1 圧縮性流体1 圧縮性流体 連続式と圧縮性...

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圧縮性流体 ■ 連続式と圧縮性 これから考える流体は,密度変化の無視できない流体で,圧縮性流体と呼 ばれる。これに対して,水のように密度がほとんど変化せず,その密度変化 を無視できる流体を非圧縮性流体という。非圧縮性流体では,どの部分も体 積変化しない。とはいえ,流体の場合には決まった1つの物体の形というも のはない。しかし,力学を考える上では,「1つの物体」を決めたこれは不 便であるので,考える上では,「1秒間に通過する流体」を仮に1つの物体 のかたまりと見るのが便利である。そこで,ある断面積を1秒間に通過した 流体の体積を「流量」と名付け,通常文字 Q で表す。これは,断面積を A, 流体の速度を v とすると次の式で表される。 非圧縮性流体では,次の式で定義される流量 Q は一定である。これを続式という。 Q = vA = 一定 ただし,v:流速,A:断面積である。 公 式 言い換えれば,流量が一定の流体が非圧縮性流体,流量が一定でない流体 が圧縮性流体である。 なお,圧縮性流体では体積は一定ではないが,質量は一定であるため,か わりに質量保存則が成立する。 ■ 音速とマッハ数 水は非圧縮性流体であるが,空気も流速が遅い場合にはほとんど非圧縮性 流体とみなせる。 つまり,これから扱う圧縮性流体とは,「音速に近いかそれを超える空気 の流れ」のことになる。そこで基準となる音速は次の式で計算できる。 音速 c は次の式で計算できる。 ただし, :比熱比,R:気体定数,T:絶対温度である。 公 式 流れが音速を超えると圧縮性が大きくきいてくることになるため,重要な のは,流れの速度そのもの以上に,音速に対する比率となる。そこで,この 比率をマッハ数といい M で表し,次式で定義する。 そして,このマッハ数を元に流れを以下のように分類することにする。 v A 質量保存則は, で表されます。

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Page 1: 1 圧縮性流体1 圧縮性流体 連続式と圧縮性 これから考える流体は,密度変化の無視できない流体で,圧縮性流体と呼 ばれる。これに対して,水のように密度がほとんど変化せず,その密度変化

1 圧縮性流体■ 連続式と圧縮性

これから考える流体は,密度変化の無視できない流体で,圧縮性流体と呼ばれる。これに対して,水のように密度がほとんど変化せず,その密度変化を無視できる流体を非圧縮性流体という。非圧縮性流体では,どの部分も体積変化しない。とはいえ,流体の場合には決まった1つの物体の形というものはない。しかし,力学を考える上では,「1つの物体」を決めたこれは不便であるので,考える上では,「1秒間に通過する流体」を仮に1つの物体のかたまりと見るのが便利である。そこで,ある断面積を1秒間に通過した流体の体積を「流量」と名付け,通常文字 Q で表す。これは,断面積を A,流体の速度を v とすると次の式で表される。

非圧縮性流体では,次の式で定義される流量 Q は一定である。これを連続式という。

Q = vA = 一定ただし,v:流速,A:断面積である。

公 式

言い換えれば,流量が一定の流体が非圧縮性流体,流量が一定でない流体が圧縮性流体である。

なお,圧縮性流体では体積は一定ではないが,質量は一定であるため,かわりに質量保存則が成立する。

■ 音速とマッハ数水は非圧縮性流体であるが,空気も流速が遅い場合にはほとんど非圧縮性

流体とみなせる。つまり,これから扱う圧縮性流体とは,「音速に近いかそれを超える空気

の流れ」のことになる。そこで基準となる音速は次の式で計算できる。

音速 c は次の式で計算できる。

ただし, :比熱比,R:気体定数,T:絶対温度である。

公 式

流れが音速を超えると圧縮性が大きくきいてくることになるため,重要なのは,流れの速度そのもの以上に,音速に対する比率となる。そこで,この比率をマッハ数といい M で表し,次式で定義する。

そして,このマッハ数を元に流れを以下のように分類することにする。

v

A

質量保存則は,

で表されます。

Page 2: 1 圧縮性流体1 圧縮性流体 連続式と圧縮性 これから考える流体は,密度変化の無視できない流体で,圧縮性流体と呼 ばれる。これに対して,水のように密度がほとんど変化せず,その密度変化

音速流れはともかく,亜音速流れか超音速流れかによって大きく話が変わることになる。

■ 等エントロピー流れ:亜音速流れの場合等エントロピー流れとは,「断熱変化を満たす流れ」と考えてよい。亜音

速流れの場合に,流れにともない,他の量がどのように変化するのかを考える。断面積が広がる場合と狭まる場合があるが,考え方は同じため,断面積が狭まる場合を考えよう。

1 連続式亜音速流れは,圧縮性は無視できないものの,音速が遅いため,連続式が

覆るほどではないと考える。つまり,非圧縮性流体であれば,連続式によって,

となる。つまり,A が小さくなれば,v は大きくなる。亜音速流れは,正確には連続式は成り立たないが,大小関係が逆転するほどではない。そこでやはり,次のようになる。

「A減少」 → 「v増加」

2 ベルヌーイの定理圧縮性流れでもベルヌーイの定理は成り立つ。つまり,高さ変化がなけれ

ば,次の式が成立する。

この式から,次のことが分かる。「v増加」→「p減少」

3 断熱変化(等エントロピー流れ)断熱変化では,圧力が減少すると,体積 V が増加し,温度 T は減少する。

体積の増加は,密度ρが減少することを意味する。したがって,次のようになる。

「p減少」→「T減少」「ρ減少」

以上で求めたい変化はすべて出てきている。断面積が増加する場合も同じように求めればよい。結果はすべて逆になる。

dA < 0

ここで使ったベルヌーイの定理による流速と圧力の大小関係の考察は,流体力学の他の部分でも使われます。

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■ 等エントロピー流れ:超音速流れの場合超音速流れは,圧縮性の大きい流れである。そのため,亜音速流れ以上に

圧縮性がきいてくることになる。ただし,連続式以外は亜音速流れと全く同じ考え方になる。

1 連続式超音速流れは,圧縮性が大きいため,連続式が大きさの大小についても成

り立たないと考えればよい。つまり,断面積が減少する場合,連続式によると,A が減少した分 v が増

加することになる。しかし,超音速流れはこれが成り立たず,v も減少すると考える。結局,超音速流れは,連続式が上式と反対になる流れと考えればよい。以降の考え方は亜音速流れと同じである。

以上の結果を下の表にまとめてみること。

種類 断面積 A 流速 v 圧力 p 温度 T 密度ρ

亜音速流れ減少

増加

超音速流れ減少

増加

■ ラバールノズル以上をふまえると,流体を加速して超音速流れをつくるためには,亜音速

の段階では断面積を減少させ,超音速の場合には断面積を増加させる必要があるとわかる。このような形状のノズルをラバールノズルという。

M = 1M > 1M < 1

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【No.  1】(H.22)気温 -60℃の上空における音速はいくらか。ただし,空気の比熱比を 1.4,気体定数を 287J/(kg・K) とする。1. 260m/s  2. 290m/s  3. 340m/s  4.390m/s  5.420m/s

【No.  2】(H.25)気体がラバールノズルを流れ,超音速で噴出しているとき,ラバールノズル内において流路が最も狭くなるスロート部のマッハ数 MT と噴出端のマッハ数 ME のマッハ数 1 に対する大小関係として最も妥当なのはどれか。

ただし,この流れは準一次元定常等エントロピー流れとする。 1. ME = 1 > MT  2. ME > 1 > MT  3. ME > 1 = MT  4. MT >1 > ME  5. MT = 1 > ME

【No.  3】(H.28)図のように,流れ方向に断面積が増加するノズルを気体が超音速で通過するときの,断面 1,断面 2 におけるマッハ数 M,流速 U,温度 T の大小関係の組合せとして最も妥当なのはどれか。

ただし,流れは準一次元等エントロピー流れとする。

マッハ数 流速 温度1. M1 > M2 U1 > U2 T1 < T2

2. M1 > M2 U1 > U2 T1 > T2

3. M1 < M2 U1 < U2 T1 < T2

4. M1 < M2 U1 < U2 T1 > T2

5. M1 < M2 U1 > U2 T1 > T2

【No.  4】(H.27)流路内の超音速流れに関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。「図のように,流れ方向に断面積が減少する流路を通過する気体は,速度が( ㋐ )し,圧力は( ㋑ )し,

温度は,( ㋒ )する。ただし,流れは準一次元等エントロピー流れで,圧縮性を考慮する。

㋐ ㋑ ㋒1. 増加 減少 低下2. 増加 増加 低下3. 増加 減少 上昇4. 減少 増加 上昇5. 減少 増加 低下

過去問

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【No.  5】(H.24)準一次元定常等エントロピー流れに関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。「流れ方向に断面積が緩やかに変化するノズルの中を空気が超音速で流れているとき,ノズル断面積が流れ方向

に( ㋐ )すると,流速は増加し,圧力は( ㋑ )し,温度は( ㋒ )する。」㋐ ㋑ ㋒

1. 増加 増加 上昇2. 増加 減少 低下3. 減少 増加 上昇4. 減少 増加 低下5. 減少 減少 低下

【No.  6】(H.23)準一次元的に緩やかに断面積 A の変化する流管内における,密度ρ,速度 u の定常断熱流の等エントロピー変化に関して,記号 d で流管に沿った微小変化を表すとき,次式が成り立つ。

ただし,音速を a とする。この定常断熱流に関する次の記述の ㋐,㋑,㋒に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「等エントロピー定常超音速流において,流管の断面積が増加しているとき,速度は( ㋐ ),それに伴い密度は( ㋑ ),静温度は( ㋒ )ている。

㋐ ㋑ ㋒1. 減少し 増加し 上昇し2. 減少し 減少し 低下し3. 変化せず 減少し 低下し4. 増加し 増加し 上昇し5. 増加し 減少し 低下し

【No.  7】(H.22)ノズル内の流れに関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「図のように,流路を絞った絞ったノズルを通過する気体は,速度が( ㋐ )し,( ㋑ ),温度は( ㋒ )する。ただし,流れは 1 次元等エントロピーの亜音速流で,圧縮性を考慮するものとする。」

㋐ ㋑ ㋒1. 減少 圧縮されて 上昇2. 減少 膨張して 低下3. 増加 圧縮されて 上昇4. 増加 膨張して 上昇5. 増加 膨張して 低下

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【No.  8】(H.21)断面積が流れ方向に緩やかに変化するノズルがある。このノズル内を流れる空気に関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

ただし,流れは圧縮性準1次元流であり,エントロピー変化はないものとする。「流れの圧力を運動エネルギーに変換して流速を増加させるには,流速が亜音速の場合にはノズルの断面積を流

れ方向に( ㋐ )させ,超音速の場合には( ㋑ )させなければならない。また,流速が超音速の場合にノズルの断面積を流れ方向に( ㋑ )させると,温度は( ㋒ )。」

㋐ ㋑ ㋒1. 減少 増加 低下する2. 減少 増加 上昇する3. 減少 増加 変化しない4. 増加 減少 低下する5. 増加 減少 上昇する

【No.  9】(H.26)圧縮性流体(理想気体)に関する次の記述の㋐~㋓に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。「熱力学第二法則より,静止した垂直衝撃波の下流において,流体のエントロピーは上流と比べて( ㋐ )する。また,流速は上流と比べて( ㋑ )し,静圧は上流と比べて( ㋒ )する。さらに,垂直衝撃波の下流は,( 

㋓ )流れである。」㋐ ㋑ ㋒ ㋓

1. 増加 増加 減少 超音速2. 増加 減少 増加 亜音速3. 減少 増加 増加 亜音速4. 減少 増加 減少 超音速5. 減少 減少 減少 超音速

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2 レイノルズ数と粘性■ 粘性力

流速分布が一定でない場合,速度勾配に応じて水にせん断応力がはたらく。これを粘性力という。すなわち,水にはたらくせん断応力τは,次の式で計算できる。

粘性によるせん断応力τは次の式で計算できる。

ただし,μ:粘性係数(粘度),u:x 方向の流速である。

公 式

■ レイノルズ数と流れの分類管内の流れは,粘性力の大小によって大きく変化する。特に流速分布に注

目すると,流れが平行に層をなしている層流と,流れが大きく乱れている乱流に大きく分けることができる。これは下の図 I のレイノルズの実験で確かめられる。この実験では,ガラス管に着色したインクを通しながら管内の流速を変化させるもので,流速が小さい間は図 II のようにインクは一直線に伝わるが,流速が大きくなるとインクが管全体に広がっていく。これは,管の流れが乱れていることを表している。図 II のような流れを層流,図 III のような流れを乱流という。

層流と乱流は,次の式で定義されるレイノルズ数によって判別することができる。

レイノルズ数 Re は次の式で計算できる。

ただし,μ:粘性係数(粘度),v:流速,d:管径,ρ:密度,ν:動粘

性係数(動粘度)であり, で定義される。

公 式

このレイノルズ数は無次元数であり単位はない。定性的には,慣性力と粘性力の比を表している。つまり,

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である。レイノルズ数を使うと,層流と乱流の判別は次のようになる。

ここで Rec は臨界(限界)レイノルズ数である。臨界レイノルズ数の値は実験の状態によって変化するが,通常は 2000 ~ 4000 の値をとる。

■ 相似則実物大の実験を行うことができない場合,実物よりも小さな模型を使って

実験を行う。これを模型実験という。模型実験ではできる限り実物と同じ流れを再現することが目的となるが,実際にはすべてを実物通りに再現することは不可能である。そこで,実験の目的となっている現象を支配するパラメータをそろえることで,その現象だけは再現できるように実験を試みることになる。これを相似則という。特に,粘性力の支配する現象を調べる場合には,レイノルズ数を一致させる。相似則によって模型実験の諸量を計算する場合,次のように考えていくとよい。① パラメータを一致させる

模型の大きさを実物の ,実物の量を添え字 r,模型の量を添え字 m で

表す場合,レイノルズの相似則であれば,

ただし,大きさの比率から,

であり,使う流体は実物と模型で同じものとした。② 求めたい量を含む公式を1つ取り上げ,模型と実物について比をとる

たとえば流量が求めたい場合,流量を含む式として Q = vA = vd2 をとれば,

として求める。

なぜ断面積の公式に円の面積を使わないのか疑問に思うかもしれません。相似則では比のみが大切ですので,円でも正方形でも面積比には違いがないため,易しい公式をつかったのです。

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過去問【No.  1】(H.27)図のように間隔 H だけ隔たった平行な 2 枚の平板間を水で満たし,間隔 H を一定に保ったまま一方の平板を一定の速さ U で平行に動かす。動かす平板は一辺の長さが 1.0 × 102mm の正方形で,間隔 H は0.50mm,動かす平板が水から受ける抵抗力 F が 1.0 × 10-3N であった場合,速さ U はおよそいくらか。

ただし,平板間の流れは層流で,速度分布は直線的,水の粘度μは 1.0 × 10-3Pa・s とする。

1.5.0mm/s  2.10mm/s  3.20mm/s  4.25mm/s  5.50mm/s

【No.  2】(H.24)図のように,間隔 H の二枚の平行平板の間が,密度ρの液体で満たされている。下の平板を固定し,間隔 H を一定に保った状態で,一辺が L(≫ H)の正方形である上の平板を力 F で右方向へ引っ張ったところ,上の平板は,一定の速度 U で移動し,平板間の流れは,層流状態の定常流れとなった。この液体の動粘度として最も妥当なのはどれか。

ただし,この液体は非圧縮性のニュートン流体とする。

1.   2.   3.

4.  5.

【No.  3】(H.22)図のように,間隔 H の二枚の平行平板の間に水を満たし,間隔 H を一定に保ったまま,一方の平板を一定の速さ U でずらしたところ,平板間の流れは層流で,速度分布は直線的であった。ずらした平板が水から受ける抵抗力 F として最も妥当なのはどれか。

ただし,ずらした平板は一辺 200mm の正方形であり,H = 1.5mm,U = 30mm/s,水の粘度μ =1.0×10-3Pa・sとする。

1.2.0×10-4 N2.8.0×10-4 N3.2.0×10-2 N4.6.0×10-2 N5.8.0×10-2 N

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【No.  4】(H.25)図のように,粘度(粘性係数)μの流体が,一定の圧力勾配のもと,間隔を d とする無限に広い水平な平行平板間を層流状態で定常的に流れている。この流体の x 軸方向の速度を,

とするとき,x 軸上の平板に作用するせん断応力(単位面積当たりの粘性摩擦力)として最も妥当なのはどれか。ただし,U を正の定数とし,この流体は非圧縮性のニュートン流体であるものとする。

1.   2.   3.   4.   5.

【No.  5】(H.24)円管内の液体の流れに関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものとして最も妥当なのはどれか。

「液体の流れが層流になるか乱流になるかを判断する無次元数としてレイノルズ数がある。レイノルズ数は円管の内径,液体の( ㋐ ),液体の密度,液体の( ㋑ )から求めることができ,円管の内径が( ㋒ )ほど,流れは乱流になりやすくなる。」

㋐ ㋑ ㋒1. 流速 粘度 大きい2. 流速 粘度 小さい3. 圧力 粘度 小さい4. 圧力 温度 大きい5. 圧力 温度 小さい

【No.  6】(H.21)円管内の液体の流れに関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものとして最も妥当なのはどれか。

「液体の流れが層流になるか乱流になるかを判断する数値としてレイノルズ数がある。レイノルズ数は円管の内径,液体の密度,液体の速度( ㋐ )から求めることができ,( ㋑ )が大きいほど,流れは( ㋒ )になりやすくなる。」

㋐ ㋑ ㋒1. 液体の粘度 液体の密度 乱流2. 液体の粘度 液体の密度 層流3. 液体の粘度 液体の速度 層流4. 液体の圧力 液体の密度 乱流5. 液体の圧力 液体の速度 層流

【No.  7】(H.28)50km/h で走行している自動車の周りの流れの状態を知るために, の大きさの模型を作っ

て風洞実験をする場合,レイノルズの相似則を用いて求められる風洞内の気流の速さはおよそいくらか。1.3.5m/s  2.7.0m/s  3.14m/s  4.28m/s  5.56m/s

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【No.  9】(H.27)レイノルズ数 Re に関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものとして最も妥当なのはどれか。「流れに対する粘性の影響力は,レイノルズ数 Re により支配される。流体の動粘度をν,流れの代表速度(基準となる速さ)を U,流れ場の代表長さ(基準となる寸法)を L とすればレイノルズ数 Re は( ㋐ )で定義され,動粘度νと代表速度 U が一定の場合は,流れ場の代表長さ L が小さいほど粘性の影響は( ㋑ )なる。

また,幾何学的に相似な二つの流れにおいてレイノルズ数が等しいとき,二つの流れの流体の種類が( ㋒ ),レイノルズの相似則が成立し,二つの流れは力学的に相似である。」

㋐ ㋑ ㋒

1.   小さく 同じ場合に限り

2.   大きく 同じ場合に限り

3.   大きく 異なるとしても

4.   大きく 同じ場合に限り

5.   小さく 異なるとしても

【No.  10】(H.21)図のように,粘度μの非圧縮性流体が,一定の圧力勾配のもと,層流状態で定常的に円管を流れている。この流れに関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものとして最も妥当なのはどれか。

「円管内の中心軸を基準として,円管内に半径 r,長さ の流体の円筒部分をとる。円筒の一方の面に作用する圧

力を p,もう一方の面に作用する圧力を ,円筒に作用するせん断応力をτとすると,円管の軸方向の摩擦

力と圧力の釣合いから,(  ㋐  )

となる。一方,τと流体の速度 u には,(  ㋑  )

の関係が成立する。㋐,㋑からτを消去すると,流体の速度分布は,r に関する( ㋒ )関数で表されることがわかる。」

㋐ ㋑ ㋒

1.     2 次

2.     対数

3.     2 次

4.     1 次

5.     1 次

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【No.  11】(H.27)ポアズイユ流れに関する円管内の液体の流れに関する次の記述の㋐~㋓に当てはまるものとして最も妥当なのはどれか。

「図のように,粘度(粘性係数)μの非圧縮性流体が,管長 L 当たりの圧力降下 のもと,半径 R の円管内を定

常的に流れている。この流れは層流であり,レイノルズ数は臨界レイノルズ数よりも( ㋐ )。また,円管の中心軸(x 軸)方向の流体の速度 u(r) は,x 軸から半径方向の距離 r の関数であり,次式で表されるものとする。

このとき,円管内の流量は Q = ( ㋑ )と表すことができ,R の( ㋒ )乗に比例し,μに反比例する。また,円管内の平均流速は,x 軸上(r = 0)における流速の( ㋓ )倍である。」

㋐ ㋑ ㋒ ㋓

1. 大きい    4  

2. 大きい   5  

3. 小さい   5  

4. 小さい   5  

5. 小さい   4  

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3 2次元ポテンシャル流れ■ 複素ポテンシャル

2 次元,非圧縮,渦なしの条件において流れは複素ポテンシャルと呼ばれる複素関数から導き出される。つまり,任意の複素関数 f(z) から流れを導き出すことができる。以下で,複素関数から流れについて求める方法を紹介しよう。

1 速度ポテンシャル,流れ関数→流線,流量を求める

複素ポテンシャルを実部,虚部に分けることで,速度ポテンシャル ,

流れ関数 を求めることができる。つまり,z = x + iy とおいて,次の公式

を使う。

複素ポテンシャル f からは速度ポテンシャルと流れ関数は次式で求められる。

公 式

このうち,流れ関数からは次のことがわかる。1 流れ関数が一定となる線が流線となる2 2 点 A,B の間を通る流量 Q が流れ関数の差で求められる。つまり,

2 流速を求める流速ベクトル (u, v) は複素ポテンシャルの微分で求められる。つまり,次

の公式が成立する。

複素ポテンシャル f の導関数から,次式で流速ベクトルを求めることができる。

公 式

■ 極座標による表現2 次元ポテンシャル流れでは,極座標 r,θを使って流速等を求める場合

も数なくない。極座標と xy 座標の間には,x = r cos θ,y = r sin θの関係が成り立つが,複素関数の場合,オイラーの公式によって次のように表現される。

複素数で極座標を使いたいときには次の公式を使う。公 式

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また,極座標における速度成分が知りたい場合には,次の公式を利用する。

極座標における流速は以下のようになる。公 式

■ 流線と流跡線流線とは,ある瞬間の流速ベクトルを接線方向と見なして結んだ線のこと

である。いわば,流速ベクトルを滑らかにつないだベクトルである。流速ベクトル (u, v) が与えられた場合,これが接線方向となるため,次の式が成立し,これを解くことで流線を求めることができる。

なお,式中に時間 t が入っても定数と見なす。

一方,ある水粒子がたどる軌跡を流跡線という。これは流れが定常であれば流線と一致する。こちらは流速ベクトルを直接積分すれば求めることができる。すなわち,次の微分方程式を解けばよい。

なお,こちらは t は変数とみなす。

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過去問【No.  1】(H.22)x 軸の正方向と角度αをなす速度 U の一様流は,複素速度ポテンシャル で表す

ことができる。この一様流の速度ポテンシャル と流れ関数 の組合せとして最も妥当なのはどれか。

なお,z は,座標系 (x, y) において,図のように表すことができる複素数とする。 

【No.  2】(H.23)図のように,平板に垂直に衝突するポテンシャル流に関し,流れを表す複素ポテンシャル f(z)の式と平板表面の圧力 p(x) に関する記述の組合せとして最も妥当なのはどれか。

ただし,z = x + iy とする。

1    

2    

3    

4    

5    

複素ポテンシャル f(z) 圧力 p(x)

1 f(z) = z  x の増加とともに増加する。 

2 f(z) = z2  x の増加とともに増加する。 

3 f(z) = z2  x の増加とともに減少する。 

4 f(z) = ln z  x の増加とともに増加する。 

5 f(z) = ln z  x の増加とともに減少する。 

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【No.  3】(H.28)xy 平面(直交座標系)における二次元のポテンシャル流れに関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものとして最も妥当なのはどれか。

ただし,虚数単位を i,x = r cos θ,y = r sin θとした極座標を ,A を正の実定数とする。また,複素

ポテンシャル W は, で与えられる。

「複素ポテンシャルが で表される流れにおいて,流れ関数は( ㋐ )である。 を壁に沿う流

線とし,壁面付近の流線を図示すると,( ㋑ )のようになり,流れの速さは原点から遠いほど( ㋒ )なる。」

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【No.  4】(H.27)xy 平面(直交座標系)における二次元のポテンシャル流れに関する次の記述の㋐,㋑,㋒に当てはまるものとして最も妥当なのはどれか。

ただし,虚数単位を i,x = r cos θ,y = r sin θとした極座標を とする。

「複素速度ポテンシャルが で表される流れ(Q > 0)において,流れ関数 は( ㋐ )であり,

この流れは,流量の大きさが( ㋑ )の( ㋒ )である。」㋐ ㋑ ㋒

1.     右回転渦

2.   Q わき出し

3.     右回転渦

4.     わき出し

5.   Q わき出し

【No.  5】(H.20)複素速度ポテンシャル w(z) が, と表される流れがある。このとき,点

における流速ベクトルとして正しいのはどれか。

1.   2.   3.   4.   5.

【No.  6】(H.24)非圧縮性流体の二次元ポテンシャル流れにおいて,速度ポテンシャルが

で与えられるとき,流れ関数 として最も妥当なのはどれか。

ただし,x,y は二次元デカルト座標(直交座標)とし,C を任意定数とする。

1.   2.   3.

4.   5.

【No.  7】(H.23)非圧縮性流体の二次元ポテンシャル流れにおいて,速度ポテンシャルが

で与えられるとき,流れ関数 として最も妥当なのはどれか。

ただし,x,y は二次元デカルト座標(直交座標)とし,C を任意定数とする。

1.   2.   3.

4.   5.