icuにおける肝硬変の...
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ICUにおける肝硬変の合併症対策
2016年11月15日慈恵ICU勉強会
中西智博
肝硬変
肝細胞の壊死性炎症と線維化による肝障害
多くの肝硬変患者では無症候性に病期が進行し、
非代償期となるまで症状が出てこないことが多い。
非代償期にはü腹水
ü Sepsis
ü静脈瘤破裂
ü脳症
ü非閉塞性黄疸
解剖学的変化 → 肝機能低下
門脈圧亢進
脾静脈拡張
循環血漿量増大
腹水、肝腎症候群
静脈瘤形成門脈・静脈系側副血行路
静脈瘤破裂
門脈体血管シャント
肝性脳症
肝硬変はこのように一つ一つの病態が複雑に絡み合っている。
経過を簡略化した図肝硬変
門脈圧亢進
脾静脈・末梢血管拡張(静脈瘤)
有効血液量低下ナトリウム貯留心拍出量増加
腹水貯留
腎血管収縮心拍出減少
難治性腹水2型肝腎症候群
腎不全(1型肝腎症候群)
βblocker投与
塩分制限利尿薬投与肝移植検討
腹水穿刺TIPS考慮
利尿剤投与中止血管作動薬肝移植
SBP肝性脳症
肝硬変の外来治療
ü ハイリスク群のスクリーニング
ü 生活様式の問診
ü 胃食道静脈瘤と肝細胞癌
スクリーニング
ü 非選択性β-blockerによる門脈圧
亢進症の治療
ü 脂質異常症があればスタチン
ü NSAIDsとPPI、アミノグリコシド中止
ü 腹水の存在:塩分制限、利尿剤
肝移植検討
ü SBPの一次予防
外来、一般病棟で行う治療
MELDscore
Child(Turcotte)Pugh classification
肝硬変患者に用いられるスコアリング
日本における肝硬変の原因
1
23
ICUにおける肝硬変の合併症
+Nutrition
+ Hepatorenal syndrome
3大合併症
ü腹水
üSBP
ü静脈瘤
ü肝性脳症
ü栄養
ü肝腎症候群
ü腹水
üSBP
ü静脈瘤
ü肝性脳症
ü栄養
ü肝腎症候群
腹水の外来治療
外来でやること
断酒
塩分制限 5gフロセミド40mg +スピロノラクトン100mg(この割合で増量)β-blocker、 ACE-I、 ARB中止、NSAIDs中止
ミドドリン
治療的腹水穿刺
緊満した腹水のある肝硬変患者105人に対して
腹水が完全に抜けきるまで4~6L/dayで治療的穿刺を行った。
Group1:穿刺後にアルブミンを40g投与 vs. Group2:穿刺のみ
Outcome:治療後の腎機能低下の有無および死亡率
アルブミン投与群ではMAP低下がみられた。
GFRは上昇し有意であった。
アルブミン非投与群ではNa値とMAP低下した。
GFRは低下傾向あったが有意ではなかった。また有意にBUN上昇した。
2群を比較すると低Naと腎障害の発生において有意に差がみられた
アルブミンあり アルブミンなし
A:アルブミン(+),合併症(-)
B:アルブミン(-),合併症(-)
C:低Na血症、腎機能障害
D:その他合併症
合併症を起こすと死亡率上昇
→あえて合併症を起こす可能性のある大量腹水穿刺を行う
ことは勧められない
腹水を治療的に何度も抜くことで生存率が改善する
という文献は見つけられなかった。
腹水を抜く必要があれば、4~6L以上の穿刺の際には低Na血症や
腎機能低下を引き起こして死亡率上昇するリスクがあるため
穿刺の際には排液あたり6~8g/Lのアルブミン投与が勧められる。
あえて上記の合併症を生じうる大量の腹水穿刺を繰り返す必要は
ないと考えられる。
TIPS:Transjugular IntrahepaticPortosystemicShunt
Vascularandinterventionalradiologyのホームページhttp://virchicago.com/ より掲載
Participants:肝硬変による難治性腹水を有する患者のRCTのみを
対象にmetaanalysisを行った。
Intervention:TIPS行った群、複数回の治療的腹水穿刺を施行した群
とに分けて研究を行った文献のみ抽出した。
両群間で治療が均等にされている場合には
付加的治療の有無は問わなかった。
Outcome:30日および24ヵ月時点での死亡率、腹水の再貯留、
肝性脳症などの合併症の有無。
TIPSによって30日時点での死亡率改善はなし
TIPSの方がよい 腹水穿刺の方がよい
TIPS群では24ヵ月時点での死亡率に有意差なし
TIPSの方がよい 腹水穿刺の方がよい
TIPS群では12ヵ月後の腹水再貯留が有意に少ない
TIPSの方がよい 腹水穿刺の方がよい
腹水穿刺と比較してTIPS留置群では肝性脳症発症リスクが
有意に高い
TIPSの方がよい 腹水穿刺の方がよい
TIPSは腹水コントロールはいいものの、脳症増加させるため
2nd lineの治療である。
腹水管理のまとめ
Ø4~6L以上の腹水穿刺の際排液あたり6~8g/Lのアルブミン投与。
大量の腹水穿刺を繰り返す治療にエビデンスはない。
ØTIPSは腹水コントロール良好だが、脳症増加させるため
2nd lineの治療。
ここからは、それだけで入室しうる合併症について。
ICUに入室してきた患者にどのような治療を行うのか
をイメージしながらガイドラインを読んでみました。
ü腹水
üSBP
ü静脈瘤
ü肝性脳症
ü栄養
ü肝腎症候群
SBPの診断について
レジデントのための感染症診療マニュアル第2版 青木眞 著
腹水顆粒球≧ 250mm3
Cefotaxime is more effective than is ampicillin-tobramycin in
cirrhotics with severe infections.
1985 May-Jun;5(3):457-62.
SBPをはじめとする重症細菌感染症の肝硬変患者73人を
アミノペニシリン(ABPC)+アミノグリコシド(TOB) vs.セフォタキシム
(CTX)の2群に割り付け前向きに検討した。
CTXの方が3大起因菌をカバーする率が高く (92%vs.98%)
SBPの治癒率が高かった。(56%vs.85%)
CTX群では腎障害がみられなかった。
3大起因菌 :大腸菌、Klebiellaなどの腸内細菌科の菌、連鎖球菌
2005年9月~2007年9月にかけて223人の肝硬変患者にみられた
507の細菌感染症および2010年9月~2011年4月にかけて110人
の患者にみられた162の細菌感染症
有病率、疫学、リスク因子、臨床上の影響について
前向きに検討した。
多剤耐性菌による感染の発生のリスクは、
Ø 院内発症
Ø 近のβラクタム薬使用
Ø 以前に多剤耐性菌が検出されている
場合に高かった。
顆粒球≧ 250/mm3以上の患者で市中感染かつ 近のβラクタム
使用のない患者では経験的抗生剤使用。(iv CTX 2g 8時間おきなど)
顆粒球≧250/mm3以上の患者で院内感染あるいは 近のβラクタ
ム使用がある各病院の感受性検査の結果によって抗生剤を選択。
正常の腹水は細胞数300/mm3程度で単核球優位
2000年1月~2007年12月にかけてスペインの大学病院2施設に
入院した続発性腹膜炎患者24人と、
2001年1月~2004年12月にかけてスペインの大学病院に
SBPの診断で入院した106人の患者について後ろ向きに
比較検討した。
腹痛の症状は続発性腹膜炎の患者で多かった。
続発性腹膜炎患者では腹水の糖が比較的低く
TP、培養陽性率が高く、複数菌が培養される率が高かった。
顆粒球数が250個/mm3未満の患者でも感染兆候(発熱、腹痛など)
のある患者はSBPに準じて経験的抗菌薬治療を行う。
(例えば iv CTX 2g 8時間おきなど)
肝硬変患者の腹水が250個/mm3以上で続発性腹膜炎の疑いが
強いときにはTP, LDH, Glu, Gram染色, CEA, ALPを検査することが
続発性腹膜炎とSBPを鑑別する一助となる。
さらにSBP患者において下記の場合には
ü βラクタムを以前使用した患者
ü 非典型的な感染微生物が検出された患者
ü 治療に対して非典型的な反応を示した患者
治療開始後48時間で腹水細胞数と腹水培養を行い
治療効果判定をする。
1995年11月から1997年9月にかけて大学病院7施設
SBP感染を疑う肝硬変患者126人を
CTX投与群 vs.CTX+Alb投与群
とに割り付け
Alb投与群では治療介入時1.5g/kg と day3に 1g/kg
投与した。
患者背景 治療結果
患者の多くはbil≧ 4.0mg/dL40%以上に腎不全がみられていた
治療介入後、腎障害と院内死亡・3ヵ月死亡はCTX+Alb治療群で有意に少なかった。
SBPまとめ
Ø 顆粒球≧250/mm3以上の患者と顆粒球<250/mm3でも臨床的に
感染が疑わしい患者ではSBPとして治療。
Ø 院内感染、 近のβラクタム使用歴、耐性菌検出歴のある患者
では抗生剤選択に注意する。
Ø 非典型的なSBPには治療効果の確認をする。
Ø 腎機能障害、肝機能障害患者では入院時とday3のアルブミン投与
検討する。
ü腹水
üSBP
ü静脈瘤
ü肝性脳症
ü栄養
ü肝腎症候群
門脈 脾静脈
食道静脈叢
下腸管膜静脈
上腸管膜静脈
体血管シャント
食道静脈瘤
脾腫
https://bedahunmuh.files.wordpress.com/2010/08/intraabdominal-venous-flow-pathway-of-portal-hypertension.jpg
門脈圧の指標 HVPG:HepaticVeinPressureGradient
門脈は腸管からの静脈が集まって
肝臓に流れていく。
肝動脈と比較するとカテーテルでの
到達は容易ではない。
Varixが門脈圧亢進でできるのは有名な話。では門脈圧亢進をどのように証明するのか?
HVPGは肝静脈に挿入したカテーテルのバルーンを膨らませて測定カテーテルの先端にかかる圧 =類洞を通した間接的な門脈圧
Varix
HVPGを下げることがVarix出血予防となる
静脈瘤のサイズ 勧められる一次予防
なし 非選択的β-blockerは内服しない
小 ChildB/Cまたは redwalemarkなど
出血リスクのある患者では非選択的
β-blockerを内服する
中等度~ 破裂リスクの高い患者においては
β-blocker内服またはEVLを行う
2003年6月~2009年12月の期間にバルセロナの単施設に来院し
上部消化管出血の診断がついた921人を肝硬変の有無で層別化
そのうえでランダム化を行った。
Restrictivestrategy(Hb 7~9g/dL)vs.Liberalstrategy(Hb 9~11g/dL)
45日以内の死亡率を前向きに検討した。
全体の半数が胃・十二指腸潰瘍からの出血で
Varixからの出血は1/4程度
肝硬変患者の割合は3割ほど
背景因子は2群間で差異をみとめず
拡大
Restrictive群(Hb 7~9g/dL)ではLiberal群(9~11g/dL)と比較して
45日以内の死亡率が有意に低い
Hb 7~9
Hb 9~11
上部消化管出血をきたした肝硬変患者に対して
抗生剤使用群 vs.未治療あるいはプラセボ群
とに分けて比較検討を行ったRCTを検索、
metaanalysisを施行した。
抗生剤投与群では細菌感染のリスクを下げるのみならず、
抗生剤投与の方がよい 抗生剤なしの方がよい
早期(7日以内)の再出血を予防することも判明した。
抗生剤投与の方がよい 抗生剤なしの方がよい
静脈瘤からの出血をきたした進行肝硬変患者111人
ノルフロキサシン経口投与群(400mg1日2回) vs.
セフトリアキソン静注群(1g/day)
いずれも投与期間は7日間
Outcome:投与開始後 10日以内の細菌感染の有無
セフトリアキソン投与群の方がノルフロキサシン投与群と比較して
有意に感染の改善がみられた。
急性の消化管出血の際には輸液、輸血で循環動態の安定化
を図る。Hb は7~9g/dLを維持する。
短期間(5~7日間)の抗生剤加療で感染と再出血予防を行う。
経口ノルフロキサシン1日400mg 2回、シプロフロキサシン静注
が推奨。
進行した肝硬変、またキノロン耐性菌の多い施設では
セフトリアキソン1g/dayが好まれる。
静脈瘤破裂の急性期の患者を対象に
内視鏡的治療+薬物治療施行群 vs.内視鏡的治療のみの群
とで比較検討したRCTのmeta-analysis
初期止血、5日間の止血、5日間の死亡率について検討
薬物的治療:octreotide,vasopressin,somatostatin
を2~5日間継続
初期止血について薬物治療併用群では内視鏡治療単独群と
比較して初期止血は1.1倍、5日目までの止血は1.28倍
得られやすいことが判明した。
静脈瘤出血が疑われたらすぐに薬剤治療を開始し、診断後も
3~5日は続けるべき。
内視鏡治療介入を早期に行う。硬化療法よりも結紮術が
勧められている
薬剤と内視鏡治療の組み合わせがgold standardである
上記の治療で止血を得られない患者には
バルーンタンポナーデと食道ステント留置が考慮される。
大24時間まで使用できる。
胃体部からの出血のある患者では組織接着物質を使用した
内視鏡的静脈瘤硬化療法も好まれる。EVLを行ってもよい。
出血がコントロールできない場合、
あるいは薬物療法と内視鏡治療の併用にもかかわらず
出血を繰り返す患者ではTIPSも考慮すべき
死亡率が も低いのはEIS+βblocker
TIPSでは再出血率を下げることができる
EIS:EndoscopicInjectionSclerotherapy
静脈瘤破裂治療後の肝硬変患者では二次予防を行う。
非選択的βblockerとEVLの組み合わせが 適な治療
HVPG≦ 20 mmHgを保つ。
Varixまとめ
Ø Varix ruptureの際にHb は7~9g/dLを維持する。 治療の原則は
薬物治療+内視鏡治療。キノロン系あるいは第三世代セフェム系
で感染、再出血の予防を行う。
Ø どうしても出血コントロールがつかない場合にはバルーンや
食道ステント、必要であればTIPSも考慮する
Ø 二次予防も薬物療法+内視鏡治療で行う。
ü腹水
üSBP
ü静脈瘤
ü肝性脳症
ü栄養
ü肝腎症候群
意識障害の鑑別
頭蓋内病変、髄膜炎
血糖、CO2、薬剤性
VitaminB1、てんかん
肝硬変特有の病態
静脈瘤出血、便秘、脱水
感染、電解質異常
肝機能、門脈・体循環の評価
Acute-on-chronicアルコール、感染、炎症により惹起
近非代償期となったT-bil >5mg/dl循環不全(低血圧、腎不全)
一過性脳症もとは元気増悪因子やTIPSなど
末期肝障害もとから機能低下末期肝細胞癌や末期肝硬変など
肝性脳症で明らかな意識障害としてとらえられるのはGrade3以上OHE(OvertHepaticEncephalopathy)と呼ばれるもの見当識障害や人格変化、羽ばたき震戦から昏睡まで起こりうる。
肝性脳症の臨床的分類Type:Aは急性肝障害によるもの Bは門脈体循環シャントが原因
Cは肝硬変が原因Gradeは脳症の重症度によるものTimecourseは時間経過での分類
後に増悪因子が判明しているものか、原因不明なのか
肝性脳症とアンモニアについて現時点で分かっていること
高濃度のアンモニアはBBBを通過しアストロサイトのグルタミン産生(浸透圧物質)に寄与
アンモニア自体が興奮性神経伝達を障害する神経毒性がある。
その他の要因Ø GABA ベンゾジアゼピン
レセプターØ マンガンØ メルカプタンØ 炎症性サイトカイン
排便を促しタンパク質の
吸収を抑える
ウレアーゼ産生菌の菌交代を促す
非吸収性二糖類
Lactulose/Lactilol Evidenceは確率していないが使用経験も多く第一選択
抗生剤
リファキシミン Lactuloseに付加的に使用することで脳症の予防に効果あり
ネオマイシン 代替療法として可
メトロニダゾール 代替療法として可
経口アミノ酸製剤
BranchingChainAminoAcid 従来の治療に反応しない群では代替
あるいは付加的治療として可LOLA(L- Ornithine L- Asparatame)
肝性脳症の治療
非吸収性二糖類(Lactulose/Lactilol)投与群 vs.
プラセボまたは抗生剤投与群
で比較を行ったRCT22研究の
システマティックレビュー
ラクツロースがプラセボ群と比較して
肝性脳症を改善するという
確固たるエビデンスはないものの、大規模な研究がなく
伝統的に1stlineとして使用されている。
適切な盲検化と割り付けが行われた研究のみを対象
とすると有意差はなし
2005年12月~2008年8月の期間中、明らかな肝性脳症発症
の既往があるアメリカ、カナダ、ロシアの合計299人の患者が
リファキシミン投与群 vs.プラセボ投与群
とにランダムに割り付けられた。
6ヵ月以内の肝性脳症再発について前向きに調査した。
患者の背景因子は2群で類似しており
全ての患者は2回以上の肝性脳症発症
の既往があった。
ほとんどの患者(>90%)でラクツロース
をすでに内服していた。
Rifaximin投与群ではPlacebo群と比較して肝性脳症の発症が
有意に抑制された。
肝性脳症まとめ
Ø 肝性脳症が疑われる患者には意識障害、肝硬変特有の病態、
門脈・体循環系シャントの状況を軸に鑑別を行う。
Ø 臨床経過や重症度、そして増悪因子を意識して分類する。
Ø 治療の原則は腸内細菌群の適正化と排便コントロール。
ü腹水
üSBP
ü静脈瘤
ü肝性脳症
ü栄養
ü肝腎症候群
2001年3月~2002年11月の期間中に救急外来を受診後入院した
肝性脳症患者20人を対象
タンパク質減量投与群 vs.タンパク質通常量投与群
と割り付け、14日間の経腸栄養を行い
当該期間における患者の肝性脳症のStageを比較した。
0
20
40
60
80
day0 day3 day6 day9 day12 day14
アルブミン投与スケジュール
アルブミン量(60kgで換算)
大量1.2g/kg
タンパク減量群、タンパク通常量群とで観察期間内の
脳症のStage変化を比較したところ有意差はみられず。
肝障害患者でタンパク必要量亢進状態であることを考慮すると
肝性脳症患者であっても入院直後からタンパク投与量の減量
は必要なし。
122
肥満患者を除き、栄養状態にかかわらず肝性脳症を有する患者ではエネルギー35~40cal/kg、タンパク質 1.2~1.5g/kgが推奨(いずれも理想体重あたり)
ü腹水
üSBP
ü静脈瘤
ü肝性脳症
ü栄養
ü肝腎症候群
肝腎症候群の知見
Type1 :2週間以内の経過で 血清Cre値が2倍以上上昇し2.5mg/dL
を超える、あるいは24時間で Cre クリアランスが50%以上
低下し、20ml/min未満となる
Type2 :Type1ほどは急激な経過をたどらないもの
HRSの自然経過
無治療だと生存率は極めて不良
肝腎症候群の機序
Type1またはType2HRS患者を対象としたRCT10件
総患者数376人の systemicreview
昇圧剤使用群(±アルブミン)vs.未使用群(±アルブミン)
Primaryoutcomeは死亡率
昇圧剤: terlipressin,octreotide,noradrenalin
RCT10件の内訳
アルブミンは1g/kg/day程度の
投与量が多い
血管収縮薬はテルリプレシンが多く
その他オクトレオチド、ノルアドレナリンなどが投与。
血管収縮薬±アルブミン vs.無治療またはアルブミンのみ
血管収縮薬使用群の方が使用していない群よりも死亡率が低い
テルリプレッシン+アルブミン vs.アルブミン
テルリプレッシン使用群の方が死亡率低く、また腎機能改善がみられた
RanchoLosAmigosmedicalcenterの Type1HRSの患者81人
オクトレオチド +ミドドリン治療群 vs.投与なし群
それ以外の治療は両群とも同じ
Primaryoutcome:30日時点での死亡率
30日死亡率は有意に治療群で低く、クレアチニン値の値も治療群で有意に低い。
オクトレオチドおよびミドドリンの量とクレアチニン値低下の割合。
肝腎症候群まとめ
Ø 2週間以内の経過で急激に腎機能低下をきたす肝硬変患者では
肝腎症候群を鑑別に挙げる。
Ø ノルアドレナリン含めた昇圧剤と薬物投与、アルブミン投与
1g/kg/dayによる治療を行う。
Ø 高窒素血症や電解質異常のため透析を必要とすることもある。
私見
ü 治療の多くは1970年代~1990年代に比較的小規模の研究
に基づくものも多く、metaanalysisでも新しい研究は少ない印象。
ü これまで肝硬変は治らないと言われてきた疾患のため
積極的な研究は少ないのであろうか。
ü ところが必ずしも肝硬変は末期状態で肝移植しか治療がない
という考え方は正しくないと言われはじめている。
ü 肝硬変患者の中には可逆性のある病態の患者もいると
認識され始めており、治療者の認識も改める必要がある。
ü 外来治療開始したChild-pugh classCの患者のうち、飲酒を継続
した者では3年後全員が死亡していたのに対し、断酒に成功した
者では3年後も半数は生存していたという研究もみられた。
急変時のICUでの集中治療に加え外来治療の重要性を感じた。
ü Varix管理上のHbの指標など 近行われた研究や、肝腎症候群
など病態が 近になってあきらかになった分野もある。
ü 研究が進めば肝硬変に対する新たな治療法が出現する可能性
もあるだろうか。