肝硬変症のlactulose無 効の肝性脳症に対するvancomycin...

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昭和61年4月20日 283 肝 硬 変 症 のLactulose無 効 の肝 性 脳 症 に 対 す るvancomycin hydrochloride(非 吸 収 性 抗 生 物 質)の 治療効果 1) 川崎協同病院内科 2) 衣笠診療所内科 多 羅 尾 和 郎1) 池田 俊夫 和弘 桜井 土屋 豊一 伊東 達郎 岡田 哲 郎2) (昭和60年9月2日 受付) (昭和60年12月6日 受理) Key words: hepatic encephalopathy, intractable hepatic encephalopathy, vancomycin hydrochloride 現 今 の 肝 硬 変 症 に お け る肝 性 脳 症 の 治 療 法 は,食 事 中 の 蛋 白 質 の 制 限 とlactulose投 与が通常である が,こ れ らの み で は 抑 え られ な い難 治 性 の脳 症 が あ り,そ れ ら に はFischer液 の 様 な 特 殊 ア ミ ノ酸 制 剤 の 投 与 が 勧 め られ て い る が,こ れ ら を 外 来 患 者 に長 期 に 投 与 す る こ とは 社 会 的 に 困 難 で あ る.一 方,わ わ れ は 最 近,嫌 気 性 グ ラ ム 陰 性 桿 菌 は 抑 え る が,好 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 は 抑 え な い 非 吸 収 性 抗 生 剤 の Vancomycin hydrochloride(以 下VCM)が 肝 硬 変 の 肝 性 脳 症 に著 効 を 奏 す る事 を 証 明 した.そ 回 わ れ わ れ は,lactuloseの 無 効 な 肝 硬 変 症 の 難 治 性 脳 症5例,お よ びlactulose投 与 に よ り激 しい下痢 を 来 た し使 用 不 能 とな っ た1例 の 計6例 にVCM 2000mg/dayを 投 与 し,そ の前 後 に お け る 臨 床 症 状, 脳 波 所 見,血 中 ア ン モ ニ ア値 お よ び 糞 便 内 細 菌 叢 の 変 動 を 検 索 した.そ の 結 果,vancomycin投 与 後,全 例 で 脳 症 の 消 失,血 中 ア ン モ ニ ア値 の 下 降 を き た し た.糞 便 の 細 菌 叢 の 変 動 で は,Bacteroidesを 主とし た 嫌 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 は,lactulose投 与 時 に は 糞 便1g当 た り108~9個で あ った が,VCM投 与後 には 103~6個に 激 減 し た.一 方,好 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 数 に は 両 剤 投 与 間 に 変 化 は 無 く106~9個で あ った. Lactulose無 効 の肝 硬 変 の 肝 性 脳 症 にVCMは 有 効 で あ り,そ れ はVCM投 与 に よ っ てBacteroides 主 とす る 嫌 気 性 グ ラ ム 陰 性 桿 菌 が 激 減 す る こ と に よ る と推 定 さ れ た. 肝 硬 変 患 者 の肝 性 脳 症 に対 す る現 今 の治 療 と し て は,蛋 白摂 取 制 限 やLactuloseの 経 口投与 が一 般 的 で あ る.し か し肝 硬 変 症 の 脳 症 に はLactulose の長 期 投 与 中 に もか か わ らず 難 治 性 肝 性 脳 症 に陥 い るLactuloseを 無 効 例 が存 在 す る.こ れ ら難 治 性 で 重 症 の肝 性脳 症 に対 して 現 今 で はFischer液 の よ うな 特 殊 ア ミ ノ 酸 製 剤 が 用 い ら れ て い る が1)2).特殊 ア ミノ酸 製 剤 の 投 与 に は 多 くの 時 間 と 費用を要す るのでこの療法を外来通院の肝性脳症 患 者 に長 期 に 継 続 す る こ とは,社 会 的要因 よ りむ ず か し い と思 わ れ る. 他 方,わ れわ れ は 最 近,嫌 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 の 発 育 を抑 え るが 好 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 の発 育 は 抑 え な い 非 吸 収 性 抗 生 物 質 で あ るVancomycin hydrochloride(以 下VCMと 略 す)が 肝硬変 肝性脳症に著効を奏 し,そ の投与 に よ り臨床 的 に 脳症の症状が消失 し,血 中 ア ンモ ニ ア濃 度 が 下 降 し,脳 波が改善することを証明し発表してき た3)~5).さらに,肝 性脳 症 におけ る血中 ア ンモ ニア 値の変化が糞便中の嫌気性グラム陰性桿菌である Bacteroidesの 菌 数 の 変 化 と一 致 して 増 減 す る こ ,と,さ ら にBacteroidesが 肝性脳症におけるアン モニア産生の主要な菌種であろ うとい うことも証 別 刷 請求 先:(〒210)川 崎 市 川 崎 区桜 本2-1-5 川崎協同病院内科 多羅尾和郎

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Page 1: 肝硬変症のLactulose無 効の肝性脳症に対するvancomycin ...journal.kansensho.or.jp/kansensho/backnumber/fulltext/60/...Key words: hepatic encephalopathy, intractable hepatic

昭和61年4月20日 283

肝 硬 変 症 のLactulose無 効 の肝 性 脳 症 に対 す るvancomycin

hydrochloride(非 吸収 性抗 生 物 質)の 治療 効 果

1) 川崎協同病院内科

2) 衣笠診療所内科

多 羅尾 和 郎1) 池 田 俊 夫 林 和 弘 桜 井 彰

土 屋 豊 一 伊 東 達 郎 岡田 哲郎2)

(昭和60年9月2日 受付)

(昭和60年12月6日 受理)

Key words: hepatic encephalopathy, intractable hepatic encephalopathy, vancomycin hydrochloride

要 旨

現今 の肝硬 変 症 にお け る肝 性脳症 の治 療法 は,食 事 中の 蛋 白質 の制 限 とlactulose投 与 が通 常 で あ る

が,こ れ らの みで は抑 え られ な い難 治 性 の脳 症 が あ り,それ らにはFischer液 の様 な特 殊 ア ミノ酸制 剤 の

投 与 が勧 め られ て い るが,こ れ らを外来 患者 に長 期 に投与 す る こ とは社 会的 に 困難 であ る.一 方,わ れ

われ は最 近,嫌 気性 グ ラム陰 性桿 菌 は抑 え るが,好 気 性 グ ラ ム陰 性桿 菌 は抑 え ない非 吸収 性 抗 生剤 の

Vancomycin hydrochloride(以 下VCM)が 肝硬 変 の肝 性脳症 に著 効 を奏す る事 を証 明 した.そ こで 今

回わ れわ れは,lactuloseの 無 効 な肝硬 変症 の難 治性脳 症5例,お よびlactulose投 与 に よ り激 しい下痢

を来 た し使 用不 能 とな った1例 の計6例 にVCM 2000mg/dayを 投 与 し,そ の前 後 にお け る臨床症 状,

脳 波 所見,血 中 ア ンモ ニア値 お よび糞便 内細菌 叢 の変動 を検 索 した.そ の結 果,vancomycin投 与後,全

例で脳 症 の消失,血 中 ア ンモ ニア値 の下降 を きた した.糞 便 の細菌 叢 の変動 で は,Bacteroidesを 主 と し

た嫌 気性 グラ ム陰 性桿菌 は,lactulose投 与 時 に は糞便1g当 た り108~9個で あ った が,VCM投 与後 には

103~6個に激 減 した.一 方,好 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 数 に は 両 剤 投 与 間 に 変 化 は 無 く106~9個で あ った.

Lactulose無 効 の肝 硬 変の肝 性脳 症 にVCMは 有 効 で あ り,そ れ はVCM投 与 に よ ってBacteroidesを

主 とす る嫌気 性 グ ラム陰性桿 菌 が激減 す るこ とに よる と推定 された.

緒 言

肝硬変患者の肝性脳症に対す る現今の治療 とし

ては,蛋 白摂取制限やLactuloseの 経 口投与が一

般的である.しかし肝硬変症の脳症にはLactulose

の長期投与中にもかかわ らず難治性肝性脳症に陥

いるLactuloseを 無効例が存在する.こ れら難治

性で重症の肝性脳症に対 して現今ではFischer液

の よ うな特殊 ア ミノ酸製剤 が用 い られて い る

が1)2).特殊ア ミノ酸製剤の投与には多 くの時間 と

費用を要す るのでこの療法を外来通院の肝性脳症

患者に長期に継続することは,社 会的要因 よりむ

ずかしいと思われる.

他方,わ れわれは最近,嫌 気性グラム陰性桿菌

の発育を抑えるが好気性 グラム陰性桿菌の発育は

抑えない非 吸収性抗生物質 であるVancomycin

hydrochloride(以 下VCMと 略す)が 肝硬変症の

肝性脳症に著効を奏 し,そ の投与により臨床的に

脳症の症状が消失 し,血 中アンモニア濃度が下降

し,脳 波が改善す るこ とを証 明 し発表 して き

た3)~5).さらに,肝 性脳症における血中アンモニア

値の変化が糞便中の嫌気性グラム陰性桿菌である

Bacteroidesの 菌数の変化 と一致 して増減す るこ

,と,さ らにBacteroidesが 肝性脳症 におけるアン

モニア産生の主要な菌種であろ うとい うことも証

別刷請求先:(〒210)川 崎市川崎区桜本2-1-5

川崎協同病院内科 多羅尾和郎

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284 感染症学雑誌 第60巻 第4号

明してきた3)~5).以上の諸点を考慮 してわれわれ

は,Lactuloseの 無効な難治性の肝性脳症の出現

する肝硬変患者 にVCMの 投与を試みたところ,

肝性脳症が消失し,非 常に有効であったので,糞

便中の細菌叢の変化の検索結果をも合せて発表す

る.

対象お よび方法

昭和59年4月1日 より昭和60年6月 末までの期

間に川崎協同病院,お よび衣笠診療所に入院した

25例 の肝性脳症患者の うち,長 期間のLactulose

投与にもかかわ らず肝性脳症 の出現をみた5症

例,お よびLactulose使 用により惹起 された激 し

い下痢のため,Lactulose使 用を断念せざるを得

なかった1例 の計6例 を対象 とした.

症例1:51歳 の男性.患 者は昭和58年2月 に他

院にて肝生検を施行 され,ア ルコールによる肝硬

変症 と診断されていた.患 者は肝性脳症のため約

2ヵ 月間毎 日60mlのLactuloseを 投与 されてい

たにも拘 らず脳症が再発し,昭 和59年3月4日 に

川崎協同病院に入院した.症 例2:65歳 の男性.

患者は昭和58年5月 川崎協同病院にて腹腔鏡下肝

生検にて甲型肝硬変 と診断され,そ の後,昭 和59

年3月 より数回慢性肝性脳症が出現 し,11月1日

より川崎協 同病院外来 にて60mlのLactuloseを

連 日16日間投与されていたにもかかわらず11月17

日にな り3度 の肝性脳症 が出現 したため入院 し

た.

症例3:肝 硬変症に肝癌を合併 した50歳 男性.

昭和59年12月29日 に肝性脳症のために川崎協同病

院に入院した後,連 日30日間60m1のLactuloseを

内服 していたが昭和60年1月27日 になり肝性脳症

が出現した症例である.

症例4:55歳 の肝硬変症(壊 死後性)の 男性.

昭和58年5月 より11ヵ月間,再 発する肝性脳症に

悩まされていた.こ のため,衣 笠診療所に入院し,

長期にわた りLactuloseお よびAminolevan(特

殊 アミノ酸製剤)を 投与 されていたが,脳 症は完

全には消失 しなかった.

症例5:65歳 の男性.昭 和58年3月,肝 障害の

精査のため川崎協同病院に入院 し,腹 腔鏡下肝生

検にてF型 肝硬変症(ア ルコール性)と 診断され

た.そ の後,食 道静脈瘤を伴 うportal-systemic-

encephalopathyが 約1年 間続 き,半 年 前 よ り

Lactulose 60mlを 投与されていたが,昭 和60年6

月1日 肝性脳症が出現 したため,川 崎協同病院に

入院した症例である.

症例6:当 時77歳 の女性.診 断は慢性腎不全お

よび食道静脈瘤,肝 性脳症を伴った本態性門脈圧

充進症.昭 和57年7月10日 より慢性腎不全のため

腹膜透析を開始し,更 に昭和59年2月10日 より血

液透析を開始 した.昭 和58年7月9日 よりII度の

肝性脳症が出現 し,以 後脳症を繰 り返 し,昭 和59

年6月20日 より脳症が出現 し21日 よ りLactulose

が投与されたが,激 しい下痢を招来 し,10ml/day

で も下痢 の ため 肛 門 の ビラ ンが生 じた の で

Lactulose投 与を断念 しなければな らなかった症

例である.

全対象症例 の入院時血 液生化 学検査 成績 を

Table1に 示す.全 症例共研究期間中は入院して

お り,入 院期間中の蛋白摂取量は1日50gに 制限

された.

VCM投 与以前のLactuloseの 投与量 は1日1

~3回 の下痢を来たす量が日本人では通常1日60

mlで あるところから60m1と した.

非吸収性抗生物質であるVCMは1日2回 午前

6時 と午後6時 に各々1,000mgを 水溶 して服用

させた.研 究期間中はVCM以 外の抗生物質は全

く投与 しなかった.

患者の肝性脳症の程度は犬山シンポジウムの診

断基準6)に従 って定めた.脳 波 は優位周波数を測

定 した.血 中アンモニア値は,奥 田,藤 井の変法7)

により測定した.

糞便の細菌学的検査法

糞便の細菌学的検索法はFig.1の ご とく上記

症例についてVCM投 与前後 の糞便1g当 た りの

好気性菌および嫌気性菌の菌数および菌種を細菌

学的に検索した.朝,研 究対象症例よ り糞便を採

取 し,採 取後1時 間以内に,そ の1gを 生理食塩水

で101よ り1011まで10倍 階段希釈 し,そ の各奇数乗

階段希釈液 の一標準白金耳をFig.1に 示 した好

気性菌および嫌気性菌の選択培地に接種 し,好 気

性菌は2~4日 間,嫌 気性菌はガスパ ック法で4

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昭和61年4月20日 285

Table 1 Laboratory Findings on Admission

Fig. 1 Bacteriological investigation of faecal flora

~7日 間培養 した.検 出した好気性菌および嫌気

性菌の菌株の同定はBergeyの 第8版8)に よって

同定した.

結 果

症 例1の 結 果 をFig.2に 示 す.60m1の

Lactuloseの 長期連 日内服にもかかわ らず,昭 和

60年3月1日 に患者は1度 の肝性脳症になったた

め3月4日 に糞便中の細菌叢を検索し,翌5日 よ

りVCMを1ヵ 月間投与した.VCM投 与3日 目

に肝性脳症の臨床像は消失 し,脳 波も改善を示し

た.VCM投 与以前のLactulose服 用中の糞便 中

細菌叢の検索では,嫌 気性 グラム陰性桿菌(主 と

してBacteroides)を 糞便1g中 に109個認めたのに

対し,VCM投 与7日 後には107個迄に,ま た14日

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286 感染症学雑誌 第60巻 第4号

Fig. 2 Clinical course of Case 1: a 51-yr-old male diagnosed as having liver

cirrhosis and chronic hepatic encephalopathy

後には103個 に減少した.好 気性グラム陰性桿菌の

数はVCM投 与前 には糞便1g中109個 で,服 用後

もその数は109~108個 とほぼ変化 しなかった.

VCM投 与を4月4日 に中止 し,連 日60m1の

Lactulose服 用に変更 した ところ,4月10日 よ り

2度 の肝 性脳症 が再現 したため4月12日 よ り

VCMを 再投与した ところ臨床的に脳症は改善 し

た.一 方,細 菌学的検索 では,脳 症 出現時 には

Bacteroidesを 主 とす る嫌気性グラム陰性桿菌お

よび好気性グラム陰性桿菌は共に108個迄増加 し

ていたが,VCM投 与後脳症消失時には嫌気性グ

ラム陰性桿菌が106個迄減少していた.

次に症例2の 臨床経過 と糞便中細菌叢の変動を

Fig.3に 示す.本 症例 も肝性脳症を伴 った肝硬変

症 例 で,昭 和59年10月29日 よ り予 防 的 に

Lactulose60mlを 服用 していたが,昭 和59年11月

17日 に4度 の肝性脳症にな り21日には,血 中アン

モニア値は320μg/dlの 高値に達 した.糞 便の細菌

学的検索後11月19日 よりVCM投 与を開始 し,12

月1日 には完全に肝性脳症よ り離脱した.血 中ア

ンモニア値も82μg/dlに 迄下降し,脳 波 も改善を

示 した.

糞 便 中 細菌 叢 の 検索 で は,VCM投 与前 の

Lactulose服 用中にはBacteroidesを 主 とす る嫌

気性 グラム陰性桿菌の総数 は108個 であったが,

VCM投 与3週 間後には103個 に激減 した.VCM

投与は12月9日 迄で中止 したが,昭 和60年1月1

日には再度2度 の肝性脳症が出現 し,血 中アンモ

ニア値 も146μg/dlに 達した.1月4日 には糞便中

嫌気性グラム陰性桿菌数は108個 に増加 していた.

症例3の 臨床経過 と糞便中細菌 叢 の変化 を

Fig.4に 示す.こ の症例は肝硬変症に伴 う原発性

肝癌 の50歳 の男性患者でLactulose 60mlの 約1

ヵ月間の投与にもかかわ らず,昭 和60年1月27日

に1度 の肝性脳症に陥った.糞 便の細菌学的検索

の後29日 よりVCMが 投与 され2月1日 には臨床

的に脳症は消失 し,血 中アンモニア値 も156μg/dl

より91μg/dlに 迄下降 した,一 方,糞 便中細菌叢の

検索では,嫌 気性グラム陰性桿菌の数はVCM投

与前後で108個 より106個に減少したのに対 し,好

気性グラム陰性桿菌の数は共に106個 と変化 しな

かった.VCMは2月4月 に中止されたが,2月15

日にな り再 び2度 の肝性脳症 が出現 したた め

VCMを 再投与 した ところ,前 回と同様 な改善を

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昭和61年4月20日 287

Fig. 3 Clinical Course of Case 2: a 65-yr-old male diagnosed as having liver

cirrhosis with chronic hepatic encephalopathy

Fig. 4 Clinical course of Case 3: a 50-yr-old male diagnosed as having

hepatome with liver cirrhosis and chronic hepatic encephalopathy

み た.糞 便 中 の グ ラ ム陰 性 桿 菌 の108個 よ り103個

へ の減 少 と共 に 血 中 ア ン モ ニ ア 値 も165μg/dlか

ら95μg/dlに 低 下 した.

症例4の 臨床経過お よび検索結果をFig.5に

示 す.本 例 は肝性脳 症が くり返 されたた めに

Lactuloseと 特 殊 ア ミ ノ 酸 製 剤 で あ る

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288 感染症学雑誌 第60巻 第4号

Fig. 5 Clinical course of Case 4: a 55-yr-old male with liver cirrhosis and

chronic hepatic encephalopathy

Aminolevanが 長期間にわた り投与されていたが

完全には脳症から離脱出来なかった症例である.

昭和59年4月25日 よりVCMを 投与開始した とこ

ろ血中アンモニアが低下 し完全な脳症の消失が認

められた.5月9日 にVCMを 中止した ところ,

5月17日 にな り再び脳症が出現 し血中アンモニア

値は160μg/dlに 上昇した.本 症例では経済的な理

由か らVancomycinを40日 間中止 していたが6

月27日 より再投与 した ところ,血 中アンモニア値

は78μg/dlに 低下 し脳症も消失 した.糞 便の細菌

学的検索では,脳 症時にはBacteroidesを 主 とし

た嫌気性グラム陰性桿菌 と好気性グラム陰性桿菌

が共に糞便1g当 た り108個存在したが,VCM投 与

によ り嫌気性 グラム陰性桿菌は104個 まで激減 し

たが好気性グラム陰性桿菌 は107個 までわずかに

減少 したにすぎなかった.

次に症例5の 臨床経過をFig.6に 示すが,本 例

もくり返す肝性脳症のためにLactulose 60mlを

長期にわたって投与されていたにも拘 らず,昭 和

60年6月1日 より2度 の肝性脳症が出現したため

川崎協同病院に入院 した.患 者は入院後もしばら

くLactulose 60mlを 連 日投与 されたが脳症が続

くため,6月13日 にな りvancomycin 2,000mg/

dayを 投与 した ところ血 中アンモ ニアは176μ9/

dlよ り79μg/dlに 減少 し,糞 便中の嫌気性グラム

陰性桿菌はVCM投 与前の109個 よ り投与後は104

個まで減少した.

さらに症例6の 臨床経過をFig.7に 示す.本 例

は慢性腎不全 と食道静脈瘤等の側副血行路による

肝性脳症の併存す る症例であるが,慢 性腎不全の

方は腹膜透析,続 いて血液透析によって良くcon-

trolさ れていた.一 方,患 者は昭和58年7月 よ り肝

性脳症を くり返 していた.昭 和59年6月20日 頃よ

り再び脳症が出現したためにLactuloseを 投与 し

たが,Lactulose投 与により激 しい下痢を来た し,

Lactulose量 を1日10mlに 減量 して も下痢 は続

き肛門にビランを生 じたためにLactuloseを 中止

してVCMを 使用 したところ,下 痢は止ま り脳症

も消失 した.脳 症の消失 と同時に血中アンモニア

値も下降したが,残 念なが らこの症例では糞便中

の細菌叢の検索は行わなかった.な お,こ の症例

では全身衰弱で死亡 した昭和60年3月1日 の直前

の2月23日 迄の約6ヵ 月間VCMを 使用したが,

その間1回 も肝性脳症は出現せず意識は清明な状

態であった.

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昭和61年4月20日 289

Fig. 6 Clinical course of Case 5 : a 65-yr-old male diagnosed as having liver

cirrhosis and chronic hepatic encephalopathy

Fig. 7 Clinical course of Case 6 : a 77-yr-old female with chronic renal failure

and decompensated liver cirrhosis

考 察

慢性再発性肝性脳症の重症例の長期管理は非常

にむずかしく現在の治療法でも今だ充分 とは言え

ない.約15年 前迄は蛋 白摂取制限 とNeomycin,

KM capsel,Paromomycin等 の 非 吸 収 性 抗 生 物

質 の 投 与 に よ る好 気 性 腸 内 細 菌 の抑 制 が 主 た る 治

療 法 で あ っ た.

1967年 に な りLactuloseが 出 現 し9),そ の 軟 下

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290 感染症学雑誌 第60巻 第4号

剤 としての効果と腸管内容の酸性化を根本原理 と

した新 しい治療法が導入 されて有望視 された.

Lactuloseは1.4-galactosidofuructoseと い う合

成二糖類で,人 間の上部腸管内では吸収 も加水分

解 もされないので,そ のまま下部腸管に達し,そ

こで細菌によって代謝 されて乳酸,酢 酸,蟻 酸,

二酸化炭素が生成され下痢を来たす.Lactulose

の有効性は,当 初は酸性化が乳酸菌や他の好酸性

発酵性菌を増殖して,E.coli等 好アルカリ性蛋白

分解菌の発育を抑制す ると考えられていたが,最

近では細胞外液 とアンモニアや他の両性窒素性毒

物 を捕捉す る場 である腸管腔内 との間にPHの

勾配が生 じることによってもたらされると推定 さ

れている10)~12).

Lactuloseは 窒素性代謝産物(主 としてアンモ

ニア)が 主要原因である肝性脳症の治療に有効で

あることが多数の研究者に よって報告 されてお

り,最 近では蛋白摂取制限 とLactuloseの 内服の

組合せが慢性再発性肝性脳症の治療法の主流 と

なっている.し かしなが ら,慢 性再発性肝性脳症

には多 くの難治例があ り,そ れらの例ではこの療

法では完全に脳症か ら脱却 し得ない.現 今では,

この様な肝硬変患者の重篤な肝性脳症の治療には

Fischer液 のような特殊ア ミノ酸製剤の投与が勧

め られるようになった1)2).しかし,こ の療法で慢

性再発性肝性脳症の患者を長期間管理するには莫

大な時間 と出費を要するので,患 者の社会復帰 と

い う点か らは問題が残る.

一方,最 近われわれは,嫌 気性グラム陰性桿菌

に有効で好気性グラム陰性桿菌には無効な非吸収

性抗生物質であるVCMが 慢性再発性肝性脳症に

著明な効果がある事を臨床的,細 菌学的に証明 し

てきた3)~5).

そこでわれわれはLactulose内 服中にもかかわ

らず脳症をきたす末期の難治性の慢性再発性肝性

脳症の患者にVCMを 経 口投与 してみた.そ の結

果,本 研究の研究結果に示 した如 く,Lactulose無

効の肝硬変症の肝性脳症の管理にVCMが 明らか

に有効であることを証明した.即 ち,Lactulose無

効例においても,VCM投 与によって,臨 床的に脳

症状が消失 し,脳 波が改善し,血 中アンモニア=濃

度が低下した.難 治性肝性脳症の治療に際して,

Lactuloseよ りVCMの 方がよ り効果的である理

由は,完 全には解明されてはいないが,そ の理由

の一つは,恐 らく有力なurease産 生菌である糞便

中嫌気性 グラム陰性桿菌,中 で もBacteroidesを

VCMが より効果的に減少せ しめ うることによる

ものと思われる.糞 便中の細菌叢の検索では,本

研究で証明されたごとく,VCM投 与 により嫌気

性グラム陰性桿菌は103~4個に著明に減少 したが,

Lactulose療 法では108~9に減少 したにす ぎなかっ

た.(以 前のわれわれの研究では,薬 剤無投与肝硬

変患者の糞便内の嫌気性グラム陰性桿菌の平均検

出菌数は1010.4個であった13).)一方,糞 便内好気性

グラム陰性桿菌については,両 療法 とも糞便の19

当た り106~9個でVCMとLactuloseで 明 らかな

差は認め られなかった.

腸内細菌 のurease産 生能 に関 して,最 近in

vitroで 無芽胞嫌気性菌の多 く,特 にBacteroides

がUreaseを 産生 し14),ペ プタイ ドやア ミノ酸か

らアンモニアを産生する能力はBacteroidesの 方

が好気性グラム陰性桿菌 よりも強力であること15)

が報告された.さ らに,最 近われわれ はBacter-

oidesが 人間の肝硬変症の肝性脳症時のアンモニ

ア産生の主役をはた してお り,VCM投 与で これ

を減少させ ると,多 くの患者が肝性脳症か ら回復

しうることを証明した3)~5).

さらに,わ れわれはBacteroidesの 中でも,ど の

様な菌種がアンモニア産生に主役を果た している

かを検索 す る 目的 で,今 回の全 症例 にお いて

VCM投 与前に分離したBacteroides139株 を同定

した と ころ, Bacteroides fragilis 72株, Bacter-

oides vulgatus 11株, Bacteroides distasonis 34株,

Bacteroides uniformis 10株, Bacteroides ovatus

12株 とい う結果を得, Bacteroides fragilis が全株

の51.8%と 過半数を占めていた.

上述の事実を総合すると,VCM投 与 により,

Lactulose投 与時に比べて,Bacteroidesを 主とし

た嫌気性グラム陰性桿菌が著るしく減少す ること

が,Lactulose無 効の難治性肝性脳症 にVCMが

有効である理論的な根拠の一つ となるものと思わ

れる.し かしなが ら,Lactuloseは 糞便内のpHを

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昭和61年4月20日 291

低 下 させ,ア ンモ ニ ア の 吸収 を 抑 え る の が そ の主

た る作 用 機 序 で あ る10)~12)のに対 し,VCMは 糞 便

中 の 嫌 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 を 抑 え る の が 主 な 作 用

機 序 で あ る の で,両 薬 剤 の難 治 性 肝 性 脳 症 に 対 す

る有 効 性 の 差 が い か に し て 出 現 す る か に 関 し て

は,さ ら に詳 細 な 研 究 が 必 要 で あ る と思 わ れ る.

結 論

1) Lactuloseの 無 効 な肝 硬 変 症 の 慢 性 再 発 性

の難 治 性 肝 性 脳 症5例,お よびLactulose投 与 に

よ り激 しい 下 痢 を 来 た した た め,Lactuloseが 使

用 不 能 とな っ た1例 の 計6例 に,Bacteroides等 の

嫌 気 性 グ ラム陰 性 桿 菌 は抑 え るが,好 気 性 グ ラ ム

陰 性 桿 菌 は 抑 え な い 非 吸 収 性 抗 生 物 質,van-

comycin hydrochloride 2,000mg(朝 ・夕1,000mg

ず つ)を 経 口投 与 し,脳 症 の症 状,血 中 ア ンモ ニ

ア値 の 変 動,お よび 糞 便19中 の 細 菌 の数 と菌 種 の

変 動 を 検 索 し,Lactulose投 与 時 の そ れ と比 較 検

討 した.

2) vancomycin投 与 に よ り,全 例 で 脳 症 の 消

失,血 中 ア ン モ ニ ア値 の 下 降 を 来 た した.ま た 糞

便 中 の 細 菌 叢 の変 動 で は,Bacteroidesを 主 と した

嫌 気 性 グ ラ ム陰 性桿 菌 が,Lactulose投 与 時 に は,

糞 便1g当 た り108~9個 で あ っ た も の が,Van-

comycin投 与 後 に は103~6個 に減 少 して いた が,好

気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 の 菌 数 は,両 薬 剤 投 与 中 に 変

化 は 無 く106~9個で あ った.

3) 日本 人 の薬 剤 無 投 与 肝 硬 変 症 患 者 の 糞 便 中

の嫌 気 性 グ ラム陰 性桿 菌 の菌 数 が,糞 便1g当 た り

1010.4個で あ る13)こ とを 考 え る と,1actulose投 与 群

で は108~9個 まで の軽 度 減 少 に と ど ま った が,van-

comycin投 与 時 に は103~6個 に 激 減 した こ と に な

る.

4) これ らを ま とめ る と,肝 硬 変 症 の 慢 性 再 発 性

脳 症 でlactulose無 効 の難 治 性 肝 性 脳 症 に 対 し,

vancomycin経 口投 与 は極 め て有 効 で,そ の原 因

は 糞 便 中 のurease活 性 を 持 つ 嫌 気 性 グ ラ ム陰 性

桿 菌,特 にBacteroidesの 激 減 に よ る も の と 思 わ

れ た.

稿 を終えるに臨み,ご 指導,ご 校閲を賜わ りました横浜

市立大学名誉教授,福 島孝吉先生 に深謝致 します.

なお,本 研究の一部 は,第59回 日本感染症学会総会お よ

び第82回 日本内科学会総会において発表 致しました.

文 献

1) Fischer, J.E., Funovics, J.M., Aguirre, A.,

Jamis, J.H., Keane, J.M., Wesdorp, R.I.C., Yo-shimura, N. & Westman, T.: The role of

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2) Fischer, J.E., Rosen, H.M., Ebeid, A.M., James,

J.H., Keane, J.M. & Soeters, P.B.: The effect of nornaliqation of plasma amino acids on hepatic encephalopathy in man. Surgery, 80: 77-91 , 1976.

3) 多 羅尾 和 郎, 池 田俊 夫, 林 和 宏, 桜 井 彰, 伊

東 達 郎: 肝 性脳 症 出現 に お け る大 腸 内嫌 気 性菌 の

意 義. 日本 内 科学 会 雑 誌, 79: 204, 1985.

4) 多 羅尾 和 郎, 池 田俊 夫, 林 和 宏, 桜 井 彰: 肝

性 脳症 出現 にお け る大 腸 内 嫌 気 性菌Bacteroides

の 意 義. 肝 臓, 26 (Suppl): 85, 1985.

5) 多 羅 尾和 郎, 桜 井 彰, 林 和 宏, 池 田俊 夫: 肝

性 脳 症 出現 に お け る大 腸 内 嫌 気 性 菌Bacteroides

の意 義. 感 染 症 学会 雑 誌, 59: 124, 1985.

6) 水 戸 廸郎, 瀧 野辰 郎: 肝 性脳 症 の病 態 と診 断 の進

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医 学 書 院, 東 京, 1975, p.159.

7) 奥 田 拓道, 藤 井 節郎: 血 中 ア ン モ ニァ直 接 比 色定

量 法. 最 新 医 学, 21: 622-627, 1966.

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12) Bircher, J., Haemmerli, U.P. & Tralert, E.: The mechanism of action of lactulore in portal-

systemic encephalopathy. nonionic diffusion of ammonia in the canine colon. Rev. Fr. Etud Clin. Biol., 16: 352-356, 1971.

13) 多羅尾和郎, 山崎隆一郎, 伊藤 章, 福島孝吉:

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uremic men. Lancet, 2: 406-407, 1971.

15) Vince, A.J. & Burridge, S.M.: Ammonia pro-duction by intestinal facteria: The effects of

lactose. lactulose, and glucose. J. Med. Mi-crobiol., 13: 177-191, 1980.

Therapeutic Effect of Vancomycin Hydrochloride, a Nonabsorbable Antibiotics, on Intractable (Lactulose Resistant) Chronic Hepatic

Encephalopathy in Cirrhotic Patients

Kazuo TARAO, Toshio IKEDA, Kazuhiro HAYASHI, Akira SAKURAI, Toyoichi TSUCHIYA, Tetsuo OKADA & Tatsuro ITO

Department of Medicine, Kawasaki Kyodo Hospital, Kawasaki, Japan

Vancomycin hydrochloride, a nonabsorbable antibiotics, which is effective against anaerobic but ineffective against aerobic gram negative rods, was administered to five consecutive cirrhotics with intractable portal-systemic encephalopathy (PSE) who were resistant to oral lactulose administration, and changes in clinical features, blood ammonia levels, electroencephalograms, and in faecal bacterial flora were examined. Vancomycin was also administered to one cirrhotic case in which administration of lactulose caused the severe diarrhoe during the use of the drug. Clinical features of encephalopathy disappeared in all cases, and electroencephalograms showed marked improvements. Faecal bacterial investigation showed that the anaerobic gram-negative rods (chiefly Bacteroides spp) were 10 8-9 counts

per gram of stool on administration of lactulose, but remarkably decreased to 10 3-6 counts after ad-ministration of vancomycin. It is concluded that vancomycin is effective to the intractable PSE because of the marked decrease in anaerobic gram-negative rods.