腹部敗血症性ショック患者における急性期血液浄化...

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症 例 患者は67歳、女性。身長141cm、体重44kg。既往歴と して全身性エリテマトーデス(プレドニン7.5mg/day内 服中)と膀胱癌(回腸導管造設術後)があった。膀胱癌 再発に対する化学療法を開始する予定で入院中に、急 激に腹部全体におよぶ腹痛を発症したために精査した ところ、腹部CTにて下行結腸穿孔による腹膜炎と診断 され、ただちに緊急開腹術が施行された。 緒 言 敗血症性ショックの治療では近年、EGDT(Early Goal Directed Therapy)に基づいた全身管理を行 い、中心静脈 圧(C VP)、平均動脈 圧(MAP)、中心静脈 血酸素飽和度(ScvO 2 )などの目的とする値を早期に達 成することが患者の生命予後を改善すると考えられて いる 1) 。しかしながら、EGDTに全力をつくしても急性腎 障害(Acute Kidney Injury)や多臓器不全症候群 (Multiple Organ Dysfunction Syndrome)に至る症 例も希でなく、そのような場合は腎機能補助あるいは 輸液スペース確保といった目的で急性期血液浄化療法 が必要となる。 しかし、敗血症性ショックの患者では大量の輸液を 行っても血圧が維持できないため、通常カテコラミン の投与を必要としており、この循環動態が不安定な時 期に急性期血液浄化療法を開始および維持すること は非常に困難でかつ危険を伴う 2) 。今回 、下行 結腸穿 孔に伴う敗血症性ショック患者においてフロートラッ クシステム( 以下フロートラック )を 使 用し 、持 続 的 緩 徐式血液濾過透析(CHDF)を安全に行うことができた ので報告する。 腹部敗血症性ショック患者における急性期血液浄化療法の 水分管理にフロートラックシステムが有用であった1症例 市立堺病院麻酔科 高橋 完

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Page 1: 腹部敗血症性ショック患者における急性期血液浄化 …ht.edwards.com/scin/edwards/jp/sitecollectionimages/...CVPやPAWPは輸液・水分管理の指標としては、短時間で

© 2010 Edwards Lifesciences Limited. All rights reserved. EW-2010-0181005_0_1000

東京都新宿区西新宿6丁目10番1号本社:製造販売元 www.edwards.com/jp

症 例

 患者は67歳、女性。身長141cm、体重44kg。既往歴として全身性エリテマトーデス(プレドニン7.5mg/day内服中)と膀胱癌(回腸導管造設術後)があった。膀胱癌再発に対する化学療法を開始する予定で入院中に、急激に腹部全体におよぶ腹痛を発症したために精査したところ、腹部CTにて下行結腸穿孔による腹膜炎と診断され、ただちに緊急開腹術が施行された。

緒 言

 敗血症性ショックの治療では近年、EGDT(Ear l y Goal Direc ted Therapy)に基づいた全身管理を行い、中心静脈圧(CVP)、平均動脈圧(MAP)、中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)などの目的とする値を早期に達成することが患者の生命予後を改善すると考えられている1)。しかしながら、EGDTに全力をつくしても急性腎障害(Acute K idney Injur y)や多臓器不全症候群 (Multiple Organ Dysfunction Syndrome)に至る症例も希でなく、そのような場合は腎機能補助あるいは輸液スペース確保といった目的で急性期血液浄化療法が必要となる。 しかし、敗血症性ショックの患者では大量の輸液を行っても血圧が維持できないため、通常カテコラミンの投与を必要としており、この循環動態が不安定な時期に急性期血液浄化療法を開始および維持することは非常に困難でかつ危険を伴う2)。今回、下行結腸穿孔に伴う敗血症性ショック患者においてフロートラックシステム(以下フロートラック)を使用し、持続的緩徐式血液濾過透析(CHDF)を安全に行うことができたので報告する。

腹部敗血症性ショック患者における急性期血液浄化療法の水分管理にフロートラックシステムが有用であった1症例

市立堺病院麻酔科

高橋 完参考文献1) Rivers EP, et al . Ear ly goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock . N Engl J Med 2001, 345(19):1368-1377

2) Ronco C, et al. Continuous versus intermittent renal replacement therapy in the treatment of acute renal failure. Nephrol Dial Transplant 1998, 13:s79-85

3) 中敏夫ら. “4.血液浄化法”. Ⅵ.腎・泌尿器の技術. 外科救急アトラス. 外科治療2006増刊, 94:278-288

4) 立石順久ら. 敗血症性ショックに対するCHOF. ICUとCCU 2009, 33(2):105-111

販売名 フロートラック センサー承認番号 21700BZY00348

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除水量(mℓ/hr)

(mℓ/回/m2)

(%)

(mmHg)

※手術室を0時頃に退出しICUに入室したため術後第1日目からとなった。

術後第1日目 術後第2日目 術後第3日目

術中経過

 手術室入室時は意識混濁を認めたが、血圧は正常であった。術中に循環動態が著明に変動したり大量輸液が必要になることを予想して右橈骨動脈に挿入したカテーテルにフロートラックを接続し、動脈圧心拍出量(APCO)/動脈圧心拍出量係数(APCI)、一回拍出量変化(SVV)、一回拍出量(SV)/一回拍出量係数(SVI)の持続モニタリングを開始した。また、右内頸静脈に中心静脈カテーテルを挿入し中心静脈圧(CVP)を測定した。 手術開始後、EGDTプロトコールに基づきCVP10mmHg以上を目標とし、さらにフロートラックによるSVV13%以下とSV上昇を目標に加えて大量輸液と輸血を行ったが、MAPは65mmHg以上に安定しなかったため、ドパミン10μg/kg/min およびノルアドレナリン0.2μg/kg/minの投与を必要とした。 開腹所見では腹腔内に汚染腹水と便塊を認め、下行結腸には直径3cm程度の穿孔部位を発見した。人工肛門造設後、20Lの生理食塩水で腹腔内を洗浄したが、大量輸液とthird spacingによる腸管浮腫(写真)が著明であった。このため、閉創すると腹腔内圧が上昇して腹部コンパートメント症候群を起こすことが予想され、持続筋弛緩薬投与下に開腹したまま、術後創持続吸引療法を行った。また、術中から乏尿を認めたため術後血液浄化療法が必要になることを考慮して、手術終了後に左内頸静脈に透析用ブラッドアクセスカテーテルを挿入してからICUへ搬送した。 麻酔時間4時間10分、手術時間2時間45分。術中水分バランスは輸液量3050mℓ、濃厚赤血球8単位、出血量350mℓ、尿量50mℓであった。

術後経過

 手術室を午前0時頃に退室し、ICUに入室した。ICU入室後も引き続き大量輸液および新鮮凍結血漿輸血を行ったが平均動脈圧65-70mmHg、SVV10-15%で推移し、循環動態は安定せずカテコラミンの投与量も減量できなかった。また、乏尿が持続し腎機能も悪化したため、敗血症性ショックに伴う急性腎機能障害と診断し、術後第1日からCHDFを施行した。人工呼吸下(PEEP 10cmH2O)でCVPも低く、SVVは10%以上で推移していたため、依然として血管内容量不足とthird spacingが続いていると判断し、除水なしとした。夕方にはCVPは10-15mmHgまで上昇し、SVVも10%まで減少したため20mℓ/hrで除水を開始した。術後第2日から次第に血圧は安定し、カテコラミンも減量できるようになった。この時点で、SVV10%以下、SVIも30-35mℓ/回/m2と安定していたため、血管内容量は十分であると判断し除水量100mℓ/hrまで増量した。術後第3日からはさらに血圧も安定し、SVV、SVIともに引き続き安定していたため、third spaceから水分が血管内にshif tしてきていると考えて輸液量を減量するとともに除水量を最大200mℓ/hrまで増量することができた。それと同時に血圧および心係数(CI)も上昇しカテコラミン離脱可能となった。

考 察

 敗血症性ショックに併発する急性腎障害に対する急性期血液浄化療法としては、血流量や透析液流量が低く循環動態への影響が少ないと考えられるCHDFが施行される場合が多い3、4)。しかし、大量のカテコラミン投与下では導入後に急激な血圧低下等の循環動態悪化をきたし除水を開始できないどころか、最悪の場合は回路の運転自体も中止せざるを得ない場合がある。従来、重症患者の循環管理では肺動脈カテーテルを用いて得られたCVPや肺動脈楔入圧(PAWP)を前負荷の指標として水分管理を行い、CHDF施行に際してもこれらのパラメータを指標に血管内容量を評価して除水量を決定していた。しかしながら、CVPやPAWPは輸液・水分管理の指標としては、短時間で全身状態が変化する重症患者における急性期の循環管理を行うには鋭敏性に欠ける面がある。また、腹部病変による敗血症性ショック患者において大量輸液・輸血により腸管が著明な浮腫をきたした場合は、本症例のように開腹下に管理したとしても門脈や下大静脈が少なからず圧排され、陽圧呼吸による影響と相まってCVPやPAWPの測定

値も不正確になることが推測される。したがって、このような状況ではCVPやPAWPを指標にして急性期血液浄化療法の管理を行うのは困難であると考えられる。 一方、フロートラックにより得られるSVVは輸液反応性の指標ではあるが循環血液量の過不足を反映する一面を有すると考えられる。そのため、肺動脈カテーテルを挿入してPAWPを測定しなくても、フロートラックによりSVVとSVを指標として血管内容量を評価し、MAP等他のパラメータを組み合わせることで適切に急性期血液浄化療法の管理、すなわち除水開始の時期や除水量を決定することができると考えた。

結 語

 重症患者では血行動態が不安定なために、急性期血液浄化療法の施行に際して除水量の決定が困難であり水分管理に難渋することが多い。今回、フロートラックにより得られるSVVおよびSVとその他の血行動態パラメータを組み合わせることで、血管内容量を評価する指標として用い、適切かつ安全に除水量を決定することができ有用であった。

[図. ICU 入室後の血行動態]

[写真]

※文章左下「PCWPの測定」→改行あり(均等割ができないため:原因不明)

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SVI

SVV

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除水量(mℓ/hr)

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※手術室を0時頃に退出しICUに入室したため術後第1日目からとなった。

術後第1日目 術後第2日目 術後第3日目

術中経過

 手術室入室時は意識混濁を認めたが、血圧は正常であった。術中に循環動態が著明に変動したり大量輸液が必要になることを予想して右橈骨動脈に挿入したカテーテルにフロートラックを接続し、動脈圧心拍出量(APCO)/動脈圧心拍出量係数(APCI)、一回拍出量変化(SVV)、一回拍出量(SV)/一回拍出量係数(SVI)の持続モニタリングを開始した。また、右内頸静脈に中心静脈カテーテルを挿入し中心静脈圧(CVP)を測定した。 手術開始後、EGDTプロトコールに基づきCVP10mmHg以上を目標とし、さらにフロートラックによるSVV13%以下とSV上昇を目標に加えて大量輸液と輸血を行ったが、MAPは65mmHg以上に安定しなかったため、ドパミン10μg/kg/min およびノルアドレナリン0.2μg/kg/minの投与を必要とした。 開腹所見では腹腔内に汚染腹水と便塊を認め、下行結腸には直径3cm程度の穿孔部位を発見した。人工肛門造設後、20Lの生理食塩水で腹腔内を洗浄したが、大量輸液とthird spacingによる腸管浮腫(写真)が著明であった。このため、閉創すると腹腔内圧が上昇して腹部コンパートメント症候群を起こすことが予想され、持続筋弛緩薬投与下に開腹したまま、術後創持続吸引療法を行った。また、術中から乏尿を認めたため術後血液浄化療法が必要になることを考慮して、手術終了後に左内頸静脈に透析用ブラッドアクセスカテーテルを挿入してからICUへ搬送した。 麻酔時間4時間10分、手術時間2時間45分。術中水分バランスは輸液量3050mℓ、濃厚赤血球8単位、出血量350mℓ、尿量50mℓであった。

術後経過

 手術室を午前0時頃に退室し、ICUに入室した。ICU入室後も引き続き大量輸液および新鮮凍結血漿輸血を行ったが平均動脈圧65-70mmHg、SVV10-15%で推移し、循環動態は安定せずカテコラミンの投与量も減量できなかった。また、乏尿が持続し腎機能も悪化したため、敗血症性ショックに伴う急性腎機能障害と診断し、術後第1日からCHDFを施行した。人工呼吸下(PEEP 10cmH2O)でCVPも低く、SVVは10%以上で推移していたため、依然として血管内容量不足とthird spacingが続いていると判断し、除水なしとした。夕方にはCVPは10-15mmHgまで上昇し、SVVも10%まで減少したため20mℓ/hrで除水を開始した。術後第2日から次第に血圧は安定し、カテコラミンも減量できるようになった。この時点で、SVV10%以下、SVIも30-35mℓ/回/m2と安定していたため、血管内容量は十分であると判断し除水量100mℓ/hrまで増量した。術後第3日からはさらに血圧も安定し、SVV、SVIともに引き続き安定していたため、third spaceから水分が血管内にshif tしてきていると考えて輸液量を減量するとともに除水量を最大200mℓ/hrまで増量することができた。それと同時に血圧および心係数(CI)も上昇しカテコラミン離脱可能となった。

考 察

 敗血症性ショックに併発する急性腎障害に対する急性期血液浄化療法としては、血流量や透析液流量が低く循環動態への影響が少ないと考えられるCHDFが施行される場合が多い3、4)。しかし、大量のカテコラミン投与下では導入後に急激な血圧低下等の循環動態悪化をきたし除水を開始できないどころか、最悪の場合は回路の運転自体も中止せざるを得ない場合がある。従来、重症患者の循環管理では肺動脈カテーテルを用いて得られたCVPや肺動脈楔入圧(PAWP)を前負荷の指標として水分管理を行い、CHDF施行に際してもこれらのパラメータを指標に血管内容量を評価して除水量を決定していた。しかしながら、CVPやPAWPは輸液・水分管理の指標としては、短時間で全身状態が変化する重症患者における急性期の循環管理を行うには鋭敏性に欠ける面がある。また、腹部病変による敗血症性ショック患者において大量輸液・輸血により腸管が著明な浮腫をきたした場合は、本症例のように開腹下に管理したとしても門脈や下大静脈が少なからず圧排され、陽圧呼吸による影響と相まってCVPやPAWPの測定

値も不正確になることが推測される。したがって、このような状況ではCVPやPAWPを指標にして急性期血液浄化療法の管理を行うのは困難であると考えられる。 一方、フロートラックにより得られるSVVは輸液反応性の指標ではあるが循環血液量の過不足を反映する一面を有すると考えられる。そのため、肺動脈カテーテルを挿入してPAWPを測定しなくても、フロートラックによりSVVとSVを指標として血管内容量を評価し、MAP等他のパラメータを組み合わせることで適切に急性期血液浄化療法の管理、すなわち除水開始の時期や除水量を決定することができると考えた。

結 語

 重症患者では血行動態が不安定なために、急性期血液浄化療法の施行に際して除水量の決定が困難であり水分管理に難渋することが多い。今回、フロートラックにより得られるSVVおよびSVとその他の血行動態パラメータを組み合わせることで、血管内容量を評価する指標として用い、適切かつ安全に除水量を決定することができ有用であった。

[図. ICU 入室後の血行動態]

[写真]

※文章左下「PCWPの測定」→改行あり(均等割ができないため:原因不明)

Page 4: 腹部敗血症性ショック患者における急性期血液浄化 …ht.edwards.com/scin/edwards/jp/sitecollectionimages/...CVPやPAWPは輸液・水分管理の指標としては、短時間で

© 2010 Edwards Lifesciences Limited. All rights reserved. EW-2010-0181005_0_1000

東京都新宿区西新宿6丁目10番1号本社:製造販売元 www.edwards.com/jp

症 例

 患者は67歳、女性。身長141cm、体重44kg。既往歴として全身性エリテマトーデス(プレドニン7.5mg/day内服中)と膀胱癌(回腸導管造設術後)があった。膀胱癌再発に対する化学療法を開始する予定で入院中に、急激に腹部全体におよぶ腹痛を発症したために精査したところ、腹部CTにて下行結腸穿孔による腹膜炎と診断され、ただちに緊急開腹術が施行された。

緒 言

 敗血症性ショックの治療では近年、EGDT(Ear l y Goal Direc ted Therapy)に基づいた全身管理を行い、中心静脈圧(CVP)、平均動脈圧(MAP)、中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)などの目的とする値を早期に達成することが患者の生命予後を改善すると考えられている1)。しかしながら、EGDTに全力をつくしても急性腎障害(Acute K idney Injur y)や多臓器不全症候群 (Multiple Organ Dysfunction Syndrome)に至る症例も希でなく、そのような場合は腎機能補助あるいは輸液スペース確保といった目的で急性期血液浄化療法が必要となる。 しかし、敗血症性ショックの患者では大量の輸液を行っても血圧が維持できないため、通常カテコラミンの投与を必要としており、この循環動態が不安定な時期に急性期血液浄化療法を開始および維持することは非常に困難でかつ危険を伴う2)。今回、下行結腸穿孔に伴う敗血症性ショック患者においてフロートラックシステム(以下フロートラック)を使用し、持続的緩徐式血液濾過透析(CHDF)を安全に行うことができたので報告する。

腹部敗血症性ショック患者における急性期血液浄化療法の水分管理にフロートラックシステムが有用であった1症例

市立堺病院麻酔科

高橋 完参考文献1) Rivers EP, et al . Ear ly goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock . N Engl J Med 2001, 345(19):1368-1377

2) Ronco C, et al. Continuous versus intermittent renal replacement therapy in the treatment of acute renal failure. Nephrol Dial Transplant 1998, 13:s79-85

3) 中敏夫ら. “4.血液浄化法”. Ⅵ.腎・泌尿器の技術. 外科救急アトラス. 外科治療2006増刊, 94:278-288

4) 立石順久ら. 敗血症性ショックに対するCHOF. ICUとCCU 2009, 33(2):105-111

販売名 フロートラック センサー承認番号 21700BZY00348