電気電子系 - 東京工業大学...電気電子系 - 46 - 電気電子系 Ⅰ.目的と特色...

7
電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ て普段は気づかないほどです。毎日の生活に冷蔵庫,掃除機,エアコン,テレビなどの家庭用電気製品は欠 かせませんし,スマホ,タブレットやパソコンなどの情報・通信機器やそれらを支える IT (情報技術)が無 くては勉強も仕事もできません。また電車,新幹線,ハイブリッド自動車などの動力と制御には電気電子技 術がふんだんに使われています。メモリやハードディスク, SSD などの記憶媒体と応用機器がデータ社会を 支え,光通信技術が世界中をつなぐインターネットを可能にし,またゲームや音響機器,健康娯楽機器など, 電気電子技術無しでは成り立ちません。電気電子技術は,文化,教育,環境,医療,福祉,娯楽などあらゆ る社会活動の基盤であり,快適で心豊かな生活を支えています。今後も様々な新しい発明発見が期待されて いる分野です。 Ⅱ.電気電子系のカリキュラム 電気電子工学に関連する学問領域はきわめて多岐にわたりますが,電気電子系では基幹分野の学問領域を カバーする教育を行います。つまり,コンピュータの基礎となる回路・信号処理,集積回路,電波・通信等 の情報伝達システム,情報処理・通信,電子デバイス,大規模電気エネルギーの発生と制御など,電気電子 工学分野の基礎学力と応用能力を養います。しっかりとした基礎学力のもとで総合力を発揮して,将来の飛 躍的な発展に適応できる,広い視野と創造力,そして独創性を兼ね備えた先駆的な研究者,また指導的技術 者,さらには教育者を養成していきます。幅広く奥の深い電気電子工学分野の基盤を身につけると,どんな な分野にも柔軟に対応でき,優れたリーダとして活躍できます。 入学から卒業までの教育ポリシーは http://www.ee.e.titech.ac.jp/jp/edu/policy/u/ で確認してください。卒業 に必要な◎科目は 37 単位あり少し多く感じるもしれませんが,電気電子系の基礎を作る上で必要な科目で す。なお対象分野が幅広いので,授業科目には以下に示す分野コードをつけています。電気電子工学の全体 像を理解するのに役立ててください。 C:回路(Circuits)D:物性・デバイス(Physical Property and Devices)E:電磁気学(Electromagnetism)L:実験(Laboratories)M:数学(Mathematics)P:電力(Electric Power), R:研究関連(Researches), S:波動・通信(Waves. Communications and Signals)Z:学士特定課題研究 電気電子系で学ぶ内容を列挙しますと,電子回路,集積回路用デバイス,情報基礎,情報通信,回路・信 号処理,通信工学,電力システム,高電圧・プラズマ,エネルギー変換,パワーエレクトロニクス,パワー メカトロニクス,ドライブエレクトロニクス,通信電波工学,音響工学,固体エレクトロニクス,半導体, 磁性体,誘電体,有機電子材料,分子エレクトロニクス,バイオエレクトロニクス,センサ工学,医用工学, 電子デバイス,表示デバイス,光デバイス,光量子エレクトロニクス,コンピュータ応用,シミュレーショ ン,制御システム,メモリ工学,IT などです。 なお電気電子系に所属して必要な単位を取っておくと,実務経験を経たのち最上級の国家資格が無試験で 取得できます。電力エネルギーや鉄道,大型プラントなどの分野に進もうと思う場合は,経済産業省の「電 気主任技術者」資格を目指すと良いです。またスマホをはじめとした無線通信分野を志望する場合は総務省 の「電気通信主任技術者」や「無線従事者」の取得を目指すことを勧めます。難関試験の一部または全部の 筆記試験免除を申請することができます。 46

Upload: others

Post on 15-Jul-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 電気電子系 - 東京工業大学...電気電子系 - 46 - 電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ

電 気 電 子 系

- 46 -

電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ

て普段は気づかないほどです。毎日の生活に冷蔵庫,掃除機,エアコン,テレビなどの家庭用電気製品は欠

かせませんし,スマホ,タブレットやパソコンなどの情報・通信機器やそれらを支える IT(情報技術)が無

くては勉強も仕事もできません。また電車,新幹線,ハイブリッド自動車などの動力と制御には電気電子技

術がふんだんに使われています。メモリやハードディスク,SSD などの記憶媒体と応用機器がデータ社会を

支え,光通信技術が世界中をつなぐインターネットを可能にし,またゲームや音響機器,健康娯楽機器など,

電気電子技術無しでは成り立ちません。電気電子技術は,文化,教育,環境,医療,福祉,娯楽などあらゆ

る社会活動の基盤であり,快適で心豊かな生活を支えています。今後も様々な新しい発明発見が期待されて

いる分野です。

Ⅱ.電気電子系のカリキュラム 電気電子工学に関連する学問領域はきわめて多岐にわたりますが,電気電子系では基幹分野の学問領域を

カバーする教育を行います。つまり,コンピュータの基礎となる回路・信号処理,集積回路,電波・通信等

の情報伝達システム,情報処理・通信,電子デバイス,大規模電気エネルギーの発生と制御など,電気電子

工学分野の基礎学力と応用能力を養います。しっかりとした基礎学力のもとで総合力を発揮して,将来の飛

躍的な発展に適応できる,広い視野と創造力,そして独創性を兼ね備えた先駆的な研究者,また指導的技術

者,さらには教育者を養成していきます。幅広く奥の深い電気電子工学分野の基盤を身につけると,どんな

な分野にも柔軟に対応でき,優れたリーダとして活躍できます。

入学から卒業までの教育ポリシーは http://www.ee.e.titech.ac.jp/jp/edu/policy/u/ で確認してください。卒業

に必要な◎科目は 37 単位あり少し多く感じるもしれませんが,電気電子系の基礎を作る上で必要な科目で

す。なお対象分野が幅広いので,授業科目には以下に示す分野コードをつけています。電気電子工学の全体

像を理解するのに役立ててください。

C:回路(Circuits),D:物性・デバイス(Physical Property and Devices),E:電磁気学(Electromagnetism),

L:実験(Laboratories),M:数学(Mathematics),P:電力(Electric Power), R:研究関連(Researches),

S:波動・通信(Waves. Communications and Signals), Z:学士特定課題研究

電気電子系で学ぶ内容を列挙しますと,電子回路,集積回路用デバイス,情報基礎,情報通信,回路・信

号処理,通信工学,電力システム,高電圧・プラズマ,エネルギー変換,パワーエレクトロニクス,パワー

メカトロニクス,ドライブエレクトロニクス,通信電波工学,音響工学,固体エレクトロニクス,半導体,

磁性体,誘電体,有機電子材料,分子エレクトロニクス,バイオエレクトロニクス,センサ工学,医用工学,

電子デバイス,表示デバイス,光デバイス,光量子エレクトロニクス,コンピュータ応用,シミュレーショ

ン,制御システム,メモリ工学,IT などです。

なお電気電子系に所属して必要な単位を取っておくと,実務経験を経たのち最上級の国家資格が無試験で

取得できます。電力エネルギーや鉄道,大型プラントなどの分野に進もうと思う場合は,経済産業省の「電

気主任技術者」資格を目指すと良いです。またスマホをはじめとした無線通信分野を志望する場合は総務省

の「電気通信主任技術者」や「無線従事者」の取得を目指すことを勧めます。難関試験の一部または全部の

筆記試験免除を申請することができます。

- 47 -

電気電子系の講義例を電気電子系ホームページの「授業紹介」から一部引用します。この記事は,電電 HP

サポーターズ(学部生)の皆さんが書いてくれました。昨年度は感謝状が贈られました。

電気回路第二 ―授業紹介 #01― https://educ.titech.ac.jp/ee/news/2016_10/052843.html

電気電子工学系といえばこの授業!電気回路第二の授業の裏側! こんにちは、電電 HP サポーターズです!授業紹介シ

リーズでは電気電子系の特徴的な授業を学生目線で

高校生・学士課程 1年生向けにわかりやすく紹介し

ます。

今回は電気電子工学でもっとも重要な科目の一つ、

電気回路第二の授業を紹介したいと思います。

鈴木先生「ここ、重要ですよ」

あらゆる電気機器の中には回路が組まれています。

その回路がどういう動きをするのか、ある動きをす

るためにはどういう回路を組めばいいのか。それら

を学ぶのがこの電気回路の講義です。(中略)

講義を担当している教員の一人である鈴木先生は「この講義を通して、回路を見たときにどのような特性

があるとか、新しく回路を組むときにその道筋がぼんやりとでも浮かぶような、"回路のセンス"を身に付け

て欲しい」とおっしゃっていました。…

次に紹介するのはオンライン講座です。https://educ.titech.ac.jp/ee/news/2016_08/052505.html

大学一年生、高校生向けの電気電子系オンライン講座 MOOC がスタート!

この講座は東京工業大学工学院電気電子系が提供する高校生・大学一年生向けのオンライン講座です。電

気電子工学に興味はあるけれども、どこから学びはじめていいか分からない人にぴったりの講座です。

高校生・大学一年生向けにつくられていますが、電気電子工学に興味のある方でしたら誰でも受講いただ

けます。太陽電池やリニアモーターカー、プラズマを活用した高度水処理など、私たちの身近な話題から、

磁気浮上による次世代モーターや新しい電子デバイス、電気電子材料、無線を使った超高速データ伝送など

電気電子工学に関わる先端の話題にも触れていきます。電気電子工学の世界を東工大の先生方と一緒に探検

していきましょう 。

MOOC での講師の説明場面

まず、「電気電子工学入門 | Edge」 の動画再生ボタンをクリックして 1分間のデモビデオを見てみま

しょう。本編を見たい人は web の案内を見てください。

―46―

Page 2: 電気電子系 - 東京工業大学...電気電子系 - 46 - 電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ

- 47 -

電気電子系の講義例を電気電子系ホームページの「授業紹介」から一部引用します。この記事は,電電 HP

サポーターズ(学部生)の皆さんが書いてくれました。昨年度は感謝状が贈られました。

電気回路第二 ―授業紹介 #01― https://educ.titech.ac.jp/ee/news/2016_10/052843.html

電気電子工学系といえばこの授業!電気回路第二の授業の裏側! こんにちは、電電 HP サポーターズです!授業紹介シ

リーズでは電気電子系の特徴的な授業を学生目線で

高校生・学士課程 1年生向けにわかりやすく紹介し

ます。

今回は電気電子工学でもっとも重要な科目の一つ、

電気回路第二の授業を紹介したいと思います。

鈴木先生「ここ、重要ですよ」

あらゆる電気機器の中には回路が組まれています。

その回路がどういう動きをするのか、ある動きをす

るためにはどういう回路を組めばいいのか。それら

を学ぶのがこの電気回路の講義です。(中略)

講義を担当している教員の一人である鈴木先生は「この講義を通して、回路を見たときにどのような特性

があるとか、新しく回路を組むときにその道筋がぼんやりとでも浮かぶような、"回路のセンス"を身に付け

て欲しい」とおっしゃっていました。…

次に紹介するのはオンライン講座です。https://educ.titech.ac.jp/ee/news/2016_08/052505.html

大学一年生、高校生向けの電気電子系オンライン講座 MOOC がスタート!

この講座は東京工業大学工学院電気電子系が提供する高校生・大学一年生向けのオンライン講座です。電

気電子工学に興味はあるけれども、どこから学びはじめていいか分からない人にぴったりの講座です。

高校生・大学一年生向けにつくられていますが、電気電子工学に興味のある方でしたら誰でも受講いただ

けます。太陽電池やリニアモーターカー、プラズマを活用した高度水処理など、私たちの身近な話題から、

磁気浮上による次世代モーターや新しい電子デバイス、電気電子材料、無線を使った超高速データ伝送など

電気電子工学に関わる先端の話題にも触れていきます。電気電子工学の世界を東工大の先生方と一緒に探検

していきましょう 。

MOOC での講師の説明場面

まず、「電気電子工学入門 | Edge」 の動画再生ボタンをクリックして 1分間のデモビデオを見てみま

しょう。本編を見たい人は web の案内を見てください。

―47―

Page 3: 電気電子系 - 東京工業大学...電気電子系 - 46 - 電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ

- 48 -

Ⅲ.研究プロジェクトと特定課題研究および配属研究室

電気電子系では特定課題研究の前に,2つの研究室をそれぞれ3週間体験する「研究プロジェクト」を用

意しました。この期間に電気電子系の 5つの研究分野を実際に見て体験することで,高度な研究活動の一端

を知ることができます。教員たちは皆さんが抱く疑問や興味を引き出して,講義で学修した基礎概念や方法

論と,実際の最先端の研究とを結びつけるようにガイドしていきます。東工大では,講義での学修と研究室

での研究活動を車の両輪として,両方実践する重要性を早くから意識してきました。皆さんも体験すると,

理解が一挙に深まって学修や研究の楽しさがわかります。なお研究プロジェクトでは,大岡山キャンパスに

ある研究室と,すずかけ台にある研究室を1つずつ体験してもらいます。二つのキャンパスを横断して運営

されている電気電子系の研究室イメージが,はっきりと理解できると思います。

研究プロジェクトで研究室に配属されると,教員と1対1の指導のもとで課題を解決する体験ができます。

皆さんがこれまで授業で学んだ基礎知識や専門知識,実験で身につけた技術を発揮する場です。知識や技術

を総動員して課題を解決する手法を学んでください。また研究テーマをグループで議論することで課題を明

確にしていく方法論やデータの取得と解析技術,さらにはその考察方法など,将来皆さんが社会で活躍する

ときに必要となる物の見方や考え方,具体的手法の理解を進めます。研究プロジェクトの最後には,得られ

た結果と考察を発表資料にまとめてプレゼンテーションしてもらい,質疑討論を行います。またこの間に教

職員や大学院学生を含めた研究室メンバーとの交流を通じて,研究室生活の具体的なイメージがわかると思

います。特定課題研究の研究室選びにも欠かせない体験となるでしょう。

さて学士特定課題研究は特定の研究課題に取り組む内容で,研究室教育の中核です。指導教員と協議して

研究課題を決定します。配属先の研究室は自分の関心,将来に合わせた分野・研究内容から選択しますが,

希望が重複する場合には成績順に決定します。電気電子系の体系的カリキュラムに基づいたコースワークと

相補関係にあってカリキュラムの総仕上げと考えてください。研究を通じて専門力を向上させるとともに,

新たな課題や問題を発見する力,未解決の問題を解決する力,自ら学修を継続する力など,皆さんが社会で

活躍する上で必須の総合的な力が身につきます。

Ⅳ.進路

電気電子系の学士課程卒業生は 90%以

上が大学院修士課程に進学しています。卒

業後の進路を学部,修士,博士に分けて右

の表に示します。就職先は電力,通信,情

報,電気電子機器,コンピュータ,放送,

自動車,鉄鋼,機械,化学,商社,サービ

スなど多様な産業,研究機関や大学,ある

いは官庁に就職していることがわかりま

す。また博士課程卒業生は企業からは即戦

力,将来のリーダとして期待されています。

このように電気電子系の専門を修得し

た学生は多種多様な分野で必要とされて

います。実力を蓄えつつ,将来活躍する場

面を思い描いてください。

業種別就職状況 2017 学部 修士 博士

電気・通信機器 46 8

通信・放送・電力・ガス 3 44 1

ソフト 3 23

自動車 15

計測器 9

鉄道・運輸 9

研究職・官公庁 3 5

化学・薬品 1 4

精密機器 6

機械・造船 1 4

鉄鋼・金属 2 2

電線 1

商社・銀行 0

その他 1 18 1

―48―

Page 4: 電気電子系 - 東京工業大学...電気電子系 - 46 - 電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ

- 49 -

Ⅴ.電気電子系の研究グループ

この研究分野に共通するキーワードは「波」であり,奥深い物理の理解から最先端の情報技術ま

でを網羅し,通信は最も身近な応用と位置付けられます。基盤技術としては,光デバイスおよび

集積回路,アンテナおよび高周波回路,無線通信工学および信号処理,環境電磁工学などがあり

ます。この分野で活躍しようと思う学生の皆さんは,新材料の開拓や独自設計によるデバイス・

装置の実現からシステムの実験,

さらには多岐にわたるシミュレーション

まで行えます。「波」を使った広い分野を

カバーし,「世界で初めて」あるいは

「世界で最高」の成果を常に目指した

研究にチャレンジしませんか。

波動・光および通信グループ

回路グループでは,トランジスタや容量などの素子を巧みに組み合

わせることにより,携帯電話,パソコン,テレビ,デジカメ,ゲー

ム機などのエレクトロニクス機器を作るための研究を行っていま

す。例えば,携帯電話の中で使っている集積回路は,電波から電気

信号を取り出す役割を担っています。その取り出したアナログ信号

をデジタル信号に変換し,音声や画像などのさまざまな情報として

処理するのが,回路の役割です。より大量のデータを送受信できる

回路や,より低消費電力で動作する回路について研究を行っていま

す。

回路グループ

―49―

Page 5: 電気電子系 - 東京工業大学...電気電子系 - 46 - 電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ

- 50 -

エネルギーと環境,水と食の安全,そして地球温暖化など世界は今大きな問題に直面してい

ます。我々のグループで開発したプラズマ技術は,難分解性有機物の無害化や新素材開発

に応用されています。またスマートグリッドと電

力用パワーエレクトロニクスは,電力を有効利用

する基盤技術として非常に注目されています。例

えば太陽光や風力で発電した電力の 99%以上を有

効利用できる電力変換・制御技術や,レアアース

磁石を使用しない高出力・高効率モータの実現,

また,粒子ビーム応用技術など,電気エネルギー

を活用し社会に役立てるための研究を行っていま

す。

電力・エネルギーグループ

新しい電気・電子デバイスの出現は,私たちの生活に大きな変革をもたらします。そのため,革

新的な材料開発と先進的なデバイス化技術の開拓に大きな期待が集まっています。

集積回路や太陽電池に「半導体」,情報

記録媒体に「磁性体」,表示素子に「液

晶・有機分子」,バイオデバイスの実現

のための「ナノ材料」など,様々です。

こうした既存デバイスの特性向上のため

の材料開発や物性制御に留まらず,新し

い機能を持つ材料の創成に挑戦し,世界

初の先進的デバイスを提案し,その動作

を実証します。

材料・物性グループ

デバイスグループ

低炭素社会に貢献する「環境」を重視した,ダイヤモンド,新規 2次元材料,化合物半導体な

どをベースとした,低消費電力で高速動作するデバイスやパワーデバイスの研究を行っていま

す。低消費電力で高速動作させるために,

低電圧時での高電流密度や待機時低消費電力を

目指します。またシリコンや化合物半導体に

微細構造をつくりこむことで量子効果を

積極的に用いた新規機能デバイスや,光と電波に

挟まれた未開拓の周波数帯であるテラヘルツ波の

デバイス開発にも取り組んでいます。

―50―

Page 6: 電気電子系 - 東京工業大学...電気電子系 - 46 - 電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ

- 51 -

Ⅵ.電気電子系の教員一覧

研究の詳細は,web サイト http://educ.titech.ac.jp/ee/から各研究室の web サイトにアクセスできます。

下表の QR コードを使って研究室のホームページを見てください。

回路グループ

岡田研:超高速ミリ波無線通信

デジタル無線機・発振回路

IoT 向け無線機,5G 向け無線機

伊藤(浩)研:無線通信回路技術

センサインターフェース回路技術

農業用 IT 技術,無線測位技術

波動・光および通信グループ

阪口研:無線通信工学

5G/IoT/ミリ波/無線電力伝送

コネクティッドカー/自動運転

西方研:環境電磁工学

高周波材料測定

聴覚情報処理

廣川研:アンテナ工学

無線通信

電磁波数値解析法

青柳研:ボディエリアネットワー

ク,ヘルスケア,医療情報通信

環境電磁工学

西山研:超高速光伝送

異種材料集積,光電子集積回路

半導体レーザ

庄司研:シリコンフォトニクス

光スイッチ

磁気光学デバイス

小山研:面発光レーザフォトニク

スローライトフォトニクス

光ビームスキャナ

宮本(智)研:無線給電システム

半導体光デバイス・光モジュール

高性能面発光レーザ

植之原研:フォトニックネット

ワーク,光信号処理デバイス

光スイッチングシステム

黒澤研:電気音響変換器

弾性表面波リニアモータ

環境振動圧電発電デバイス

中村研:光ファイバセンサ

圧電超音波デバイス

光,超音波センシング

田原研:医療超音波

農業計測

生体機能計測

デバイスグループ

波多野研:ダイヤモンドデバイス

生体向けセンサデバイス

新規カーボン薄膜デバイス

岩﨑研:ダイヤモンドデバイス

生体向けセンサデバイス

新規カーボン薄膜デバイス

宮本(恭)研:超高速・低消費電力

を目指した電子デバイス(InP 系・

GaN 系・二次元系)の研究

河野研:テラヘルツ分光

カーボンナノエレクトロニクス

ナノイメージング

浅田研:テラヘルツデバイス

ナノ構造テラヘルツ光源

ナノ構造のテラヘルツ応答

小寺研:量子コンピュータ基盤技

術,量子情報デバイス

ナノ量子エレクトロニクス

―51―

Page 7: 電気電子系 - 東京工業大学...電気電子系 - 46 - 電気電子系 Ⅰ.目的と特色 家庭,学校,会社,工場など私たちの身の回りの至る所で電気は利用されています。その役割が大き過ぎ

- 52 -

筒井研:電子デバイス(Si, GaN パ

ワーデバイス),電子材料・プロセ

ス,ヘテロ結晶成長

鈴木研:InP 系 HEMT を用いたテラ

ヘルツ受信素子,テラヘルツ無線

通信・アンテナ

若林研:極微細シリコン電子デバ

イス,二次元原子層状半導体デバ

イス

渡辺研:ナノ構造デバイス

量子効果光電子機能デバイス

ヘテロ構造の形成と機能設計

角嶋研:SiC,GaN パワーデバイス

薄膜太陽電池デバイス

不揮発性メモリデバイス

大見研:シリコン MOS トランジス

有機半導体トランジスタ

材料・物性グループ

山田研:半導体の太陽電池応用

Cu(InGa)Se2 薄膜太陽電池の開発

Cu2ZnSn(SSe)4 薄膜太陽電池の開

宮島研:半導体エネルギー変換

ヘテロ接合型結晶シリコン太陽電

池,

有機・無機ハイブリッド太陽電池

中川研:スピントロニクスデバイ

ス,超高密度磁気記録

磁性薄膜・微粒子の特性制御

Pham 研:新型強磁性半導体の開発

スピン p・nダイオードの開発

スピンバイポーラトランジスタ

間中研:有機トランジスタ

有機半導体・誘電体計測技術

分子キラリティのエレクトロニク

梶川研:バイオ・メタマテリアル

バイオ・センシングデバイス

物質を不可視化する技術

伊藤(治)研:近接場光学

ナノフォトニクス

アトムフォトニクス

菅原研:新原理トランジスタ/メモ

リ,

高効率・低消費電力集積回路

ウエアラブル熱電発電モジュール

飯野研:有機エレクトロニクスデ

バイス,液晶性有機半導体材料

液晶性を活用した有機トランジス

電力・エネルギーグループ

千葉研:ハイブリッド自動車用

モータ

磁気浮上ベアリングレスモータ

超高速モータとその駆動回路

萩原研:パワーエレクトロニクス

次世代ハイブリッド直流遮断器

モジュラー・マルチレベル変換器

安岡研:ハイブリッド直流遮断器

電気接点開極時の固液相状態制御

気液界面プラズマと高度水処理

藤田研:電力変換回路の高性能化

高周波インバータとその応用

七原研:再生可能エネルギー

風力発電システムの特性解析

蓄電池の最適運用技術

赤塚研:プラズマ発光分光計測

アーク放電プラズマとその工学応

希薄超音速プラズマの基礎研究

小栗研:イオンビームプラズマ作

用,陽子ビーム励起特性 X線の医

療応用,環境・生命等イオンビーム

分析技術

沖野研:大気圧プラズマ装置の開

発,プラズマの医療・生命・農業

応用,プラズマ発光分光/質量分析

装置開発

情 報 通 信 系

1.情報通信系とは

コンピュータとネットワークを中心に進展してきた情報化の流れは,私たちの社会や生活を大きく変えま

した。今や,我々のコミュニケーション,知的活動を含む社会生活は,インターネットや携帯電話等に代表

される情報通信環境なしには考えられません。

このような中,情報通信工学は豊かで充実した情報環境を築くための基盤技術となっています。情報通信

系では,より良い情報環境を創り,その基盤を支える研究者・技術者を育成することを目的としています。

そのような研究者・技術者に求められる資質は,コンピュータのソフトウェアとハードウェアに関する理

論と技術,インターネットや携帯電話等に代表される通信ネットワーク技術とその情報の流れを数学的に体

系化する情報理論,人間中心の情報環境構築に必要な感覚情報・生体情報・知能情報・メディア情報につい

ての知識と技術を身に付けていることです。

情報通信系では,このような知識・技術を系統的に学習できるように教育課程を準備しています。現代の

社会基盤である情報環境を支える情報通信技術者は,あらゆる分野で活躍するチャンスがあり,またそれが

社会から求められています。学科で与えられる専門的な科目にとらわれ過ぎることなく,情報通信工学以外

の他分野,例えば人の文化や社会を対象とする人文社会科学などにも興味を持ち,幅広い知識を身に付けて

いくことを情報通信系では奨励してします。

2.学修内容

情報通信系学修課程には,通信・ネットワーク・セキュリティ,信号処理・集積回路・計算機システム,

メディア・知能理解や生体情報処理を含む人間情報処理などの各専門分野への方向づけがあります。2年生

から3年生にかけて履修する系専門科目には,研究分野に対応した科目(通信・ネットワーク・セキュリテ

ィ科目群,信号処理科目群,集積回路・計算機科目群,人間情報科目群),すべての分野に共通して必要と

なる基盤数理を学ぶ科目(基盤数理科目群),プログラミングと実験を含む必修科目などがあります。

系に所属した最初のクォーターに開講されている「情報通信概論」を履修することで,情報通信工学分野

の専門領域を俯瞰し,これからどのような分野を学んでいくのかを知ることができます。そのほか,2年生

で主に履修する200番台科目には情報通信工学の学問の基盤となる科目が配置されています。特に「確率

と統計」「離散構造とアルゴリズム」「信号とシステム解析」「オートマトンと言語」の4科目は,基礎学力

をつけるための重要な科目であり,効果的に知識・技術を身につけるために演習を伴っています。

3年生で主に履修する300番代科目には,専門分野に応じた多くの科目が用意されており,自分の興味

のある専門分野を中心に集中的に学ぶこともできます。

これらの講義を通じて,基礎を系統的に学び,情報通信関係技術の科学と工学の分野で幅広く活躍するた

めに必要な知識と技術を身につけることができます。また,関連する最先端の話題に触れることもできます。

3.教育研究分野

情報通信系の学生は3年生最後のクォーターになると各研究室に配属され,4年生にはそれぞれの研究室の

専門分野におけるテーマについて学士特定課題研究をおこなうことになります。以下では,情報通信系にお

ける主な教育研究分野を紹介します。

―52―