天然ガス・lng最新動向 - lngニューノーマル...2020/06/18  · platts他) •...

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2020618独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 調査部 白川 天然ガス・LNG最新動向 - LNGニューノーマル 2020年以降の需給・価格・FID -

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Page 1: 天然ガス・LNG最新動向 - LNGニューノーマル...2020/06/18  · Platts他) • 2020年4月、調査部「天然ガス・LNG関連情報」に、「天然ガス・LNGプロジェクト動向」を追加。•

2020年6月18日独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構調査部 白川 裕

天然ガス・LNG最新動向

- LNGニューノーマル2020年以降の需給・価格・FID -

Page 2: 天然ガス・LNG最新動向 - LNGニューノーマル...2020/06/18  · Platts他) • 2020年4月、調査部「天然ガス・LNG関連情報」に、「天然ガス・LNGプロジェクト動向」を追加。•

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免責事項

• 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。

• また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。

• したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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はじめに

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はじめに

• 新型コロナ蔓延と油価暴落による想定外の難局が、LNGプレーヤー達のアイデンティティーを必然的にあぶり出す結果となった。この四半期の間、自らの特性をより生かした形で各自が適応を進めた結果、LNG市場においても新たな秩序、ニューノーマルが形作られつつある。

• 2018年秋以降、第3極として登場した米国産シェールLNGやロシア産LNGが、余剰LNGの欧州への大量流入を引き起こし、自明の理として、欧州地下貯蔵容量のオーバーフロー懸念が広がった。欧州ガス価格が、限界コストを大きく下回る歴史的な低価格を継続する中で、新型コロナの影響により需要が激減し、LNG供給者は、量と価格の両面で持久戦を強いられている。

• 油価暴落はFIDブームに水を差し、それ以前の需給バランス予測を大きく変えたが、自ずから、今回その功罪両面に光を当てる結果となった。

• ここでは、まず、前報5月11日付、JOGMEC天然ガス・LNG最新動向「-あふれるLNG、追い打ちをかける新型コロナと油価暴落-」に続き、建設遅延やFID延期、また、それにとどまらずこの機会を積極的に利用する新たな動きについてまとめる。

• 次に、直近の、前例のない低LNG価格、地域間LNG価格差、2020年LNG価格予測、JCCリンクLNGとHHリンクLNG価格差について詳解した後、欧州地下ガス貯蔵在庫、米国産LNGカーゴキャンセル状況についてまとめる。

• その後、2020年以降の液化プロジェクトFIDに基づいたLNG供給、LNG需要、LNG価格の予測イメージについて説明し、そして最後に、LNG需給安定化策について論じる。

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1.プロジェクト動向

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JOGMEC HP 天然ガス・LNGプロジェクト動向追加

(EIA、Platts他)

• 2020年4月、調査部「天然ガス・LNG関連情報」に、「天然ガス・LNGプロジェクト動向」を追加。

• 全世界のプロジェクト動向を地域ごとにまとめ、誰もが無料でアクセスして最新情報を確認することができる。

• 昨年、掲載を開始したJOGMEC HP 「天然ガス・LNG価格動向、在庫動向」とあわせ、毎月末、更新予定。

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• 2020年2月、シェニエールは、コーパスクリスティLNGステージ3中規模液化設備(9.5MTPA)のFIDを、2020年6月末から2021年に延期した。

• 3月、Shellは、レイクチャールズLNGから撤退。Energy Transferが単独で推進することになった。その後、Energy Transferは、油価下落の影響で$400Mの支出カットを実施。

• センプラは、2020年中に、コスタアスールLNG第1フェーズ(2.5MTPA)のFIDを予定。第2フェーズは12MTPA。5月、Total、三井物産のオフテイクが決定した。既存設備を転用できコスト的に有利といわれる。

• 5月、センプラは、テキサス・ポートアーサーLNG(11MTPA、PGNiG 2MTPA締結済、サウジアラムコ25%権益取得予定)のFIDを、2020年3Qから2021年に延期することを決定。ポートアーサーLNGは、もともとグリーンフィールドプロジェクト(活用できる資産・施設がない状態からの新規事業)で高コストと言われていたが、最近のLNG低価格と顧客確保が進まない状況から遅延に至った。

• 5月、Next Decade は、 Rio Grande LNG (RG LNG)のFIDが、2020年から2021年に遅れることを明らかにした。984エーカーの建設用地借用開始も、2021年5月からに後ろ倒し。新型コロナによるガス需要とLNG価格の低下のため。RG LNG は Shell と2MTPA、20年間のSPAを有しており、9MTPA分の追加契約を確保できればFIDできるとのこと。

• 6月、テルリアンが推進するルイジアナ・ドリフトウッドLNGのオフテイクに関して、インド最大のLNG輸入企業であるペトロネットLNGとの間のMOUが期限切れとなり、同プロジェクトのFIDは2021年に延期となった。

(Platts、MEES、各報道より)

北米プロジェクト遅延

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• 欧州の地下ガス貯蔵容量が急速に満杯に近づいてきている。2018年秋以降、大量の米国産LNGが欧州に吸収されてきたが、現在、トレーダーは余剰カーゴの行き先を探している。コスト的に遜色ないウクライナ地下ガス貯蔵が一つの選択肢である。もうひとつの選択肢は、米国LNG基地のLNGタンク空容量である。

• 米国LNGタンクには、合計で少なくともLNGカーゴ30隻相当以上のLNGを貯蔵することができる。最近のカーゴキャンセルにより、メキシコ湾岸のLNGプラントは生産ペースを落としているため、出荷用のLNGタンクには、余剰貯蔵能力がある可能性が高い。

• この余剰貯蔵能力を活用すれば、LNGトレーダーとLNG液化事業者がWin-Winの関係となる。トレーダーは、貯蔵場所を確保でき、一方、米国LNG液化事業者は、貯蔵スペースを貸し出し収益を得ることができる。

• 秋以降の欧州ガス価格の回復、また、今夏猛暑が予測されるアジアでのJKM上昇の際には、米国でこれらのLNG在庫をリロードし、世界各地へ再出荷することが可能。

• 例えば、5月、キャメロンLNGで積荷したLNG船が、3日後、レイクチャールズLNGで荷揚げをおこなった。また、6月、ナイジェリアLNGから米国エルバアイランドLNGに向かっているLNG船、また、ベルギー・ゼーブルージュLNG基地(リロード可能)から米国サビーンパスLNGに向かうLNG船が確認されている。

• EIAによると、米国LNG液化プラントの生産能力は、2020年、68MTPA(80隻/月ペース)まで上昇し、ピーク時には77MTPA(90隻/月ペース)に達するが、カーゴキャンセルは能力の半分以上に迫る可能性がある。

• コンサルタントのレイモンド・ジェイムズは、2020年の米国LNG輸出量は、42MTPA(50隻/月ペース)に抑えられるとしている。また、Energy Intelligenceは、50MTPA(60隻/月ペース)と予測している。

(Energy Intelligence、各報道より)

米国、ホームレスLNGにシェルター提供

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主な北米LNGプロジェクト

9(JOGMEC)

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QP拡張推進、Golden Pass容量拡大、LNG船発注

• 5月末、カタール国営Qatar Petroleum(QP)のサード・シェリダ・アル・カービCEOは、現在の低スポットLNG価格や油価下落にもかかわらず、「QPはLNG生産を全力で進める。最近のLNG市場の価格下落局面は想定内。2020年は、3割のコストを削減する計画だが、主要LNGプロジェクトは前進させ、さらに、新たな良い投資機会を探し、長期的に投資を実施していく。QPは最も効率的なLNG生産者であり、高コストの生産者が最初に市場を退場するだろう。」と発言。

• スポットLNG価格が急落する中、QPが生産量を削減すれば、価格を押し上げられる可能性がある。QPのLNG関連収入は、2017年以来の最低水準に急落しているが、現在の状況が、他のLNG生産者の状況をより困難にし、新たなLNGプロジェクトへの投資も後退させていることにQPはメリットを見いだしているとも言われている。

• 第1段階のノース・フィールド・イースト(North Field East、NFE)開発に伴う4トレインのEPCは、2020年9月に入札し、第4四半期に落札、その後、国際的なパートナーを選定する予定。第2段階のノース・フィールド・サウス(North Field South、NFS)開発では、さらに2系列の液化トレインが追加される。

• 長期戦略として、QPは、現在のNOCからIOCへの脱却を目指しており、海外の上流・中流でのプレゼンスを拡大中。

• 6月、QP・ExxonMobil合弁事業米国Golden Pass LNGは、生産能力を拡張することをFERCに申請した。生産能力は、従来の15.6MTPAから、18.1MTPAに2.5MTPA拡大される。

• 6月、QPは、現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業と、2027年まで100隻以上のLNG運搬船のスロット・リザベーション(建造ドック予約)契約を結んだ。QPは、今後、LNGの生産量を77MTPAから126MTPAに引き上げる予定であるが、LNG船についても、現在の74隻から190隻まで増やす計画。ちなみに、2019年末時点で世界の全LNG船は564隻で、100隻はその2割に相当する。現在、LNG船の価値は、200億円/隻程度で、全船が建造された場合、2兆円を超える取り引きとなる。

(Platts、QP、MEES、朝鮮日報、各報道より)

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中東のLNG基地

(JOGMEC)

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エジプトLNG生産停止

(MEES、Platts、各報道より)

• 4月、ガス価格の低下を受けてエジプトで唯一稼動していたLNG液化基地(ELNG、7.2MTPA)が停止。

• 同プラントは、3月中旬に最後の貨物を出荷したが、次の貨物が輸出される予定の7月第3週まで操業を停止予定。保有者はShell(35.5%)、Petronas (35.5%)、EGAS (エジプト、12%)、EGPC(エジプト、12%)、Total(5%)。

• LNG液化基地の停止を巡り、エジプト政府と事業者との間で意見の隔たりが見られる。

• 国営企業EGPCとEGASは、液化プラント停止の原因をエジプトでの新型コロナの拡大を挙げているものの、背景として経済性の問題も噂される。原油リンクで比較的高値の長期契約に基づき販売するShellとは異なり、EGASとEGPCは自社分LNGを低調な世界のスポット市場で販売せざるを得ない。昨秋にも、両社は、$5ドル/MMBtu未満で販売してシェアを維持するのではなく、LNG輸出を停止することを選択した前例がある。

• フィードガスコストについても、陸上ガス田からのガスは$2.65/MMBtu(固定)、洋上ガス田およびイスラエルからのパイプラインガスは$4~5/MMBtuといずれもかなり高い。さらに、イスラエルからのPLガス輸入契約書には、「1日の平均ブレント価格が$50/bblよりも低い年には、最大50%まで納入量を減らすオプションがある」と規定されており、実際にエジプトへの輸入量も抑制されている。

• 一方のShellは、6年前のLNGプラント停止によってガス生産の抑制を強いられて以降、プラントが安定的に稼働できず、LNGを出荷出来ないことに強い不満を抱いている。

• 2012年から稼動停止、2020年6月に再開予定であったSEGAS LNG液化基地(ENIが主導)も、Zohrガス田からのフィードガスを1,500MMscfdに絞り込まねばならない影響から、再開を第4四半期に遅らせる可能性が高い。

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13(MEES他)

エジプトのLNG液化プロジェクト

プロジェクト 概 要

ELNG(Iduk) 生産能力 7.2MTPA(3.6MTPA×2系列)事業者 Shell(38%)、Petronas(38%)、EGAS(12%)、EGPC(12%)経緯 2005年 稼働開始

2020年4月 ガス価格の低下により停止

SEGAS LNG(Damietta)

生産能力 5MTPA事業者 Eni(40%)、Naturgy(40%)、EGAS(10%)、EGPC(10%)経緯 2005年 稼働開始

2010年 国内ガス生産減少2012年 需要の増加する国内市場供給優先政策のため稼働停止

エジプトのLNGプロジェクト

エジプトのガスシステム

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Santos、ConocoPhillips資産買収完了

• 5月、Santosは、ConocoPhillipsがオーストラリア北部準州に保有するダーウィンLNGプロジェクトとバユ・ウンダンガス田、バロッサガス田、ポセイドンガス田の権益の取得を完了。昨年10月の合意で定めた取得価額13.9億ドルは、原油価格の急落と新型コロナウイルスの感染拡大に伴う市場の不安定さに伴い、交渉により12.65億ドルに引き下げ。

• SantosとConocoPhillipsは、ダーウィンLNGプロジェクトの共同設立者で、LNGプロジェクトの権益比率はオペレーターのConocoPhillipsが57%で、Santosが11.5%。バロッサガス田の権益はConocoPhillipsが37.5%、Santosが25%だった。買収に伴い、Santosの権益比率は、ダーウィンLNGとバユ・ウンダンが68.4%に増加し、2020年の生産量とキャッシュフローを大幅に押し上げることになる。バロッサの権益も62.5%に増加した。

• Santosは、ダーウィンLNG(3.7MTPA、バロッサ供給後は10MTPA x 20年の供給も可能)と、バユ・ウンダンの権益の25%を3.9億ドルでSK E&Sに売却する旨、合意済み。また、バロッサの12.5%の権益をJERAに売却する意向書に署名しており、両社への売却完了後、SantosはダーウィンLNG権益の43.4%とバロッサガス田権益の50%を保有することになる。

• バユ・ウンダンとダーウィンLNGの権益をSK E&Sに、バロッサの権益をJERAに売却するには、第三者の同意、規制当局の承認、バロッサに関するFIDの決定が必要となる。

• 一方で、バロッサガス田のFIDが行われた場合に、SantosがConocoPhillipsに支払う臨時支払金は、7,500万ドルから2億ドルに引き上げられた。バロッサガス田のFIDは6月末までに下される見込みだったが、新型コロナの影響に伴い、市場の状況が改善するまでFIDは延期された。

(Australian、各報道より)

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Suratガス田FID、Shell QC LNG持ち分売り出し

• 4月、ShellとPetroChinaが50%ずつ出資するArrow Energyは、豪州・クィーンズランド州非在来型炭層ガス田Surat Gas Fieldプロジェクト第1段階のFIDを行った。生産最盛段階で年間90BCF(1.87MTPA相当)のガスを生産し、 Shell傘下のガス開発・販売会社QGCを通じて地元市場にガスを販売し、加えてQueensland Curtis LNG(QC LNG、2015年1月初出荷、2系列で8.5MTPA)でLNGに液化して輸出される。新たなガス生産開始は早ければ2021年を見込む。

• このガス供給が加わることで、QC LNGはフル稼働を継続することが可能となる。豪州東岸のガス需要は2024年にタイト化する見込みで、今回の開発を国内向けガス供給へ振り分けることも可能となる。

• Surat Gas Fieldプロジェクトは、元々はBGがオペレーターとしてLNG液化基地(18MTPA)を建設する計画であったが、2016年にShellがBGを買収した際に、QC LNGへのバックフィル案件に変更されたもの。コスト低減を図った上で、2017年、Shellがオペレーターを務めるQC LNGと27年間のガス供給契約が締結されており、2019年12月末にFIDされる予定であった。

• 6月、QC LNGは、LNG貯蔵タンクなどを含む共有設備(液化トレインは含まず)の権益26.25%を入札に付す予定を発表した。落札企業は、液化トレインに権益を持つCNOOCと東京ガスから利用料の支払いを長期間受けられる。

• 共有設備は、他にLNG積出設備や発電所を含む。QC LNGのオペレーターを務めるShellが権益の一部を放出する。幹事は英系投資銀行ロスチャイルドが務め、関心を示す企業に目論見書を渡している。

• QC LNGの第1トレインと第2トレインが共有設備を利用。第1トレインは、ShellとCNOOCが50%ずつ権益を保有。第2トレインは、シェルが97.5%を保有し、東京ガスの持ち分は2.5%となっている。

• 東京ガスは、2015年から20年間、QC LNGに当時参画していたBGグループから、LNGを1.2MTPA購入する契約を結んだ。また、第2トレインの権益は、ガス田権益1.25%と共にBGグループから取得した。BGグループは、その後、Shellの傘下となった。

(Australian Financial View、各報道より)

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主な豪州LNGプロジェクト

(JOGMEC)

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NOVATEK生産拡大、積替基地発注、LNG船発注交渉

• 5月、NOVATEK(ヤマルLNG16.5MTPAオペレーター)は、新型コロナによる北米、アフリカにおけるLNGプロジェクトFID遅れに起因する2020年代半ばのLNG市場タイト化と、また、最近の低LNG価格による石炭からガスへの燃料転換や新規インフラ整備が、今後の需要拡大につながるとみている。

• 2023年は、アークティックLNG2 T1(6.6MTPA x 3トレイン、19.8MTPA、T2は2024年、T3は2026年)、2024年は、オビLNGスタートアップを予定。2030年までに、70MTPAまでの拡張を計画。ヤマルT4(1MTPA)は、2020年末(変更前は2020年1Q)に稼働開始予定。アークティックLNG3は、まだ探鉱段階で、2030年以降のプロジェクトとみられている。

• ヤマルLNG長期契約は、価格はオイルリンクだがSカーブが採用されており、低油価の影響は緩和される。2019年は、定格16.5MTPAの111%(追加分1.9MT)を生産。2020年1Qも、定格以上の生産を続け、現行ペースは年率122%に相当する。

• 2019年の財務報告書によると、実績で、フィードガスコストは$0.1/MMBtu以下、液化コストは$0.5/MMBtu以下で、SabettaでのLNG FOBコストは$0.6/MMBtu以下であった。ちなみに、5月15日付ムルマンスクFOBは、$1.4/MMBtuと言われており、これと比較してもかなり安い。

• 6月、韓国大宇造船は、ロシア運輸省系リース会社GTLKグローバルから、世界最大級36万m3型LNGバージ2隻と、オプション2隻を受注した。確定分2隻の契約金額は800億円程度。2022年末、引き渡し予定。

• 大宇が建造するLNGバージは、極東カムチャツカと、ロシア北西部ムルマンスクのLNG積替基地に設置される。NOVATEKは、ヤマルLNGとアークティックLNG2から生産されるLNGを、2つの基地で、砕氷LNG船から在来型のLNG船へ積み替える。

• 現在は、Honningsvagとゼーブルージュで積み替えているが、新たな積替基地稼働により、北極海で生産されたLNGの、欧州、および、アジアへの、より短期間、低コストでの輸送が期待されている。

• なお、NOVATEKは、2024年に運転開始を目指す北極圏のオビLNGプロジェクト向けに、砕氷LNG船5隻プラス・オプション5隻の調達商談を開始している。すでに海運会社や中国・韓国の主要造船会社へ提案依頼書が送付された模様。

(Platts、日本海事新聞、各報道より)

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ロシアLNG船北海/西回り航路

(各報道よりJOGMEC作成)

ムルマンスク積替基地(計画)

ゼーブルージュ受入基地

カムチャッカ積替基地(計画)

ヤマルLNGアークティックLNG2

36日間

19日間

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ガスプロムPLガス輸出計画引き下げ

• 4月、ガスプロムは、新型コロナと欧州各国ロックダウンの影響によりガス需要が低迷しているため、2020年欧州向けPLガス輸出量を、当初計画の199.2BCM(146MT相当)から166.6BCM(122MT相当)に引き下げることを決定。ちなみに、2018年は200BCM、2019年は199BCMを、ロシアから欧州へ輸出し、ガス需要の35%を占有。一方、2019年、LNGシェアは、対前年2倍の21%に拡大した。

• 2019年12月に開通したパイプライン、シベリアの力によって、2020年は中国に、5BCM(3.7MT相当)のガスを輸出予定。

(Gazprom、各報道より)

ロシアガスPLルート

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ウクライナ米国産LNG調達開始、トルコLNG受入最大

• 2019年11月、ポーランドのSwinoujscue LNG基地経由でウクライナへの米国LNG輸入が開始された。

• ウクライナにとっては、安価な北米産LNGを受け入れ、ガス化した後、パイプラインで輸送し、一旦国内で地下貯蔵する。また、価格が上昇するのを待って消費地に送出し、利益を得ると同時に、自身のガス供給を多様化し安定供給性向上にも貢献。

• これまで、ウクライナでは、経済性、および、容量確保の観点からガス供給源がロシアに限られてきたが、供給源を多角化し、ロシアへの依存度を低減する戦略の中で、既にスロバキアおよびハンガリーから逆流輸送も行われてきている。

• ウクライナにとって最良のガス販売戦略は、オフピークに安価な米国LNGを輸入し、それを巨大な容量を誇るウクライナの地下貯蔵設備で保管し、冬期に値上がりした後、欧州に向けて送出、販売することである。ウクライナは、LNG輸出を増加させたい米国と協力し、ガス輸出入の多様化を図ろうとしている。

• ポーランド・ウクライナ間のガスパイプライン輸送は徐々にアップグレードされており、ウクライナ側では既に最大9MMCM/d(2.4MTPA相当)のガスを受け入れることができるといわれる。ただし、ポーランド側の輸送能力は現状、2MMCM/d(0.5MTPA相当)にとどまっている。

• 今後、ロシアとガス価格を交渉する際、米国産LNG由来のガス価格を引き合いにしながら、ロシアから輸入されているパイプラインガスの価格低下につなげる意図もあると推測できる。

• 3月、トルコの月間LNG輸入量が過去最大1.5MTとなり、1980年代のLNG輸入開始以来、初めてパイプラインガス輸入量を上回った。LNG輸出国は、カタール、アメリカ、アルジェリア、カメルーン、エジプト、ナイジェリア等。

• 2020年の全ガス輸入量に占めるLNG割合は35%に達する見込み(2019年 28%)。

• トルコが2つのFSRUユニットを追加してLNG輸入インフラを拡張し、総再ガス化能力を120MMCM/dに引き上げたことが急増の原因。現在、3基目のFSRUを収容できる陸上施設の開発を進めている。

(Platts、各報道より)

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ポーランドLNG受け入れ拡大、クロアチアFSRU順調

• 4月、ポーランドSwinoujscie LNG基地の再ガス化実績が、1.36BCMと対前年比4割増加し、過去最大となった。

• 5月、ポーランドPGNiGが、Swinoujscie LNG基地の再ガス化容量を追加予約。基地能力は、2022-23年の第1次計画で、5BCM/yから6.2BCM/yに、2024年の第2次計画で、8.3BCM/yに拡張予定。

• これまで、PGNiGは、数十年にわたってガスプロムからPLガスを輸入してきた。現PL契約は、数量10.2BCM/y、部分油価リンク、15%TOPありの条件だが、3月、ストックホルム調停裁判所で、新たな価格フォーミュラと2014年から2020年2月分までの$1.5Bの補償金の支払いが決定。ガスプロムがポーランドへの供給を独占していることを利用してガス料金を過大に請求しているとの同社の訴えが認められた。

• 2022年10月に現契約は終了するが、その後は、ノルウェー産PLガス(バルチックパイププロジェクト:ノルウェー、デンマーク、ポーランドガス供給網、10BCM/y)と、LNGでまかなわれる予定。

• この基地は、ポーランドのガス供給源を多様化し、数十年に及ぶロシアガスへの依存を終わらせる上で重要なツールといわれている。PGNiGは、2016年半ばにSwinoujscie LNG基地がオープンして以来、LNG受入を増加させており、ガスプロムからのガス輸入割合は、2016年第1四半期の98%から、2020年第1四半期には55%に減少した。

• 今年は、LNGをカタールとスポットから輸入したが、今後は、北米(シェニエール、ベンチャーグローバル、ポートアーサー長期契約)から供給される見込み。

• 5月、クロアチアのガスグリッドオペレータPlinacroは、FSRUから陸上にガスを送出する際に使用するOmisalj-Zlobinガス海底PL 7.4kmの建設は順調に進捗しており、2020年末完成予定と述べた。PLは、送出能力2.6BCM/y、長さ7.4km、総費用$62M。

• Croatia LNGが開発を進めるFSRUプロジェクトも順調に進捗。2019年1月にFIDし、総コスト€234M。うち政府補助金€100M、EC補助金€101.4M。2021年1月、スタート予定。

(Platts、各報道より)

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2.(1)LNG価格分析(直近)

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HH、TTF、JKM価格推移

HH• 穏やかな気候と、過去最高水準更新を続ける堅調なガス生産、またこれに新型コロナウイルス感染拡大による需要減少により、HH

(Henry Hub、米国ガス取引ハブ)ガス価格の歴史的な低価格状態が継続している。• 2019年の米国ガス生産量は平均で92.2BCF/dと史上最高だったが、2020年末に向かって生産は減少していき、2020年平均では

89.8BCF/dと予測。この生産減少は、主に、アパラチア及びパーミアンで生じるものと予測。アパラチアでは低ガス価により天然ガス掘削が低調となり、パーミアンでは低油価により随伴ガスが減少する。

• 3月31日、HHガス価格が$1.663/MMBtuと史上最低をつけた。また、供給過剰による急激なLNGスポット価格低下のため、北米産LNG出荷価格は$1.300/MMBtuと、HHガス価格を初めて下回り、$0.363/MMBtuの逆ざやとなった。

TTF• 2018年秋以降、世界の余剰LNGを受け入れ、TTF(Title Transfer Facility、オランダガス取引ハブ)ガス価格は徐々に低下。欧州の暖

冬に加え、3月中旬以降、新型コロナ感染に伴う欧州都市のロックダウンでガス需要が大幅に低下。3月、および、4月は、米国産カーゴのキャンセル後、TTFガス価格の上昇傾向がみられた。

• 5月末、TTFガス価格は大きく回復した。これは、毎月末の米国産カーゴキャンセルに加えて、JKMとのスプリット拡大によるアジアへの仕向地変更、スノービットLNG、および、ヤマルLNG定修が重なったため。5月下旬、ガスプロムがガス電子取引プラットフォームを停止したとの情報もある。

JKM• アジアでも今冬は暖冬で、1月に入りJKM(Japan Korea Marker、PlattsアジアスポットLNG査定価格)は下降基調となった。• 2月に入り、中国が新型コロナの影響からFM宣言し、JKMが低下した。2月後半から、安価となったスポットカーゴを、インド、タイが追加

購入したことで価格は上昇したものの、3月下旬、インドがFM宣言した結果、JKMは一気に下降した。• 4月、アジア買主は需要減による高在庫から配船後ろ倒しを売主に要請。4月末、日本のゴールデンウィークで取り引きの停滞する中、

4月28日のJKMは、$1.825/MMBtuと、過去最低価格を更新した。• その後、中国等の需要が若干回復したが、5月、大西洋市場から余剰LNGがアジアへ仕向地変更しJKMは再び下落。

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HH、TTF、JKM推移

3/25 インドロックダウン、FM宣言

4月 アジア買主各社配船後ろ倒し→ 2020年後半再余剰懸念

2月中旬 インド、タイスポットカーゴ購入

2/5 中国FM宣言

3/6 OPECプラス不調

4/16 日本全国緊急事態宣言

4月下旬 米国産6月35隻キャンセル

3月末 欧州寒気

5月下旬 米国産7月45隻キャンセル

1/23 武漢ロックダウン

4/8 武漢都市封鎖解除

4/28 JKM最低価格更新$1.825/MMBtu 5/27 TTF最低価格更新$1.158/MMBtu

4/25-5/6 GWで取り引き停滞

4/12 OPECプラス減産合意

4月 キャメロンLNGT3スタートアップ

3/13 WHO、欧州新型コロナ流行震源地宣言

3月下旬 米国産5月12隻キャンセル2月下旬 米国産4月2隻キャンセル

5/1 フリーポートT3商業運転開始

2月 欧州暖冬

4月中旬-5月中旬 USガス生産減少(93→88bcfd)

5/20 大西洋→アジア仕向地変更

5/21-6/15 ヤマルLNGT2、3定修

5/22- ガスプロムESP停止か?

5月中旬-6/17 スノービットLNG定修

6月初 ノルウェーPL減量

5月 北海航路利用開始

アジア暖冬

6/6 OPECプラス協調減産継続合意

(各種資料によりJOGMEC作成)

4/20 WTI史上初の-37.63/bbl

減産実施、経済活動再開

$/MMBtu / $/bbl

2月 米国暖冬

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▲5月分12隻キャンセル ▲6月分35隻キャンセル ▲7月分45隻キャンセル

($/MMBtu)

X

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米国産LNG出荷価格とカーゴキャンセル

• 3月末、米国メキシコ湾岸LNG出荷価格GCMは、HHガス価格以下に低下。米国では、原料ガスより、そこから生産したLNG価格の方が低い、逆ざや状態に陥った。

• GCM - HHガス価格推移をみると、月末に向かって逆ざやが拡大し、その後、上昇に転じ、月半ばを頂点として、再び、月末にかけて下降するパターンがみられる。GCMの回復は、毎月末の米国カーゴのキャンセル締め切りと時期を同じくしていることから、このキャンセルによって大西洋市場の供給過剰が改善し、GCM価格が上昇しているとみることができる。なお、この期間、HHガス価格には、周期的な変動は認められない。

• 一方、毎月のキャンセル数は増加しているにもかかわらず、毎月末の逆ざやは徐々に大きくなってきていることから、現状のキャンセル数ではLNG供給過剰を修正するには不十分、とのシグナルが市場から発進されていると解釈することもできる。

(Platts他)

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• 5月27日、世界のLNG価格のキーとなるTTFガス価格が過去最低$1.158/MMBtuをつけた。この日のLNGバリューチェーンに沿った各段階の市場価格を事例として、以下に詳細を確認する。

• 米国メキシコ湾岸LNG FOB出荷価格GCMは、$1.150/MMBtuとなり、コストをかけてLNGに加工しているにもかかわらず、原料となるHHガス価格$1.722/MMBtuを、$0.572/MMBtuも下回った。

• このCGMに、メキシコ湾岸から欧州北西部までの輸送コスト$0.33/MMBtuを加えた$1.480/MMBtuは、北西欧州LNG受入価格NWE$1.343/MMBtuを、$0.137/MMBtuも上回った。

• さらに、代表的な欧州ガス取引価格のTTFガス価格$1.158/MMBtuは、NWE$1.343/MMBtuよりも、$0.185/MMBtu低い状況となった。欧州にLNGを受け入れ、ガス化し導管に送出するコストは、$0.5/MMBtu程度であるが、これもサンクコスト化して回収出来ない状況。

• このように、足元では米国の余剰LNGを欧州市場で受け入れることが経済的には成立し難くなっている。また、この日のNWE$1.343/MMBtuは、米国産LNGの欧州向けLRMC$5.0/MMBtu、SRMC$2.1/MMBtuより大幅に低いレベル。

• 一方、GCMが日本に向かった場合、メキシコ湾岸から日本までの輸送コスト$0.79/MMBtuを加えた日本着コスト$1.94/MMBtuより、日本着スポットLNG価格JKM$1.913/MMBtuの方が、$0.027/MMBtu低いため、これも逆ザヤ。

• さらに、この日のJKM$1.913/MMBtuは、米国産LNGの日本向けLRMC$6.1/MMBtu、SRMC$2.6/MMBtuを大きく下回った。

(Platts)

LNG価格逆ザヤ事例(5/27 Platts査定価格)

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LNG価格逆ザヤ(5/27 Platts査定価格)

Freight(ME→Japan) 0.33

Freight(ME→NWE) 0.56Freight(US→Japan) 0.79

TTF 1.158

NWE 1.343

FOB ME 1.650GCM 1.150

単位:$/MMBtu緑字:LNG価格黄字:ガス価格青字:フレート赤字:逆ざや下線:支配的な市場価格

NYMEX HH US close 1.722

(Platts他)

-0.185

JKM 1.913

GCM + Freight 1.94

-0.027

-0.572

GCM + Freight 1.480

(+ Regas + PL Tariff -0.5)

US LNG LRMC 5.0-3.657

-4.187

US LNGTo Europe To Japan

Cost LRMC SRMC Cost LRMC SRMC

Feed Gas×115% 1.8 1.8 1.8 1.8 1.8 1.8

Liquefaction 2.5 2.5 - 2.5 2.5 -

Transportation Capex 0.4 0.4 - 1.0 1.0 -

Transportation Opex 0.3 0.3 0.3 0.8 0.8 0.8

Total 5.0 5.0 2.1 6.1 6.1 2.6

LRMC and SRMC of US LNG

US LNG LRMC 6.1

-0.137

Freight(US→Belgium) 0.33

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(2)LNG価格分析(2020年)

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• LNG価格に対する市場の見方の一例として、NYMEX先物価格を示す。また、JCCリンク、および、HHリンクLNG価格については、フォワードカーブ(FC)から推算した。

• HHガス価格(HH FC)は、新型コロナによる需要低下、および、LNG用フィードガス減少の影響を差し引いた上での、メジャーズ投資抑制による随伴ガス生産減少の影響を折り込み、冬期に向かって穏やかに上昇した後、2021年春の非需要期到来にあわせ低下していくとみられている。

• TTFガス価格(TTF FC)は、5月末に最低価格を更新したが、7月にはHHより高価格に戻り、その後、新型コロナからの需要回復に米国産カーゴのキャンセル等も手伝い、夏以降、HHガス価格を上回るペースで上昇していくとみられている。

• ブレント価格(Brent FC)は、3月のOPECプラス協調減産不調を受け、3月には$20/bbl程度まで低下したが、その後の協調減産が功を奏し、今後は徐々に回復していくとみられている。

• 日本の長期契約の未だ大宗を占めるJCCリンクLNG価格(JCC LT)は、油価下落の影響で、それまでの$9/MMBtu台から、6月$6/MMBtu程度、7月$5/MMBtu程度に低下する。7月に価格差を最大として、その後しばらくはHHリンクLNGより安値で推移する。

• 一方、固定費の占める割合が大きい、HHリンクLNG価格(HH LT)は、HHガス価格と共に冬期に向かって上昇し、その後低下する。

• JKM(JKM FC)は、4月に史上最低価格をつけ、その後上昇に転じている。今後は再び7月に価格が低下した後、需要期に向かって上昇していくとみられている。TTFとの価格差は、猛暑が予測されている今夏は拡大し、秋口に一旦縮小した後、アジアの冬期需要を反映して再び拡大する。一時は、4倍を超えたJCCリンクLNGとの価格差は、今冬に向かい1.3倍程度に、HHリンクLNGとの価格差は、1.6倍程度に縮小する。

短期LNG価格比較

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$/MMBtu / $/bbl

緩やかに上昇逆転(HHリンクLNG > JCCリンクLNG)

上昇徐々に上昇

30

短期LNG価格比較

(Intercontinental Exchange他よりJOGMEC作成)

逆転(TTF > HH)

4倍

1.6倍

1.3倍

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(3)JCCリンク vs HHリンク

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32

JCCリンク vs HHリンクLNG価格比較

• 2018年、米国産LNGが、アラスカLNG以来、初めて日本に輸入された。その導入の目的は、調達地域と価格指標の多様化であった。マスコミからは、安価な調達を目指したはずであったが、との論調も昨今聞かれるが、これまで公式に買主から、安価なLNG調達が目的であったと発言されたことは一度もない。

• HHリンクLNGフォーミュラは、固定部分が大きく、今回のように油価が下落した局面では、JCCリンクのLNGより高価格となる。

• 両者が等しくなるポイントは、HH = $1.8/MMBtuの時、JCC = $40/bbl、JCC = $60/blの時、HH = $4.27/MMBtuとなる。

• JCCリンクフォーミュラ想定

LNG価格 = 傾き × 全日本平均原油輸入CIF価格 + 切片

P($/MMBtu)= 0.1485 × JCC($/bbl) + 0.5($/MMBtu)

ここで、 JCC = $40/bblの時、PJCC = $6.44/MMBtu

$60/bblの時、PJCC = $9.41/MMBtu

• HHリンクフォーミュラ想定

LNG価格 = HHガス価格、電力費、利益 + 液化トーリング費 + 輸送費

P($/MMBtu)= 1.15 × HH($/MMBtu) + 2.5($/MMBtu) + 2($/MMBtu)

ここで、 HHガス価格 = $2.0/MMBtuの時、PHH =$6.8/MMBtu

$2.5/MMBtuの時、PHH = $7.38/MMBtu

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33

JCCリンク PJCC = 0.1485 x JCC + 0.5 HHリンク PHH = 1.15 x HH + 2.5 + 2.0

HH価格($/MMBtu)JCC価格($/bbl)

LNG価格($/MMBtu) LNG価格($/MMBtu)

HH:$2/MMBtuの時、PHHは、$6.8/MMBtuPJCC:$6.8/MMBtuの時、JCCは、$42.42/bbl

JCC:$60/bblの時、PJCCは、$9.41/MMBtuPHH:$9.41/MMBtuの時、HHは、$4.27/MMBtu

JCCリンク vs HHリンクLNG価格比較(等価線)

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HH価格($/MMBtu)

JCC価格($/bbl)

PJCC = 0.1485 x JCC + 0.5PHH = 1.15 x HH + 2.5 + 2.0

10

-15

-10

-5

0

5

PJCC > PHH

PJCC < PHH

JCC = $30/bbl, HH = $2/MMBtuならPHHよりPJCCの方が$2/MMBtu安い

JCC = $40/bbl、HH = $1.8/MMBtuならPHHとPJCCは等価

JCCリンク vs HHリンクLNG価格比較(MMBtuあたり)

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35

PJCC < PHH

PJCC > PHH

HH価格($/MMBtu)

JCC価格($/bbl)

PJCC = 0.1485 x JCC + 0.5PHH = 1.15 x HH + 2.5 + 2.0

330万MMBtu/隻

JCC = $30/bbl, HH = $2/MMBtuならHHリンクカーゴよりJCCリンクカーゴ

の方が$6M/隻安い

JCC = $40/bbl、HH = $1.8/MMBtuならHHリンクカーゴとJCCリンクカーゴは等価

30

20

-30

-20

-10

0

10

-40

JCCリンク vs HHリンクLNG価格比較(1隻あたり)

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3.LNG需給(2020年)

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(1)欧州ガス需給・在庫

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38

欧州ガス需給(2020年1~4月)

• 世界のLNG需給バランスの鍵を握る、欧州ガス市場について概観する。

• 2018年冬以降、欧州ガス市場が世界の余剰LNGを一手に吸収した。さらに、年末に期限を迎えるロシア-ウクライナ間PL契約延長に対する不調懸念も手伝い、地下貯蔵へのガス注入が進んだ。2019年10月には欧州地下貯蔵の在庫が満杯となり、その在庫高を繰り越す形で2020年を迎えた。

• 2020年第1四半期において、新型コロナの影響は、それほど顕著ではなかった。この期間の欧州ガス需給の数量バランスは、2019年とほぼ同様であった。ただし、その内訳は、以下のように異なるものであった。

①2019年後半に注入した欧州地下貯蔵からの払い出しが増加

②これを相殺するように、ウクライナを経由したロシアPLの供給が減少

③さらに供給過剰となった世界のLNG市場から、2019年を3割以上上回るLNGが流入

④オランダを中心に域内産ガスの生産が減少

• 4月に入り、新型コロナの影響で、欧州ガス需要は2割程度(LNG相当4.4MT)減少。LNGとPLガスが競合した結果、PLガス供給量が大きく減少した。(ロシア2割減、ノルウェー1割、アルジェリア3割減)

• それでも供給過剰状態は解消されず、TTF価格はさらに低下し、地下貯蔵在庫レベルは、2019年を上回るペースで上昇を続けている。

(OIES、Wood Mackenzie他)

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39(OIES)

欧州ガス需給(2020年)

2020年 濃色2019年 淡色、( )内

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40(GIE、Platts、Gas Strategies、EIA他)

時期 3月末 4月末 5/20 3月末~5/20増加 ピーク

2020年 53.9% 62.5% 69.1% 15.2%(11.4MT相当) 8月?

2019年 40.4% 48.7% 55.7% 15.3%(11.4MT相当) 10/28、98%過去5年平均 28.3% 33.6% 40.1% 11.8%(8.8MT相当) 10/26、84%

• 在庫増加スピードは、2019年と同じく、3月末から5月20日までに、15%、11MT程度増加。

• 在庫レベルは、5月20日時点で、2019年レベルを10%以上、上回る。

• 供給過剰によりTTF価格が低下することで、冬期にかけてのガス価格がさらに先高となる中、地下貯蔵設備への注入は増加している。

• 当初、ガス需要は、新型コロナが終息すればV字回復するとみられていたが、回復の送れが目立ち始めている。これが、在庫レベルの上昇を一層加速している。

• 2019年と同様に在庫上昇した場合、欧州地下ガス貯蔵は8月には満杯となる。万一、受け入れ先がなくなった場合、3月にWTI原油で経験したクッシング貯蔵容量不足によるネガティブ価格の再来も懸念される。

• 大西洋を挟んだ米国でも、新型コロナの影響で需要が低下し、加えて、多くのカーゴがキャンセルされた影響で、液化プラントのフィードガス量が減少している。

• 米国地下貯蔵在庫量は、2020年5月末時点で2.8TCF(56MT相当)と、過去5年平均比18%増加しており、ピーク前の10月末時点で過去最高4.1TCF(82MT相当)を超過する見込み。今後、ガス価格が低下し、生産量が減少する可能性もある。

欧州地下ガス貯蔵在庫推移

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41(GIE他)

2020年7月 2020年9月 2020年11月

容量上限

2019年より13%高過去5年平均より3割高(5/20)

2019年と同ペースだと8月で満杯。11月初まで10MTの受入先なし

10MT削減ケースオーバーフロー回避

欧州地下ガス貯蔵在庫推移

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(2)米国産LNG供給

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43(GIE、Platts他)

• 欧州への供給削減の具体的な方法として、 1)生産量削減(カーゴキャンセル)、 2)洋上・陸上貯蔵、3)液化プラント全トレイン稼働停止、があげられる。

• 今後新型コロナの影響による需要低下がこれ以上大きくならない、かつ、ロシアやアフリカからのLNG輸入量やPLガス輸入量が増加しない前提で、上記1)生産量削減に従い、既に削減が決定された6、7月分に加えて、8月から10月にかけて米国産LNG60カーゴ、合計10MTを削減すれば欧州地下ガス貯蔵は満杯とならず、例年ガス需要が増加し在庫が低下する11月を迎えることができる。

6月 35隻(2.5MT)

7月 45隻(3.2MT)

8~10月 60隻(4.3MT)

6~10月合計 140隻(10MT)

• 何らかの理由で削減量が足りなかった場合、2)洋上(LNG船)、または、陸上タンクの空き容量を活用した貯蔵が現実的な対応と考えられる。30日間洋上貯蔵した場合、現状の過去最低レベルの用船価格$32,000/dayを想定すれば、$1M/隻程度のコストアップで抑えられる。

• 全体のバランスからみると、今回は、プロジェクト毎のバランスがうまく取れた形で十分な数のカーゴがキャンセルされれば、3)液化プラント全トレインの稼働停止までには至らない可能性が見えてきた。全トレイン稼働停止は、多くの時間と手間、多額の費用がかかる上、結果として他社を潤すことになる。

• いずれにしても、10月末までのLNG市場は、これまでにない極端な供給過剰となる可能性が高い。

米国産LNG出荷削減

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44

• 米国産LNGカーゴは、既に、4月 2隻、5月 12隻程度、削減されている。

• 5月中旬以降、フィードガス量も最低レベルに低下している(1月の10BCF/dから、6月初旬には4BCF/dまで低下)。

• 7月削減45隻のうち、2/3の30隻が、サビンパスLNG、コーパスクリスティLNGからのキャンセルと言われる。

• 6月上旬、サビンパスLNGとコーパスクリスティーLNGのフィードガスは、過去最大と比べ3割、フリーポートLNGは1割まで低下している。一方、キャメロンLNG、コーブポイントLNGは7割を保持している。

米国産LNG出荷削減

(EIA他)

Elba IslandFreeportCameronCorpus ChristiCove PointSabine Pass

2020年8-10月最大出荷可能隻数

5 6 7 8 9 10

液化プラント平均稼働率35%

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45(各種資料によりJOGMEC作成)

SPA契約

• サビンパスLNG、コーパスクリスティLNGは、SPA型契約。

• 欧州に受入容量を確保するShell、Totalなどのポートフォリオプレーヤーや、Naturgy、セントリカなどの欧州ユーティリティーとの契約が多い。

• 仕向地制限がなく、トレーディングで世界各地への転売が可能であるが、基本的に受入容量を確保している欧州への受け入れを前提としており、TTF下落による逆ざやの影響で多くのカーゴがキャンセルされている。

• キャンセルされたカーゴは、シェニエールが再マーケティングすることもできるが、逆ざやが進行する中、販売は難しい。一方、液化プラント全トレイン稼働停止よりは安価であるため、最低稼働レベルを確保するために生産されるLNGは赤字覚悟で生産・販売されることになる。

• 伝統的な長期SPA契約の場合、DOQは5~10%にとどまるが、北米LNG売買契約の場合、全量キャンセルも可能である。ただし、オフテーカーは、液化コストをキャンセル料として支払わねばならない。

トーリング契約

• コーブポイントLNG、キャメロンLNG、フリーポートLNG、エルバアイランドLNGは、トーリング型契約。

• 上記SPA契約と同様、仕向地制限がなく、世界各地への転売が可能。

• アジアのユーティリティーや商社が買主の中心。ポートフォリオプレーヤーはこちらでもカーゴをキャンセルしている。一方、トレーディングを意識しながらも、需要と紐付けて購入している日本買主のキャンセル率は低い。フリーポートLNGはポートフォリオプレーヤーの契約量が大きい。

• キャンセルが発生した場合でも、液化事業者は、Use or Pay契約により、前もってオフテーカーからトーリング費用を回収している。オフテーカーには、液化容量を確保していたにもかかわらず使用しなかった機会損失が発生する。

米国産LNG契約

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46(各種資料によりJOGMEC作成)

プロジェクト 能力液化(MTPA)

トレイン数 所有 オペレーター 買主 運転開始年

サビンパス T1-5

22.5 5 Sabine Pass Liquefaction (Cheniere 100%)

Cheniere Centrica, Cheniere Marketing, Naturgy, Shell, Total, GAIL, KOGAS

2016-2018

コーパスクリスティ T1, 2

9.0 2 Corpus Christi Liquefaction (Cheniere 100%)

Cheniere Cheniere Marketing, EDF, Endesa, Naturgy, Pavilion Energy, Pertamina, Woodside

2018, 2019

コーブポイント 5.25 1 Dominion Energy Cove Point LNG (Dominion Energy 75%, Brookfield 25%)

Dominion Energy, Cove Point LNG

Gail, Sumitomo Corp. 2018

エルバアイランド

2.5 10 Kinder Morgan Southern LNG Shell 2019

キャメロン T1, 2 9.0 2 Sempra LNG 50.2%, Mitsui & Co 16.6%, Total 16.6%, Mitsubishi Corporation 11.6%, NYK 5.0%

Cameron LNG Mitsubishi, Mitsui & Co, Total 2019, 2020

フリーポート T1, 2, 3

15.0 3 Freeport LNG 50%, JERA 25%, Osaka Gas 25%

Freeport LNG Osaka Gas, JERA, BP, Total 2019, 2020

- 63.25 - - - - -

米国産LNG契約

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4.2020年以降のLNG需給

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(1)LNG供給(液化プロジェクトFID)

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LNG供給(建設中プロジェクト、2020年供給開始)

プロジェクト名 キャパシティ(MTPA) 運転開始時期

Freeport Train 2 5.0 2020年1月

Cameron Train 3 4.5 2020年3月

Freeport Train 3 5.0 2020年第3四半期

Yamal Train 4 1.0 2020年第3四半期

Petronas FLNG Dua 1.5 2020年後半

合計 17.0 -

• 現在建設中のLNG液化プロジェクトに関しては、新型コロナウイルス蔓延の影響を若干受けながらも大きな遅延なく、2020年中に以下が運転を開始すると見られる。

• 2020年の追加液化能力は、合計17MTPAとみられる。

(各種資料によりJOGMEC作成)

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LNG供給(建設中プロジェクト、2021年以降供給開始)

プロジェクト名 キャパシティ(MTPA) 運転開始時期

Portovaya LNG 1.5 2021年第1四半期

Corpus Christi Train 3 4.85 2021年第2四半期

Tangguh Phase 2 3.78 2022年第2四半期

Coral FLNG 3.4 2023年第1四半期

Sabine Pass Train 6 4.75 2023年第2四半期

Torture FLNG 2.45 2023年第2四半期

Arctic LNG 2 19.8 2023年内

Calcasieu Pass 10.1 2024年第1四半期

Mozambique 12.88 2025年第1四半期

Golden Pass 16.0 2025年第2四半期

LNG Canada Phase 1 14.0 2025年第2四半期

Nigeria Train 7 7.6 2026年第1四半期

合計 101.11 -

• 現在建設中のLNG液化プロジェクトのうち、2021年以降に運転を開始する予定のプロジェクトに関しては、新型コロナウイルス蔓延の影響に加え、油価下落による費用削減の影響も受け、平均で半年ほど遅延する見込み。

• 2021年から2026年の間に追加供給されるLNGは、101MTPAに上る。

(各種資料によりJOGMEC作成)

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LNG供給(FID前プロジェクト)

プロジェクト名 キャパシティ(MTPA) 運転開始時期

Ob LNG 4.5 2024年

Costa Azul 2.5 2025年

Corpus Christi Stage 3 9.5 2025年

Qatar Mega Phase 1 32.0 2025-28年

Qatar Mega Phase 2 16.0 2029-30年

合計 64.5 -

• 新型コロナの影響による需要低下と、それを一因とするLNGスポット価格下落により、一部を除き、長期LNG販売契約を担保とした北米デベロッパー型のLNG液化プロジェクトのFIDは見通せなくなってきている。

• 一方、以下のカタール、ロシアに代表されるNOC系のプロジェクト等は、今後もほぼ順調に進捗するとみられる。

(各種資料によりJOGMEC作成)

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LNG供給(FID推移)

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• 油価の変動と液化プロジェクトFIDの間には相関が見られる。

• 2016-17年は、低油価を反映し、FIDは過去最低レベルとなったが、2018年、油価上昇とともにリバウンド。2019年は、それまで最高であった2005年の51MTPAを抜き、過去最高の71MTPAに達した。

• 2020年、油価下落により、メジャーズは投資を抑制。このため、新たなLNG液化プロジェクトのFIDは大幅に減少する見込み。

• 一方、資金に余裕のあるNOCは、ほぼ予定通りFIDを進めるケースが多いとみられる。

• 今後、油価が回復すれば、ポートフォリオプレーヤーとして長期販売契約獲得に頼らず価格リスクを甘受できるメジャーズは、休眠プロジェクトを復活させFIDに踏み切る可能性が高い。北米を中心としたデベロッパーは、これまでと同様、需要回復を待って長期契約を締結し、ファイナンスを組成することによって、FIDを目指すことになる。現時点では、油価は徐々に上昇している。

(IEA他よりJOGMEC作成)

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(2)LNG需要

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• 新型コロナの蔓延と油価下落の行方とその影響の大きさが見えない中、多くの研究機関やコンサルタントからLNGを含むエネルギー需要予測が発表されている。

• 先進諸国の経済は、短期的には悪化するものの、積極的な政府の介入とファンダメンタルズの強さから影響は限定的で、V字回復とはほど遠いながらも回復するとみられている。一方、新興諸国においては、医療施設が貧弱でより影響が大きかったこと、元々の予算規模が小さく債務水準が高いため財政出動の余地が小さいことから、景気の回復がより遅れる可能性が指摘されている。

• 需要予測の多くは、経済への影響を、影響の度合いと期間別のシナリオに沿って予測する手法をとっているが、現在各国で検討中の経済対策の方が、景気回復をより大きく左右するとみられている。このため、経済対策、および、その施行が緒に就いたばかりの現時点において、世界全体のLNG需要想定を論じることは時期尚早と言わざるを得ない。

• 状況が深刻になるにつれ、多くの機関が、追加の需要引き下げを発表。

LNG需要予測まとめ

(IHS、ICIS、WM、IEEJ、Poten & Pertners、IEA、OIES、Platts他)

研究機関 予 測

IHS 第二次世界大戦以来、最も深刻なリセッションになると言及。2020年の世界のGDP成長率を-2.8%、エネルギー需要を対前年比+1%未満から+4%の範囲と予測。世界のLNG需要は、対前年最大でマイナス16MT、最小でプラス3MTと予測。

ICIS 2019年に比べて2020年の中国のLNG輸入量は58.1MT(対前年比-3.2MT)、日本は、2019年の77.1MTから76.2MT(対前年-0.9MT)、韓国は、 38.5MT(対前年1.9MT減少)と予測。

Wood Mackenzie 2020年の世界のLNG需要は、373MT(新型コロナ前予測388MTより15MT低下)。

日本エネルギー経済研究所 4-6月中に底打ちすれば、対前年比-7.8%の325MTPA。7-9月にずれ込めば、-11.5%の312MTPA。(2019年12月見通し:2020年需要は、対前年比+6.3%の369MTPA。供給は、+9.1%の381MTPAと予測)

Poten & Partners 2020年の世界のLNG需要は、2019年355MTより7MT減少。第2波があれば14MT減少。

Platts 2020年の世界のLNG需要は、2019年355MTより9MT上昇し、364MTと予測。

IEA 2020年、世界の天然ガス需要は4%減少。成長の鈍化で、2025年までは、タイトなLNG市場となるリスクは限定される。

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(3)LNG需給バランス、価格シナリオイメージ

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LNG需給バランスイメージ

• 以下に、下記想定に基づいた、今後のLNG需給バランスイメージ(コロナ前/後)をまとめる。

(需要想定)• 当初、新型コロナウイルス蔓延が終息すれば、世界経済はもとより、LNGを含めたエネルギー需要は、ほどなくV字回復するといわれていたが、現在では、第2波の流行、ニューノーマルの進行、世界各地での時間差を持った形での流行拡大などにより、その回復の時期については、当初想定より遅れることが共通認識となりつつある。

• また、回復のパターンも、各国政府の政策対応によって大きく左右され、Swoosh型、U字、L字など、様々なパターンが言及されるようになってきている。

• 特に足下のLNG需要については見通しが難しい。• ここでは、世界のLNG需要を、2020年に330MTPA(2019年335MTPA)、新型コロナから回復し油価も回復基調となった以降の需要を、

2019年IEA予測(2024年395MTPA)と想定してそれ以降に外挿した。

(供給想定)• 前出の通り、現在建設中のプロジェクトは、新型コロナ等の影響で遅延しながらも運転を開始。また、FID前のプロジェクトについては、

NOC、IOC、長期契約を獲得できる可能性のあるデベロッパーが推進するプロジェクト等が今後FIDする。• 上記に加え、2023年以降、毎年10MTPAの新規液化プロジェクトがFIDし、2026年以降、供給を開始すると仮定した。• なお、現時点での進捗予定を、LNG生産容量(コロナ後)、2020年以前の当初建設予定通りであった場合を、LNG生産容量(コロナ前)、とした。

(油価想定)• 2021年から2023年にかけて、毎年$10/bblずつ、$55/bblから$75/bblに回復するとした(Energy Intelligence予測)。

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(需給バランスイメージ)• 新型コロナによる建設遅延の影響は、2022年から2025年にかけて及ぶ。特に、2023年、2024年は新型コロナ前に比べ、供給量の減少が大きい。

• 2025年以降、2019年に大量にFIDした液化プラントからの供給が始まり、再び供給過剰が到来する。これは、量、期間とも2020年とは比較できないレベルに達し、2025年から2026年にかけて、北米を中心に、複数の液化プロジェクトがシャットインする可能性がある。

• 一方、新型コロナ前、100MTにも迫る勢いといわれた2020年以降のFIDが、油価下落の影響もあり大幅に減少した。このお陰で、2020年代中盤以降の大きな設備過剰、および、供給過剰がある程度緩和された。

• 現時点では、多くのLNG液化プロジェクトが遅延、停滞しているものの、今後2023年から一時的にマーケットがタイト化した時点等、LNG価格の上昇をきっかけとして、米国を中心とした休眠中のLNG液化プロジェクトが目を覚ましFIDする可能性がある。一旦FIDされたプロジェクトからは、ほぼ確実に5年後にはLNGが生産され始め、その後長きに渡って生産が継続する。これが繰り返されることにより、結果として今後はルースマーケットが基調となる。

(価格バランスイメージ)• JCCリンクLNG価格は、今後、原油価格の回復に従い徐々に上昇する。• スポットLNG価格については、建設遅れ、および、FID減少の影響により、新型コロナ以前と比較して上昇する。新型コロナ前と比較して、2021年、2022年にも上昇は始まるが、特に、2023年、2024年は上昇幅が大きい。

• 2025年、2026年は、TTFはじめ、全世界のガス価格が、2020年とは比較できないレベルで大幅に低下する。• その後、スポットLNG価格は、2026年後半から回復しはじめ、2030年に向けて緩やかに上昇していく。

LNG需給バランスイメージ

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シナリオ• 2019年、供給過剰。余剰LNGは欧州に吸収。• 2020年、新型コロナの影響で需要が低下し、余剰基調がさらに拡大。アジアスポット価格、欧州ガス価格とも史上最低を更新。欧州地下ガス貯蔵は、大量の米国LNGカーゴキャンセルにより汪溢を免れる。一方、その影響で、米国地下ガス貯蔵も満杯となる。また、新規液化プロジェクトの建設が遅延。油価下落でメジャーズが投資を削減。北米デベロッパーが長期契約を締結できなくなり、液化プロジェクトFIDが停滞。

• 2021-22年、液化プロジェクト建設遅延による供給遅れにより、新型コロナ前と比べ、市場は若干タイト化。• 2023-24年、液化プロジェクト建設遅延の影響が大きく、新型コロナ前に比べ、市場は大幅にタイト化。• 2025-26年、2019年FIDした液化プロジェクトからの供給が始まり、市場は一気にルース化。2020年以上のレベル・期間で供給過剰が継続する。再度米国液化プロジェクト等が全トレイン稼動停止する可能性。

• その後は2030年にかけて、需給はバランスするが、炭素制約、リニューアブルとの競争が激化することにより、新規FIDが停滞し、価格は徐々に上昇。

LNG需給バランスイメージ

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LNG需給バランスイメージ

LNG Glutの再来、液化プラントシャットイン発生

需要安定成長(新型コロナ以降は2019年予測並と仮定)

生産容量余裕減少

LNG価格

炭素制約の厳格化→ リニューアブルとの競合激化→

建設遅れによる供給タイト化

スポットLNG価格上昇

20302029202820272026202520242023202220212020

LNG量

JCCリンクLNG価格上昇(油価回復を仮定)

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5.LNGニューノーマル

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米国• シェール革命により、豊富な埋蔵量を誇る、価格、生産の安定した、ショートサイクルガス資源を獲得。2020年には、シェールガスが生産

の8割を占める。• フレキシブルな契約を提案し、2010年代、多くのLNGプロジェクトが発進。2025年、LNG生産世界第1位になる見込み。• 固定コストが大きい。2020年、供給過剰により、多くのカーゴキャンセルが発生。LNGスイングプロデューサーとしての立ち位置を固めた。• 多くの新規液化プロジェクトがFIDに向け市況改善待ち。2023-24年のタイトマーケット時にサードウェーブとして復活するか。

カタール• 豊富、低コストなガス資源を背景に、昨今の供給過剰市場にもかかわらず、長期的視野に立ち、LNG液化プロジェクトの拡張を推進。• NOCからIOCへの変貌狙う。

ロシア• 豊富、低コストなガス資源を持つ。欧州への最大のPLガス輸出国だが、安全保障上PLガスの輸出は頭打ち。• 2020年は、ガス価格が低すぎPLガス生産2割減。• ガス資源活用のため、LNG化を推進。同時に、中国へのPLガス輸出プロジェクトを進める。

豪州• 伝統的なLNG輸出国。輸送距離の短いアジア市場狙い。近年、中国への輸出が増加。• 既存プロジェクトは減価償却済だが、新規プロジェクトは高コストで、立ち上がりが難しい。• ガス資源は北西部に集中。東部は早ければ2022年にはガス不足。

その他ガス資源国• 開発コストの低い、優良なガス資源を保有する国々を中心に、LNGプロジェクトによるガス資源マネタイズを準備。

LNGニューノーマル

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IOC、トレーダー• ガス資源への投資拡大。• 世界中に拠点を展開し、LNGポートフォリオプレーヤー化を進める。• 今後しばらくは、低コスト、高利益のLNG液化プロジェクトに集中。• 受入容量、発電設備など、引き続き下流資産を拡大。

欧州• 2018年以降、巨大な地下貯蔵で余剰LNGを吸収。• グリーンディールの一環として、さらなるLNG基地の競争力強化、ガス卸売市場への参入促進を進める。• 周辺欧州諸国にも、共通利益プロジェクト(Projects of Common Interest、PCIs)として受入基地の建設を進め、ロシア産PLガス依存

率、ガス価格低減を促進。

日本、韓国、台湾• 安定的な大型買主。今後の大きな需要増加は見込めない。

中国• 伸び率は低下してきてはいるものの、2023年、LNG輸入世界第1位となる見込み。• 既に既存基地の稼働率が高く、輸入拡大のために新規受入基地増設中。

東南アジア、南アジア• 今後のデマンドセンターとなることは明らか。ただし、インフラ構築の遅れが目立つ。• スポットLNG価格低下が調達を促進する一方、油価下落によるLNGインフラ構築遅れの恐れも。

LNGニューノーマル

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LNGニューノーマル

欧州• 開かれたガス市場を整備し、供給安定性向

上、価格低減目指す• 巨大な地下貯蔵で余剰LNGを吸収• 周辺欧州にもPCIsとして受入基地建設

カタール• 豊富、低コストなガス資源• LNG生産拡大継続• NOCからIOCへの変貌狙う

ロシア• 豊富、低コストなガス資源• 欧州PLガス最大輸出国だが頭打ち• 2020年は、価格低すぎガス生産2割減• ガス資源活用のため、LNG化、中国へのPL輸出を推進

豪州• ガス資源北西部に集中(東部ガス不足)• 距離近いアジア市場狙い• 既存プロジェクト減価償却済• 新規プロジェクトは高コスト

米国• 豊富、価格安定したガス資源• LNGスイングプロデューサー• 2025年、LNG生産世界第1位• 多くの新規液化プロジェクトが

FIDに向け市況改善待ち

中国• 2023年LNG輸入世界第1位• 新規受入基地増設中

日本・韓国・台湾• 大型安定買主• 大きな伸びはなし

東南・南アジア諸国• 今後のデマンドセンター• インフラ整備遅れその他ガス資源国

• LNGによるガス資源マネタイズ準備

IOC、トレーダー• ガス資源拡大• ポートフォリオプレーヤー化

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6.LNG需給安定化策

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需給の安定化策

• 異なる信条や政治体制を掲げる米中が覇権を競い合う中で、今後のLNG供給は、2025年に生産量第1位となる米国と、拡張を進めるカタール、豪州、ロシアの4極体制となる。また、LNG需要については、2023年に中国が最大の輸入国になるとみられている。

• LNG産業は、元来、①製品の差別化が難しく、②大規模な投資が必要な装置産業で、③大きな技術革新がない業界であり、設備過剰による構造不況となる可能性が高い業種である。

• 2020年3月のOPECプラスの減産合意不調を起点とした原油価格暴落からも帰納されるように、同じ装置産業であるLNGについても世界の供給を統合的に調整する機関が出現しない限り、LNG需給はBoomとBustを繰り返すことになる。特にポートフォリオプレーヤーの出現以降はLNGのコモディティー化が進んだため、価格レベルはこれまでに比べて低めで推移するものの、価格の変動は一層拡大していく。

• 需給および価格安定のための解決策として、時として、ガス版OPECの組成が語られる。• ただし、カルテルは自由な市場をゆがめるため、非効率、すなわちLNG価格の上昇を招き、LNG液化プロジェクトのコストダウン努

力を削ぐ等の悪影響が生じる可能性がある。• 現在は原料費調整制度やシティーゲート価格で守られている国々であっても、将来的にはそれらの制度は廃止されるとみられる。

それ以降は、買主は自らコストを負担し、LNGの価格変動をヘッジしなければならない。

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ガス輸出国フォーラム(Gas Exporting Countries Forum、GECF)

• 石油市場のOPECプラスのような、生産調整によって価格を維持する機関は、現在、LNG輸出国の組織は存在しないが、20年前にガス輸出国フォーラム(GECF)がガス輸出国の会合の場として設立されている。

• 2001年のOPEC後、「ガス輸出国フォーラム」は「ガス生産国による協議」を目的として開催された。年1回程度開催。• 2008年12月、モスクワで閣僚会合が開催。ガス埋蔵量、生産量、輸出量とも世界一のロシアが、常設機構の創設の必要性を唱え、

参加した天然ガスの主要生産国11カ国がフォーラムの「憲章」を採択。事務局をカタールのドーハに置く正式な国際機関として発足した。

• 生産調整や価格協定ではなく、資源開発などにおける様々な分野での各国間の協力を主な目的としている。• 加盟国は、アルジェリア、ボリビア、エジプト、赤道ギニア、イラン、リビア、ナイジェリア、カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ、ベネ

ズエラの11カ国。オブザーバーは、アンゴラ、アゼルバイジャン、イラク、カザフスタン、マレーシア、ノルウェー、オマーン、ペルー、UAEの9カ国。

• GECF加盟国のマーケットシェアは、確認埋蔵量の6割、生産量の3割(LNG生産量では4割強)。OPECの確認埋蔵量の7割、生産量の4割と比べ小さい。

(JOGMEC、GECF他)

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ガス輸出国フォーラム(Gas Exporting Countries Forum、GECF)

定款(The Statute of GECF)第1条 GECFは国際的な政府間機関であり、加盟国間で経験と情報を交換する枠組みを提供し、以下の目標を達成するこ

とを目的とする。第3条

A項:フォーラムの目的は、①加盟国のガス資源に対する主権を支援すること、及び②加盟国がガス資源を持続的、効率的、環境に融和的に開発するため、また、ガス資源を国民のために保全するため、加盟国が独自に計画・管理することを支援することである。加盟国が全会一致で合意すれば、本条の目的を拡大することができる。

B項:これらの目的は、相互的に関連する次のトピックに関する経験・見解・情報を交換し、協力(coordination)することで促進される。

1. 世界のガス探鉱・生産の動向2. 現在と将来のガス需給バランス3. 世界のガス探鉱・生産・輸送技術4. 地域的・世界的ガス市場の仕組みと進展5. ガス輸送:パイプラインとLNG船6. ガスと石油製品・石炭・その他燃料と相互関係7. 持続可能な環境マネージメントに係る技術とアプローチ。特に、①環境的制約、②環境に係る各国の法律・国家間の協定、及びそれらの法律と協定が持続的なガス消費量に及ぼす影響について考慮する。

8.全てのバリューチェーンにおけるガス資源を最大限に利用するための技術とアプローチ。それは、加盟国における持続可能な経済発展と人的資源開発を促進するためのものであること。

(JOGMEC、GECF他)

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ガス版OPECは成立するか?

• 一般的に、アメリカ、オーストラリア等自由主義国家が、カルテル組成に加担するとは考えにくく、したがって、ガス版OPECも成立するとは考えにくい。

• 万一、成立した場合でも、油価上昇によってシェールオイル生産に火をつけたように、カルテルによって一時的にLNG価格が高いレベルで安定化すれば、長期的には、新たな競合を増やし、結局、減産、減収を招くという、同じ轍を踏むことになると考えられる。

• LNGの取引は、長期契約が65%を占め、価格見直し時期がそれぞれ異なるため、売主が共同歩調を取りづらい。また、契約数量も決まっているため、協調減産は難しい。長期契約の割合はまだまだ大きく、価格に対する影響力持つのはかなり難しいとみられる。

• 一方、長期契約は油価リンクであり、これまでも間接的に、OPECプラスによる価格安定化策の恩恵を受けてきた。これに加え、過去3ヶ月90日分のJCC平均を指標として使用しているため、原油と比べその価格は大きく安定している。2019年9月14日のドローンによるサウジアラビア・アブカイク石油施設等の攻撃、2020年3月6日のOPECプラス減産不調による油価下落時も、JCCリンクLNG価格は大きな変動を受けなかった。

• スポットLNG割合は継続的に上昇し、2019年、35%に到達した。今後、スポットLNGの取引割合がさらに増加した時、協調減産が実施されるなら、スポットLNGを通して世界のガス需給、価格に対しても影響力を行使できる可能性がある。

• PLガスは、地域性が高いため、全世界に対してのカルテル組成は難しいが、欧州に対しては、売主(ロシア、アルジェリア、リビア、アゼルバイジャン、ノルウェー)間の協調は、物理的には可能である。欧州ガス価格を通して、スポットLNG価格に影響を与えることも、ある程度は可能と考えられる。

• 2008年のリーマンショックにともなうガス価格下落に対しガス輸出国の不満が高まった際には、欧州などのガス、LNG輸入国には価格カルテルへの動きを警戒する声が聞かれた。

(JOGMEC、imidas他)

Page 69: 天然ガス・LNG最新動向 - LNGニューノーマル...2020/06/18  · Platts他) • 2020年4月、調査部「天然ガス・LNG関連情報」に、「天然ガス・LNGプロジェクト動向」を追加。•

おわりに

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• グローバル化とデジタル化が進む世界において、変化は、より強く、広範囲に、そして突然到来する。

• 新型コロナの影響により、LNG市場の供給過剰は増幅され、欧州地下ガス貯蔵の汪溢も懸念されたが、この暑い夏を乗り切れれば、需給は一旦想定の範囲内に収束する見込みとなった。ただし、今後、新型コロナの第2波が来襲すれば、供給過剰懸念が再燃する可能性があり、また、史上最大となった2019年のFIDの帰結として、2025年からは、今回よりも大きな供給過剰の波が押し寄せることがわかっている。

• 油価下落により、メジャーズ等の投資は大幅に削減され、北米を中心としたLNG液化プロジェクトのFIDブームは水を差された形となった。

• 一方、厳しい状況にありながらも、LNG生産拡大路線をひた走るプレーヤー、安定供給、調達価格の低減を目指して、したたかに世界全体を巻き込む戦略の布石を打ち続けるプレーヤーもいる。

• 現時点でのLNGニューノーマルが明らかになりつつある。

• 天然ガスは、化石エネルギーの一つでありながら、リニューアブルが定着するまでのブリッジエネルギーとしての相性の良さが時として強調されるものの、今後は、グリーンディールによる差別化や炭素制約がより厳しく適用されていく。リニューアブル自体とのコスト競争の足音も既に聞こえ始めている。

• さらに、次世代を担う基幹エネルギーの一つとしては、経済の混乱要因となる需給、および、価格の変動が未だ大きいと言わざるを得ない。

• 今回のFIDブームは沈静化したものの、翻って、もし、当初予測されていたように、2020年、100MTPAにも達するといわれた液化プロジェクトがFIDされていたならば、2025年に加えて、2026年にも、2020年のレベルをはるかに超えた供給過剰が発生していた。今回奇しくも、新型コロナと油価下落のお陰で、未曾有の供給過剰は回避されたが、この事実を、真摯に受け止め、記憶にとどめなければならない。

• 日々プレゼンスを増すLNGは、近い将来、なんらかの需給・価格安定化策が求められかねない状況にある。LNGインダストリー全体としての危機対応能力がいま試されている。

おわりに