インフラとネットワークを支える エンジニアリング事業で成長 … ·...

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NTT技術ジャーナル 2017.10 50 199 インフラ ・ ネットワーク ・ クラウド事業の三本立てと 「自動化」をキーワードにしたビジネス展開を ◆設立の背景をお聞かせください. NTTコム エンジニアリングは,FA(Factory Automation) 向けシステムエンジニアリング事業を行う会社として, 1987年4月に設立されました.その後,業容拡大に伴い, ネットワークサービスをベースとしたパッケージサービス やISDN通信機器の開発販売などを行い,2007年4月に NTTコミュニケーションズのエンジニアリングとソリュー ションのバリューチェーンの一角を担う100%の子会社と なりました.2014年には,エンジニアリングとソリュー ションに関する業務分担の明確化を行い,競争力を一層高 めるためにNTTコミュニケーションズのグループ会社間の 事業再編を行いました.当社は,エンジニアリング業務を 事業の中心とした会社として体制を一新,社名も「NTTコ ム エンジニアリング」としました.創業期には13名だっ た社員は30周年を迎えた2017年3月31日現在で1893 名となり,質 ・ 量ともにグループの中核企業に成長しま した. ◆事業概要を教えてください. 当社はNTTコミュニケーションズが提供している電気通 信サービスの設計 ・ 構築 ・ 保守 ・ 運用を担っています.国 内におけるサービスとしては,インフラ,ネットワーク, クラウド,そしてその上位レイヤである,アプリケーショ ン&コンテンツサービスやボイスサービス等が対象となり ます.一方,グローバルサービスとしては,ネットワークサー ビスはもちろん,インドのNetmagic Solutions(Netmagic 社)や米国大手のVirtela Technology Servicesなどと連 携し,機能ごとの役割分担をしながらネットワークとクラ ウドの構築も進めています. それらに加え,これまでNTTコミュニケーションズが行っ ていた,既存法人顧客の回線の移転 ・ 増設といった申込み 受付から開通に至る一連のデリバリーマネジメントとサー ビスマネジメントを当社が引き継ぎました. ◆どのような事業に重点を置かれていますか. NTTコミュニケーションズグループは,2020年に向け た新中期事業戦略「ビジョン2020」の中で,「Transform. Transcend.」ということを掲げています.社会や市場に対 して変革をもたらし,卓越した新たな価値や既成概念を越 えてつながる世界を創造することをしっかりと支え,現場 でさまざまなカイゼンを行うことで,品質を向上させ,効 率化したサービスの提供に取り組むのが当社のミッション です.まずは,コア事業であるネットワークやクラウド関 連の構築や保守 ・ 運用の品質を向上し,プロセス改革と自 動化などによる効率化を図っています. ◆今後の展望をお聞かせください. 足元の事業をしっかりと行うことはもちろんですが,今 後を見据え,世の中の技術の変化にも対応していくために, 人材の育成を行います.クラウド化の流れが加速する中で, とりわけ,SDx(Software Defined anything)+Mに当 社として取り組む必要があります.SDxとは,従来,サー バやストレージ,ネットワークといった物理インフラを, それぞれサービスや機能ごとに個別に設置して,設定 ・ 管 http://www.nttceng.com/ インフラとネットワークを支える エンジニアリング事業で成長 クラウドの展開でさらなる飛躍を NTTコム エンジニアリングは,NTTコミュニケーションズグルー プのバリューチェーンの一翼を担う企業だ.同社の事業や展望など について,荒本和彦社長にお話を伺った. NTTコム エンジニアリング 荒本和彦社長 NTTコム エンジニアリング株式会社

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Page 1: インフラとネットワークを支える エンジニアリング事業で成長 … · としても,自らソフトウェアやツールを開発できるように, 会社として地力をつける努力をしています.効率的に自動

NTT技術ジャーナル 2017.1050

199

インフラ ・ ネットワーク ・ クラウド事業の三本立てと「自動化」をキーワードにしたビジネス展開を

◆設立の背景をお聞かせください.NTTコム エンジニアリングは,FA(Factory Automation)

向けシステムエンジニアリング事業を行う会社として,1987年4月に設立されました.その後,業容拡大に伴い,ネットワークサービスをベースとしたパッケージサービスやISDN通信機器の開発販売などを行い,2007年4月にNTTコミュニケーションズのエンジニアリングとソリューションのバリューチェーンの一角を担う100%の子会社となりました.2014年には,エンジニアリングとソリューションに関する業務分担の明確化を行い,競争力を一層高めるためにNTTコミュニケーションズのグループ会社間の事業再編を行いました.当社は,エンジニアリング業務を事業の中心とした会社として体制を一新,社名も「NTTコム エンジニアリング」としました.創業期には13名だった社員は30周年を迎えた2017年3月31日現在で1893名となり,質 ・ 量ともにグループの中核企業に成長しました.◆事業概要を教えてください.

当社はNTTコミュニケーションズが提供している電気通信サービスの設計 ・ 構築 ・ 保守 ・ 運用を担っています.国内におけるサービスとしては,インフラ,ネットワーク,クラウド,そしてその上位レイヤである,アプリケーション&コンテンツサービスやボイスサービス等が対象となります.一方,グローバルサービスとしては,ネットワークサー

ビスはもちろん,インドのNetmagic Solutions(Netmagic社)や米国大手のVirtela Technology Servicesなどと連携し,機能ごとの役割分担をしながらネットワークとクラウドの構築も進めています.

それらに加え,これまでNTTコミュニケーションズが行っていた,既存法人顧客の回線の移転 ・ 増設といった申込み受付から開通に至る一連のデリバリーマネジメントとサービスマネジメントを当社が引き継ぎました.◆どのような事業に重点を置かれていますか.

NTTコミュニケーションズグループは,2020年に向けた新中期事業戦略「ビジョン2020」の中で,「Transform. Transcend.」ということを掲げています.社会や市場に対して変革をもたらし,卓越した新たな価値や既成概念を越えてつながる世界を創造することをしっかりと支え,現場でさまざまなカイゼンを行うことで,品質を向上させ,効率化したサービスの提供に取り組むのが当社のミッションです.まずは,コア事業であるネットワークやクラウド関連の構築や保守 ・ 運用の品質を向上し,プロセス改革と自動化などによる効率化を図っています.◆今後の展望をお聞かせください.

足元の事業をしっかりと行うことはもちろんですが,今後を見据え,世の中の技術の変化にも対応していくために,人材の育成を行います.クラウド化の流れが加速する中で,とりわけ,SDx(Software Defi ned anything)+Mに当社として取り組む必要があります.SDxとは,従来,サーバやストレージ,ネットワークといった物理インフラを,それぞれサービスや機能ごとに個別に設置して,設定 ・ 管

http://www.nttceng.com/

インフラとネットワークを支えるエンジニアリング事業で成長クラウドの展開でさらなる飛躍を

NTTコム エンジニアリングは,NTTコミュニケーションズグループのバリューチェーンの一翼を担う企業だ.同社の事業や展望などについて,荒本和彦社長にお話を伺った.

NTTコム エンジニアリング 荒本和彦社長

NTTコム エンジニアリング株式会社

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51NTT技術ジャーナル 2017.10

担当者に聞く

理をしていた部分を統合し,ソフトウェアツールを用いることで統合された物理インフラ上で,個々のサービスや機能を実現し,自動的に制御する仕組みのことです.さらに,

「+M」として,複雑化するこれらのクラウド環境を包括的にマネジメントすることであり,今後これらは各種のマネージドサービスや,セキュリティソリューションと組み合わされたサービス展開として,大きな潮流となるでしょう.これらのサービスの一翼を担うことができるように,当社としても,自らソフトウェアやツールを開発できるように,会社として地力をつける努力をしています.効率的に自動化を進めていける部分と,人がかかわることで付加価値が付けられる部分のメリハリをつけ,継続的に研究を進めていく必要があるでしょう.そのために,まずは先進的なソフトウェアの技術を習得し,当社のノウハウとして蓄積できるように,情報の収集と人材の育成を大きな柱として進めています.

「めいげんそ言葉」でチャレンジ 「さん付け」で上下関係にこだわらない自由闊達な意見交換を

◆最後に社員へのメッセージをお願いします.私は常々,社員に対して「めいげんそ言葉」を使うよう

にお願いしています.例えば,「やってみよう」「金がある」「素晴らしい」「美しい」という,明るく(明 ・ めい)元気(元 ・げん)で素直(素 ・ そ)な表現をすることです.反対に,「金がない」「疲れた」「困難だ」「できない」というような,暗くて(暗 ・ あん),病的(病 ・ びょう),反抗的(反 ・ たん)な言葉,「あんびょうたん言葉」を使ったら,ペナルティとして500円を徴収することをルール化しました.平成元年からこの取り組みを始めていますが,皆さんがめいげんそ言葉を使ってくれているので,幸いなことに,いまだに徴収したことはありません.

私の経験ですが,仕事でチャレンジしていると失敗が9割くらい.でも,天才イチロー選手でも4割打てない.凡人の私たちは失敗のほうが多い.しかし,そういう状況のときこそ,「めいげんそ」で次のチャレンジをしてほしいと思っています.2番目は「部長」や「社長」という肩書を使わずに,「さん」付けで呼ぶようにお願いしています.新入社員も上司も関係なく,「さん」付けで呼ぶことには,忌憚なく意見を言える,考えを伝えることができるというメリットがあるからです.

3番目は,他人と比較することはやめよう,ということです.それよりも,過去の自分と比べて1ミリでも進歩しよう,と.毎日続けていれば,思わぬレベルまで到達できます.失敗しても,めいげんそで乗り切れば良いと思っています.

◆業務概要を教えてください.私たちは,NTTコミュニ

ケーションズが提供するネットワークサービスで利用されている回線設備を,新しい設備へマイグレーション

(移行)する業務を担当しています.東京と大阪にチームがありますが,日本を東西に分けた工事エリア分担ではなく,業務内容やプロセスで役割分担をしています.具体的には,東京チームで回線 ・ 設備更改の方針や中長期計画を策定し,大阪チームは単年度の月別の実行計画策定や,設計 ・ 施工 ・ 開通 ・ 切替 ・ 除却推進などを実施しています.また,お客さまの利便性の向上や工事影響の最小化を考慮して,大阪チームが窓口となり一元的に対応し,北海道から沖縄まで,各地に点在するネットワーク設備のマイグレーションにおける現場のコントロールを実施しています.◆設備マイグレーションにはどのような目的がありますか.

設備マイグレーションの目的は大きく3つあります.1番目は,サービスの品質向上です.古い設備は経年劣化による故障の確率が高くなりますので,未然に新しい設備に更改することにより,お客さまに安心して使っていただけるようにしています.

2番目は設備コストの低減と省スペース化です.現在の設備は技術の進歩により,機器構成がよりシンプルで,高速,大容量,高密度,高機能,かつ低消費電力となっています.これらの設備にマイグレーションすることで,設備コストが低減するとともに,設備構成がスリム化され,省スペース化を図ることができます.

3番目は,最新の高機能の設備に変えることで,より付加価値の高い,新しいサービスをお客さまに提供することができます.◆現場ではどのようなご苦労がありますか.

既存の設備を新しい設備へ移行する際,収容されている回線の切替え作業が発生します.切替作業中は,お客さまは回線が利用できなくなりますので,一時的にお客さまの回線をお借りしたうえで,切替工事を行う必要があります.作業予定日の調整は回線の借用許可をいただくことがポイントとなりますが,この調整が容易ではありません.NTT局舎内の回線設備には複数のお客さまの回線が収容されて

ネットワークのシンプル化とお客さま目線での品質向上の実現をめざして!インフラネットワーク部 インフラネットワーク部門テクニカルマネージャー 辻口 秀二さん,主査 加藤 秀紀さん,担当課長 一間 哲志さん,桝本 仁さん

左から,加藤秀紀さん,辻口秀二さん,一間哲志さん,桝本仁さん

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NTT技術ジャーナル 2017.1052

担当者に聞く

おり,それらが多重化されています.すべてのお客さまから,同じ日時で回線借用許可をいただければ,そのタイミングで一気に切替工事を行うことができますが,実際にはお客さまごとに回線の利用形態が異なり,すべての回線借用を同一日時で行うことはまず不可能です.よって,極力お客さまのご要望日に合わせながら,効率的な切替工事ができるよう,作業日程の調整業務に取り組んでいます. ◆お客さまの負担を低減するためにどのような工夫をして

いますか.回線の切替え工事は回線1本当り通常10〜20分要しま

す.この間はサービス停止となりますが,回線が多重化されている場合は,予備回線が準備されており,故障等の発生時には自動で予備回線に切り替えることで,サービス中断を避けるような仕組み(冗長構成)があります.この冗長構成を利用し,先に使われていない予備回線を新しい設備に切り替えて,その後切り替えた回線を現用回線として使うことで,現用回線と予備回線を入れ替えます.次に,新たに予備となった回線を新しい設備に切り替え,そのまま予備回線とすることで,極力多くの回線に対し,サービス中断なく回線切替工事を実施できるよう工夫しています.

◆業務概要をお聞かせください.私たちは,SO(サービス

オーダー)デリバリユニットとして,NTTコミュニケーションズのネットワーク系のサービスを利用する法人のお客さまの新規サービスへの加入や変更,廃止などのご要望に対して,そのSO処理,およびそれに引き続く回線開通等のデリバリ業務を担当しています.具体的には,まず,お客さまからの申込書を,顧客管理システムなどを通して確認します.次に,お客さまのビルに,回線終端装置,ルータなどの顧客構内設備(CPE:Customer Premises Equipment),光ケーブルの設置 ・ 施工を行うために,事前に現場調査を行います.現場調査の結果を基に設計を行い,関係部署,関連会社と連絡を取りながら,お客さまのご希望日までに開通ができるよう,工事の調整などを経て,最終的にNTTコミュニケーションズのサービスと接続して開通します. ◆重点的に取り組まれていることは何ですか.

現在,力を入れているのは,自動化によるSOデリバリ業

務の効率化です.例えば,申込み受付から工事の発注,調整,CPEなどの端末設定,出荷までの一連の業務フローにおいて,随所でPCへデータを入力しますが,以前はこれらの画面操作を手動で行っていました.今は独自に開発したツールを使い,ウェブリクエストにより,オーダーを直接生成 ・送信することができるようになりました.ウェブアプリケーションでないシステムへのデータ投入や,異なるネットワーク間を跨ぐ処理が必要なものにおいては,UMS(Unified Management Support System)やデータブリッジを駆使することで,情報連携やデータ投入の自動化を実現させ,お客さまのへの納期回答やその他のご要望に迅速にこたえられるようになりました.また,データ投入の際に人手を介する必要がなくなり,ヒューマンエラーを低減し,効率化と業務の精度の向上につながりました.◆今後の展望についてお聞かせください.

今後取り組みたいと考えていることは主に2つあります.1つは自動化処理の拡充です.関係各署との連絡業務においては,すでに業務処理システムどうしを自動連携させていますので,リアルタイムでの情報共有ができます.そのため,複数の業務間において,一連の業務処理をスムーズに流すことは実現できています.この自動化をさらに広く展開し,お客さまからの申込み受付,設計,納期回答,工事発注,開通までのすべてを,人手の介入なしに,自動で行えるようにしていきたいと考えています.

もう1つは人材育成です.老朽化したシステムの廃止や変更などの対応を行う場合,当時の担当者しか分からない技術やルールが使われていることがあります.そうした専門的なノウハウや技術が自動化の壁になっていることから,特殊なシステムの標準化 ・ ナレッジの共有化の促進を加速させています.まずはe-ラーニングや実際の設備を使った実習を交えながら,若手社員を中心に知識やノウハウを引き継いでいます.これらの取り組みにより,少数精鋭かつ汎用性の高いチームをつくっていきたいと考えています.

◆業務概要についてお聞かせください.私たちはNTTコミュニケー

ションズが全世界に展開している次世代型クラウドサービスEnterprise Cloud2.0(ECL2.0)の保守 ・ 運用,均一なオペレーションの提供を行っています.

SOデリバリ業務における自動化と担当間のデータ受け渡し業務の自動化に尽力サービスネットワーク部 サービスネットワーク部門主任 井坂 克二さん,主任 新貝 強さん,喜田 和也さん,見瀧 真奈さん

クラウドサービスにおけるグローバルオペレーション最適化へのチャレンジクラウド ・ アプリケーション&ボイス部クラウド ・ アプリケーション部門担当課長 小山 和邦さん,主査 金子 達也さん,宮崎 友貴さん

左から,井坂克二さん,喜田和也さん,見瀧真奈さん,新貝強さん

左から,宮崎友貴さん,金子達也さん

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53NTT技術ジャーナル 2017.10

ECL2.0は,複数の小さなコンポーネント(仮想マシン,仮想ストレージ,バックアップ機能,監視機能等)が組み合わさり,大きなサービスを形成しているのが特徴です.コンポーネントそれぞれに分担して開発が進められますので,スピードがあるうえ,1つのコンポーネント単独でもサービスの提供が可能です.現在,米国,英国,ドイツ,オーストラリア,香港,シンガポール,そして日本の2カ所,合計8つの拠点で物理機器を保有し,全世界で展開しています.

チームの体制は,ECL2.0の運用 ・ 保守の組織として,階層レベル別にTier1〜3に分かれています.具体的には,1日24時間,365日の設備監視と故障時の1次対応をしているのがTier1.Tier1で回復しない故障はTier2で原因調査や復旧の対応を行います.さらに,Tier2で回復しない場合は,サービスの開発チームであるTier3にエスカレーションされます.私たちはTier2の業務を担当しています. ◆重点ポイントを教えてください.

重点的に取り組んでいるのが,NTTコミュニケーションズの子会社のNetmagic(インド)への保守移管プロジェク ト で す. 同 社 は 開 発 や 保 守 ・ 運 用 を 行 うIT企 業 で,2016年10月から,それまで世界8地域の保守 ・ 運用を担当してきた東京のTier1の業務のうち,グローバル対応が必要な6地域の保守 ・ 運用業務を行うことになりました.しかし,東京で行っていたオペレーション業務を,文化 ・ 習慣 ・言語が異なる海外の企業へそのまま移管することは現実的ではありません.そこで,移管を効果的に進めるために,さまざまな取り組みを行いました.◆どのような点を工夫しましたか.

大きく2つあります.1番目は,ECL2.0のサービスで,

異常発生時に監視画面に出る警報の低減化です.本サービスは複数のコンポ—ネントから構成されており,監視項目が複雑,かつ多数あるため,故障検知数が多く,1つの異常に対して表示される警報の数も多いという事情がありました.それらを見直して,本来であれば故障や異常への直接対応の必要ない警報,エラーが自動的に解除されるような軽微な故障の場合は,警報を出さないようにする,さらに警報の発生からトラブルチケットを自動生成するツールの開発を行うなどして,9割の警報の削減を実現しました.

2番目は,現地の社員にオペレーションを習熟してもらうための工夫です.例えば,2500ページにのぼる日本語のオペレーション手順書の英語化です.Tier2では,翻訳にとどまらず,技術者による細かい記述と手順の見直しを行い,品質の向上に取り組みました.また,同社のオペレーション環境の整備を行い,東京とNetmagic双方が密な連携をとり,信頼関係を構築することで,お互いにカイゼン策を見出すことに努めました.◆今後の展望についてお聞かせください.

Tier1でオペレータが実施する膨大な量の手順を常に最新の状態で維持 ・ 管理し続けることが必要です.そのために,なるべくオペレーションを自動化 ・ 標準化し,手順をシンプルにすることで,ミスを低減し,迅速な故障回復ができるように取り組んでいきます.Netmagicとの協業により得ることのできた知見やノウハウを基に,ECL2.0のみならず,他のサービスにおいても,海外の協業パートナーとの連携を加速させ,世界中のオペレーションの品質向上に努めていきます.

■途上国支援,「ブックバトンプロジェクト」に参加NTTコム エンジニアリングでは社会貢献施策の一環として,アジア ・ アフリカにおける子どもの教育を支援する国際NGO

「ルーム ・ トゥ ・ リード」が行っている「ブックバトンプロジェクト」に2017年4月から参加しています.具体的には,社員の皆さんが読み終えた本やCD,DVDなどを同NGOの日本法人NPO「ルーム ・ トゥ ・ リード ・ ジャパン」のパートナー企業に送付し,買い取ってもらいます.そこで集まった資金は,支援の対象となる国の現地語の児童書の贈呈や子女教育のサポート,図書室の設置や小学校校舎の新設などの費用に充てられます.現在支援の対象となっているのは,ベトナム,カンボジア,インド,ラオス,タンザニアなどの10カ国です.■ちびっ子たちの職場訪問,社長との対話会も

2017年1月,NTTコム エンジニアリングの本社で「第1回コムエンジ ファミリーデー」を開催しました.社員の家族を職場に招待し,日頃,お父さん,お母さんがどういう仕事をしているのか,実際に見て,知ってもらおうという取り組みです.参加できるのは,小学生以下のお子さんやお孫さんを持つ社員.当日は子どもと一緒に出勤し,まずはオリエンテーションでその日の予定についての説明を受けます.その後機械室など,普段見ることのできない場所や職場の見学会.名刺をつくり,荒本社長との名刺交換や対話会,さらに,社長の椅子に座っての記念撮影.参加した社員からは,「働いている自分の姿を子どもに見せることができて良かった」「家族との会話が弾んだ」など,評判は上々です.第2回は2017年8月に大手町と大阪 ・ 中之島で開催.今後も定期的に開催します.

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