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血液検査の基礎的考え方 末梢血液データについて 2010/8/12 道央地区血液研修会 佐々木

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血液検査の基礎的考え方末梢血液データについて

2010/8/12

道央地区血液研修会

佐々木 洋

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細胞計測の注意点

白血球+赤血球 赤血球数(一般的)

500万の赤血球数に1万の白血球をカウント

しても誤差範囲

500万の赤血球数に20万の白血病の白血

球は補正が必要

血小板+赤血球 血小板数に破砕赤血球が入り込む(HUS)

白血球+赤芽球 白血球に幼若赤血球が入り込む(ベビー、髄外造血)

故障、整備不良 泡、ゴミなどもカウント

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MCVによる貧血の分類

• 最初に注目する項目は平均赤血球容積(以下MCV)

• MCVは赤血球の大きさをあらわす指標

• 計算式:Ht(%)÷赤血球数(万)×1000

• MCVの正常値は80~100

• 80以下であれば小球性貧血

• 80~100であれば正球性貧血

• 100以上であれば大球性貧血

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MCVによる貧血の分類小球性貧血

• MCVが80以下

• フェリチン値<12ng/mlであれば、鉄欠乏性貧血と診断できる

• フェリチン値≧12ng/mlの時は血清鉄の値に注目し、低下していれば、慢性疾患(慢性炎症・感染・腫瘍など)に伴う貧血(Anemia of Chronic Disease:ACD)、正常または増加していれば鉄芽球性貧血かサラセミアを考える。

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MCVによる貧血の分類正球性貧血

• MCVが80~100

• 網状赤血球数(正常値は約1%で、絶対数では4~8万/μl)が重要

• 網状赤血球が増加の時、急性の出血か溶血性貧血(赤血球の代償増加が旺盛と考える)

• 溶血性貧血は間接ビリルビンの上昇、血清ハプログロビンの低下

• クームス試験(自己免疫性溶血性貧血)、赤血球抵抗試験(遺伝性球状赤血球症)、ショ糖試験・ハムテスト(発作性夜間血色素尿症)などの検査が必要

• 網状赤血球数が正常の場合は、白血病や悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群などを推測(診断が一番難しい貧血)

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MCVによる貧血の分類大球性貧血

• MCV100以上

• VB12欠乏性貧血(悪性貧血など)、葉酸欠

乏性貧血の診断

• 赤白血病や骨髄異形成症候群の可能性

• 既に輸血が行なわれていると巨赤芽球性貧血の診断はできなくなる事が多い

• 急性出血の回復期や溶血性貧血では大球性貧血パターンになることもある

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貧血診断の注意点

• 白血球数、血小板数に異常がないか?

• 2系統以上に異常が認められるときには、骨髄異形成症候群、白血病、骨髄増殖性疾患など重篤な血液疾患の可能性がある。

• 肝疾患などで脾腫がある場合には、脾機能亢進症による汎血球減少(pancytopenia)や2血球減少(bicytopenia)が認められる。

• 脾腫の有無は重要な所見(腹部超音波検査が有効)。

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(↓):免疫不全

(↑):伝染性単核(男)19~59(女)18~58リンパ球 lymphocyte

(↓):悪性貧血

(↑):感染症0~12単球 monocyte

(↑):甲状腺疾患(男)0~5(女)0~3好塩基球 basophil

(↑):アレルギー性疾患・寄生虫症

0~3好酸球 eosinophil

(↓):感染症(ウイルス)・薬剤(抗ガン剤)

(↑):感染症(細菌)・リウマチ熱・白血病・急性中毒

分節核球(segmented cell)(男)27~70(女)28~72

好中球 neutrophil

臨床的意義百分率(%)分類

白血球に占める好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球の割合を示す。

白血球比率/百分率 末梢血液像

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(リンパ絶対数 1,000の~5,000/mm3)

ガン細胞などの異物を排除NK細胞 10%

「キラーT細胞」(ウイルスなどの異物を攻撃する

「サプレッサーT細胞」(不必要な免疫反応を抑制する)

「ヘルパーT細胞」(免疫システムを活性化する)

T細胞 75%

免疫グロブリンをつくり細菌を排除B細胞 15%

リンパ球 lymphocyte

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血小板

• 10~40万/mm3• 15万/mm³以下を減少症

• 40万/mm³以上を増加症

• 減少原因は、産生能力の低下、寿命低下、出血時間延長、紫斑出現

• 増加原因は、造血機能異常の一次性増加症、それ以外の二次性増加症

• 機能異常は血友病やフォンウイルブランド病、血小板無力症

血小板測定は

結構難しい!

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症例1

0.7

16.5

19.5

27.3

15.8

58

14.3

3.9

247

4060

μg/dl7FeflMPV

398UIBC%網状RBC

mg/dl<0.3CRP×104/μlPLT

mg/dl1.13CRE%RDW

mg/dlUA%MCHC

IU/l337ALPpgMCH

IU/l132LDHflMCV

IU/l11ALT%Ht

IU/l16ASTg/dlHgb

mg/dl0.5T-Bil×104/μlRBC

g/dl6.2TP/μlWBC

76歳 女性初診時 夜間救急

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症例2

• 32歳 男性

• 主訴 口腔内多発血腫斑と血腫

• 現病歴 5月11日頃より口腔内にできものが

あり急激に増えてきた

• 既往歴 無し

• 家族歴 喫煙 機会飲酒

• 内服薬 無し

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検査データ

2細胞EBL1.0Aty-LymRet(%)

chemistry

276LDH (IU/l)321ALP (IU/l)TP(g/dl)

CRP (mg/dl)9.3BUN (mg/dl)18GOT(IU/l)

Ferritin (ng/dl)0.74CRE (mg/dl)23GPT (IU/l)

69.8Other0.7PLT(×104/ μl )

0.0Baso35.7MCHC(%)

0.2Eosino33.3MCH(pg)

>10BT 分0.2Mono93.0MCV(fl)

130.4FDP μg24.0Lympho36.7Ht(%)

280Fib mg3.6Seg13.1Hgb(g /dl)

28.7APTTsec0.8Stab393RBC(×104/ μl)

85PT % 0.4Myelo %5900WBC(/μl)

coagulation WBC DiffCBC

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TTP,HUS初回血小板7万

以下

0.5%以上破砕赤血球

造血器腫瘍初回、再発1細胞以上造血腫瘍細胞(芽球)

血圧低下前回値なし、差3.0以上

6.0g以下Hgb量

出血化学療法、手術翌日除外

前回値なし、10万以上

30,000以下血小板数

敗血症化学療法除外

1,000以下白血球数

危惧される病態条件3条件2条件1検査項目

血液学検査のパニック値

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異常値に遭遇したら

• 機器の状態確認• 検体の再確認(凝固、寒冷凝集、乳ビなど)• 検体患者名の確認• 前回値を時系列で確認• 輸液混入の有無(生化学のデータを参考)• 出血・輸血の確認• Diff情報を確認

• 検体は生サンプル・・・刻々と変化する• 血液検査の特徴→別方法で確認• 更に追加検査を仲間に依頼