リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中)...

36
1〈論 説〉 リカードウ減債基金と低金利経済 里 中 恆 志 目 次 はじめに 1.ドーマモデルと経済成長 1)国債累積と経済成長 2)国債累積と金利及び物価上昇率 2.リカードウの減債基金論 1)等価交換と現在価値 2)リカードウ減債基金論の枠組み 3.グレンヴィルの減債基金廃止論 1)年利費用と借換え 2)年金証書の購入と国債 4.低金利下の国債累積 1)国債償還の恐怖と資産価値の保存 2)国債累積と所得移転 3)老後資金を抱える社会 4)通貨価値を維持する努力 おわりに

Upload: others

Post on 25-Feb-2021

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

-1-

〈論 説〉

リカードウ減債基金と低金利経済

里 中 恆 志

目 次

はじめに 1.ドーマモデルと経済成長 (1)国債累積と経済成長 (2)国債累積と金利及び物価上昇率

2.リカードウの減債基金論 (1)等価交換と現在価値 (2)リカードウ減債基金論の枠組み

3.グレンヴィルの減債基金廃止論 (1)年利費用と借換え (2)年金証書の購入と国債

4.低金利下の国債累積 (1)国債償還の恐怖と資産価値の保存 (2)国債累積と所得移転 (3)老後資金を抱える社会 (4)通貨価値を維持する努力 おわりに

Page 2: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-2-

はじめに

19世紀のイギリスでは,ナポレオン戦争が終わった 1815年に国債残高は

8.4億ポンドに達し,それは国民所得 4億ポンドの 2.1倍に相当した。1 そ

の後,第一次大戦までの約一世紀(100年)の間は,比較的に短期間のクリ

ミア戦争(1853~56)とボーア戦争(1899~1902)を除いて戦争がなく,

国債残高が大きく増加することはなかった。とくに 1860年半ばまでは国債

の残高はほぼ横這いで,所得税廃止の減税が行なわれたり,減債基金が廃止

される(1828)など,国債の償還は積極的には行われていない。2

しかし,1860年代半ばからの減債政策のなかで新しい減債基金(1875)

や低利借換えによって国債償還は順調に進み,1891 年には残高は 6.8 億ポ

ンドにまで減少した。経済成長により同年の国民所得は 16億ポンドに増加

したから(1818~91年の平均経済成長率は 2%強),国民所得に対する国債

残高の比率は 1815年の 210%から 1891年の 43%に低下した。残高はさら

に逓減が続き第一次大戦直前の 1913年には 6.6億ポンドになるが,半世紀

にわたって国債残高が減少し続けた国はほかにない。3

ヴィクトリア朝時代(1837~1901)の黄金期,イギリスの金利は 3%強

で安定的に推移し,1888 年には 3%コンソルがさらに低い金利(2.5%)へ

借換えられた。とくに,19 世紀末(1894~97)には超低金利(3 ヶ月もの

銀行手形が 1%以下)の時期があり,低い短期金利で資金調達し,国債で運

用するというキャリートレードもあったという。金利の低下は国債負担の軽

減に大きく寄与する。

物価は下落基調で推移し,19 世紀のイギリスはデフレであった。物価指

数は 1818年の 160から 1891年には 72に低下した。55ポイントの低下で

ある。物価の下落は債務者損失を発生させ,国債の償還をそれだけ困難にす

1 E. L. Hargreaves, The National Debt (Edward Arnord:London, 1930) 一ノ瀬篤/斎藤忠雄/西野宗雄 訳 E. L. ハーグリーヴズ『イギリス国債史』新評論,1987,p.296.

2 富田俊基著『国債の歴史』東洋経済新報社,2006. 6月,p.165. 3 富田俊基著『同上書』p.167.

Page 3: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-3-

る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

長が国債負担の軽減を可能にしてきた。4

この時期のイギリスには国債の大きな増発がなかったこと,金利の低下が

あり低利借換えが進んだこと,緩やかな経済成長が続いたことが,国債残高

減少の主な要因と思われる。

ひるがえって,わが国の国債累積の現状を見ると,2007(平成 19)年度

予算ではわが国の普通国債残高は年度末に 547兆円程度に達する見込みで,

GDPの 104.8%にあたる。地方債を含めた残高では 773兆円程度で GDP比

は 148.1%である。国債残高は国税収入(平成 17年度予算約 53兆円)の約

10倍に相当するが,バブル崩壊(1990年)に続く未曾有の超低金利経済の

なかで,財政危機の意識は大きく弱められている。

わが国では国債がある程度を超えて累積すると返せなくなるという心配

よりもインフレーションを招来するのではないかという心配の方がとくに

強い。すなわち,デフォルトよりも実質的に返済されない方のリスクが高ま

る。第二次世界大戦が終了したとき(1945 年)わが国には国民所得の約 2

倍の規模の国債残高が積みあがっていた。しかし,終戦と同時に激しいイン

フレーションに見舞われ,物価は戦前の 1,000倍以上に騰貴した。偏在した

金融資産は通貨価値の暴落というかたちで劇的に調整された。多くの国民の

預貯金や保険証券等は紙くずと化し,以後,国民はインフレに対して苦い思

いを抱き続けてきた。

終戦直後のハイパー・インフレーションが国債累積の問題を解消して以来

1965年までの約 20年間わが国は国債と無縁であった。現在の国債残高 547

兆円は 1965年以降の発行によるもので 1990年の段階の残高は 166兆円で

あったが,その後のバブルの崩壊とともに景気対策財政支出と歳入補填のた

めの国債が急増し積み上がった。金利の低下は 1990年にはじまるが長期金

利が 2003年 6月には 0.43%を記録し,短期金利については 1999年 2月ゼ

4 米山秀隆「政府債務累増の帰結-歴史的考察」『研究レポート』No. 158,富士通総研(FRI)経済研究所(2003)p.4.

Page 4: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-4-

ロ金利政策がとられるなど歴史的な超低金利状態が現出した。

戦後半世紀以上にわたる右肩上がりの経済のなかで,国債の累積を問題に

するときは経済成長の視点やインフレの視点からの分析が強調されやすく,

低金利の視点や物価下落の視点は欠けたものになりがちであった。さらに国

債の消化に関しては産業の国際競争力の低下や通貨信認の低下が資本の国

外流出を促し,円安をもたらすという国際収支の視点も重要である。

1.ドーマモデルと経済成長

(1)ドーマモデルと国債累積

Ynを第 n年の国民所得,tを国民所得 Yに対する平均税率,rを利子率,Dnを第 n年の国債累積額とすると,第 n年に国家破産状態に陥らないためには第 n年の税収額 tYnとその年の利払い費 rDnとの間に次の不等式の関係

が成立していなければならない。

rDn < tYn

いま経済が名目で年率 gの率で成長し,それに比例するかたちで国債発行額も増加するとする。すなわち第 n 年の国債発行額を⊿Dnとし国民所得に

たいする国債の発行率を dとして⊿Dn=dYnの関係を仮定する。発行された

国債は償還されないものとし,国債累積額の初期値をD' +⊿D0で表す。そ

して国債利子は発行の翌年から支払われるとすると,第 n年目の年税収から国債利払い費を負担する割合(rDn–1/tYn)は,

(rDn–1/tYn)=r(D' +⊿D0+⊿D1+⊿D2+・・・+⊿Dn–1)/tYn

=rD'/tY0 (1+g)n +r d{-1/(1+g)n +1}<1

の不等式関係で書き表せる。国債発行率 d,利子率 rが大きく,名目経済成長率 gおよび平均税率 tが小さいときには長期の年数を経ることなく,やがてこの条件を満たせなくなり国家財政は破綻することが示される。年数 nが十分に大きいときは rDn/tYnの値は r d/tgに収束する。

rDn/tYn の値が収束値をもつということと,財政が破綻しないというこ

Page 5: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-5-

ととは別である。その値が 1を超えて収束するか,1より小さい値で収束す

るかの違いである。

(r d/tg)<1 あるいは(r d/tg)<1

の関係を満たすかぎりは国債利払い費の支払いが年々増加を続けていたと

してもこの算式の条件からの財政の破綻はない。利払いの重圧で財政が破綻

するかどうかは,結局利払い費の増加のスピードと税収入増加のスピードに

依存することが分かる。

(2)国債累積と金利及び物価上昇率

ドーマモデルが示すところは経済成長率が市場金利を上回るかぎり財政

が破綻することはなく,経済成長率が大きければ大きいほど国債累積の限界

は大きくなる,金利が低ければ低いほど国債の限界は大きくなるというもの

である。

また,実質金利で見るならば,物価上昇率が大きいほど国債の限界は大き

くなる。実質金利は名目金利から物価上昇率を差し引いた差であるから,物

価上昇率が名目金利を上回るときは実質金利はマイナスになる。マイナスの

金利では債権者損失が発生し,債務者利得が発生する。過去,ハイパー・イ

ンフレーションを経験した国では巨額の国家債務はたちどころに消滅した。

バブル崩壊後のわが国は GDP を大きく超える巨額の国債を積み上げた。

国債累積をリスクとしてとらえるときの論調は経済の低成長と歳出増加に

よる国家破綻の可能性,インフレ(通貨価値の下落),負担の将来世代への

転嫁,国債の値崩れによる金利上昇圧力,財政硬直化,為替下落のリスク,

国債格付の下落による国家の信認の低下等の視点からであった。

昭和初期の右肩上がり経済が始まって以来 60年以上を経過した後のバブ

ル崩壊の当時は,世論および為政者ともに金利の低下を考える習慣を欠いて

いたと思われる。バブル後の実際は,金利上昇ではなく超低金利経済であっ

た。巨額国債残高の重圧をかわすには低金利の効果は圧倒的である。物価は

ゆるやかな下落傾向をたどりインフレではなくデフレであった。

Page 6: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-6-

2.リカードウの減債基金論

(1)等価交換と現在価値

金融資産はときどき天変地変,戦争,ハイパー・インフレーション,大不

況といったような歴史的シャッフルに見舞われなければ,無限の増殖を続け

ることになる。例えば,年 2%の複利で金融資産を運用できるならば 50 年

間では 2.7倍,100年間(一世紀)では 7.2倍になる。1,000年では 3.9億

倍,キリスト生誕からの期間(2000 年間)では天文学的数字(15 京 8614

兆倍)になる。反対に,物価の上昇が年率 2%ならば金融資産の価値は年率

2%の速さで減少するだろう。物価の上昇は金融資産の資産価値を喪失させ

るのである。このように金利は金融資産の価値を高め,物価上昇は金融資産

の価値を低めることで反対方向に作用するが,その差は資産の将来価値を現

在価値に結びつける役割をする。

いま,金利の効果のみをみるために物価変動がないものとして,すなわち

物価上昇率ゼロとして考察する。表 1 は将来 n 年後の 1 万円が現在いくら

であるかを金利の 5%と 2%について比較したものと,n年間の年々1万円の

流列について両金利による現在値を比較した計数を示している。金利の 5%

と 2%とではいかに大きく差が開くかが分かる。

まず 10年後の 1万円について金利 5%のときの現在値は 6,139円である

が,金利 2%では 8,203円である。それが 30年後の 1万円では 2,314円と

5,521円になり,50年後では 872円と 3,790円というように差が広がる。

次に,年々1万円ずつ 10年間の払い込み金 10万円の流列は金利 5%のと

きで現在値は 77,217円であるが,金利 2%では 89,826円である。それが年々

1万円を30年間払い込む流列では30万円が153,725円(金利5%)と223,965

円(金利 2%)の現在値になり,50年間払い込む流列では 50万円が 182,559

円(金利 5%)と 314,236 円(金利 2%)というように現在値の差は大きく

広がる。

Page 7: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-7-

表.1 年々1万円の支払いが期末に行われるときの流列の現在値(金利が2%のときと5%のときの現在値の比較)

期末払い 2%複利 運用元利合計 n年後の1万円の 流列の現在値 5%複利 運用元利合計 n年後の1万円の 流列の現在値

回数 rn=1.02n10000(1-r

n)/(-0.02) 現在価値 10000(1-1/r

n)×50 rn=1.05n (1-rn)/(1-r) 現在価値 10000(1-1/r

n)×20

n B A 10,000/B A/B B A 10,000/B A/B倍 円 円 円 倍 円 円 円

1 1.02000 10,000 9,804 9,804 1.0500 10,000 9,524 9,5242 1.04040 20,200 9,612 19,416 1.1025 20,500 9,070 18,5943 1.06121 30,604 9,423 28,839 1.1576 31,525 8,638 27,2324 1.08243 41,216 9,238 38,077 1.2155 43,101 8,227 35,4605 1.10408 52,040 9,057 47,135 1.2763 55,256 7,835 43,2956 1.12616 63,081 8,880 56,014 1.3401 68,019 7,462 50,7577 1.14869 74,343 8,706 64,720 1.4071 81,420 7,107 57,8648 1.17166 85,830 8,535 73,255 1.4775 95,491 6,768 64,6329 1.19509 97,546 8,368 81,622 1.5513 110,266 6,446 71,078

10 1.21899 109,497 8,203 89,826 1.6289 125,779 6,139 77,21711 1.24337 121,687 8,043 97,868 1.7103 142,068 5,847 83,06412 1.26824 134,121 7,885 105,753 1.7959 159,171 5,568 88,63313 1.29361 146,803 7,730 113,484 1.8856 177,130 5,303 93,93614 1.31948 159,739 7,579 121,062 1.9799 195,986 5,051 98,98615 1.34587 172,934 7,430 128,493 2.0789 215,786 4,810 103,79716 1.37279 186,393 7,284 135,777 2.1829 236,575 4,581 108,37817 1.40024 200,121 7,142 142,919 2.2920 258,404 4,363 112,74118 1.42825 214,123 7,002 149,920 2.4066 281,324 4,155 116,89619 1.45681 228,406 6,864 156,785 2.5270 305,390 3,957 120,85320 1.48595 242,974 6,730 163,514 2.6533 330,660 3,769 124,62221 1.51567 257,833 6,598 170,112 2.7860 357,193 3,589 128,21222 1.54598 272,990 6,468 176,580 2.9253 385,052 3,418 131,63023 1.57690 288,450 6,342 182,922 3.0715 414,305 3,256 134,88624 1.60844 304,219 6,217 189,139 3.2251 445,020 3,101 137,98625 1.64061 320,303 6,095 195,235 3.3864 477,271 2,953 140,93926 1.67342 336,709 5,976 201,210 3.5557 511,135 2,812 143,75227 1.70689 353,443 5,859 207,069 3.7335 546,691 2,678 146,43028 1.74102 370,512 5,744 212,813 3.9201 584,026 2,551 148,98129 1.77584 387,922 5,631 218,444 4.1161 623,227 2,429 151,41130 1.81136 405,681 5,521 223,965 4.3219 664,388 2,314 153,72531 1.84759 423,794 5,412 229,377 4.5380 707,608 2,204 155,92832 1.88454 442,270 5,306 234,683 4.7649 752,988 2,099 158,02733 1.92223 461,116 5,202 239,886 5.0032 800,638 1,999 160,02534 1.96068 480,338 5,100 244,986 5.2533 850,670 1,904 161,92935 1.99989 499,945 5,000 249,986 5.5160 903,203 1,813 163,74236 2.03989 519,944 4,902 254,888 5.7918 958,363 1,727 165,46937 2.08069 540,343 4,806 259,695 6.0814 1,016,281 1,644 167,11338 2.12230 561,149 4,712 264,406 6.3855 1,077,095 1,566 168,67939 2.16474 582,372 4,619 269,026 6.7048 1,140,950 1,491 170,17040 2.20804 604,020 4,529 273,555 7.0400 1,207,998 1,420 171,59141 2.25220 626,100 4,440 277,995 7.3920 1,278,398 1,353 172,94442 2.29724 648,622 4,353 282,348 7.7616 1,352,318 1,288 174,23243 2.34319 671,595 4,268 286,616 8.1497 1,429,933 1,227 175,45944 2.39005 695,027 4,184 290,800 8.5572 1,511,430 1,169 176,62845 2.43785 718,927 4,102 294,902 8.9850 1,597,002 1,113 177,74146 2.48661 743,306 4,022 298,923 9.4343 1,686,852 1,060 178,80147 2.53634 768,172 3,943 302,866 9.9060 1,781,194 1,009 179,81048 2.58707 793,535 3,865 306,731 10.4013 1,880,254 961 180,77249 2.63881 819,406 3,790 310,521 10.9213 1,984,267 916 181,68750 2.69159 845,794 3,715 314,236 11.4674 2,093,480 872 182,55951 2.74542 872,710 3,642 317,878 12.0408 2,208,154 831 183,39052 2.80033 900,164 3,571 321,449 12.6428 2,328,562 791 184,18153 2.85633 928,167 3,501 324,950 13.2749 2,454,990 753 184,93454 2.91346 956,731 3,432 328,383 13.9387 2,587,739 717 185,65155 2.97173 985,865 3,365 331,748 14.6356 2,727,126 683 186,33556 3.03117 1,015,583 3,299 335,047 15.3674 2,873,482 651 186,98557 3.09179 1,045,894 3,234 338,281 16.1358 3,027,157 620 187,60558 3.15362 1,076,812 3,171 341,452 16.9426 3,188,514 590 188,19559 3.21670 1,108,348 3,109 344,561 17.7897 3,357,940 562 188,75860 3.28103 1,140,515 3,048 347,609 18.6792 3,535,837 535 189,293

利子率2%,r=1.02 利子率5%,r=1.05

Page 8: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-8-

表 1 を使って借入れ額と金利の間の様々の関係を確認することができる。

ある個人が年間 1万円ずつ 35年の間支払いが可能だとすると,ここから借

入れ可能額を算出するときの考え方は次のようになる。

1 万円ずつ年 5%の複利で 35 年積み立てたときの積立元利の合計残高は

(35年目の期首で計算して)90.3万円強になる。すなわち,期間 n=35年,

金利 r=0.05とすると元利合計は,

(1+r)n–1+(1+r)n–2+・・・+(1+r)2+(1+r)+1

=(1-1.0535)/(1-1.05)=(1-5.5160118)/(-0.05)=90.3202

から,90万 3,202円である。この額は払込み金額 35万円の 2.58倍強にあ

たるが,いくらの元金(一括払い金)を 5%複利で 35 年運用したときの金

額に相当するかを求めると,元金(一括払い金)を xとして,

(1+0.05)35x=90.3203

x=16.3742

となる。すなわち,金利 5%のとき年 1 万円ずつの 35 年均等払と現金一括

払いの 16万 3742円とは等価であることが分かる。例えば,35年間 1万円

均等払いのローン支払合計額 35万円は即金払いでは 16万 3742円で済むこ

とになる。すなわち,この商品は「現金だと 16万 3742円ですが,均等 35

年賦ローンだと計 35万円お払込みいただくことになります。」となる。逆に,

金利 5%のとき 35年間の年 1万円の支払いで可能な借入額は 16万 3742円

である。年100万円のローン支払いができる人は1,637万円を借りられるし,

ローンに年 200 万円払えるという人は 2 倍の 3,274 万円を借りることがで

きる。同じことを金利 2%のケースについて繰り返すと,年 100万円のロー

ン支払いができる人は 2,499万円借りられるし,ローンに年 200万円払える

という人は 2倍の 4,998万円を借りることができる。すなわち,金利が低け

れば多額の借入れが可能で,借金の限界は大きくなることが分かる。

Page 9: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-9-

同じことは年額 1万円ずつ,将来の 35年間に支払続けるときの流列を利

率 5%で割り引いてその現在値(将来払込金の現在価値)を算出することで

も確認できる。

(1/1.05){1+1/(1+0.05)+1/(1+0.05)2+1/(1+0.05)3+・・・+1/(1+0.05)35}

=(1/1.05){1-1/(1+0.05)35}/{1-1/(1+0.05)}

=20(1-0.181290)=16.3742

すなわち,年額 1万円で 35年の流列の現在値は利率 5%のとき 16万 3742

円である。元本の 16万 3742円に対し払込み金は 35万円であるからから,

2.14倍になる。

公債保有者は券面についているクーポン(利札)を毎期,切り取り,引き

換えに確定利子の支払いを受け取る。そして満期に一括償還の元本を受け取

る。このように毎年,利子のみを支払い,満期に元金の全額を一括払いする

返済方式を国債型償還方式と呼ぶと,国債型方式による償還は次のようにな

る。

例えば,借入元本 16 万 3742 円[元本をaで表わし,近似的にa={1-

1/r35}/(1-1/r)万円,ただしr=1.05 とおいて計算する]の債務者が毎年

5%の金利のみの 8,187円[≒{1-1/(1+0.05)35}万円]を 35回支払い,満期

の 35 年目にはさらに元本を支払って完済すると,支払い金利だけで 28 万

6545円になる。これに元本の 16万 3742円を加えると返済払込金の合計額

は 2.75倍の 45万 0287円である。

これに対し,年額 1 万円の元利均等払い方式ならば返済者の払込金が 35

万円で済むのであるから,国債償還方式の返済の方が 10 万 0287 円多くを

払い込まねばならないことが分かる。これは元利均等払いが年賦の初年から

すぐに 1,813円(=1万円-8,187円)ずつ元本分の償還を始めているから

である。この分の 35年の間の払込金額は 63,455万円(=1,813円×35回)

で済み,その元利合計は初項を(1-0.05a)とし公比rを 1.05(5%複利)

Page 10: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-10-

とする等比級数の第 35項までの和であるから

元利合計=(1-0.05a)(1-r35)/(1-r)

=[1-(r-1){1-1/r35}/(r-1)](1-r35)/(1-r)

=(1-r35)/r35 (1-r)={1-1/r35}/(r-1)=a

となって,ちょうど元本返済金の 16 万 3,742 円に相当する。差額の 10 万

0,287円は運用金利分に相当している。国債調達にあたって資金を提供した

側(資金運用者)にとってみればどちらの方式で返してもらっても同じこと

(等価)である。

わが国の長期金利はバブル崩壊後の 1990年代に 7%台から 1%台へと大幅

に低下した。日銀が短期金利を低めに誘導し,ゼロ金利政策を取ったことも

加わって 2000年代初頭は歴史的な低金利水準にある。10物国債の発行利回

りは 1%台前半に落ち込んだ。このため表面利率も 1%台半ばの 1.5%をはさ

む程度の率での発行になっている。低金利時代の借入れと返済払込金の関係

を見るために以下に金利 2%のときの借入れと返済の関係を比較すると,金

利 2%と 5%とでは大きな差が出ることがわかる。

年利 2%,35年物の国債を考えて,年額 1万円を年利 2%で積み立てたと

き期間を 35年とすると元利合計は,

(1+r)34+(1+r)33+・・・+(1+r)2+(1+r)+1

=(1-1.0235)/(1-1.02)=49.9945

すなわち,49 万 9,945 円である。この額はいくらの元金(一括払い金)

を 2%複利で 35年間運用したときの金額に相当するかを求めると,元金(一

括払い金)を xとして,

(1+0.02)35x=49.9945

x=24.9986

Page 11: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-11-

すなわち,年利 2%のとき年 1万円ずつ 35年均等払と現金一括払いの 24

万 9,986 円とが等価であることが分かる。したがって,24 万 9,986 円を借

り入れると,年 1万円ずつ 35回分の均等払いでは返済金の払込は総額で 35

万円になり,元本の 1.4倍の返済払込金で済むことになる。

また,借入元本の 24 万 9,986 円に対し年利 2%のみの 4,999 円を毎年支

払い(35回),満期に元本分 24万 9,986円の全額を一括払いする国債償還

方式の返済によるときは,

4,999×35+249,986=174,965+249,986=424,951

総額で 42万 4,951円の支払いで,1.70倍の返済になる。

年利 2%のとき年 1万円ずつの均等払 35年と現金一括払いの 24万 9,986

円とが等価であることは 35 年の 1 万円の流列を年利 2%で割り引くことに

よっても確認できる。

{1/(1+0.02)} {1+1/(1+0.02)+1/(1+0.02)2+1/(1+0.02)3+・・・+1/(1+0.02)34}

={1-1/(1+0.02)35}/0.02=249,986

すなわち,現在値は 24万 9,986円である。以上の数値例で,同じ 1万円

の 35年間の流列でも金利 2%では現在値 24万 9986円,金利 5%では 16万

3742 円と差がつき,この差は年数が増すに従って開くのであるから,国債

残高の負担の評価に金利がいかに大きく影響するかが分かる。

Page 12: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-12-

(2)元利均等払方式>

リカードウ(David Ricardo 1772-1823)は「2,000万ポンド借りて金

利 5%のとき年額 100 万ポンドを永久に払うことと,年額 120 万ポンドを

45年間支払うこととは同じである」と述べている。5 この文章はリカード

ウの公債論の紹介にしばしば引用される箇所である。6

借入れの返済には元利均等払の方式と,満期一括償還方式がある。満期一

括償還方式は借入れの金利分だけを年々支払って元金分は満期日に一括支

払う方式である。公債は通常,満期一括償還方式である。元金償還の準備に

は前もって減債基金に資金を別途積み立てるが,その間の運用益も元本返済

に充てることができる。

いま,利子率 5%で年々120 万ポンドずつを支払うというこのケースを元

利均等払い方式によって計算するとリカードウのいう 45 年ではなくて 37

年で即金の 2,000万ポンドと等価になる。

表 2 は年々の 120 万ポンドの元利金等払の流列について各年次の計数を

示したものである。表の第 1 列目は支払い回数である。第 2 列目は利子率

0.05の複利計算に関係して 1.05の n乗の値を掲げてある。すなわち,1.05

の 2乗は 1.1025,1.05の 3乗は 1.15763のように下段方向に 1.05の 45乗

は 8.98501となるところまで示している。

第3列第1回目支払いの行は元利金等払いの初回の120万ポンドである。

その下段の 246万ポンドは前年残高の 120万ポンドを 1年間複利運用した

結果としての 1.05倍の 126万ポンドと第 2回目の支払いの 120万ポンドの

和である。以下同様に前年残高の 1.05倍の数値に新たに 120万ポンドを加

えて下段の翌年の数値となる。この第 3 列第 n 回目支払いの行の数値は n

年間の積立て運用したときの元利合計であるが,これは 1 回目の 120 万ポ

ンドの支払を初項 aとし公比 rを 1.05とする第 n番目までの等比級数の和 5 David Ricardo,“Funding System”1820, 玉野井芳郎監訳 磯村隆文訳「公債制度論」(『エンサイクロペディア・ブリタニカの第四,五および六版への補巻』中の論文,1820年)『リカードウ全集 Ⅳ』,後期論文集 1815-1823,p.227,雄松堂書店 1970.

6 例えば,富田俊基著『累積国債のつけを誰が払うのか』東洋経済,1999年,p.79.

Page 13: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-13-

表.2 借入2,000万ボンド,年120万ポンドの均等払いのケース第2列

金利5% 流列の現在値

(1+0.05)n 120(1-1.05n)/(-0.05)

A 120/A

期末残高 万ポンド 万ポンド 万ポンド 万ポンド

1 1.05000 120.0 2,100.0 114.3 114.32 1.10250 246.0 2,205.0 108.8 223.13 1.15763 378.3 2,315.3 103.7 326.84 1.21551 517.2 2,431.0 98.7 425.55 1.27628 663.1 2,552.6 94.0 519.56 1.34010 816.2 2,680.2 89.5 609.17 1.40710 977.0 2,814.2 85.3 694.48 1.47746 1,145.9 2,954.9 81.2 775.69 1.55133 1,323.2 3,102.7 77.4 852.910 1.62889 1,509.3 3,257.8 73.7 926.611 1.71034 1,704.8 3,420.7 70.2 996.812 1.79586 1,910.1 3,591.7 66.8 1,063.613 1.88565 2,125.6 3,771.3 63.6 1,127.214 1.97993 2,351.8 3,959.9 60.6 1,187.815 2.07893 2,589.4 4,157.9 57.7 1,245.616 2.18287 2,838.9 4,365.7 55.0 1,300.517 2.29202 3,100.8 4,584.0 52.4 1,352.918 2.40662 3,375.9 4,813.2 49.9 1,402.819 2.52695 3,664.7 5,053.9 47.5 1,450.220 2.65330 3,967.9 5,306.6 45.2 1,495.521 2.78596 4,286.3 5,571.9 43.1 1,538.522 2.92526 4,620.6 5,850.5 41.0 1,579.623 3.07152 4,971.7 6,143.0 39.1 1,618.624 3.22510 5,340.2 6,450.2 37.2 1,655.825 3.38635 5,727.3 6,772.7 35.4 1,691.326 3.55567 6,133.6 7,111.3 33.7 1,725.027 3.73346 6,560.3 7,466.9 32.1 1,757.228 3.92013 7,008.3 7,840.3 30.6 1,787.829 4.11614 7,478.7 8,232.3 29.2 1,816.930 4.32194 7,972.7 8,643.9 27.8 1,844.731 4.53804 8,491.3 9,076.1 26.4 1,871.132 4.76494 9,035.9 9,529.9 25.2 1,896.333 5.00319 9,607.7 10,006.4 24.0 1,920.334 5.25335 10,208.0 10,506.7 22.8 1,943.135 5.51602 10,838.4 11,032.0 21.8 1,964.936 5.79182 11,500.4 11,583.6 20.7 1,985.637 6.08141 12,195.4 12,162.8 19.7 2,005.438 6.38548 12,925.1 12,771.0 計 2,005.4 2,024.139 6.70475 13,691.4 13,409.5 2,042.040 7.03999 14,496.0 14,080.0 2,059.141 7.39199 15,340.8 14,784.0 2,075.342 7.76159 16,227.8 15,523.2 2,090.843 8.14967 17,159.2 16,299.3 2,105.544 8.55715 18,137.2 17,114.3 2,119.545 8.98501 19,164.0 17,970.0 2,132.9

n

第3列

114.3(1-1/1.05n)×21

第6列

B/A

ポンドの現在値

第1列

運用元利合計

B

n年後の120期末払い

回数

第5列

借入元本×複利

2000×A

第4列

Page 14: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-14-

表.3 借入2,000万ボンド,年120万ポンドの均等払(債務残高減少の過程)

期首払い 期首国債残高 利払い(5%) 減債繰入額 期末国債残高

回数 0.05A 120-0.05A 1.05A-120A B A-B万ポンド 万ポンド 万ポンド 万ポンド

1 2,000.0 100.0 20.0 1,980.02 1,980.0 99.0 21.0 1,959.03 1,959.0 98.0 22.1 1,937.04 1,937.0 96.8 23.2 1,913.85 1,913.8 95.7 24.3 1,889.56 1,889.5 94.5 25.5 1,864.07 1,864.0 93.2 26.8 1,837.28 1,837.2 91.9 28.1 1,809.09 1,809.0 90.5 29.5 1,779.510 1,779.5 89.0 31.0 1,748.411 1,748.4 87.4 32.6 1,715.912 1,715.9 85.8 34.2 1,681.713 1,681.7 84.1 35.9 1,645.714 1,645.7 82.3 37.7 1,608.015 1,608.0 80.4 39.6 1,568.416 1,568.4 78.4 41.6 1,526.917 1,526.9 76.3 43.7 1,483.218 1,483.2 74.2 45.8 1,437.419 1,437.4 71.9 48.1 1,389.220 1,389.2 69.5 50.5 1,338.721 1,338.7 66.9 53.1 1,285.622 1,285.6 64.3 55.7 1,229.923 1,229.9 61.5 58.5 1,171.424 1,171.4 58.6 61.4 1,110.025 1,110.0 55.5 64.5 1,045.526 1,045.5 52.3 67.7 977.727 977.7 48.9 71.1 906.628 906.6 45.3 74.7 831.929 831.9 41.6 78.4 753.530 753.5 37.7 82.3 671.231 671.2 33.6 86.4 584.832 584.8 29.2 90.8 494.033 494.0 24.7 95.3 398.734 398.7 19.9 100.1 298.735 298.7 14.9 105.1 193.636 193.6 9.7 110.3 83.337 83.3 4.2 115.8 -32.638 2407.437 2,032.639404142434445

Page 15: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-15-

になっている。すなわち,a(1-rn)/(1-r)によって求められる。

第 4列目は借入れ元本 2000万ポンドと第 2列目の計数(複利運用)の積

である。すなわち,第 4列 1回目支払いの行の 2,100万ポンドは借入れ元本

の 2,000万ポンドに複利の 1.05を乗じて得られる。第 4列第 2回目支払い

の行の 2,205 万ポンドは 2,000 万ポンドに第 2 列 2 回目支払い行の複利

1.1025 を乗じて得られる。以下同様に第 4 列第 45 回目支払いの行の

17,970.0ポンドまで示されている。2,000万ポンドをそのまま複利で n年間

運用したときの値である。

第 5列目は第 n回目に支払われる 120万ポンドについて第 1回目支払い

年の期首を現在時点として評価したときの現在値である。この値は 120万ポ

ンドを第 3列目の同じ行の数値(1.05n)で除して得られる。すなわち 1年

目期末の 120万ポンドの現在価値は 114.286万ポンド(120万ポンドを 1.05

で除す)であり,2年目期末に支払われる 120万ポンドの現在価値は 108.844

万ポンド(120万ポンドを 1.1025で除す)である。以下同様に第 5列第 n

回目支払いの行は n年目期末の 120万ポンドの現在価値が 120/1.05n万ポ

ンドであることを示している。また,第 37 回目支払いの行は 37 年目期末

の 120万ポンドの現在価値が 19.732万ポンド(120万ポンドを第 2列第 37

回目支払いの行の 6.08141で除す)であることを示している。

第 6列目は年々120万ポンドずつ支払いの第 n回目までの流列の現在値で

ある。これは初項を 114.3(=120/1.05)とし公比を 1/1.05とする等比級数の和

になるから,第 6 列第 n 回目支払いの行までの流列の現在値は 114.3(1-

1/1.05n)/(1-1/1.05)によって得られる。

また,第 6列目は第 3列目の支払い回数の各行ごとの計数を第 2列目の一

段上の行の計数で除すことによって算出することができる。すなわち,第 6

列第 1回目支払いの行は 234.286万ポンドであるが,これは第 3列第 2回

目支払いの行の 246.0万ポンドを第 2列第 1回目支払いの行の 1.05で除し

て得られる。次の,第 6 列第 2 回目支払いの行の 343.128 万ポンドは第 3

列第 3 回目支払いの行の 378.3 万ポンドを第 2 列第 2 回目支払いの行の

Page 16: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-16-

1.1025 で除して得られる。以下同様に第 6 列第 37 回目支払いの行の

2105.628万ポンドは第 3列第 37回目支払いの行の 12,195.4万ポンドを第

2列第 36回目支払いの行の 5.79182 で除して得られる。

さらに,第 6列は第 5列の計数の累計であって,第 6列第 n行目の計数

に n年後の 120万ポンドの現在値を加えた和になっている。第 6列第 n行

目の計数に第 5列の同一行の数値を加えると第 6列第 n+1行目の数値が算

出される関係になっている。

以上,表.2から第 37回目支払の行で,第 3列の値(12,194.5万ポンド)

と第 4列の値(1,2162.8万ポンド)の大小が入れ替わることが分かる。第 3

列の値は年々の 120 万ポンドを積立運用したときの元利合計で,第 4 列は

借入れ元本を複利運用したとしたときの値であるから第4列の方が第1回目

支払の行から大きい値をとって出発するのであるが,この第 37回目支払の

行で大小が入れ替わり第 3列の値の方が大きくなる。

同時に,この行の第 6列の値は 2,005.4万ポンドである。すなわち,年々

の 120万ポンドをそれぞれの利子率で割り引いた 37個の現在値の合計であ

るが,流列の現在値がこの 37回目で借入れ額の 2,000万ポンドを超えるこ

とが分かる。リカードウの表現では「2,000 万ポンド借りて金利 5%のとき

年額 100万ポンド永久に払うことと,年額 120万ポンドを 45年間支払うこ

ととは同じである」となっているが,正しくは「37年間支払うことと同じ」

とすべきところだろう。

なお,借入れの 2,000万ポンドに対し 20ポンド(1%)の減債繰り入れを

行って債務残高を減少させる方式で計算を試みるならば 表.3 のようにな

り,やはり 37年で債務を完済することが示される。

表.3第 1列は支払い回数である。毎年,均等の 120万ポンドの支払いが

期末に行われるものとする。第 2列は各期首の国債残高(A)である。第 3

列目は利払い額で国債残高に 5%(=0.05)を乗じたものである。第 4列は減債

のための繰入額で,120ポンド-0.05Aで算出される。第 1行目では均等払

い 120万ポンドのうち 100万ポンドは支払利息であるから残りの 20万ポン

Page 17: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-17-

ド(借入 2,000万ポンドの 1%)が減債に充てられる。第 5列は期末国債残高

である。20万ポンドの減債により期首に 2,000万ポンドあった残高は期末に

は 1,980 万ポンドに減少する。この 1,980 万ポンドは翌年の期首国債残高に

なる。残高が逓減すると支払利子の減少分(解放利子)が減債に繰り入れら

れから,減債繰入額が逓増して年々期末国債残高が逓減していくことになる。

このようにして 37回(年)の支払いで期末国債残高はマイナスに転換し,

償還は終了する。同時に第 4 列第 37 行の減債繰入額の合計(2,032.6 万ポ

ンド)が借入額の 2,000万ポンドを超えたことが分かる。以上により「2,000

万ポンド借りて金利 5%のとき年額 100 万ポンド永久に払うことと,年額

120万ポンドを 37年間支払うこととは同じである」ことの検算ができた。

しかし,リカードウが「年額 100 万ポンド永久に払うことと,年額 120

万ポンドを 45年間支払うこととは同じ」というときの文脈は「減債基金」

の叙述のなかでの表現であり,1回限りの借入れについての返済を指すので

はなく,20年の戦争の間,毎年 2000万ポンドの借入れが繰り返されたとき

の減債を想定しているのかもしれない。その場合は 45年が完済の期間にな

る。7 ピットの減債基金は年 1%の減債で 45年完済という枠組みであった。

(3)リカードウ減債基金論の枠組み

リカードウは 1820年に著した「公債制度論」のなかで数値例を設けて戦

費調達のための減債基金制度を検討した。この時期のイギリスは 1815 年に

ナポレオン戦争を終えており,巨額の国債が累積していた。国債残高は国民

所得の 3倍とも GDP の 2倍以上ともされる。また,国債利払い費は 1821

年で歳出の 55%,経済規模の約 10%の水準に達していた(富田 2006 年

p.165)。

ナポレオン戦争にいたる 18世紀のイギリスは戦争が多く 100年間のうち

の大半の期間で大きな戦争にかかわっていた。その基盤の上に 19世紀には

7 ただし,そのときはリカードウ減債基金の毎年 100 万ポンドの歳入超過という条件ははずすことになる。

Page 18: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-18-

ヴィクトリア朝時代の大英帝国黄金期を迎えることになる。このため戦費調

達についての議会の関心は高く,早くから国債制度の発達したイギリスでは

ウォルポールの減債基金(1717 年創設)を経てピット(William Pitt the

Younger)の減債基金(1786年)の機構を維持していた。

しかし,巨額の国債累積残高を抱えたナポレオン戦争後のこの時期に

1828 年,減債基金制度は廃止される。リカードウは減債基金制度をどのよ

うに検討し,また,減債基金制度の廃止に向けて論陣を張ったとされる政治

家グレンヴィル(Grenville,W.)はどのように考えたのだろうか。

リカードウの検討した設例の枠組みは当時のイギリスの財政状況とピッ

トの減債基金をほぼ踏襲したものになっている。すなわち,平時の歳入は

4,100万ポンド,歳出は 4,000万ポンドで歳入超過額が毎年 100万ポンドと

する。戦争は 20年続くものとし,戦争が起こるとその間は各年 2,000万ポ

ンドの戦費が追加で借入れ調達される。金利は 5%に固定されている。2,000

万ポンドの各年の国債増加に対する減債基金として 20万ポンド(年々の国

債発行額の 1%)が租税で調達される。

リカードウは最初の 5年間までについて二通りの計算している。すなわち,

余剰金が発生した分だけ次年度の国債調達を減額募集する方式と,通常の減

債基金による方式である。いま,償還の終了する 41年後まで同じ条件で延

長し計算したものが表.5と表.4である。なお,リカードウの「公債制度

論」(磯村訳 1970年)における「公債」の用語はここでは便宜的に「国債」

と読み替えて表示する。

この条件のもとで,一回の 2,000 万ドル借入れ 1 年分につき 100 万ポン

ド(5%)の利払いと 20 万ポンド(1%)の減債分が国民の税負担になる。

戦争 2 年目には 2 回目の 2,000 万ドル借入れが行われ,これに対する 100

万ポンド(5%)の利払いと 20 万ポンド(1%)の減債分の支出が必要にな

る。既に前年借り入れた分は 2年目に入っていて 2年目分の利払いと減債分

の計が 120 万ポンドと確定しているのだから,これを加算して 2 年目の利

払いと減債分の負担は計 240万ポンド(表.5の 2年目の行Dの列)になる。

Page 19: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-19-

表.4 通常の減債基金の方式各年の 国債総額 各年償還額 償還国債総額 償還国債利子 未償還国債 国債費 各年の

国債発行 Aの累計 D+E+0.05I-0.05J Hの累計 0.05×I J-I 利払い+減債 歳入超過A J H I K B D E

ポンド ポンド ポンド ポンド ポンド ポンド ポンド ポンド

1年目 20,000,000 20,000,000 1,000,000 1,000,000 50,000 19,000,000 1,200,000 1,000,0002年目 20,000,000 40,000,000 1,250,000 2,250,000 112,500 37,750,000 2,400,000 1,000,0003年目 20,000,000 60,000,000 1,512,500 3,762,500 188,125 56,237,500 3,600,000 1,000,0004年目 20,000,000 80,000,000 1,788,125 5,550,625 277,531 74,449,375 4,800,000 1,000,0005年目 20,000,000 100,000,000 2,077,531 7,628,156 381,408 92,371,844 6,000,000 1,000,0006年目 20,000,000 120,000,000 2,381,408 10,009,564 500,478 109,990,436 7,200,000 1,000,0007年目 20,000,000 140,000,000 2,700,478 12,710,042 635,502 127,289,958 8,400,000 1,000,0008年目 20,000,000 160,000,000 3,035,502 15,745,544 787,277 144,254,456 9,600,000 1,000,0009年目 20,000,000 180,000,000 3,387,277 19,132,822 956,641 160,867,178 10,800,000 1,000,00010年目 20,000,000 200,000,000 3,756,641 22,889,463 1,144,473 177,110,537 12,000,000 1,000,00011年目 20,000,000 220,000,000 4,144,473 27,033,936 1,351,697 192,966,064 13,200,000 1,000,00012年目 20,000,000 240,000,000 4,551,697 31,585,633 1,579,282 208,414,367 14,400,000 1,000,00013年目 20,000,000 260,000,000 4,979,282 36,564,914 1,828,246 223,435,086 15,600,000 1,000,00014年目 20,000,000 280,000,000 5,428,246 41,993,160 2,099,658 238,006,840 16,800,000 1,000,00015年目 20,000,000 300,000,000 5,899,658 47,892,818 2,394,641 252,107,182 18,000,000 1,000,00016年目 20,000,000 320,000,000 6,394,641 54,287,459 2,714,373 265,712,541 19,200,000 1,000,00017年目 20,000,000 340,000,000 6,914,373 61,201,832 3,060,092 278,798,168 20,400,000 1,000,00018年目 20,000,000 360,000,000 7,460,092 68,661,923 3,433,096 291,338,077 21,600,000 1,000,00019年目 20,000,000 380,000,000 8,033,096 76,695,020 3,834,751 303,304,980 22,800,000 1,000,00020年目 20,000,000 400,000,000 8,634,751 85,329,771 4,266,489 314,670,229 24,000,000 1,000,00021年目 0 400,000,000 9,266,489 94,596,259 4,729,813 305,403,741 24,000,000 1,000,00022年目 0 400,000,000 9,729,813 104,326,072 5,216,304 295,673,928 24,000,000 1,000,00023年目 0 400,000,000 10,216,304 114,542,376 5,727,119 285,457,624 24,000,000 1,000,00024年目 0 400,000,000 10,727,119 125,269,494 6,263,475 274,730,506 24,000,000 1,000,00025年目 0 400,000,000 11,263,475 136,532,969 6,826,648 263,467,031 24,000,000 1,000,00026年目 0 400,000,000 11,826,648 148,359,618 7,417,981 251,640,382 24,000,000 1,000,00027年目 0 400,000,000 12,417,981 160,777,598 8,038,880 239,222,402 24,000,000 1,000,00028年目 0 400,000,000 13,038,880 173,816,478 8,690,824 226,183,522 24,000,000 1,000,00029年目 0 400,000,000 13,690,824 187,507,302 9,375,365 212,492,698 24,000,000 1,000,00030年目 0 400,000,000 14,375,365 201,882,667 10,094,133 198,117,333 24,000,000 1,000,00031年目 0 400,000,000 15,094,133 216,976,801 10,848,840 183,023,199 24,000,000 1,000,00032年目 0 400,000,000 15,848,840 232,825,641 11,641,282 167,174,359 24,000,000 1,000,00033年目 0 400,000,000 16,641,282 249,466,923 12,473,346 150,533,077 24,000,000 1,000,00034年目 0 400,000,000 17,473,346 266,940,269 13,347,013 133,059,731 24,000,000 1,000,00035年目 0 400,000,000 18,347,013 285,287,282 14,264,364 114,712,718 24,000,000 1,000,00036年目 0 400,000,000 19,264,364 304,551,647 15,227,582 95,448,353 24,000,000 1,000,00037年目 0 400,000,000 20,227,582 324,779,229 16,238,961 75,220,771 24,000,000 1,000,00038年目 0 400,000,000 21,238,961 346,018,190 17,300,910 53,981,810 24,000,000 1,000,00039年目 0 400,000,000 22,300,910 368,319,100 18,415,955 31,680,900 24,000,000 1,000,00040年目 0 400,000,000 23,415,955 391,735,055 19,586,753 8,264,945 24,000,000 1,000,00041年目 0 400,000,000 24,586,753 416,321,808 20,816,090 -16,321,808 24,000,000 1,000,000(注) 1 .借入れ2000万ポンドにつき,各年利息100万ポンドと減債分の20ポンドが税負担となる。

2 .金利は5%,戦争は20年続くものとする。3 .年々100万ポンドの歳入超過があるものとする。

(出所) Ricardo(1820),玉野井監訳,磯村訳(1970)『リカードウ全集Ⅳ』,209ページより作成。

Page 20: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-20-

表.5 国債募集額を徐々に減少させる方式国債発行 未償還国債 利子額 国債費 各年の 税負担 減債財源 剰余金

2000万-H Aの累計 0.05×B 利払い+減債 歳入超過 D+E D-C E+GA B C D E F G H

ポンド ポンド ポンド ポンド ポンド ポンド ポンド ポンド1年目 19,000,000 19,000,000 950,000 1,200,000 1,000,000 2,200,000 250,000 1,250,0002年目 18,750,000 37,750,000 1,887,500 2,400,000 1,000,000 3,400,000 512,500 1,512,5003年目 18,487,500 56,237,500 2,811,875 3,600,000 1,000,000 4,600,000 788,125 1,788,1254年目 18,211,875 74,449,375 3,722,469 4,800,000 1,000,000 5,800,000 1,077,531 2,077,5315年目 17,922,469 92,371,844 4,618,592 6,000,000 1,000,000 7,000,000 1,381,408 2,381,4086年目 17,618,592 109,990,436 5,499,522 7,200,000 1,000,000 8,200,000 1,700,478 2,700,4787年目 17,299,522 127,289,958 6,364,498 8,400,000 1,000,000 9,400,000 2,035,502 3,035,5028年目 16,964,498 144,254,456 7,212,723 9,600,000 1,000,000 10,600,000 2,387,277 3,387,2779年目 16,612,723 160,867,178 8,043,359 10,800,000 1,000,000 11,800,000 2,756,641 3,756,64110年目 16,243,359 177,110,537 8,855,527 12,000,000 1,000,000 13,000,000 3,144,473 4,144,47311年目 15,855,527 192,966,064 9,648,303 13,200,000 1,000,000 14,200,000 3,551,697 4,551,69712年目 15,448,303 208,414,367 10,420,718 14,400,000 1,000,000 15,400,000 3,979,282 4,979,28213年目 15,020,718 223,435,086 11,171,754 15,600,000 1,000,000 16,600,000 4,428,246 5,428,24614年目 14,571,754 238,006,840 11,900,342 16,800,000 1,000,000 17,800,000 4,899,658 5,899,65815年目 14,100,342 252,107,182 12,605,359 18,000,000 1,000,000 19,000,000 5,394,641 6,394,64116年目 13,605,359 265,712,541 13,285,627 19,200,000 1,000,000 20,200,000 5,914,373 6,914,37317年目 13,085,627 278,798,168 13,939,908 20,400,000 1,000,000 21,400,000 6,460,092 7,460,09218年目 12,539,908 291,338,077 14,566,904 21,600,000 1,000,000 22,600,000 7,033,096 8,033,09619年目 11,966,904 303,304,980 15,165,249 22,800,000 1,000,000 23,800,000 7,634,751 8,634,75120年目 11,365,249 314,670,229 15,733,511 24,000,000 1,000,000 25,000,000 8,266,489 9,266,48921年目 -9,266,489 305,403,741 15,270,187 24,000,000 1,000,000 25,000,000 8,729,813 9,729,81322年目 -9,729,813 295,673,928 14,783,696 24,000,000 1,000,000 25,000,000 9,216,304 10,216,30423年目 -10,216,304 285,457,624 14,272,881 24,000,000 1,000,000 25,000,000 9,727,119 10,727,11924年目 -10,727,119 274,730,506 13,736,525 24,000,000 1,000,000 25,000,000 10,263,475 11,263,47525年目 -11,263,475 263,467,031 13,173,352 24,000,000 1,000,000 25,000,000 10,826,648 11,826,64826年目 -11,826,648 251,640,382 12,582,019 24,000,000 1,000,000 25,000,000 11,417,981 12,417,98127年目 -12,417,981 239,222,402 11,961,120 24,000,000 1,000,000 25,000,000 12,038,880 13,038,88028年目 -13,038,880 226,183,522 11,309,176 24,000,000 1,000,000 25,000,000 12,690,824 13,690,82429年目 -13,690,824 212,492,698 10,624,635 24,000,000 1,000,000 25,000,000 13,375,365 14,375,36530年目 -14,375,365 198,117,333 9,905,867 24,000,000 1,000,000 25,000,000 14,094,133 15,094,13331年目 -15,094,133 183,023,199 9,151,160 24,000,000 1,000,000 25,000,000 14,848,840 15,848,84032年目 -15,848,840 167,174,359 8,358,718 24,000,000 1,000,000 25,000,000 15,641,282 16,641,28233年目 -16,641,282 150,533,077 7,526,654 24,000,000 1,000,000 25,000,000 16,473,346 17,473,34634年目 -17,473,346 133,059,731 6,652,987 24,000,000 1,000,000 25,000,000 17,347,013 18,347,01335年目 -18,347,013 114,712,718 5,735,636 24,000,000 1,000,000 25,000,000 18,264,364 19,264,36436年目 -19,264,364 95,448,353 4,772,418 24,000,000 1,000,000 25,000,000 19,227,582 20,227,58237年目 -20,227,582 75,220,771 3,761,039 24,000,000 1,000,000 25,000,000 20,238,961 21,238,96138年目 -21,238,961 53,981,810 2,699,090 24,000,000 1,000,000 25,000,000 21,300,910 22,300,91039年目 -22,300,910 31,680,900 1,584,045 24,000,000 1,000,000 25,000,000 22,415,955 23,415,95540年目 -23,415,955 8,264,945 413,247 24,000,000 1,000,000 25,000,000 23,586,753 24,586,75341年目 -24,586,753 -16,321,808 -816,090 24,000,000 1,000,000 25,000,000 24,816,090 25,816,090(注) 1 .余剰金の額だけ次年度国債募集を減額する方式

2 .金利は5%,戦争は20年続くものとする。3 .年々100万ポンドの歳入超過があるものとする。

(出所) Ricardo(1820),玉野井監訳,磯村訳(1970)『リカードウ全集Ⅳ』,209ページより作成。

Page 21: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-21-

このようにして 10 年目には 1,200 万ポンド,戦争の終わる 20 年目には

2,400 万ポンドの利払いと減債ための税負担が必要になる。年税収は 4,100

万ポンドのままで,100万ポンドの余剰を出すように予算を組むという前提

では 20 年目の国債利払い費(2,000 万ポンド)が税収の約半分を占め,減

債分(400万ポンド+歳入超過 100万ポンド)を含めると国債費を除く政府

サービスの供給は平時の約 40%の水準まで落ち込む。国民の負担は大きく,

財政は確実に硬直化する。

表.4は前年度の余剰分だけ次年度の国債募集額を減らす方式である。こ

の方式によるときは 20年目までの国債募集額の総額を通常方式の 4億ポン

ドに比べて 3億 1467万 0299ポンドまで減らすことができる。この方式の

方が戦時に国債の大量売り出しをしながら比較的少量の国債の買い操作を

行なう通常方式よりも経済的である。

戦争が終わる 21 年目からは減債が始まる。この条件では 41 年目に未償

還国債残高がマイナスになり,償還が終了する。いずれの方式によっても各

年の未償還国債総額(表.4,表.5ともに Bの列の計数)は同額で変わり

はない。戦費借り入れの累計は 20年間で 4億ポンドである。20年目の段階

で未償還国債残高は 3億 1467万 229ポンドであり,この額を次の 20年間

で返済していくことになる。ちなみに,イギリスの 1803年 2月の国債総額

は 4億 8057万 2470ポンドであった。

20 年目を超えてからは新規借り入れの増加はないが,利払いと減債のた

めの税負担はその後も毎年 2400 万ポンドずつが必要で,完済までの 40 年

間では 7億 7200万ポンドに及ぶ。

減債基金は国債を計画的に返済をしようとするものであるが,設例の計算

結果は絶望的である。減債のために税収入の半分以上を国債費が占める状況

が 20 年間の戦争が終了した後も,さらに 20 年の長期にわたって延々と続

くため,税負担が大きすぎるのである。これはリカードウの設例が現実離れ

しているわけではなく当時の金利の 5%をそのまま採用したことによるとこ

ろが大きいだろう。ちなみに,イギリスの 1800 年から 1815 年の間のコン

Page 22: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-22-

ソルの平均金利は 4.8%であった。

そしてリカードウは財産税による政府債務の解消を提案するのである。8

当時の利払い費は歳出の半分以上に達していた。リカードウの「公債論」の

8年後の 1928年にはピットの減債基金は廃止された。9 減債基金が廃止さ

れても減債や償還が行われなくなったわけではない。19 世紀後半のイギリ

スは大きな戦争がなく,金利の低下の中での低利借換えや経済成長を背景に

確実に国債の負担を減らし,ナポレオン戦争直後の 1815 年に GDP 比で

210%あった国債残高を第一次対戦直前の 2014 年には 43%まで低下させ

たのである。

3.グレンヴィルの減債基金廃止論

(1)年利費用と借換え

減債基金の廃止には政治家グレンヴィル(Grenville,W.)の影響があっ

たとされる。グレンヴィルは小冊子“Essay on the Supposed Advantages of a Sinking Fund ”(1828)において減債基金の無用論を展開した。

グレンヴィルの国債問題の核心は「元本の償還ではなくて年利費用の削減

である」という立場から国債の累積を論ずるところにある。リカードウの数

値例でも 20年間で 4億ポンドを借りて,返す方は 40年間かかり,5%の利

子と元本に計 7億 7200万ポンドを支払う計算であるから,年利費用が大き

な問題であることは分かる。

そして,「国債は一定利率による貨幣の借入れではなくて,国が貨幣提供

者に年金を販売すること」と見るのである。国債の引き受けを年金証書の購

入と見るとそれは商業ベースの等価交換であって,借りたものは返さねばな

らないという私有財産制度における貸借の元本返済義務の感覚は弱まる。

8 E. L. ハーグリーヴス 1930, (一ノ瀬,斉藤,西野訳『イギリス国債史』1987年 p.143)「リカードウ自身の解決法の特徴は一般財産税計画にあった。」

9 E. L. ハーグリーヴス 1930, 前掲邦訳『イギリス国債史』1987 p.140.

Page 23: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-23-

「減債基金は経常収入が永続的に経常支出を超過するという条件の下での

み有効に機能する」10という。マクロ経済学的な総需要分析の立場からは正

論である。当時はマクロ経済学的な総需要管理政策というまとまった考え方

があったわけではないが,好況期にあって国債の償還があってすぐにその受

取金の次の運用先が見つかるという条件の下ではこのことは妥当するだろ

う。しかし,減債基金は好況期・不況期にかかわらず人為的誘導により年次

計画にしたがって国債を償還するのであるから,等比級数や代数学のルール

によって社会の利害を調整することになる。確立した理論や尺度があるわけ

ではなく,人為的誘導は自由経済原則に反する。償還の時期がデフレに当た

ると受け取る側は運用先に困ることになる。政府もデフレ期にわざわざ緊縮

予算を組んで減債のための剰余金を出さねばならず,デフレの深化を進めて

しまうことになる。

もともと,減債基金は償還と同時に,他方で公債を増加させるという矛盾

をもつものである。グレンヴィルは,剰余金による償還は別として,国債を

新たな借入れで返したり,借換えたりするのは意味がないという。また,減

債基金は課税で徴収した巨額の償還原資でもって巨額の国債を買い戻すこ

とであり,輪は大きくなって同じ中心点のまわりを回転し,規模を拡大して

等価物を交換していることになる,そして国債の買戻しは自由競争市場にお

いて行われるから,基金によるすべての活動は単なる等価物の交換であって

同量価値の相互移転になる,すなわち借換えに伴う追加費用や追加労働は社

会的な損失であって,ここから実質的な利益を引き出すことは不可能であり,

借換えは無効で有害であるという。

(2)年金証書の購入と国債

年金は終身ないし一定の期間について等額の給付が約束されている。保有

者が年々一定率による貨幣を受け取るという意味では年金も国債も同じに

10 Grenville, W., “Essay on the Supposed Advantages of a Sinking Fund,” 1828 p.6.

Page 24: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-24-

なる。グレンヴィルは「国債発行とは償還を約束した上での,一定利率によ

る貨幣の借入れではない。国が貨幣提供者に年金を販売することである」と

いう。年金と見る限り等価交換であって,年金という金融商品の売買である。

借入れではないのとしたら償還に迫られることはない。そして,「国債はし

ばしば国債証書の名目量から成るといわれるが,じつは,この国債証書によ

って支払いが保証される年々の利払い金から構成されるのである」。だから

国債問題の核心は「元本償還ではなくて年利費用の削減である」としている。

国債保有者にとって国債に価値があるのは受け取り利子というリターンが

あることと,もうひとつは安く購入した国債が高く売れることで譲渡益を取

得できるときである。

資産価値の保存を望む立場からは資産を債券(年金証書を含む)でもつか

株式でもつかは常に資産選択の問題である。社債と株式は会計上の扱いが異

なる。社債の支払利子は事業経費に算入されるが,株式の配当金支払いは事

業利益(所得)の分配である。しかし,財産保全や資産運用を目的とする資

金供給の側の資産家の立場からすれば社債と株式はいずれも選択可能な有

価証券であって,取引者が売買時点でどちらを有利と判断するかの選択肢の

問題である。株式で運用したときのリターンは定期的な配当金の受け取りで

あって株式額面の返還はない。社債で運用したときのリターンは定期的な確

定利子の受け取りであるが,株式とは違って債券額面の償還満期日が設定さ

れている。事業資金の調達を社債発行によるか株式によるかは資金需要者で

ある企業の側にとっても同様に選択肢の問題である。

国債は国が発行する償還期限つきの確定利付き債券であるが,この性格は

民間会社等が発行する社債も同じである。資金需要者と資金供給者が取引す

る資本市場では,供給側にとっては株式も社債も,公債も同じレベルでの資

金運用上の選択肢である。資産運用者はひとつの選択肢から資金を引揚げて

他の選択肢に乗り換えることができるという意味で,いずれも互いに転換可

能な有価証券である。

株式は出資金であるから保有者に返還するという感覚は会社清算のとき

Page 25: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-25-

以外はまずない。国債の場合は借換えが続くと,事実上元本の返済がない状

態が継続するということになるのだから,資金運用者にとっては国債も株式

も同じく元本の戻らない金融資産になる。国債を株に近い金融商品と見るな

らば,国債のリターンは受取り利子という現金給付であり,株式のリターン

は受取り配当という現金給付である。イギリスのコンソルは永久債であるし,

政府が都合のつくときに返すという無期債もある。

国債を株に近い金融商品と見ることは国債購入を国に対する出資金支払

いのようなものとみなすことになる。株に返済はないのだから,国債購入を

出資と見るならば国債も必ずしも返済しなければならないという性格のも

のではなくなる。資金運用者が国債への投下資金の回収を必要とするときは

保有国債を時価で他人に売却譲渡することになるが,これは,単なる資産の

オーナー・チェンジ(資産の名義人の変更)であって株式保有者が株を売却

譲渡するのと同じになる。

4.低金利下の国債累積

(1)国債償還の恐怖と資産価値の保存

バブル崩壊後のわが国経済は長期のデフレによる税収入不足から財政赤

字が積み上がり,ゼロ金利策など歴史に例を見ない金融財政運営が続いてい

る。ゼロ金利策解除(2006年 7月 14日)の後も金利は上昇の気配を見せて

いない。平成 19年度末には普通国債残高だけで国税収入額(一般会計予算

53兆円)の約 10年分を超える見込みであり,その信用力を不安視する議論

は多い。一方,株価の下落により投資ファンドや年金基金の運用益がマイナ

スに転落するケースが続発した。超低金利時代の中で資産の運用に疲れた

人々からは,とにかく安全でありさえすれば「利子はいらない」から預かっ

て欲しいとする声がある。また,「銀行は国債でも買わなければ生きていけ

ない,それ以外に方法がない」として金融会社は国債を買い向かった。低金

利の下における金余りの状況を表す言葉である。

Page 26: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-26-

早い時代から国債調達が制度化されたイギリスで,近代的な国債制度が整

ってくるのは名誉革命(1688 年)以後のことである。それまでの国債は戦

費調達のたびごとに,そのつど特定の物品税を担保にして発行されてきたが,

1717年にはウォルポール(Walpole,R.首相在任は 1721-1742年)がそれら

を整理するとともに減債基金を創設した。しかし,この減債基金は間もなく

流用が多くなり,基金が侵犯され形骸化して 1787 年に公式に廃止された。

1786年にはピット(小)の減債基金が始まるが,これも約 40年続いて 1829

年に廃止されている。

減債基金の流用が最初に始まったのは 1722年とされるが,ウォルポール

は減債基金の経常費転用政策への転換について 1733年に「債権者の態度は

完全に変化した」として,「いまや公債権者間の唯一の競争は,だれもが返

済の過程で最後の一人になりたがるということなのである」と述べている。11

また,1735年には「減債基金は成熟期を迎え,その額は年間優に 120万ポ

ンドを超える状況となった。この事実は公債所有者にとっては脅威であ

る。・・・低利が定着し,市場価格は額面価格を上回っている。・・・早々に

元本の償還を受けようとは思わない。減債基金が作動すれば,・・・渋々貨

幣を受け取らねばならない。」と述べている。12 すなわち,低金利の状況

では債権者が資金を返してもらいたがらないから国債を返す努力は要らな

いという論理である。

表面利率 5%ならば 15年で元をとる。15年が経って元本分に相当する利

息を受け取ったら国債保有者の側に損はない。償還を望んでいるのは国債費

負担が重い国家財政の側である。償還するのは返す側の都合であって,貯金

をしたい人々の都合ではない。貯金者の立場からすると貯金は預かっていて

もらいたいであって必要なときだけ返してもらいたいものなのである。その

間に目減りがあっても仕方がないし,できれば運用で増やしてもらいたいと

いう願望がある。

11 E.L.ハーグリーヴズ 1930(一ノ瀬他訳『イギリス国債史』1987, p.44) 12 仙田左千夫著『イギリス減債基金制度の研究』1998, p.30.

Page 27: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-27-

資産の運用は借りた金は返すという立場ではない。元本割れというマイナ

スの運用は必ず起きる。借りたものは必ず返すというのは私有財産制度の民

法上の立場に立っている。資本市場の取引では元本を返さなければならない

債券市場と,返すことのない株式市場とが並存していることになる。

いま,ある年金資産があってこれを保有していると年額 1万円ずつ 35年

間にわたって計 35万円を受け取れるとする。現時点でこれを一括受け取り

にすると 16.4万円になる。この 16.4 万円がこの資産を現在売買するとした

ときの時価である。

こうした関係は資産の種類に関係ない。収益が国債からのものであろうと

年金や株式配当からのものであろうと社債利子等の金融資産からのもので

あろうと,また物的資産からの収益であっても同様である。将来受け取れる

収益はすべて,利子率で割り引くことによって現在価値に換算することがで

きる。

資産運用者の立場からは資産を保全するとともに,できれば運用益大きく

するように努めるが,資産家には必ず運用リスクの恐怖がつきまとう。運用

にマイナスが出るときは目減りをできるだけ小さくすることに努めるが,国

債はもっとも信用の高い金融資産であるから,他に運用先がないときは国債

を買い向かうしかない。資金の提供者は国債の保有を,年々貨幣を受領でき

る年金証書の保有と同等と受け取る。国債が累積し巨額の利払い費が定着し

ている社会では国は元本償還よりも利払い費に大きく左右される。国債利払

い費が受け取る側にとっては年金受領額である。したがって,利払いの削減

は年金額の削減である。国がこの年金額を削減するためには年利を極力抑え

る政策が必要である。元本償還よりも金利抑制が優先される必要がある。

(2)国債累積と所得移転

農業の時代を支配した社会体制は封建制度であった。中世の封建領主(君

主)は領民に土地を与える代わりにその土地の年々の収益の一定額を上納さ

せる約束をしたという。いわゆる年貢である。領主が戦費調達等の目的でそ

Page 28: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-28-

の土地を担保に借り入れを行い債券を発行したら,領民が納める年貢は債券

保有者が受け取ることになる。この場合の債券はいわゆる年金型の債務証書

である。これが議会の了承を得るようになると債券は国債になる。この意味

では君主が債務を抱えたときの年貢と近代国家の国債とは同じ性格のもの

であることが分かる。

国債の受取り利息は国債保有者が納税者の年々の将来所得(フロー)の一

部を移転させ受領する仕組みである。 年貢は封建君主が領民の年々の収穫

物(フロー)の一部を移転させ受領する仕組みである。どちらも将来所得(フ

ロー)の移転をあてにしているという意味では同じ性格のものとの見方がで

きる。

累積公債をかかえる現代社会の人々にとって現代世代と将来世代との差

は国債利払い費に関するかぎり,封建時代において「4公 6民」の世に生ま

れるか,「5 公 5 民」の世に生まれるかとういうような年々のフロー生産物

の取り分の差に類似している。

「4 公 6 民」も「5 公 5 民」もそれぞれ社会の所得分配の枠組みである。

「公」を国債保有者,「民」を納税者国民大衆と読み替えると,パイの大き

さが同じならば国債累積額の積み上げは「4公 6民」の社会から「5公 5民」

の枠組みの方向へ社会が移行することを意味する。「公」にとって年貢の請

求権が増大する社会である。

金利一定として,国債累積率が低下する場合には移転所得(年貢)請求権

の増大のスピードは遅くなる。そして国債発行がゼロの場合は枠組みの移行

は停止する。国債の償還が進み減債になるときは移転所得(年貢)の請求権

は減少方向である。

「4公 6民」と「5公 5民」の社会を比べたときに「5公 5民」の社会の

方が総資産の大きい社会といえるわけではなく,さらには貧富の差の激しい

社会の方が総資産の大きい社会というわけでもない。

金利がある水準(例えば 5%)を越えたまま公的債務が積み上がると国債

の保有者と非保有者との間で所得移転が大きくなる。例えば,20 兆円の国

Page 29: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-29-

債が利率 5%で発行され,国債の保有者と非保有者の税負担配分率が累進課

税により7:3であるとすると,国民の年々の利子負担額は1兆円であるが,

うち 0.7 兆円を保有者が負担し,0.3 兆円を非保有者が支払うだろう。0.3

兆円の所得が非保有者から保有者へ移転する。所得が低所得者から富裕者に

移転する逆所得再分配の問題は利払い費が大きくなると表面化するだろう。

(3)老後資金を抱える社会

現在のわが国は一部の富裕者のみが金融資産を保有する時代ではなくな

った。1,500 兆円(2007 年)の家計部門金融資産残高は預貯金と保険・年

金準備金に大きく依存している。13 さらに政府部門の社会保障基金は 240

兆円の資産残高を保有している。家父長制の家族は核家族の時代へ変わり,

さらに核家族から単身世帯への移行も増えた。公的な社会保障の制度整備は

それなりに進んだけれども,公的な社会保障基金の運用自体が長期の積立と

給付をつなぐための年金基金のプールを要し,このプール資金が大規模な金

融資産として運用される。さらに,血縁・地縁のきずなが切れて後ろ楯を失

った個々人は生活に余裕がなくても自己の余命にそなえてこれまで以上に

多くの金融資産(保険・年金準備金)を民間金融機関に保有する努力が必要に

なった。制度的枠組を利用できる水準までたどり着けない人々がどんどん生

み出される一方,公的給付だけでは不安でそれ以上のサービスを求める人も

多いからである。

疾病や老後の保障にかかわる資金は公的なものであれ,私的なものであれ

換金性の高い金融資産で保有されていなければならない。社会保障基金の場

合は資金をどのように運用し,どこにどのようなかたちで貯めておくかは制

度の根幹にかかわるだろう。

人々は若年の労動期に貯金し,老年期にそれを取り崩して福祉や介護サー

13 内閣府経済社会総合研究所編『平成 17年版 国民経済計算年報』によると,金融機関部門を除く 2003 年度末(平成 15年度末)の金融資産残高は 3,004兆 4687億円である。うち家計部門は 1,469兆円で,政府部門の社会保障基金は 241兆円となっている。

Page 30: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-30-

ビスを購入することができる。しかし,社会全体としては将来利用のために

どんなに金融資産を貯めこんでも,実物経済的に福祉や介護のサービスを自

己の将来のために保蔵しておくことは物理的にできない。労働やサービスの

ままでの貯蓄はできない。

現在の若年者が供給する福祉サービスは現在の老年者が購入してくれる

ことで金融資産化され積み立て保有される。現在の若年者が老年者になった

ときはその積み立てた金融資産でもって次世代の若年者から福祉サービス

を購入する。積立方式年金の考え方である。

しかし,社会全体としては年々若干の増減はあるものの,ほぼ同様な生産

体制による総供給を維持して,過去の労働とか将来の負担とかを区別するわ

けではない。年々同様な量および質の福祉サービスが生産されており,国債

の累積とか年金基金の積み立ては生産物の分配の問題である。国債とか年金

証書を購入していれば保有者はより有利な所得分配にあずかれるというこ

とに尽きる。老年者は年金給付という本年の移転所得でもって本年生産の福

祉サービスを購入するのである。いわゆる賦課方式の年金はこのかたちであ

るが,実物経済的にはこれしかない。その際,年金証書は移転所得を受領す

る配給切符の役割を果たす。

国債や年金の金融資産は国民の生産物というパイを分ける際の計算単位

であって全体のパイが大きくなるかどうかには直接的な関係がない。実物経

済的に国債を年金証書の購入と解し,年金を賦課方式で考えるかぎり国債負

担の将来転嫁はありえない。「4 公 6 民」の分配が「5 公 5 民」の世に変る

ということである。国債を持っていない人々の側から見ると移転所得を持っ

ていかれる分だけ相対的に立場が悪くなるために,この分が負担の増加にな

る。負担は現在の債券の保有者から現在の非保有納税者に転嫁され,しかも,

この状態は償還が終わるまで何年も続くことになる。

実物経済では投資がなければ貯蓄も増やすことはできないが,貨幣経済で

はマクロ経済的に資本需要(投資)と資本供給(貯蓄)が一致するから,実

物投資が不足しても通貨性の金融資産を媒介に両者が一致している。株式投

Page 31: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-31-

資や投資信託が投資であるのと同様に通貨および通貨性の預貯金で保有す

ること自体も資金の需要(手持ち現金需要)とされ計算上の投資である。リ

ターン目的の,他人への貸付金が金融資産であるのと同様に通貨は国民の中

央銀行へ対する貸付金である。したがって,実物投資での運用が不足すると

きは金融資産が通貨性預貯金のままだぶついて蓄積することになる。

株式や債券への投資は安く買って高く売ることを狙った行動であるが,狙

いがはずれてリターンがマイナスになることも通常の商取引のうちである。

同様に通貨性預貯金の金融資産価値も変動する。預貯金で資産を保有しても

マイナスリターンのリスクは避けられない。不況で預貯金の運用先(投資)

が細ると資金がだぶつき市場金利が低下する。金利の低下は預貯金利息とい

う金融資産のリターンの減少である。その分,金利による元本の増殖運動は

抑えられる。資金市場がゼロ金利状態に長期に張り付くならば人々は預貯金

資産の喪失を覚悟しつつも,喪失を最小にするように資産選択行動をするし

かない。

(4)通貨価値を維持する努力

管理通貨制度では通貨は金本位制の時代のように通貨が金に裏付けられ

て発行されるわけではない。商業手形の割引のかたちで商取引に裏付けられ

ているわけでもない。通貨は商取引や資産保有のために必要なものであるか

ら,国内的にも対外的にもできるだけ通貨価値の変動が少ないように維持さ

れなければならない。それは通貨の信認を落とさずにどこまで通貨を発行で

きるかの問題である。20年,30年という長期の年金制度や保険制度はその

間の通貨価値の変動がないことを前提にしてなりたっている。また,住宅ロ

ーンも 35 年ものが組まれ,近年では 40 年ものの超長期の国債も発行され

ている。通貨価値の長期的な安定は最優先の政策目標である。

国債累積のリスクや通貨価値の変動を察知して敏感に反応するものの一

つは外国為替相場の動向である。過去の戦争では交戦国は互いに戦勝による

賠償金獲得を裏づけとして国債調達を行い,通貨が発行された。この意味で

Page 32: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-32-

は勝てば通貨価値が維持されるし,負ければ通貨価値は下落した。軍事力は

為替相場の安定に決定的に大きな影響力をもっていた。国防力に次いで外国

為替相場に決定的に影響を及ぼす要因の一つは経済の国際競争力である。国

際競争力が低下し,国内資金の流出が多くなると自国通貨の信認を低下させ

る。最も警戒されねばならないのは為替相場の急落による対外的なデフォル

トである。

19 世紀後半のイギリスは巨額の国債残高,低金利,低成長,物価下落傾

向(デフレ)等の点で現在の 21世紀初頭のわが国バブル後経済の諸条件と

共通している。しかし,これらの条件は為替相場にとってはいずれもマイナ

ス要因である。しかし,当時のイギリスの圧倒的なポンドの安定はそれらの

マイナス要因をカバーして余りあったと見るべきだろう。イギリスは産業革

命を経て世界の工場の地位を確立したが,その後,世界の工場の地位は後進

の大陸やアメリカに移り,やがてサービス業主体の「世界の商店・銀行」へ

と転換する。そして国際決済システム,海運・保険業を支配し,海外投資の

仲介業および植民地経営に成功した。

デフレに対する財政金融政策の一般的な常識は次のとおりである。すなわ

ち,①巨額の国債残高は国債の値崩れを招きやすく高金利につながりやすい,

②物価下落時は債務者損失が発生し国債利払いおよび償還は不利な条件に

陥る,③貨幣数量が大きいと物価が上昇する,④金利を低く誘導すれば投資

が活発化し経済成長に寄与するはずである,⑤国内の低金利は海外への資金

流出を促し為替相場が下落しやすく対外的なデフォルトのリスクが高まる,

という通説である。

しかし,19 世紀後半から第一次大戦直前のイギリスはこうした常識とは

反対の結果を現出している。ポンドの圧倒的強さと安定がこれらの常識をか

く乱する要因として作用したであろう。

これらの点を 21世紀初頭の現在のわが国との対比で見るならば,現在の

わが国は世界最大の債権国であり,国内の超低金利にもかかわらず海外への

資金流失は大きくない。円安方向は定着せず,1ドル=110円台の安定が続

Page 33: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-33-

いている。外貨の購入は連戦連敗の印象が強い。国内企業の資金需要は弱く,

資金は国内に過剰に滞留したまま家計部門のタンス預金になっている。超低

金利下でも資金を新規に借りてくれる事業を見つけにくいのである。

海外の途上国からの安価な製品が流入し,物価下落傾向への圧力として作

用しているためデフレからの脱出ができない。通貨が異常に増発されていて

も石油等特定スポット商品以外での物価上昇はない。大量生産方式の工場は

要素費用(労働)の安価な途上国へ移転し,国内はリストラによる産業転換

が進んでいる。企業はリストラに伴う低賃金化を背景に利益を出しバブルの

崩壊からかろうじて息を吹き返した程度で,GDP は横這いの状態を続けて

いる。

1990年には 6%台だった公定歩合はバブル崩壊に伴い翌 1991年 7月から

引下げが始まり,2001年 9月 19日には 0.1%を記録した。金利の引下げは

バブル期に借り入れた企業の債務の金利負担を軽減する目的であった。その

間 1999年 2月 12日にはゼロ金利政策が導入されるなど超低金利の状態は

つづいている。日銀のゼロ金利政策解除後も金利の上昇気配はみられない。

このため巨額の国債残高にもかかわらず,国債の利払い費は逓減を続け,財

政危機の意識は大きく弱められている。

おわりに

イギリスの例から国債累積の負担については金利の影響が大きいことが

わかる。低金利が続くと低い経済成長率でも新規の国債増発が抑制されれば

長い間には国債の負担は大きく軽減される。

低金利を維持するには通貨を過剰に供給しなければならないが,これには

物価上昇(インフレ)の圧力がないという条件と,国外への資金流出が起き

ないという条件がそろっていなければならない。資金流出が起きないために

は円高傾向が定着している必要があるが,それには経済の国際競争力が強く

なければならない。

Page 34: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

駒沢大学経済学論集 第 39 巻第 3号

-34-

サービスを主体とする産業への転換が進むにつれて,大量生産方式は徐々

に途上国に移転し,時給や日給によらない所得分配方式の採用が増えるよう

になる。労働時間を計算単位とするよりも,付加価値を生産や分配の基準と

して使用する考え方が広がりつつある。いわゆる,知価社会ともいわれる特

許(ライセンス),技術開発,ノウハウ,情報,デザイン,芸術文化等の無

形資産が重要になる経済社会である。

国際社会のなかで経済的優位を維持し続けるためには,付加価値の高い研

究開発部門等に資金投入をシフトさせることかできるような社会を育成し

なければならない。

そして,わが国が発信する成果を購入してくれる市場が育って控えてくれ

ていることが必要である。19 世紀のイギリスではこの役割を世界にまたが

る自国の植民地が果たしてくれた。植民地での成果物が本国を潤したからで

ある。今後のわが国の為替相場の安定は東南アジアやブリックス(BRICs

=ブラジル,ロシア,インド,中国)等の諸国の市場がどれだけわが国の成

果を購入してくれるかにかかっているだろう。

<参考文献>

Dietzel, Carl, Das System der Staatsanleihen im Zusammenhang der Volkswirthschaft betrachtet,1855,池田浩太郎 訳『国民経済との関連よりみたる国債制度』千倉書房,1977年。

Domer, E. D., Essays in the Theory of Economic Growth, Oxford Universiyy Press, 1957(宇野健吾 訳『経済成長の理論』東洋経済新報社,1959年).

Grenville, William, Essay on the Supposed Advantages of a Sinking Fund, second edition, 1828.

Hargreaves, E. L, The National Debt, 1930,一ノ瀬篤/斎藤忠雄/西野宗雄 訳『イギリス国債史』新評論,1987年。

Kindleberger, Charles P., MANIAS, PANICS AND CRASHES, 4th ed. -A History of Financial Crises-,2002,吉野俊彦/八木甫 訳『熱狂・恐慌・崩壊-金融恐慌の歴史-』第 4版,日本経済新聞社,2004年。

Modigiliani, Franco, “Long-run Implications of Alternative Fiscal Policies and the

Page 35: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成

リカードウ減債基金と低金利経済(里中)

-35-

Burden of the National Debt”1961, James M. Fergson, PUBLIC DEBT AND FUTURE GENERATION, p.114, 1964.

Ricard, David,“Fuding System”1820, 玉野井芳郎監訳 磯村隆文 訳「公債制度論」(『エンサイクロペディア・ブリタニカの第四,五および六版への補巻』中の論文),

1820年)『リカードウ全集 Ⅳ』,後期論文集 1815-1823,雄松堂書店 1970年。 Sidney Homer and Richard Sylla, A History of Interest Rates, Fouth edition 2005,

New Jersey: Rutgers University Press. Tvede, Lars, BUSINESS CYCLES, 1998,(ラース・トゥヴェーデ著 赤羽隆夫訳『信用恐慌の謎』ダイヤモンド社,1998年)。 池田浩太郎『公債政策思想の生成と展開』千倉書房,1991年。 奥村洋彦 『現代日本経済論』東洋経済新報社 1999年。 戒田郁夫 『明治前期における日本の国債発行と国債思想』関西大学出版部,2003年。 鈴木俊夫 『英国重商主義公債整理計画と南海会社』中京大学商学研究叢書第 3 巻,中京大学商学会 商学研究叢書編集委員会,1986年。

仙田左千夫『イギリス公債制度発達史論』法律文化社,1976年。 仙田左千夫『十八世紀イギリスの公債発行:公債発行と金融会社』啓文社,1992年。 仙田左千夫『イギリス減債基金制度の研究』法律文化社,1998年。 藤村 通 『明治前期公債政策史研究』大東文化大学東洋研究所,(株)研文社 1977年。 富田俊基 『国債の歴史』東洋経済新報社 2006年。 藤木 裕 「財政赤字とインフレーション-歴史的・理論的整理-」,日本銀行金融

研究所『金融研究』2000年 6月。 米山秀隆 「政府債務累増の帰結-歴史的考察」『研究レポート』No.158,富士通総研(FRI)経済研究所,2003年。

Page 36: リカードウ減債基金と低金利経済repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/29560/rkz039_3...リカードウ減債基金と低金利経済(里中) -3- る。しかし,このマイナス要因をカバーしてなお余りあるイギリスの経済成