ジオエコノミクス・レビュー vol.11 20160709
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ジオエコノミクス・レビュー 1 巻 11 号 理論編
PEST 分析に立ち戻る
第 9 号で触れましたように、マクロ環境分析のフレームワークとして PEST 分析があ
ります。PEST とは、「P」=Politics(政治的要因)、「E」=Economy(経済的
要因)、「S」=Society(社会的要因)、「T」=Technology(技術的要
因)の頭文字を取ったものです。本号では前号に引き続き、政治的要因について
見ていくことにしましょう。
政治的要因は、大きくは①政権交替等要人の異動、②条約加盟や法律等、規
制環境の変化、③裁判動向、判例、④財政出動、税制の変化、助成・補助金、
公共調達等、政府の財政行動、金融政策、⑤デモ、暴動等、一般市民の政治
的行動、⑥テロ組織の行動、に分けられるかと思います。
M&Aの裁判例にも要注意
前回①②を解説しましたので、今回は③から始めます。裁判例も諸々ありますが、
特に海外市場を考えるときに大きなものとして、投資環境、すなわち M&A に関する
裁判が挙げられるのではないでしょうか。日本でも敵対的買収に対する防衛策はど
の程度まで可能なのかという点について、裁判がありました。当然ながら各国の事情
によって結論は異なります。投資先に合わせて裁判例を調べる必要が生じるでしょ
う。
各国の財政行動、金融政策
次に④番目として、政府の財政行動が挙げられます。これらは直接的に景気や会
社業績を左右するので、敢えて解説するまでもないでしょう。日本国内では様々な
助成・補助金の制度があります。その動向によって、売上が大きく左右される業界も
あります。
ご挨拶
本ニューズレターも第 11 号発行とな
りました。
本ニューズレターでは最近注目を集
めている「ジオエコノミクス」的観点か
ら日本を取り巻く政治経済情勢を
分析し、皆様のビジネス上の意思
決定の一助となれればと思っており
ます。
今回は PEST分析について解説さ
せていただきます。
株式会社藤村総合研究所 代表取締役
藤村慎也
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“政治的要因とは、①政権交代等要人の異動、②条約や法律等、規
制環境の変化、③裁判動向、判例、④財政出動、税制の変化、助
成・補助金、公共調達等、政府の財政行動、金融政策、⑤デモ、暴動
等、一般市民の政治的行動、⑥テロ組織の行動”
注意すべきは、中国の反日デモだけではない
最近は耳にしませんが、数年前は中国の反日デモが問題になりました。この例は明
確に日本企業に不利益をもたらすものでしたが、中には反日でなくても、デモに参加
している人たちが暴徒化するというケースがあります。つい先日もアメリカで白人警官
が黒人を射殺。そのことに反発した人たちがデモを行い、一部暴力沙汰に発展する
というケースがありました。日本に住んでいるとあまり想像がつきにくいかもしれません
が、デモの盛んな国では暴力に発展することもありますので、注意が必要です。
バングラデシュの「安全」とされる地域でもテロが起きた
最後にテロの問題を取り上げたいと思います。テロと言えば一昔前は遠い世界での
出来事というイメージがあったかもしれません。しかし先日起きたバングラデシュ・ダッカ
でのレストラン襲撃事件は 7 名の日本人が犠牲になりました。駐在している日本人がよく利用するレストランだったそうで、JICA 北岡
理事長も「普通に考えれば安全」な場所だとコメントしていらっしゃいました。多くの日系企業が進出している東南アジアも、例外では
ないかもしれません。会社としてテロ被害を未然に防止するのは容易ではないかもしれませんが、もし万が一何かが起こったときには、
撤退を検討せざるを得なくなることも想定されます。事業を展開する国・地域を選択するうえで、十分な検討が必要ではないでしょう
か。
次回理論編では経済的要因の例を見ていきたいと思います。
参考文献
フィリップ・コトラー (著), Philip Kotler (原著), 木村 達也 (翻訳)「コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を
創造し、攻略し、支配するか」(東京: ダイヤモンド社、2000)
梅澤高明編著、「最強のシナリオプランニング」(東京: 東洋経済新報社、2013)
NY、ハドソン川の向う岸
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