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調達・購買 業務基礎 第     章 1 〈スキル 1 〜 5〉 CHAPTER1

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調達・購買 業務基礎

第     章1〈スキル1〜5〉

CHAPTER1

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 今回は1回目として、「調達・購買 業務基礎」のAである「調達プロセス知識」〈スキル1/25〉をとりあげます。

 ここで、まず「Sourcing」と「Purchasing」の違いについて説明します。図1-1は、企業の調達プロセスを分解したものです。 Sourcing(ソーシング)とは、業界調査から、サプライヤの選定や価格決定を行うことです。Sourcingは「契約業務」とも訳されます。また、Purchasing(パーチェシング)は、発注から納期調整、検収(サポート)等を行うことです。Purchasingは「調達実行」とも訳されます。 自動車業界と電機業界の一部は、このSourcingとPurchasingを完全分離しており、人員も分けているようです。企業によって、Sourcing担当者がPurchasing担当者に「10年以上も会ったことがない」事態がありえます。Purchasingは納期フォローなど大変な業務ばかりなので、それに携わらない人は幸運ともいえるでしょう。ただ、サプライヤ決定と価格決定のみを行う担当者は、納期を追いかけない関

調達プロセス知識1-A

第1章

調達・購買 業務基礎

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係上、生産管理に疎くなってしまう可能性があります。実際に、納期や発注処理の煩雑さを知ることが、Sourcing業務にも深みを与えるはずです。 さて、話をSourcingからはじめましょう。

Sourcingで重要なこと● Sourcingのうち主にサプライヤ・価格決定においては次の三つのプロセスに分かれます。RFI (Request for Information):情報提供依頼RFP (Request for Proposal) :提案依頼RFQ (Request for Quotation):見積り依頼 そしてこの三つを総称して、RFxと呼びます。 いきなり英語ですみません。でも、難しくはありません。RFIは、「おたく(サプライヤのこと)何ができるの」と質問表を送ることです。RFPは、「おお、そんなことができるなら、具体的に調達品の提案をちょうだいよ」と提案依頼書を送ること。RFQは「なるほど、その提案仕様は良さそうだから、見積りちょうだいよ」と見積り依頼書を送ることです。 通常この三つのプロセスは完全分離していません。RFxが混在したまま調達活

図1-1 SourcingとPurchasing

支払い 検収 納期調整+フォロー

数量の確定+発注 量産準備

サプライヤ・業界調査

調達戦略の構築

調達仕様の決定

サプライヤ見積り入手

折衝+サプライヤ決定

試作・納入品質の安定化サプライヤ

パフォーマンスのフィードバック

サプライヤ収益調査+安全性調査

Purchasingパーチェシング 調達実行します

Sourcingソーシング

サプライヤの選定や価格の決定等を実施します※各企業によって分担が異なります

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動を行うケースが多いでしょう。ただし、それぞれのプロセスにおいて注意事項があります。 まずはRFIをまとめ、各サプライヤの生産品目から特色までを記載していきます。重要なのは、次の点です。

生産品目

【東京工場(大田区○○1-3-4)】100W〜300Wクラスのモジュール電源30Wクラスのオンボードタイプ・基板型電源××や○○といった通信機器・医療メーカーに主に納入【大阪工場(豊中市○○2-3)】300W〜500Wクラスのモジュール電源省スペース・カスタム電源△△などの重電系メーカーに納入

組織体制

社長:◯田◯夫営業部長:△山×郎営業担当窓口:□本○彦(e-mail:***@***、TEL:**-****-****)品質部長:○崎○助品質担当窓口:×村×一(e-mail:***@***、TEL:**-****-****)設計部長:△上△信品質担当窓口:○寺△也(e-mail:***@***、TEL:**-****-****)従業員700名(正規外160名含まず)

体質・業績・取引

【経営体質(20XX年度:単独)】売上高:520億円、経常利益率:36%、資本金:70億円電源業界シェア:2位対弊社売上高:15億円(購買ネットワーク株式会社の約3%)現在弊社は、150Wクラスの電源モジュールを主として調達中。当クラスの電源においては、弊社内の5割強のシェアを占めている。特に現在使用中の150Wクラスの価格は競争力があり採用拡大する。

特色

標準電源メーカーでは珍しく、大阪工場の一部ではカスタム電源の生産も行っている(重電メーカー用の高圧電源)。また、基板の外部調達以外は、ビス一本から内製化しており、3直体制の一貫生産を行っている。CAD/CAM設計者も工場内に110名ほど在籍し、開発スピードが速い。3期連続の「不良品ゼロ」を達成した。

承認 確認 作成

土田 吉川 調達課坂口

購買ネットワーク株式会社基本情報

図1-2 サプライヤ基本情報シートの例

作成日:20XX年2月7日

第1章

調達・購買 業務基礎

5 ●

・担当者の単独保有資料としない(担当者が替わるごとに何度も同じ調査をしている企業が多い)

・できるだけA4の1枚にまとめる(部門で一括管理しておくべき)・質問項目をあらかじめ決めておき、担当者間のバラつきをなくす そして、100%ではないにせよ、その1枚を見れば誰もがそのサプライヤ情報を理解できるようにすることです。 不動産屋を思い出してください。不動産屋の担当者が「物件はアタマに入っている」といったら信用できるでしょうか。A4の1枚にまとめ、概要を俯瞰できるからこそ営業できるのです。このようにA4の1枚にまとめ、サプライヤ情報を作成すれば、RFIを一過性のものとせず、その後も利用できる資料となります。しかも、開発・設計部門から新規サプライヤの相談があったときには、これをそのまま

「物件情報」として使えるはずです。 また、このRFIで注意すべきは「ノックダウンファクター」の明確化です。「ノックダウンファクター」とは、自社が譲れない条件です。調達担当者がつまずくパターンは、多くの場合、何度も繰り返されています。調達・購買担当者がせっかくヒアリングして見積りをとっても、最終的には社内合意が得られない、とか。品質管理部門から反対される、とか。生産管理部門が納得していない、とか。よくありますよね。 それらは、すべてRFI段階の「ノックダウンファクター」の不明瞭さに起因しています。自社の絶対条件に合致しなければ、サプライヤの見積りがいかに安くても、質が良くても、むなしいものです。すべての調達・購買担当者は、RFI時に、各部門をまわって、この「ノックダウンファクター」をヒアリングすべきです。

 そして、RFPで相手の仕様を確認したあとに、RFQを経ます。RFQとは、見積り依頼でした。RFQは図1-3のようなフォーマットが考えられます。

 ここでは、見積り依頼対象から、不良品発生時の条件までを網羅しています。RFQとは、見積り前提となる各種情報の伝達漏れを防止するものともいえます。定型化することによって、多くのサプライヤに展開ができます。都度、口頭で条件を伝えていたら漏れもありますし、サプライヤ間で不平等も生じてしまうはずです。よってRFQをフォーマット化することは、サプライヤを公平に扱うことにもつながります。(あたりまえだろ、という声が聞こえてきました。しかし、現実には「見積りをください」とだけメールを送ったり、「とりあえず見積りちょうだい」

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といったりするだけで、見積り依頼条件を曖昧にしているバイヤーのなんと多いことか。)

 そして、このRFQで重要なことが、三つあります。

1.前図のように見積り条件を明確化するとともに、「RFQは進化させるべき」と心がまえを持つことです。RFQを繰り返していると、足りなかった条件や、失敗した項目が出てきます。それを次回のRFQ時に追加・修正するのです。あるいはトラブルが発生する前から、前図を見て、「不足している」と思う項目があれば、

図1-3 RFQフォーマット例

見積り依頼製品 仕様番号:GZF-1324

仕様内容 添付仕様書参照

用途 計測器制御盤

目標価格 3,500円/個

設定個数 12,000個/年

発注ロット 100個/回

発注開始時期 20XX年2月7日〜

製品サイクル 20XX年まで(その後は5年間保守対応が必要)

納入場所 弊社東京工場

支払い条件 基本契約書による

不良品発生時の条件 補償ガイドラインによる

見積り依頼例

・価格が発注個数によって変動する場合は、個数単位ごとの価格を明記すること・製品サイクルに合致しない製品の提案はしないこと・開発費・設備投資等が発生する場合は明記のこと(追加費用の請求は認めない)・VA/VE提案は受けつける。ただし、その場合は項目を明示化し、規定仕様価格とVA/VE提案込み価格の二通りを提示すること