農産物のブランドイメージが向上しています。さらに、欧米における健康食としての日本食に対する高い評価、中国、台湾のWTO加盟による輸入数量枠の撤廃等により、我が国の農産物に対する海外のニーズは拡大しています。農産物の輸出促進に当たっては、市場開拓の努力と並行して、国内における通関や検疫の手続きの簡素化、日本産ブランドのイメージの確保、輸出相手国の検疫制度に対応した輸出検疫条件の整備、我が国で育成された植物品種の保護等の取組が重要です。

    開発途上国には、総人口の6分の1に相当する約8億人の栄養不足人口が存在します。1996年に開催された「世界食料サミット」等において掲げられた2015年までに約4億人に半減するという目標に対して、その削減は十分に進んでいません。我が国は、農業分野への政府開発援助(ODA)を積極的に実施しています。

    14

    加工度別にみた農産物輸入額の変化(1992年=100)�

    200�

    100�

    0生鮮品�

    加工品�

    半加工品�

    未加工品�

    (米国から)�

    400�300�200�100�0生鮮品�

    加工品�

    半加工品�

    未加工品�

    (中国から)�

    2002

    1992年�

    400�300�200�100�0生鮮品�

    加工品�

    半加工品�

    未加工品�

    (オーストラリアから)�

  • WTO農業交渉の進捗とFTAへの取組

    我が国は、ウルグアイ・ラウンド農業合意における助成合計量(AMS)の削減約束を着実に実行しています。一方、米国やEUのAMS削減は我が国と比べて進捗していません。また、我が国の農産物の平均関税率は12%であり、相当量の輸出を行っているEU(20%)やアルゼンチン(33%)よりもかなり低い水準にあります。WTO農業交渉(2000年3月~)において、我が国は「多様な農業の共存」を基本理念とし、農業のもつ多面的機能、食料安全保障の確保等の非貿易的関心事項に十分配慮すべきことを主張してきています。2003年9月にメキシコのカンクンで開催された第5回閣僚会議では、我が国は立場を同じくするスイス、ノルウェー、韓国等と10か国(G10)グループ共同提案を提出しました。会議議長から提示された閣僚会議文書案改訂版には、上限関税に関し、非貿易的関心事項の観点から一部品目について例外扱いとする旨の記述がかっこ付きながら加えられました。閣僚会議は、農業交渉も含め何ら合意が得られないまま閉会しました。2004年3月にWTO農業委員会特別会合が開催され、交渉が再開されています。今後とも、多様な農業の共存を基本理念とする我が国の主張が交渉結果に反映されるよう交渉に取り組む必要があります。

    近年では、限定的な協定構成国のみを対象として排他的に関税の撤廃等を行うFTA(自由貿易協定)等が世界的に増加しています。我が国はWTOを中心とした多角的貿易体制の維持・強化を基本としつつ、これを補完するものとしてFTA等を積極的に推進します。2002年1月には、我が国初のFTAとして、日・シンガポール新時代経済連携協定を締結しました。2002年11月には、メキシコとの間でFTAに関する政府間交渉を開始し、2004年3月には関係閣僚間で大筋合意に達しました。現在、メキシコのほか韓国、タイ、マレーシア、フィリピンと政府間で交渉しており、韓国との経済連携協定は2005年内の実質的合意を目指し交渉中です。これらFTA等の推進に当たっては、多面的機能の発揮、食料安全保障の確保や、我が国農林水産業の構造改革の進展具合に十分配慮しつつ、交渉に取り組むことが必要です。

    15

    各国・地域との経済連携をめぐる議論の状況�

    シンガポール 平成11年11月 12年 3 月~12年 9 月 13年 1 月~13年10月 14年 1月 �

    メ キ シ コ   11年 2 月~12年 4 月 13年 9 月~14年 7 月 14年11月~�

    韓    国   13年 3 月~14年 1 月 14年 7 月~15年10月 15年12月~�

    タ    イ   14年 9 月~15年 5 月 15年 7 月~15年11月 16年 2 月~�

    マレーシア   15年 5 月~15年 7 月 15年 9 月~15年11月 16年 1 月~�

    フィリピン   14年10月~15年 7 月 15年 9 月~15年11月 16年 2 月~�

    インドネシア   15年 9 月~�

    台    湾   14年 6 月~�

    協定署名�相 手 国 � 事 前 検 討 � 産学官共同研究会� 政 府 間 交 渉 �

  • 低温等で3.9千億円の被害

    平成14年の我が国の農業産出額は約8兆9千億円でした。野菜、畜産等の産出額が増加したことから前年に比べ0.5%増加したものの、ピーク時(昭和59年)に比べ約2兆8千億円、2割以上減少しています。近年の動向をみると、米の大幅な減少に加えて、他の品目も減少する傾向にあります。平成14年の農業生産(数量)は、麦類、畜産が増加したものの、米をはじめ野菜、果実等が減少し、前年に比べ1.1%低下しました。平成15年は5月中旬から10月にかけて全国的に低温、日照不足傾向に見舞われ、農作物全体で面積233万8千ha、見込金額約3千9百億円の被害が発生しました。

    農産物の生産者価格は、近年、米価の下落や業務用を中心とした輸入農産物との競合等により低下傾向です。一方、消費者段階での食料品価格は、生鮮品は生産者価格とほぼ同様に低下しているのに対し、生鮮品以外は生鮮品に比べ価格の変動幅が小さく、ほぼ横ばい傾向にあります。平成15年の農産物生産者価格指数(概算値)は、冷害の影響等により米、野菜等が上昇したことから6.5%上昇しました。15年の農業生産資材価格指数(概算値)は、飼料等が上昇したことから0.7%上昇しました。農産物価格と生産資材価格の相対的な関係を示す農業の交易条件指数は悪化傾向にあり、農業生産資材の流通等の合理化によるコスト低減が必要となっています。

    16

    平成15年5月中旬以降の低温等による農作物被害状況�

    農業地域別�

    農 作 物 別 �

    %�

    東海 3.3 中国 4.5

    雑穀・豆類 3.8 果樹 4.0その他�2.8

    近畿 2.6 四国 1.0

    飼肥料作物 3.9

    九州�7.9

    関東・�東 山�14.0

    北陸�6.4

    東北�44.9

    0 20 40 60 80 100

    野菜�7.0

    北海道�15.4

    水陸稲�78.5

  • 総農家戸数300万戸を下回る

    平成14年の販売農家1戸当たり農業所得は102万1千円(前年比1.2%減)となりました。農外所得も大きく減少(同4.7%減)したことから、農家総所得は784万2千円(同2.2%減)と9年以降6年連続で減少しました。農業所得が増加した農家(発展型経営)の特徴をみると、雇用労働が増加し、借入れを中心に経営耕地面積も拡大しています。一方、農業固定資本は農機具等を中心に減少させ、肥・飼料費等の変動費も低減しました。このような発展型経営では、農産物価格の低迷のもとでも、適切な農業投資等により農業経営費を抑制するなどの経営努力がうかがわれます。平成15年の総農家戸数は初めて300万戸を下回り298万戸となりました。うち、販売農家は221万戸です。農業就業人口、基幹的農業従事者数が減少するなかで、農業生産における高齢者への依存度は一段と上昇しています。しかしながら、今後、昭和一けた世代のリタイアの本格化に伴い、農業者の減少が加速化することも予想されます。

    17

    注:9~14年の農業所得の増加率が10%以上の農家を「発展型」、▲10%以上の農家を「下降型」に分類した。

    発展類型別にみた農家経済と農業生産要素の変化(平成9~14年、都府県)�

    農業粗収益 千円 5,054.8 16.8 3,511.9 ▲24.7�

    農業経営費 千円 3,075.7 ▲10.0 2,644.9 ▲ 1.9�

      うち肥・飼料費 千円 635.9 ▲ 8.6 428.7 ▲15.5�

        光熱動力費 千円 179.6 ▲ 0.4 150.8 ▲ 6.7�

        減価償却費 千円 581.3 ▲28.3 611.0 15.8�

    農業所得 千円 1,979.1 117.1 867.0 ▲55.9�

    農業所得率 % 39.2 18.1 24.7 ▲17.5�

    労働生産性 円 999 94.4 514 ▲44.4�

    土地生産性 千円 107.1 89.2 53.3 ▲50.0�

    資本生産性 円 380 120.9 208 ▲53.8�

    農外収入 千円 5,633.9 ▲15.8 5,158.1 ▲ 6.3�

    農外所得 千円 5,164.6 ▲17.3 4,938.6 ▲ 4.6�

    農家所得 千円 7,143.7 ▲ 0.2 5,805.6 ▲18.7�

    家計費 千円 5,935.3 ▲ 9.7 5,343.2 ▲ 8.1�

    世帯員1人当たり家計費 千円 1,406.5 ▲ 0.7 1,278.3 0.3�

    農家経済余剰 千円 1,867.0 72.2 1,257.6 ▲28.3�

    月平均世帯員数 人 4.22 ▲ 9.1 4.18 ▲ 8.3�

    家族農業就業者数 人 1.30 4.8 1.17 ▲11.4�

    自家農業労働時間 時間 2,190 0.9 1,993 ▲14.1�

    経営耕地面積 アール 204.3 3.8 192.1 ▲ 4.5�

    作付延べ面積 アール 196.4 6.6 173.4 ▲ 8.2�

    農業固定資本 千円 5,752.5 ▲11.5 4,917.7 3.1�

    借入金 千円 4,425.4 ▲ 1.0 2,583.7 ▲ 4.9

    発 展 型 � 下 降 型 �

    農業経営収支�

    生産性�

    農外収支�

    消費等

    対9年�増減(▲)率�(%)�

    対9年�増減(▲)率�(%)�

    14年実数�14年実数�単位�

    労働力�

    土地�

    資本�

    資金�

  • 求められる認定農業者へのフォロー

    認定農業者は、平成15年3月末現在、17万1,746(うち法人6,444)経営体(対前年比5.5%増)で緩やかに増加しています。しかし、現行の認定農業者制度については、市町村ごとの認定基準の適用にばらつきがあります、認定後のフォローアップが不十分等の指摘もあります。このため、平成15年6月には制度の運用改善の指針を都道府県及び市町村に提示し、米政策改革と一体的に認定を加速化する方針です。認定農業者の経営動向をみると、近年の農産物価格の下落等に伴う経営環境が悪化するなかでも、農業所得は増加傾向にあります。一方で、労働時間は短縮する傾向にあるものの、目標水準とのかい離が存在しています。

    農業法人数は、平成15年1月現在約1万5千(うち農業生産法人約7千)経営体で、緩やかに増加しています。経営の多角化や販路の拡大を促進するため、15年9月に農業生産法人に対する関連事業者等の出資制限を緩和しました。今後、消費者や農業分野以外の者との結び付きの強化を図ることが重要です。

    集落営農組織は、全国に約1万組織あり、うち7割は稲作主体です。今後、認定農業者等の担い手が不足する地域においては、農業経営基盤強化促進法に位置付けられた特定農業団体制度を活用しつつ、その組織化と法人化を推進することが重要です。

    大規模稲作経営は、規模拡大効果により、小規模経営に比べて高い収益性、効率性を確保しているなかで、農機具費、肥料・農業薬剤費等を中心に費用の低減に努め、経営の安定化を図っています。しかし、近年の米価下落により、粗収益の減少率が費用の低減率を上回っており、大規模経営においても収益性が低下しています。今後、さらに高い収益性を確保し、経営を安定させていくためには、一層の生産コストの低減と農業収入の確保が必要です。

    18

    農業経営改善計画の農業所得及び労働時間の目標達成状況�

    (農業所得)� (労働時間)�

    0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100

    500万円未満� 1,700時間未満�1,900~2,100時間� 2,500時間以上�

    2,300~2,500時間�500~700万円� 2,000万円以上�

    1,000~1,500万円�

    %�%�

    認定期間�満了時�

    認定当初�

    改善計画目標�

    認定期間�満了時�

    認定当初�

    改善計画目標�

    700~1,000万円�1,500~2,000万円� 2,100~2,300時間�1,700~1,900時間�

  • 望ましい農業構造の実現に向けて

    主な経営部門別に、経営耕地面積や飼養頭数に占める「65歳未満の農業専従者がいる主業農家」の割合をみると、施設野菜、北海道畑作・水田作、畜産部門では8割を超えています。しかし、都府県の水田作部門では2割に達しておらず、農地の集積が著しく遅れています。都府県においては、水田の経営耕地面積が1ha未満の農家が全体の7割、2ha未満では9割を占めており、依然として多数の小規模農家が水田面積のかなりの割合を占めています。一方、大規模農家(水田経営耕地面積10ha以上)が占める水田面積の割合は、平成2~15年の間に4.5倍に達するなど、一定程度の進展がみられます。しかし、大規模経営の農家戸数の増加テンポの鈍化、認定農業者等への農地の利用集積の伸び率の低下、担い手の育成・確保や組織化の遅れ等、現状のままでは、地域農業の維持・発展を図るうえで支障が生じることが懸念されます。

    「農業構造の展望」に示した「効率的かつ安定的な農業経営」が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の実現には、格段の努力が必要です。このため、今後期待される地域農業の担い手の明確化や、多様な担い手の育成・確保のための支援施策の体系的整備、育成すべき担い手への支援策の一層の集中化・重点化等を通じて、我が国農業の構造改革を加速化することが必要です。

    19

    65歳未満の農業専従者のいる主業農家が占める経営耕地面積、家畜飼養頭数の割合(平成14年)�

    北海道�

    都府県�

    露地野菜�

    65歳未満の農業専従者のいる主業農家の占有率�

    100�80�60�40�20�0�%�

    100�80�60�40�20�0�%�

    水田作�

    北海道�

    都府県� 都府県�

    施設野菜�

    肉 用 牛�

    果  樹�

    畑作�

    北海道�酪農�

  • 重要な役割を担う北海道畑作農業

    北海道の畑地面積は全国の3分の1、畑作物産出額で3割を占めるなど、我が国における畑作物の安定供給に重要な役割を果たしています。また、地域経済を支える産業としても重要な役割を担っています。平成14年における北海道の畑作農家戸数は1万3千戸で、昭和60年の半分の水準です。一方、1戸当たりの経営耕地面積は、60年の2倍近くに達し、都府県をはるかにしのぐ規模に到達しました。しかし、農業従事者の高齢化や後継者不足等により、農業労働力の不足が懸念されています。北海道畑作農家の1戸当たり農業粗収益は約2千4百万円(平成13年)、農業所得は856万円で、規模拡大効果による効率的な農業経営を実現しています。一方、畑作物の多くは価格政策の対象品目となっており、畑作農家の収入に占める財政負担額の合計(試算)は9百万円を超えると試算され、農業所得を上回る水準です。

    近年、労働収益性の高い麦の作付面積が増加し、輪作体系に乱れが発生しています。また、畑地への有機物の投入量が減少するなど、土づくりが減退する傾向もみられます。今後とも、適正な輪作体系のもとで持続的な大規模畑作農業を実現していくため、作物間の収益性格差の縮小、輪作作物の種類の拡大、有機物の有効活用等環境への負荷を軽減した持続的な生産体系の確立を推進するほか、関連技術の研究開発の推進が重要です。また、畑作農家の減少が予想されるなかで、一層の規模拡大に対応した体制の整備が必要です。このため、農作業受託組織の育成等、家族労働を補完するための取組を地域ぐるみで展開することも重要です。

    20

    北海道畑作経営及び都府県稲作経営の農家戸数及び1戸当たり経営耕地面積規模の推移(試算、昭和60年=100、販売農家)�

    200�

    180�

    160�

    140�

    120�

    100�

    80

    指数�

    指数�40 50 60 70 80 90 100 110

    北海道畑作経営�

    都府県稲作経営�

    経営耕地面積�

    1戸当たり�

    農家戸数�

    14

    7

    平成2

    昭和60年�

    北海道十勝地域における�主要畑作物の作付構成の推移�

    昭和40年�  45�  50�  55�  60�平成2�  7�  12�  13�  14

    小麦�

    0 20 40 60 80 100%�

    豆類� てんさい�ばれいしょ�

  • 構造改革特区で耕作放棄解消に期待

    耕地面積は長期的に減少傾向にあります(昭和36年609万ha →平成15年474万ha)。また、7年以降、耕作放棄面積が工場用地・住宅用地等への転用面積を上回る傾向です。国内農業生産の維持・確保を図っていくためには、耕地利用率の向上とともに優良農地の確保が重要です。なお、耕作放棄の発生面積は、平成14年度以降2か年連続で減少しています。耕作放棄は、高齢化や労働力不足が大きい中山間地域等の条件不利地域で発生が多くなっています。このような状況のもとで、構造改革特区の取組が地域農業の活性化、耕作放棄の解消等への役割を期待されています。

    担い手への農地集積は一定の進展がみられますが、近年の集積増加面積は鈍化傾向にあり、望ましい農業構造の実現には、今後、格段の努力が必要です。また、担い手が集積した農地が分散、点在し、規模拡大の効果が減殺される一面も存在します。担い手が、良好な営農条件を備えた優良農地を集団的に確保するための施策を一体的に推進することが必要です。

    農地制度については、優良農地の確保と担い手への集積、農業の多面的機能の維持や都市農村交流等の多様なニーズへの対応、意欲と能力のある者の農業参入を含む担い手の確保等の観点から、制度の見直しを進めることが重要です。

    21

    耕地面積と耕地利用率の推移�

    800�

    700�

    600�

    500�

    0

    万ha140�

    130�

    120�

    110�

    100�

    90�

    80�

    70�

    60�

    0

    %�

    耕地利用率(右目盛)�

    昭和35年� 40 45 50 55 60 平成2 7 12 2214

    耕地面積�

    作付延べ面積�

    495

    105

    基本計画�の見込み�

    470

  • 地域水田農業ビジョンで米政策改革

    米政策改革大綱は、農業者・地域の自主的・主体的需給調整、需要に応じた米づくり、構造改革の加速化による担い手の育成・確保を基本とし、平成22年までに地域の実情に応じ「米づくりの本来あるべき姿」を実現するため、14年2月に策定されました。大綱は、全体として7割の稲作農家が評価しています。地域水田農業ビジョンは、地域自らがその主体的な判断と創意工夫を活かして策定するという点できわめて重要な役割を有しており、各地で策定の取組が進められています。今後は、米政策改革の趣旨・内容の現場への周知徹底、地域水田農業ビジョンの実現に向けた農業者・農業者団体の主体的な取組の加速化が重要です。

    米の1人1年当たり消費量は、昭和37年の118.3kgから平成14年には62.7kgへ減少しています。一方、外食等での米の使用量は増加傾向にあり、14年は主食米の3割となりました。産地では、消費の多様化に対応した「売れる米づくり」等に主体的に取り組むことが重要です。

    22

    米政策改革の年次別行動計画�

    15年度� 16~19年度� 20~21年度� 22年度�項目�

    共  通�

    需給調整�

    担い手の�明確化と�望ましい�農業構造�の実現 �

    水田の有�効利用 �

    ソフトランディング�準備期間� 中間目標� 目標年次�

    �米政策改革の周知徹底��地域水田農業ビジョンの素案の作成�

    �様々な需要に即した公正・中立な取引の場の整備��消費者の信頼回復のための表示・検査制度の見直し�

    �加工米等の多様な米需要に対応した技術開発・普及、環境保全型農業の推進、土地基盤の整備��麦・大豆等の実需者と結び付いた生産の推進、品種の開発��耕畜連携、畑地化等の推進�

    �地域における担い手の明確化��担い手への農地の利用集積の加速化��集落型経営体の組織化�

    �農業者・農業者団体の自主的・主体的な取組の強化�

    �農業者・農業者団体が主役となるシステム�

    �需給調整は客観的な需要予測を基礎に設定する生産目標数量の配分へ�

    �地域水田農業ビジョンの策定・実践�

    �「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」による需給・価格情報の提供�

    集荷・流�通制度の�改革  �

    営が生産の大宗を占める �

    効率的かつ安定的な農業経�

    集荷・流通   �

    需要動向に応じた�

    売れる米づくり�

    需要に応じた �

    米づくりの本来あるべき姿の実現�

    18年度、農業者団体等が主役となるシステムへの移行を判断�

    �地域の特色ある水田農業の展開を促進する対策を措置��都道府県の判断により米価下落の影響緩和対策を措置��農業者・農業者団体等が主体となる豊作による過剰米の処理�

    �流通規制の緩和(計画流通制度の廃止)��米穀の安定供給のための自主的な取組の支援��入札を基本とした政府米買入れ、売渡しの制度へ�

    �一定の認定農業者または集落型経営体を対象として米価下落の影響を緩和するための上乗せ対策を実施�

  • 需要に応じた麦生産への取組が課題

    国内産麦の生産は、「水田農業経営確立対策」の推進に伴う作付面積の拡大や豊作等により増加傾向にあります。平成15年産の小麦の生産量は86万トンで、食料・農業・農村基本計画で示された22年度の生産努力目標を上回っています。国内産麦の流通は、12年産以降ほぼ全量が民間流通に移行し、生産者と実需者による品質評価を反映した直接取引きが行われています。しかし、需要に応じた生産の取組が不十分な産地もあり、需要と生産のミスマッチが発生しているため、実需者ニーズを踏まえた適切な作付が重要となっています。また、品質向上のため、新たな品種の開発・普及等が必要です。現行の麦制度については、必ずしも適切な市場評価がなされていないのではないかとの指摘があるとともに、財政負担の増大等の問題もあります。今後、新たな食料・農業・農村基本計画の検討状況も視野に入れつつ、担い手への施策の集中化を図るなど、麦政策のあり方について検討しています。

    23

    麦類(4麦)の生産動向�

    300�

    200�

    100�

    0

    千ha

    1,200�1,100�1,000�900�800�700�600

    千t

    平成5年産�6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 22(目標)�

    (1,150)�

    収穫量(右目盛)�

    水田裏作�

    転作�

    畑作�

    作付面積�

  • 需要拡大を図る国産大豆

    国内産大豆の生産は「水田農業経営確立対策」の推進等により近年増加傾向にあります。平成13~14年産の生産量は27万トンとなり、食料・農業・農村基本計画で示された、22年度の生産努力目標の25万トンを上回っています。なお、15年産は低温・日照不足等の影響で生産量は23万トンでした。

    一方で、基本的な栽培技術への取組不足等を背景に、依然として3等以下の低品位のものが多くなっています。今後、輸入大豆との競合のなかで、国内産大豆の需要拡大を図るためには、基本的な栽培技術の励行・徹底、担い手への生産集積、作付の団地化、実需者ニーズを踏まえた品種の育成・普及を行い、品質の向上と均質化、大ロット化を図る必要があります。

    制度的な支援措置と生産者の取組により生産が増大するなかで、新たな食料・農業・農村基本計画の検討状況も視野に入れつつ、担い手や良質な大豆生産に対する支援措置の集中化を図るなど、制度運営のあり方について検討していく必要があります。

    24

    大豆の生産動向�

    200�

    150�

    100�

    50�

    0

    千ha

    300�

    250�

    200�

    150�

    100�

    50

    千t

    平成5年産�6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 22(目標)�

    (250)�

    収穫量(右目盛)�

    作付面積�

    畑作�

    田作�

  • 生産努力目標を下回る野菜・果実

    野菜の生産量は減少傾向にあり、生産努力目標を下回って推移する一方、輸入量は業務用需要を中心に増加傾向にあります。一方、消費量は、近年、重量野菜の減少により全体として減少傾向です。消費者や実需者から選好される品質・価格の国産野菜を供給できるよう、生産・流通両面の構造改革の推進が必要です。

    果実の生産量は生産努力目標を下回って推移しています。消費量は、近年、ほぼ横ばいで推移しているものの、簡便性を好む若年世代を中心に果実離れの傾向がみられます。生鮮果実は多様化が進んでおり、国産果実の主力であるうんしゅうみかんの消費量が減少傾向です。健康機能性等についての知識の浸透を図り、消費拡大を目指す「毎日くだもの200g運動」の推進や、消費者・実需者から選好される品質・価格での安定的な供給体制の確立が重要です。

    25

    野菜の需給動向(昭和55年度=100)�

    140�130�120�110�100�90�80�70�60�

    指数� 指数�

    昭和55年度�60 平成2 7 12 14 昭和55年度�60 平成2 7 12 14

    (野菜計)� (緑黄色野菜)�140�130�120�110�100�90�80�70�60�

  • BSE、鳥インフルエンザへの対応

    平成15年から16年にかけて、米国における初のBSE、タイ、中国、米国等における高病原性鳥インフルエンザが相次いで発生しました。これに伴い、我が国の牛肉輸入量の5割、鶏肉輸入量の7割を占める国からの輸入を停止しました。このため、他の牛肉輸入先国への調査団派遣を実施しました。一方、我が国においても高病原性鳥インフルエンザが発生し、関係機関が協力してまん延防止の対策を実施しています。

    家畜排せつ物の不適切な管理を解消するため、平成11年11月に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」を施行しました。16年10月末の法の適用猶予期限までに、たい肥化施設の整備等を関係機関が一体となって推進しています。さらに、家畜排せつ物をバイオマス資源と位置付け、地域の実情に応じた利用技術の実証・普及が重要となっています。

    飼料作物の生産量は、農家戸数の減少や飼養規模拡大に伴う労働力不足等から、基本計画の目標の7割の水準となっています。今後、水田等の既耕地の利用、飼養管理労働の効率化、飼料生産の組織化・外部化、土地条件に応じた放牧等の推進が必要です。

    26

    飼料作物作付面積等の推移�

    5,500�

    4,500�

    3,500

    千t

    (3,725)�

    (5,080)�

    45�

    40�

    35�

    0

    t/ha1,100�

    1,000�

    900�

    800�

    700�

    0

    千ha

    生産量�

    昭和60年�平成2 7 12 22�(目標)�

    13 14

    単収(右目盛)�飼料作物作付面積�

  • 環境保全を重視した農業への移行

    農林水産業は自然に働きかけ、上手に利用し、循環を促進することによりその恵みを享受する生産活動です。また、農山漁村は多様な生態系が確保されている地域を形成しています。しかし、近年の農業生産においては、環境に対する負荷の増大が懸念されています。今後、持続可能な農業の展開に当たっては、環境への負荷を最小化する必要があります。このためには、生産者の努力と消費者の理解・支援が不可欠です。

    農業が及ぼす環境への負荷を低減するため、土づくりや肥料・農薬の使用の低減等環境保全を重視した農業生産への移行が必要です。環境保全を重視した農業に対する高い意欲がうかがわれる一方、エコファーマーの数は販売農家数の2%未満です。環境保全を重視した農業への取組は、販売金額が大きい経営ほど進展しています。また、稲作経営に比べ野菜作経営で取組割合が高い傾向にあります。環境保全を重視した農業の経営費は、慣行栽培よりも高く、労働時間も大幅に上回っています。今後、環境保全を重視した農業の定着を図るためには、関係者が一体となった普及・啓発活動や環境保全を重視する農業のための指針の策定、地域において面的なまとまりをもった取組が重要です。

    27

    環境保全に取り組む農家の経営概況(平成14年、稲作10アール当たり)�

    60�50�40�30�20

    時間�労働時間�

    収量(右目盛)�

    雇用労働�農業薬剤費�

    肥料費�

    その他の�経営費�

    経営費�

    140�

    120�

    100�

    80�

    60�

    40�

    20�

    0

    千円�600�

    500�

    400�

    300

    kg

    減農薬また�は減化学肥�料栽培  �

    慣行�栽培�

    有機�栽培�

    無農薬・�無化学肥�料栽培 �

    無化学�肥料栽�培  �

    無農薬�栽培 �

  • バイオマス利活用推進への取組

    バイオマスは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、化石資源の代替利用により二酸化炭素発生を抑制し地球温暖化防止に貢献します。また、廃棄物系バイオマスの利活用により、循環型社会の形成に寄与するものです。現在、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月)に基づく様々な取組が進展しています。生ごみ等の廃棄物系バイオマスについては、地域住民の関心の高まりや収集コストが比較的低いこと等から、その利活用が進展していますが、全体としては点的な取組の段階です。バイオマスの利活用は、新たな産業や雇用の創出、循環型の地域づくりに貢献します。今後、さらなる取組の推進を図るため、バイオマスからエネルギー等への変換の効率化、バイオマス由来の製品開発等に資する技術研究、バイオマスの収集・輸送の効率化等により、利活用にかかるコストの低減を推進していくことが重要です。

    なお、農業は、食料の安定供給という基本的な役割に加え、適切な農業生産活動を通じて自然環境の保全、水源のかん養、良好な環境の形成、文化の伝承等様々な機能を有しています。こうした農業の有する多面的機能は、農業生産活動が持続的に行われることにより発揮され、市場において金銭的に評価されるものではない外部経済効果としての性格や、農村に住む者に限らず広く国民が対価を直接支払わずに享受することができる公共財的な性格を持っています。多面的機能の理解は、身近な体験がかかわるとみられることから、国民的な理解を深めるためににも農業体験活動や都市農村交流等の取組が重要です。

    28

    バイオマス利活用による地域の活性化� 主なバイオマス�

    多様なバイオマス�活用施設�

    地域の創意工夫を活かし�産業と雇用を創出�

    食品廃棄物�下水汚泥�

    エネルギー�プラスチック�

    水産加工残さ�

    エネルギー�生産資材�

    水産物�

    林産物�林地残材�製材工場等残材�

    エネルギー�生産資材�

    資源作物�作物残さ�家畜排せつ物�

    エネルギー�生産資材�たい肥�

    農産物�

    エネルギー�プラスチック�

    食品廃棄物�下水汚泥�

    �家畜排せつ物��食品廃棄物��廃棄紙��黒液(パルプ工場廃液)��下水汚泥��し尿汚泥��建設発生木材��製材工場等残材�

    廃棄物系バイオマス�

    �稲わら��麦わら��籾がら��林地残材�

    未利用バイオマス�

    �糖質資源(さとうきび等)��でんぷん資源(とうもろこし等)��油脂資源(なたね等)�

    資 源 作 物 �

  • 9割以上の市町村が直接支払制度利用

    我が国の大都市圏と地方圏における人口移動をみると、バブル経済崩壊後の平成5年から7年にかけて地方圏への人口移動が一時的にみられたものの、その後再び地方圏から東京圏への移動が増加しています。そして、農家人口に占める65歳以上の高齢者は、全国平均を10ポイント上回る28.6%となっています。

    中山間地域は、我が国の農業生産の約4割を担うとともに、一般に河川等の上流域に位置するため、農業の有する多面的機能の発揮を通じ、下流域の住民の生活基盤を守る防波堤としての役割を発揮しています。一方で、鳥獣による農作物被害金額は年間200億円以上にものぼります。鳥獣による被害は営農意欲を著しく損ない、耕作放棄の発生等につながりかねない深刻な問題です。低コストで効果的な被害の防止対策が必要です。中山間地域における農業生産活動の維持を通じた農業の多面的機能の確保等を目的に、平成12年度から「中山間地域等直接支払制度」が開始されました。15年度末までに、対象農地を有する市町村の9割を超える1,960市町村、66万2千haの農用地について集落協定等が締結の見込みです。地目別の対象農用地面積に対する協定締結面積の割合は、田で80.7%、草地で93.5%、畑で63.5%です。集落協定に基づく主な活動は、水路・農道等の維持管理、農地の法面点検、耕作放棄地の発生を防止するための賃借権設定・農作業委託、多面的機能を増進する周辺林地の下草刈り等です。中山間地域等直接支払制度の効果については、集落協定の代表者の9割が農業生産活動の継続に効果があると認識しています。一方で畑地帯などの地帯や営農類型を踏まえた制度の普及や、集落のリーダーの確保等が課題となっています。

    29

    中山間地域等直接支払制度に基づく集落協定の活動内容�

    100�80�60�40�20�0

    %�

    農道の管理�

    水路の管理�

    農地の法面点検�

    賃借権設定・農作業委託�

    耕作放棄されそうな農用地の�

    周辺林地の下草刈り�

    農作業の受委託推進�

    オペレーターの育成・確保�

    景観作物の作付け�

    機械・施設の共同購入・利用�

    認定農業者の育成�

    農地の面的集積�

    担い手への利用権設定による�

    農作業の共同化�

    鳥獣害防止対策�

    の作付け�

    堆きゅう肥の施肥・緑肥作物�

    新規就農者の参入�

  • 地域全体で保全する農村資源

    農村地域においては、農業生産活動を通じて維持されてきた農地や農業用水、多様な生態系を形成する動植物、農村景観、伝統文化等様々な資源が存在しています。これらの資源は、農業生産活動を中心に互いに密接に関連しており、主に農業者や農業集落が中心となって維持・活用されています。農村の有する資源のなかでも、特に農地、農業用水等の農業資源は、食料の安定供給の確保のみならず農業の多面的機能の発揮に不可欠な基礎的資源です。農村地域においては、過疎化、高齢化や都市化、混住化が進行するなかで、耕作放棄地の増大や、農業水利施設の維持管理が十分に行えなくなるなど農業資源の適正な維持、活用が困難になっています。農家数の減少や農業構造改革の進展、地域住民の出役の減少等により、これら資源の保全にかかる負担が農業の担い手に過度に集中していくことも懸念されています。地域全体で農村の資源を保全していくことが、我が国の農業生産と農村を維持していくうえで重要です。

    30

    農村の有する資源�

    農 業 用 水 �

    ○現状��農地に水を供給する農業水利施設と水利施設から供給される地域を潤す水��全国4.5万kmの基幹的農業水路、ダム、頭首工等��畑地かんがいのための水利施設の整備率20%�※時点は平成14年�○役割��食料の安定供給、生活用水や防火用水や消流雪用水や親水景観保全などの地域用水の機能、水循環の形成�

    ○水循環の形成、農業用水の確保、高度利用、農業水利の合理化�

    農   地�

    ○現状��農業生産力を有する全国480万haの全ての農地��157万haの区画整理済み水田を含む480万haの農地��水田区画の整備率 全国平均60%��水田の汎用化率  全国平均47%�※時点は平成14年�○役割��食料の安定供給、生態系の保全、雨水の一時貯留による洪水防止等の国土の保全�

    ○優良農地の確保・農地の高度利用・担い手の育成等�

    有機性資源�

    ○現状��過疎化・高齢化��農村への関心の高まり�○役割��農地、農業用水等を含む農村空間の担い手�

    ○循環型社会の構築�

    環   境�

    ○美しい農村環境の維持・創造�

    農村コミュニティ�

    農 村 地 域 �

    ○農地・農業用水等の保全管理を担う農村コミュニティの活性化�

    ○現状��農村から発生する家畜排せつ物、食品廃棄物、集落排水汚泥等の有機性資源��畜産廃棄物、生ごみ等の年間排出量�  家畜排せつ物  約9,100万トン�  食品廃棄物   約1,900万トン�○役割��物質循環を促進(土壌の物理性の改善、養分として作物に再吸収、土壌中の微生物の多様化)�

    ○現状��動物の絶滅危惧種が生息する地域の49%は里地・里山��植物の絶滅危惧種が生息する地域の55%は里地・里山�

    ○役割��多種多彩な生き物の生息空間の提供、美しい景観形成などの多面的機能��棚田、ため池、里地・里山等により2次的自然を形成��農村景観は、農業生産活動を通し、地形等と調和した独自のものであり、我が国固有の資源�

  • 農村資源の活用で地域再生

    農村地域の再生と活性化を図るためには、農村の優れた資源を地域の産業と活力の再生に結びつけていくことが重要です。これら資源を次世代に良好な状態で継承するためには、担い手農家のみならず地域住民や自治体等が必要な役割を果たしていくことが重要です。また、農業、農村の再生を図るうえで、情報技術を活用した農産物流通の効率化、生活環境の向上等が重要です。また、都市と農山漁村の共生・対流の推進において効果的な情報の受発信を行うため、企業、NPO等が参画した「オーライ! ニッポン会議」(都市と農山漁村の共生・対流推進会議)等を積極的に活用した取組に期待がかかっています。農産物直売所の設置は、経済的な効果のほかに女性・高齢者の社会参加、消費者との交流で高い評価を得ています。観光立国の実現や都市と農山漁村の共生・対流の取組の一環としてグリーン・ツーリズムの推進が重要です。訪問者の増加、定着のためには、受入環境の整備、体験指導の人材の育成等が必要です。また、農業体験学習の取組は、心の豊かさをはぐくみ大きな教育効果をもたらすものとして全国的に拡大しています。農業体験学習を受け入れる農村には経済効果に加え、様々な資源や人材の発掘等の地域活性化の効果があります。

    農村の地域活性化に当たっては、農業者や地域住民のみならず都市住民やNPO等多様な主体の参画・連携が重要です。農村資源を活性化等に結びつけるには、異業種や異分野との連携が有効です。

    31

    グリーン・ツーリズムの認知度�

    全  体�

    20 歳 代�

    30 歳 代�

    40 歳 代�

    50 歳 代�

    60歳以上�

    0 10060 804020%�

    内容を知っている� 聞いたことはある�知らない�

  • 32

    「平成15年度食料・農業・農村の動向」で取り上げられた、主な地域の事例�

    島根県益田市(P.92)�島根県のコメ「西いわみヘルシー�元氣米」の輸出促進の取組�

    愛知県豊田市(P.166)�特色ある地域水田農業ビジョンづくり�

    埼玉県小川町(P.203)�地域の資源や技術を活かした�手づくりのバイオマス施設�

    千葉県鴨川市(P.158)�構造改革特区を通じた多様な農業展開�

    岩手県花巻市・大迫町・石鳥谷町・�東和町(P.166)�特色ある地域水田農業ビジョンづくり�

    岩手県岩泉町・山形村(P.59)�地域の特色ある伝統的な食材を�見直し、その良さを広める取組�

    岩手県水沢市(P.133)�農作業受託の拡大と省力化技術の�導入による米の低コスト生産�

    神奈川県(P.24)�トレーサビリティシステムを核とした�新たな地域ブランドづくり�

    静岡県磐田市(P.63)�子どもから大人まで幅広い年齢層を対象に�実践的な食育を行っているNPOの取組�香川県多度津町(P.166)�

    特色ある地域水田農業�ビジョンづくり�

    山口県美祢市・美東町・秋芳町(P.166)�特色ある地域水田農業ビジョンづくり�

    香川県内海町(P.158)�構造改革特区を通じた�多様な農業展開�

    大分県豊後高田市(P.234)�美しい農村景観づくりの取組�

    鹿児島県鹿児島市(P.73)�「農菓発想」で、農家や地域と協調し�地元原料にこだわって全国展開を目指した取組�

    青森県名川町(P.235)�中高校生の農業体験修学旅行の受入れ�

    青森県鶴田町(P.170)�「朝ごはん条例」の制定�

    北海道旭川市(P.188)�自然の再生力を活かし省力化・低コスト化を図っている山地酪農経営�

    北海道北見市(P.199)�販売先との提携条件の工夫により有機栽培農産物を専門に生産する取組�

    北海道小清水町(P.152)�休閑緑肥の導入による環境に配慮した大規模経営の実現�

    北海道清水町(P.153)�地域全体で取り組む�農作業受託システムの展開�

    滋賀県木之本町(P.217)�家畜の放牧による獣害回避の取組�

    富山県小矢部市(P.126)�集落営農と大規模農家の共存共栄�

    新潟県東頸城郡の6町村(P.158)�構造改革特区を通じた多様な農業展開�

    山形県新庄市・鮭川村(P.237)�NPO法人の設立により多様な者が�協力する地域活性化の取組�

    富山県八尾町(P.230)�情報技術を活用した地域の活性化の取組�

    新潟県吉川町(P.220)�中山間地域等直接支払制度を�利用した農産加工品の生産と販売�

    埼玉県熊谷市(P.28)�トレーサビリティシステムに�HACCP手法の概念を組み込んだ取組�