「育てる金融」の実現に向けて -人材育成と連携...

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「育てる金融」の実現に向けて -人材育成と連携の課題- 神戸大学経済経営研究所教授 家森信善 財務省近畿財務局 金融仲介の質の向上に向けたシンポジウム(2018312日) 1

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Page 1: 「育てる金融」の実現に向けて -人材育成と連携 …kinki.mof.go.jp/content/000194901.pdf金融庁「企業アンケート調査の結果」2017年10月25日 11

「育てる金融」の実現に向けて-人材育成と連携の課題-

神戸大学経済経営研究所教授

家森信善

財務省近畿財務局金融仲介の質の向上に向けたシンポジウム(2018年3月12日)

1

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本日の講演の構成

1.求められる企業支援の取組

みの強化

2.最近の金融行政の動向

3.全国地域金融機関支店長

アンケート

4.連携強化に向けた課題

5.むすび:連携によって育てる

金融の加速を

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(1)高水準が続く休廃業企業数

3

(東京商工リサーチ調べ)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27

倒産

休廃業・解散

休廃業・解散した企業の代表者の年齢は、60代以上が8割(構成比83.4%)・・。業績の先行

き不透明感に加え、経営者の高齢化、事業承継の難しさが休廃業・解散の大きな要因になっている。(出所 東京商工リサーチ)

1.求められる企業支援の取組みの強化

小規模事業者の廃業理由

(出所)『中小企業白書 H25』

後継者難

経営不振

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(2)業績不振企業の回復の遅れと支援の不足

近年の景気回復にもかかわらず、条件変更を必要とする企業数の減り方が遅い。

貸付条件の変更等の状況(中小企業者向け)

金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」(2017年6月28日)

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5金融庁「抜本的な事業再生への課題について-貸付条件の変更先の現状及び金融機関による支援状況に関する調査、並びにサービサーへ債権譲渡された企業へのアンケート調査の結果概要」(2016年6月27日)

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Q. 実際に取引してみて、貴社の取引金融機

関は、貴社の経営上の課題や悩みをどの程度聞いてくれますか。

寄り添った支援の必要性の大きい業績不振先ほど、逆に、コミュニケーションがとれておらず、実際の支援サービスの提供も少ない。

金融庁「企業アンケート調査の結果」 2017年10月25日

貴社は、過去1年以内に取引金融機関からサービスの提供を受けましたか。

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(3)遅れる事業承継への支援

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小規模法人:経営者の年代別に見た、経営や資産の引継ぎの準備を勧められた相手

「誰にも勧められたことがない」は53.3% (50歳代)、45.5%(60歳代)、37.2%(70歳以上)。

中規模法人:経営者の年代別に見た、経営や資産の引継ぎの準備を勧められた相手

「誰にも勧められたことがない」は61.3% (50歳代)、47.0%(60歳代)、45.8%(70歳以上)。

『中小企業白書 2017年』

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金融庁は、先に述べた厳しい経営環境の下、多くの地域金融機関にとって、

単純な金利競争による貸出規模の拡大により収益を確保することは現実的で

はなく、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた組織的・継続的な取組み

が必要である旨発信してきた。

・・・・

地域企業の真の経営課題を的確に把握し、その解決に資する方策の策定及

び実行に必要なアドバイスや資金使途に応じた適切なファイナンス(短期継続

融資、メザニン等の資本性資金、公的金融との協調等を含む)の提供、必要に

応じた経営人材等の確保といった支援を組織的・継続的に実践し、地域企業

の適切な競争環境の実現に取り組むことが、ひいては自身の持続可能なビジ

ネスモデルの構築につながる地域金融機関は多いと考えられる。

平成29事務年度・金融行政方針

2.最近の金融行政の動向

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9金融庁「企業アンケート調査の結果」 2017年10月25日

Q. 取引金融機関から過去1年以内に受けたサービスは、貴社の売上げや収益、財務内容の改善などに役に立ちましたか。

Q. 貴社は、金融機関から過去1年以内にサービスを受けた結果、当該金融機関との取引を拡大しましたか。

効果「有」が71%もある! 有効支援で取引関係強化可能

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地域経済の活性化に向けて、事業性評価に基づく融資や本業支援の重

要性は認識しつつも、専門人材やノウハウが不十分なために顧客企業の

真の経営課題が把握できず、その解決に向けた方策の策定や実行支援が

できていない地域金融機関が少なからず存在しており、このような金融機

関はその改善に向けた取組みに注力することが重要と考えられる。

『平成29事務年度・金融行政方針』

金融機関自身の支援能力を高める必要がある

→金融機関職員の人材育成

→ガバナンスの強化(経営統合を含む)

内部で不足するなら外部のリソースを積極的に活用すべき

→地域経済活性化支援機構(REVIC)や日本人材機構の活用

→外部専門家との連携

→信用保証協会、公的金融機関との連携

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11金融庁「企業アンケート調査の結果」 2017年10月25日

金融機関との取引全般に関する満足度について、回答理由を教えてください。

金融機関に対する最大の不満は、支援の不足。金融機関の評価では、支援や理解姿勢は融資条件よりも重視されている。

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独立行政法人経済産業研究所「現場からみた地方創生に向けた地域金融の現状と課題に関する実態調査」(2017年1月~2月実施)

調査対象:地域金融機関(地方銀行、第二地方銀行、信用金庫及び信用組合)の営業店舗の支店長

12

3.全国地域金融機関支店長アンケート

全体 地方銀行第二地方銀行

信用金庫 信用組合

発送数 7,000 2,586 1,125 2,704 585回答数 2,858 628 334 1,488 392回答率 40.8% 24.3% 29.7% 55.0% 67.0%回答割合 100.0% 22.1% 11.8% 52.4% 13.8%

家森信善編『地方創生のための地域金融機関の役割-金融仲介機能の質向上を目指してー』 中央経済社 2018年2月

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問8.入社した頃は「地元のために働ける」ことをどの程度意識しましたか。また、入社した頃と比べて、現在は「地元のために働ける」ことへの意識は変化しましたか。

入社の頃の意識

回答数強く感じていた

ある程度感じていた

ほとんど感じていなかった

全く感じていなかった

忘れた/わからない

2,841 584 1,527 647 60 23

100.0 20.6 53.7 22.8 2.1 0.8

「地域のために働ける」ことの意識の変化と「やりがい」

「地域のために働ける」ことの意識

やりがいを「非常に強く感じる」比率

強くなった(1,804人) 30.9%変わらない(964人) 14.5%弱くなった(52人) 8.3% 13

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問9.問8(2)で「強くなった」と回答した方にお尋ねします。その

理由として下記から当てはまるものを全て選んで下さい(複数回答可)。

「強くなった」と回答した方の理由(複数選択可)

回答数

貴社の歴史を勉強したから

貴社の経営理念を理解したか

貴社が実施する各種の研修に

参加したから

独自に勉強した結果から

地元のために働くという意識

の強い先輩や上司に影響され

たから

取引先から感謝されたことが

あるから

取引先への支援が実ったこと

があるから

地域の人々からの期待を感じ

るから

地域経済の衰退を目のあたり

にしたから

上記以外の理由

1,804 161 680 119 88 530 1,452 1,039 958 291 19

- 8.9 37.7 6.6 4.9 29.4 80.5 57.6 53.1 16.1 1.114

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回答数 非常に深刻 深刻 多少は深

刻深刻ではない

わからない

① 頻繁に担当替えがあり中長期的なサポートが難しい

2,780 48 405 1,172 1,056 99100 1.7 14.6 42.2 38 3.6

②担当先が多すぎて、個社毎の経営ニーズを把握する時間がない

2,782 90 437 1,116 1,054 85100 3.2 15.7 40.1 37.9 3.1

③ 取引先の事業内容や業界の知識が不十分

2,788 211 946 1,180 412 39100 7.6 33.9 42.3 14.8 1.4

④ 経営支援実行のための担当者育成・教育が不十分

2,790 341 1,107 1,088 223 31100 12.2 39.7 39 8 1.1

⑤ 貸出額や収益に直結しない2,788 111 493 1,004 1,076 104100 4 17.7 36 38.6 3.7

⑥ 業績評価に反映されない2,784 81 349 807 1,433 114100 2.9 12.5 29 51.5 4.1

⑦中堅職員が不足して、若手への指導が手薄になっている

2,786 622 1,115 798 221 30100 22.3 40 28.6 7.9 1.1

⑧ 本部の支援が不十分2,786 93 449 953 1,206 85100 3.3 16.1 34.2 43.3 3.1

⑨ 本部の経営方針が一貫していない2,782 137 279 548 1,672 146100 4.9 10 19.7 60.1 5.2

⑩金融庁の規制・指導や社内コンプライアンス規定

2,777 32 182 592 1,735 236100 1.2 6.6 21.3 62.5 8.5 15

問21.金融機関のコンサルティング能力の向上に障害になっている要因として、次の事項はどの程度深刻ですか。

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問27.貴社の人事評価における変化についてお尋ねします。

過去3年以内の人事評価の変化の状況回答数 大きな変化

があった多少の変化があった

ほとんど変化していない

全く変化していない

わからない

全体2,761 311 937 1,277 164 72100.0 11.3 33.9 46.3 5.9 2.6

地方銀行 562 9.1 44.5 42.0 3.0 1.4第二地方銀行 332 14.5 29.2 47.9 6.6 1.8信用金庫 1,472 10.9 32.1 47.9 6.3 2.9信用組合 390 12.8 30.0 44.6 8.5 4.1

行員の業績評価のウエイトの状況(業態別)「非常に重要」と回答した人の比率。 地方銀行 第二地方銀行 信用金庫 信用組合①既存企業向けの貸出額及びその伸び 29.6% 31.7% 36.5% 37.4%②新規貸出先の獲得及び新規先への貸出額

34.4% 45.4% 55.9% 54.4%

③既存企業に対する経営支援への取り組み 21.5% 21.6% 19.2% 20.7%

④預金及びその伸び 9.1% 8.9% 12.2% 20.7%

⑤ビジネスマッチングの成約 20.4% 22.6% 10.7% 13.1%

⑥手数料収入の額 39.6% 33.8% 17.9% 8.8%

⑦事業承継の紹介・支援 23.2% 18.4% 8.8% 7.5%16

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問35.次の内容について、4段階で共感度を評価して下さい。

強く共感

ある程度共感

ほとんど共感しない

全く共感しない

わ から ない

回答数

①経営に問題を抱えた企業を支えるのは金融機関の使命である

46.9 50.7 1.9 0.1 0.4 2,786

④営業現場で事業性評価の考え方は定着してきた

6.0 62.9 21.9 2.9 6.3 2,785

⑥政府系金融機関との協働はすすめるべきである

8.1 62.5 16.0 7.1 6.3 2,788

⑨金融機関は地方創生に貢献すべきである

49.7 47.5 1.7 0.1 1.0 2,791

⑩返済条件変更先の経営改善を実行できる人材は銀行内に少ない

8.4 50.9 30.1 6.1 4.4 2,780

17

①や⑨は圧倒的な共感。事業性評価は徐々に定着(④)。しかし人材(⑩)難に直面。政府系金融機関との協働も積極姿勢(⑥) 17

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18

地方公共団体 税理士等の支援の専門家

コンサルティング会社 商工団体 他の民間金融機関

政府系金融機関 信用保証協会 ファンドや専門機関 NPO法人

金融機関の取組みをサポートしつつ、事業者の自主的な経営改善を

通じた地域経済の活性化の実現を図るため、以下のような関係省庁

や政府系金融機関及び各種支援機関との連携・協力の強化を図る。

(『H28 金融行政方針』)

連携

名古屋中小企業支援研究会、日本公認会計士協会東海会、全国倒産処理弁護士ネットワーク中部地区編『中小企業再生・支援の新たなスキーム-金融機関と会計・法律専門家の効果的な協働を目指して-』(中央経済社) 2016年6月。

4.連携強化に向けた課題(1)連携の状況の評価

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「金融仲介機能のベンチマーク」においても連携強化を評価・・・選択ベンチマーク

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(2) 専門家との連携

顧客企業のライフステージ等の類型

金融機関が提案するソリューション 外部専門家・外部機関等との連携

経営改善が必要な顧客企業(自助努力により経営改善が見込まれる顧客企業など)

・ビジネスマッチングや技術開発支援により新たな販路の獲得等を支援。・貸付けの条件の変更等。

・中小企業診断士、税理士、経営指導員等からの助言・提案の活用(第三者の知見の活用)・地方公共団体、中小企業関係団体、他の金融機関、業界団体等との連携によるビジネスマッチング

事業の持続可能性が見込まれない顧客企業

・貸付けの条件の変更等の申込みに対しては、慎重かつ十分な検討を行う。

・慎重かつ十分な検討と顧客企業の納得性を高めるための十分な説明を行った上で、税理士、弁護士、サービサー等との連携により顧客企業の債務整理を前提とした再起に向けた方策を検討

事業承継が必要な顧客企業

・後継者の有無や事業継続に関する経営者の意向等を踏まえつつ、M&A のマッチング支援、相続対策支援等を実施。

・M&A 支援会社等の活用・税理士等を活用した自社株評価・相続税試算・信託業者、行政書士、弁護士を活用した遺言信託の設定

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顧客企業のライフステージ等に応じて提案するソリューション

中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針

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21紀陽銀行 「ディスクロージャー誌」 「平成28年度金融仲介機能の取組状況」

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「知財ビジネス評価書」を活用した融資案件成立。

商標権のブランド力に着目し、事業性評価に活用。

•名古屋銀行は、地元企業の円滑な資金調達をサポートするため平成26年

度より特許庁の「知財ビジネス評価書作成支援事業」に取組んでいます。

•株式会社キョーイク(本社:愛知県名古屋市)は、医科系大学受験専門予備校「メディカルラボ」を全国18カ所で

展開し、「完全個別指導」や「個人別カリキュラム設定」など受験生の個別ニーズに対応しています。同社が保有する商標権(メディカルラボ)のブランド力に着目し、評価書を活用した事業性評価による融資を実施しました。

知財の専門家との連携

名古屋銀行開示資料(2016年12月9日)(特許庁・知財金融ポータル)

経営改善の専門家との連携

今般、本体制強化の一環として、事

業性評価を通じた取引先の経営力向

上支援に積極的に取り組まれている

株式会社広島銀行と業務委託契約を

締結し、同行行員の皆様が担当融資

先の「経営力向上計画に係る認定申

請書」作成をサポートする際の支援

業務を受託いたしました。

地域金融機関による中小企業等の

支援強化が求められる中、本契約の

締結により、同行の取引先に対する

事業性評価に基づく経営支援として、

コンサルティング部門をさらに強化す

るとともに、中小企業等の経営支援

に貢献してまいります。

株式会社エフアンドエム・ニュースリリース(2016年10月27日) 22

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群馬銀行は、株式会社TKCが提供する「TKCモニタリング情報サービス」の取扱いを3月1日より開始いたしましたので、お知らせいたします。本サービスは、TKCの会計ソフトを利

用しているお客さまの決算書や月次試算表などの財務データを、お客さまの依頼に基づいて、Web上で当行が取得できるサービスです。本サービスをご利用いただくことで、

財務データの授受が適時行われるため、当行はお客さまの財務内容や経営状況を踏まえた、より適切な金融サービスの提供を行えるようになります。

税理士との連携(フィンテック活用)

群馬銀行開示資料(2017年3月1日)

弁護士との連携

長野県内の全6信用金庫で構成す

る長野県信用金庫協会は・・長野県

弁護士会と「中小企業支援に関する

協定」を締結した。県内でも深刻化し

つつある事業承継を中心に、両者の

中小企業支援を強化する。

・・・信金が潜在的な事業承継の課

題を掘り起こし、弁護士と協力して解

決策を探る。信金が主催するセミナー

に弁護士が参加したり、相互の研修

に講師を派遣したりすることも想定す

る。 県弁護士会の三浦会長は「・・・

経営に法的視点を加えた中小支援を

することは時代の要請にもとづく」と

話した。

『日本経済新聞』(長野県版) (2018年1月25日) 23

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24

(3)地域金融機関からみた専門家連携の状況

問20.あなたご自身がこれまでに取引先企業に対して、(1)助言や情報提供

を行ったことがある項目、そのうち、(2)取引先企業の経営改善に相当程度効果があった経験をお持ちの項目、(3)各助言等によって貴社の取引や収益の拡大につながった経験がある項目をそれぞれすべて選んで下さい。

(1)助言や情報提供の経験

(2)取引先の経営改善につながった

(3)貴社の収益拡大につながった

① 新しい販売先 1,576 804 624

② 新しい仕入先 1,286 605 323

⑤ 人材の紹介(中途採用者の紹介など) 1,041 399 95

⑥ 専門家や専門機関の紹介(税理士、弁護士、中小企業診断士など)

1,498 1,442 460

経済産業研究所・支店長アンケート2017

回答者(約3000人)の半数超が専門家紹介の経験。 「改善」につながったとの回答が多い。

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問25.貴支店の平均的な営業職員及びあなたご自身は、重要な顧客企業の

顧問税理士・会計士とどのような関係を築いていますか。全体的な傾向として当てはまるものを全て選んで下さい

担当者

回答数 2,679 -

定期的に連絡を取っている 233 8.7

定期的な連絡は取っていないが、必要に応じていつでも連絡が取れる

1,317 49.2

名前を知っている程度 857 32.0

名前も知らない 207 7.7

当該企業の経営状態について協力して支援している

372 13.9

本格的な企業支援が必要になった場合、協力して実施できる

596 22.2

当てはまるものはない/わからない 160 6.0

支店長

2,731 -

248 9.1

1,615 59.1

653 23.9

106 3.9

516 18.9

869 31.8

129 4.7

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問26.貴支店の取引先中小企業が顧問としている税理士・会計士のうち、税

務以外の面で中小企業経営に効果的な助言ができる税理士・会計士はどの程度の割合だと思いますか。

税理士に対する評価

0~20%未満

20%以上~

40%未満

40%以上~

60%未満

60%以上~

80%未満

80%以上~100% 回答

支店長と税理士との関係

定期的に連絡を取っている

28.6 41.6 18.0 5.7 2.4 245

定期的な連絡は取っていないが、必要に応じていつでも連絡が取れる

30.4 40.4 13.7 3.1 0.7 1601

名前を知っている程度 35.9 38.7 11.0 1.4 0.2 646

名前も知らない 50.5 24.3 3.9 0.0 0.0 103

税理士との密接な関係がある支店長の方が、税理士の経営支援能力に対して高い評価を持っている。

→お互いに交流することで相互信頼を醸成する必要26

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(4)信用保証の適切な活用

27

中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案(2017年6月成立)

金融機関が過度に保証に依存することなく、中小企業が必要とする資金需要に応えるとともに、当該企業の価値向上支援に取り組むよう、平成29年改

正信用保険法等の趣旨や「経営者保証に関するガイドライン」の周知・活用状況等を踏まえ、金融機関との対話を行う。(『平成29事務年度 金融行政方針』)

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金融仲介のベンチマーク

静岡銀行(平成29年

7月31日公

表)

過度に信用保証に頼ってきた金融機関は信用保証の利用を減らすべき 事業性評価と信用保証の利用は矛盾しない。 信用保証を利用して企業を積極的に支援すべき(特に、創業、再生企業)

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(5)公的金融機関との連携

公的金融は、民業補完を旨としつつ、民間金融と連携・協力して地域経済の発展を下支えする等の役割を担っている。

・・・地域金融・中小企業金融の分野における公的金融と民間金融の連携・協力を含む望ましい関係のあり方について議論を行う。(『平成29事務年度 金融行政方針』)

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経済産業研究所・支店長アンケート2017

強 く共感

あ る 程度共感

ほとんど共感しない

全く共感しない

わからない

回答数

⑥政府系金融機関との協働はすすめるべきである

8.1 62.5 16.0 7.1 6.3 2,788

公的金融機関との連携に積極的なのは、→事業性評価へ取り組めている支店長。→職員の能力が向上している支店の支店長。→目利きのための取り組みをしている支店の支店長。

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共感比率 回答数

④ 貴支店は事業性評価にしっかりと取り組めている。

強くあてはまる 80.8% 307ある程度あてはまる 75.7% 1,893ほとんどあてはまらない 69.9% 361全くあてはまらない 55.0% 20

⑤ 貴支店は職員にとってやりがいのある職場である。

強くあてはまる 81.9% 443

ある程度あてはまる 74.5% 2,041

ほとんどあてはまらない 65.3% 98全くあてはまらない 42.9% 7

共感比率 回答数かなり向上 79.4% 141やや向上 75.4% 1000横ばい 75.9% 1038やや悪化 73.8% 381かなり悪化 62.3% 61

職員の能力の変化状況(3年前と比べた変化)別の回答状況

共感比率=「強く共感」あるいは「ある程度共感」を選択した比率。

共感比率回答数

支店としての独自の研修を行っている

79.4% 238

目利き力は、個々の職員の個人評価において重要な項目としている

78.4% 731

特別な取り組みはしていない 60.0% 40

職員の目利き力を向上させるための取り組み別の回答状況

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商工中金の在り方検討会提言(中間取りまとめ)平成 30 年1月 11 日

○商工中金は、地域金融機関と信頼関係に基づき連携・協業しながら、

上記のような中小企業に対する支援に重点的に取り組んで当該企業の

生産性向上や地方創生に貢献し、これを通じて適正な金利や手数料等

を得るビジネスモデルを構築していくべき。また、地域の金融機関による

中小企業支援の濃淡に応じて役割を発揮すべき。

その手法は以下の2つに大別される。

1)担保や経営者の個人保証などに頼らない事業性評価、事業承継

等を含めた課題解決型提案やきめ細かな経営改善支援といった

銀行本来の機能の強化

2)困難な状況に直面するも地域にとってかけがえのない存在である

中小企業の抜本的な事業再生、資本性ローン等のメザニンファイ

ナンス、M&A等の先進的取組み

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「育てる」金融によって、中小企業の経営改善や生産性の向上、創業への支援が求められている。

そのためには、地域金融機関によるアドバイスと適切なファイナンスの提供が不可欠である。

地域金融機関は、自らの職員の能力や意欲を向上させるような人事戦略を実践する必要がある。

一方、地域金融機関の持つリソースだけでは、中小企業の課題解決には不十分なので、外部リソースを積極活用すべき。

税理士などの専門家や専門支援機関との連携強化のためには相互の信頼関係の醸成が必要。

新しい信用保証制度の趣旨を理解して、保証協会と連携して創業や再生企業の支援に信用保証を適切に利用すべき。

政府系金融機関の民業補完機能を活用して、単独では難しい先の支援の強化を図るべき。

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5.むすび:連携によって育てる金融の加速を

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中小企業の経営者が問題を正しく把握しているとは限らない。

→現状を正しく認識し、中長期的な視野を経営者に持ってもらう。

→やる気を持ってもらう。

中小企業独自に行うことは難しい。

→地域金融機関や各種の支援機関による支援が不可欠である

しかし、課題が複雑になる中で、単独の支援機関だけで、十分なソリューションを提供することは難しい。

地域の様々な支援機関がそれぞれの機能を持ち寄って、総力をあげて課題を解決することが望まれている。

そのために、支援機関同士の連携の基盤を構築しておく必要がある。しかしながら、支援機関の間で相互によく知らない、時には、相互不信が見られる。

中小企業支援ネットワークのように、支援機関が定期的に顔を合わせる仕組みが「連携」の出発点になる。本組織の役割は重要である。

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伊東眞幸・家森信善『地銀創生-コントリビューションバンキング』 きんざい 2016年6月。

家森信善編『地域連携と中小企業の競争力-地域金融機関と自治体の役割を探る-』中央経済社 2014年2月。

家森信善 「第9章 金融機関と専門家の協働の重要性とその課題」 名古屋中小企業支援研究会他編『中小企業再生・支援の新たなスキーム-金融機関と会計・法律専門家の効果的な協働を目指して-』(中央経済社)所収 2016年6月。

家森信善他「地方創生に対する地域金融機関の営業現場の取り組みの現状と課題

―2017年・RIETI支店長アンケートの結果概要―」 経済産業研究所 DP Series 17-J-

044 2017年7月。

家森信善「信用保証制度改革に対する誤解を正す」 『金融財政事情』 2017年5月29日。

家森信善「「信用保証」は金融仲介発揮の有力手段――中小企業経営の改善・発達の実

現へ」『金融ジャーナル』 2017年7月。

家森信善 「経済教室:地銀経営の課題 「育てる金融」担う人材カギ」 『日本経済新聞』

2017年8月29日

家森信善・冨村 圭「地域金融機関の地方創生推進の課題-広がる取り組みの格差、人

材育成に力を-」『金融ジャーナル』 2017年10月。

家森信善編『地方創生のための地域金融機関の役割-金融仲介機能の質向上を目指し

てー』 中央経済社 2018年2月。 34

<参考文献>